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損傷制御型RC系有壁架構に用いる水平スリット付耐震壁の開発に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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45-1 1 .序  著者らは,柱降伏が先行する外周骨組1 )と内部コア 連層耐震壁から成る鉄筋コンクリート(以下,R C と記 す)系有壁架構における新しい耐震壁の開発に取り組 んでいる2).図 1 に開発している有壁架構の立面と平面 の略図を示す.こうした建物の場合,高剛性の耐震壁 が地震時の水平力の大部分を負担するため,これに損 傷が集中し,一方で,外周骨組にはほとんど損傷が見 られない現象が観測される.提案する有壁架構は,外 周骨組と連層耐震壁の双方に水平力を分配させ,建物 全体でエネルギーを吸収するという考え方を取り入れ ている.  提案架構の外周骨組は,鋼管横補強短柱とスパンド レルビームから成る R C 造骨組である.これは通常の R C 造骨組に比して,高耐力・高剛性・高靭性に設計可 能となる.ただし,柱降伏が先行するため層崩壊が危 惧される.そのため,落階を防止するための連層耐震 壁が必須となるが,柱に比して大きすぎる水平剛性を 低く抑える工夫が求められる.  図 2 に提案する内部コア連層耐震壁の概略図を示す. 提案耐震壁は,壁脚部の両端から絞るようにスリット を有しており,柱形を持たないことが特徴である.こ の特徴により従来の耐震壁よりも壁の曲げ耐力と剛性 を下げ,入力せん断力を低減させることで,地震時の 過大な損傷を防ぐ効果がある.図にはアンボンド鉄筋 と露出鉄筋を示しているが,これらの詳細は文献 2 )を 参照されたい.  本報では提案 R C 系有壁架構の建物応答解析の予備 研究として,(1 )初期剛性の算定手法の考察,(2 )露 出鉄筋の破断に関する検討,(3 )提案耐震壁の解析的 考察を行う. 2 .実験結果 2 .1  荷重-変形関係  実験概要については文献 2 )を参照されたい.表 1 に 試験体の詳細を示す.試験体名称は,左から順にシリー ズ名のアルファベット,アンボンド鉄筋の降伏強度,軸 力比である.図 3 に実験より得られた荷重-変形関係 鎌田 健斗 図 1 損傷制御型 RC 系有壁架構の立面と平面 コア 外周架構 連層耐震壁 間柱 スパンドレルビーム 鋼管横補強短柱

損傷制御型 RC 系有壁架構に用いる水平スリット付耐震壁の開発に関する研究

図 2  損傷制御型 R C 造耐震壁の概略図 l R 付 着 除 去 区 間 Nt 露出鉄筋 アンボンド鉄筋 面内剛性を確保しつつ 残留変形を小さくする 早期に降伏し エネルギーを吸収 Nc 図 3  荷重-変形関係 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 R (×10-2rad.) N-685-0.10 S-685-0.25 -200 -100 0 100 200 S-685-0.10 H ( kN ) -200 -100 0 100 200 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 H ( kN ) R (×10-2 rad.) A-685-0.10 試験体 B×D B×D (脚部) 縦筋 横筋 アンボンド鉄筋 (付着除去長さ) 露出鉄筋 軸力比 (815mm) D10@40ダブル (SD295) D10-SD295 S-685-0.10 S-685-0.25 A-685-0.10 N-685-0.10 140mm×810mm 140mm×410mm 0.1程度 0.25程度 0.1程度 D10@80ダブル (SD295) D19-USD685 D19-USD685 (650mm) (1000mm) D13-SD490 -D19-USD685 表 1  試験体詳細

