中国におけるサイエンスパーク・ハイテクパークの
現状と動向調査
報告書
平成
21 年 4 月
独立行政法人
科学技術振興機構 中国総合研究センター
注 : 本 報 告 書 は 、 独 立 行 政 法 人 科 学 技 術 振 興 機 構 中 国 総 合 研 究 セ ン タ ー が 平 成 2 0 年 度 に 株 式 会 社 日 本 総 合 研 究 所 に 委 託 し た「 中 国 に お け る サ イ エ ン ス パ ー ク ・ ハ イ テ ク パ ー ク の 現 状 と 動 向 調 査 」 の 成 果 を ま と め た も の で あ る 。
目 次
第1章 調査の目的、手法、報告書の構成
...1
第1節 調査の背景、目的及び対象...1 第2節 調査アプローチ及び用語の解説...2 第3節 本報告書の基本的構成...6第2章 中国ハイテクパーク・サイエンスパークの全体像
...8
第1節 サイエンスパーク・ハイテクパークの設立の時代背景...8 第2節 基本方針や主要関連政策の制定、変遷... 10 第3節 基盤的なパークから多様な関連パーク等の誕生への発展... 18 第4節 サイエンスパーク・ハイテクパークの主管官庁・機関... 20 第5節 中国サイエンスパーク・ハイテクパークの今後の動向... 22第3章 国家ハイテク産業開発区の現状
...30
第1節 概要... 30 第2節 関連政策... 31 第3節 地域分布と現状... 34 第4節 産学官連携、イノベーション、外資導入などの状況... 38第4章 国家大学サイエンスパークの現状
...44
第1節 概要... 44 第2節 関連政策... 46 第3節 地域分布と現状... 47 第4節 産学官連携、イノベーション、国際交流等の状況... 50第5章 国家バイオ産業基地の現状
...53
第1節 概要... 53 第2節 関連政策... 54 第3節 地域分布と現状... 56 第4節 産学官連携、イノベーション、外資導入等の状況... 60第6章 国家イノベーションパークの現状
...62
第1節 概要... 62 第2節 天津濱海バイオ医薬国際イノベーションパーク... 64 第3節 済南情報通信国際イノベーションパーク... 65 第4節 蘇州ナノテク国際イノベーションパーク... 66第7章 中外共同運営国家ハイテクパークの現状
...68
第1節 概要... 68 第2節 中国・シンガポール蘇州工業パーク... 70第8章 その他の国家サイエンスパーク・ハイテクパークの現状
...75
第1節 概要... 75 第2節 国家特色産業基地... 75 第3節 国家ソフトウェアパーク... 79 第4節 国家インキュベータ... 82 第5節 国家帰国留学人員創業パーク... 91 第6節 国家知的財産実証パーク... 95 i資料
■ 図表類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料-1 ・図表一覧 ■ 政策類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料-3 ・主要政策等の一覧 ■ 個票類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料-14 1.国家ハイテク産業開発区(資料-15) 2.国家大学サイエンスパーク(資料-71) 3.国家バイオ産業基地(資料-137) 4.国家イノベーションパーク(資料-160) 5.中外共同運営国家ハイテクパーク(資料-164) ■ リスト類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料-165 1.国家特色産業基地(資料-166) 2.国家ソフトウェアパーク(資料-194) 3.国家インキュベータ(資料-203) 4.国家帰国留学人員創業パーク(資料-242) 5.国家知的財産実証パーク(資料-249) ii第1章 調査の目的、手法、報告書の構成
本章では、以下の3点について記述する。まず、第1節では、本件調査の背景、目的、 対象について述べる。次に、第2節において、調査アプローチや本報告書において重要と 考えられる用語について解説する。最後に、第3節で、本報告書の基本的な構成について 説明する。第1節 調査の背景、目的及び対象
中国は、1988年以降、各種の国家級サイエンスパーク・ハイテクパークを建設して きた。これらパークは、中国の自主的なイノベーションが展開される重要なプラットフォ ームの一つと位置づけられており、さまざまな役割を果たしている。中国経済のグローバ ル化を背景に、日本企業を含む多くの外国企業がこれらパークに進出し、研究開発活動を 行っており、今後これらパークの更なる発展が予想される。本調査は、中国の国家級サイ エンスパーク・ハイテクパークの現状を調査するとともに、これらパークの今後の動向を 分析することを目的とする。 以上のような目的のために、本調査では、まず、中国におけるサイエンスパーク・ハイ テクパークにかかわる基本方針や主要政策、法律・法規を概観するとともに、さまざまな サイエンスパーク・ハイテクパークの間の相互関係やその全体像を俯瞰し、それらの今後 の動向を探る。また、国家ハイテク産業開発区や国家大学サイエンスパークなどに代表さ れる、主なサイエンスパーク・ハイテクパークの類型について調査し、現状を把握・整理 する。 本報告書が調査対象とするパークを以下の10種類とする。各類型の解説は第2節に記 述する。 ①国家ハイテク産業開発区 ②国家大学サイエンスパーク ③国家バイオ産業基地 ④国家イノベーションパーク ⑤中外共同運営国家ハイテクパーク ⑥国家特色産業基地 ⑦国家ソフトウェアパーク ⑧国家インキュベータ ⑨国家帰国留学人員創業パーク ⑩国家知的財産実証パーク 1第2節 調査アプローチ及び用語の解説
第1項 調査アプローチ 近年、日本において、中国のサイエンスパーク・ハイテクパークの現状に関する視察報 告や事例紹介が見られるようになり、その中には有益な情報や貴重な示唆を提示したもの も多く存在する。一方、さまざまなサイエンスパーク・ハイテクパークの相互の関係など、 分かりにくい点が多いことも指摘されている。 実際、今回の調査対象である中国の国家級サイエンスパーク・ハイテクパークは、必ず しも最初から国が定めた関連制度に基づいて発足したものではなく、地域レベルの関連パ ークなどが、中央の関連政策によってその後認定されて国家級のパークになったケースが 多い。最初は1官庁からの承認を得て国家級のパークになり、その後、複数の官庁が関与 し共同で管轄したり、あるいは、中央と地方政府の共同運営となることもある。また、同 一地域が複数の調査対象として重複していることも多い。更に、清華大学サイエンスパー ク昆山サブパークのように、一つのパークが複数の地域に設立されている場合もある。こ のようなことから、中国における国家サイエンスパーク・ハイテクパークの全体像は極め て分かりにくいと言える。 そこで、本調査は、以下のような多角的なアプローチで進めた。 