高等学校
平 成 15 年 度
教 育 研 究 員 研 究 報 告 書
数 学
東 京 都 教 職 員 研 修 セ ン タ ー
平成15年度
教育研究員(数学)名簿
研 究 テ ー マ 学 校 名 氏 名
分科会
数学的活動を通して、三角比の基本 都立水元高等学校 尾 崎 守
Ⅰ 的な考え方の理解を深める指導方法 都立南多摩高等学校 ◎原 田 柊 太 都立農林高等学校 會 田 隆 紀 実生活の中で活きる指数・対数の有 都立小山台高等学校 松 木 丈 浩
Ⅱ 効性を実感できる指導方法 都立紅葉川高等学校 佐 藤 東
都立町田高等学校 村 貫 真佐邦 都立田無工業高等学校 ○豊 山 肇 代 学習意欲と目的意識を高める微分法 都立鷺宮高等学校 髙 木 和 美
Ⅲ の指導方法 都立忠生高等学校 叶 多 泰 子
都立保谷高等学校 才 郷 博 光
◎ 世話人 ○ 副世話人
(担当) 東京都教職員研修センター 指導主事 江 本 敏 男
- 1 -
目 次
主題 数学への興味・関心をもたせ、学習への意欲を高める教材・指 導方法及び評価の工夫
Ⅰ 主題設定の理由 2
Ⅱ 数学的活動を通して、三角比の基本的な考え方の理解を深める指導方法
1 研究のねらい 3
2 研究の方法 3
3 三角比に関する調査の結果と分析 3
4 指導計画 6
5 検証授業のアンケート調査の結果と分析 8
6 まとめと今後の課題 9
Ⅲ 実生活の中で活きる指数・対数の有用性を実感できる指導方法
1 研究のねらい 10
2 研究の内容・方法、教材の工夫 10
3 評価方法の工夫 10
4 事前アンケート結果と分析 11
5 指導計画 11
6 アンケート結果 14
7 検証授業の考察と分析 15
8 まとめと今後の課題 15
Ⅳ 学習意欲と目的意識を高める微分法の指導方法
1 研究のねらい 17
2 興味・関心をさぐるための調査結果 17
3 教材・指導方法の工夫 19
4 評価の工夫 19
5 学習指導計画 20
6 検証授業について 24
7 まとめと今後の課題 24
- 2 -
Ⅰ 主題設定の理由
数学の授業内容に対して「日常生活との関連性」や「何に役立つのか」がわからないため、
興味・関心がもてなかったり、数学に対して強い苦手意識があって前向きに取り組めない生徒 が増えている。いわゆる「数学嫌い」の増加である。
、 。 、
本年度 新学習指導要領が施行された この学習指導要領が適用される第 学年については1 新しい内容とともに、数学的活動を取り入れるなど新しい指導方法が求められている。高等学 校学習指導要領数学科の目標設定に際し 「数学を学習する意義、数学的な見方や考え方のよ、 さ、数学の美しさ、文化や社会生活において数学が果たしている役割などを理解させることに より、数学への興味・関心をもたせ、学習への意欲を高めること」が大切にされ、また 「単、 に内容の習得にとどめるのではなく、人間形成を目指した数学教育を意図し、数学的活動を通 して創造性の基礎を培うという視点」が重視された (高等学校学習指導要領解説。 数学編・
理数編 文部省) 実際の授業の中で、この趣旨を活かし数学科の目標を実現するためには、
その学校の生徒にあった具体的な内容・方法を構成することが必要である。
生徒の実態に適切に対応せず、抽象的な内容だけで授業を展開すれば 「数学は無味乾燥で、 あり、勉強すればするほど早く数学から逃れたい」という気持ちを高めるだけになるかもしれ ない。生徒が授業内容に興味・関心をもてるような教材を提供し、生徒に主体的な参加の場が あり、様々な「数学的活動」を行い、そのことを通して「創造性の基礎を培う」ことが求めら れている。このことは、既存の教材や指導方法だけでは実現が難しい。現状の指導の分析を行 い、課題意識、改善のための視点を明らかにし 「学習意欲をもたせられるような教材、指導、 方法」について研究する必要がある。
このような背景の中で、教育研究員数学部会では、生徒の関心・意欲に視点をあて、研究主 題を「数学への興味・関心をもたせ、学習への意欲を高める教材・指導方法及び評価の工夫」
とした。
また、研究を進めるにあたり以下の点について配慮した。
( )1 基礎・基本の徹底を図り、生徒が意欲をもてるわかりやすい授業を実施する。
( )2 身近な事象を題材とすることにより、関心・意欲を喚起し、数学の有用性を感得する。
( )3 体験的活動を取り入れ、自ら学ぶ意欲を高める。
( )4 指導の中で評価をどのように活用するか、特に観点別評価についての視点を重視する。
○各分科会研究テーマ
第Ⅰ分科会
数学的活動を通して、三 角比の基本的な考え方の 理解を深める指導方法
第Ⅱ分科会
実生活の中で活きる指数
・対数の有効性を実感で きる指導方法
第Ⅲ分科会
学習意欲と目的意識を高 める微分法の指導方法
Ⅱ 数 学 的 活 動 を 通 し て 、 三 角 比 の 基 本 的 な 考 え 方 の 理 解 を 深 め る 指 導 方 法
1 研 究 の ね ら い
小 学 校 の 中 ・ 高 学 年 か ら 中 学 校 ・ 高 等 学 校 へ と 進 む に つ れ て し だ い に 抽 象 的 な 内 容 が 増 え 、 高 等 学 校 で は 、 数 学 に 興 味 ・ 関 心 を も て な い 生 徒 も 少 な く な い 。 高 等 学 校 の 段 階 に お い て は 、 新 し い 概 念 の 導 入 や 理 論 の 拡 張 が い つ も 実 際 的 で 身 近 な 問 題 か ら 始 ま る わ け で は な く 、 純 粋 に 数 学 的 な 問 題 か ら 始 ま る こ と も 多 い 。 数 学 を 学 ぶ こ と の 意 義 が 理 解 で き ず 、 そ の 必 要 性 に 気 付 か な い ま ま 興 味 ・ 関 心 を も て ず に 学 習 を 終 え て し ま う 生 徒 も 多 い 。
