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感情表現をするような形で音楽を演奏するシステムの制作

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Academic year: 2021

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感情表現をするような形で音楽を演奏するシステムの制作

Production of the system to play the music in such a way as to the emotional expression

1W120072-5 臼井 亮人 指導教員 菅野 由弘 教授 USUI Akito Prof. KANNO Yoshihiro

概要:本研究では、ユーザーが感情表現をするような形で音楽を演奏するシステム「3MOTiON(エモーション)」を制作した。具体的に は、ユーザーが右手の動きで「喜」「怒」「哀」を表現し、その動きの大きさ・速さ・高さの値から感情を判断して音楽をリアルタイムに 生成している。手の動きや体の動きを読み取って音楽をコントロールするような研究は多々あるが、本研究では「感情表現」という面を 重視して研究を進めた。結果として、最終的な目標の1つである「ただシステムを操作するだけではない(情動とシンクロする)(電子 楽器の)演奏の楽しさ」を表現できたと考えている。またもう1つの目標である音楽療法への応用に関しても今後の展望を考えている。

キーワード:感情表現、音楽を演奏、右手の動き、情動、電子楽器、音楽療法

Keywords: emotional expression, play the music, the movement of the right hand, emotion, electronic musical instrument, music therapy

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研究の背景

昨今の音楽シーンにおいてDJパフォーマンスなども含 めた電子音楽の担う役割は非常に大きい。いわゆるEDM

(Electronic Dance Music)が一大ブームとなったことで、

極端に言えば、最初から生演奏を考慮せずに予め用意した トラックを再生して踊らせることを目的としたパフォー マンスが増えたように思う。コンピュータでの楽曲制作が 簡単になったことやコントローラーの発達によりこのよ うな従来の演奏では表現できないような楽曲のパフォー マンスが可能になったと考えられるが、同時に生演奏にお けるリアルタイムに曲が作られていく楽しさやパフォー マーの情動が音楽として開放されていく高揚感が抜け落 ちているのでは、と思うようになった。こうした情動が人 の感情や感性に働きかける力は決して小さなものではな く、むしろ音楽の本質に関わる重要な要素の一つである。

そして、こうした「情動」は人間の奥深くに入り込む可能 性を潜在的に持っている。そうした音楽の力を応用したも のの一つに「音楽療法」がある。

音楽療法とは、簡潔に言えば、音楽を活用して心身の向 上・回復をはかることである。イギリスの音楽療法士であ るレスリー・バントは、「音楽療法とは、身体的、知的、

社会的、情動的に良い状態になることを援助するため、子

供や成人と療法士の間の発展的関係のなかで、音と音楽を 使用することである」と述べている[1]。このように音楽療 法の現在における意味としては、クライアントとセラピス トが相互的に音のやり取りをしながら、クライアント個々 のニーズに合わせた目標到達を目指す、というところが大 きい。音楽療法は多くの異なる学問領域からの影響を受け ながら現在も発展途上にあるが、まだその認知度は高くな いと思われる。そこでもっと気軽に音楽を活用して感情を 表出し、心身のエネルギーを統制することができないだろ うか、と考えた。

2. 本研究の目的

本研究では、ユーザーとコンピュータがインタラクティ ブに作用し、ユーザーが感情表現をするような形で音楽を 演奏することを目的としたシステム「3MOTiON」を制作 する。関連研究としては手に装着して動かすことで音を奏 でるMusical gloves[2]や、Kinectを利用し、体の動きか ら音楽を生み出すThe V Motion Project [3]、iPhone iPadのインカメラに指輪をかざすことで専用の音楽アプ リを自由に操作できるiRing[4]など多々存在するが、これ らの研究が空間を利用した音楽の演奏自体に重点を置い ているのに対して、本研究ではユーザーが感情表現をする

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ような形で音楽を演奏するという面を重視して研究を進 める。また最終的には、パフォーマーの情動と奏でられる 音楽がシンクロする電子楽器の制作を目指す。また、この

「楽器」もしくは「システム」が、音楽療法にも応用でき ないか、と考えている。ユーザー個人が気軽に音楽療法的 な効果を得られるようなシステムの構築を、第二の目的と する。

3.「3MOTiON」について

「3MOTiON」のシステムの流れについて述べる。ユー ザーが右手の動きで「喜」「怒」「哀」を表現し、動きの大 きさ・速さ・右手の高さをKinectのモーションセンサに より計測、そこからユーザーの感情を推定し、それに合っ た音楽をリアルタイムに生成していく。

動きの計測に関するプログラムはProcessingによって 行う。Processingのプログラムにより右手の動きの大き さ・速さ・高さを計測し、各値をMaxに送信する。Max では受け取った各値よりユーザーの感情を判別し、それに 合わせて音楽をリアルタイムに出力する。テンポ、音色は 各値と同期して変化し、メロディはあらかじめ作った各

「喜」、「怒」「哀」のオーディオファイルを判別にあわせ てランダム再生する。まとめると、システムの全体の流れ は次のようになる(図1)。

1 システム全体の流れ

また、システム制作後ユーザーテストを行い、システムの 問題点について考察し、いくつか改善を行った。

4.結論

今回の研究において、「感情表現をするような形で音楽 を演奏する」システムを制作することに関しては、ある程 度達成出来たと考えられる。ただ、身ぶり(右手の動き)

で感情表現するという事に違和感があったり、人によって イメージする動きが違ったりすることにより思うように 音楽を演奏できない場合もあるように思われた。また実際 人間の感情は本システムのように頻繁に変わりはしない ため、システムを使用して自身の感情が表出するというよ りも、出力された音楽を聴きつつユーザーの中で情動が生 まれる、という場合の方が多いかもしれない。ただこの部 分に関してはインタラクティブなシステムだということ を考えると、ユーザーと出力される音楽が互いに影響し合 うような関係が築けたように思う。1.2の項で上げた関連 研究やDJなどの電子楽器を使ったパフォーマンスとの違 いとしては、ユーザーの動きから感じる情動と音楽から感 じる情動がシンクロしている部分が大きい。ただシステム を操作するだけではない演奏の楽しさが表現できたので はないかと考えている。音楽療法的な部分に関しては、ユ ーザーとコンピュータがインタラクティブに作用し音楽 を作り上げていく過程を、クライアントとセラピストが相 互に音のやり取りをする関係に重ね合わせると、音楽と共 に身体を動かし、感情表現を意識した音楽演奏を続けるこ とで、感情の表出、身体の活性化、及び心身のエネルギー の統制に関して何かしら効果が期待できるように思われ る。ただ実際どの程度効果を得られるかは不明である。今 後音楽療法的な効果について調べると共に、もっと自由で 複雑な音楽が演奏できるようにシステムを改善していき たい。

注:

[1] バント, L. 著, 稲田雅美訳, “音楽療法―ことばを越え た対話,” ミネルヴァ書房, 1996, p.8.

[2] Musical gloves,

http://www.imogenheap.co.uk/thegloves/

[3] The V Motion Project,

http://www.assemblyltd.com/work/v-motion-project [4] iRing, http://www.ikmultimedia.com/products/iring/

参照

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