図 1.1 調査の流れ 調査 対象 及び 所 轄 機 関等の 明確化 調査 対象 及び 所 轄 機 関等の 明確化 政策関連の資料収集 政策関連の資料収集 パーク関連の資料収集 パーク関連の資料収集 調査 ア ウ ト プ ッ ト イ メ ージ 案 の 作成 調査 ア ウ ト プ ッ ト イ メ ージ 案 の 作成 ス パ イ ラ ル な 調 査 、 個 票 等 の 作 成 ス パ イ ラ ル な 調 査 、 個 票 等 の 作 成 俯瞰図等の検討 俯瞰図等の検討 パーク毎の整理 パーク毎の整理 まと め まと め メールや電話 調査 対象 及び 所 轄 機 関等の 明確化 調査 対象 及び 所 轄 機 関等の 明確化 政策関連の資料収集 政策関連の資料収集 パーク関連の資料収集 パーク関連の資料収集 調査 ア ウ ト プ ッ ト イ メ ージ 案 の 作成 調査 ア ウ ト プ ッ ト イ メ ージ 案 の 作成 ス パ イ ラ ル な 調 査 、 個 票 等 の 作 成 ス パ イ ラ ル な 調 査 、 個 票 等 の 作 成 俯瞰図等の検討 俯瞰図等の検討 パーク毎の整理 パーク毎の整理 まと め まと め メールや電話 まず、前述した各調査対象パークの最新リストの入手と、各類型/制度のパークの認定・ 承認官庁または所轄官庁などの確認を試みた。本調査報告書をまとめる上でリストが不可 欠であることは言うまでもないが、各類型のパークの認定・承認官庁、所轄官庁などの明 2確化によって、多様なサイエンスパーク・ハイテクパークの誕生、変遷そして発展に影響 を与えた上位政策や関連政策、また、それらの相互関係の一部解明に繋げた。 次に行ったのは、政策関連資料とパーク関連資料の収集である。前者に関しては、サイ エンスパーク・ハイテクパークの誕生の時代的な背景や政策的環境、パークが設立される までのプロセス、及び「火炬計画」(タイマツ計画、後掲第2章第2節参照)との関係を中 心とした関連文献などの収集に注力した。一方、後者に関しては、各パークが公開してい る公式HPや発行している外資導入ガイド、あるいは、関連イベントで発表された論文集 や紹介資料などの入手や解読に注力した。 ただし、公式HPが制作・公開されていない、または情報が古く更新されていないパー クや、情報の公表に消極的と見られるサイエンスパーク・ハイテクパークも少なからず存 在する。このようなパークに対しては、メール調査や電話インタビューを行い、場合によ っては現地訪問を通じて情報の入手に努めた。 第3に、効率的な調査を実施し報告書をまとめるために、仮説的な調査アウトプットイ メージを作成することとした。中国の社会システムや産学官連携の方式、市場メカニズム の変遷、知的財産諸制度、ハイテク産業の再構築などは、日本と比較してさまざまな相違 が存在する。中国におけるサイエンスパーク・ハイテクパークの全体像、現状、今後の動 向についてまとめる際には、これらの違いに留意した。 第2項 用語の解説 本調査報告書における各制度のパークに関する用語について、以下の通り、簡単に説明 する。 ①国家ハイテク産業開発区 国家ハイテク産業開発区は、中国語の「高新技術産業開発区」の訳語である。中関村科 技園区(Zhongguancun Science Park, 中関村サイエンスパーク)、武漢東湖新技術開発区 (Wuhan East Lake Hi-Tech Development Zone)、大連高新技術産業園区(Dalian Hi-Tech Industrial Zone)といった表現も存在するが、ほとんどは「地名+国家高新技術産業開発 区」(National Hi-Tech Industries Development Zone)と言う名称になっている。そのた め、本調査報告書では「国家ハイテク産業開発区」と言う統一した表現を用いる1。
1 中国には、多様な「開発区」と称されるエリアがあるが、必ずしもそのすべてが中国科学技術部に認定されたエリ アではない。例えば 50 余りの国家「経済技術開発区」(Economic & Technological Development Zone)と言う特 別なエリアも存在するが、これらはほとんどが中国商務部が認定しているエリアであり、基本的に「国家ハイテク産 業開発区」とは組織的にも内容的にも異なる。このようなことを区別するために、日本では「国家ハイテク産業開 発区」と言う表記を用いず、その英訳から「国家ハイテク産業開発ゾーン」と言う表記を使う提言もある(張輝「中国 における高成長が続くハイテク産業の現状及び動向(上)」JST 中国総合研究センターマンスリーレポート、2007 年 6 月 20 日)。 3
②国家大学サイエンスパーク
国家大学サイエンスパークは、中国語の「国家大学科技園」(National University Science Park)の訳語である。前述した中関村科技園区は、日本ではしばしば「中関村サイエンス パーク」と称されており、同じく「サイエンスパーク」と称されるが、中関村サイエンス パークと国家大学サイエンスパークとは異なる類型に該当するパークである。
③国家バイオ産業基地
国家バイオ産業基地は、中国語の「国家生物産業基地」(National Biological Industrial Base)の訳語である。国家バイオ産業基地は、後に述べる⑥「国家特色産業基地」と並立 的な概念であり、それぞれが別々の制度である。 ④国家イノベーションパーク 国家イノベーションパークは、中国語の「国家創新園」の訳語である。国家イノベーシ ョンパークは、中国国家中長期科学技術発展規画綱要とそれに沿って策定されたイノベー ション戦略・政策の下で、特定のテーマについて、特定の地域の技術的・産業的な特色を 生かしながら、中央関連官庁と地方政府などが共同で設立し、運営している。 ⑤中外共同運営国家ハイテクパーク 中外共同運営国家ハイテクパークは、中国と海外の関係機関が海外にて、または中国に て共同で設立し運営しているハイテクパークを指す用語である。 ⑥国家特色産業基地 国家特色産業基地は中国語の原語と同様である。国家特色産業基地は、中国「タイマツ 計画」の一環として、中央関係官庁と地方政府の連携強化を通じて、各地域に既存の特色 産業の選択と集中を行い、地域経済の振興に直結させることを目的として設立されたもの である。中国では国家特色産業基地そのものを「国家タイマツ計画○○○○産業基地」と 称するときもある。 ⑦国家ソフトウェアパーク
国家ソフトウェアパークは、中国語の「国家軟件園」(National Software Park)の訳語 である。現在、国家ソフトウェアパークの中には、「国家ソフトウェア産業基地」と称され るパークも存在するが、これは前述した⑥国家特色産業基地に含まれるものではない。ま た、中国では国家ソフトウェアパークそのものを「タイマツ計画ソフトウェア産業基地」 と称するときもある。 ⑧国家インキュベータ 4
中国には「科技孵化器」(技術型インキュベータ)と言う用語がある。これは広義には、 前述した②国家大学サイエンスパークや、後述する⑨国家帰国留学人員創業パーク及び「○ ○高新技術創業服務中心」、「○○孵化器」と名付けられている対象を含む用語である。し かし、前節で述べた調査対象の分け方から、本調査報告書で言う「国家インキュベータ」 とは、原則として前述した②及び後述する⑨を除く、国家級の「○○高新技術創業服務中 心」(○○ハイテク創業サービスセンター)並びに「○○孵化器」と称される対象を指す意 味で用いる。 ⑨国家帰国留学人員創業パーク 国家帰国留学人員創業パークは中国語の「国家留学人員創業園」の訳語である。国家帰 国留学人員創業パークは、中国政府が海外にいる留学人員の帰国を奨励する関連政策の一 つとして、海外のハイテク分野の留学人材による帰国起業と、科学技術成果の転化を促進 させる目的で設立し運営しているものである。 ⑩国家知的財産実証パーク 国家知的財産実証パークは中国語の「国家知識産権試点園区」の訳語である。国家知的 財産実証パークは、中国国家知識産権局により実施される「知的財産実証モデル事業」の 重要な部分である。