数 学 Ⅰ の 三 角 比 に つ い て は 、 実 際 的 で 身 近 な も の と し て 感 じ 、 興 味 ・ 関 心 を も つ こ と が で き る の は 、 直 接 測 る こ と の で き な い 高 さ や 、 2 点 間 の 距 離 を 計 算 で 求 め る こ と が で き た と き で あ る 。 三 角 比 を 学 ぶ こ と の 有 用 性 を 感 じ 、 角 を 基 に 測 る と い う 数 学 的 な 見 方 や 考 え 方 の よ さ を 認 識 で き る の は 学 習 が 進 ん で か ら の こ と で あ る 。
三 角 比 の 学 習 の 最 初 の 授 業 で は 、 直 角 三 角 形 に つ い て 、 正 弦 、 余 弦 及 び 正 接 の 定 義 を 理 解 さ せ る こ と が 目 標 に な る が 、 直 角 三 角 形 の 辺 の 比 と 角 の 間 の 関 係 と し て 理
、「 。」 。
解 さ れ ず に 辺 の 長 さ で 決 ま る 値 で あ る と 理 解 し 角 が 意 識 さ れ な い 傾 向 が 強 い そ の 結 果 、 記 号 sin、 cos、 tanを 使 っ て 三 角 比 を 表 す 際 に 、 様 々 な 表 記 ミ ス が 生 じ て い る と 考 え ら れ る 。
そ こ で 、本 研 究 で は 、導 入 時 に 三 角 比 に 興 味 ・ 関 心 を も た せ 学 習 へ の 意 欲 を 高 め る
、「 。」
と と も に 三 角 比 を 辺 の 比 と 角 の 間 の 関 係 と と ら え 角 の 大 き さ で 決 ま る 値 で あ る と い う 理 解 が 深 め ら れ る こ と を 目 的 と し た 教 材 や 指 導 方 法 の 工 夫 を 研 究 の ね ら い と し た 。
2 研 究 の 方 法
前 述 の ね ら い に 基 づ き 、 以 下 の よ う な 手 順 で 研 究 を 行 っ た 。 (1) 三 角 比 に 関 す る 調 査 を 実 施 し 、 分 析 す る 。
(2) 学 習 指 導 計 画 、 評 価 規 準 、 学 習 指 導 案 、 ワ ー ク シ ー ト を 作 成 す る 。 (3) 学 習 指 導 案 、 ワ ー ク シ ー ト に 基 づ き 検 証 授 業 を 行 う 。
(4) 検 証 授 業 後 の ア ン ケ ー ト 結 果 を 分 析 し 、 考 察 ・ 評 価 を 行 う 。 3 三 角 比 に 関 す る 調 査 の 結 果 と 分 析
生 徒 の 三 角 比 に つ い て の 実 態 を 把 握 す る た め に 、 今 回 の 検 証 授 業 の 前 に 都 立 高 校 全 日 制 普 通 科 7 校 ( 2 学 年 7 校 、 3 学 年 1 校 、 全 日 制 工 業 科 1 校 ( 2 学 年 、 全 日) )
( ) 。 。
制 農 業 科 1 校 2 学 年 で ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し た 回 答 数 は 5 5 7 名 で あ っ た 質 問 1 数 学 が 好 き で す か ?
ど ち ら か に ○ を つ け て く だ さ い 。 ア 好 き イ 嫌 い
質 問 2 三 角 比 に 興 味 ・ 関 心 が も て ま し た か ? ど ち ら か に ○ を つ け て く だ さ い 。
ア も て た イ も て な か っ た
質問1
219 322
0 100 200 300 400
ア イ
質問2
154
389
0 200 400 600
ア イ
質 問 3 [三 角 比 ]に 興 味 を も て た 理 由 、 も て な か っ た 理 由 を 書 い て く だ さ い 。
・ 興 味 を も て た 理 由
「 な ん か 不 思 議 だ か ら 「 新 し い 考 え 方 だ っ た か ら 「 角 度 に よ り 辺 の 比 が わ か り 、 い ろ い ろ な」 」 公 式 に よ り 、 い ろ い ろ な 辺 や 角 の 大 き さ が わ か っ た の が 面 白 か っ た 「 測 量 な ど 、 身 近 な と こ ろ」 で 使 わ れ て い る こ と が わ か り 興 味 が も て た」、「部 活 で (グ ラ ン ド )に 線 を か く と き 利 用 で き た」「ま だ 、 数 学 の 中 で は 、 わ か り や す い 気 が し た か ら 「 解 け た と き の よ ろ こ び 」」
・ 興 味 を も て な か っ た 理 由
「 全 然 わ か ら な か っ た か ら 「 何 に つ か え る の か よ く わ か ら な か っ た か ら 「 よ く わ か ん な か っ」 」 た 。 す ぐ に 公 式 が 出 て き て ゴ チ ャ ゴ チ ャ し て る と こ ろ 「 公 式 が 多 す ぎ だ っ た 。 普 通 に 生 活 し て」 い て 使 わ な そ う だ と 思 っ た 「 数 学 そ の も の が 嫌 い だ か ら 、 興 味 を も て な か っ た 「 難 し す ぎ て …」 」 理 解 で き な い → 興 味 を も て な か っ た 「 式 の 途 中 の 平 方 根 が 嫌 」」
質 問 4 [三 角 比 ]の 授 業 の 中 で 印 象 に 残 っ て い る の は 、 ど ん な 内 容 で す か ?
