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子会社株式の追加取得と売却 : 支配概念と利益測定

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(1)論  説. 子会社株式の追加取得と売却 一支配概念と利益測定. 大  雄. 1.はじめに. 蕊. 性,結合する会社の相対的規模といった規準は,. 要するに,支配の継続性を確かめるためのもの.  アメリカの企業結合会計基準の変遷をたどる. であり,これらが持分の継続性を補完する規準. と,持分の継続性と支配の継続性という2つの. として考慮されていたのである.このように,. 規準から企業結合の実質が判断され,それに応. かつての企業結合会計基準では,SFAS 141と. じてその会計方法が決められてきたことがわか. は異なり,第一義的には持分の継続性が取引の. る.2001年6月に公表された財務会計基準審議. 実質を判断する規準として適用されていた.. 会(Financial Accounting Standards Board:.  確かに,形式的には,企業結合の実質は持分. FASB)の基準書第141号(Statement of. の継続性と支配の継続性という2つの観点から. Financial Accounting Standards No.141:. とらえられる.例えば,株式交換による合併で. SFAS 141)では,もっぱら支配の継続性から. は,合併会社と被合併会社株主とのあいだで,. 取引の実質が判断され,結果的に,すべての企. 合併会社株式と被合併会社株式とが交換される.. 業結合にパーチェス法(purchase method)が. 合併会社は自社株と引き換えに被合併会社株式. 適用されることになったが,かつての会計原則. を100%取得し,その会社の資産と負債をすべ. 審議会意見書第16号(Accounting Principles. て引き継ぐ.それにより,通常,合併会社は被. Board Opinion No.16:APBO l6)や会計研究. 合併会社の資産に対する支配を獲得する.しか. 公報第48号(Accounting Research Bulletins. し一方で,被合併会社株主は,その株式と引き. No.48:ARB 48)などでは,むしろ持分の継続. 換えに合併会社の株式を取得している.それに. 性からその実質が判断されていた.. より,被合併会社株主は合併会社株主とともに,.  APBO 16では,12の要件をすべて満たした. 合併後の会社のリスクを共有することになる.. 企業結合にのみ持分プーリング法(pooling of. 形式的には,被合併会社の株主持分も合併会社. interests method)が適用され,それ以外の企. の株主持分も清算されないのである.したがっ. 業結合にはパーチェス法が適用されることにな. て,この取引の実質は,資産に対する支配の獲. っていたが,その要件のうち7つは持分の結合. 得とみることもできれば,株主持分の結合とみ. 方法にかんするものであった1).また,ARB 48. では,持分の継続性と経営者や経営支配力の継.  1)APBO l6における持分プーリング法の適用要. 続性,結合する会社の相対的規模などから取引. 件を分類すると,(1)結合する会社の属性についての 要件が2つ,(2)株式交換の方法についての要件が7 つ,(3)結合後の取引についての要件が3つとなって. の実質が判断され,その会計方法が決められて いた(pars.3−6).経営者や経営支配力の継続. いる(pars.45−48)..

(2) 78(262). 横浜経営研究 第24巻 第3号(2003). ることもできる2).. な会計方法を導くことになるのか明らかにする..  取引の実質をこれら2つの規準から判断する フレームワークは,合併にかぎらず子会社株式. 前述のとおり,SFAS l41では,もっぱら支配. の追加取得や売却などその他の取引にも適用で. その点は,2002年12月に公表された国際会計基. きるはずである.例えば,親会社が現金で子会. 準審議会(lnternationa1 Accounting. 社株式を追加取得するケースでは,親会社の子. Standards Board:IASB)の公開草案について. 会社資産に対する支配は不変のまま,親会社の. も同じである.それを与件とするならば,矛盾. 資金が子会社事業に追加的に投下され,少数株. のない会計システムでは,企業結合と同じく子. 主持分が清算される.この取引の実質は,子会. 会社株式の追加取得と売却についても,支配の. 社資産に対する支配の維持とみることもできれ. 継続性からその実質が判断され,それに応じた. ば,少数株主持分の取得とみることもできる.. 会計方法が適用されるはずである.それをふま. 仮に,前者をこの取引の実質とみれば,それに. えて,支配概念と利益測定との関係を考察する. 対応する会計方法はパーチェス法ではなく持分. ことも本稿の課題である.. プーリング法に準じたものとなるであろう3). 親会社はすでに子会社資産を完全に支配してお. の継続性から企業結合の実質が判断されている.. 2.支配概念と持分概念. り,子会社株式を追加取得しても連結資産は不. 2.1 支配概念の特徴. 変と考えられるからである.それに対して,後.  支配の継続性と持分の継続性の意味を明らか. 者をこの取引の実質とみれば,それに対応する. にするためには,まず支配概念と持分概念が定. 会計方法はパーチェス法に準じたものとなるで. 義されていなければならない.ここでは,それ. あろう.親会社は取得した少数株主持分の公正. ぞれの定義を明らかにするとともに,2つの概. 価値に見合う資金を投下しており,それが回収. 念の関係を確かめてみたい.. すべき原価になると考えられるからである..  1999年に公表されたFASBの公開草案「連結.  このように,取引の実質を判断する規準とし. 財務諸表:目的と方針」によると,支配. て,持分の継続性と支配の継続性のどちらを選. (control)は,「事業体(entity)が,他の事業. 