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45-2 を示す.図の縦軸は載荷点高さの水平力 H(kN)で,横 軸は壁の部材角 R (× 10- 2r a d . )である.図には露出 鉄筋が引張降伏した点を○印,アンボンド鉄筋が引張 降伏した点を△印で示している.図は上段左に S 6 8 5 -0.10,上段右に S-685-0.25,下段左に A-685-0.10,下段 右に N-685-0.10 の結果を示す.  実験経過について述べる.N-685-0.10 を除いた試験体 において,露出鉄筋の降伏後,アンボンド鉄筋が降伏 するまでは耐力が上昇し,アンボンド鉄筋の降伏後最 大耐力を発揮した.N-685-0.10 では,アンボンド鉄筋が 降伏するまでは耐力が上昇し,アンボンド鉄筋の降伏 後最大耐力を発揮した.  各試験体の比較を行う.A-6 85-0. 10 は露出鉄筋に高 強度筋を使用しているため,最大耐力が大きくなって いる.また,大きな耐力低下も見られずに実験を終了 している.N-6 85-0. 10 は露出鉄筋を使用していないた め,最大耐力が小さくなっているが他の試験体と比較 しても,大きな耐力低下は見られなかった.実験終了 後にスリット部分の露出鉄筋を調べたところ,S シ リーズにおいて破断が確認された.しかし,荷重変形 関係は若干の耐力低下を示したのみで,安定した紡錘 形の履歴ループを示している.また,露出鉄筋を配筋 していない N-685-0.10 の荷重-変形関係も安定した履 歴ループを示していることから,S シリーズで観測さ れた露出鉄筋の破断が試験体に与える影響は少ないと 考えられる. 2 . 2  試験体の鉛直ひずみ  図 4 に試験体の鉛直方向のひずみと壁の部材角の関 係を示す.図の縦軸の鉛直ひずみについては,試験体 に取り付けた変位計により測定した鉛直変位を,基礎 梁上面から測定位置までの距離で除した値として定義 した.図は上段左にS-685-0.10,上段右にS-685-0.25,下 段左に A-685-0.10,下段右に N-685-0.10 の結果を示す.  軸力比が大きい S-6 85-0. 25 は残留鉛直ひずみがほと んど生じていないのに対し,軸力比の小さいその他の 試験体では残留鉛直ひずみが 0. 1% 程度生じている.し かしながら,この累積はひび割れ性状に大きく影響し ておらず,軸力比を 0. 1% 程度に小さくしても壁体のひ び割れ押さえ効果は顕著に減少しないといえる.通常 の耐震壁は中立軸深さが浅いため,繰返し載荷により 損傷が壁板上部に進展し,壁中央部の伸びが変形に伴 い累積していく現象が観測される.これに対し,提案 する耐震壁の場合,図に示すように,各試験体とも鉛 直方向の最大ひずみが 0 . 2 % 程度の伸びに留まってい る.これが提案する耐震壁の特徴の一つであり壁板上 部に損傷が進展していない結果と一致していることが 確認できる. 3 .耐力評価  提案耐震壁の最大耐力と初期剛性の計算手法につい て述べる.最大耐力 Q fの計算手法ついては,文献 2)の 式を参照されたい.  初期剛性について述べる.提案耐震壁の初期剛性 Kf についてはコンクリート部分と鉄筋部分で分けて計算 を行っている.コンクリート部分は,水平力を H ,高 さ h の片持ち柱の変位 vcを曲げ変形のみを考慮した単 位仮想荷重法より求めた.以下に式を示す. 2 3 3 3 2 10 2 3 3 3 2 3 3 2 3 3 D h h c D h Hx Hx v EI EI H D h h EI                                       (1)  提案耐震壁は,脚部で断面積が小さくなるので,高 さ方向に曲げ剛性が変化する.ここで,壁頭の曲げ剛 性を EI1,壁脚のそれを E I2とすれば,断面せいの違い から EI 1>>EI2となり(1)式で近似できる.曲げ剛性の 変化点はひび割れが多く生じる範囲として断面せい D の 2/3 である 273mm と仮定している.  次に鉄筋部分の計算手法について述べる.アンボン ド鉄筋,露出鉄筋ともコンクリートに埋設されていな い部分のみが変形すると考えられるので,水平力 H が 作用したときの鉄筋の変形による水平変位 vsは次のよ うになる. 2 2 2 D s H h v EA    (2)  式中の ,Dは順に,鉄筋間距離,変形可能と考えら 0.0 0.1 0.2 鉛 直 ひ ず み (% ) S-685-0.10 S-685-0.25 0.0 0.1 0.2 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 鉛 直 ひ ず み (% ) R (×10-2rad.) A-685-0.10 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 R (×10-2rad.) N-685-0.10 図 4  鉛直ひずみ-部材角関係