「 直 接 測 る こ と の で き な い 距 離 を 計 算 で 求 め た こ と 「 図 で 示 し ) sin,cos,tanの ア ル フ ァ ベ ッ」 ( ト を 使 っ た お ぼ え 方 「 sin θ + cos θ = 1 「 辺 の 長 さ を 3 : 4 : 5 や 5 : 1 2 : 1 3 に す る こ」 2 2 」 と で 直 角 が 得 ら れ る 「 わ か ら な い と こ ろ で も 角 度 と か で 値 が 求 め ら れ る こ と 「 sin30 ° = 1/2」 」 と い う よ う に 、 角 度 を 数 字 で 表 せ た こ と 「 頭 の 中 で 図 形 を く る く る 回 す こ と 「 計 算 す る と き の」 」 式 が 長 く て 、 た く さ ん あ っ た け ど 、 そ れ を 覚 え る の に 苦 労 し た こ と 「 な い 。 毎 時 間 、 頭 が 混 乱」 し て い る 「 三 角 比 で 使 う 公 式 は 長 く 、 文 字 が い っ ぱ い 出 て く る こ と 「 難 し か っ た こ と し か 印 象」 」 に 残 っ て い な い 」
、 、
質 問 5 次 の ア 〜 オ の 直 角 三 角 形 で 三 角 比 の 値 が 求 め ら れ る も の は ( )の 中 に ○ を 求 め ら れ な い も の は ( )の 中 に × を 記 入 し て く だ さ い 。 手 元 に 数 学 Ⅰ の 教 科 書 が あ っ て 、 使 用 す る こ と が で き る も の と し ま す 。
ア (. ) イ (. ) ウ (. )
エ (. ) オ (. )
( 網 掛 け の 部 分 は ○ 、 白 い 部 分 は × の デ ー タ を 表 す ) A
B
C
17 8
15
A B = 1 7 , B C = 8 , A C = 1 5 A
B
C 11
A B = 1 1 A
B
C A
B
C 三 角 形A B Cの 面 積S = 2 1
S = 2 1
A
B
C 33°
∠B A C = 3 3° 質問5-ア
84%
16%
質問5-イ
28%
72%
質問5-ウ
65%
35%
質問5-エ
34%
66%
質問5-オ 10%
90%
質 問 6 「30° の サ イ ン (正 弦 )の 値 が 0.5で あ る こ と 」 を 表 す と き 、 ア 〜 オ で 正 し い 表
、 。
し 方 は ( )の 中 に ○ を 正 し く な い 表 し 方 は ( )の 中 に × を 記 入 し て く だ さ い
ア sin=0.5 ( ) イ 30°=0.5 ( ) ウ sinA=0.5 ( )
エ sin30°=0.5 ( ) オ sin0.5=30° ( )
(網 掛 け の 部 分 は ○、白 い 部 分 は × の デ ー タ を 表 す) 結 果 は 、 各 質 問 に 対 す る 回 答 を 集 計 し た が 、 コ メ ン ト に つ い て は 一 部 を 示 し た 。 質 問 1 , 2 に つ い て は あ え て 二 者 択 一 と し て い る 。 こ れ は 恣 意 的 に 中 間 的 な 回 答 が で な い よ う 設 定 し た も の で あ る 。 母 集 団 の 傾 向 で あ る が 、 質 問 1 の 結 果 か ら 「 数 学 が 好 き 」 と 答 え た 生 徒 と 「 嫌 い 」 と 答 え た 生 徒 の 比 率 は お よ そ 2 : 3 で あ り 、 三 角 比 の 単 元 に 「 興 味 を も て た 」 生 徒 と 「 興 味 を も て な か っ た 」 生 徒 の 比 率 は お よ そ 1 : 3 で あ っ た 。
質 問 3 に つ い て は 「 興 味 を も て た 」 生 徒 は 「 角 度 に よ っ て 辺 の 比 が わ か る 」 新、 し い 考 え 方 に 対 し て そ の よ さ や 有 用 性 を 認 め 「 身 近 な 所 で も 使 え た り 、 問 題 が 解、
。」 。 「 」 、
け て 楽 し か っ た と い っ た コ メ ン ト が 多 い 逆 に 興 味 を も て な か っ た 生 徒 は
。 「 」
数 学 全 般 に 対 す る 抵 抗 感 や 苦 手 意 識 が 強 い 様 子 で あ る ほ と ん ど が 興 味 を も て た グ ル ー プ と は 正 反 対 の こ と を コ メ ン ト し て お り 「 難 し く て わ か ら な い 」 と い う 中、 。 に 平 方 根 の 計 算 が ネ ッ ク に な っ て い た 生 徒 も 見 ら れ る 。
「 」 「 」、「 」、
質 問 4 に つ い て は 印 象 に 残 っ て い る こ と で 数 学 的 事 実 教 師 の 説 明 方 法
「 覚 え る の に 苦 労 し た 」 な ど が 混 ざ っ て い る 。 一 部 の 肯 定 的 な コ メ ン ト か ら 感 じ ら れ る こ と と し て 、 ① 公 式 の 美 し さ を 認 識 で き る 生 徒 が い る 。 ② 角 度 と 数 値 ( 辺 の 比 の 値 ) の 対 応 関 係 を 認 識 し て い る 生 徒 も い る 。 ③ 「 頭 の 中 で 図 形 を く る く る 回 す 」
( あ る 種 の 数 学 的 活 動 ) に 言 及 し て い る 生 徒 が 見 ら れ た こ と で あ る 。 否 定 的 な コ メ ン ト と し て は 、 理 解 で き な か っ た り 、 難 し か っ た こ と に 関 し て 書 い て い る 生 徒 が 大 半 で あ る 。
設 定 し た 設 問 の 中 で 、 特 に 質 問 5 ( エ ) と 質 問 5 ( オ ) に つ い て の 関 係 を 調 べ た 。 そ の 際 に 質 問 1 で ア 、 イ と 答 え た グ ル ー プ 別 に 集 計 を し た が 、 全 体 で 取 っ た と し て も ほ ぼ 同 じ 結 果 が 出 て お り 、 質 問 5 ( オ ) を ○ と 答 え な が ら 質 問 5 ( エ ) に × を 回 答 す る 生 徒 が 一 定 の 割 合 で 存 在 す る こ と が 確 認 さ れ て い る 。 全 体 の 数 値 で 見 る と 質 問 5 ( オ )
417 279
に ○ を つ け た 名 の 中 で 質 問 5 ( エ ) ○ が 名 ( 6 7 % : × が) 138名 ( 3 3 % ) で あ り 、 質 問 5 ( オ ) で 正 解 し て い る 中 の 3 分 の 1 が 、 質 問 5
( エ ) を 正 確 に 理 解 で き て い な い こ と に な る 。 質問6-ア
25%
75%
質問6-イ 37%
63%
質問6-ウ 13%
87%
質問6-エ 12%
88%
質問6-オ
89%
11%
33%
67%
4 指 導 計 画
(1) 学 習 指 導 計 画 ( 24 時 間 )
