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Positive Illusionの抑うつ抑止効果に関する再検討 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)Positive Illusion の抑うつ抑止効果に関する再検討 ∼公的・私的自己意識の観点から∼ キーワード:Positive Illusion,抑うつ抑止効果,公的自己意識,私的自己意識 人間共生システム専攻 平野 大樹 問題と目的 1.精神的健康観の変遷. 究や理論化が展開されてきている(Shedler, Manman, & Manis, 1993) 。一方、わが国の従来の研究では、総じて日. 精神的健康に関する理論は数多くあるが、従来の理論. 本人は欧米人と対照的に自己批判的なバイアスが顕著で. はいずれも「心理学的に健康な人物は自己や現実を直視. あると指摘されてきた(北山・唐沢,1995 など) 。しかし. できる」という仮説が優勢であった(e.g., Jahoda, 1958) 。. 近年の研究では、日本人にも自己、楽観、統制の 3 領域. 初期の社会的認知研究においても同様で、人は「素朴. において、部分的には PI がみられること、さらにその PI. な科学者」として客観的に世界をモニターし、相互交渉. が抑うつ傾向と負の相関があることが指摘されている. すると考えられていた(Nisbett & Ross, 1980)。しかし人間. (外山・桜井,2000; 2001) 。. の現実の推論や意思決定はこのような規範モデルとは合. 2.PI 効果への疑問①; 「PI」と周囲への過敏性として. 致せず、むしろ人の情報処理は不完全データの収集、簡. の「公的自己意識」. 便性、エラー、バイアスなどに満ちていることが示され るようになった (e.g., Weinstein, 1980)。 そこで Taylor & Brown(1988)は「自己や現実の正確 かつ客観的な知覚こそが精神的健康と結びつく」という. このように Taylor らの提言は多くの注目と支持を集め、 今や「Illusion をもつことが精神的健康にとっては必須」 という含蓄すら帯びながら、一般大衆にまで広がりを見 せつつある(Colvin & Block, 1994) 。. 従来の精神的健康観とは異なる結果を示す実証研究を包. しかし、本当に PI さえあれば、必ず精神的健康や適応. 括的に再検討した。そして自分に都合のよいように偏っ. が約束されるのであろうか。PI 研究は、新たな精神的健. て解釈された高揚的な認識、すなわち!Positive Illusion". 康論として急速な広がりを見せてきたが、その適用範囲. (以下、PI と略記)をもつことこそ、人が健康的、適応. は無批判に拡大されていった感は否めない(工藤,2000) 。. 的に生きていく上で必要であるという新たな精神的健康. 高揚的な自己評価をもつことが、すなわち抑うつの低. 観を提唱するに至った。さらに Taylor らは、PI を(1)自分. さ等の精神的健康や適応に必ずしも結びつかないことは、. 自身をポジティブに捉える、(2)自分の将来を楽観的に考. 臨床例でも散見することができる。例えば、自己愛傾向. える、 (3)外界に対する自己の統制力を高く判断する、の. の高まる青年期においては、普段は自己評価は高いが、. 3 つの領域から捉え、 主に非抑うつ者としての健常者にお. 人と競争をしたり不利な状況におかれたりすると、一転. いては、この 3 領域の PI が一貫して観察されることを見. して抑うつ的になってしまう一群が存在することが知ら. 出している。そして抑うつ的な人々がこれらの PI を抱か. れている(小塩,1998) 。このような一群に共通する特徴. ないという知見や、一連の抑うつリアリズム研究を引き. として考えられるのが「他者からの評価や批判にきわめ. 合いに出すことで、PI をもたないことは「少なくとも抑. て敏感である」ということである。彼らは、自己評価そ. うつ型の徴候を形成し、さらに症状を進行させることも. のものは高いにもかかわらず、誰かに批判されるのでは. 考えられる」と、PI の抑うつ抑止効果についても言及し. ないか、自分の能力が正当に評価されないのではないか、. ている(Taylor, 1989)。. と絶えず警戒している。そのため緊張や不安などの否定. PI の測定方法は、上記 3 領域に関して「自分自身」と. 的な感情につきまとわれることが多い(Andre & Lelord,. 「一般的な他者」を比較してその優劣を問わせる形をと. 2000) 。このことから「自分は優れている」といったよう. る。したがって、PI を有する人は、一般的他者と比して、. な高揚的な PI をもつ人でも、他者からの評価や批判に過. 自己を良き者と考え、統制力を強く信じ、未来を明るく. 敏な場合は、否定的感情に苛まれることが多くなるため、. 描く傾向が見られるということになる。. Taylor らが主張するような PI 本来が有する精神的健康を. 欧米においては、 「健康な人々はあまねく PI を抱き、 この PI が精神的健康につながる」という方向で実証的研. 維持、促進する効果は低減されるのではないかと考えら れる。.