認定された知的財産実証パークは、国家知識産権局により指定された 実証事業を行い、一定の期間を経て再び審査に合格すれば、「実証パーク」から「モデル建 設パーク」へと昇格するとともに、そこで得られた経験や情報は他のパークなどの参考と して提出される。 ⑪規画 規画は中国語の「規劃」の訳語である。規画は、中央政府や地方政府が策定する中長期 的な構想やプラン、あるいは、政策に用いられる場合が多いが、企業なども中長期的なこ とを言う場合に「遠景規劃」と言うタイトルを用いる。規画に対し「計画」(原語「計劃」) と言う用語があるが、これは直近の具体的な目標や案件について、どのように実施するか と言う点に重点を置く用語である。 ⑫条例 条例は中国語の原語と同様である。しかし、本調査報告書で言う「条例」は特定の地名 が明記されたもの以外、地方ではなく、国家が制定した条例を指す。中国における「条例」 は、日本で言う「地方公共団体がその自治立法権に基づいて制定するもの」に限らない2。 ⑬出身企業 2 張輝「中国対外貿易法について」国際商事法務(Vol.24、No.4)1996、p415。 5
出身企業は中国語の「卒業企業」の訳語である。中国では前述した⑧国家インキュベー タを含む多様なレベルの公的・民間の技術型インキュベータが設けられている。創業のた めに各インキュベータに入居した企業は、自立できるようになり、あるいは、入居期間を 満了して、インキュベータから独立する。出身企業は、一般的に、自立できる状態で独立 した前者の企業を指す。 上記の①~⑩で本報告書が対象とするパークの類型を説明した。各名称が独立または並 立しているような記述であるが、各類型のパーク間の関係が、必ずしも独立または並立に あると言うことを意味するものではないことに留意する必要がある。これらの関係につい ては、第2章第4節で詳しく説明した。 また、本報告書では、中国の政府機関、組織、地方などの固有名詞や、重要な専門用語 などについては、基本的に『中国の科学技術力について』(科学技術振興機構研究開発戦略 センター 中国総合研究センター 中国科学技術力研究会、平成 20 年 12 月)に準拠した。 また、中国語の原語を表記する際、原則として簡体字ではなく繁体字を用いるが、日本語 にない漢字の場合については簡体字を用いて表記する。
第3節 本報告書の基本的構成
本報告書は大きく総論(第2章)、各論(第3~8章)、資料の3部で構成されている。 第1に、「総論」で「中国におけるサイエンスパーク・ハイテクパークの全体像」を描く。 具体的には、まず、中国のサイエンスパーク・ハイテクパークの時代的な背景、それにか かわる基本方針や主要関連政策の制定について述べる。次に、基盤的なパークから多様な サブパークが生まれてきた発展段階や、サイエンスパーク・ハイテクパークの相互関係を 俯瞰し、それぞれの承認機関や主管官庁などを整理する。最後に、関連政策の最新動向や 代表的なサイエンスパーク・ハイテクパークの動きから、今後の動向を探る。 第2に、「各論」として、中国のサイエンスパーク・ハイテクパークの現状について述べ る。記述に当っては、本調査の目的に照らして、①類型ごとのパークの位置づけ(基盤的 あるいは派生的)、②中国科学技術振興への寄与度(相対的な重要性)、③各パークの動向 や将来への影響の大きさ、などの観点から、「主要サイエンスパーク・ハイテクパーク」と 「その他のサイエンスパーク」に大別する。 「主要サイエンスパーク・ハイテクパーク」については、第3章から第7章で、①「国 家ハイテク産業開発区」、②「国家大学サイエンスパーク」、③「国家バイオ産業基地」、④ 「国家イノベーションパーク」、⑤「中外共同運営国家ハイテクパーク」について、その類 型ごとに、概要、関連政策、地域分布と現状、産学官連携、イノベーション及び外資導入 (または国際交流)などの現状を説明する。 続いて、第8章では、「その他の国家サイエンスパーク・ハイテクパーク」の位置づけや 目的とともに、国家特色産業基地、国家ソフトウェアパーク、国家インキュベータ、国家 6帰国留学人員創業パーク、国家知的財産実証パークについて、類型ごとに現状を述べる。 以上の第3~8章における各論では、当該パークが誕生した時代背景や流れ、当該パー クの発展または変遷にかかわる重要政策、当該パークの地域分布、個別制度における近年 の動き、などに重点を置いて記述する。記述に当っては、できる限り正確に、かつ、漏れ がないことに留意したが、今回の調査対象であるパークのすべてについて詳細なデータが 公表されていないため、パークにより情報量が多少異なっている。 最後に、「資料」として、第3章から第7章で説明した主要類型パークの制度ごとの個票 と、その他パークの制度ごとのリストなどを添付した。 本報告書の基本的な構成について、下図に示す。 図 1.2 本報告書の構成 第1 章 調査の 目 的、 ア プ ロ ー チ 及び 報 告 書 の 構 成 第1 章 調査の 目 的、 ア プ ロ ー チ 及び 報告 書の 構 成 第2 章 中国 サ イ エ ン ス パ ー ク ・ ハ イ テ ク パ ー ク の 全 体 像 第2 章 中国 サ イ エ ン ス パ ー ク ・ ハ イ テ ク パ ー ク の 全 体 像 個票 類 個票類 第3章 国家ハイテク産業開発区の現状 第3章 国家ハイテク産業開発区の現状 第4章 国家大学サイエンスパークの現状 第4章 国家大学サイエンスパークの現状 第5章 国家バイオ産業基地の現状 第5章 国家バイオ産業基地の現状 第6章 国家イノベーションパークの現状 第6章 国家イノベーションパークの現状 第7章 中外共同運営国家ハイテクパークの現状 第7章 中外共同運営国家ハイテクパークの現状 第8章 その他国家ハイテクパークの現状 第8章 その他国家ハイテクパークの現状 総論 各論 資料 リス ト リス ト
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図表類・ 政策 類 図表 類・ 政策 類 本報告書で取り上げた、調査対象パーク、関連政策、統計データ、参考文献情報などは、 原則として2008年12月末現在のものとするが、詳細については各情報に明記した。 また、具体的資料として各パークが公開している公式HP、公式パンフレット、外資導 入ガイド、関連イベントで発表された論文集や紹介資料、新聞記事などを利用したが、中 でも公式HPは2008年11月から2009年2月の間に掲載された内容を参考にした。 7第2章 中国ハイテクパーク・サイエンスパークの全体像
本章では、まず、中国のサイエンスパーク・ハイテクパークの時代的な背景と、それに かかわる基本方針や主要関連政策の制定について述べる。次に、基盤的なパークから多様 な関連パークの誕生へ続く発展の過程や、サイエンスパーク・ハイテクパークの相互関係 について俯瞰し、類型ごとのサイエンスパーク・ハイテクパークの承認機関や主管官庁な どを整理する。最後に、関連政策の最新動向や代表的なサイエンスパーク・ハイテクパー クの動きから、今後の動向を探る。第1節 サイエンスパーク・ハイテクパークの設立の時代背景
