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日韓海峡経済圏の形成とロジスティクス

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

日韓海峡経済圏の形成とロジスティクス

山崎, 朗

九州大学経済学研究院 : 教授

https://doi.org/10.15017/2198490

出版情報:韓国研究センター年報. 2, pp.17-20, 2002-03-15. 九州大学韓国研究センター バージョン:

権利関係:

(2)

日韓海峡経済国の形成 とロジステ ィクス

九州大学大学院経済学研究院の山崎 と申します。は じ めに今回の研究の問題意識 を、少 しお話 してお きたい と 思い ます。私が最初 に韓国 に行 きましたのは、 10年 ほ ど前 にアジア太平洋セ ンターのプロジェク トで、 日韓国 土構造比較研究の調査で した。その後、ほぼ毎年のよう に韓 国に行 く機会があ りまして、すで に10回 くらいは 行 つてい るのではないか と思い ます。今年は夏に釜山を 訪問いた しまして、釜山港 とル ノー ・サム ソンの自動車 工場 を視察 して まい りました。

これ まで立地論や地域開発論 を勉強 して きましたが、

1994年 の神戸の震災以降、国際物流 に大 きな変化があ りました。 日本海側の港湾 を中心 に、神戸港で はな く釜 山港 をハブ港湾 として使 うとい う、日本の港湾で はな く 外国の港湾 をハブ として使 うとい う、新 しい流れです。

とくに、北九州の門司 ・下関 ・博多は、神戸か ら離れ てお り、釜山港 に非常 に近いため、急速 に釜山港シフ ト が進み、 1995年 以降、国際 コンテナ貨物の総量ゃ国際 航路数が急速 に増 えてい ました。それ と同時期 に、国上 庁 は、国内の大都市だけではな く、海外 との交流 を促進 す ることによつて地域の開発 を図る広域国際交流圏構想 を打 ち出しました。 2年 前 に、物流の広域国際交流の物 流圏づ くりというので、国土庁の勉強会に呼ばれましたが、

その ときには残念なが ら、北部九州港ではな く広島港 と 仙台港 をモデルにいた しました。 この ような問題意識 は 日本政府に もあ りまして、それが私 に も大 きな影響 を与 えた といえます。

ところで、以前、私は横浜の方 に住んでい まして、座 間工場が車で 10分 ほどの所 にあ りました。イギ リスの サ ッチ ャー元首相な ど、海外の要人の方が最先端の自動 車工場 とい うことで訪問され る工場 として認識 していた わけです。 しか し、 日産の経営不振のため、その座問工 場が閉鎖 され ることにな りまして、大変驚 きました。そ の受 け皿 に、 日産の九州工場が活用 され ることにな り、

山 崎  朗 (九州大学経済学研究院教授)

九州が 自動車産業の新 しい拠点 として、潜在能力 を持 つ ていることに驚いた記憶があ ります。その後、 日産の技 術は釜 山のサム ソン自動車工業 に移転 され ました。経済 不況や過当競争によつて、サムソン自動車は事実上破綻 し、

外資 による再編が動 き出 したわけであ ります。その結果、

ル ノーがサム ソン自動車 を買収 し、 日産 自動車 とサムソ ン自動車 は、同 じル ノー系の会社 にな りました。

数年前に、九州経済調査協会は 「日韓自動車海峡圏構想」

を打 ち出 しました。北部九州 と韓国の南部地域で、部品 や人材が交流す る自動車産業の海峡圏を構築 しようとい う構想です。 しか し、現実 にはあま り動 き出さなかつた わけであ ります。なぜか といい ます と、サム ソン自動車 工業は日本やアメ リカに輸出 してはいけない とい う契約 で して、輸 出が許可 されていたのは中東だけだつたそう です。

しか し、今後は同 じル ノー系 とな りましたので、 この 関係 は変化す ると考 えてい ます。2002年 に、 日産 はル ノー ・サム ソンに対 して、サニー ・ブルーバー ドと同 じ 車台を供与 します。基本的な骨格が同 じであれば、当然、

似通った部品を使用 しますので、韓国か らの部品の輸入や、

韓国への部品の輸 出が増 えると思われ ます。つ ま り、同 じ系列の企業のなかで、企業内分業が進展 し、ロジステ ィクスが再編 され るとい う、大 きな変化が2002年 あた りか ら自動車産業で も起 こるのではないで しょうか。