(2) したがって、本研究では第一に、他者からの評価、批. 自覚しようと努める」 、 「自分を冷静に眺めようとする」. 判への敏感度という要因を加え、PI の精神的健康への効. といった等身大の自己知覚としての「私的自己意識*2」の. 果を検討する。敏感度の測定は、自分の外見や行動に対. 高さに注目し、PI に、私的自己意識を要因として加え、. する他者の評価、反応への敏感さを意味する「公的自己. 精神的健康への効果を検討する。私的自己意識は、自己. *1. 意識 」 (辻,1993)を用いる。. についての内省度や自己に関する知識をより精緻化しよ. 3.PI 効果への疑問②; 「PI」と等身大の自己知覚とし. うとする傾向と正の連関があるとされる(辻,1993) 。. ての「私的自己意識」. 4.本研究の目的と仮説. ところで、元来、PI は社会心理学の領域で注目され、. 本研究の目的は、他者からの評価、批判への敏感度と. 精力的に研究されてきたものであるが、心理臨床学にお. しての「公的自己意識」、等身大の自己知覚としての「私. いても Winnicott(1958)の「錯覚−脱錯覚」論に見られる. 的自己意識」の2要因を加味した場合の、PI の抑うつ抑. ように、illusion(錯覚)の意義は以前から指摘されてき. 止効果について検討を行うことである。 それにより Taylor. ていた。. & Brown(1988)以降の新たな精神的健康論に対し、より詳. 北山(2002)は、 「illusion(錯覚)」とは現実を無視した. 細な知見が得られることが期待されよう。. 誇大的な万能感や、より病理性の高い delusion(妄想)とは. 仮説:. 区別されるべきもので、 「遊び」のニュアンスを含むこと ....... や、許容されるべき知覚の誤謬、そして現実の裏づけが .. ある(傍点筆者)という意味合いが重要であると述べて. ①PI が高くとも、公的自己意識の高い人は他者からの評. いる。つまり、高揚的な認知をしようとも、あくまで現 実に立脚した、分をわきまえた感覚を保持している場合 が錯覚となるのである。一方、高揚的な認知を抱いてい るものの、等身大の自分を直視することから逃避するよ. 価、批判への敏感度が高く、否定的な感情に苛まれやす いので、抑うつの程度は高くなるだろう。 ②PI が高くとも、私的自己意識の低い人は等身大の自己 知覚から逃避しようとするために、現実を直視せざるを 得ない場面においてストレスを経験しやすく、その結果、 抑うつの程度は高くなるだろう。. うな防衛的な心性を強く有している場合は、それは「錯 覚」と呼ぶには相応しくなく、現実を否認するための「幻 想」とも呼べるものであろう。 しかし、私たちの日常においては、等身大の自分を直 視せざるを得ない場面、すなわち disillusion 場面は数多く 存在することは容易に想像できる。その事態は、等身大 の自分を直視することに逃避的な人々にとっては、PI 自 体は高くとも、非常にストレスフルな「幻滅」として経 験することが多いと予測される。逆に PI が高く、かつ分 をわきまえた感覚を有する錯覚の場合は、現実をつきつ けられる disillusion 場面においても、急激で外傷的な幻滅 ではなく、ゆるやかな「脱錯覚」でおさめることができ るのではないか。 従来の PI 研究においては、このような視座からの検討 は欠けていたように思われる。北山(2002)の指摘に倣えば、 PI が精神的健康の維持、促進に対して有効に機能するの は、逆説的ではあるが、高揚的ではありつつも、一方で 「等身大の自分を知っている」という自己知覚を伴って. 方法 1.調査対象 F 県内の国立および私立大学生、短期大 学生、専門学校生 252 名(男性 98 名、女性 154 名) 。平 均年齢は 20.8 歳(標準偏差 2.81)であった。 2.