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権侵害からの解放―

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Academic year: 2021

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権侵害からの解放―

著者 宮嶋 淳

学位授与大学 東洋大学

取得学位 博士

学位の分野 ソーシャルワーク

報告番号 甲第248号

学位授与年月日 2010‑03‑25

URL http://id.nii.ac.jp/1060/00005538/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

(2)

V

H專壬謂司DI者の権利擁護

一 ナ ラ テ ィ ブ ・ ア プ ロ ー チ に よ る 人 権 侵 害 か ら の 解 放 一

キ ー ワ ー ド : ソ ー シ ャ ル ワ ー ク , ナ ラ テ ィ ブ ・ ア プ ロ ー チ , 配 偶 子 提 供 子 , 人 権 , 権 利 擁 護 , ス ト レ ン グ ス

I . は じ め に 1 . は じ め に

2 . 研 究 の 目 的 ・ 課 題 ・ 枠 組 み 3 . 研 究 の 背 景 と 意 義

4 . 研 究 で 使 用 す る 用 語 5 . 論 文 の 構 成

Ⅱ . 先 行 研 究 調 査

1 . D 1 者 を 取 り 巻 く 社 会 的 認 識 2 . D 1 者 へ の ア プ ロ ー チ

Ⅲ 研 究 の 方 法

l . 研 究 法 の 選 定 と 背 景 2 . 調 査 の 枠 組 み 3 . 分 析 の 方 法

福 祉 社 会 デ ザ イ ン 研 究 科 社 会 福 祉 学 専 攻 博 士 後 期 課 程 3 年 4 7 1 0 0 6 0 0 1 8 宮 嶋 淳 ( み や じ ま じ ゅ ん ) IV.DI者の苦悩とは何か

‑ D I 者 等 へ の イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を も と に −

l . 養 子 縁 組 制 度 を 活 用 し た 親 子 へ の イ ン タ ビ ュ ー 調 査

(第1調査)

2.養子縁組制度を活用した親子に関する調査(二次的利用)

3.日本のDI者の声(第2調査)

4.DI者の苦悩とは何か

V . D I 者 の 解 放 の た め の 理 路 の 構 築

‑ D I 者 を 取 り 巻 く 人 的 環 境 に 対 す る 調 査 か ら の 示 唆 − l.DI者の発話の変化に関する調査(第3.4調査)

2.DI者の発話に対するレスポンス比較調査(第5.6調査)

3 . D I 者 の 発 話 に 対 す る 他 者 の 認 識 に 関 す る 量 的 調 査

(第7調査)

4 . 本 章 の 総 合 考 察 V I . 結 論

1 . 結 論 を 導 く た め の パ ー ス ペ ク テ ィ ブ 2 . 先 行 研 究 調 査 か ら 得 た 結 論

3 . 研 究 か ら 得 た 結 論 4 . 本 論 の 結 論

5 . 本 論 の 限 界 と 今 後 の 課 題

. は じ め に

本論は,20世紀半ば以降にめざましく進展した生殖技術によって誕生した,新しい人間存在 が 抱 え る 苦 悩 の 本 質 を 解 明 し , 彼 / 彼 女 ら が 被 っ て い る 人 権 侵 害 か ら 彼 / 彼 女 ら を 解 放 し , 彼

/ 彼 女 ら を 取 り 巻 く 人 間 関 係 並 び に 社 会 環 境 に 潜 む 社 会 的 な 不 正 義 の 構 造 を 変 革 し , 社 会 正 義 が 全 う さ れ た 社 会 を 構 築 し て い く た め の , ソ ー シ ャ ル ワ ー ク 学 に よ る 研 究 で あ る .

2003(平成15)年4月に国の審議会の報告書が公表されて以降,既に7年以上の時間が経過 す る が , 非 配 偶 者 間 人 工 授 精 と そ れ に よ り 生 れ た 子 の 権 利 を 保 障 す る た め の 国 内 法 を 制 定 す る 取り組みは進展しておらず,諸外国がこぞって社会的な仕組みを法的に構築したことと比して,

わが国の対応は遅すぎると言わざるを得ない.

こ う し た 認 識 に 立 ち , 本 論 で は , 非 配 偶 者 間 人 工 授 精 で 生 ま れ た 彼 / 彼 女 ら の 苦 悩 の 本 質 を 解 明 し , そ の 苦 悩 か ら い か に し て 彼 / 彼 女 ら を 解 放 し て い く こ と が で き る の か を , 彼 / 彼 女 ら が権利の主体であり,当事者であるととらえ,質的量的研究を重層的に積上げ考察していくも のである.