問題意識か ら本題へ少 し入 つて しまい ました。マクロ 的な港湾の統計や物流の統計 を見て も分か らない、ある いは産業ベースで議論 して も分か らない、企業ベースの 関係が、現在、 日韓で大 きく変化 してい るのではないか と感 じることがあ りました。それで、少 しずつ現地調査 をし、事実関係 を詰めている段階です。

私が個別事例 として注 目してい ますのはソニーです。

ソニーには、ソニー ・ロジステ ィクス とい う、 ソニーの 世界物流 を担当す る子会社があ ります。韓国向けのソニ

17 韓 国研究セ ンター年報 vo11 2

(3)

― 製品の大半 は、下 関の フェ リー を使 つてい ます。

1999年 に、 ソニー ・コ リアは、本格的に韓国で ソニー 製品の販売を開始 しました。 もともとベースが少ないため、

伸び率が高 くなるのは当た り前ですが、 1年 間で販売額 は3倍 にな りました。

日本企業 は韓国での販売網 を構築す る初期段階にあ り まして、 トヨタ も自動車の販売網を整備 している段階です。

ただ、既 に貿易の統計 などで も、面 白い動 きが確認 され ます。例 えば、門司税関か ら韓国に輸 出された 自動車の 金額は、対前年比で 116倍 にな りました。 これは、 トヨ タ九州の生産す るハ リアーが韓国に輸 出され始めたせい です。伸び率 は大 きいですが、絶対額 は4億 円程度の レ ベルです。 しか し長期的には、 トヨタ車の 1車 種は、こ の九州か ら輸 出され るだろうと考 えてお ります。

これ まで 日韓の産業間関係 は、非常 に競争的な関係に あると捉 えられて きました。韓国側 は輸入超過、 とくに 製造装置や特殊な部品は、 日本側か らの一方的な輸入に 依存 している。その結果、韓国の対 日貿易赤字 は大 きい。

しか も、消費財の相互浸透 は、ほとん どみ られない。 し か し、私 は、 この流れが企業間関係の大 きな再編の中で 変化 しているのとの認識を持つています。その結果 として、

ロジステ ィクスの性質 も変化 してい くはずです。

現在、ロジステ ィクスは、単なるロジステ ィクスでは あ りません。サプライ 'チェーン ・マネジメント (SCM) のなかに組み込 まれてい ます。調達 一生産 一販売の全て を包含 したシステム として、いかにして含理的かつスム ーズな流れを形成するかと、さらには情報ネ ットワーク といかに組み合わせ るか といつた ことがテーマになって い ます。 日本 と韓国は、海峡 を隔てて約200キ ロ しかあ りませんので、 この距離 を上手 につな ぐことで、外国 と してではな く、国内 と同 じSCMに 組み込むことが可能 とな ります。

実際、下関の関釜 フェリー を利用す ることで、 SCM が機能的に作動 している事例があ ります。関釜フェリーは、

下関周辺の貨物のみを取 り扱つているわけではあ りません。

大阪や東京の製品をかな り扱 つてい ます。 ソニー も、関 釜フェ リー を積極的に活用 し、サプライチ ェー ンのシス テムを構築 してい ます。関釜 フェ リーの貨物 は、重量 は

軽い ものの、金額は高い とい う特色 を持 つてい ます。重 量ベースでは、博多港や北九州港 には魚介類や農作物が 入 りますので、大 きいのですが、金額ベースでは、下関 港が非常 に高い。 これはフェ リー とい う特色 と、 日本企 業の SCMの 韓国窓 日であるとい う特色のためであると 思い ます。

かな り本質的な ところへ、先 に入 つて しまい ましたが、

い くつか トピック としてお話 したいことあ ります。世界 第 2位 の鉄鋼メーカーの新 日鉄 と、世界第 1位 の韓国の 浦項製鉄が株式の持 ち含いに入 りました。新 日鉄の方が 一方的に買つている感 じと思いますが、新 日鉄が浦項製 鉄の株式 を約 3%取 得 しました。今後次世代鋼材の共同 開発や技術者の交流な どが、かな り進んでい くで しょう。

最終的には生産、販売、 リス トラクチ ャ リング も、国際 的に行われ ると良い と思い ますが、 これは独 占禁止法に 抵触す る可能性があるため、なかなか踏み切れない よう です。将来、 日本の素材産業の リス トラクチ ャ リング を 本格化す るためには、 この独 占禁止法 も再考 を迫 られる はずです。

