上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主
・少数株主間の利害調整 : デラウェア州における 判例法理の把握とその分析を中心に
著者 寺前 慎太郎
雑誌名 同志社法學
巻 64
号 4
ページ 1295‑1408
発行年 2012‑09‑30
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014082
( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一一五
上 場 子 会 社 の 完 全 子 会 社 化 の 場 面 に お け る 支 配 株 主 ・ 少 数 株 主 間 の 利 害 調 整
―
デラウェア州における判例法理の把握とその分析を中心に―
寺 前 慎 太 郎
第一章 はじめに第二章 支配株主による締出しに関する議論――デラウェア州法 第一節 序 第二節 完全な公正さによる審査への固執 第一款 完全な公正さによる審査 第二款 利益相反回避措置の効果 第三款 小括 第三節 完全な公正さによる審査の後退
一二九五
( )同志社法学 六四巻四号一一六上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整 第一款 公開買付けを利用した締出しの可能性 第二款 審査基準の分裂 第三款 小括 第四節 統合への動きと近年の判決 第一款 審査基準の分裂に対する学説の反応 第二款 判決による審査基準の統合 第三款 小括第三章 判例法理の変遷に関する分析 第一節 分析の視点 第二節 濫用的な訴訟への対応 第一款 少数株主によるクラス・アクションの功罪 第二款 企業買収関連のクラス・アクションの増加とその評価 第三款 クラス・アクションの脅威と審査基準の変化 第三節 内在的強圧性(inherent coercion)に対する評価の変化 第一款 判例法理の変遷と内在的強圧性 第二款 判決文にみる内在的強圧性に対する評価 第三款 利益相反回避措置への信頼と実績(empirical fact)の蓄積 第四節 小括第四章 結びに代えて――日本法への示唆と今後の課題―― 一二九六
( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一一七 第一章 はじめに 二〇一二年八月まで、コーポレート・ガバナンスと企業結合に関する規制を中心とした会社法改正の検討を目的として、法制審議会(会社法制部会)が開催されていた )1
(。そこでは、子会社の少数株主保護を目的として、親会社と子会社との間の利益相反を伴う取引により子会社に損害が生じた場合に、親会社が子会社に対して損害賠償責任を負うとの規定を創設することも検討されていた )2
(。比較法的な観点から見ても、支配株主と少数株主の間に生じる利害対立を緩和・解消することは、会社法が果たすべき大きな目的のひとつであるといわれ )3
(、さまざまな形でルールが定められている。この規定の提案も、アメリカにおいて認められている支配株主の忠実義務のルールを念頭に置いていたようである )4
(。このようなルールが実際に導入されていれば、わが国における支配株主・少数株主間の利害調整のあり方は、大きく変化していたことだろう )5
(。 もっとも、支配株主の存在が少数株主に対して常に悪影響をもたらすとは限らない )6
(。わが国においては、長期安定的な親子上場が実務として定着しており、最近では、上場子会社だからといって、その会社の業績がそれ以外の会社に劣っているとはいえないともいわれる )7
(。よって、支配株主に対する法的規制の導入にあたっては、このようなわが国の現状を踏まえた上で、慎重な検討が求められる。 このような問題については、これまで数多くの先行研究が公表されており、そこでは、ドイツ法のほか、アメリカ法が比較法の対象として紹介・検討されてきた )8
(。そして、先に述べた法制審議会での議論にあたえた影響の大きさからすれば、今後も、アメリカ法における支配株主の信認義務(忠実義務)のルールに関する研究は、依然として重要であると思われる。そこで、アメリカにおいて、支配株主の忠実義務というルールが、①どのような場面で問題になるのか、
一二九七
( )同志社法学 六四巻四号一一八上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
②どのように運用されているのか(そもそも実際に機能しているのか)、また、③わが国の既存のルールを通じて同様の結果を導くことはできないのかといった視点に基づく検討は、今後も有益なものとなると考える。 このような問題意識のもとに、本稿では、支配株主と少数株主の利害対立が激しい場面のひとつである支配株主による少数株主の締出しの問題を取り扱う )9
(。そのなかでも、本稿では、議論が必要以上に複雑になることを避けるために、親会社による組織再編を利用した上場子会社の完全子会社化の場面を主な検討対象とする )₁₀
(。このような上場子会社の完全子会社化の場面において、支配株主(親会社)は、取引条件を自らに有利になるよう一方的に設定し、それを承認することができる。そのため、どのようにして子会社における少数株主を保護するかということが大きな問題となる )₁₁