節 と 時 間 配 分 項 目 指 導 内 容
鋭 角 の 三 角 比 ・ 正 弦 、 余 弦 、 正 接 の 定 義 三 角 比 の 発 想 三 角 比 の 定 義
8 時 間 三 角 比 の 表
3 0 ° ,4 5 ° ,6 0 ° の 三 角 比
・ 三 角 比 の 応 用 三 角 比 の 応 用
・ 鋭 角 の 三 角 比 の 関 係 相 互 関 係
9 0 ° − A の 三 角 比 鈍 角 の 三 角 比 ・ 三 角 比 の 拡 張 鈍 角 の 三 角 比 の 定 義
0 ° ,9 0 ° ,1 8 0 ° の 三 角 比
4 時 間 ・ 三 角 比 の 関 係 相 互 関 係
1 8 0 ° − A の 三 角 比 正 弦 定 理 と 余 弦 定 理 ・ 正 弦 定 理 と そ の 応 用 正 弦 定 理
6 時 間 ・ 余 弦 定 理 と そ の 応 用 余 弦 定 理 図 形 の 計 量 ・ 三 角 形 の 面 積 三 角 形 の 面 積
・ 球 の 体 積 と 表 面 積 球 の 体 積
6 時 間 球 の 表 面 積
・ 相 似 な 図 形 の 計 量 相 似 な 図 形 の 面 積 相 似 な 図 形 の 体 積
(2) 評 価 規 準
評 価 規 準 に つ い て は 、 評 価 の 4 観 点 ( ① 数 学 へ の 関 心 ・ 意 欲 ・ 態 度 、 ② 数 学 的 な 見 方 や 考 え 方 、 ③ 数 学 的 な 表 現 ・ 処 理 、 ④ 数 量 ・ 図 形 な ど に つ い て の 知 識 ・ 理 解 ) を 踏 ま え て 、 2 4 時 間 の 学 習 指 導 計 画 中 の 最 初 の 8 時 間 分 「 鋭 角 の 三 角 比 」 に つ い て 作 成 し た 。
① 数 学 へ の ② 数 学 的 な ③ 数 学 的 な ④ 数 量 ・ 図 形 な ど に つ 関 心 ・ 意 欲 ・ 態 度 見 方 や 考 え 方 表 現 ・ 処 理 い て の 知 識 ・ 理 解
・ 数 学 的 活 動 に 興 味 ・ ・ 直 角 三 角 形 の 辺 の ・ 直 角 三 角 形 の 辺 の 比 ・ 直 角 三 角 形 の 辺 の 比 関 心 を も ち 主 体 的 に 比 を 角 と の 関 係 で と 角 と の 関 係 を 三 角 と 角 の 間 の 関 係 と し 取 り 組 も う と す る 考 え ら れ る 比 の 記 号 を 用 い て 表 て 三 角 比 を 理 解 す る
・ 三 角 比 の 有 用 性 を 認 ・ 具 体 的 な 事 象 の 中 す こ と が で き る ・ 三 角 比 の 値 は 角 の 大 識 し 、 三 角 比 を 図 形 か ら 直 角 三 角 形 を ・ 三 角 比 を 用 い て 、 辺 き さ で 決 ま る こ と を の 計 量 に 用 い よ う と 見 つ け だ し 、 考 察 の 長 さ や 角 の 大 き さ 理 解 す る
す る す る こ と が で き る を 求 め る こ と が で き ・ 三 角 比 に お け る 用 語
・ 三 角 比 の 間 に 成 り 立 ・ 三 角 比 の 間 に 成 り る や 記 号 な ど の 基 本 事 つ 関 係 に 関 心 を も ち、 立 つ 関 係 を 、 図 や ・ 三 角 比 の 間 に 成 り 立 項 を 理 解 す る そ の 関 係 を 図 や 表 か 表 か ら 見 い だ せ る つ 関 係 を 式 で 表 し 、 ・ 三 角 比 の 表 に つ い て ら 見 い だ そ う と す る 与 え ら れ た 三 角 比 の 理 解 し 、 扱 う こ と が
値 か ら 残 り の 三 角 比 で き る
の 値 を 求 め る こ と が ・ 三 角 比 の 間 に 成 り 立 で き る つ 関 係 を 理 解 す る
(3) 指 導 方 法 ・ 教 材 の 工 夫
授 業 中 や テ ス ト の 解 答 の 中 で 、sin、cos、tanの 記 号 を 正 し く 表 せ て い な い こ と
。 ( ) 。 、
が よ く 目 に つ い た ア ン ケ ー ト 質 問 6 の 結 果 か ら も そ れ が 見 ら れ た こ れ は
「 」 。 、 三 角 比 の 値 が 角 の 大 き さ で 定 ま る と い う 認 識 が 希 薄 だ か ら と 考 え た そ こ で 数 学 Ⅰ の 三 角 比 の 導 入 部 分 に 注 目 し た 。 導 入 で 角 の 大 き さ で 定 ま る こ と を 十 分 認 識 さ せ る た め に 、 ワ ー ク シ ー ト を 工 夫 し 、 興 味 ・ 関 心 を 高 め る こ と に よ り 、 三 角 比 に お け る 理 解 も 深 め ら れ る と 考 え た 。
( )4 検 証 授 業 の 流 れ
ア 生 徒 が 角 の 大 き さ を 決 め る 。
自 分 た ち で 角 の 大 き さ を 決 め る こ と に よ っ て 、 こ れ か ら 始 ま る 作 業 を 自 発 的 な 活 動 と し て 意 識 さ せ る 。
イ ワ ー ク シ ー ト No.1 に ア で 決 め た 大 き さ の 角 の 直 角 三 角 形 を 作 図 さ せ る 。 ワ ー ク シ ー ト に は 底 辺 と 底 辺 の 左 端 に 分 度 器 の 図 を 貼 り 付 け た も の を あ ら か じ め 印 刷 し て あ る 。 ワ ー ク シ ー トNo.1は ア で 決 め た 角 の 数 に 応 じ た 枚 数 を 配 布 す る 。 事 前 に 直 定 規 を 2 本 用 意 す る 。
ウ イ で 作 図 し た 直 角 三 角 形 の 各 辺 の 長 さ を 正 確 に 測 ら せ 、 ワ ー ク シ ー ト No.1の 表 に 記 入 す る 。
測 定 結 果 の 誤 差 が 後 の 結 果 に 大 き な 影 響 を 与 え る こ と を 伝 え 、 0 1. mm の 単 位 ま で 正 確 に 測 ら せ る 。
エ ウ で 測 っ た 辺 の 長 さ を 基 に ワ ー ク シ ー ト No.1の 表 に 指 定 さ れ て い る 3 つ の 辺 の 比 の 値 」 を 電 卓 で 計 算 し 、 表 に 記 入 す る 。 小 数 第 2 位 ま で 求 め る 。
事 前 に 電 卓 を 用 意 す る 。
オ ウ 、 エ の 作 業 で 得 ら れ た デ ー タ を 発 表 用 の 模 造 紙 に 記 入 さ せ 、 そ れ を ワ ー ク シ ー ト No.2に も 記 入 さ せ る 。
三 角 形 の 大 き さ は 生 徒 そ れ ぞ れ 違 う こ と を 指 摘 す る た め に 辺 の 長 さ も 書 く 。 カ 3 つ の 「 辺 の 比 の 値 」 の 結 果 を 比 べ る 。
直 角 三 角 形 の 大 き さ に 関 係 な く 、 同 じ 角 度 で は ほ ぼ 同 じ 値 で あ る こ と に 気 付 か せ る 。
キ 教 科 書 に あ る 三 角 比 の 表 を 見 さ せ る 。
