■ 平成 29 年度卒業論文
食品ロス問題解決のための
フードシェアリングの普及
11430282東 亜有加
要旨 現代日本では飲食店には豊富なメニューが取り揃えられ、コンビニやスーパーでは豊富な品ぞろえで 様々な食品を買うことができる。それらは私たちの様々なニーズに応えるためにあり、それらのおかげで 好きなものを好きな時に食べることができている。他方、それらの食品の中で私たちに選ばれなかった大 量の食品は、廃棄される運命にある。これが、最近ニュースでも取り上げられ話題になっている、食品ロ ス問題である。 現在の日本では、食品ロスの対策として様々な活動を行っているが、その一つに、食品ロスを食べ物に 困っている人々に届ける活動を行っているフードバンクがある。しかし、その食品の取扱量と認知度は低 く、ほとんどを寄付で賄って運営しているため、国からの援助や寄付が活発に行われている海外のフード バンクのように活発な活動を行えていない。 そこで、筆者は、最近日本でサービスが開始されたフードシェアリングに注目した。 本稿では、食品ロス問題に焦点を当て、その対策としてフードシェアリングを取り上げ食品ロスの対策 になり得るのかについて明らかにすることにした。そこで、まず、食品ロスがどれほどの問題であるかを 示すことにした。つぎに、フードシェアリングの海外での例を示し、フードシェアリングが食品ロスの対 策としてどの程度有効かを調査した。 今回の調査で、フードシェアリングが食品ロスを削減するための方法として有効な手段であり、日本で も多くの人がフードシェアリングに興味を持っていることが分かった。 食品を扱うより多くの店で、食品ロスを大幅に削減できるフードシェアリングを導入し、推進すべきで あると考える。その為には、多くの購買層に対する啓蒙と意識変革、そして簡便にフードシェアを促進す るためのスマホ・アプリの普及が重要であると考える。 目次 1.はじめに 2.食品ロスの現状と課題 2.1 食品ロスとは 2.2 食品ロス発生のメカニズムと課題 2.2.1 事業系食品ロス 2.2.2 家庭系食品ロス 2.3 食品ロスを減らすための様々な取り組み 2.3.1NO-FOODLOSS プロジェクト 2.3.2 フードバンク 3.解決策としてのフードシェアリング 3.1 フードシェアリングとは 3.2 世界におけるフードシェアリング(事例研究) 3.2.1 スペイン・バスク州ガルダカオの例 3.2.2 アメリカ・カリフォルニアの例 3.2.3 Too Good To GO3.2.4 Meal Connect by Feeding America 3.3 日本におけるフードシェアリング 3.3.1TABETE 3.3.2Reduce Go 3.4 普及に向けた課題 4. スマートフォンを利用した普及促進策の提案 5.おわりに
1.はじめに
近年、世界では毎年 13 億トンの食品が廃棄されており、これが社会問題となっている。 日本でも、年間約632 万トンの食品ロスが発生している。これは、世界の食糧援助量の約 2 倍に相当する量である。そのような中、食品メーカーの味の素やキューピーが賞味期限の表 示を年月表示にし、食品ロスの削減に積極的に取り組み始めている。近年では食品ロス問題 は、メディアでも多く取り上げられるなど、食品ロス問題は、人々の関心を集めつつある。 日本で発生する食品ロスの約半数は、スーパーや飲食店などから発生する事業系食品ロ スである。筆者は、この事業系食品ロスを削減する方策として、食品を個人でやり取りする 「フードシェアリング」に注目した。これは、急な予約のキャンセルや売れ残り、賞味期限 が間近になった食品をお手頃価格で販売することを通知し、食品ロスの削減につなげるサ ービスである。 そこで、本稿の最終目的を、食品ロス問題の解決であると考える。ところが、食品ロス削 減のための方策は、いくつもが施行されている。そこで、本稿では、日本で始まったばかり のフードシェアリングに注目し、その普及に向けての方策と課題について考察することに したい。以降、つぎのように論を進める。 次節の第2 節では、まず、食品ロス発生のメカニズムと課題、そして現在解決のために行 われている取り組みについて整理する。これを踏まえ、第3 節では、フードシェアリングの 仕組みと、その普及可能性について示した後、海外での現状そして日本での現状について示 し、そこから見えてくる日本での普及における課題を考察する。そして、第4 節では、スマ ートフォンを利用したフードシェアリングの普及促進方法について検討する。2.食品ロスの現状と課題