(1)研究目的

本論は,生殖補助医療の1つである非配偶者間人工授精(=Artificiallnseminationby Donor.以下「AID」と略す.)により生まれた彼/彼女ら(=Donorlnsemination・以下「DI 者 」 と 略 す . ) が 求 め る D I 者 固 有 の 人 権 , イ コ ー ル D I 者 が 求 め る 理 念 的 権 利 を 擁 護 す る , ソ

(3)

一 シ ャ ル ワ ー ク の 理 論 を 構 築 す る こ と を 目 的 と す る .

(2)研究課題

第一にDI者が抱えている苦悩とは何かを明らかにすること.第二の課題は,DI者の苦悩を筆 者らがどのように理解したらよいのか,第三にDI者の「語り」によって新たに構築される,DI 者を権利の主体とした「物語」が,他者によりよく伝達されるための焦点を明らかにすること.

そして第四に,どのような理路により,DI者が抱えている苦悩からDI者を解放へと向かわせる の か , そ の 諸 要 因 と 道 筋 さ ら に は 構 造 や シ ス テ ム を 明 ら か に す る こ と と し た . 第 五 に 国 際 的 な 視野に立って,第四課題の普遍性についても本論の課題として吟味していくこととした.

以 上 の よ う な 研 究 課 題 を 吟 味 し て い く 中 で , ソ ー シ ャ ル ワ ー ク に よ る D I 者 の 権 利 擁 護 に か か る 理 路 に つ い て の 結 論 を 得 て い こ う と す る も の で あ る

一一

..‐。。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・DI者

対 象 の 苦 ' 脳 の 才 巴 握

図 示 , 司 七 び ' 二 角 翠 釈 I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

・・・・・・・・・・・..・・ソーシャノレワーク'二よるDI者の角翠放

一一

当 事 者 の 「 声 」 を 聴 く た め の 方 法 ・ ツ ー ノ レ の 開 発

工 工 =

物 言 吾 の 言 己 録

外 在 イ ヒ / ス ト レ ン グ ス 第 三 者 の 言 忍 言 散

セノレフ/、ノレプグノレープ 量 的 才 巴 握 と 対 策

当 事 者 自 身 ' 二 よ る 角 翠 放

ゴ ー

力 あ る 者 力 、 ら の 角 翠 放

− 二 L 」 三 一

重 層 的 な 人 権 侵 害 力 、 ら の 角 翠 放

図 −1本論の枠組み

(3)研究枠組み

本論の研究枠組みは,図1−1のとおりである.筆者は,ソーシャルワーク研究の展開過程を

[ 課 題 へ の 洞 察 → 仮 説 の 生 成 → 実 証 目 標 の 明 確 化 → 仮 説 の 実 証 → 実 証 目 標 へ の 到 達 ] で あ る と と ら え た . そ れ と 並 行 し て 研 究 対 象 , あ る い は 支 援 の 対 象 を 「 D I 者 」 と し , ソ ー シ ャ ル ワ ー ク にいう研究対象,イコール支援する対象であるととらえた.ソーシャルワーク学で実証すべきこ と は , ソ ー シ ャ ル ワ ー ク の 関 わ り に よ る 対 象 の 変 化 に あ る と と ら え た .

(4)本論の依拠する理論

本論は,DI者の「声」を物語として聴き,その物語を社会構造との関連から理解しようとす

(4)

る社会構成主義を標傍するナラテイブ・アプローチを理論的拠り所とする.

( 5 ) 本 論 の 意 義

本 論 は , 今 後 の 日 本 の ソ ー シ ャ ル ワ ー ク に お い て , 新 た に 支 援 の 対 象 と な る 者 の 理 解 並 び に その対象へのアプローチの仕方,さらには対象が抱える苦悩の本質をいかに見極め,社会的認 知 を 得 , 他 者 に 伝 達 し て い く の か を , 支 援 の 対 象 と な る 当 事 者 の 側 に 立 ち , 解 明 し て い く ソ ー シ

ャルワーク・アプローチに関する研究としての社会的学的意義を有すると考える.

