論文内容要旨
An in vitro experimental model for analysis of central control of sympathetic nerve activity(交感神経活動の中枢制御解析のための実験 モデル)
The Journal of Physiological Sciences, 67巻、5号、629-635頁 (2017) 専攻名 生理系生理学(生体調節機能学分野)大山 祐司
【背景】
新生ラットの脳幹-脊髄灌流標本は呼吸活動を含む、様々な脳幹機能の 解析に有用である。この標本における交感神経活動の指標として、従来は 脊髄中間外側核ニューロンの活動を測定していたが、今回我々は、交感神 経活動のさらなる解析のため、延髄の循環中枢と末梢交感神経の接続が保 たれた新たなin vitro標本を作成し、交感神経活動と呼吸性活動の同時記 録を行った。
【方法】
日齢0-1日の新生ラットをイソフルランで麻酔し、右胸椎を部分的に含 む脳幹-脊髄標本を作成し、酸素化人工脳脊髄液で灌流した。第 9-11胸椎 の高さで右交感神経幹をガラス電極で吸引し交感神経出力を記録した。ま た第4頸髄腹側根(C4)から吸息性神経活動を記録した。その後、薬剤の灌 流投与あるいは同側の延髄吻側腹外側野への電気刺激、薬剤注入を行った。
薬剤として、節遮断薬であるニコチン性アセチルコリン受容体拮抗薬メ カミラミン、アンジオテンシンⅡを使用した。電気刺激は、ステンレス電 極を延髄吻側腹外側野に刺入し、0.1 msec, 2-5 Vの刺激パルスで行った。
薬剤の微量注入は、微小ガラス管を用いて、アンジオテンシンⅡ(10 nl) を 圧注入することにより行った。
【結果】
交感神経活動は明らかな呼吸性の変動を示し、吸息性活動のピークから
172 msec の遅れを持つピークを持つことが分かった。同側の延髄吻側腹
外側野の電気刺激により、C4の反射電位誘発から89.4 msecの遅れをも って交感神経活動の一時的増加を認め、延髄循環中枢と末梢交感神経の接 続が保たれていること確認した。パワースペクトラム解析では交感神経活 動の呼吸性変動が確認され周波数は0.08 Hzだった。
この標本での交感神経節後繊維の影響を確かめるため、メカミラミン
(10 μM)を灌流投与したところ交感神経活動の積分値は 68.9%に低下し、
節後ニューロンがある程度含まれていることが示唆された。吸息性神経活 動には変化はなかった。
アンジオテンシンⅡ(5 μM)の灌流投与により交感神経活動積分値は 124%と増加を認めたが、吸息性活動頻度には有意な変化は見られなかっ た。延髄吻側腹外側野へのアンジオテンシンⅡ(100 μM)の微量投与では 交感神経積分値は138%と増加したが、吸息性活動頻度に差は認めなかっ た。
【結論】
この標本により交感神経出力の中枢制御の神経機構の新たな解析が可 能になった。今後、交感神経活動に影響を及ぼす色々な生理活性物質の作 用機構に関する研究に新たな道を開くものである。