2.1 食品ロスとは 食品ロスとは、まだ食べることができるにも関わらず、捨てられてしまっている食品のことである。 平成 28 年度の日本の食品ロスは、約 632 万トンにもなる。この現状を例えると、世界全体の食糧援 助量 1 年分である約 320 万トンの約 2 倍にもなる。これは、日本国民全員が毎日お茶碗 1 杯分の ご飯を捨てているのと同じ量であると言われている。内訳としては、飲食店やスーパーなど事業者 から出る事業系食品ロスが 330 万トン、家庭から出る家庭系食品ロスが 302 万トンである。(出典: 政府広報オンライン) 2.2 食品ロス発生のメカニズムと課題 2.2.1 事業系食品ロス この事業系食品ロス 330 万トンが発生するメカニズムとしては、次の 5 項目が挙げられる。 (1) 3 分の 1 ルールによりそもそも流通できていない 3 分の 1 ルールとは食品流通業界の商習慣で、製造日から賞味期限までを 3 等分し納品期 限と販売期限を設定するものである。この期限を過ぎた商品は、どれだけ賞味期限まで時間が あっても、廃棄される。実際には、この賞味期限には合理的な根拠はなく、食品や資源の無駄に つながっている(筆者のアルバイト先であったコンビニエンスストアでは、表示してある賞味期限から2時間前までが販売期限であり、その時間を超えるとレジを通すことができないシステムにな っていた)。従って、数時間に1度商品チェックに入るのだが、その度にまだ食べることができる おいしそうな食品を、毎日大量に廃棄していた。 海外では日本よりも寛容なルール設定になっており、アメリカでは 2 分の 1、イギリスでは 4 分 の 3、フランス、イタリア、ベルギーでは 3 分の 2 とされている。 このことから「製造日から賞味期限までを 3 等分し納品期限と販売期限を設定する」としている 日本の 3 分の 1 ルールは、海外と比較して、厳しすぎると言える。 (2) パッケージや段ボールの破損などの包装状況の問題や賞味期限の印字不備や表示事項 の誤りなどの表示ミス 中身に問題がなくても包装に破損がある場合、商品としての価値がなくなるため廃棄となって しまう。表示ミスについても、同じである。 (3) 期間限定商品の期間終了や商品の入れ替わり 受験、ハロウィン、クリスマスなどの期間限定のパッケージは、イベントが終わると出荷できなく なるため、廃棄されてしまう。 (4) 賞味期限や提供期限切れ (5) 飲食店での食べ残しや余り 飲食店での客の食べ残しや仕込んだ食品の余りにより廃棄されてしまう。 (1)~(3)に関しては食品に何の問題もないにも関わらず廃棄を余儀なくされている食品であり、 非常にもったいない行為である。 (5)の食べ残しに関してはバイキング形式のレストランが特に深刻である。店側は客が好きなだ け食べることができるように多めに調理し、客側も食べきれないほど皿に乗せ、結局大量に食べ残 し、食品ロスを生み出している。また、急な予約のキャンセルにより、仕入れたり仕込んだりした食品 の行き先がなくなってしまい、食品ロスになることもある。 2.2.2 家庭系食品ロス 家庭系食品ロスの発生メカニズムとしては、次の2つが挙げられる。 (1) 賞味期限切れ 農林水産省が平成 21 年度に行った食品ロスの統計調査によると、食品の賞味期限、消費期限 が過ぎたため捨てたというのが、全体の約 50%であった。 賞味期限の定義は、定められた保存方法により保存した場合において、期待されるすべての品 質の保持が十分に可能であると認められる期限とされている。つまり、食品をおいしく食べることが できる期限であり、この期限が過ぎてもすぐ食べられなくなることはない。一方、消費期限の定義は、 定められた保存方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性 を欠くこととなる恐れがない、と認められる期限とされている。つまりこの期限を過ぎると、食べない ほうが良い。 このように、賞味期限が切れたからと言ってすぐに捨てる必要はないし、まだ食べることができると いうことである。しかし、農林水産省のこの調査から「賞味期限切れ=食べられない」という認識を