前章で述べた通り、本報告書の調査対象は、①国家ハイテク産業開発区、②国家大学サ イエンスパーク、③国家バイオ産業基地、④国家イノベーションパーク、⑤中外共同運営 国家ハイテクパーク、⑥国家特色産業基地、⑦国家ソフトウェアパーク、⑧国家インキュ ベータ、⑨国家帰国留学人員創業パーク、⑩国家知的財産実証パークである。この中で、 ③国家バイオ産業基地、⑨国家帰国留学人員創業パーク、⑩国家知的財産実証パークを除 けば、いずれのパークも中国「タイマツ計画」(次節参照)に盛り込まれた内容の具現化と して誕生し、関連政策の策定や施行によって発展したものである。 1987年、国家級ではないが、中国初のインキュベータが武漢で誕生し、その後の発 展により「第1次国家インキュベータ」に認定された。また、1991年に「第1次国家 ハイテク産業開発区」が承認され、1995年には「第1次国家特色産業基地」及び「第 1次国家ソフトウェアパーク」が誕生した。その後、2000年に「第1次国家帰国留学 人員創業パーク」、2001年に「第1次国家大学サイエンスパーク」、2005年に「第 1次国家バイオ産業基地」と「第1次国家知的財産実証パーク」が認定された。更に、2 006年に中国初の国家イノベーションパークとなる「国家バイオ医薬国際イノベーショ ンパーク」の建設が始動した。 それぞれのパークが認定・誕生した背景として、さまざまな法律や法規、また、多岐に わたる政策などの環境の整備が進んだことが挙げられる。また、経済発展、産業構造調整、 将来構想などが発展を推進してきたと見られる。法的環境については次節で、また、制度 ごとのパークにかかわる関連政策については次章以降の各章で述べるが、まず、サイエン スパーク・ハイテクパークが初めて設立された前後の歴史的な背景を以下に取りまとめた。 中国では1978年に「改革・開放」政策が策定され、それまでの「政治闘争」の時代 から「経済再建」の時代に入った。1980年代前半以降は経済再建において科学技術を 重視すると言う「科技重視」の考え方が台頭し、外国からの技術導入策が検討・実施され 始めた。続いて「科技重視」の一環として、1980年代後半からは、「科技立法」(科学 技術関連の立法)が活発に展開された。1990年代前半にはその科学技術「立法」から 8科学技術「戦略」の策定が検討され、「中国科学技術発展綱要」を中心とする関連の国家規 画が策定された。そして、1990年代後半には「科教興国」(科学技術と教育による国の 振興)と言う新たな国策が策定された。 一方、1984年の初め、中国「改革・開放」国策の提唱者となる鄧小平が深セン、珠 海、厦門の「経済特区」を視察し、春には大連など14の沿海都市が「対外開放都市」に 指定された3。更に、海南島を加えた後、珠江デルタ、長江デルタなどが「開放地帯」とし て認定された。 これにより「経済特区」や「開放地帯」は、国内のみならず外国に対しても開放され、外 資導入への道が開かれることとなり、また、中央政府はこれらの開放都市に優遇措置を適 用することを決定した。これらの市場開放は、商業のみならず工場誘致に広く門戸を広げ、 これに伴って工業生産が拡大し、1985年以降、軽工業、消費財部門が中国工業化を牽 引した。その結果、従来、国営企業が中心となって進めてきたエネルギー、運輸、基礎素 材などの産業部門が低迷し、産業のアンバランスが顕在化してきた。 このような状況下で、中国経済の持続的な発展を追求するためには何が不可欠か、大学 や研究機関の役割と成果の創出や活用にはどのようなシステムが構築されるべきか、中長 期的に必要な産業構造の調整に資するためにはどのような産業を育てるべきか、といった 課題に対応するため、1988年8月に、次節で述べる中国「タイマツ計画」が策定・公 表され、中国における「ハイテク産業の育成と振興」が本格的に始動した。 ここで、「ハイテク産業」と明言された形ではないが、「科学技術による産業の振興」は、 長期にわたって中国政府が繰り返し強調してきた基本的な方針の一つである4。 1950年代の半ば頃から、中国共産党は「科学技術の世界水準に追いつき、追い越せ」 と言うスローガンをかかげ、「十五年科学計画」を策定し、科学研究の発展に向けて総力を 挙げてきた。また、新しい技術革命の波が起こり始めた1960年代初めには、「中国の工 業発展に関する決定」を公布し、電子工業などの「新興工業」の発展を速めるよう指示し た。その後、1970年代にいわゆる「四人組」が失脚した後には、工業、農業、科学技 術、国防の「四つの近代化」が改めて唱えられ、中でも科学技術の近代化が「四つの近代 化」の鍵であると見なされた。 更に、1988年に公表されたタイマツ計画において、中国におけるハイテク産業の育 成や振興の本格化が提起され、同計画の下、1991年に第1次国家ハイテク産業開発区 が認定された。これを皮切りに、国家級のサイエンスパーク・ハイテクパークが次々と設 立されることになった。 3 14 の対外開放都市とは、大連、秦皇島、天津、煙台、青島、連雲港、南通、広州、上海、寧波、温州、福州、湛 江、北海である。 4 呉敬璉(中国社会科学院大学院教授、国務院発展研究センター研究員)「技術よりも制度を重視するわが国の ハイテク産業の発展について」中国の産業と企業(2001 年 8 月 6 日)。 9
第2節 基本方針や主要関連政策の制定、変遷
本節では、まず、各サイエンスパーク・ハイテクパークの誕生に関する法的環境につい て述べ、次に本報告書の調査対象である多くのパークの政策的根拠となる、タイマツ計画 をはじめとする、主な関連政策を説明する。最後に、各サイエンスパーク・ハイテクパー クに広くかかわると見られる、その他の関連政策についても述べることにする。 第1項 サイエンスパーク・ハイテクパークの誕生に関する法的環境 本報告書の調査対象であるサイエンスパーク・ハイテクパークの誕生の背景の一つとし て、関連する法的環境が整備され、維持されてきたことが挙げられる。しばしば「政策優 先」や「人治国家」と言われる中国では、前節で述べたように、「科技重視」(科学技術を 重視する)の一環として、1980年代後半以降「科技立法」(科学技術関連の立法)が活 発に行われ、また、イノベーションシステムの改革も始まった。このような科学技術関連 の立法、及びイノベーションシステムの改革に関連した政策が、各サイエンスパーク・ハ イテクパークの誕生及び発展におけるマクロ的な法的環境となった。 中国では1980年代半ばまで、企業、大学、公的研究所においてそれぞれ独立した形 態でのイノベーションシステムが採られていた。しかし、1985年に「科学技術体制の 改革に関する決定」(中国国務院)が発表され、従来のイノベーションシステムの改革が始 動した。この改革は、①政策イノベーションとキャッチアップ・ステージ(1985~1992 年)、 ②技術イノベーション・ステージ(1992~1998 年)、及び③知的財産を重視する国家イノ ベーション・ステージ(1998 年以降)の3つの段階を経て進められた5。 第1段階の「政策イノベーションとキャッチアップ・ステージ」では、従来の計画経済 体制下の制度改革が行われた。1985年に「科学技術体制の改革に関する決定」が発表 され、科学技術体制、とりわけイノベーションシステムにおけるさまざまな問題を解消す るための制度改革6や、国家重点計画が打ち出された。また、科学技術と産業の連携につい て、技術市場を形成する上で不可欠な基盤となる「特許法」や「技術契約法」が制定され、 市場のイノベーション促進策として、国家ハイテク産業開発区の建設や、技術交流及び技 術コンサルティングを業務とする民間技術型ベンチャーの設立が奨励されるようになった。 5 本項の作成に当たって、以下の文献を参考にした。董潔・朱茜「論高校在国家創新体系中的地位和作用」中 国科技論文在線(2005 年)、元橋一之「中国のイノベーションシステム改革と産業競争力の展望」海外投融資 (2004 年、 No.11)、張輝「中国・日本・美国三国科学技術政策及法制動態的比較研究」科学学与科学技術管 理(1993 年、No.1)。