揮発性有機化合物(VOC)排出量と 光化学オキシダント生成の関係について
東京都環境科学研究所 分析研究科
星 純也
本研究の目的
光化学オキシダント対策として 実施してきたVOC排出削減の効果を
検証していく
本日の講演内容
VOCと光化学オキシダントについて
VOC対策の目標
東京都のVOC対策
VOC排出量と注意報発令日数の推移
効果検証のための解析
平均濃度と最高濃度
オキシダント積算値とVOC排出量の関係
2014/1/14 公開研究発表会 3
VOCとは
揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略
大気中で気体(ガス)になっている有機化合物の総称
トルエン、キシレン、酢酸エチルなど。(工業用途の主な もので約200種類)
塗料の溶剤(シンナー)、接着剤、インキ、ガソリンなど に含まれる。
光化学オキシダントの原因物質の一つとなっている。接着剤 インキ
ガソリン
光化学オキシダントとは
2014/1/14 公開研究発表会 5
通常時 光化学スモッグ発生時
光化学スモッグの原因物質
オゾンを主成分とする有害物質
健康影響
目や喉への刺激
呼吸が苦しい
頭痛、めまい
農作物・植物被害
葉の変色
収量の減少6
光化学 オキシダント
人為起源 自然起源
発 生 源
VOC
二次生成
大気中で化学反応
窒素酸化物 光化学オキシダントの生成メカニズム
温度 日射
VOC対策の目標
2014/1/14 公開研究発表会 7
固定発生源からのVOC排出量を平成22
(2010)年度までに平成12(2000)年度比で 30%削減する
大気汚染防止の改正(国)
(2004年改正、2005年施行)
VOC対策の開始(東京都)
(2005年度~)
光化学オキシダント注意報発令レベルを超えない測定局 数の割合を約9割まで上昇(国)
平成28年度までに光化学スモッグ注意報発令日を0日と する(東京都)本日の講演内容
VOCと光化学オキシダントについて
VOC対策の目標
東京都のVOC対策
VOC排出量と注意報発令日数の推移
効果検証のための解析
平均濃度と最高濃度
オキシダント積算値とVOC排出量の関係
東京都のVOC対策
2014/1/14 公開研究発表会
9
(平成
24
年度VOC
対策セミナー資料より)東京都のVOC対策
(平成
24
年度VOC
対策セミナー資料より)本日の講演内容
VOCと光化学オキシダントについて
VOC対策の目標
東京都のVOC対策
VOC排出量と注意報発令日数の推移
効果検証のための解析
平均濃度と最高濃度
オキシダント積算値とVOC排出量の関係
2014/1/14 公開研究発表会 11
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0
0 20 40 60 80 100 120 140 160
東京都のVOC排出量(万t/年)
全国のVOC排出量(万t/年)
特定できない物質 石油系混合溶剤
その他の単体溶剤 ハロゲン系
エーテル/グリコールエーテル系 グリコール系
エステル系 ケトン系
アルコール系 炭化水素系
東京都のVOC排出量
VOC排出量の経年変化(全国・東京都)
12
全国で 44%減
東京都で 41%減
全国、東京都とも 目標を上回るVOC
排出削減を達成
(揮発性有機化合物 (VOC)インベントリ検 討会資料より作成)
2014/1/14 公開研究発表会 13
光化学オキシダントおよび原因物質の 大気中年平均濃度の経年変化(東京都)
原因物質(窒素酸化物・非メタン炭化水素)⇒減少傾向 光化学オキシダント⇒増加傾向
0 100 200 300 400 500 600 700
0 10 20 30 40 50 60 70
非メタン炭化水素(ppbC)
光化学オキシダント・窒素酸化物 (ppb)
年度
光化学オキシダント 非メタン炭化水素
窒素酸化物
ppb:
10億分の1 を表す単位
2014/1/14 公開研究発表会 14
光化学スモッグ注意報発令日数の経年変化
VOC対策開始後の2005(H17)年からやや減少傾向にある ものの大幅な発令日減少には至らなかった
VOC排出量は削減されても光化学オキシダントは 減少しなかったのか?