持つ人が多いことが分かる。 (2) 食べ残し 家庭から出される生ごみの約4割は食べ残しである。そして、その半分は手つかずのまま捨てら れた食品あり、さらにその 4 分の 1 は賞味期限前のものが含まれていると言われている。(出典:政 府広報オンライン) 日本は、これだけ多くの食品ロスを出しながら、大量の食品を輸入している輸入大国である。日 本は、年間約 5,800 万トンの食料を輸入しており、そのうち 1,940 万トンを廃棄処分にしている。こ れは、年間輸入量の 30%に当たり、年間約 5,000 万人分の食料に相当する。金額で言うと、約 11 兆円分の食料を無駄にしているということである。また、日本の食料自給率は、先進国の中で最低 の、39%である。つまり、日本は、海外から多くの食料を輸入して、そのかなりの量を廃棄している ことになる。 2.3 食品ロスを減らすための様々な取り組み 2.3.1 NO-FOODLOSS プロジェクト これは「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を構成する消費者庁、内閣府、文部科学省、 農林水産省、経済産業省、環境省の6府省が連携し、官民をあげて食品ロス削減国民運動を 展開する活動である。『「もったいない」を取り戻そう!』を合言葉に、食品ロス発生の段階 別にモデル的な削減の取り組みを支援し、生活者一人ひとりが自ら意識し行動を変革する 食品ロス削減に向けた国民運動である。 この活動の目的は、食品ロス削減の取り組みにより、資源を無駄なく効率的に活用するフ ードチェーン作りを進め、① 我が国の経済成長に貢献すること、そして②「もったいない」 の発祥国として日本の取り組みを世界に発信すること、である。 表1は、この活動の具体的内容を整理したものである。 表1.食品ロス削減の取り組み 製造・流通業の活動 (1) 製・配・販によるパイロットプロジェクト パイロットプロジェクトとは、「食品ロス削減のための商慣習検討WT」の中間とりまとめに基づき、 特定の地域で、飲料・菓子の一部品目の店舗への納品期限を現行の賞味期限の1/3 から 1/2 以上にし、 それに伴う返品や食品ロス削減量を効果測定することである。 (2) フードバンクの活動支援 外食業の活動 (3) ドギーバック普及支援、食べきり運動 ドギーバックとは、外食した際に食べ切れなかった料理を持ち帰るための容器のことである。食べき り運動は、このドギーバッグの普及により、飲食店での食べ残し削減につなげることを目的とした活動 である。 家庭・消費者の活動 (4) 小売店舗、マスメディア、SNS 等を活用した戦略的コミュニケーション このプロジェクトにより、政府は、一人ひとりの意識改革と行動改革、賞味期限と消費期限の期限表 示理解促進、エコクッキングの促進を目指した。 このように、政府は、食品ロス削減のため、様々な側面からこの活動にアプローチしてい るように見えるが、筆者はこの活動を本稿の調査を始めるまで知らなかった。筆者の家族や 友人知人にこのプロジェクトの存在を知っているかと尋ねると、全員が知らないと答えた。
従ってこのプロジェクトの効果は少ないと考えられ、効果を上げるためには認知度を上げ る必要があると考えられる。 2.3.2 フードバンク フードバンクとは、食料銀行を意味する社会福祉活動であり、まだ食べることができるのに 捨てられてしまう食品を、食べ物に困っている人々に届ける活動である。食べることができ るのに従来なら捨てられてしまっていた食品を原則として無償で受け、生活困窮者を支援 している NGO・NPO 等の市民団体を通じて野外生活者や児童施設入居者などの生活困窮者 に供給している。日本では約40 団体が活動しており、法人格を持つ団体は 2013 年に 5,054.24 トンの食品を供給した。 フードバンクの企業としてのメリットは、廃棄にかかる費用を抑制できること、環境負担 の軽減、CSR の取り組みとなり企業価値の向上にもつながることの 3 点が挙げられる。受 給者としては、食費の節約や満足できる食事の提供で心身の充足感が得られるということ が挙げられる。最後に政府としては、食品ロスの削減、財政負担の軽減、地域活性化の3 点 が挙げられる。 フードバンクの活動は、アメリカやオーストラリアで活発に行われており、それらの国と 比べると、日本の食品の取扱量は、圧倒的に少ない。これに加えて、認知度も、かなり低い。 理由としては、海外のフードバンク活動が活発な地域は、政府からの支援が多く、さらに 文化として寄付やボランティアが強く根付いていることが挙げられる。ボランティア意識 が低い日本にとって、ボランティアと寄付で運営されていることが普及につながらない大 きな原因であると考えられる。徐々に日本で広まりつつあるフードバンクの活動を、海外のように 活発に行うには、政府による支援が必須であると言える。