本 論 の 成 果 は , 今 後 の 科 学 技 術 が 生 み 出 す , 新 し い 人 間 の 苦 悩 , D I 者 と 類 似 し た 構 造 を 有 す るニーズ,あるいは同質の苦悩を有する者へのソーシャルワーク・アプローチとして汎用性,

普 遍 性 あ る い は 再 現 性 の あ る 研 究 成 果 を 示 唆 で き た こ と に あ る と 考 え る .

( 6 ) 研 究 で 使 用 す る 用 語

生殖科学における生殖補助医療は,AssistedReproductiveTechnology(=ARTと略す.) と 称 さ れ て お り , 人 工 授 精 ・ 体 外 受 精 ・ 顕 微 授 精 ・ 代 理 懐 胎 等 の 不 妊 治 療 の 総 体 を さ す . そ の うち,本論で取り上げる生殖技術は,非配偶者間人工授精に限定しており,これをArtificial InseminationbyDonor(=AIDと略す.)といい,医療者の間では定着している.しかし,AID はAIDs/HIVと紛らわしく,使用すべきではないという当事者の主張があり,当事者の側に立 って研究を進めている本論においても,当事者の主張を重視し,非配偶者間人工授精をDonor Inseminationと称することにする.なお,イギリスを中心とする英語圏では非配偶者間人工授 精には,精子提供・卵子提供・胚提供が含まれていることからそれぞれを明確に区分している.

すなわち,精子提供による非配偶者間人工授精をDonorlnsemination(=DIと略す.)とし,

卵子提供による非配偶者間人工授精をDonorConception(=DCと略す.)としている.つまり,

こ れ ら の 用 語 は 人 工 生 殖 に 関 す る 用 法 で あ り , あ く ま で 行 為 を 称 す る も の で あ る .

(7)本論の構成

本 論 は , 上 記 の よ う な 研 究 課 題 を 実 証 し て い く た め に , 全 6 章 で 構 成 し て い る . 第 一 「 I . は じ め に 」 に お い て 本 論 の 全 体 像 を 烏 撒 し , 本 論 の 背 景 と 意 義 , 研 究 で 使 用 す る 用 語 と そ の 概 念 , 研 究 枠 組 み や ソ ー シ ャ ル ワ ー ク 学 に お け る 位 置 づ け 並 び に 社 会 的 学 術 的 貢 献 に つ い て 言 及 し た . 続 く 「 Ⅱ 、 先 行 研 究 調 査 」 で は , 配 偶 子 提 供 子 が 誕 生 し た 時 代 に 歴 史 を 遡 り , 生 殖 科 学 で誕生した配偶子提供子が社会的にどのように認識されてきたのかを明らかにしながら,DI者 の 出 自 を 知 る 権 利 が 登 場 す る ま で の 時 代 を 手 繰 り 寄 せ た . ま た , D I 者 の 出 自 を 知 る 権 利 が 登 場 す る 時 代 の 探 索 に お い て は , わ が 国 の 議 論 の み で な く , 諸 外 国 の 議 論 を 本 論 の 射 程 に お く こ と に し た . さ ら に D I 者 の 出 自 を 知 る 権 利 が 登 場 す る こ と に よ り , ソ ー シ ャ ル ワ ー ク 学 に い う 対 象 へ の 権 利 擁 護 が 展 開 で き る 可 能 性 が 示 さ れ , そ の 示 唆 に 乗 じ て 何 を 擁 護 す る の か を 探 求 し , 当 事 者 へ の ア プ ロ ー チ を 模 索 し た . 第 三 に 「 Ⅲ 研 究 の 方 法 」 で は , 調 査 の 対 象 や デ ー タ の 収 集 方法,調査の枠組みと調査項目の策定,データ入力とデータ・クリーニング手法,分析の方法 など研究方法を明確にした.第四に「Ⅳ.DI者の苦悩とは何か」では,第1・第2調査の結果 をまとめ,DI者の苦悩に関する,本論における結論を規定している.そして,第五に「V.DI 者 の 解 放 の た め の 理 路 の 構 築 」 と し て , 5 つ の 調 査 か ら 得 た 結 果 を も と に , D I 者 の 権 利 を 擁 護 す る た め の 考 察 を 行 っ て い る . 第 六 に 「 Ⅵ 、 結 論 」 で は , D I 者 が 求 め る 人 権 と し て の 権 利 を 擁 護することに関する考察,とりわけDI者のナラテイブの再構築に対してソーシャルワークが果 たす役割を吟味し,DI者の解放の理路を明らかにし,本論で得た示唆から次の研究への課題を 提示している.

