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雑誌名 地域構想学研究教育報告

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Academic year: 2021

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〈教育実践報告〉 コロナ禍のオンライン授業にお ける学生測量実習の実践――スマートフォンを用い た樹高・建物高さ測量――

著者 ?澤 英明

雑誌名 地域構想学研究教育報告

号 11

ページ 47‑50

発行年 2020‑12‑30

URL http://id.nii.ac.jp/1204/00024400/

(2)

1.はじめに

 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影 響により,2020年の4月以降,大学などの教育機 関ではオンラインでの遠隔授業を取り入れること となった。当初,大学教員の多くは,オンライン 授業に関する経験をほとんどもっておらず,試行 錯誤的な形で授業を進めていくことになった。特 にオンライン授業の実施において困難となったも のは,測量機器を用いた実習形式の授業である。

地域構想学科の「人と自然領域」では,地域の自 然を分析するための基礎的な技術として,オート レベルやポケットコンパス,角度計などを用いた 地形・地物の測量実習を実施してきた。しかしな がらオンライン授業では,学生が大学の所有する 測量機器を利用することができなく,これらの機 器を用いた実習が困難となってしまった。これに より,測量実習の授業における根本的な構成の見 直しが必要となった。オンラインで実習授業を実 施するためには,基本的に学生の自宅にあるもの を使って,実行可能な授業に切り替えなければな らない。

 実家や一人暮らしなど多様な生活スタイルを有 する大学生において,唯一ほぼ全員が所持し,日々 の生活で利用している高性能・多機能なディバイ スがある。それは,スマートフォンである。スマー トフォンは,我々が学生時代に利用した携帯電 話(いわゆるガラケー)とは異なり,コンパスや GPSなど様々なセンサーが搭載され,ゲームやカ メラなどのアプリに活用されている。これらのセ ンサーの中の一つに,XYZ軸方向の傾きを計測 することができるジャイロセンサー(角速度セン

サー)がある。これを地形・地物測量における角 度計として活用することができれば,オンライン 授業であっても測量に関連した実習を実践するこ とが可能となる。そこで本報告では,スマートフォ ンの角度計機能を利用したオンライン授業(もし くはオンラインと対面の併用授業)での実習方法 について検討を行い,その実践結果についてまと める。

2.スマートフォンによる三角測量の方法  地形や地物の高さを測量する方法は,大きく分 けて二つある。一つ目は,オートレベルなどを利 用した直接水準測量,二つ目は角度計やGNSSを 利用した間接水準測量である。本検討では後者の 間接測量に着目し,その中でも角度計を用いた三 角測量を対象にオンライン授業での実施方法につ いて検討する。

 三角測量とは,三角関数を用いて,水平方向の 距離と傾斜角から地物の高さを推定する方法であ る(図1)。計測地点と対象物の標高が同じ場合,

以下の式より地物の高さを計算することができ る。

地物の高さ=tan(傾斜角度)×水平距離 

 通常,人にとって鉛直方向の高さは測量がしに くいものである。しかしながら,上式により水平 距離と傾斜角を高さへと変換することで,鉛直方 向の計測が容易となる。この式中の傾斜角度をス マートフォンにより計測する研究もおこなわれて おり,三角測量のためのiPhone用有料アプリも

〈教育実践報告〉

コロナ禍のオンライン授業における学生測量実習の実践

―― スマートフォンを用いた樹高・建物高さ測量 ――

柳 澤 英 明

東北学院大学教養学部地域構想学科

地域構想学研究教育報告,No.11(2020)

(3)

開発されている(伊藤ら,2010)。しかしながら,

学生のスマートフォンに有料アプリをインストー ルしてもらうことは難しいため,ここでは無料の アプリを利用した方法について検討を行う。ス マートフォンには主にiOSとAndroidのいずれか のオペレーションシステム(OS)が搭載されて おり,世界シェアでは約70%がAndroidのスマー トフォンとなっている(Statcounter GlobalStats HP)。一方,日本国内ではAndroidのシェアは少 なく,約60%のユーザーがiOSを利用していると されている。いずれにせよ,授業内でスマートフォ ンの利用を考えた場合,どちらのOSにも対応す る必要がある。

 三角測量において,必要となるアプリはスマー トフォンの傾きを計測する「角度計」,測定地点 から対象物までの距離を算定する「距離計」,三 角関数を計算できる「関数電卓」である。まず iPhoneにおいては,購入時からインストールされ ている「計測」という標準アプリがある。このア プリでスマートフォンが傾いている角度を測定す ることができる(図2)。ただし,最小単位は1°

である。一方,Androidでは,Bubble(水準器)

という無料アプリが便利で,最小単位0.1°で傾き を計測できる。次に「距離計」について,距離が 短い場合には自宅にある定規やメジャーなどで 対応すればよいが,屋外で計測する場合には家 庭用の定規で距離を測ることは厳しい。そこで,

iOS,Androidともに利用できるGoogle Earthア プリを利用する。屋外で衛星画像を確認しつつ,

自分の位置と対象物までの距離を算定することが できる。「関数電卓」については,iOS,Android ともに電卓アプリが標準としてプレインストール

されている。スマートフォンを横向きにしてアプ リを使うことで,tanやsin関数などの三角関数を 利用することができる(図3)。

3.学生実習における実践と応用

 2020年度の前期実習授業(オンライン)と後期 実習授業(オンライン・対面併用)にて,スマー トフォンを利用した三角測量に関する授業を行っ た。これらの授業における実践結果と課題につい て以下にまとめる。