中国の計画経済の体制下におけるイノベーションシステムは、企業、大学、中国科学院を 中心とする公的研究所が独立した形態をとっていた。国有企業は計画経済に基づく生産に従事し、大学は教育 機関であり、また、公的研究所は科学技術研究を行うための機関と言うように、そのミッションは明確に定義され、 それぞれが分断された構造となっていた。 6 例えば、公的研究機関は、基礎研究、応用技術開発、社会公益的研究や農業研究を行う3つの機関に分類さ れ、基金制による一定額の補助や事業費の縮小、一定期間後の活動停止等厳しい方針が打ち出された。 10第2段階の「技術イノベーション・ステージ」は、鄧小平による「南巡講話」によって 市場経済改革路線がより明確に示された1992年に始まり、1998年まで実施された 改革である。ここでの重要施策の一つに、産業技術にかかわる分野の開放と市場経済下で の「ハイテク産業の育成の本格化」が挙げられる。これは、本報告書でも指摘しているよ うに、市場経済への移行を目指した経済改革の動きとも相まって大きな成果をあげた。ま た、この段階で、公的研究機関や大学における技術をベースとした企業のスピンアウトな ど、前述した大学発技術型ベンチャーの設立が促進された。 市場経済化におけるこれらのイノベーション改革の動きを受けた1998年以降の第3 段階「国家イノベーション・ステージ」は、前述した「科教興国」を前面に打ち出し、国 全体としてのイノベーションシステムの構築が図られた時期である。「科学技術進歩法」や 「科学技術成果転化促進法」などによって、産学官連携に関する制度整備が幅広く行われ た。この段階において、中国におけるイノベーションを担う主体が公的研究機関から企業 へと大きくシフトすると同時に、サイエンスパーク・ハイテクパークの建設に必要な法的 環境が整備されることとなった。 表 2.1 サイエンスパーク・ハイテクパークに資する主な政策等 No 制定時期 名称 性格 発効機関 1 1984年 特許法 法律 全人代 2 1985年 技術移転に関する暫定的規定 法規 国務院 3 1985年 科学技術体制の改革に関する決定 政策 国務院 4 1987年 技術契約法 法律 全人代 5 1988年 科学技術者の兼業に関する意見 政策 科学技術委員会 6 1988年 科学技術体制改革の深化に関する決定 政策 国務院 7 1988年 タイマツ計画 政策 国務院 8 1993年 科学技術進歩法 法律 全人代 9 1996年 科学技術成果転化促進法 法律 全人代 10 1999年 科学技術型中小企業技術創新基金 政策 国務院 出典:張輝、JETRO 等主催セミナー講演レジュメより(2004 年 4 月 20 日) 11
第2項 主要関連政策 (1)中国「タイマツ計画」関連 本報告書の調査対象である10種のサイエンスパーク・ハイテクパークの中で、国家バ イオ産業基地、国家帰国留学人員創業パーク、知的財産実証パーク以外のすべてが、中国 「タイマツ計画」にかかわり設立されたものである。中国「タイマツ計画」が策定された 背景については既に前節で述べたが、ここではその目的、位置づけ、内容、実施機関を中 心に説明する。 中国「タイマツ計画」は、下表に示すように、中国における主なハイテク研究開発及び 商品化・産業化の促進に関する一連の計画の中で誕生した経緯を持つ。 表 2.2 中国における主なハイテク研究開発及び商品化・産業化促進計画 名 称 国家科技 攻関計画 星火計画 国家高科技 研究発展計画 火炬(タイマツ) 計画 国家重点基礎 研究発展計画 開 始 1982年 1985年 1986年 (別称863計画) 1988年 1997年 (別称973計画) 趣 旨 国民経済や社会 の 発 展 を 方 向 付 け る キ ー テ ク ノ ロ ジーについて、産 業 技 術 の レ ベ ル アップを図る 科学技術を通じた 農村経済の工業 化・現代化、郷鎮 企 業 の 発 展 、 及 び農民生活水準 の向上を目指す 中国の現状に照ら し、主として経済社 会に影響が大きい と 設 定 さ れ る 技 術 分 野 に 重 点 を 置 き、経済・社会の発 展に資する 改革開放の全体 方針を貫徹し、市 場 の ニ ー ズ に 基 づいてハイテク成 果の商品化、ハイ テ ク 商 品 の 産 業 化、ハイテク産業 の 国 際 化 を 進 め る 国家戦略に関係 し、経済社会の発 展 に 重 大 な 影 響 を及ぼすような重 要課題で、世界レ ベ ル で 基 礎 研 究 を行う 主 要 分 野 農業、情報技術、 資源・環境、材料 農産物の生産力 強化、建材、食品 の付加価値加工 等 生 物 、 航 空 宇 宙 、 情 報 技 術 、 材 料 、 自動化 電 子 、 IT 、 バ イ オ、医薬、素材、 製造、航空宇宙、 海洋、核応用、省 エネ、環境保護、 農業等 農業、情報技術、 環境資源、人口と 健康、材料 出典:津上俊哉「“カエル跳び”できない中国のハイテク」(デジタルコラム、2002 年) 中国「タイマツ計画」は、中国のハイテク産業を発展させるための指導的計画である。 1988 年8月、国務院に認可され、科学技術部により実施された。同計画の目的は「科 教興国」(科学と教育による国家の振興)の発展戦略の遂行、改革開放の方針の徹底の他、 中国の科学技術の優位性と潜在力を十分に発揮し、市場ニーズに応じて、ハイテク成果の 商品化、ハイテク商品の産業化、及びハイテク産業の国際化を促進することである。 タイマツ計画の内容としては、①ハイテク産業の発展に必要な環境作り、②国家ハイテ 12
ク産業開発区及びハイテク創業サービスセンターの設立、③タイマツ計画プロジェクトの 企画や推進、④国際協力の強化とハイテク産業の国際化の推進、⑤ハイテク産業の振興に 必要な人材の育成や誘致、などが挙げられる。 ①に関する具体的な施策として、(イ) 広範囲にタイマツ計画の宣伝キャンペーンを行うこ と、(ロ) ハイテク産業の発展に対応し関連政策、法律、規制を立案すること、(ハ) 良好な支 援環境を整備しハイテク産業発展に適応する管理システムと運営メカニズムを確立するこ と、(ニ) 融資ルートを拡大させ投資リスクのメカニズムを確立すること、(ホ) 国内外の情報 ルートを拡大し情報ネットワークを設立すること、(ヘ) 現実に基づいた中長期の発展計画と 実施計画を作成すること、などが含まれる。 ②で言う「ハイテク産業開発区」はタイマツ計画の重要な構成要素であり、改革開放と 社会主義市場経済の発展の必然的な結果でもある。同開発区は、知識の集積と開放的な環 境条件の下で、主に中国の科学技術と経済力に基づき、環境の部分的な改良を通じ、科学 技術の研究成果を最大限に生産力に転換することを目的とし、国内と海外市場に向けて中 国のハイテク産業を集中的に発展させる地域である。 一方、「ハイテク創業サービスセンター」は、外国のインキュベータ開発の経験を参考に し、中国の実情を考慮して設立された、新しい社会公益型の科学技術サービス機関である。 ハイテク企業の育成及びハイテク企業の設立に総合的なサービスを提供することを目的と する。 ③もタイマツ計画の重要な構成部分であり、計画のスタートポイントでもある。タイマ ツ計画プロジェクトは、国内外の市場ニーズに応じ、国、地方、各業界の「科学技術攻関 計画」、ハイテク研究開発計画、及びその他の研究成果に基づいて、ハイテク製品が発展し 産業化されることを目標にしている。先端的なレベルや国内外の市場の大きさ、経済効果 が期待されるハイテクプロジェクトを選び、タイマツ計画プロジェクトとして実行するこ とにより、ハイテク企業または企業グループを形成することを目指している。 ④で言う国際協力の強化とハイテク産業の国際化の促進とは、タイマツ計画の主要な内 容であり、ハイテク製品の国際市場への進出とハイテク産業の国際化の推進を助成するた めに、平等と相互受益の上に政府と民間のルートを通して、各国・地域との広範囲の協力 を確立し、技術、金融、企業、商業などの各業界との交流を積極的に行うことである。 ⑤の「人材の育成や誘致」はハイテク産業の発展の鍵であり、ハイテク成果の商品化、 ハイテク商品の産業化、ハイテク産業の国際化を保障するものである。多数の有能な管理 経営人材の育成は、タイマツ計画の成否にかかわる重要なものである。これらの人材は技 術者であり、常に競争心を持ち、創造性に優れた開拓型であるとされている。 中国「タイマツ計画」の実施機関は、中国科学技術部に直轄される事業法人「中国科学 技術部タイマツハイテク産業開発センター」(以下、「中国タイマツセンター」と呼ぶ)で ある。その組織図は下図の通りである。 13