また、新 日鐵 と浦項製鉄 に対抗す るように、川崎製鉄 と現代鋼管が提携 してい ますこ日本 と韓│ヨが単純 に競台 関係にある とい うよりも、11仁と韓t車ゴ,様々な企養電ック 紙1台せL/9なかで 新 たな畿各うラ肇二:モ豊えてtとを 二.,

う事態が起 こつているわ〔十です 喪 ̀i■章、= 表 ''、::密 車が筆頭株 上で して 、111噴妻まと・ら実ji=:由雲.長 =f る鋼板 を調達 していることもあつて 震 煮 とと ifて f セメン ト産業では、太平洋セ メン トめi貿亀と だン (を 事実上買収す る動 きがあ りました。フランスうラフ'一 ジュは、麻生セメン トにかな りの出資を してい ますが 、 同時に韓国のメーカー も買収 してい ます。 これ も、多田 籍大企業の枠の中に、 日韓の企業が同 じグループ企業 と して取 り込 まれるとい う流れであ ります。当然、最終的 な リス トラクチ ャ リング は、 日本や韓国 とい う枠組みで はな く、東アジアという枠組みのなかで行われるわけです。

先 ほど紹介 しましたソニーですが、 ソニーは馬山の工 業団地 に工場 を構 えてい ます。釜山か らは少 し離れてい ますが、 この工場はソニーグループのなかで、最 も効率 のよい工場です。 ソニーの本社 にヒア リング に伺い まし

(4)

たところ、韓国の技術者は非常に能力が高 く、韓国のR

&D部 門で開発したほうが良い製品があるそうです。製 品のライフサイクルが速い ものは、韓国の研究者の気質 にあっているといわれています。光ピックアップ、DV Dプ レイヤー、ハイファイコンポ、ヘ ッドホン、カース テ レオなど、研究開発のスピー ドが要求されるもの、超 ハイテクではない製品は、韓国で開発されています。そ して、馬山で生産した製品は、毎日関釜フェリーで日本 に運ばれているそうです。ですから、ソニーの戦略をみ ていますと、いずれは日本企業が韓国の子会社を、頭脳 部分のある生産拠点 として再編成 してい く流れがあるだ ろうと考えることができます。

ほかにも、松下とLGが エアコンの共同生産 している とか、シャープと現代電子が液晶部品の共同生産に入る だとかの事例があります。さらに、ソーテックは韓国の トライジェムに全量を委託生産 しています。そこから下 関に向けて、毎日、船でパ ソコンが運ばれています。税 関の月ごとの統計をみていまして、一番驚 きましたは、

1999年 のある時期に、門司税関の韓国製パ ソコンの輸 入量が、対前年比13.5倍に眺ね上がったことです。正直、

最初は、なぜパ ソコン輸入が急増 したのかがわか りませ んで した。関釜フェリーの社長にお問きしたところ、ソ ーテックがSCMを 組んでいる事実が判明したわけです。

このような流れが、現実の生産や投資に結びつ くのは おそらく、2002年 以降、実際に共同研究されたものが、

日本 と韓国のどちらかの生産体制に入つて くるときであ ると思います。その結果として物流の内容 も変化するこ とにな ります。

博多や北九州からも、当然地方港湾からも、釜山に向 けて、た くさんのフィーダー船が行つています。それに も関わらず、フェリーを利用する背景には、どうも 「物 流品質」重視があるようです。安川電機 もロボットアー ムなどは、経れが少なく、時問が正確であるという理由で、

目の前にある門司港を使わず、下関まで運んでいます。

フェリーは、そもそも人間を運ぶ船ですし、揺れが少な くて、定時に着 きます。このようなフェリーは、 SCM において重要な役割を果たしてくるのではないでしょうか。

日韓海峡には、多 くの高速船フェリーが走つています。

おそ らく今後の課題は、地域の開発戦略 として、フェ リ ー航路を釜山だけに止めるのではな く、 もう少 し多 くの 都市 (例えば、仁川な ど)と 航路 を構築 してい くことが 重要 になつて くると考 えてお ります。