質問紙の構成 (1)Positive Illusion 尺度 外山・桜井 (2000)の自己認知尺度から、PI の測定項目であるポジ ティブ項目を使用した。 この尺度は Taylor & Brown(1988) の定義に従って、 「自己」11 項目(例:誠実である、おお らかである)、 「楽観主義」7 項目(例:借金をする、ガン にかかる*3)、 「統制*4」6 項目(例:就職がうまくいく、幸 せな結婚生活を送る)から成り立っている。各項目は 7 段 階(-3 点~3 点)で評定され、高得点ほど PI が高いことを示 す。 (2)自己意識尺度 菅原(1984)が作成した自己意識尺度 を使用した。 「公的自己意識」 (例:他人からの評価を考 えながら行動する)11 項目、 「私的自己意識」 (例:ふと 一歩離れた所から自分を眺めてみることがある)10 項目. いるからこそ、とは考えられないだろうか。 したがって、本研究では第二に、 「自分がどんな人間か. *2 私的自己意識とは、自分の感情や態度や考えていることなど、内的で他者には直接 知ることができないような自己に注意を向けやすい傾向をいう(Fenigsteinetal,1975)。. *1. 「公的自己意識」とは、他者にも観察可能な、社会的対象としての自己を意識しや. すい傾向をさす(Fenigstein,Scheier,&Buss,1975)。. *3 いずれも逆転項目。 *4 「統制できる」 というワーディングは、 一般の人においては馴染みの薄いものと考え、 「どれくらい自分の力でうまくやれるか」というワーディングに書き換えられた。.

(3) より構成され、いずれも 7 段階で評定された。. 得点が低かった。公自の主効果は有意でなかった。また. (3)抑うつ尺度 Beck, Rush, Shaw, & Emery(1979)によって. 統制 PI と公自の交互作用が有意であった(F(1, 248)=4.36,. 開発された BDI(Beck Depressive Inventory)の日本語版. p<.05) 。単純主効果検定の結果、統制 PI 高群においては、. (林,1988;林・瀧本,1991)を使用した。いずれの項目も. 公自の高低による抑うつ得点の有意差はなかったが、統. 4 段階で評定され、 高得点者ほど抑うつの程度が強いこと. 制 PI 低群においては、公自高群が公自低群よりも有意に. を示す。. 抑うつ得点が高かった(F(1, 248)=5.55, p<.05)。また公自高 群において、 統制 PI 高群が統制 PI 低群より有意に抑うつ 結果と考察. 得点が低かった(F(1, 248)=12.00, p<.05) 。. 自己 PI、楽観 PI、統制 PI、公的自己意識、私的自己意. このことより本研究の結果では、仮説①は支持されな. 識の5つに関して、平均値を基準に高群、低群に分類し. かった。結果を鑑みると、周囲への敏感さは PI を高く有. た後、以下の分析を行った(記述統計は Table1)。. する場合よりも、むしろ PI が低い場合において、より問. Table1 各尺度得点の平均値と標準偏差 自己PI 楽観PI 統制PI 公的自己意識 私的自己意識 抑うつ 平均値 3.66 2.25 2.48 54.72 47.71 12.61 標準偏差 8.54 5.75 6.01 10.94 8.75 7.4. 1.PI、公的自己意識と抑うつの関係について. 題を露呈するものと考えられる。つまり「自分は人より ダメだ」と考え、かつ他者からの評価や批判に敏感であ る人たちは、その自信のなさが周囲への過敏さと相乗効 果をなすため、より抑うつの程度が強いという解釈が可. 3 種の PI と公的自己意識(以下、 公自)によって抑うつの. 能ではないか。このように周囲に敏感である人々にとっ. 程度にどのような差が見られるかを検討するために、ま. ては「PI を抱くかどうか」ということが、彼らの精神的. ず抑うつ得点を従属変数とし、自己 PI(高・低)と公自. 