図 2.1 中国タイマツハイテク産業開発センターの組織図7 計画財務処 計画財務処 政策調査研究処 政策調査研究処 ハイテク産業開発区管理処 ハイテク産業開発区管理処 事務局 事務局 インキュベータ管理処 インキュベータ管理処 技術市場管理処 技術市場管理処 生産力促進処 生産力促進処 ソフトウェア産業管理処 ソフトウェア産業管理処 国際協力処 国際協力処 成果普及処 成果普及処 技術情報処 技術情報処 統計処 統計処 プロジェクト組織化処 プロジェクト組織化処 受理処 受理処 審査処 審査処 監査処 監査処 金融発展処 金融発展処 研修処 研修処 タイマツハイテク 産業開発センター タイマツハイテク 産業開発センター 科学技術部 科学技術部 出典:中国科学技術部HP(2008 年 12 月)を基に技術経営創研が作成 7 中国における官庁及びその関連組織は、基本的に、部、司、処、科、組と言う順序で設けられている。中国語の 「科」は日本語で「課」に訳されることが多い。 14
中国タイマツセンターは、中国「タイマツ計画」の具現化に必要な環境整備、組織化、 実施推進、政策立案、指導などを任務とする機関で、国家ハイテク産業開発区にとどまら ず、国家特色産業基地や国家技術型ベンチャーインキュベータなどの認定や、ハイテク製 品目録の原案策定なども行っており、中国におけるハイテク産業の主要推進機関に位置づ けられている。 「タイマツ計画」が策定・公表されてから、本報告書で説明する国家ハイテク産業開発 区、国家大学サイエンスパーク、国家インキュベータ、国家ソフトウェアパークなどに関 する個別の政策も策定されてきたが、これらについては後掲の関連章節で述べる。 中国タイマツセンターの近年の活動としては、2008年8月に中国国家中長期科学技 術発展規画綱要の方針に沿って、「国家ハイテク産業化及び環境整備(タイマツ)に関する 第11次5カ年発展綱要」及び「国家ハイテク産業開発区に関する第11次5カ年発展規 画綱要」を策定した。 (2)中国「タイマツ計画」以外の関連政策 タイマツ計画以外の関連政策としては、①国家バイオ産業基地に関連する中国バイオ産 業政策として、中国初の「国家バイオ産業発展5カ年計画」、②国家帰国留学人員創業パー クに関連する中国留学生政策として、「中国帰国留学生による技術型ベンチャーの創業支援 策」、③国家知的財産実証パークに関連する中国知的財産政策として、中国初の「国家知的 財産戦略綱要」、などが挙げられる。これらの政策については、後掲の関連章節に記述する。 第3項 その他の関連政策 本項では、多様なサイエンスパーク・ハイテクパークの中でも、特に国家ハイテク産業 開発区やソフトウェアパークにおける外資優遇政策や、国家大学サイエンスパーク、国家 インキュベータ、国家帰国留学人員創業パークで起業する技術型ベンチャーに深く関係す る支援策について述べることにする。 まず、国家ハイテク産業開発区やソフトウェアパークの発展に貢献する外資系企業に対 する優遇税制についてであるが、国の関係法規によって定められる部分(次頁の表参照) と地方条例もしくは事業によって与えられる特恵の部分で構成されている。 2007年3月に開かれた全国人民代表大会(日本の国会に相当)において、外資優遇 税制を撤廃する「企業所得税(法人税)法案」が採択された。これは、2008年1月に 国内企業と外資系企業の税率を25%に一本化した上で、内外資を問わずハイテク化や環 境保護に貢献する企業を優遇しようとする内容である。いわゆる2免3減(利益が出た年 から2年は免税、その後3年は5割の減税)優遇策も、段階的に廃止される。 しかし、ハイテク企業に対しては、5年間の経過措置が設けられるなど、税制優遇策が 引き続き与えられる。このことは、中国政府が、産業政策、財政・税制面での政策実施を 15
通し、外資系企業に技術研究開発を促し、知的財産権の現地化を推進させると言う狙いが あるものと考えられる8。 表 2.3 国の関係法規によって定められる外資優遇政策 優遇措置 対象条件 内 容 ハイテク企業 15%で2年免税3年半減 企業所得税 先進技術企業 15%または24%で2年免税3年半減後、更に、3 年間半免の延長あり 地方所得税 - 免税 ハイテク企業 総投資額にかかわらず免税(「国家高新技術産品目録」 にある品目を生産する場合) 関税 先進技術企業 更新用の設備・部品・備品を自己資金で輸入する場合 に免税 付加価値税 (増値税9) ハイテク企業 付加価値税の輸出還付率が税率以下の場合、全額 (17%)還付(「国家高新技術輸出産品目録」にある 品目を生産、輸出する場合) 出典:法律事務所ホームロイヤーズ(2001 年) 次に、中国における創業支援の関連政策は、国家インキュベータや国家帰国留学人員創 業パークに入居する技術型ベンチャーに深く関わるが、整備が比較的遅れていると指摘さ れていた。しかしながら、2005年11月14日、中国「創業投資企業管理暫定弁法」(ベ ンチャーキャピタルに関する暫定的規定)が中国国務院の承認を経て公布され、以後、着 実に整備が進んでいる。この規定は国家発展改革委員会など10の国家機関が合同で制定 したものであり、これによりベンチャーキャピタルは法的な保護を受けることになった。 発展改革委員会の責任者によると、「弁法」は、ベンチャーキャピタルの設立について、 次の点を規定している。 第1に、投資家の数や投資家1人当たりの投資額を規定し、ベンチャーキャピタルの私 募による資金調達活動に対して法的根拠を与えている。第2に、ベンチャーキャピタル会 社が投資管理顧問をマネジャーに任命し、投資管理顧問に投資管理業務を委託することを 認め、委託管理に必要な法的保護を提供している。第3に、ベンチャーキャピタルの資本 8 例えば、2008 年 4 月 22 日、中国商務部が発表した「2008 年全国外商招致業務指導意見」はまさにこの姿勢を 示す一例である。尚、中国の税制一般についての参考文献として、近藤義雄「中国の税制改革について」第 2 回 中国研究会資料 http://www.mof.go.jp/jouhou/soken/kouryu/h16/chu16_02b.pdf (財務省、平成 17 年 2 月 18 日)。
9 増値税は、一般的に付加価値税/VAT(Value Added Tax)と言われ、中国で商品を購入した際に支払う税金で ある。増値税は、最終製品が中国から輸出される際に還付の対象になる場合がある。参考文献の一例として、近 藤敏「外資系企業と中国の税制(中国の増値税についての一考察)」金属資源レポート(2006 年 3 月)p127~ 131。