││,先行研究調査

こ の 章 で は , D I 者 を 取 り 巻 く 歴 史 的 社 会 的 諸 情 勢 を 明 ら か に し て い く . そ の た め 第 1 節 に お いては,DI者が人類史上で登場することとなる1940年代に本研究の出発点を求め,ヒトに対 す る 人 工 授 精 , あ る い は 生 殖 補 助 医 療 に か か る 社 会 的 な 認 識 に 関 す る 動 向 を 検 討 し た . 第 2 節

(5)

では,そのような社会的な認識ならびに社会のあり様が,DI者に及ぼしてきた影響を吟味し,

D I 者 が 求 め て い る 「 出 自 を 知 る 権 利 」 と は 何 か を 検 討 し た . そ し て D I 者 へ の 支 援 に 関 連 す る 研究成果を検討し,DI者の苦悩の本質を見極めるための示唆を与える知見を検討し,DI者が抱 え る 苦 悩 か ら D I 者 を 解 放 し て い く 理 路 を 整 備 し て い く た め の 前 提 と な る 諸 課 題 と そ の 到 達 点 を、DI者へのアプローチとして確認していくことにした.

│││・研究の方法

研究は7つの調査で構成した.養子縁組家族に焦点をあてた第1調査.次に,日本のDI者の 声を聴取し,記録化した(第2調査).さらに第2調査でインタビューに答えてくれたDI者へ の定期的なインタビュー調査.アメリカのDI者へのインタビュー.また,DI者の解放のため の「対話」は,他者となされなければならず,他の研究で調査がなされていない他者に焦点を 絞り,第5・第6調査では医療者並びにコメデイカルスタッフ以外の対人援助職を対象とし、

第 7 調 査 で は 第 三 者 性 を 有 す る コ ミ ュ ニ テ ィ を 形 成 す る 学 生 を 対 象 と し た 量 的 調 査 を 行 っ た . 7つの調査のうち,第7調査は量的調査としており,集計にはSPSSl7.0を用いて,①単純集 計,欠損値や記述統計量の確認,②クロス集計とカイニ乗検定.③因子分析と信頼度の確認.

④因子の名づけと解釈を行った.その他の質的調査においては,質的データ分析のセオリーに 基づき,①発話記録・テキストデータの①精査.見極め・ふるいわけ、及び解釈と形態素分析,

②グラウンデッド・セオリーを参照したコードの貼り付け,構造の解釈あるいは再ストーリー 化,データのカテゴリー化,③研究成果の提示のための図化,表化を行った.

盛山(2004)・日本学術会議・学術と社会常置委員会(2003)・日本社会福祉学会(2004)・

米本(20067)・全米ソーシャルワーカー協会(1996)など,学術並びに専門職双方における研究 倫 理 の 指 針 あ る い は 要 諦 を 概 観 し , 本 論 で 行 な っ た 調 査 ・ 研 究 が 研 究 上 の 倫 理 を 逸 脱 し て い る 側 面 は 見 当 た ら な い と 判 断 し た .

│V.DI者の苦悩とは何か

この章では,「DI者の苦悩とは何か」を明確にするための2つの調査の結果と先行研究にお けるデータを活用した1つの分析結果を示し,上記の課題を探求した.

領域Ⅱ

父 親

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

領域Ⅲ

領 域 Ⅵ

人階

領 域 V ドクター

A I 、 D

私(DI)

領 域 I

睡逼ヨ

臣 与 型 領 域 Ⅳ

「字瓦1ノ

ド ナ ー

図IV‑1DI者を取り巻く課題の構造

DI者の発話から図Ⅳ‑1を構成し,DI者が自らの人権と主張する理念的な権利である「出自 を知る権利」にかかる諸要素の抽出から示唆を得て,筆者は次のようにDI者への人権侵害が社 会 シ ス テ ム と し て 構 成 さ れ て き た の で は と 考 え る に 至 っ た .

こ こ で 導 け る 結 論 は , D I 者 が お か れ て い る 状 況 の 背 後 に は 「 秘 密 主 義 と パ タ ー ナ リ ズ ム の 正 当 化 が 社 会 シ ス テ ム と し て な さ れ て き た 」 と い う こ と で あ る .