(1)オンライン授業における実践

 2020年度前期の地域構想学演習(3年生ゼミ)

におけるオンライン授業の2コマ分を利用し,ス マートフォンによる三角測量実習を実施した。ゼ ミなどのオンライン授業では論文講読が中心とな り机上での作業が多くなってしまうため,コロナ 禍であってもフィールドの学びを取り入れること を意識し,本実習を実践した。

 測量における具体的な手順は図4の通りである。

まずは,対象物にしっかりと目線を向け,スマー 図1 三角測量の原理

図2 iPhone標準アプリ「計測」。スマートフォンが 傾いた角度を計測できる。

図3 iPhoneの電卓。スマートフォンを横にすると 三角関数などを利用できる。左下の表示がRadになっ ていると度数法での入力となる。

(4)

トフォンの側面が平行となるように,視準を合わ せ,傾斜角を計測する。初めての学生が実施する 場合には,附箋などで視準孔(のぞき穴)を作る と視準が容易になる。その後,観測点(目の位置)

と対象物までの水平距離を測定し,上述の式に傾 斜角と水平距離を代入して,電卓アプリで高さを 算定する。この時,算定した高さは目線の高さか ら対象物までの高さとなるため,最後に,地面か ら目線までの高さを測定し,加算することで,目 的の高さを算出することができる。

 授業では,一連の理論を学び,屋内で三角測量 の練習を行った後,各学生の自宅周辺にある屋外 の対象物について,三角測量を実施する課題を設 定した。この課題では,屋外で人と接触する必要 はなく,コロナ禍でも一人でフィールド実習を進 めることができる。図5に学生による三角測量を 実施した課題レポートの一例を示す。ここでは,

精度についての検証はできないが,測量方法への 理解度は十分であると判断できる。スマートフォ ンによる測量実習を取り入れることで,コロナ禍 においても,フィールドの学びを実践することが 可能となった。

(2)オンライン・対面併用授業における実践  2020年度後期では実習における対面授業が可能 となったが,本学の方針により希望する学生には オンラインで受講することも可能とした。ただ,

対面で参加する学生への実習としての充実度の向 上を検討しつつ,オンラインの学生が不平等感を 感じないように配慮するという難しい舵取りが必 要となった。

 通常,地域構想学基礎実習(柳澤担当分)の対 面授業では,オートレベルによる地形測量実習を 実施してきた。しかし今回は,オンラインの学生 がいることに配慮し,対面でもオンラインでも実 施可能なスマートフォンによる三角測量実習を授 業に取り入れた。ここでは前期のオンライン授業 では検討ができなかった精度検証という面につい ても学習に取り入れることとした。

 まず対面で受講している学生で,教室の壁の高

さを測量する練習を行い,その結果とメジャー測 量による誤差を検証した。この結果,スマートフォ ンを用いた三角測量は,メジャー測量に対し10%

程度の誤差に収まることがわかった。さらに対面 の学生でグループを作り,屋外の樹高を測定する 実習を行った。この時,スマートフォンによる三 角測量と測高桿(12mまで伸びる長い棒)による 計測で誤差評価を行った(表1)。この結果にお いても,おおむね10%程度の誤差に収まっており,

比較的良い精度で計測できることが分かった。こ れらの結果をオンラインの学生と共有し,各自屋 内外で対象物を決め測量を実践してもらった。対 面の学生の結果による誤差をオンラインの学生と 共有することで,測量精度についても意識できる ようになったものと考えられる。

 本授業ではさらに,三角測量とGoogle Earthに よる3D機能を活かし,大学キャンパスの立体化

(鳥瞰図)にも取り組んだ。学生のレポート結果 の一例を図6に示す。大学キャンパスが適切に立 体化されており,相応の学習成果が得られたもの と考えられる。

図4 スマートフォンを利用した三角測量の手順

図5 学生の測定結果の一例

(5)

表1 スマートフォンによる樹高測量と実測の比較 観測者 スマホ

測定  実測 誤差 誤差率

(%)

1班 13.6 12.9 -0.7 5.4 7.9 8.9 1.0 11.2 2班 12.0 11.1 -0.9 8.1 10.0 11.1 1.1 9.9 3班 10.0 11.0 1.0 9.1 9.0 9.5 0.5 5.3 4班 10.0 11.5 1.5 13.0 11.1 11.6 0.5 4.3 5班 10.3 10.1 -0.2 2.4 10.0 8.9 -1.1 12.4 単位:m 4.まとめ

 本報告では,コロナ禍におけるオンライン授業 において測量実習を体験的に実践できる方法につ いて検討を行った。その結果,スマートフォンに

よる三角測量は,身近なツールで,測量実習が可 能な方法として有用であることがわかった。日々 利用しているスマートフォンを活かすことで,学 生が取り組みやすく,応用しやすい学習ができる と考えられる。最近のスマートフォンにはジャイ ロセンサー以外にもGPSや加速度計など様々なセ ンサーが搭載されており,今後はそれらのセン サーを有効活用し,多様な測量方法をオンライン 授業で実践できるように検討していくことが望ま れる。

参考文献

伊藤拓弥・榮澤純二・矢野宣和・松英恵吾・内藤健 司(2010):高機能携帯電話端末における樹高測定 ソフトウェアの開発,日本森林学会誌,No.924, p.

221-225

図6 学生によるGoogle Earthを用いた鳥瞰図作成結果の一例

参照

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