(。言い換えると、完全子会社化に利用される取引に関する条件の公正さをいかに担保するかという点が重要になるのである。 平成一七年改正前商法のもとにおいては、組織再編条件(主に合併比率)の公正さを確保するために、合併検査役制度や事前審査制度などの導入が提案されていた )₁₂
(。会社法制定後においても、いわゆる支配株主によるスクイーズアウト制度を同時に定めることを条件に、支配従属関係にある会社の間でおこなわれ、かつ、利益相反性が強い組織再編に関して、検査役の調査を要求することを提案する見解がある )₁₃
(。しかしながら、検査役制度に対する実務の評判が良くないためか、このような提案は、いまだ実現するに至っていない。 組織再編条件の公正さの担保という面では、株式買取請求権(会社法七八五条など)も大きな役割を果たしているといえる。株式買取請求権は、会社法制定時に大きく改正され、従来よりも経営陣などによる決定に対するチェック機能が重要視されるようになったとの指摘がなされている )₁₄
(。現在、少数株主の保護のための手段として実質的に機能するものは、この株式買取請求権だけであると思われる。もっとも、仮に、そうであるとしても、少数株主を保護するための手段として、株式買取請求権に過度の負担をかけることは望ましいことではないだろう。なぜなら、支配株主と少数株 一二九八
( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一一九 主を含めた株主間における利害対立の調整が問題となる場面において、株式買取請求権が十分に機能するためには、そのほかのルールと相互補完しあうことが必要となるからである )₁₅
(。 なお、取引の公正さの担保という観点とは少し異なるが、会社法制定以降、少数株主の締出しに、いわゆる﹁正当な事業目的﹂が必要かという点に関する議論も、少数株主の保護を目的として展開されている )₁₆
(。しかしながら、このような少数株主の締出しに﹁正当な事業目的﹂を要求するという見解に対しては、次のような批判が有力である )₁₇
(。すなわち、少数株主に対して支払われる対価が適正であっても認められない締出しとはどういったものを指すのかという点をはっきりさせない限り、実務に無用な混乱をもたらすだけであるというものであ )₁₈
(る )₁₉
(。 このようなわが国の状況に対して、支配株主による少数株主の締出しに関する判例の蓄積も多いデラウェア州では、取引の公正さをいかに担保するかという問題は、支配株主の信認義務と結び付けられてきたといえる。この分野に関する判例法理は、ここ三〇年の間に大きく変化してきた。これについては、次章で詳しく確認する予定であるが、ここで簡単に説明しておくと、次のとおりである。 まず、比較的早い段階における判例法理では、支配株主による締出しは、完全な公正さ(
en tir e fa irn es s
)によって審査されることとされ、特別委員会の交渉・承認や少数株主の過半数による承認といった利益相反回避措置の効果は立証責任の転換のみであるとされた )₂₀(。その後、公開買付けと略式合併の二段階を経た上で少数株主を締め出せば、完全な公正さによる審査を回避できるようになった )₂₁
(。この結果として、最終的には同一の結果がもたらされるにも関わらず、取引の構造が異なるという理由だけで審査基準が変わってしまうという問題が生じることになった。 そして、学説における議論の影響を受けながら、判例法理はさらに変化を続け、現在では次のようになっている。すなわち、締出しの条件として、特別委員会による承認(積極的な勧告)と少数株主の過半数による承認の両方が含まれ
一二九九
( )同志社法学 六四巻四号一二〇上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
ていれば、その締出しは、完全な公正さではなく、経営判断原則によって審査されるというのである )₂₂
(。もっとも、デラウェア州最高裁判所が、公開買付けと略式合併の二段階によっておこなわれる締出しにどのような審査基準を適用するかという点に関して、最終的な判断を下しているわけではない。そのため、今後さらに判例法理が変化する可能性は否定できない。 このようなデラウェア州での議論を踏まえて、わが国においても、締出しがおこなわれる際のプロセスを重要視する見解が有力に主張されてい )₂₃
(る )₂₄
(。これらの見解がとる法的構成は、少しずつ異なっている )₂₅
(。しかし、そのような見解のほとんどは、締出しにおける公正さの確保のために、特別委員会の関与や少数株主の過半数による承認といった利益相反回避措置を要求することを提案しており、デラウェア州の判例法理の影響を受けていることは明らかであ )₂₆
(る )₂₇
(。 取引のプロセスに着目する方向性を明確に打ち出しているものとして、次のような見解が実務家から示されている )₂₈
(。すなわち、後述する
Pure Resources
判決 )₂₉(を参考に、①公開買付けの成立要件のひとつとして、締出しに関する取引と利害関係のない株主が保有する株式 )₃₀