択するかで,適用される会計方法が異なりうる.. 体の活動からの便益を増加させたり,損失を制. ただし,特定の会計方法を導くこれらの規準の. 限したりするために,その事業体の進行中の活. 意味はもっと明確にされなければならない.本. 動の方針や経営を指揮する能力」(par.6)と. 稿では,持分の継続性とは何か,支配の継続性. 定義されている.また,IASBの基準書第22号. とは何か,この2つは互いにどのような関係に. (lnternational Accounting Standard IAS 22). あるのか,といったことがらを明らかにする.. では,「企業活動からの便益を得るために,そ. さらに,子会社株式の追加取得と売却に対して. の企業の財務および経営方針を左右する力」. これらの規準を適用したとき,それがどのよう. (par.8)と定義されている.いずれにしても,. 企業または事業体の方針に対する力として支配  2)ここでは,結合する会社の株主持分が一体と なることを「株主持分の結合」とよんでいる.. が定義されている.それに対して,1995年に公.  3)持分プーリング法によって処理される取引の 本質が,株式交換による株主持分の結合であるとす. 表されたFASBの公開草案「連結財務諸表:方 針と手続き」によると,支配は,「事業体の資. れば(APBO 16, par.47),子会社株式の追加取得に適. 産に対するカー支配事業体がその資産を利用し. 用される会計方法を持分プーリング法とよぶことは できないであろう.ここでは,のれんの計上や資産 の評価替えをしない会計方法を持分プーリング法に. 個々の資産を利用する,またはその利用を指揮. 準じた方法とよんでいる.. する力」(par.ユ0)と定義されている.前述の. うるのと実質的に同じように,他の事業体の.

(3) 子会社株式の追加取得と売却一支配概念と利益測定一(大雄 智). (263)79. 2つの定義と異なり,そこでは,企業または事. 社との関係についていえば,支配は親会社と子. 業体の資産に対する力として支配が定義されて. 会社との関係ではなく,親会社と子会社資産と. いる.. の関係をとらえる概念なのである.ただし,つ.  ここで確かめなければならないのは,企業の. きつめれば,支配の対象は企業の資産というよ. 方針に対する力と企業の資産に対する力との関. りは,資産から生じる将来の経済的便益といっ. 係であろう.FASB(1995, par.10,1999, par.. たほうがよいであろう.企業によって支配され. 11)では,企業の方針を左右できれば,その企. た将来の経済的便益が資産としてその企業の会. 業の個々の資産を自由に利用したり,処分した. 計測定の対象となるわけである.つまり,資産. りできると解釈されている.ただし,いうまで. は企業が支配しようとする経済的便益として定. もなく,会社の所有者である株主はその会社の. 義される(ljirL 1975, p.52).. 資産を所有するわけではない.子会社の支配株.  また,FASB(1999)は,支配の本質的な特. 主である親会社も子会社の資産を所有するわけ. 徴として,(1)子会社の活動を指揮する排他的な. ではないため,たとえ子会社株式を100%所有. 意思決定能力と,(2)子会社の活動から得られる. し,その方針を完全に左右できたとしても,特. 便益を増加させたり,被る損失を抑えたりする. 定の資産または資産グループの利用が制限され. 能力の2つをあげている(par.10).とりわけ前. ることもある.そのようなケースでは,親会社. 者は,支配が量的概念ではなく質的概念である. に子会社の個’々の資産を自由に利用したり,処. ことを意味している.つまり,支配か非支配か. 分したりする力があるといえるのかどうか疑わ しい.このように個々の資産に対する力のレベ. のいずれかしか存在しないのである.なお, IAS 31にみられるように,会計基準のなかに. ルにこだわるならば,前述の解釈は成り立たな. は共同支配(joint control)という概念も存在. い.. する.共同支配は,「ある経済活動に対する契.  これについて,FASB(1995)は,「支配事. 約にもとづいて合意された支配の共有」(par.. 業体の力が無制限である必要はない」(par.12). 2)と定義されているが,これは,どの企業も. としている.つまり,個々の資産に対する力の. 単独ではその経済活動を支配することができな. レベルによって厳格に支配をとらえる必要はな. い状態を意味している.. く,たとえ特定の資産または資産グループの利. 用に制限があったとしても,それは支配を否定. 2.2 持分概念の特徴. する理由にはならないということである.資産.  ここで,支配概念を相対化するために,持分. の利用と処分について全体的に意思決定ができ. 概念の定義と特徴を明らかにしよう.FASBの. れば十分ということであろう.その意味で,企. 概念書第6号(Statement of Financial. 業の方針に対する力は,その企業の資産に対す. Accounting Concepts No.6:SFAC 6)では,. る力を含意している.このように,支配の対象. 持分(equity)が「負債を控除した後の事業体. が本質的には企業の資産とされている点が. の資産に対する残余請求権」(par.49)と定義. FASBの支配概念の大きな特徴である..  では,支配の対象が企業の資産であるとすれ. されている.同じく,IASBの「財務諸表の作 成および表示に関するフレームワーク」でも,. ば,支配の主体は何であろうか.FASB(1999). 「すべての負債を控除した後の企業の資産に対. の定義では,それが事業体とされている(par.. する残余請求権」と定義されている(par.49).. 6).支配は株主とその企業との関係ではなく,. いずれも,企業または事業体の資産と負債の差. むしろ企業とその資産との関係をとらえる概念. 額として持分が定義されている.資産の定義に. として定義されているのである.親会社と子会. もとづいて負債が定義され,資産と負債の差額.