表 に も 三 角 形 の 大 き さ や 辺 の 長 さ は な く 、 角 の 大 き さ で 数 値 が 書 か れ て い る こ と を 強 調 す る 。
、 、 は 簡 単 に 触 れ る 程 度 と す る ( 詳 し い 説 明 は 次 時 )
sin cos tan 。
(5) 学 習 指 導 案 ア 指 導 案
指 導 内 容 学 習 内 容 評 価 ( ◇ 、 支 援 ( ☆ ) の 計 画)
及 び 指 導 上 の 留 意 点
・直角三角形の ☆ 「 相 似 な 三 角 形 で は 対 応 す る
導 定義の説明 角 が 等 し い 」 こ と が 理 解 で き
入 ・ 相 似 な 三 角 形 ・ 相 似 な 直 角 三 角 形 で 変 わ ら な い も の は 何 て い る か 確 認 す る 。
の 説 明 か 考 え る 。 ☆ 黒 板 に 相 似 な 直 角 三 角 形 を 提
示 す る 。 10
分 ・ 本 時 の ね ら い ・ 角 以 外 に も 変 わ ら な い も の が あ る こ と を ◇ 変 わ ら な い も の が 何 で あ る の 説 明 見 つ け る こ と で 、 三 角 比 の 発 想 を 理 解 す か 、 三 角 比 の 発 想 と は 何 か
る こ と が 本 時 の 目 的 で あ る こ と を 理 解 す と い う こ と に 関 心 を 持 つ か 。
る 。 ( 興 味 ・ 関 心 ・ 態 度 )
・ ワ ー ク シ ー ・ ワ ー ク シ ー ト は 別 紙 ◇ 作 業 手 順 を 理 解 し 、 作 業 と そ
展 ト 、 電 卓 、 直 の 結 果 に 興 味 ・ 関 心 を も ち 、
開 定 規 ( 2 本 ) 〔 作 業 手 順 〕 主 体 的 か つ 積 極 的 に 取 り 組 め を 配 布 し 、 本 ① 角 の 大 き さ を 決 め る 。 る か 。
時 の 作 業 の 説 ( 生 徒 が 決 め る ) ( 興 味 ・ 関 心 ・ 態 度 ) 25 明 を す る 。 ② 1 つ の 角 に つ い て 、 ワ ー ク シ ー ト に 書 ☆ 互 い に 近 い 角 度 は 選 ば な い よ 分 け る 自 由 な 大 き さ の 直 角 三 角 形 を 作 図 う に す る 。
す る 。 ☆ 直 定 規 2 本 を 使 用 し た 直 角 の
③ 辺 の 長 さ を 測 る 。 作 図 を 前 で 示 す 。
④ 辺 の 長 さ の 比 の 値 を 電 卓 で 計 算 す る 。 ☆ ミ リ 以 下 は 目 測 と す る ( 誤。
( は じ め に 1 つ の 角 度 に つ い て ② 〜 ④ 差 の 少 な い よ う に 、 目 盛 り を を 一 緒 に 作 業 す る ) 真 上 か ら 読 む よ う に 指 示 )
⑤ 残 り の 角 度 に つ い て 各 自 で ② 〜 ④ の 作 ☆ 比 の 値 は 小 数 第 2 位 ま で 求 め 業 を す る 。 ( 各 自 で 作 業 を 行 う ) さ せ る ( 小 数 第 3 位 を 四 捨。
五 入 す る こ と に ふ れ る )
・ 作 業 の 結 果 か ⑥ 計 算 結 果 を 発 表 す る 。 ☆ 誤 差 ( 有 効 数 字 ) ふ れ る 。 考 ら わ か っ た こ ( 1 つ 1 つ の 角 に つ い て 模 造 紙 に 記 入 ◇ 同 じ 角 度 の に つ い て は 、 計 算
察 と の ま と め を す る ) 結 果 が ほ ぼ 一 定 の 値 に な る こ
及 す る 。 ・ 結 果 か ら 何 が わ か る の か を 考 察 す る 。 と に 気 付 く か ( 見 方 ・ 考 え。 び ・ 計 算 結 果 か ら 、 辺 の 長 さ の 比 が 、 方 )
ま ( 1 ) 三 角 形 の 大 き さ に 関 係 な く 一 定 の 値
と に な っ て い る こ と ◇ 三 角 比 の 発 想 の 基 と な る 考 え
め ( 2 ) 角 の 大 き さ に よ っ て 、 一 定 の 値 に 決 方 が 理 解 で き た か ( 知 識 ・。
・ 次 時 の 目 的 で ま る こ と 理 解 )
15 あ る 三 角 比 に を 確 認 す る 。 分 言 及 す る 。
・ 三 角 比 の 発 想 を 理 解 す る 。
イ ワ ー ク シ ー ト
5 検 証 授 業 の ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 と 分 析
こ の 授 業 実 施 後 に 4 項 目 に つ い て の ア ン ケ ー ト を 行 い 、 生 徒 が こ の 授 業 を ど の よ う に 受 け 止 め て い る か を 調 査 し た 。 こ れ ら の 項 目 及 び 結 果 は 以 下 の と お り で あ る 。 質 問 1 作 業 の や り 方 は 、 よ く 分 か り ま し た か ?
よ く 分 か っ た 1 0 名 少 し 分 か っ た 4 名 あ ま り 分 ら な か っ た 2 名 全 然 分 ら な か っ た 0 名
No.1 No.2
作 業 記 録 年 組 氏名 B
角度A=( )°のとき、 A C
①〜⑥は少数第4位まで
AB AC BC BC AB
AC AB
BC AC
① ② ③ ④ ⑤ ⑥
結 果 の ま と め
年 組 番 氏 名
A ( 角 度 ) B C
A B
A C A B
B C A C
質 問 2 今 回 の 授 業 に 興 味 ・ 関 心 が も て ま し た か ?
す ご く も て た 2 名 少 し も て た 1 1 名
あ ま り も て な か っ た 2 名 全 然 も て な か っ た 0 名 ま た 、 そ の 理 由 も 書 い て く だ さ い 。
「 わ か り や す か っ た 「 ち ょ っ と だ け 数 学 が お も し ろ か っ た 「 3 つ の 角 度 で や っ て い て 1 つ 1」 」 の 答 え が 違 う の が お も し ろ か っ た 「 作 業 の や り 方 が が 意 外 に 簡 単 で 楽 し か っ た 「 数 学 は 嫌 い」 」 だ け ど お も し ろ か っ た 「 計 算 が 嫌 い だ か ら 計 算 機 が 使 え た こ と が よ か っ た 」」
質 問 3 授 業 で 印 象 に 残 っ た こ と は 何 で す か ?
「 ④ で ほ ぼ 同 じ と い う の は 、 な ん と な く 理 解 で き た が、 な ぜ そ う な る の か ? は 、 分 ら な か っ た が 、 全 体 的 に は 楽 し い 授 業 だ っ た 「 先 生 が 分 か り や す く 教 え て く れ た 「 計 算 機 で 計 算 し た」 」 こ と 」
質 問 4 角 度 が 同 じ だ と 計 算 結 果 が 、 ほ ぼ 同 じ に な る こ と は 分 か り ま し た か ?