0 5 10 15 20 25
注意報発令日数(日)
基準年
(2000年)
対策開始年
(2005年) 目標年
(2010年)
本日の講演内容
VOCと光化学オキシダントについて
VOC対策の目標
東京都のVOC対策
VOC排出量と注意報発令日数の推移
効果検証のための解析
平均濃度と最高濃度
オキシダント積算値とVOC排出量の関係
2014/1/14 公開研究発表会 15
解析に用いたデータ
関東地方の1都6県 解析対象地域:
2000(平成12)年度~
2011(平成23)年度 解析対象期間:
上記期間で継続して1時間値が入手
できた281局(うち東京都は39
局)の大気汚染常時監視測定局の
光化学オキシダント測定データ
使用データ:
2014/1/14 公開研究発表会 17
昼間1時間値のOx県別年平均濃度の経年変化
昼間のOx平均濃度は近年は各県とも上昇傾向
0 5 10 15 20 25 30 35 40
年平均濃度(ppb)
神奈川 東京 千葉 埼玉 群馬 栃木 茨城
平均濃度の上昇は注意報発令レベルの高濃度Oxの 増加が原因か?
2014/1/14 公開研究発表会 18
東京都のOx月別平均濃度の経年変化
y = 0.43x + 38
0 10 20 30 40 50
Ox 濃度(ppb)
4
月y = 0.64x + 38
0 10 20 30 40 50
5
月y = 0.09x + 37
0 10 20 30 40 50
6
月 y = -0.18x + 340 10 20 30 40 50
7
月y = 0.22x + 31
0 10 20 30 40 50
Ox濃度(ppb)
8
月y = 1.04x + 22 0
10 20 30 40 50
9
月y = 0.51x + 20
0 10 20 30 40
50
10
月y = 0.30x + 14
0 10 20 30 40 50
11
月y = 0.27x + 13
0 10 20 30 40 50
Ox 濃度(ppb)
12
月y = 0.32x + 17
0 10 20 30 40 50
1
月y = 0.40x + 20
0 10 20 30 40 50
2
月y = 0.58x + 28 0
10 20 30 40 50
3
月平均濃度が高い:4月~6月
平均濃度の上昇と夏季の高濃度Ox出現との関係は少ない 上昇傾向が見られる:5月、9月、10月、3月
2014/1/14 公開研究発表会 19
0 50 100 150 200 250 300
年最高濃度(ppb)
神奈川 東京 千葉 埼玉 群馬 栃木 茨城
昼間1時間値のOx県別最高濃度の経年変化
各県の最高濃度は近年は低下傾向がみられる
注意報が発令されたとしても高濃度になりにくく なっている可能性
注意報発令基準 (120ppb)
本日の講演内容
VOCと光化学オキシダントについて
VOC対策の目標
東京都のVOC対策
VOC排出量と注意報発令日数の推移
効果検証のための解析
平均濃度と最高濃度
オキシダント積算値とVOC排出量の関係
光化学スモッグ注意報の発令
光化学オキシダント濃度が120ppb以上の状態になり、その状態が 継続すると認められた場合
最高濃度 継続時間 に係らず1回の発令
大気中での高濃度オキシダント生成量をより詳細に見積もる指標として 120ppb超過時の濃度を積算した積算値(Ox(int))を算出
そこで
光化学オキシダント(120ppb超過)
積算値の算出
2014/1/14 公開研究発表会 21
最高濃度の低下、注意報発令の継続時間の 減少は発令回数の集計に反映されない
光化学オキシダント(120ppb超過)
積算値の算出方法
平均値
139 149 147 123
120ppb超 のデータ抽出 光化学オキシダント1時間値測定データ
(2010年度)
2010年度 千代田区 神田司町 Ox積算値
年度 月 日 時間
測定局名 千代田区 神田司町
2010 4 1 1 3
2010 4 1 2 3
● ● ● ● ●
● ● ● ● ●
● ● ● ● ●
2010 7 24 11 89
2010 7 24 12 108
2010 7 24 13 120
2010 7 24 14 139
2010 7 24 15 149
2010 7 24 16 147
2010 7 24 17 123
2010 7 24 18 89
● ● ● ● ●
● ● ● ● ●
● ● ● ● ●
2011 3 31 23 39
2011 3 31 24 34
合計
2010年度 江東区
大島 Ox積算値
東京都 39局 合計
2010年度
東京都
Ox積算値
都県毎(1都6県)
年度毎(2000年度~2011年度)
に集計
関東各県のOx積算値および関東合計 VOC排出量の経年変化