(の過半数がこの公開買付けに応募することを定め、実際にこの要件を充足していること、②公開買付け開始時に、その成立を条件に公開買付価格と同額を対価とするスクイーズアウトをすみやかにおこなうことを公表すること、および、③情報が十分に提供されていることを前提に、締出しの手続に違法または不公正な点がないこと )₃₁
(の三つの要件を満たした場合には、この公開買付価格を﹁公正な価格﹂とし、裁判所の介入を認めないとする。 この見解に対しては、先に述べたように、デラウェア州の判例法理の変遷は、この見解が参考にしている
Pure
Resources
判決以降も続いており、このことを考慮した上で更なる検討をおこなう必要があるとの指摘がなされている )₃₂(。 一三〇〇
( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一二一 また、現在のデラウェア州の判例法理によれば、特別委員会による承認(または、積極的な勧告)と少数株主の過半数による承認の両方が揃ってはじめて、より緩やかな経営判断原則による審査を受けることが可能となる。これは言い換えれば、取引条件が経営判断原則の適用を認めても良いという程度になるためには、少数株主の過半数による承認だけでは不十分であり、特別委員会の関与も必要であるということである。しかし、このような利益相反回避措置として特別委員会を取引に関与させることは、わが国においては有効に機能しないと考えられてい )₃₃
(る )₃₄
(。この場合、わが国では、少数株主の過半数による承認だけに取引条件の公正さを担保することへの大きな期待を寄せることになるが、果たして、これで少数株主を十分に保護しているといえるのだろうか )₃₅
(。この問題を検討するためには、ここ三〇年間におけるデラウェア州の判例法理の変遷とそこから読み取れる背景事情を考慮する必要があると考える。 そこで、本稿では、以上の問題意識のもとで、完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害対立の調整のあり方として、取引のプロセス(利益相反回避措置の利用)に着目する見解をより発展させるために、支配株主による少数株主の締出しに関するデラウェア州の判例法理の変遷と現時点における到達点を明らかにし、主に利益相反回避措置の法的効果の変化について分析をおこなった上で、わが国への示唆を探る )₃₆
(。その手順は、次のとおりである。 まず、第二章において、先に少し述べた支配株主による少数株主の締出しに関するデラウェア州の判例、および、それに関する学説の変遷を確認する。次に、第三章において、第二章を踏まえて、主に特別委員会の承認と少数株主の過半数による承認の二つの利益相反回避措置によってもたらされる効果に焦点をあて、検討をおこなう。ここでは、支配株主による締出しに対する審査基準として、完全な公正さ(
en tir e fa irn es s
)を利用することによって生じた弊害(濫用的な訴訟の増加)への対応という観点(第二節)と、判例が完全な公正さの適用に固執していた根拠といえるいわゆる内在的強圧性(in he re nt c oe rc io n
)に関する捉え方の変化という観点(第三節)から、判例や学説の変遷を分析する。一三〇一
( )同志社法学 六四巻四号一二二上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
最後の第四章は、まとめと日本法の検討である。
第二章 支配株主による締出しに関する議論
― ―
デラウェア州法 第一節 序 わが国の先行研究においてしばしば紹介・検討されてきたように )₃₇(、デラウェア州法を含め、アメリカ法の下において、支配株主は、会社および少数株主に対して信認義務を負う。ここでいう支配株主とは、議決権の過半数を保有する株主のことだけを指すのではない。たとえ、ある株主が五〇%未満しか議決権を保有していなかったとしても、実際に会社を支配していると認定されれば、その株主は、支配株主であるとされるのである。つまり、ある株主が支配株主かどうかは、保有する議決権数を基準として形式的に判断されるのではなく、事案に応じた実質的な判断がなされる )₃₈
(。 もっとも、支配株主と判断された者であっても、会社の株主であることに変わりなく、議決権行使を通じて自己の利益を追求することに何ら問題はないはずである )₃₉
(。このことは、支配株主に信認義務を負わせることと対立する。なぜなら、支配株主は、信認義務が課されることにより、ほかの株主の利益についてもある程度は考慮しなければならなくなるからである。 そこで、支配株主が信認義務を負うとされる根拠が問題となる。これに関しては、次の二つのアプローチが示されている )₄₀
(。すなわち、①他人の利益に影響をあたえうる立場にある者は受認者となるというエクイティ上の原則に基づくものと )₄₁
(、②会社の役員と取締役が信認義務を負うということの派生的な効果によるものである )₄₂
(。なお、②のアプローチに近いものと考えられるものとして、支配株主の信認義務に基づく責任は、支配株主をプリンシパルとし、取締役をエー 一三〇二
( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一二三 ジェントとする使用者責任のようなものであるとの説明もある )₄₃
