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スギ・ヒノキ人工林における林分構造が樹幹流に与 える影響

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

スギ・ヒノキ人工林における林分構造が樹幹流に与 える影響

鄭, 聖勳

http://hdl.handle.net/2324/4110553

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

氏 名 Jeong Seonghun (ジョン ソンフン)

論 文 名 Influence of forest stand structure on stemflow in Japanese cedar and cypress plantations

(スギ・ヒノキ人工林における林分構造が樹幹流に与える影響)

論文調査委員 主 査 九州大学 教 授 大槻 恭一 副 査 九州大学 教 授 溝上 展也 副 査 九州大学 准教授 久米 朋宣

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

森林では、降水は、樹冠通過雨、樹幹流、遮断損失に配分され、その配分率(雨水配分率)は、

水資源涵養、洪水抑制などの森林生態系サービスに多大な影響を与えている。雨水配分率は林分構 造の影響を受けると考えられているため、林分構造と雨水配分率の関係を明らかにし、森林管理に よって林分構造を制御して生態系サービスを向上させることが求められている。スギ・ヒノキ人工 林では、樹冠通過雨と遮断損失の研究は盛んに行われ、林分構造指標を説明変数とした樹冠通過率・

遮断損失率の推定モデルも提案されるようになった。一方、樹幹流に関しては従来過小評価され、

無視されることが多く、樹幹流率の推定モデルも提案されていない。しかし、近年増加している無 間伐過密スギ・ヒノキ人工林における雨水配分率に関する研究は極めて少なく、無間伐過密スギ・

ヒノキ人工林における樹幹流の実態を明らかにするとともに、林分構造が樹幹流率に与える影響を 明らかにすることが求められている。そこで、本研究では、(1) 無間伐過密スギ・ヒノキ人工林の雨 水配分率の実態を明らかにし、(2) 無間伐過密スギ・ヒノキ人工林の林分構造が雨水配分率に与え る影響を見出し、(3) 林分構造指標を変数とした樹幹流率推定モデルを構築することを目的として いる。

まず、九州大学福岡演習林高田試験地の無間伐過密ヒノキ人工林(32年生、2500本/ha)に10m☓20m の観測プロットを設置し、2016年 5 月~2017年 5 月の期間に雨水配分率を観測し、従来の研究論 文36報の雨水配分率と比較している。その結果、本観測地の雨水配分率(樹幹流率:18.9%<過去 最大>、 樹冠通過雨率:47.5%<過去最小>、遮断損失率:33.6%<過去最大>)は従来報告されて いる雨水配分率と比較すると極めて特異であり、無間伐過密スギ・ヒノキ人工林における雨水配分 率のさらなる研究が必要であることを提示するとともに、樹幹流率は林分構造によっては無視でき ないほど大きいことを明らかにしている。

次に、上記試験プロットから約 50m離れた同じ立木密度(2500 本/ha)の林分に同サイズの試験 プロットを併設し、2017年4月~10月に雨水配分率の観測を実施している。さらに、無間伐過密ヒ ノキ人工林に特有の枯れ枝の状況を計測し、一般の林況(立木密度、胸高直径、胸高断面積、樹高)

以外の林分構造指標を含めて、林分構造と雨水配分率の関係に関して詳細に解析している。その結 果、樹幹流率は両プロットともに過去最大(23.3%、21.9%)で、無間伐過密ヒノキ人工林の樹幹流 率が極めて高いことを検証している。さらに、その原因を観測結果および文献レビューから検討し、

高密度に分布する枯れ枝が雨水配分率に影響を及ぼしているが、樹幹流率に影響を与えるのは上層 部の枯れ枝に限定されていることを推察している。

実測した2つのプロットの樹幹流率と林分構造のデータに加え、従来の雨水配分率に関する研究

(3)

論文から、樹幹流率および林況、樹冠被覆率、葉面積指数を掲載している研究論文25報のデータを 用いて、新たに樹幹表面積や、胸高断面積あたりの林分樹幹流集水率(stand funneling ratio)などの 指標も算定し、スギ・ヒノキ人工林における林分構造と樹幹流率の関係を総合的に解析している。

その結果、立木密度が樹幹流率に与える影響が最も大きく、立木密度を説明変数とする単回帰式で RMSE = 2.4%の精度で樹幹流率を推定できることを明らかにしている。この単回帰式は、最も一般 的な林況である立木密度のみを変数とした実用的なモデルであるが、樹木の成長による樹幹流率の 変化を反映できないという欠点を有する。そこで、林分樹幹流集水率と林分構造との関係を求めた ところ、林分樹幹流集水率は胸高直径で累乗近似できることを見出し、胸高直径と立木密度を変数 とする樹幹流率推定モデルを構築している。本モデルは、一般的な林況である胸高直径と立木密度 を変数とする実用的な樹幹流率推定モデルであり、推定精度はRMSE = 2.0%で立木密度による単回 帰式より精度が高いのみならず、樹木の成長に伴う樹幹流率の変化にも対応したモデルである。

以上、要するに本研究は、無間伐過密ヒノキ人工林における雨水配分率観測結果から、無間伐過 密人工林における雨水配分率は特異な値を取り、樹幹流率は20%強の割合を占めていることを明ら かにするとともに、林分樹幹流集水率が胸高直径によって累乗近似できることを見出し、世界にさ きがけて樹体サイズと立木密度を反映した樹幹流率推定モデルを構築したものであり、森林水文学 ならびに流域環境制御学の発展に寄与する価値ある業績と認める。よって、本研究者は博士(農学)

の学位を得る資格を有するものと認める。

参照

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