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45-3 れる鉄筋の材長である.Dについては,付着劣化を考慮 してアンボンド鉄筋では 20 0m m 長くし,露出鉄筋はス リットの高さ 20mm の 4 倍の 80mm とて計算を行った.  提案耐震壁は,スリットを切らない場合の断面 140 × 8 1 0 m m を有する従来型の耐震壁よりも耐力および剛性 が下がる.スリットを切らず,特殊な配筋を行わない 1 40 × 8 1 0m m の断面を有する耐震壁を対象として,こ れらの低下率を計算する.表 1 に提案耐震壁の終局耐 力 Qf1と初期剛性 Kf1,従来型の耐震壁の終局耐力 Qf2初期剛性 K f 2の計算値を示す.Qf 1は,前述の Qfと同じ である.Qf2は,壁断面の全塑性耐力である.Kf2は,コ ンクリートを弾性体と仮定し,鉄筋の影響を無視して 計算した.  表 2 に示すように,壁脚部にスリットを設けること によって初期剛性が 8 0 % 程度低減されていることが分 かる.一方で,耐力の低下は 3 0 % 程度であり,これに 比して小さい.即ち,提案耐震壁は,ある程度の耐力 を維持させつつ,初期剛性を大幅に減ずることができ ることがわかる.表の結果を有効に利用できれば,現 行法上において,有利な耐震設計が可能となることが 示唆される.  試験体の最大耐力と初期剛性について述べる.表 3 に最大耐力,初期剛性の実験値と計算値の比較を示す. まず,最大耐力について述べる.実験値 Qe x pについて は正側加力時と負側加力時の各最大耐力の平均値とし た.表に示すように,実験値は計算値により 4. 0% 以下 の誤差で精度良く評価できている.  次に初期剛性について述べる.実験値 Ke x pについて は,処女載荷時における最大水平力の 1 / 3 の点と原点を 結んだ割線係数を試験体の初期剛性として定義した.  表に示すように,S シリーズの実験値は計算値によ り 2 %以下の誤差で精度良く評価できている.A ,N シ リーズでは 1 割以上の過大評価となった.適切な剛性 低下を評価できれば,更なる精度の向上が可能となる が,これについては今後の検討課題としたい. 4 .解析的考察 4 .1  解析モデル  解析にはファイバーモデルで断面の応力状態を表現 する 2 次元有限要素解析プログラム3)を用いており,材 料および幾何非線形を考慮している.解析では鉛直荷 重を一定値に保持し,実験時の載荷プログラムに倣い, 正負交番漸増振幅の変位制御により実行した.  図 6 に試験体の解析モデルを示す.解析モデルは,RC 壁板曲げばね,スリット部分の露出鉄筋,アンボンド 鉄筋,剛棒で構成されている.R C 断面の寸法は壁脚部 断面の 140 × 410mm とした.また,壁脚部に設けた RC 壁板曲げばねの長さについては,剛性計算と同様に 2D / 3 とした.解析の露出鉄筋,アンボンド鉄筋の長さは, 実験試験体よりも 20 0m m 長くした.この仮定は,鉄筋 の降伏変形を実験と解析で合わせるためである.  図 7 に材料の構成則を示す.コンクリートはバイリ ニア型とし,除荷および再負荷則は初期剛性を維持す るモデルとした.鋼材はバウシンガー効果を考慮した モデルとした. 4 . 2  荷重-変形関係  図 8 に設計上の変形のクライテリアである部材角 R=1.00/100rad. 以内の実験と解析の荷重-変形関係を示 す.図は左側に実験,右側に解析を配している.また, 表 4 に最大耐力と初期剛性の実験値と解析値を比較し たものを示す.  図 8 に示すように,すべての試験体において解析は 実験を概ね模擬できている.しかし,露出鉄筋に高強 度筋を用いた A-685-0.10 では,若干エネルギー吸収に 富む結果となった.また,表 4 に示すように,最大耐 力については,誤差 8% で精度良く評価できている.一 方,初期剛性については,S-685-0.25 試験体のみ過小評 価となっているが,そのほかの試験体では過大評価と 図 7  材料構成則 コンクリート 鋼 材 図 6  解析モデル σ ε σB εc Ec Ec σ ε σy E σu E/2 E Ru Rini Rbsg 2 2 0 ア ン ボ ン ド 鉄 筋 加 力 点 高 さ (1 6 0 0 m m ) RC壁板曲げばね2/3D 露出鉄筋 剛棒 剛棒 表 3  実験値と計算値の比較