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解決策としてのフードシェアリング
3.1 フードシェアリングとは フードシェアリングとは、不要になったり残ってしまったりした食品を、個人でやり取り するシステムやサービスのことである。 フードバンクとの違いとして、つぎの5 点が挙げられる。 1) 個人と個人のやり取りであること、 2) 誰でも利用できること、 3) 店側に利益を発生させることも可能なこと、 4) 多様なサービス展開が可能なこと、 5) ボランティアではないこと。 フードシェアリングもフードバンクと同様に海外で生まれたサービスであり、サービス の形は様々である。 3.2 海外におけるフードシェアリング(事例研究) 3.2.1 スペイン・バスク州ガルダカオの例 この地域では、2015 年 5 月から共有冷蔵庫の所有によって食品をシェアした。この冷蔵 庫は、自宅やレストランで余った食品や使わなかった食材を誰でも入れることが出来るも ので、食品廃棄の削減と同時に、必要とする人に食べ物を届けることができる。インターネットを利用しない、アナログタイプのフードシェアリングである。 このプロジェクトを行うにあたり、町は共有冷蔵庫で保存されていた食品を食べて食中 毒になってもプロジェクト関係者に責任を問われない特別の取り決めを行った。また冷蔵 庫本体、冷蔵庫の電気代やメンテナンス代、衛生安全調査などの費用として5,500 ドル(約 68 万円)の予算を承認した。 この共有冷蔵庫の利用ルールは、つぎの3 点である。 l 生の肉や魚、卵は入れてはいけない l 自家製の食品は調理した日付を記載したラベルを張り付ける l ボランティアが定期的に冷蔵庫の中に賞味期限が切れたものがないか確認すること。 この共有冷蔵庫プロジェクトの効果としては、開始から約2 ヵ月で 200~300 キロの食品 が廃棄されずに済み、大きな効果を生んだ。その結果、2015 年 7 月には、スペイン南東部 の都市ムルシアにも、二つ目の共有冷蔵庫が設置された。 3.2.2 アメリカ・カリフォルニアの例 先のスペインの例と同じく、アメリカでも、カリフォルニア大学の学生3 人が、2014 年 に、自宅の庭に共有冷蔵庫を設置した。しかし、この例では、食品安全上の懸念から、郡の 保健当局が、プロジェクトを中止させた。 この二つの例からわかることは、共有冷蔵庫によるフードシェアリングは、食品を無駄に せず消費できる点としてはとても効果的であり、誰でも無料で好きな時に利用できること から、寄付する方と持ち帰る方の双方が利用しやすいシステムであると言える。しかし、誰 でも利用できる環境であるからこそ衛生安全上問題点があるとも言えるので、日本で普及 させるのは難しいと考える。 この衛生安全上の問題を解決したのが、インターネットやSNS アプリを利用した個人 対店のフードシェアリングである。 3.2.3 Too Good To GO これは、アプリとInstagram を利用して食品の宣伝を行っているデンマーク発のサービス である。2016 年時点で、ヨーロッパ 6 か国が利用対象国になっている。元々は大学の助成 金で立ち上げられたサービスであり、営利目的の運営はしていない。サービスの内容として は、レストランで廃棄になりそうな食品(食べ残しでない)があると、格安で販売する旨を アプリ内で告知し、それを見た利用者がテイクアウトの注文をし、指定された時間内に取り に行く、という仕組みである。 目的は、食品ロスの削減と、おいしいものが食べたいけど節約したいという人においしい ものを安く入手できるという情報の提供である。Instagram の公式アカウントに投稿されて いる食品は、どれもとてもおいしそうにおしゃれに撮影されているものばかりで、写真だけ で食欲をそそるものになっている。 料理の価格は、2 ポンド(約 260 円)から高くても 3.8 ポンド(約 500 円)で、格安にな っている。利用者からは高評価を受けており、メニューの充実や店舗数を増やして欲しいと いったリクエストが多く寄せられている。