V.DI者の解放のための理路の構築

本章では,前章で明らかにした「DI者の苦悩が人権侵害である」という結論に依拠し,その

(6)

、 ー

結 果 を 考 察 し , 次 の よ う な 結 論 を 得 た .

D I 者 は , 自 ら が D I 者 で あ る こ と を 知 る 以 前 と 以 後 で , 自 ら の 物 語 を 大 き く 変 化 さ せ ざ る を 得ず,時にアイデンティティの揺らぎに至ることもある.それは,出自を知ることの中に,「DI 者であることを知る」ことと「遺伝上の父を知る」こととが含まれているからだと考えられる.

こ の 2 つ の こ と を ク ロ ス さ せ る と , D I 者 は 四 象 限 の ど こ か の 住 人 と し て 規 定 す る こ と が で き る 状況におかれている(図V‑4).そして,DI者は「知る」ことにより象限間を移動し,自らの 物語を「外在化」させていく.DI者がどの象限の住人であるのかによって提供されるソーシャ ルワークは異なり,1つのソーシャルワーク・アプローチで擁護できるDI者の侵害されている 人 権 も 限 定 的 と な る .

DI者がDI者として生きていくとき,DI者はDI者固有の人権を,自らの「人権宣言」として 表明し,他者との対話を模索する.このことをDI者のストレングスの表明ととらえると,ソー シャルワークはナラテイブ・アプローチによって,DI者の変化する物語を聴き続けると同時に、

再構築される物語にストレングスを見出していくアプローチを連結させ,「翻訳一連結一伝達 一交互作用」へと,2つのアプローチを循環的に機能させ,DI者の求めに即応していくことが 可能となる.

DI者の変化し続ける物語に即応したレスポンスを表明することは容易ではなく,DI者の変化 し続ける物語に即応した「ツール」を開発し,他者にDI者の変化し続ける物語を伝達すること は不可能ではないが困難を伴う.この困難さの克服は,伝達先である他者をソーシャルワーク が「レデイネス・アセスメント」し,DI者と他者とを媒介することで可能となるだろう。

DI者の変化し続ける物語を伝達する先が,個人・集団・コミュニティ・社会のいずれであって もソーシャルワークは,ナラテイブ・アプローチとストレングス・アプローチを交互作用させ,

DI者と対時する他者を「レデイネス・アセスメント」することによって,両者の「対話」を成 り立たせる契機を提示でき,DI者が人権侵害から解放された社会へと向かう支援を行うことが できる.

V I . 結 論

本 論 の 結 論 は , 図 Ⅵ − 1 で 示 す 構 図 の 中 で , ナ ラ テ ィ ブ ・ ア プ ロ ー チ と ス ト レ ン グ ス ・ ア プ ロ ー チ の 交 互 作 用 を 基 軸 と す る ソ ー シ ャ ル ワ ー ク を 展 開 す る こ と に よ り , D I 者 固 有 の 人 権 に 対 する,AIDを取り巻く社会システムからの侵害行為から,DI者を解放し,DI者の権利を擁護す る こ と が 可 能 と な る と い う も の で あ る .

DI者に対する人権侵害は重層的である.DI者は6つに区分できる解放のレベルに到達するご とに,人間関係や社会関係,文化・伝承関係レベルの自由を獲得し,WHOが提示する健康の各 レ ベ ル と 親 和 性 の あ る 健 康 を 回 復 す る . 解 放 と は , 心 身 ・ 社 会 ・ 文 化 的 に 健 康 で い ら れ る よ う に,自由が獲得されている状態である.このことをDI者に当てはめれば,DI者が解放されて いる状態とはDI者の固有の人権一出自を知る権利,表現の自由(権利),社会的に認められ参 加 す る 権 利 , 「 つ な が り 」 を 確 定 さ せ る 権 利 , 暴 力 に 晒 さ れ な い 権 利 , コ ミ ュ ニ テ ィ 開 発 ( 共 生 ) 権 が 擁 護 さ れ て い る 状 態 で あ る .