(4) 80(264). 横浜経営研究 第24巻 第3号(2003). として持分が定義される仕組みはFASBや. ただし,そこでは,以下のように述べられてい. IASBの概念フレームワークの大きな特徴であ. る.. る(藤井,1997,pp.73−74;津守,2002, pp.184−.   「持分は資産に対する権利であり,したが. 185)4>..  って,資産がなければ有効な持分は存在しえ.  では,持分概念を支えている資産概念はどの.  ない.同じように,資産の価値を,それに対. ように定義されているのであろうか.SFAC 6.  する持分から分離してとらえることはほとん. によると,資産は,「過去の取引または事象の.  どできない.それぞれの概念は他方の概念を. 結果として,事業体によって取得または支配さ.  含むものである.」(p.26). れた,将来生じるであろう経済的便益」(par..  つまり,持分概念と資産概念は相互依存関係. 25)と定義されている.IASBのフレームワー. にあるということである.この考えかたは,持. クにおける資産の定義もほぼ同じである(par.. 分が資産に依存する一方,資産は持分から独立. 49).また,SFAC 6は,資産の本質的な特徴. しているSFAC6のフレームワークとは異なっ. の1つを,「特定の事業体が経済的便益を獲得 することができ,その便益に他の事業体が接近. ている..  仮に,持分が資産に依存する概念であるとす. するのを支配できること」(par.26)としてい. れば,それは持分が支配に依存するということ. る.つまり,資産とは企業または事業体が支配. であり,支配の継続性が持分の継続1生を決める. する将来の経済的便益であり,支配概念にもと. ことを意味する.そこでは,取引の実質を支配. つく概念であるといってよい.したがって,資. の継続性から判断しても,持分の継続性から判. 産に依存して定義された持分は,結局,支配概. 断しても変わりがない.2つの判断規準を用意. 念に依存することになる.. する意味がないのである.それに対して,持分.  持分を資産に対する残余請求権ととらえる考. と資産が互いに依存しあう概念であるとすれば,. えかたは,Paton(1949)にもみられる.そこ. 支配の継続性と持分の継続性はいずれも他方と. では,持分が,「資産合計を,貨幣単位で表示 される資産に対する権利をもつ人々に公平に割. 独立には決められない.このように,資産と持 分との関係によって,支配の継続性と持分の継. り当てたもの,あるいは分配したもの」(p.19). 続性という2つの規準の意味が変わりうる.. と定義され,そのうちの所有者持分(株主持分). SFAC 6の考えかたでは,支配の継続性が持分. が残余持分とされている5).また,資産は,「有. の継続性を決め,Patonの考えかたでは,それ. 形であろうとなかろうと,特定の企業によって. ぞれが他方に依存するのである.. 所有され,またその企業にとって経済的意味を.  ここで,SFAC 6と明らかに異なる持分の定 義をみてみよう.それは,株式の所有による経. もつあらゆる要素」(p.15)と定義されている.. 済的便益に着目した定義である.例えば,2001  4)この仕組みは,すでにAPBのステートメント. 年7月に公表された企業会計審議会の「企業結. 第4号(Accounting Principles Board Statement No.4:. 合に係る会計処理基準に関する論点整理」では,. APBS 4)でも採用されている. APBS 4は,「所有主. 持分が,「持分証券(株式)を通じた企業活動. 持分は,ちょうど,残余持分が経済的資源と責務の 関係から定義されるのと同じように,資産と負債の. の成果に対する権益ないし請求権」(p.14)と. 関係から定義される」(par.132)と述べている.. 定義されている.つまり,企業の資産に対する 請求権ではなく,企業の成果に対する請求権と.  5)江村(1959)は,このように定義された持分 を資産持分と名づけ,資本持分と区別している.資 本持分とは,「企業の保有する資産,あるいは,貸借 対照表の資産の部に掲記される諸項目とは,なんら. 株主とその企業との関係をとらえる概念として. の関連も存していない」(p.38)持分である.. 定義され,企業とその資産との関係をとらえる. して持分がとらえられている.そこでの持分は,.