よ く 分 か っ た 4 名 少 し 分 か っ た 9 名
あ ま り 分 か ら な か っ た 1 名 全 然 分 か ら な か っ た 1 名
6 ま と め と 今 後 の 課 題
新 学 習 指 導 要 領 で は 「 数 学 的 活 動 」 を 重 視 し て い る 。 今 回 検 討 し た 指 導 内 容 は 対 象 を 身 近 に 感 じ ら れ る よ う に 工 夫 を 行 い 、 外 的 ・ 内 的 な 活 動 を 通 し て 「 三 角 比 を 辺 の 比 と 角 の 関 係 で あ る こ と と と ら え 、 角 の 大 き さ で 決 ま る 値 で あ る こ と 」 を よ り よ く 理 解 で き る こ と を 目 指 し た 。 検 証 授 業 で は 、 教 科 書 な ど か ら 与 え ら れ た 問 題 を 机 上 で 黙 々 と 解 く の で は な く 、 自 分 た ち で 角 の 大 き さ を 決 め 、 作 図 し 、 電 卓 を 用 い て 値 を 求 め た 。 生 徒 た ち は 自 分 で 問 題 を 作 れ た こ と 、 座 学 の 50分 間 で は な く 、 日 頃 す る 機 会 の な い 作 図 な ど の 作 業 や 、 苦 手 な 計 算 に 電 卓 を 利 用 で き た こ と で 充 実 感 を 得 ら れ た よ う だ っ た 。
検 証 授 業 後 の ア ン ケ ー ト 結 果 か ら 第 一 に 「 計 算 機 の 使 用 」 が あ げ ら れ て い る 。 計 算 機 の 使 用 に よ り 、 苦 手 意 識 の 1 つ を 取 り 除 い て 授 業 に 取 り 組 む こ と が で き た 。 第 二 に 「 作 業 が 簡 単 で 楽 し か っ た 」 と あ げ ら れ て い る 。 実 際 に 作 業 す る こ と で 図 形 を イ メ ー ジ す る こ と が で き 、 こ ち ら が 目 指 す も の を 聞 い て い く 姿 勢 が 現 れ た 。 大 き く こ の 2 点 か ら 生 徒 が 三 角 比 に 興 味 ・ 関 心 を も ち 始 め た と 考 え ら れ る 。 興 味 ・ 関 心 を も つ こ と で 集 中 し 、 ア ン ケ ー ト の 質 問 4 の 結 果 か ら も 「 三 角 比 の 値 は 角 の 大 き さ で 決 ま る 」 と い う こ と を 伝 え る こ と が で き た と 考 え ら れ る 。
し か し 、 す べ て が う ま く い っ た わ け で は な い 。 こ の 指 導 案 で は50分 に 収 ま ら ず 時 間 超 過 を し て い る 。 そ れ で も 生 徒 は 最 後 ま で 作 業 を 続 け 、 や り と げ た 。 質 問 4 の 結 果 か ら 、 よ く 理 解 で き な か っ た 生 徒 も 少 数 い た こ と が わ か る 。 こ の 生 徒 が 作 業 の 楽 し さ は 感 じ ら れ た と し て も 、 目 的 の 内 容 を 伝 え き れ な か っ た こ と は 、 今 後 の 課 題 と す べ き こ と と 考 え る 。 指 導 案 の 内 容 に つ い て は 精 選 ・ 改 良 の 余 地 が あ る 。
平 成 1 5 年 度 生 以 降 、 中 学 校 で の 指 導 事 項 が 学 年 ・ 校 種 間 で 移 行 し て い る 。 例 え
、 「 」 。 、
ば 従 来 2 年 生 で 扱 っ て い た 図 形 の 相 似 は 3 年 生 で 学 習 す る よ う に な る ま た
「 相 似 な 図 形 の 面 積 比 、 体 積 比 」 は 中 学 校 か ら 高 校 の 数 学 Ⅰ に 移 行 す る 。 こ の よ う な 変 更 に 伴 う 指 導 内 容 の 変 更 に つ い て は 、 生 徒 の 実 態 を 分 析 し つ つ 今 後 も 常 に 検 討 し て 行 く 必 要 が あ る と 考 え て い る 。
10
Ⅲ 実生活の中で活きる指数・対数の有用性を実感させる指導方法
1 研究のねらい
既出の教科書において、各分野の導入では実生活に即した課題を用いて内容を紹介する構 成になっている。しかし、対数関数の導入に関しては指数関数の逆演算として扱う紹介が多 くみられる。対数が有効となりうる事象は多い。生徒の実態に合わせ、対数が非常に有効で 便利と感じさせることを目標に、「対数関数」を研究テーマとして選択した。その際、指数的 変化をみせる事象を題材に選び、指数関数として扱うのではなく、対数を利用し大きな数を 小さく扱うことで、対数の有用性を感じさせる指導を研究する。
2 研究の内容・方法、教材の工夫
指数関数・対数関数に研究テーマを決定し、生徒の学習意欲が高まり、数学そのものを便 利かつ有効であると感じられる指導方法について、以下の手順、方法で研究を進めた。
(1)事前にアンケートを実施し、指数・対数関数に対しての生徒の意識調査を行う。
(2)数学Ⅱ「指数関数・対数関数」における現行の教科書における指導方法を分析する。
(3)指数的変化を見せる事象として、実験的要素を取り入れられる題材を開発する。
(4)指導計画、学習指導案、ワークシート、検証授業後のアンケートを作成する。
(5)検証授業を行う。
(6)アンケートに基づき、生徒の理解度、意識変化について考察・評価を行う。
今回、題材に選んだテーマは複利計算である。新課程「数学B」の数列でも扱える題材で あり、等比数列の和として解決も可能だが、ここでは大きな数を小さく扱うことで対数の有 用性を感じさせるという目標達成に向け、題材として決定した。グラフをかかせるにあたっ ては、各々目盛りをふったグラフ用紙を用意した。生徒の実態として、関数によって、グラ フの値を上手にとることができていないことが多いので、本来の目的以外で混乱しないよう に注意した。また、常用対数表から値を読み取りプロットするという作業的要素も加えた。
3 評価方法の工夫
評価については4観点(①数学への関心・意欲・態度、②数学的な見方や考え方、③数学 的な表現・処理、④数量・図形などについての知識)を踏まえ、今回行った検証授業につい ての評価規準を作成した。授業後のアンケートにおいても、検証授業後の生徒の実態を把握 する目的で、4観点に基づき項目を作成し実施した。
①関心・意欲・態度 ②見方や考え方 ③表現・処理 ④知識・理解 解 答 を 予 想 す る こ
とができる
直 線 化 す る こ と の 論 理的意義を考える
データを読みとり グラフ化できる
具体例を通して対数の 有用性が理解できる
11 4 事前アンケート結果と分析
(1)質問と主な回答
① 対数関数が難しいと感じる点はどこですか。
・グラフが複雑で理解しづらい ・グラフがうまくかけない ・指数関数に加えて学ぶ必要があるのか? ・底の変換が面倒だ