金調達を一部猶予している。例えば、資本金3000万元以上の会社を設立する場合、設 立当初の調達額は1000万元とし、残りは設立後の5年以内に用意すればよい。 また、同弁法はベンチャーキャピタルの運営についても具体的に規定している。 これについて、2007年12月26日、中国科学技術部副部長(副大臣)の呉忠沢は 「中国の資本市場におけるハイテク産業並びに中小企業の刷新などは夢のまた夢だ。これ はベンチャー投資についても同じことが言える」と指摘し、「この5年、中国のハイテク産 業は年平均27%の急成長を続け、総生産額は製造業の16%を占めている。しかし、中 国の資本市場はまだ規模が小さく、多層的な資本市場もいまだ形成されていない」と問題 提起した。 更に、同氏は「ハイテク産業の発展を妨げている中国における資本市場の不完全性は、 次の5点に集約される」との見解を示した10。 これらは、①上場の条件が過度に厳しく、中小企業にとって資金調達に際してのプレッ シャーが大きすぎること、②株式譲渡のシステムが整っていないため、市場ニーズが市場 に正しく反映されないこと、③財産権取引市場におけるリソースの統合が健全化されてい ないため、市場の発達がアンバランスになっていること、④債券市場の発展が株式市場よ りも立ち遅れており、企業の債券発行規模が小さいこと、⑤新興市場が形成されておらず、 ベンチャー投資の発展が資本市場の制約を受けていることである。 このような問題の解決に資する対策の一つとして、前述したように、中国国務院の承認 によって、1999年に設立された「科学技術型中小企業技術創新基金」(科学技術型中小 企業イノベーション基金)が、資金の無償提供や融資利息への補助などの支援を行ってい る。 例えば、重要プロジェクトの場合、200万元を越えない範囲での資金の無償提供や、 融資の利息に対する支払い補助、また、登記資本の20%を超えない範囲での資本金の出 資などを通じて、技術開発型中小企業のイノベーション活動を支援している。これは技術 成果の商品化、ハイテク商品の産業化、特色のある中小企業の育成を加速化するとともに、 中国における産業構造の調整、内需の拡大、新たな雇用機会の創出などに資するものであ る。同基金の2003年の実施状況は合計1197 件、6億6382万元で、支援した技 術分野は下表に示す通りである。 10 新華網「中国資本市場、ハイテク産業の発展を阻害 」2007 年 12 月 26 日。 17
表 2.4 科学技術型中小企業技術創新基金の実施状況(2003年) 支援した技術分野 電子・情報 456件 2億3,960万元 36.1% バイオ・医薬 208件 1億2,580万元 19.0% 新材料 172件 9,915万元 14.9% 光機電の一体化 199件 1億772万元 16.2% 資源・環境 98件 5,710万元 8.6% 新エネ・省エネ 63件 3,395万元 5.1% その他 1件 50万元 0.1% 合 計 1,197件 6億6,382万元 出典:中国タイマツハイテク産業開発センター 2007年7月5日、北京にて、中国国家発展改革委員会の高官である王黎明は、「中小 企業は既に中国の技術革新の主体となった」と明言した。中国の中小企業は4200万社 に上り、企業総数の99%以上を占め、宇宙航空、新型バイオ製薬、遺伝子プロジェクト、 電子通信などの分野で自主開発による多くの技術・ノウハウを持ち、太陽エネルギー、節 水型の灌漑、海水淡水化などの環境保護分野でも技術革新の成果を挙げていると述べた。 また、今後、中国は、「中小企業促進法」などの法律を一層整備し、中小企業の発展に有利 な財政、税収、金融政策を検討し、中小企業の資金問題を解決することにより、それらの 企業の健全な発展を促進することに力を入れていきたいと述べた。このことは、本報告書 の調査対象である多様なパークに立地する中小企業にとって、重要な考えである11。
第3節 基盤的なパークから多様な関連パーク等の誕生への発展
中国における国家級のサイエンスパーク・ハイテクパークの設立は、各地での国家ハイ テク産業開発区の設置によって始まった。その後、前述した政策の下に、地域的な優位性 を生かしながら、国家ハイテク産業開発区の地域内、あるいは、地域を別にしても密接な 関係を持ちながら、国家ハイテク産業開発区と言う基盤的なパークから多様なサブパーク または関連パークへと発展してきた。 中国政府は「改革・開放」策を打ち出してから、深センや珠海などを「経済特区」に指 定し、従来の計画経済の体制下では不可能であったさまざまな実験を行った。そして、そ こで成功した経験を他の地域へと広げていくことにより、経済発展が点から線、線から面 へと漸進的に拡大していった。設立の目的や取り組む分野などは異なるが、中国における 国家級のサイエンスパーク・ハイテクパークの設立、拡大、発展の経緯にも同様の形態が 11 中国国際放送局日本語部「中小企業、中国の技術革新の主体に」(2007 年 7 月 5 日)。 18見られる。 後述するように、これらパークは、必ずしも同一の政府機関により認定または承認され 運営されているとは限らない、と言う点に留意が必要である。 表 2.5 サイエンスパーク・ハイテクパークの誕生時期 時期 名称 備考 1991年 国家ハイテク産業開発区 1995年 国家特色産業基地 1995年 国家ソフトウェアパーク 1999年 国家インキュベータ 2000年 国家帰国留学人員創業パーク 認定方法は非公開 2001年 国家大学サイエンスパーク 2005年 国家バイオ産業基地 認定方法は非公開 2005年 国家知的財産実証パーク 2006年 国家イノベーションパーク 特定の制度はない 出典:現地情報をもとに技術経営創研が作成(2008 年 12 月) ここで言う多様なサブパークとしては、まず、国家ハイテク産業開発区自身がサブパー ク化して作られたものがある。国家ハイテク産業開発区のほとんどは、その中に「子園」(サ ブパーク)を設けている。例えば、情報産業サブパーク、バイオ製薬サブパーク、研究開 発サブパーク、生産販売サブパークといった名称であり、あるいは、「子園」と明記がなく ても実質的にそのように設置されている。一方、多様な関連パークは、異なる認定機関に より新たに設立されたパークである。例えば、国家発展改革委員会の認定を得て設立され た国家バイオ産業基地、国家人事部などの認定により設立された国家帰国留学人員創業パ ーク、国家知識産権局により認定された国家知的財産実証パークなどである。 国家ハイテク産業開発区によっては、無錫国家ハイテク産業開発区のように、設立され た後、中国科学技術部の認定手続や地方政府のルールに従って、その面積が拡大されたも のも存在する。このような場合、現地では「無錫国家ハイテク産業開発区」の外に「無錫 新区」と言う表現が用いられる場合も多い。また、拡大の方法は、同一の地域を原点とし た拡大と、上海張江国家ハイテク産業開発区のように、張江地域と直接繋がっていない異 なる地域に新たに設けられると言う事例も実在する12。 下表に、2008 年 12 月現在で確認された類型別のパーク数を取りまとめた。基盤的なパ ークと関連パークとの関係で見れば、例えば、次章から説明するように、国家ソフトウェ アパークのほとんどが国家ハイテク産業開発区の中に設けられており、国家知的財産実証 12 本報告書の調査対象である 10 種のサイエンスパーク・ハイテクパークの具体的な構成や面積、または立地につ いては、把握した範囲内での参考情報として、後掲資料に取りまとめた。 19