(5) 子会社株式の追加取得と売却一支配概念と利益測定一(大雄 智). (265)81. 概念として定義される支配とは対照をなしてい. 書」では,持分の継続性は対価の種類によって. る.この定義のもとでは,株式が現金で買収さ. 形式的に判断されるのではなく,「『対価の種類』. れると企業成果に対する請求権が失われるため,. と『支配』という操作可能な二つの観点から判. その株主の持分は清算される.. 断」(p.5)されることになっている.したが.  ここで,持分の継続と清算の意味を明らかに. って,企業結合の対価が株式であっても,企業. しておこう.例えば,ある会社の株式がすべて. 間で支配が移転したと判定されるケースでは,. 他社に買収されたときには,明らかに被買収会. 支配を失った企業の株主持分は清算されたとみ. 社の株主持分が清算される.この買収により,. なされる.支配が継続しているかどうかは,(1). 被買収会社の株主の請求権が失われるどともに,. 結合後企業に対して各結合当事企業の株主が総. そのリスクが解消されるからである.ただし,. 体として所有することになった議決権比率が等. 会社の株主持分が清算されることと,個々の株. しいかどうか,(2)議決権比率以外の支配関係を. 主の持分が清算されることとは同じではない.. 示す一定の事実が存在するかどうか,によって. 株主のうちの1人が,保有株式を証券市場で売. 判定される(p.5).したがって,例えば2社. 却するケースでは,株式を売却した株主の持分. が合併するケースでは,合併後の会社に対して. は間違いなく清算されるが,その会社の株主持. 各合併当事会社の株主が総体として所有するこ. 分は清算されない.このケースでは,企業成果. とになった議決権比率が50対50でなければ,議. に対する請求権が,ある株主から別の株主へと. 決権比率の小さい会社の株主持分が清算された. 移転しただけであり,会社株主の負担するリス. とみなされる6>.. クが解消されたわけではないからである.つま.  企業結合によって支配が移転し,一方の株主. り,会社の株主持分の継続性は,株主全体が負. 持分が清算されたとみなされると,対価が株式. 担する企業成果についてのリスクが解消された. であってもそれにパーチェス法が適用される.. かどうかで決まる.. このように,形式的な持分の継続性だけでなく.  前述のとおり,会社が他社の株式を現金で買. 支配の継続性をも考慮して取引の実質を判断し,. 収すれば,明らかに被買収会社の株主持分が清. それに応じた会計方法を適用しようとする考え. 算される.それに対して,合併会社が自社株と. かたはかってのアメリカの会計基準にもみられ. 引き換えに被合併会社の株式を取得するケース. た.例えば,ARB 48では,企業結合の実質を噛. では,被合併会社の株主持分は清算されない.. 判断するうえで,持分の継続性が重視されなが. それは結局,対価が現金か株式かで持分の継続. らも,経営者や経営支配力の継続性,結合する. 性が判断されることを意味する.仮に,そのよ. 会社の相対的規模などが考慮されていた. うな形式的な持分の継続性に応じて会計方法が. (pars.3−6).つまり,支配の継続性が持分の継. 決められるとすれば,現金を対価とする企業結. 続性を補完する規準として採用されていたので. 合にはパーチェス法が,株式を対価とする企業. ある.定義により支配の継続性が持分の継続性. 結合には持分プーリング法が適用されることに なる.企業結合の対価の種類に応じて会計方法. を決めるSFAC 6とは異なり,かつては,持分 の継続性が,取引の実質を判断する第一義的な. が決まるわけである.しかし,そのような手続. 規準とされていたのである.. きが会計基準として採用されたことはない. 2.3 支配の継続性と持分の継続性.  2003年10月に公表された企業会計審議会の 「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見.  6)ただし,実務的な配慮から,50対50という数 値基準を機械的に適用するのではなく,上下概ね5 パーセントポイントの幅をもたせることになってい る(P.6)..

(6) 82(266). 横浜経営研究 第24巻 第3号(2003).  SFAS l41とIASBの公開草案では,もっぱら. が異なる.ただし,SFAS 141のように資産に. 支配の継続性から企業結合の実質が判断され,. 対する支配の継続性から取引の実質を判断して. それに応じて会計方法が決められている.資産. も,ARB 48のように持分の継続性から取引の. に対する支配を失えば,そこで利益測定が中断. 実質を判断しても,いずれにしてもパーチェス. され,資産に対する支配を獲得すれば,そこか. 法が導かれるとすれば,支配概念と持分概念と. ら利益測定がスタートする.つまり,企業結合. の関係は取るに足らない問題であるともいえる.. によって支配を失った企業の資産・負債の簿価. そこで次節以降では,両者の関係に応じて異な. は意味がなくなり,その公正価値が支配獲得企. る会計結果が導かれるケースを検討してみたい.. 業のバランスシートに引き継がれる.それが最. 企業結合のような支配の移転を伴う取引ではな. 近の企業結合会計基準におけるパーチェス法で. く,こんどはそれを伴わない取引を対象としよ. ある.それは,持分の清算を根拠として適用さ. う.その典型は,親会社による子会社株式の追. れるパーチェス法とは視点が異なっている.パ. 加取得と売却である.持株比率は変化するもの. ーチェス法を,企業資産の取得に対応する会計. の支配が移転しない取引の会計方法を,資産概. 方法とみるか,株主持分の取得に対応する会計. 念と持分概念との関係に留意しながら明らかに. 方法とみるかの違いであるが,その違いは資産. することが次節以降の課題である.. 概念と持分概念との関係に依存する.. 3.子会社株式の追加取得.  前述のとおり,SFAC 6のように,持分が資 産に依存する概念であるとすれば,それは結局,.  この節では,子会社株式の追加取得の実質を,. 持分が支配に依存する概念であることを意味す. 支配の継続性と持分の継続性という2つの観点. る.持分の継続性は支配の継続性によって決め. から判断したうえで,それぞれに応じた会計方. られるため,取引の実質を判断し,会計方法を. 法を明らかにする.ここでは,支配概念を企業. 導く概念として決定的であるのは支配概念とい. の資産に対する力と定義し,また,持分概念を. うことになる.もっぱら支配の継続性に焦点を. 企業成果に対する請求権と定義して,支配の継. あててパーチェス法を導くSFAS 141が前提と. 続性と持分の継続性が別々に判定されるものと. しているのは,このような資産概念と持分概念. する7).なお,子会社株式の追加取得には,現. との関係であろう.それに対して,持分と資産. 金を対価とするものと株式を対価とするものが. が互いに補完しあう関係にあるとすれば,持分. ある.対価の種類と会計方法との関係をも明ら. の継続性と支配の継続性という2つの規準から. かにするためには,この両者を検討対象とすべ. 取引の実質が判断され,その会計方法が決めら. きであろう.また,ここでは,親会社が子会社. れる.ARB 48などでは,持分の継続性が第一. 株式を段階的に取得することにより支配を獲得. 義的な規準とされ,支配の継続性はそれを補完. するケースはあっかわない.支配獲得後の株式. する役割を担っていたため,会計方法を導く概. 取得に焦点をあてるのは,支配を固定したうえ. 念として優先されたのは支配概念よりもむしろ. で持株比率の変化と会計方法との関係を検討す. 持分概念であったといえる.そこでは,企業結. るためである.その検討は,支配概念と利益測. 合を資産に対する支配の獲得・移転とみるより. 定との関係の考察にもつながるはずである.. は持分の取得・清算とみてパーチェス法が適用.  親会社が現金を対価として子会社株式を追加. されていたのである..  このように,資産概念と持分概念との関係, または支配概念と持分概念との関係によって,.  7)つまり,支配の継続性によって持分の継続性 が決められるフレームワークを前提にしないという. 同じパーチェス法であっても,それを導く論理. ことである..