3.2.4 Meal Connect by Feeding America アメリカ最大の飢餓救済団体であるFeeding America が新たに開発した無料アプリである。 これは、同団体の大規模なネットワークを活用し、飲食店などで廃棄食品が出た際に、この アプリを利用しフードバンクにその食料を提供するものである。そこから、食品と、その食 品の受給を待つ人を、フードバンクがマッチングさせる。パソコンやスマートフォンなど、 どんなブラウザからもアクセスできるため、使いやすく、アクセスしやすく、行動しやすく なっている。今まで大量の食品を集めたり、寄付された食品を、整理して届けるために時間 と手間をかけていたが、このアプリのおかげでそれが大幅に改善した。 Feeding America は、2025 年までに米国の飢餓を解消することを目標としている。スター バックスとパートナーシップを締結し、2016 年には米国内の店舗で売れ残った食品を 100% 寄付するという食料廃棄ゼロ目標を掲げた。この目標達成に向けて、Meal Connect を活用す る予定である。 Meal Connect の効果としては、つぎの 3 点が挙げられる。 ①リアルタイムで寄付の追跡が可能で、店舗やフードバンクによるより合理的なレポー ト作成が可能になること ②大手チェーンだけではなく、地元の小規模な事業者も活用できること ③突然の食糧援助にも対応できるように開発されている。 他のフードシェアリングサービスとの大きな違いは、スターバックスや世界最大のスー パーマーケットチェーンであるウォルマート、アメリカを中心に食品加工販売を行うゼネ ラルミルズなど、大規模な企業も参画しているため、従来よりも大きい単位での取引が可能 であるということである。 3.3 日本におけるフードシェアリング 海外で活発にフードシェアリングが行われる中、2017 年に、日本でもフードシェアリン グサービスが開始された。 3.3.1 TABETE 飲食店や惣菜店で発生してしまう余剰食品を、ユーザーとマッチングし、「最後まで売り 切る、食べきる」を目的とした社会派Web サービスである。 急な予約のキャンセルなどの予想外の出来事の発生により、思いを込めて作った食品が このままでは廃棄されてしまうという時、「無駄にしたくない、おいしく食べてほしい」と いったお店の思いを食べ手が発見し、その食品をレスキューすることが目的である。利用方 法は、食品ロスが発生しそうになると店舗が情報を掲載し、その情報をもとにユーザーが購 入(オンライン決済可能)し、指定された時間内にユーザーが食品を取りに行くというもの である。 このサービスは2017 年 9 月 4 日からオペレーションの確認などのβテスト中で、2018 年 春頃に正式リリースの予定である。TABETE は報道でも取り上げられるなど、注目を集めて いる。
3.3.2Reduce Go 周辺レストラン、パン屋、カフェなどの余剰食品をお手頃価格でテイクアウトできるアプ リである。目的は、食品ロスの削減、そして飲食店の廃棄費用の削減と追加収益を上げるこ とである。ユーザーは、月額1980 円で毎日二回まで注文可能でき、利用料金の 2%が社会 福祉活動団体へ寄付される。飲食店側の利用料金は0 円ではあるが、Reduce Go からサービ ス収益の一部を還元している。利用は、つぎの手順で行われる。 l 現在地周辺の余剰食品が、一覧表示、 l タップで注文完了(月額料金のため注文の度に決済不要)、 l 受取に行く。 現在は東京23 区のみでサービス展開している。2017 年 11 月時点で、予想をはるかに上 回る人気があり、一般ユーザーに対しては、事前登録中止中となっている。 日本でも始まったこうしたサービスに対する消費者の反応から、食品ロスに関する関心 が高まりつつあり、フードシェアリングに対するニーズも大きい、ということがうかがえる。 予想をはるかに上回る登録者数のため、Reduce Go は、事前登録の一時中止に至った。 3.4 普及に向けた課題 前例から、日本国民の食品ロスやフードシェアリングに対する関心が高まりつつある、と いうことが分かった。フードシェアリングへの関心が高まった理由は、つぎのとおりと考え る。 l ユーザー側:誰もが利用できる、 l 店側:廃棄を削減できること Ø 少なくても利益を上げることが出来ること。 関東の一部でのみ行われているフードシェアリングが日本全国に普及すれば、多くの食品 を廃棄せずに済む。そして、フードシェアリングを普及させるためには、つぎの点がの重要 であると考える。 l 食品の廃棄を削減したい店側と、少しでも安くおいしいものを安く入手したい消費者の双方の、ニー ズマッチさせる方法を用意する、 l その方法の認知度を向上させ、その方法の利用者増加を目指す。