健康にとって非常に重要であることが示唆された。. (高・低)を独立変数とする 2 要因の分散分析を行った。. だが一方で、仮説においては予想していなかったが、. その結果、 自己PIの主効果に有意傾向がみられ (F(1, 248). Taylor らの主張とは異なる非常に興味深い結果も得られ. =3.84, p<.10) 、自己 PI の高群が低群よりも抑うつ得点が. た。公的自己意識の低い人たちは、PI の高い場合はもち. 低かった。公自の主効果および自己 PI と公自の交互作用. ろん、低い場合においても、抑うつの程度は低いもので. はなかった。. あったのである(楽観、統制領域)。彼らにとっては、PI. 次に抑うつ得点を従属変数とし、楽観 PI(高・低)と. の高さは抑うつの高さに関係しておらず、PI が高いか否. 公自(高・低)を独立変数とする 2 要因の分散分析を行. かということは、心の安寧を保つ上で、中核的な要因で. った。その結果、楽観 PI の主効果に有意傾向がみられ(F. はない可能性が示唆されたと考えられる。. (1, 248)=3.24, p<.10) 、楽観 PI の高群が低群よりも抑. それでは彼らの心の安寧は何によって維持、促進され. うつ得点が低かった。公自の主効果はなかった。楽観 PI. ているのだろうか。小塩(1998)によれば、肯定的感覚. と公的の交互作用は有意傾向がみられ(F(1, 248)=3.06,. とは他者との比較を含む側面と、より個人的で他者との. p<.10) 、単純主効果検定の結果、楽観 PI 高群においては、. 比較を必要としない側面の異なる2側面から成り立って. 公自の高低による有意差はなかったが、楽観 PI 低群にお. いるというが、上記の問いについて考えるとき、小塩の. いては、公自高群が公自低群よりも有意に抑うつ得点が. 指摘はきわめて示唆的であるように思われる。なぜなら. 高かった(F(1, 248)=4.48, p<.05)。また公自高群において、. PI とは前述したように、「自分自身」と「平均的他者」. 楽観PI高群が楽観PI低群より有意に抑うつ得点が低かっ. との優劣を問う社会的比較を前提としている。したがっ. た(F(1, 248)=6.70, p<.01) 。. て、PI がたとえ低くても、それはあくまで「相対的」な. 最後に抑うつ得点を従属変数とし、統制 PI(高・低). 肯定的感覚が低いのであって、他者との比較に準拠しな. と公自(高・低)を独立変数とする 2 要因の分散分析を. い「絶対的」な肯定的感覚さえあれば、心の安寧は保た. 行った。その結果、統制 PI の主効果が有意であり(F(1,. れるかもしれないと考えられるからである。. 248)=7.27, p<.05) 、統制 PI の高群が低群よりも抑うつ. 今後、他者からの評価に敏感でない人々の精神的健康. Table2. PIと公的自己意識各群における抑うつ得点の平均値、SD、人数、およびF値(カッコ内はSD) 自己 楽観 統制 PI Low High Low High Low High Low 12.90(9.04):n=70 10.89(6.56):n- 53 12.05(8.17):n=79 12.00(8.10):n=44 12.26(8.29):n=76 11.66(7.88):n=47 公的自己意識 High 14.08(8.37):n=67 12.18(6.82):n=62 14.75(7.58):n=72 11.16(7.42):n=57 15.26(8.12):n=72 10.51(6.24):n=57 3.84 + 3.24 + 7.27 * PI主効果 3.24 + 0.84 . 0.87 . F値 公自主効果 7.27 * 3.06 + 4.36 * PI×公自 * p <.05 + p <.10.