(。 また、支配株主に信認義務違反があった場合、少数株主は、クラス・アクションを提起することができる )₄₄
(。このことによって、支配株主の信認義務に対するエンフォースメントの実効性を高めることができる一方で、原告側に立つ弁護士のインセンティブが歪み、会社の利益が損なわれるという問題も生じうる )₄₅
(。 支配株主の信認義務が問題となりうる場面はいくつか存在するが、実際に訴訟が提起されることが多いのは、少数株主の締出しの場面であるといわれる )₄₆
(。次節以降において、支配株主による締出しに関する判例をいくつか確認するが、デラウェア州においては、これらの判例以前にも、判例の蓄積が豊富であった。とりわけ、いわゆる事業目的基準を採用し、これがない少数株主の締出しは無効であるとの法理が確立されていたということは、わが国においてもよく知られていることである )₄₇
(。 本章では、この事業目的基準の廃止以降の、支配株主による締出しに関するデラウェア州の判例法理の変遷を確認する。ここでは、特に、締出しがおこなわれるプロセスの公正さに関するものに焦点をあてる )₄₈
(。
第二節 完全な公正さによる審査への固執第一款 完全な公正さによる審査 これから確認するように、デラウェア州における支配株主による締出しに関する判例法理は、ここ三〇年の間に大きく変化してきた。その中でも、
W einberger
判決は、現代の判例法理の基礎を築いたものであると評価されている )₄₉(。そこで、本稿では、デラウェア州の議論を概観する手始めとして、この判例を取り上げる。 この判例には、従来の判例が採用していた事業目的基準を廃止したことを含め、多くの重要な論点が含まれている )₅₀
(。
一三〇三
( )同志社法学 六四巻四号一二四上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
このうち、本稿との関係で重要となるのは、支配株主による締出しに対する審査基準と立証責任の所在である。この二点を中心に、
W einberger
判決の事案と判旨を取り上げる。W einberger
判決 )₅₁(
︹事実︺
Sig na l
社は、多くの子会社を通じて、多角的に事業を展開している上場会社である。そして、UOP社は、石油事業を含むさまざまな事業を多角的におこなっている事業会社であり、同社の株式は、ニューヨーク証券取引所に上場されていた。一九七五年四月に両社が友好的な買収交渉を始めた結果、Sig na l
社は、新株の引受けと公開買付け(払込金額と対価は、どちらも一株あたり二一ドル)によって、UOP社株式五八〇〇万株(社外株式の五〇・五%)を取得した。また、UOP社の取締役会は一三名の取締役により構成されていたが、そのうち七名の取締役がSig na l
社の関係者であった。なお、この七名の中には、一九七五年に社長兼CEOが辞任した際、その後任としてSig na l
社により送り込まれたC ra w fo rd
も含まれていた )₅₂(。 一九七八年に、
Sig na l
社は、余剰資金の使い道として、UOP社の残りの株式を獲得することを検討し始めた。Sig na l
社の取締役会会長W alk up
と同社の社長であるSh um w ay
らの指示により、副社長兼企画担当取締役A rle dg e
と上級副社長兼CFOのC hit ie a
が、残りのUOP社株式の取得に関する予備調査(fe as ib ilit y st ud y
)をおこなった )₅₃(。調査の結果、
A rle dg e
およびC hit ie a
は、残りのUOP社株式の取得は、対価が一株あたり二四ドルまでなら、Sig na l
社にとって良い投資案件であるとの結論を出した。なお、この予備調査については、UOP社の取締役会で議論されたり、Sig na l
社によるUOP社の合併(以下、﹁本件合併﹂とする)の承認に関する株主総会決議までに、UOP社の少数株主に対して開示されたりしたという事実は認定されていない。 一三〇四( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一二五 その後、
Sig na l
社での執行委員会、および、Sig na l
社とUOP社の両社で同時におこなわれた取締役会を経て、当事会社間で本件合併について合意に至った。本件合併の対価は、UOP社株式一株あたり二一ドルの金銭とされた。また、本件合併に関する契約において、本件合併に関するUOP社の株主総会決議の決議要件は、次のように定められていた。すなわち、本件合併が承認されるには、①UOP社の少数株主の過半数による賛成があり、かつ、②賛成の割合が、Sig na l
社の保有する五〇・五%と合わせて全体の三分の二以上でなければならないというものである。なお、本件合併が合意にいたるまでの過程で、C ra w fo rd
は、本件合併について検討するため、L eh m an B ro th er s
にフェアネス・オピニオンの作成を依頼していた。しかしながら、Sig na l