つ ぎに、 日本全体の大 きな流れ との関係 を少 しお話 し ます。現在、日本は輸入超過の時代に突入 しつつあ ります。

つ ま り輸入品中心の国際物流になつてい ますので、で き るだけマーケ ッ ト ・イ ンで、東京や博多な ど大都市の港 湾 にコンテナ貨物が集 まる傾向がみ られ ます。地方都市 と地方中枢都市の港湾 を比較す ると、北九州、博多、下 関あた りのコンテナ貨物が非常 に多 くなつてい ます。 こ れ らの港湾 は、 もともと港湾の機能が都市の規模か らし て も多様であ ります。仙台の主要港湾である塩釜港 と比 べ まして も、博多は20倍 以上の コンテナ貨物 を扱 つて い ます。他の 100万 都市で も港湾の機能 につ きまして も、

音小牧が仮 に札幌の港だ と考 えると、その約 6倍 の賀物 が着いてい ます。博多港は、アジアに近い とい うことで、

国際物流の拠点になつてい ます。

他の九州の都市 と韓国の小都市の間に も、新たなネ ッ トワークが広がつて きてい ます。一番延びているのは、

宮崎県の細島であ ります。細島 と韓国の間で は、地方部 市のなかでは最 も大 きな貿易額が計上 されてい ます。 こ れは、旭化成が細島を使 っているためです。現在、旭化 成 は韓国に積極的に投資 をしてい ます。オ ンサ ンに、フ ランスのローデ ィア と旭化成 は、ナイ ロン66の 原料 と なるアジピン酸の原料工場をつ くることで含意 していますt アジピン酸の原料は、延岡か ら運ぶ とい うことで して、

国際的な生産配置を前提 に、 しか も外資 と組んで、東ア ジア全体の産業配置を考 えるという動 きがあるわけです。

その結果、 日向 ・延岡地区の小 さな港湾である細島が、

博多 ・北九州 に次 ぐ、九州第 3位 の コンテナ港湾 になつ ているという、面 白い現象が生 じてい ます。

最近で は熊本 ・八代 ・長崎なども釜山航路がで きてお りますが、 こちらの方は思 つたほど貨物 は集 まつてい ま せん。 しか し佐賀県の伊万里港 は、大川の家具などを扱

つて、予想 よ りも盛況であ ります。

最終的な結論 を申 し上げます と、 これ まで 日韓の産業 比較研究 は、競争関係 または特殊な補完関係 を前提 に議

19 韓国研究セ ンター年報 vo1 2

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諭をして きました。最近出ました 『21世 紀の韓国経済』

とい うアジア経済研究所の本 において も、分析の仕方 は、

これ まで と同様、過去の日韓関係の分析枠組みに依拠 し てい ます。21世 紀の韓 国経済 を考 えるのに、過去の枠 組みのまま適用す ることはで きません。それゆえ、企業 間関係の再編 とロジスティクスの変革 を、実地調査で裏 付 けて きたわけです。

国土交通省 も、大 きく輸送 システムが変わるだろうと の認識 を持 つてお ります。運輸省が最近 につ くりました 次世代港湾 ビジ ョンのなかで も、アジア輸送の準国内輸 送化 とい うワー ドが何度 も出て きます。 これは、先 ほど 申し上げた、アジアを股 に架 けた SCMの 構築です。そ の構築が可能 な場所 は、北部九州 に限定 して もかな りあ ります。 この ような場所 =市 場 は、韓国側か らみると北 部九州 に生 まれ るで しょう。北部九州か らみ ると、初め て韓国 とい う巨大な市場が機能 し始めると思い ます。 ト ヨタ九州が 日の前の韓国市場 に対 して販売を開始 した と きに、九州の生産拠点 としての役割が変化 して くる。そ の際、ロジステ ィクスが きちん と対応で きるか否かが、

地域戦略の 1つ になって くるのではないか と、私は考 え てお ります。

今週号の 日経 ビジネスに、 日本企業が急速 に韓国のマ ーケットに参入 しているとの記事があ ります。ビジネス の達人 になるためには、韓国社会の奥の奥 まで入 り込む 意気込み と気迫がなければ、韓国での事業化 はとて も難 しい と。 しか し、韓国への投資は、通貨危機前の 7倍 に 現在伸びてい るとい うことです。私 も深川先生 に連れ ら れて、韓国社会の奥の奥の方に少しずつ入つているとこ ろでありまして、また次回機会がありましたら、もう少し、

奥の奥の話をきちんと踏まえたうえで、お話をできるの ではと思つております。ご静聴どうもありがとうござい ました。

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