パークの多くは国家ハイテク産業開発区そのものである。他方、国家特色産業基地と国家 インキュベータは国家ハイテク産業開発区の外に設けられるケースが多い。 表 2.6 中国におけるサイエンスパーク・ハイテクパークの類型 No 名称 基地数 資料参照先 1 国家ハイテク産業開発区 54 2 国家大学サイエンスパーク 62 3 国家バイオ産業基地 22 4 国家イノベーションパーク 3 個表 5 中外共同運営国家ハイテクパーク 7 - 6 国家特色産業基地 172 7 国家ソフトウェアパーク 29 8 国家インキュベータ 198 9 国家帰国留学人員創業パーク 21 10 国家知的財産実証パーク 27 リスト 出典:現地情報をもとに技術経営創研が作成(2008 年 12 月)
第4節 サイエンスパーク・ハイテクパークの主管官庁・機関
中国における国家サイエンスパーク・ハイテクパークは、中国国務院の承認を得て設立 されるケースと、該当中央官庁または複数の中央官庁の認定を受けて設立されるケースと がある。しかし、その後の運営、または各パークの具体的な事業内容の取り組みによって 関連する機関が替わる場合もあり、また、中央レベルと地方レベルの共同推進によって展 開されるパークも少なくない。これらの結果、個々のサイエンスパーク・ハイテクパーク に対して複数の機関が関係したり、互いの関係が錯綜することも少なくない。 例えば、54カ所の国家ハイテク産業開発区の中の一つである「武漢東湖新技術開発区」 (Wuhan East Lake Hi-Tech Development Zone)は、1991年3月、中国国務院の承 認を受けて第1次国家ハイテク産業開発区のグループに入った。その後、2000年7月 に中国科学技術部、外交部の認定により「APECオープンハイテク産業パーク」、200 1年7月に国家計画委員会(現国家発展改革委員会13)の認定により中国唯一の「国家光電 子産業基地」、2007年4月に国家発展改革委員会の認定により「国家バイオ産業基地」 となった。更に、2007年11月には、本報告書の調査対象ではないが、国家標準化管 13 国家発展改革委員会は、中国国務院体制改革弁公室の機能と、前国家経済貿易委員会の一部機能を吸収し た前国家発展計画委員会をもとに、2003 年 5 月 6 日に正式にスタートした国家級のマクロ統制を行う行政機関で ある。経済・社会発展政策を総合的に研究・制定し、全体のバランスを保ち、経済全体の体制改革を指導するマ クロコントロール部門に当たる。 20理委員会14の指定により「国家ハイテク産業標準化モデルゾーン」となった。また、前述し たように、中国初と言われるインキュベータも武漢国家ハイテク産業開発区の中に設けら れている。 このような状況から、武漢東湖新技術開発区は、他の国家ハイテク産業開発区と同様に、 基本的には中国タイマツハイテク産業開発センターが主管・指導しているが、日常的な運 営は武漢市政府が行っている。その一方で、サブパークの多様な事業内容にかかわる他の 関連機関とも多層的な関係を持つようになった。特に、ソフトウェアを含む情報産業、バ イオ産業、現代農業、資源産業といった特定分野に重点を置いた国家ハイテク産業開発区 は、中国工業・情報化部、中国国家発展改革委員会、中国農業部、中国衛生部、及びそれ らに所轄される関連研究機関などとも多様な関係を持っている(詳細は次章からの説明や 後掲資料・個票を参照)15。 以上のように、中国におけるハイテク産業の育成、集積、発展と言う中長期的な目標の 実現に向けて、「国家科学技術委員会」の時代から策定された中国「タイマツ計画」の継続 的な具現化が進められている。特に国家ハイテク産業開発区や国家インキュベータなどの 事業推進や発展に当たっては、現在も中国科学技術部が中心となっている。中国科学技術 部に所管される事業法人であるタイマツハイテク産業開発センターが、「発展高科技、実現 産業化」(ハイテクを発展し、産業化を実現する)と言う重大な任務を実現するために、「国 家目標、地方組織、市場導向」(国家の目標を立案し、市場ニーズを満たすように推進する 方向で、地域が主体的に実施する)と言う方針の下に、時には国家大学サイエンスパーク に関する共同認定など、関連官庁の所管機関と共同で、特定分野の具体的な政策の立案や 運営の指導業務を行っている場合が多い。 一方、国家発展改革委員会は、中国におけるハイテク産業全般を視野に、マクロ面での 計画や政策の立案に取り組んでおり、国家バイオ産業基地のように自らが認定や承認を行 う場合もある16。本報告書の調査対象である10種のサイエンスパーク・ハイテクパーク及 びそれらの下の多種多様なサブパークの関係は、非常に複雑であり、制度面から見た主管 機関と運営面で見た主管機関とは、必ずしも完全に一致しているとは言えない。 14 国家標準化管理委員会は 2001 年 10 月 11 日北京で創立された。その記念式典にて呉儀・国務委員(中共中 央政治局候補委員)が国務院を代表してスピーチを行い、「わが国の製品の中には、レベルや品質が悪く、競争 力が弱いと言う問題を抱える製品が存在する。問題の決定的な原因の一つは、基準そのものの低さである。品質 を改善するためには、まず、基準を高く設定しなければならない。高い基準がなければ、良質の製品は生産でき ない」と強調した。 15 また、中国における 54 の国家ハイテク産業開発区の中で、唯一農業に重点を置いている「楊凌農業ハイテク産 業モデルパーク」はその事業内容の多様性から、例えば、中国科学技術部、中国商務部、中国教育部、中国建 設部、中国農業部、中国水利部、中国国家環境保全総局、中国国家林業局、中国国家知識産権局等と多様な 関係を持つ。 16 このことについて、マクロ政策の策定機関が自ら何かの基地について認定を行うことが果たして適切なことと言 えるかとの意見も一部にある。 21
表 2.7 サイエンスパーク・ハイテクパークの認定機関 No 名称 認定機関 備考 1 国家ハイテク産業開発区 科学技術部 2 国家大学サイエンスパーク 科学技術部、教育部 共同認定 3 国家バイオ産業基地 国家発展改革委員会 4 国家イノベーションパーク パークごとに中央官庁と地 方政府の共同建設 5 中外共同運営国家ハイテクパーク 2カ国協定等 6 国家特色産業基地 科学技術部 7 国家ソフトウェアパーク 科学技術部 工業・情報産業部も類似 の制度があり 8 国家インキュベータ 科学技術部 9 国家帰国留学人員創業パーク 科 学 技 術 部 、 教 育 部 、 人 事 部 、 外 国 専 門家局 共同認定 10 国家知的財産実証パーク 国家知識産権局 出典:現地情報をもとに技術経営創研が作成(2008 年 12 月) 上記の「国家バイオ産業基地」と「国家特色産業基地」については、それぞれ国家発展 改革委員会と中国科学技術部が認定するとされているが、具体的な認定規則などは現在公 開されていない。また、「国家イノベーションパーク」の設立については、何らかの決まっ た手続きに沿って認定されるのではなく、時の関連政策に沿って、中央官庁と各地の政府 などが、現地の事情に応じて個別に設立を進めている。 具体的には、中国科学技術部と天津市政府が「国家バイオ医薬イノベーションパーク」 を、中国科学技術部、中国工業・情報化部、中国商務部、山東省政府が「国家情報通信国 際イノベーションパーク」を、中国科学技術部、中国商務部、江蘇省政府の支持の下で、 中国科学院と江蘇省科学技術庁が「国家ナノテク国際イノベーションパーク」を、それぞ れ共同で建設している。