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スマートフォンを利用した普及促進策の提案
筆者は、ほとんどの人がSNS やインターネットを利用する現代的で新しいサービスを普 及させるには、スマートフォンを利用した普及促進策を推進するべきであると考えた。 図1 から図2は、マイボスコム株式会社が 2017 年 8 月に 11,177 名を対象に行った調査で ある。 図1 によると、74.5%の人が 1 年に 1 回以上、情報媒体を利用して飲食店情報を調べている ことが分かる。また図2 によると、飲食店の情報を調べる際の情報源は、パソコンのインタ ーネットサイトが7 割強、スマートフォンのインターネットサイト、紙媒体情報が各 3 割、 スマートフォンのアプリが2 割弱であった。過去の調査と比べると、スマートフォンのサイ トやアプリの割合が増加傾向にあり、パソコンや紙媒体の割合は減少傾向にある。 そして図3 によると、20 代男性や 20 代・30 代女性の 6~7 割の人がスマートフォンのイ ンターネットサイトで飲食店情報の収集をしているという結果が出た。飲食店情報が掲載されているサイトやアプリでは店の場所、価格帯、料理のジャンル、メニュー、営業時間な どの情報利用率が高いという結果が出た。 図 1:飲食店情報を調べる際の情報媒体利用頻度 出典:マイボスコム株式会社「飲食店情報の検索に関するアンケート調査」 https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=22911 図 2.:飲食店情報を調べる際の情報源 出典:マイボスコム株式会社「飲食店情報の検索に関するアンケート調査」 https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=22911
図3:飲食店情報を調べる際の情報源(年代別アンケート結果) 出典:マイボスコム株式会社「飲食店情報の検索に関するアンケート調査」 https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=22911 図 4: 直近 1 年間に利用したクーポンのタイプ 出典:マイボスコム株式会社「クーポンの利用に関するアンケート調査」 https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=22410 また、図4 は、マイボイスコム株式会社が 2017 年 3 月に 11,476 人を対象に行った Web ア ンケート調査である。図3 によると、2017 年は 2015 年に比べスマートフォンや携帯電話の クーポン画面を見せる・端末にかざすものを利用していると回答した人が増加しているの がわかる。また同じ調査の中で、女性20・30 代では「スマホや携帯電話のクーポンを積極 的に利用する」が4 割弱で他の層より高かった。また「同じものなら、なるべくクーポンが
使える店や商品を利用・購入する」「店や商品の利用・購入前に、クーポンがあるかどうか を調べることが多い」は各 3 割、「クーポンがきっかけで、普段は買わない店に行ったり、 商品を購入することがある」は2 割弱、「店や商品の利用・購入前に、クーポンがあるかど うかを調べることが多い」「クーポンを入手するために、会員登録やアプリのダウンロード をしている」は女性20 代・30 代で高いという結果であった。 これらのアンケートから、若い世代の多くの人が商品を安く買いたいと思っており、その ためにスマートフォンを利用して、なるべく安い店を探したり、クーポンのある店を利用し ていることが分かる。つまり、インターネットやアプリに記載した情報が購入のきっかけに なることも多いということである。 従って、フードシェアリングを全国に効率的に普及させる手立てとして、スマートフォン のサイトやアプリを利用するべきである。