0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 800000
Ox積算値(ppb・h)
茨城 栃木 群馬 埼玉 東京 千葉 神奈川
(43.7)
(33.5) (31.6)
(29.8)
(26.3)
(24.5)
(24.4)
(22.9)
関東合計VOC 排出量(万t)
2014/1/14 公開研究発表会 23
2010年夏の平均気温は1898年以降最も高かった(気象庁発表)
気象の影響が大きいと排出量との関係が明確にならない ⇒ 気象の影響を除外する解析が必要 積算値で見ると、対策開始(2005年度)後、顕著な 低下傾向
2010年のみ増加
気温、日射の単位量当たりのOx積算値である(Ox(nor) )の算出 気温25℃以上の年間積算温度
最高気温25℃以上の日の日射量の年間積算値
でOx積算値の指標化
オキシダント超過積算濃度の気温、日射量 での指標化
Ox生成に影響を与える気象因子のうち「気温」、「日射量」の影響 を除外する
指標化したOx積算値とVOC排出量の関係
(関東合計)
y = 5.26E-08x - 0.0101 R² = 0.887
0.0000 0.0010 0.0020 0.0030 0.0040 0.0050 0.0060 0.0070 0.0080
100,000 200,000 300,000 400,000
Ox(nor)
関東合計VOC排出量(t/年)
(2005)
(2007) (2010)
(2009) (2008)
(2006)
(2011)
2014/1/14 公開研究発表会 25
指標化したOx積算値とVOC排出量は非常に強い相関が見られる 注意報発令日減少の当初想定は外れていたものの、
VOC排出量削減はOxの生成を確実に抑制している
指標化したOx積算値とVOC排出量の関係
(関東各都県)
y = 1.26E-08 x - 0.000282 R² = 0.804
0.0000 0.0001 0.0001 0.0002 0.0002 0.0003 0.0003
20,000 30,000 40,000 50,000
Ox(nor)
VOC排出量(t/年)
茨城
y = 1.08E-08 x + 0.0000151 R² = 0.233
0.0000 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004 0.0005 0.0006
0 20,000 40,000
Ox(nor)
VOC排出量(t/年)
栃木
y = 1.48E-08 x - 0.000156 R² = 0.560
0.0000 0.0001 0.0001 0.0002 0.0002 0.0003 0.0003 0.0004
0 20,000 40,000
Ox(nor)
VOC排出量(t/年)
群馬
26 y = 6.84E-08 x - 0.00173
R² = 0.824
0.0000 0.0005 0.0010 0.0015 0.0020 0.0025 0.0030
0 40,000 80,000
Ox(nor)
VOC排出量(t/年)
埼玉
指標化したOx積算値とVOC排出量の関係
(関東各都県)
y = 8.40 E-08x - 0.00275 R² = 0.526
0.0000 0.0005 0.0010 0.0015 0.0020
20,000 40,000 60,000
Ox(nor)
VOC排出量(t/年)
東京
y = 6.39E-8 x - 0.0025 R² = 0.442
0.0000 0.0005 0.0010 0.0015 0.0020
20,000 40,000 60,000
Ox(nor)
VOC排出量(t/年)
千葉
y = 2.12E-08 x - 0.000441 R² = 0.247
0.0000 0.0002 0.0004 0.0006 0.0008 0.0010 0.0012 0.0014
0 40,000 80,000
Ox(nor)
VOC排出量(t/年)
神奈川
2014/1/14 公開研究発表会 27
各都県の排出量とOx(nor)の関係は 不明瞭
各県のVOC排出が他県のオキシ ダント生成に影響を与えている 可能性
関東全域で連携して対策を講じる ことが重要
まとめ
VOC排出量は大幅に削減されている
Oxは濃度を積算し、気温、日射で指標化することに より、排出量に対応して減少していることが示された ⇒Oxの低減にVOC排出削減は有効であったさらに光化学スモッグ注意報発令を削減(0日に)していく ために
東京都だけでなく、関東全域で連携し、広域的な対策
Ox生成への寄与の大きな成分に着目した効果的な対策
Ox生成が盛んな夏期に集中した対策2014/1/14 公開研究発表会 29