(7) 子会社株式の追加取得と売却一支配概念と利益測定一(大雄 智). (267)83. 1. 取得すると,少数株主は子会社の事業成果に対. (借方)子会社株式. する請求権を失い,同時に,それまで負担して.   (貸方)現金. いたリスクを解消する.つまり,子会社株式を. (借方)少数株主持分.   (1一α)E. 売却した少数株主の持分は清算され,それを親.    のれん. 1一(1一α)E. 会社が取得するのである.一方,親会社株主に.   (貸方)子会社株式. ∫. ∫. とって,この取引は子会社事業への追加的な資. 金投下を意味する.子会社株式の追加取得を少.  ここで適用されるパーチェス法は,支配の継. 数株主持分の取得と親会社資金の投下とみると,. 続性から導かれたものではなく,持分の継続性. 会計上は,少数株主持分が親会社持分に振り替. から導かれたものである.少数株主持分の簿価. えられ,少数株主持分の簿価を超えて親会社が. を超えて支払われた対価が資産としてバランス. 投下した資金は回収すべき原価とされる.子会. シートに引き継がれるのは,この取引によって. 社資本の簿価を超えて支払われた対価が資産計. 少数株主持分が清算され,それを親会社が取得. 上される点で,この会計処理はパーチェス法に. したからである.. 似ている.周知のとおり,子会社株式の追加取.  支配の継続性から判断すると,子会社株式の. 得には,これまで,このパーチェス法的な処理. 追加取得は企業実体(business entity)をまっ. が適用されてきた.なお,SFAS I41では,企 業結合だけでなく子会社株式の追加取得にもパ. たく変化させない取引である.親会社は子会社 資産をすでに支配しており,子会社株式を追加. ーチェス法が適用されることになっている. 取得しても,その力のレベルの変化は無視され. (par.14).. る.支配は量的概念ではなく質的概念なのであ.  この会計処理を記号によって示すと以下のよ. る.このように,子会社株式の追加取得を,子. うになる.いま,子会社資本の簿価をE,取引. 会社資産に対する支配の維持とみると,会計上,. 直前の親会社の持株比率を100α%(0.5<α<. 資産が追加計上されることはない.この観点か. 1)とし,この親会社が現金1を支払って少数 株主の保有する子会社株式をすべて取得したと. らは,少数株主持分の簿価を超えて親会社が投 下した資金も資産計上されないのである.そこ. する.また,子会社資産の簿価と公正価値との. では,この取引が,親会社と少数株主との取引. 差額は無視できるものとする.このとき,この. というよりはむしろ,親会社と子会社を合わせ. 処理のもとでは,(1一α)Eの少数株主持分が. た企業実体とその株主との取引とみなされる.. 親会社持分に振り替えられ,1一(1一α)Eが. したがって,少数株主持分の取得ではなく,自. のれん(連結調整勘定)として資産計上される.. 己株式の取得,すなわち資本取引として処理さ. ここで計上されたのれんは,日本の連結財務諸. れることになる.. 表原則によれば20年以内に定額法またはその他.  前述の仮定をそのまま適用して,この会計処. 合理的な方法により償却されることになるが. 理を示すと以下のようになる.まず,(1一α). (第四の三の2),SFAS l42にしたがえば償却. Eの少数株主持分が親会社持分に振り替えられ. されずに減損会計が適用されることになる. るが,これは連結資本の内訳を変える処理に過. (pars.18−40).ただし,いずれにしても子会社. ぎない.また,∫一(1一α)Eは資産の増加で. 資本の平価を超えて支払われた対価は利益に影. はなく資本の減少として処理される.つまり,. 響を与える.この取引についての仕訳を示すと. 少数株主持分の簿価を超えて親会社が投下した. 以下のようになる.上が個別ベースの仕訳で,. 資金は,少数株主への資本の払い戻しとみなさ. 下が連結仕訳である.. れ,いわば減資差損として処理される.この取 引の実質を持分の継続性から判断したときには,.