・底がそろっていない計算がいやだ ・真数が整数でないと混乱する
・日常生活で logを見たことがない ・大きな数が出るとやる気がなくなる
② 指数関数と比較しての違い、難しく感じる点はどこですか。
・指数、対数と2種類は必要ないと思う ・そんなに変わりはない
・指数が理解できていないと対数も理解できないのが困る ・両方とも難しい
③ 分野に関係なく、「数学がこういう授業だったら」と思うことは何ですか。
・日常生活に役立ったらいいのに
・学ぶ内容ごとに、具体的に役立っている例がたくさんほしい
・身近なもので役立っていることを具体的に知ると興味深くなると思う そうでないと、なぜ学ぶのかがわからない (意見多数)
(2)分析
対数自体がどこで利用されるのかわからない、という意見が半数以上の生徒から出てきた。
これは他の分野にも言えることであり、数学そのものが日常生活のどこで利用されているか、
どこで利用できるかを知ることで興味深くなるのではないかと考えられる。やはり、より日 常生活に近い題材・テーマを用意し、普段の教科書とノート、という授業ではなく、視覚的 にも刺激を得られるような授業を展開する必要がある。
また身近な事象の中で、対数を用いると問題解決が簡潔に行える例を授業の題材とするこ とで、対数の有用性を実感させ、生徒の疑問の声にこたえる授業作りを研究していくことが 大切である。
普段の授業で陥りがちな、解法例の提示→演習、という繰り返しにはせず、できるだけ生 徒自身の作業が中心となる授業にすることも必要である。
5 指導計画
(1)学習指導計画
・対数の基本性質 (2時間)
・対数関数とそのグラフ (2時間)
・常用対数 (2時間)
・対数の有用性について (1時間) → 本 時
12
(2)学習指導案
時間 指導内容 学 習 内 容 指導上の留意点
導
入
復 習 と 確 認
本 授 業 の 課 題 紹 介
指 数 関 数 グ ラ フ 、 y =ax の 概 形 を 確 認 (a>1、0<a<1)
「 高 利 子 金 融 の 恐 ろ し さ 」 〜 1 週 間 で 1 割 の 利 子 が つ く 1 万 円 を 借 り た 場 合 半 年 後 に は い く ら で 返 さ な い と い け な い か ? 予 想 を 立 て さ せ 、 後 に 正 解 と 比 較 さ せ る 材 料 と す る 。
予 想 金 額 を メ モ 。 単 純 計 算 は 困 難 。 簡 単 な 方 法 は ?
展
開
《 グ ラ フ の 復 習 》 す ぐ か き き れ な く な る こ と を 再 確 認 さ せ る
通 常 の グ ラ フ ( ① ) よ り 対 数 利 用 ( ② ) の グ ラ フ の ほ う が 先 の 数 を 読 み 取 り や す い こ と を 実 感 さ せ る
座 標 平 面 上 に 、 y=2x の グ ラ フ を か か せ る 。・ ・ ・ ①
ま た 、 別 の グ ラ フ 用 紙 で は 、 以 下 の 作 業 を 行 わ せ る 。
y の 値 は 、 常 用 対 数 を と っ た 値 を と り 、 グ ラ フ を か か せ る 。・ ・ ② つ ま り 、(x,logy)で 点 を 取 っ て い く 。3 〜 4 点 を 取 っ て 位 置 関 係 を 確 認 。
( 常 用 対 数 表 を 利 用 )
半 年 後 の 返 済 金 額 倍 率 を 、 対 数 を 利 用 し た グ ラ フ か ら 求 め る 。 1 割 増 で あ る か ら 、 y=(1.1)xの グ ラ フ を ② の 方 法 で か か せ る 。
(x: 週 、 4 週 で 1 ヶ 月 、 4 8 週 で 1 年 と す る )
( y: 返 済 金 額 の 倍 率 )
グ ラ フ よ り 、 半 年 後 の 返 済 金 額 が い く ら か 求 め さ せ る 。 直 線 上 のYの 値 = log( 返 済 金 額 の 倍 率 ) ( 返 済 金 額 ) = ( 返 済 金 額 の 倍 率 ) ×10.000
最 初 の 予 想 は ど う だ っ た か 、 結 果 を 比 較 さ せ る 。
通 常 の 指 数 関 数 グ ラ フ よ り も 、② の 方 法 で 描 い た グ ラ フ の ほ う が 先 の 予 想 を 立 て や す い こ と を 実 感 さ せ る 。
か い た 直 線 の 方 程 式 を か か せ る 。
問 ) 1 年 後 、 2 年 後 は い く ら に な る か ?
対 数 を 利 用 す る と 、 非 常 に 便 利 な 場 面 も あ る こ と を 実 感 さ せ る 。
>1
a で は 急 激 に 増 加 す る こ と が 重 要 な こ と を 再 認 識 。数 の 増 え 方 が 急 激 な た め 、y 座 標 が と り に く い こ と を 実 感 さ せ る 。
グ ラ フ が 直 線 に な る こ と を 確 認
作 成 し た グ ラ フ の 概 形 が 、は じ め に 作 成 し た も の と 大 き く 異 な っ て い る こ と を 確 認
や は り 直 線 に な る こ と を 確 認 す る
直 線 上 のYの 値 は 倍
率 で は な い
対 数 を 利 用 す る と 、グ ラ フ を 有 効 に 活 用 で き る こ と を 確 認 。 指 数 関 数 グ ラ フ で は う ま く い か な い 。
結
論
片 対 数 グ ラ フ の 性 質
対 数 が 社 会 で 役 立 つ 例
〜 参 考 〜
作 成 し た グ ラ フ か ら 、常 用 対 数 を と っ た 値 をY軸 に と る と 急 激 な 変 化 を す る 事 柄 も グ ラ フ に 表 し や す く 、ま た 先 の 数 字 を 読 み 取 る こ と が 容 易 に な る こ と を 実 感 す る 。
対 数 は 、 非 常 に 大 き な 数 を 扱 う に は 非 常 に 有 効 な も の で あ る こ と 、 身 近 な 出 来 事 を グ ラ フ で は っ き り と 読 み 取 る こ と が で き た こ と を 認 識 す る 。
太 陽 系 の 惑 星 に つ い て 、太 陽 か ら の 距 離 と 公 転 の 関 係 を 、両 対 数 の 値 を と っ た グ ラ フ で 提 示 す る 。
ケ プ ラ ー の 第 三 法 則
13
《片対数グラフを利用した未来予測》
Ⅰ y=2x のグラフを、①の用紙にかきなさい。
〜ある日の出来事〜
A君はちょっとした興味で、ある金融会社から1万円を借りてしまいました。すぐに返済すればよかったのですが、
すっかり忘れていて、気づくと半年が経過していました。契約書をよく見ると、利子は1週間で1割とあります。
「そんな金額ではないだろう」と思いながらも慌てて返済に行くA君。要求された金額はいったい・・・・?