(4) を既定する要因について、このような視点を盛り込みつ. Pyszczynski & Greenberg(1987)は、抑うつに陥りやすい. つ、より詳細に検討していけば、PI の抑うつ抑止効果の. 人の特徴として、自分に過度に注目することで、否定的. 効用と限界に関する議論にいっそうの深みをもたらすこ. な感情をより高めること、また否定的な結果の原因を自. とが可能となるであろう。. 分に帰属させることの 2 点をあげ、それを「抑うつ的自. ただし自己 PI に関しては、異なるパターンの結果が得. 己注目スタイル」と呼んだ。これを踏まえると、私的自. られ、自己に関する PI と、楽観、統制に関する PI でこの. 己意識の高い人は、等身大の自己知覚をしているという. ような抑うつ傾向の違いがなぜ見られるのかということ. より、むしろ抑うつ的自己注目スタイルをとりがちなの. に関しても更なる検討が必要である。. で、PI が低い場合は、自己内においてその否定的な評価. 2.PI、私的自己意識と抑うつとの関係について. を反芻、増幅させ、より抑うつ的になっていると考えら. 次に 3 種の PI と私的自己意識(以下、私自)によって. れる。逆に PI が高い場合は、抑うつに陥りやすい抑うつ. 抑うつの程度にどのような差が見られるかを検討するた. 的自己注目スタイルを有しているが、一方で PI も抱いて. め、まず抑うつ得点を従属変数とし、自己 PI(高・低). いるため、その抑うつ抑止効果によって相殺され、抑う. と私自(高・低)を独立変数とする 2 要因の分散分析を. つの程度はそこまで高くならないという解釈が可能なの. 行った。その結果、自己 PI および私自の主効果が有意で. ではないか。したがって今後は「等身大の自己知覚」を. あり (それぞれ F(1, 248)=4.74, p<.05; F(1, 248)=6.51, p<.05) 、. いかに測定するかという方法論的な問題を再考する必要. 自己 PI の高群が低群よりも抑うつ得点が低く、また私自. があるだろう。. の高群が低群よりも抑うつ得点が高かった。自己 PI と私. 3.まとめと今後の課題. 自の交互作用はなかった。. 本研究では仮説は支持されなかったが、同時に Taylor. 続いて抑うつ得点を従属変数とし、楽観 PI(高・低). ら(1988)の主張する PI の抑うつ抑止効果は、周囲からの. と私自(高・低)を独立変数とする 2 要因の分散分析を. 評価や批判に敏感である人々において、より顕著に見ら. 行ったところ、楽観 PI の主効果に有意傾向が見られ(F. れることが示唆された。また統計的には有意でないが、. (1,248)=3.71, p<.10) 、また私自の主効果が有意であっ. PI は自分の感情や動機を明瞭に知覚しようとする人々に. た(F(1,248)=4.38, p<.05) 。すなわち楽観 PI の高群が低群. おいても、より機能しているようであった。つまり自己. よりも抑うつ得点が低く、また私自の高群が低群よりも. の内外に対して鋭敏になっている状態でこそ、PI の効力. 抑うつ得点が高かった。楽観 PI と私自の交互作用はなか. が発揮されているのである。これは PI が一般的他者との. った。. 比較に基づく自己評価であることを考えれば、理にかな. 最後に抑うつ得点について統制 PI(高・低)と私自(高・. った結果であるとも言える。逆に言えば、その条件以外. 低)を被験者間要因とする 2×2 の分散分析を行った。そ. では PI が機能しない可能性も考えられる。本研究では調. の結果、統制 PI および私自の主効果が有意で(それぞれ. 査対象者を多くの先行研究と同じく青年期に設定したが、. F(1,248)=8.15, p<.05, F(1,248)=5.18, p<.05) 、統制 PI の高群. 自己の内外に鋭敏である状態は青年期に特徴的な心性で. が低群よりも抑うつ得点が低く、また私自の高群が低群. もあり、先行研究で支持されてきた PI の抑うつ抑止効果. よりも抑うつ得点が高かった。統制 PI と私自の交互作用. は、青年期的心性の下だからこそ顕著に見られた結果で. はなかった。. あるということも考えられる。自己の鋭敏さに、より幅. このように、いずれの PI と私的自己意識についても交. のある成人期や老年期においては、PI の抑うつ抑止効果. 互作用は認められず、仮説②も支持されなかった。本研. は違った様相を見せる可能性もありえよう。したがって. 究では、私的自己意識の高さによって等身大の自己知覚. 今後は前述の課題ともに、調査対象の幅を広げ、あらた. の程度を捉えようと試みたが、結果を見ると、私的自己. めてPIの抑うつ抑止効果を検証しなおす必要があるだろ. 意識の高さは抑うつの人たちが特徴的に有している認知. う。. バイアスと重なる特徴を測っていたのかもしれない。 Table3. PIと私的意識各群における抑うつ得点の平均値、SD、人数、およびF値(カッコ内はSD) 自己 楽観 統制 PI Low High Low High Low High Low 12.20(8.75):n=77 10.43(5.43):n- 53 1160(7.89):n=80 11.28(7.17):n=50 12.10(8.14):n=79 10.51(6.63):n=51 私的自己意識 High 15.12(8.47):n=60 12.57(7.54):n=62 15.30(7.69):n=71 11.77(8.24):n=51 15.58(8.19):n=69 11.53(7.40):n=53 3.84 + 3.24 + 7.27 * PI主効果 3.24 + 0.84 . 0.87 . F値 私自主効果 7.27 * 3.06 + 4.36 * PI×公自 * p <.05 + p <.10.

(5)

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