(8) 84(268). 横浜経営研究 第24巻 第3号(2003). 回収すべき原価として処理されたものが,ここ. 結合と整合的に,支配の継続性から取引の実質. では資本として処理されるのである.仕訳を示. を判断し,それに応じて会計方法を決める思考. すと以下のようになる.. が表れている.そしてそれは,持分概念が資産 概念に依存するフレームワークの帰結といって. (借方)子会社株式          1. よい..   (貸方)現金           1.  こんどは,現金ではなく株式を対価とする子. (借方)少数株主持分(資本) (1一α)E. 会社株式の追加取得を考えよう.親会社が株式.    減資差損     1一(1一α)E. 交換によって100%未満所有子会社を完全子会 社化するケースを想定すればよい.このケース.   (貸方)子会社株式          1. では,少数株主は,子会社株式と引き換えに親.  この処理は,子会社資本の簿価を超えて支払. 会社株式を取得し,その所有をとおして引き続. われた対価が資産計上されない点で,持分プー. き子会社事業のリスクを負担する.もちろん,. リング法に似ている.ただし,これは,持分の. 株式交換によって少数株主の負担するリスクの. 継続性から導かれたものではなく,支配の継続. 内容は変化している.子会社の事業成果に対す. 性から導かれたものである.この観点からする. る請求権の一部を失う代わりに,親会社の事業. と,資産に対する支配が不変であるかぎり,バ. 成果に対する請求権の一部を取得するのだから. ランスシートに計上される資産も不変である.. 当然である.それでもなお,少数株主はそのリ. したがって,少数株主持分の簿価を超えて親会. スクを負担し,子会社の将来の事業成果を期待. 社が投下した資金は,資本として処理されるし. する.つまり,株式交換による完全子会社化で. かない.それでも,持分の継続性が取引の実質. は,少数株主の持分は清算されないのである.. を判断する第一義的な規準とされ,持分概念が.  このように,持分の継続性から判断すると,. 支配概念よりも優先されるとすれば,この会計. この取引は親会社持分と少数株主持分との結合. 方法は採用されないであろう.しかし,持分概. とみなすことができる.会計上は,少数株主持. 念が資産概念に依存し,もっぱら資産に対する. 分の簿価が連結資本に振り替えられ,親会社が. 支配の継続性から取引の実質が判断されるフレ. 交付した自社株の公正価値と少数株主持分の病. ームワークのもとでは,資産とならないキャッ. 倒との差額は資産計上されない.その差額は回. シュ・フローは資本として処理されるしかない.. 収すべき原価とはみられないのである.子会社.  実は,子会社株式の追加取得を資本取引とす. 資本の簿価を超える対価が資産計上されない点. る考えかたは,最近,FASB(2003)とIASB. で,この会計処理は持分プーリング法に似てい. (2003)において暫定的な結論として示されて. る.ただし,ここでの少数株主持分の継続は,. いる.支配の継続性という観点から,「『真の合. 子会社株式ではなく親会社株式の所有によるも. 併』または『対等合併』は存在しないか,事実. のである.子会社に対する直接的な持分から親. 上存在しないといってよいほどまれである」. 会社を介した間接的な持分への変化は,少数株. (par. B42)と判断し,すべての企業結合にパ. 主持分の継続性には影響を与えない.株主の負. ーチェス法を適用するよう要求したSFAS l41. 担するリスクが解消されないかぎりその持分は. の論理にしたがえば,もともと,子会社株式の. 継続するとみているからであるが,それは結局,. 追加取得のように支配が移転しない取引にはパ. 間接的な持分の継続と清算が会計測定を制約す. ーチェス法を適用することができない.IASB. ることを意味する.そこに,持分の継続性とい. の公開草案についても同じことがいえる. FASBとIASBによる暫定的な結論には,企業. う考えかたの特徴が現れている..  さて,この会計処理を記号によって示すと以.