社に対して、合併対価の増額を積極的に要求するといったことはおこなわれていなかった。 本件合併の内容は、株主総会および委任状説明書によって、UOP社の株主に伝えられ、本件合併についての株主総会決議がおこなわれた。その株主総会決議では、少数株主が保有している株式の五六%につき議決権が行使され、少数株主全体の五一・九%が本件合併に賛成した。これにSig na l
社の保有分を加算すると、社外株式全体の七六・二%が本件合併に賛成したことになる。このような承認決議を経て、本件合併は、この株主総会の開催日である一九七八年五月二六日に効力が発生した。その結果、少数株主の保有していたUOP社株式は、一株あたり二一ドルの金銭を受け取る権利に転換された。 このような事実関係において、UOP社の元株主であった原告が、同社の少数株主であった者たちを代表してクラス・アクションを提起し、Sig na l
社、UOP社、および、両社の取締役・役員を被告として )₅₄(、本件合併の無効と原状回復的損害賠償を求めた。原審において、本件合併の条件は公正なものであったとされ、原告の請求は認められず )₅₅
(、これに対して原告が上訴した。
一三〇五
( )同志社法学 六四巻四号一二六上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
︹判旨︺ ﹁被告にとって有利な判決を下す際に、︹原審の︺裁判官は、締出し合併(
ca sh -o ut m er ge r
)を攻撃する訴訟の原告は、少数株主にとって合併条件が不公正であることを証明するために、詐欺、不実表示、または、その他の不法行為に関する特定の行為を主張しなければならないという彼が以前下していた結論を繰り返し述べた。われわれは、このルールに同意し、これを支持する。 ︹原審の︺裁判官は、たとえ、取引が公正であるという圧倒的多数の証拠を示す最終的な立証責任が、多数派株主の側にあったとしても、公正さに関する義務(th e f air ne ss o bli ga tio n
)を生じさせる何らかの根拠を証明することは、合併の効力を争う原告の第一次的な責任であるとの判示もしていた。われわれは、その原則に同意する。しかしながら、会社の行為が、十分に情報提供を受けた少数株主の過半数による議決権行使によって承認された場合、取引が少数株主にとって不公正であることを示す立証責任は、原告に完全に移転すると結論づける。⋮しかし、取引に関連するすべての重要な事実が完全に開示されたことを示す責任は、議決権行使を頼りにする者にそのまま残ることは明らかである。﹂ )₅₆(
﹁デラウェア州の株式会社の取締役が取引の両側に立っている場合、この者たちには、最大限の誠実さ、および、交渉にあたっての最も良心的かつ本質的な公正さ(
th e m os t s cr up ulo us in he re nt fa irn es s o f b ar ga in
)を証明することが求められる。⋮公正さの要件は、ある者が取引の両側に立つ場合、その︹取引が︺裁判所による注意深い審査基準を満たすのに十分な完全な公正さ(en tir e f air ne ss
)を立証する責任を負うという要求の点で断固としたものである。⋮ 親子会社が問題となる状況のように、ある者が、二つまたは複数の取締役の地位を兼任している場合、このような義務は希釈化されない。⋮よって、︹親会社と子会社の︺二つの会社の取締役として二重の立場で行動する個人は、両方の会社に対して、同じ良質な経営(go od m an ag em en t
)に関する義務を負い、そして、交渉に関する独立した構造⋮ 一三〇六( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一二七 やいかなる問題への参加を取締役が全体的に控えることがなければ、この義務は、両方の会社にとって何が最良なのかという観点により果たされるべきである。﹂ )₅₇
(
﹁公正さ(
fa irn es s
)の概念には、二つの基本的な側面がある。すなわち、公正な取扱い(fa ir de ali ng
)と公正な価格(fa ir pr ic e
)である。前者は、どのタイミングで取引をおこなうことにしたか、着手の方法、構造、交渉の状況、および、取締役会への開示の方法がどのようなものであったか、ならびに、取締役会および株主総会での決議の状況がどうであったかという問題を含んでいる。公正さに関する後者の側面は、提案された合併の経済的、財務的な考慮要素に関連するものであり、この側面は関連するすべての要素を含んでいる。すなわち、資産、市場価格、利益(ea rn in gs
)、将来の見込み、そして、株式の本質的な価値(th e in tr in sic o r i nh er en t v alu e
)に影響をもたらすその他のいかなる要素が含まれるのである。⋮しかしながら、公正さに対する審査は、公正な取扱いと公正な価格というように、二つに分かれておこなわれるものではない。問題は完全な公正さに関するものであるから、争点に関するすべての側面を、全体的に審査しなければならない。しかしながら、詐欺とはいえない取引の場合、われわれは、価格が⋮主要な考慮要素であることは認識している。﹂ )₅₈(
なお、脚注七において、次のような忠告がなされている。 ﹁もし、UOP社が、独立当事者間のように
Sig na l