ズバリ、あなたの予想金額は (真剣に予想しなさい)
Ⅱ y=2x において、yの値のみ、常用対数(底が10の対数)をとった値でグラフを作成しなさい。
用紙は②を使用すること。このグラフの特徴は になることである。
※)別紙の常用対数表を用いてよい。
x 1 2 3 4
2x 2 4 8 16
Ⅲ 〜ある日の出来事〜において、経過した週をx、返済金額の倍率をyとすれば、
成り立つ関係式は ・・・(※)
Ⅳ Ⅱと同様にして、(※)のグラフを、③の用紙にかきなさい。
Ⅴ 以下を参考に、半年後の返済金額を求めなさい。4週で1ヶ月としなさい。
・ 直線上のyの値 = log(倍率) であるから、
・ (倍率) =
・ (返済金額) = ¥10.000 × (倍率)
Ⅵ さらに、1年後、2年後になると、返済金額はいくらになるか求めなさい。
③の用紙に書いたグラフの方程式は である。
14 6 アンケート結果
項 目 A B C D 観 点
① 授 業 に 積 極 的 に 参 加 で き た か ? 25.8% 48.5% 25.0% 0.8% 関 心 ・ 意 欲
② 授 業 は じ め に 返 済 金 額 を 予 測 で き た か ? 6.1% 22.0% 42.4% 29.5% 関 心 ・ 意 欲
③ 普 段 の 授 業 と 比 較 し て 参 加 し や す か っ た か ? 20.5% 34.8% 37.1% 7.6% 関 心 ・ 意 欲
④ 興 味 深 い テ ー マ だ っ た か ? 15.9% 33.3% 40.9% 9.8% 関 心 ・ 意 欲
⑤ 太 陽 系 の 話 に 興 味 を も て た か ? 15.2% 34.1% 33.3% 14.4% 関 心 ・ 意 欲
⑥ グ ラ フ を 直 線 化 す る こ と の 意 味 を 考 え た か ? 10.6% 28.8% 43.2% 17.4% 見 方 ・ 考 え 方
⑦ グ ラ フ が 直 線 に な る こ と に 気 づ い た か ? 18.9% 35.6% 34.1% 11.4% 見 方 ・ 考 え 方
⑧ 常 用 対 数 を と る こ と が で き た か ? 17.4% 52.3% 26.5% 3.8% 表 現 ・ 処 理
⑨ 直 線 を か く こ と が で き た か ? 43.9% 47.0% 8.3% 0.8% 表 現 ・ 処 理
⑩ 直 線 の 方 程 式 を 求 め ら れ た か ? 25.0% 30.3% 37.1% 7.6% 表 現 ・ 処 理
⑪ 半 年 後 の 返 済 金 額 を 読 み 取 れ た か ? 23.5% 36.4% 28.8% 11.4% 表 現 ・ 処 理
⑫ 計 算 な ど の 作 業 は し や す か っ た か ? 13.6% 40.2% 40.9% 6.8% 表 現 ・ 処 理
⑬ 返 済 金 額 を 簡 単 に 求 め ら れ た か ? 11.4% 34.8% 40.2% 13.6% 表 現 ・ 処 理
⑭ 指 数 関 数 の 概 形 を 覚 え て い た か ? 9.1% 26.5% 53.8% 9.8% 知 識 ・ 理 解
⑮ 対 数 が 便 利 だ と 感 じ ら れ た か ? 17.4% 34.1% 34.1% 14.4% 知 識 ・ 理 解
⑯ 対 数 (log) の 有 用 性 が 理 解 で き た か ? 12.1% 37.9% 42.4% 7.6% 知 識 ・ 理 解
〜自由記述項目の主な回答〜
『この授業で分かったこと、印象に残ったことは何ですか?』
『この授業を受け、対数についての興味・関心はどう高まりましたか?』
『授業の感想』
A:大変そう思った B:そう思った C:そう思わない D:全く思わない
・logの有効性、便利な使い方が分かった ・こんな身近なことで使えることがあり驚いた ・役に立つ数学があることを知った ・グラフが直線化できることに驚いた
・自然界と数学がつながるのはおもしろい ・今までにないlogの使い方を知っておもしろかった ・自然界のことまで両対数グラフが直線になることがすごいと思った
・logを使えばグラフや計算が簡単になることがわかった
・数学は実用性がないと思っていたが、世の中とのつながりがあることを知った
・直線のグラフにするとxの値が大きくなってもyの値を求めることができる。
・log自体に慣れなければ、使うのは難しい
・便利なので、もっと使用法を知りたくなった ・多少は必要性のあるものだと思った
・今までと違い、利用意義がわかり興味がわいた ・日常で使ってみたい ・生活に役立ちそう ・生活と数学のつながりに気が付ける ・対数の具体的な利用方法が分かった ・特に変わりはない
・対数のすばらしさはわかったが、興味・関心の高まりは少しだけだった
・ケプラーの法則が数学で表せることにすごいと思った
・公式にあてはめて解くだけでなく、いろいろな使い方・使い道があることが納得できて授業がおもしろくなり今まで 以上に数学に興味がもてるようになった
・数学以外の視点から始まったので参加しやすかったし、分かりやすかった
・テーマがおもしろいので答えを求めることも楽しかった・たまにはこういう授業もあると楽しいかもしれない ・いつもより積極的に参加でき、自分で考えようとする意欲がでた
・実際にあることを問題として出しているのでおもしろい
・国語、英語しか実際に使わないと思っていたが、お金のやりとりなど数学も使えるとこたえられる授業だと感じた
・logを理解させるための高等技術だと思った! ・授業中の時間がいつもより早く感じた ・通常の授業よりも内容が無いように感じた。作業が少ないからだろうか?
・余計混乱した。logを考え出した人の気がしれないと思った
・対数を使うことで、分かりにくい部分が分かりやすくなることが分かってよかったが、普段の授業の方がいいと思った
・深い理解ができなかった ・logは難しい