(9) 子会社株式の追加取得と売却一支配概念と利益測定一(大雄 智). (269)85. 下のようになる.いま,子会社資本の簿価をE,. 持分の簿価を超えて親会社が投下した資金が減. 取引直前の親会社の持株比率を100α%(0.5<. 資差損として処理されることからも明らかなよ. α<1)とし,この親会社が公正価値総額yの. うに,資本が支配の継続性に依存して測定され. 自社株を交付して少数株主の保有する子会社株. る.SFAC 6のように持分概念が資産概念に依. 式をすべて取得したとする.また,子会社資産. 存する会計システムでは,それが当然の帰結と. の簿価と公正価値との差額は無視できるものと. なる.. する.このとき,この処理のもとでは,(1一.  ただし,現状では,株式を対価とする子会社. α)Eの少数株主持分が連結資本に振り替えら. 株式の追加取得にパーチェス法的な処理が適用. れ,V一(1一α)Eは計上されない.その仕訳 を示すと以下のようになるであろう.上が個別. されている.つまり,(!一α)Eの少数株主持. 分が親会社持分に振り替えられるとともに,. ベースの仕訳,下が連結仕訳である.. y一(1一α)Eが資産計上されるのである.そ こでは,株式交換が,(1)現金による子会社株式. (借方)子会社株式. (1一α)E. の取得と(2)その現金の払い込みとの合成として.   (貸方)資本.   (1一α)E. 解釈されていることになる.だからこそ,子会. (借方)少数株主持分. (1一α)E. 社株式の取得原価も,資本の増加額も,いずれ.   (貸方)子会社株式.   (1一α)E. も対価として交付した自社株の公正価値で測定 されるのである.それを仕訳で示すと以下のよ.  したがって,取引の実質を持分の継続性によ. うになる8).. って判断すると,対価が現金であるときには子 会社資本の簿価を超える対価が資産計上される. (借方)子会社株式. 一方,対価が株式であるときにはそれが計上さ.   (貸方)資本. れない.結果的には,対価の種類に応じて会計. (借方)少数株主持分.   (1一α)E. 方法が決まるのである..    のれん. y一(1一α)E.  もちろん,対価が現金であろうと株式であろ.   (貸方)子会社株式. うと,親会社による子会社株式の追加取得は, 親会社と子会社を合わせた企業実体をまったく.  ただし,このように現金取引を擬制すれば,. 変化させない.この観点によれば,会計上は,. 株式交換による企業再編はすべてパーチェス法. (1一α)Eの少数株主持分が親会社持分に振り. で処理されることになる.支配の継続性や持分. 替えられて連結資本の内訳が変わるだけである.. の継続性といった規準は意味をもたないのであ る.. (借方)子会社株式     (1一α)E   (貸方)資本        (1一α)E. (借方)少数株主持分(資本)(1一α)E   (貸方)子会社株式     (1一α)E.  このように,取引の実質を支配の継続性から 判断すると,対価が現金であろうと株式であろ うと,子会社資本の簿価を超える対価は資産計. 上されない.子会社株式の追加取得は連結利益.  8)商法では,完全親会社の資本の増高額に限度 が設けられている(第357条).単純化のため,ここ. に影響を与えないのである.そして,少数株主. ではそれを考慮していない..

(10) 86(270). 横浜経営研究 第24巻 第3号(2003). 4.子会社株式の売却. 子会社株式への投資からその売却までの子会社 事業の成果がすでに親会社の実現利益となって.  この節では,子会社株式の売却の実質を,支. いるため,その分を売却益から除かなければな. 配の継続性と持分の継続性という2つの観点か ら判断したうえで,それぞれに応じた会計方法. らないのである..  この会計処理を記号で示すと以下のようにな. を明らかにする.ここでも前節と同じように,. る.いま,親会社が時点0で完全子会社を設立. 支配概念を企業の資産に対する力と定義し,ま. し,その後,時点1でその子会社の株式の100. た,持分概念を企業成果に対する請求権と定義. α%(0<α<0.5)を売却したとする.子会社へ. して,支配の継続性と持分の継続性が別々に判. の出資額または子会社株式への投資原価をる,. 定されるものとする.支配を固定したうえで持. 時点0の子会社資本の簿価を島,時点1のそれ. 株比率の変化と会計方法との関係を検討するた. を瓦とし,売却によるキャッシュ・インフロー. め,子会社株式売却後も親会社が子会社資産に. を砿とする.このとき,この処理のもとでは,. 対する支配を維持するケースに焦点をあてる.. 親会社持分のうちα瓦が少数株主持分に振り替. つまり,ここで検討するケースは,持株比率の. えられ,M1一αElの子会社株式売却益が計上. 変化の方向が反対であるほかは前節のケースと. される.前述のとおり,設立後,子会社で実現. 変わらない.この前提のもと,子会社株式の追. した成果瓦一町がすでに親会社の事業成果とみ. 加取得と売却が対称的に会計処理されるかどう. なされて連結利益に含まれているため,そのう. かを確かめることが本節の課題である... ちの売却分α(一El−1㌔)が瓢一α為から除かれる..  子会社株式を売却すると,親会社は子会社の. その結果が,上記の子会社株式売却益である.. 事業成果に対する請求権を失い,同時に,売却. この仕訳を示すと以下のようになる.上が個別. した子会社株式の公正価値に見合う現金を受け. ベースの仕訳,下が連結仕訳である.. 取る9).これにより,親会社は子会社に期待し. た将来の事業成果を実現させる.ただし,この. (借方)現金.   璃. キャッシュ・インフローと子会社株式の予価と.   (貸方)子会社株式.      αる. の差額が連結上の売却益となるわけではない..      子会社株式売却益.   M!一αる. 親会社の子会社株式への投資は,形式的には金. (借方)子会社株式.   αる. 融商品への投資であるが,その実質はむしろ事.    子会社株式売却益. α(一E1−Eも). 業資産への投資とみられている.だからこそ,.   (貸方)少数株主持分.     α瓦. 連結バランスシートでは子会社株式が子会社の. 所有する資産に置き換えられるのである.した がって,子会社株式に資金を投下した後で実現.  このように,子会社株式の売却を親会社持分. した子会社の事業成果が,親会社の事業成果と. フローと清算された親会社持分の洋弓との差額. みなされて連結利益に含められる.このように,. が実現利益となる.ただし,親会社は,この取. の清算とみると,売却によるキャッシュ・イン. 引によって子会社資産に対する支配を失うわけ  9)親会社が子会社株式の全部を売却するケース では,子会社の事業成果に対する請求権をすべて失 うが,一部を売却するケースでは,売却株式に対応 する請求権を失い,残存株式に対応する請求権を保 持する.このように,支配株主である親会社の持分 の継続と清算は,子会社株式の保有と売却に対応し ている.. ではないので,子会社事業への投資が取引後も 継続すると考えることもできる.この観点から. すると,子会社株式の売却によって利益が実現 することはなく,たとえ親会社持分の簿価を超 えるキャッシュ・インフローが生じていたとし ても,それは利益にはならない.そこでは,こ.

