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両眼視機能と立体映像の観察体験に関する検討 Study on stereopsis and stereoscopic image experience

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Academic year: 2021

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両眼視機能と立体映像の観察体験に関する検討

Study on stereopsis and stereoscopic image experience

1W070403-5 中野 廣一 指導教員 河合 隆史 教授

NAKANO Koichi Prof. KAWAI Takashi

概要: 立体映像の観察体験に関する研究はこれまで数多く行われているが,ステレオアノマリやステレオブラ インドなどの両眼視機能が正常でない人を対象とした研究はほとんど行われていない.そのため,両眼視機能が 正常でない人に立体映像が与える影響は不明な点が多い.奥行き感を知覚しなければ立体映像の悪影響はなく2D 映像と同じなのか,立体視ができない人に対してどのように立体映像を普及あるいは共存させていけばよいのか,

さらに別の方法で奥行き感を知覚させることはできないのかなど,これから立体映像が本格的に普及していくた めには解決しなければならない課題であると考える.本研究では普段,両眼視機能を働かせていない実験者が立 体映像の見え方と,立体的あるいは2Dとは違うように感じる時のコンテンツ・視聴環境,生理・生体反応から立 体視に関する基礎的な検討を行った.

キーワード:立体映像,両眼視,両眼視差,斜視

Keywords:stereoscopic image, binocular vision, binocular parallax, strabismus

1.

はじめに

両眼視機能は同時視・融像・立体視の3種類に 分類されており,この順番に高次な能力と考えら れている.両眼視機能が正常でないとは,これら のうちどれかの能力が機能しないことを意味し,

その割合は全人口の約 30%とも報告されている

1).立体映像の観察体験において,両眼視機能が 正常な人に対するコンテンツや視聴環境の研究 は行われているが,両眼視機能が正常でなく立体 視が困難,あるいはできない人に対してはほとん ど研究されていない.そこで本研究では,普段,

両眼視機能を働かせていない交代性の調節性内 斜視である実験者が立体映像の見え方と立体視 の検討に関して基礎的な研究を行った.

2.

立体映像の評価

2.1 方法

国内の立体映像に関する展示会 2 か所で視聴 し,事前に用意した評価用紙に結果を記入するこ とにより行った.評価項目2)は奥行き・鮮明さ・

臨場感に対する5段階の評定尺度評価と,どのよ うに見えたか(立体的に見えなかった場合は,2D と比較してどのように見えたか),さらに立体視 が可能な人の見え方とした.立体視が可能な人の 見え方は,立体視に問題のない1名が同じ条件で 視聴した時の見え方を記述した.

2.2 結果

引っ込み感を強調した視差角が小さい映像は 立体的に感じないが,飛び出し感を強調した視差 角の非常に大きいものでは,飛び出しているよう な立体感を得ることができた.しかしこの立体感 は感じたことのない感覚であり,不自然で違和感 があった.また,液晶シャッター眼鏡方式やディ スプレイサイズが大きい映像,つまり鮮明さや臨 場感などの単眼的な手がかりが強い映像では,立 体的または2Dとは違う見え方に感じる傾向があ った.立体視に問題のない人と比較して,引っ込 み感が知覚できないこと,裸眼式で正視と逆視で 見え方が変わらないこと,アナグリフ方式で視野 闘争が起こらないことが挙げられた.疲労感に関 しては,2D と比較して大きな差はないように感 じた.

3. 実験刺激における立体視の検討 3.1

方法

立体映像の評価結果より,コンテンツの対象視 標の視角・視差角を再現した実験刺激を制作し,

多角的な観点から立体視に関して検討した.まず,

融像幅と立体的に感じる時の視差角の範囲を測 定した.さらにRDS(Random Dot Stereogram)を使 用した別の方法での立体視の検討と,NIRSによ

(2)

2 る脳血流量変化および眼球運動を測定して,生 理・生体指標からの立体視の検討を行った.

3.2 結果

実写と CG により実験刺激を制作することが でき,抑制がかかる時と,立体的あるいは明らか に2Dとは違う見え方に感じる時の視差角の範囲 を測定することができた.また,視差角が小さい 場合には抑制がかかっており,2D と同じように 見えて,立体的に感じなかった.対象視標の視角 が大きく,さらに視差角も大きくなると,抑制範 囲を逸脱し始めて同時に立体的に感じた.

図 1.抑制がかかっている時の見え方

図 2.抑制範囲を逸脱してくる時の見え方

しかし,RDS では同じ対象視標の視角と視差

角およびそれ以上の視差角でも,立体的に見える ことはなかった.生理・生体指標に関して,脳血 流量変化では,3Dと3DCGは視差角と同期して 反応し,さらに2Dよりも脳血流量変化が大きか った.つまり,3Dおよび3DCG映像注視により 後頭葉視覚領が賦活していることが示された.ま た眼球運動では,3Dと3DCGにおいて優位眼は 対象視標の視差角と同期して偏位するが,もう一 方の眼はほとんど輻輳していないことが示され た.

4.

結論

対象視標の視角と視差角が小さい映像では抑 制がかかり,片眼だけの情報しか認識できなくな るので,同時視が成立しないことにより立体視が 働かず,2D と同じように見えていたと考えられ る.視角と視差角が大きくなると周辺網膜に刺激 が入力され,抑制範囲を逸脱し始めることにより 同時視が成立し,さらに融像・立体視が機能した ことで立体的に感じられたと推測できる.

本研究により普段,両眼視機能を働かせていな い人にも立体的に感じさせることが可能である こと,また疲労感に関しては,短時間の視聴にお いて2Dと差は感じられなかったことが得られた.

しかし,立体感が不自然で違和感があり,また立 体的に感じさせるためには視差角を大きくする 必要がある.現状の表示方式では個人の症状・様 態に応じて個別にコンテンツを修正する手間が 必要になることから,現在においては普段,両眼 視機能を働かせていない人に無理に立体的に感 じさせるよりも,平面映像として知覚させる方が 立体映像の普及,あるいは共存を考慮するにあた って合理的であると考えられる.ただし,このた めには3D眼鏡の装着による負担や煩わしさを軽 減させることと,立体映像化による画質の低下を 改善させる必要性がある.

参考文献

1) Whitman Richards:“Stereopsis and Stereoblindness”, Experimental Brain Research, Vol.10, No.4, pp.380-388 (1970)

2) Pieter J.H. Seuntiens and Lydia M.J. Meesters and Wijnand A. Ijsselsteijn:“Perceived quality of compressed stereoscopic images:effects of symmetric and asymmetric JPEG coding and camera separation”, ACM Transactions on Applied Perception, Vol.3, No.2, pp.95-109 (2006) 他 抑制が

かかっている

抑制範囲を 逸脱してくる

参照

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