DI者の物語が外在化しオルターナテイブ・ストーリーが構築され,DI者が直面する環境から DI者が自由になることを,「DI者の人権侵害からの解放」であると考える.筆者のソーシャル ワークの考え方からすれば,DI者のオルターナティブ・ストーリーと対時することになる,人 権侵害の環をなすミクロ・メゾ・マクロレベルのそれぞれの環境は,それぞれのドミナント・

ス ト ー リ ー を 所 持 し て い る の で あ る か ら , ソ ー シ ャ ル ワ ー ク は そ こ で 生 起 し て い る ド ミ ナ ン ト・ストーリーを把握し続けることによって,DI者と人権侵害の環をなす環境との対崎を媒介 し , 両 者 の 間 に 介 在 し , 対 話 や コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 成 立 す る こ と を 支 援 し て く こ と に な る . そ の 際 , 留 意 が 必 要 と な る こ と は , ド ミ ナ ン ト ・ ス ト ー リ ー は 時 間 と 共 に 強 化 さ れ , 動 か し が

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た い と 確 信 さ れ る 程 度 に 固 定 化 さ れ る こ と が 稀 で は な く , ド ミ ナ ン ト ・ ス ト ー リ ー の 形 成 が [ 初 期 ・ 展 開 期 ・ 完 結 期 ] の ど の レ ベ ル に 到 達 し て い る の か を , ソ ー シ ャ ル ワ ー ク が 見 極 め る 機 能 を果たさなければ,DI者の権利擁護が成り立たない.すなわち,ドミナント・ストーリーを所 持 し て い る 他 者 を , ソ ー シ ャ ル ワ ー ク が 「 レ デ イ ネ ス ・ ア セ ス メ ン ト 」 し つ づ け て い か な け れ ば な ら な い の で あ る . そ し て , こ の 過 程 は 現 在 の わ が 国 の 状 況 を 踏 ま え て も , 既 に 検 討 し て き たようなセルフ・ヘルプ・グループの人権を求めた取り組みを踏まえても,息の長い取り組み が必要となると考えられる.いわば「DI者の人権侵害からの解放」とは,21世紀初頭に生起さ れ た 新 た な 人 権 を 求 め た 運 動 と し て の 意 味 を も つ . こ の 人 権 獲 得 の た め の 運 動 が 目 標 に 到 達 す るまでソーシャルワークは,DI者のナラテイブを聴きつづけ,DI者のストレングスにアプロー チ し な が ら , 運 動 の 継 続 を 支 え て い く こ と も 必 要 に な る .

(オルターナティブ

ス ト ー リ ー の

橋 築 )

重 層第第第第

(解放)

ソ ー シ ャ ル ワ ー ク

図VI‑1DI者の権利擁護モデル

ソーシャルワークはDI者が人権侵害から解放され,自由を獲得するまで,DI者の[脱構築一 再 構 築 ] さ れ る 物 語 を 聴 き , ス ト レ ン グ ス を 見 出 し 続 け な け れ ば な ら な い . 聴 く こ と に よ っ て 得た,あるいは構成した知識は,DI者の権利を擁護するために社会的行為として提供されなけ ればならない.その提供のされ方は,DI者が対時することとなる人権侵害の環に関するレデイ ネ ス ・ ア セ ス メ ン ト を 行 い , そ の 状 況 に 即 し た 対 話 が 構 成 で き る D I 者 の 発 話 と ス ト レ ン グ ス か

らなる指標を準備し,その指標がDI者の想いと合致しているのかを常に吟味し,「ツール」と し て 活 用 す る 際 に は 慎 重 で な け れ ば な ら な い .

ソーシャルワークは,DI者の権利を擁護するために、DI者のオルターナテイブ・ストーリー の内容やDI者の変化の中に,ストレングスを見出しつつ,DI者との間で共同の理解を生起さ せるとともに,そのストーリーが伝達可能な他者を発見し,他者の状況を理解し,他者をもド ミナント・ストーリーから解放することもめざすことによって,社会システムを変革し,DI 者がインクルージョンされた社会の中で,DI者によるDI者のための人権宣言が認知される,

新たな社会を構築していかなければならないと考える.

( 4 ) 本 論 の 限 界 と 今 後 の 課 題

本論の限界と今後の課題は,①対等性の主張から脱皮する理論の構築,@DI者の変化とスト レンスグの見立て,③ソーシャルワーク・プラクティスの全容構築,④研究の科学性の検証,

⑤生命科学への関心と理解の深化,ODI者の解放に向けた運動への協働という視座から整理で きると考える.

[関連論文]査読付単著=2本,査読付共著=4本(うち2本はファーストオーサー)

参照

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