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おわりに
以上、本稿では、食品ロスの削減を目的として食品ロス問題に焦点を当て、その対策とし てフードシェアリングを取り上げ食品ロスの対策になり得るのかを明らかにした。 このサービスの普及に向けた課題としては、つぎの2 点が挙げられる。 1) まだまだ認知度が低いということ、 2) サービスの提供が関東の一部地域に限られているということ。 そして、この結果を踏まえ、筆者は、スマートフォンを利用した普及促進策としてSNS や アプリを利用することを提案する。理由としては、若い世代の多くの人が商品を安く買いた いと思っており、そのためにスマートフォンを利用して、なるべく安い店を探したり、クー ポンのある店を利用しているからである。 現代の日本では好きな時に好きなものを食べることができ、私たちは食べ物に満ち足り た生活を送ることができる。しかし、その裏では、私たちに選ばれなかった食品が、大量に 廃棄されている。フードシェアリングが広まれば、選ばれなかった食品を選んでもらえる場 所を作ることができる。もちろん、一人一人が食品を無駄にしない気持ちを持つことはとて も大切ではある。しかし、フードシェアリングは、利用する理由がただ食費を抑えたいとい うだけであったとしても、利用すること自体が食品ロスの削減につながるサービスである。 つまり、ユーザーの増加が、食品ロスの削減につながるのである。 スマートフォンを上手く利用し、廃棄を減らしたい店側と、安くておいしいものを食べた い消費者の双方が使いやすいサービスを提供し、ユーザーを増やすことで、食品ロスを削減 し食品ロスという言葉が世に広まり、一人ひとりの食べ物に対する意識改革につながるこ とを期待する。参考文献
CNET Japan https://japan.cnet.com/article/35088318/ HUFFPOST http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/18/spanish-communal-fridge-to-fight-food-waste_n_8002318.html(2017/11/1) Meal Connecthttps://mealconnect.org/(2017/11/1) Reduce Go https://reducego.jp/(2017/11/1) TABETE.ME https://www.cocooking.co.jp/food-sharing(2017/11/1) Too Good To Go http://toogoodtogo.co.uk/partners/(2017/11/1) トリストラム・スチュアート(2010),中村友 訳, 「世界の食料ムダ捨て事情」,NHK出版 セカンドハーベストジャパン http://2hj.org/(2017/11/1) 農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss /(2017/11/1) http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kankyoi/pdf/131025_1-02.pdf(2017/11/1) 政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html (2017/11/1) マイナビ学生の窓口 https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/36897 (2017/11/1) マイボスコム株式会社「飲食店情報の検索に関するアンケート調査」 https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=22911(2017/11/1) マイボスコム株式会社「クーポンの利用に関するアンケート調査」 https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=22410 (2017/11/1)