社と取引をおこなうために、同社の社外取締役による独立交渉委員会を任命していたのなら、ここでの結果はまったく違うものとなりえただろう。⋮この文脈における公正さは、⋮理論上、完全に独立した取締役会によって行動することと同一視できるため、この処置が明らかに考慮も検討もされなかったことは、不運なことである。⋮特に、親子会社間の問題が争われる場面では、あたかも両当事会社が、独立当事者間において、相手方に対し交渉力を実際に行使したかのような行動をとっていたということを示すことが、取引が公正一三〇七
( )同志社法学 六四巻四号一二八上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
さの基準を満たしているという強力な証拠となる。﹂ )₅₉
(
W einberger
判決が示した審査基準と立証責任に関する判示をまとめると、次のようになる。まず、親子会社間での合併のように、取引の両側に立っている者(支配株主など)がいる場合、その取引については、完全な公正さによる審査がなされる。そして、この完全な公正さは、公正な取扱いと公正な価格の二つの要素から構成される。しかし、実際に取引を審査する場合において、この二つの要素は、完全に独立しているわけではなく、事案に応じて総合的に考慮される。 一方で、立証責任に関しては、被告である支配株主が、その取引が完全に公正であることを立証する責任を負うことになる。しかし、株主に対して十分な情報提供がなされた上で、取引に関する少数株主の過半数による承認があれば、立証責任の転換が生じる。すなわち、取引の効力を争う側が、取引の不公正さを立証しなければならないのである。もっとも、立証責任が転換された場合であっても、﹁取引に関連するすべての重要な事実が完全に開示された﹂かという点に関する立証責任は被告側に残る。 このような支配株主による締出しの場面における審査基準および立証責任は、その後、Rosenblatt
判決でも確認されている )₆₀(。同判決によって、少数株主の過半数による承認の法的効果は立証責任の転換のみである(審査基準の変更ではない)ということが、よりいっそう明確になったと考えられているようである )₆₁
(。 また、
W einberger
判決は、その脚注七において、独立取締役で構成され、交渉権限を有する特別委員会の存在が、取引の公正さを示す証拠として大きな役割を果たしうるとの指摘をおこなっている )₆₂(。そして、
Rosenblatt
判決も、同じく脚注七において、ほぼ同様の見解を示しているが、同時に、﹁そのような委員会の利用は、公正さの認定にとって 一三〇八( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一二九 必要不可欠ではない﹂とも述べている )₆₃
(。そのため、先に述べた少数株主の過半数による承認の場合とは異なり、特別委員会の設置が取引の審査に対してどのような法的効果を生じさせるのかという点に関しては、今ひとつ明確ではなかった。また、特別委員会が備えておくべき要件についても同様である。これらの問題は、その後の判決において、議論を生じさせることになる。
第二款 利益相反回避措置の効果
W einberger
判決によって、支配株主が取引の両側に立っている場合に、その取引は、完全な公正さによる審査に服するということが示された。その一方で、利益相反回避措置(特に特別委員会)がもたらす法的効果やそれに必要な要件に関しては、あいまいなまま残された。本款では、W einberger
判決以降に、この問題を扱った主な判決を概観する。 当時、利益相反回避措置による法的効果に関しては、デラウェア州衡平法裁判所の判決において、次の二つの見解が対立していた。すなわち、①立証責任の転換が生じるだけではなく、審査基準が完全な公正さから経営判断原則に変わるという見解、および、②審査基準は完全な公正さのままで、立証責任の転換だけが生じるという見解である。 まず、①の見解を採用した判決として、Trans W orld Airlines
判決 )₆₄(がある。この判決の事案は、合併の消滅会社の少数株主が、支配株主らを被告として、信認義務違反などの主張に基づき、当該会社と支配株主が支配する会社との合併の差止めを求めたというものであった。同判決は、利益相反回避措置の効果について、次のように述べている。すなわち、﹁適切に利用された場合、利害関係のない取締役で構成される特別交渉委員会という措置と利害関係のない株主の過半数による承認を要求する合併条項という措置の両方は、経営判断原則の実質的な法の側面を適用可能なものとし、手続上、そのような取引が少数株主の権利を侵害するということに関する立証責任を原告側に戻すという司法上の効果
一三〇九
( )同志社法学 六四巻四号一三〇上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
を有する﹂。 )₆₅
(他方で、同判決は、両方の措置のうち片方だけの場合には、立証責任の転換が生じるだけであるとする )₆₆
(。 このように、
Trans W orld Airlines