Qexp Qf Qexp/Qf Kexp Kf Kexp/Kf

S-685-0.10 169 165 1.02 60.8 62.0 0.98 S-685-0.25 179 179 1.00 59.3 60.7 0.98 A-685-0.10 212 203 1.04 64.6 73.8 0.88 N-685-0.10 139 139 1.00 38.1 42.9 0.89 試験体 最大耐力(kN) 初期剛性(kN/mm 2 ) (a) 実験 試験体 Qf1 Qf2 Qf1/Qf2 Kf1 Kf2 Kf1/Kf2 S-685-0.10 165 239 0.69 62 0.20 S-685-0.25 182 299 0.61 60 0.19 A-685-0.10 203 0.86 74 0.25 N-685-0.10 139 0.59 43 0.14 310 236 300 表 2  耐力および剛性の低下率

(4)

45-4 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 -200 -100 0 100 200 N-685-0.10 H ( kN ) R (×10-2rad.) -200 -100 0 100 200 A-685-0.10 H ( kN ) -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 N-685-0.10 R (×10-2rad.) A-685-0.10 S-685-0.10 S-685-0.25 -200 -100 0 100 200 S-685-0.25 H ( kN ) -200 -100 0 100 200 S-685-0.10 H ( kN )

Qexp Qana Qexp/Qana Kexp Kana Kexp/Kana

S-685-0.10 160 169 0.95 60.8 46.3 1.31 S-685-0.25 163 168 0.97 59.3 60.2 0.99 A-685-0.10 196 212 0.92 64.6 52.8 1.22 N-685-0.10 125 125 1.00 38.1 29.5 1.29 試験体 最大耐力(kN) 初期剛性(kN/mm 2 ) 表 4  実験値と解析値の比較 図 8  荷重ー変形関係 S-685-0.10 0.0 0.1 0.2 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 鉛 直 ひ ず み (% ) R (×10-2 rad.) S-685-0.25 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 R (×10-2 rad.) S-685-0.25 0.0 0.1 0.2 鉛 直 ひ ず み (% ) S-685-0.10 図 9  鉛直ひずみー部材角関係 なっており,その誤差は最大で 3 1 % となっている. 4 . 2  試験体の鉛直ひずみ   図 9 に設計上の変形のクライテリアである部材角 R=1. 00/1 00ra d. 以内の実験と解析の鉛直ひずみを示す. 実験では軸力比の違いにより違いが見られたため,S シリーズの結果を示す.図は左側に実験,右側に解析 を配している.  S-685-0.10 の最大鉛直ひずみは,実験で 0.09%,解析 で 0.07%,S-685-0.25 の最大鉛直ひずみは,実験で0.05%, 解析で 0.04% となっている.若干解析が過小評価となっ ているのは,壁板上部のひび割れを考慮していないた めである.また,解析の残留鉛直ひずみは S-685-0.10 で は 0.04% となる一方で S-685-0.25 ではほとんど生じてい ない.この結果は実験とよく一致している.そのため, 両試験体とも解析は実験を精度良く模擬できていると いえる. 5 .まとめ  本研究により得られた知見を以下に列挙する. 1) スリットと露出鉄筋を有する壁試験体の水平耐力と 初期剛性の評価法を示し,これらが実験結果を概ね 評価できることが示された. 2) 提案した壁試験体は,同一形状の通常の壁に比し て,水平剛性を 8 0 %程度低下させることが可能で あった.その一方で,水平耐力の低下はおよそ 30 % に留まった. 3) 部材角 R=1.00/100rad. 以内での実験と解析の比較で は,耐力・剛性・履歴性状の全てにおいて解析は実 験を概ね模擬することができた. 謝辞  本研究で使用した高強度鉄筋 USD685 は蜷川研究室から提供 を受けました.ここに記して謝意を表します. 参考文献 1) 中原浩之,高橋恵介,Nasruddin JUNUS:TRC 柱とスパンド レルビームからなる柱降伏型骨組の構造性能に関する実験的 研究,コンクリート工学年次論文,Vol.33,No.2,pp.1153-1158,2011.7. 2) 中原浩之,甲野裕貴:ひび割れ制御型 RC 造連層耐震壁の開 発に関する実験的研究,コンクリート工学年次論文集, Vol.36,No.2,pp.295-300,2014.7.

3) Kawa no, A. , Gr iffith , M  . C. , Jos hi, H. R. a nd Wa r n er , R.F.:Analysis of the Behavior and Collapse of Concrete Frames Subjected to Severe Ground Motion, Research Report No.R 163, Department of Civil and Enviromental Engineering, The Uni-versity of Adelaide, Australia, 1998.11.

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