判決は、特別委員会と少数株主の過半数による承認の両方の措置があれば、争いの対象となっている取引の審査基準は経営判断原則になると判示した。同判決は、このような解釈を採用する根拠として、﹁経験が、その手続き )₆₇(は十分に機能しうるということを証明してきた﹂とだけ述べる )₆₈
(。 また、同判決は、特別委員会の利用により立証責任の転換が認められるためには、次の二点が要件となるとする )₆₉
(。すなわち、特別委員会が、少数株主の利益を積極的に促進・保護しようとするという自分たちの役割を十分に理解していること、および、会社と少数株主の株式に関する公正な価値について十分に情報を得ていることである。 一方、
Citron
判決 )₇₀(は、②の見解をとった。この判決の事案は、少数株主が、親子会社間での合併について、支配株主の信認義務違反などを理由に、クラス・アクションを提起したというものである。この事案では、少数株主からの責任追及に備えて、特別委員会が設置された上に、少数株主の過半数による承認を受けることを合併の成立要件とするなどの一定の措置が施されていた )₇₁
(。この判決において、支配株主の責任について判断をおこなう際に、裁判所は、
W einberger
判決とRosenblatt
判決を参考に、親子会社間での合併が争われる場面においては、特別委員会による交渉や少数株主の承認によって、立証責任の転換が生じることがあっても、審査基準が変わることはないと判示した。そして、その根拠として次のように述べる。 ﹁親子会社間の合併は、⋮会社を支配し、そして、これからも支配し続ける当事者によって提案される。これは、少数株主が、取引を承認するために議決権行使をおこなうか、または、拒絶するために議決権行使をおこなうかによって変わることはない。支配株主関係(th e co nt ro llin g sh ar eh old er re la tio ns hip
)には、支配株主ではない当事者との取引では生じる可能性が低い方法によって、どれほどわずかであったとしても、少数株主の議決権行使に影響をあたえると 一三一〇( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一三一 いう内在的な可能性がある。 強圧性(
co er cio n
)が意図されていない場合でさえ、親子会社間での合併に関する議決権行使をおこなう株主は、自分たちが承認しないことで、支配株主によるなんらかの報復を受ける可能性がありうることを認識しているだろう。たとえば、支配株主は、配当の廃止、または、その後、︹株主にとって︺それほど有利ではない価格による締出し合併の実行を決定するかもしれない。そして、これらに対する救済手段は、時間と費用のかかる訴訟であろう。少なくとも、そのような認識の可能性と、それが株主の議決権行使にあたえる潜在的な影響力は、決して完全に排除されうるものではないだろう。したがって、会社とその支配株主との間での合併―
利害関係のない独立した取締役による交渉がなされたものでさえ―
において、どの裁判所も、取引の条件が、独立当事者間での交渉において、真に独立した当事者であれば達成していただろう条件へ十分に近づいたと確信することはできない。その不確実性を前提にすると、裁判所は、親子会社間での合併を承認した少数株主でさえ、すべての重要な事実の開示によりあたえられるものを超える手続上の保護が必要であるという結論を下すだろう。そのような保護をあたえるひとつの方法が、より厳格な完全な公正さによる審査に固執することだろう。﹂ )₇₂(
これをまとめると、次のようになる。すなわち、親子会社間の合併の場合、独立当事者間取引の場合とは異なり、支配株主が、少数株主の議決権行使に少なからず影響をあたえうる。一方で、少数株主は、支配株主からの報復をおそれ、自分の意思に沿った議決権行使ができなくなるかもしれない。そして、このような少数株主は、実効的な救済手段を持たないことから、情報開示以上の何らかの保護が必要となる。その保護の手段として、親子会社間の合併における審査基準を常に完全な公正さとすることが考えられる。このような見解は、後に﹁内在的強圧性(
in he re nt c oe rc io n
)﹂ )₇₃(などと表現されることになる )₇₄
(。
一三一一
( )同志社法学 六四巻四号一三二上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
また、この
Citron
判決は、先に挙げたTrans W orld Airlines
判決に対して、最高裁によって示された先例であるRosenblatt
判決を引用していないとして、経営判断原則の適用を認める判断の妥当性に疑問を投げかけている )₇₅(。 このように、
W einberger
判決以降、下級審判決のレベルでは、利益相反回避措置について見解の対立が見られた。しかし、この問題は、次に確認するL ynch
判決によって解決された。L ynch
判決 )₇₆(
︹事実︺
Ly nc h
社は、電気通信装置の設計・制作をおこなっているデラウェア州の株式会社である。一方、持株会社であるA lc at el
社は、フランスで電気通信事業などをおこなっているA lc at el
(S.A .
)社の子会社である。さらに、このA lc at el
(S.A .
)社も、フランスの会社であるCGE社の子会社である )₇₇(。 一九八一年に、
A lc at el
社は、Ly nc h
社との株式譲渡契約に基づき、同社の普通株式のうち三〇・六%を手に入れた。この株式譲渡契約に基づき、Ly nc h
社は、企業結合(bu sin es s c om bin at io n
)の際には八〇%の株主からの賛成を得なければならないとする旨の基本定款の変更をおこなった )₇₈(。そして、本件で争われた合併がおこなわれるまでに、
A lc at el
社は、Ly nc h
社の社外株式のうち四三・三%を保有し、同社の取締役一一名のうち五名、執行委員会のメンバー三名のうち二名、報酬委員会のメンバー四名のうち二名を任命した。 一九八六年春に、Ly nc h
社は、電気通信業界において競争力を維持するため、光ファイバーの技術を獲得することを決定し、Te lc o
社の買収を計画した。この買収計画を進めるためには、A lc at el
社の同意を得る必要があったため、一九八六年七月に、Ly nc h
社のCEO兼取締役会会長であるD er tin ge r
は、CGE社の取締役会会長であるSu ar d
に連絡を 一三一二( )上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整同志社法学 六四巻四号一三三 取った。しかし、
Su ar d
は、A lc at el
社がこの買収計画に反対していることを伝えた。そして、A lc at el
社は、その代わりとして、CGE社の子会社であるC elw av e
社との提携を提案した。 一九八六年八月一日に開かれた定時取締役会で、このA lc at el
社からの提案がLy nc h
社の取締役に伝えられた。そして、この取締役会では、C elw av e
社との交渉、および、同社との提携における適切な条件に関する勧告をおこなうため、K er z
、W in em an
、および、B er in ge r
の三名で構成される独立委員会の設置が全会一致で決議された。独立委員会とC elw av e
社は、お互いが雇った投資銀行も交え、交渉をおこなったが、一九八六年一〇月三一日に、独立委員会は、Ly nc h
社とC elw av e
社の提携に全会一致で反対する旨を表明した。 このような独立委員会の反応を受け、同年一一月四日に、A lc at el
社はC elw av e
社との提携案を撤回し、次のような提案をおこなった。すなわち、A lc at el
社自身が、Ly nc h
社と合併することによって )₇₉(、
A lc at el
社が保有していないLy nc h
社の株式(全体の約五七%)を一株あたり一四ドルの金銭で買い取るというのである(以下、このA lc at el
社との金銭を対価とする合併を﹁本件合併﹂とする)。 一一月七日、Ly nc h
社の取締役会は、独立委員会への委任の内容を変更し、K er z
らに本件合併に関する交渉権限をあたえた。同日に開催された会議において、独立委員会は、一株あたり一四ドルという対価が不十分であるとの結論を出した。また、独立委員会の法務アドバイザーであるSk ad de n A rp s
社も、独立委員会はいわゆる﹁ホワイト・ナイト﹂による買収などの代替案を検討するべきであると示唆していた。 一一月一二日、独立委員会の委員長であるB er in ge r
は、A lc at el
社の交渉代理人であるD illo n R ea d
社のM cC ar ty
と連絡を取り、対価についての交渉をおこなった。その後、A lc at el
社側は、最終的に対価を一株あたり一五・五〇ドルまで引き上げた。一一月二四日に開かれた独立委員会の場で、B er in ge r
は、その他のメンバーに対して、次の二点を一三一三
( )同志社法学 六四巻四号一三四上場子会社の完全子会社化の場面における支配株主・少数株主間の利害調整
伝えた。すなわち、①仮に、一株あたり一五・五〇ドルという対価が、独立委員会によって勧告(
re co m m en da tio n
)されず、Ly nc h
社の取締役会の賛成も得られないならば、A lc at el
社は、これより低い対価で敵対的な公開買付けを仕掛けてくるということ、および、②本件合併の代替案をいくつか検討したものの、その実行可能性は低いということである。そして、独立委員会は、財務アドバイザーおよび法務アドバイザーとの協議の後、取締役会に、一株あたり一五・五〇ドルというA lc at el
社からの提案に賛成するように勧告することを全会一致で決定した。独立委員会終了後、取締役会は、A lc at el
社と利害関係のある取締役を除いた上で、本件合併に賛成する旨の決議をおこなった )₈₀(。 このような事実関係のもとで、原告である
K ah n
は、はじめに本件合併の差止めを求めた。しかし、この請求は認められず、その後訴状を変更し、被告を除いたLy nc h
社の株主全員を代表するクラス・アクションを提起し、支配株主であるA lc at el
社の信認義務違反に基づく損害賠償請求をおこなった。原判決は、A lc at el
社がLy nc h
社の支配株主であることは認めたが、信認義務違反があったとはいえないとして、原告の請求を棄却した )₈₁(。これに対して、原告が上訴をおこなった。
︹判旨 )₈₂
(︺ まず、裁判所は、
W einberger
判決を引用し )₈₃(、取引の両側に立つ支配株主は、その取引が完全に公正であることを立証する責任を負い、その公正さは、公正な取扱いと公正な価格の二つの側面を有するということを確認する。そして、裁判所は、次のように判示する。 ﹁