(11) 子会社株式の追加取得と売却一支配概念と利益測定一(大雄 智). (271)87. の取引が,親会社と少数株主との取引というよ. その取引をパーチェス法で処理するだけでよい. りはむしろ,親会社と子会社を合わせた企業実. が,2回以上の株式取得による子会社化では,. 体とその株主との取引とみなされる.つまり,. 支配を獲得する前に取得された株式. 親会社持分の清算ではなく,自己株式の売却,. (preacquisition investments)の保有利得をど. すなわち資本取引として処理されるのである.. う処理するかとい’う問題が生じる.また,親会. それを仕訳で示すと,以下のようになるであろ. 社が子会社株式を全部売却して支配を失うケー. う.. スでは,その取引を子会社に対する親会社持分 の清算として処理するだけでよいが,子会社株. (借方)現金            M1. 式を一部売却して支配を失うケースでは,残存.   (貸方)子会社株式        αる. する株式の保有利得をどう処理するかといった.      子会社株式売却益   M1一αる. 問題が生じる.. (借方)子会社株式         α為.  現金を対価とする段階的な株式取得の実質を.    子会社株式売却益    単一α乃. 持分の継続性から判断するならば,支配獲得前.   (貸方)少数株主持分(資本)   α瓦. の株式取得も,支配獲i得日の株式取得も,いず.      資本剰余金      璃一α瓦. れも株式への資金投下とその会社に対する持分 の取得である.親会社(投資会社)は,株式を.  子会社株式の追加取得が,企業実体による株. 取得することに子会社(被投資会社)の株主の. 主への資本の払い戻しとして処理されたのと対. 持分を清算させ,それを取得する.このように,. 称的に,子会社株式の売却も,少数株主による. この取引を段階的な持分取得とみれば,株式の. 企業実体への資本の払い込みとして処理されて. 取得日ごとに算定された子会社資本のうち取得. いる.いずれにしても,資本が支配の継続性に. した株式に対応する部分が投資勘定と相殺され,. 依存して測定されるのである.. 株式の取得日後に生じた子会社剰余金のうち取. 5.子会社株式の段階取得と売却. 得した株式に対応する部分が連結剰余金として 処理される.つまり,段階法とよばれる会計方.  この節では,親会社が子会社株式を段階的に. 法が適用されるわけである(連結財務諸表原. 取得することにより支配を獲得するケースと,. 則,第四の三の1,注解10).. それを売却することにより支配を失うケースを.  それに対して,支配の継続性から判断すると,. 取り上げる.第3節,第4節と違い,ここで対 象とするのは,子会社に対する持株比率の変化. 親会社は支配獲得日に子会社資産を包括的に取 得するとみなされるであろう.この観点によれ. だけでなく,子会社資産に対する支配の移転を. ば,支配獲得前の取引は金融商品の取得とみら. も伴う取引である.この取引に対する会計方法. れ,支配獲i得日の取引は子会社資産の取得とみ. を,支配の継続性と持分の継続性という2つの. られる.そうであるならば,支配獲得前に取得. 観点から明らかにすることが本節の課題である.. された株式は支配獲得日に売却されたものとし. ここでも,支配概念を企業の資産に対する力と. て処理されるしかない.したがって,その株式. 定義し,また,持分概念を企業成果に対する請. の保有利得が実現するとともに,それが支配獲. 求権と定義して,支配の継続性と持分の継続性. 得日の公正価値で評価替えされることになる.. が別々に判定されるものとしよう.. 保有株式を支配獲得日にいったん売却し,ただ.  会社が他社の株式を取得し,その会社を子会. ちに買い戻したと擬制して処理するわけである.. 社化する取引は,典型的な企業結合である.た. 結局,支配獲i白日の子会社資産の公正価値がバ. だし,1回の株式取得による子会社化であれば,. ランスシートに計上され,それと投資勘定との.

(12) 88(272). 横浜経営研究 第24巻 第3号(2003). 差額がのれんとして資産計上される..  こんどは,親会社が子会社株式を売却し,子.  この会計方法を記号で示すと以下のようにな. 会社資産に対する支配を失うケースを考えよう.. る.いま,親会社(投資会社)が時点0で子会. 持分の継続性から判断すると,この取引の実質. 社(被投資会社)の株式の100α%(0<α≦0.5). は子会社に対する親会社持分の清算である.し. を取得し,その後,時点1で残りの100(1一α)%. たがって,売却によるキャッシュ・インフロー. を取得して,この会社の資産に対する支配を獲. と親会社持分額のうち売却した株式に対応する. 得したとする.時点0における子会社資本の簿. 部分との差額が子会社株式売却益となる.本質. 価を属,親会社の現金支払額を乃とし,為二島で. 的には,前節で検討したケースと同じように処. あったと仮定する.また,時点1における子会 社資本の簿価をEl,親会社の現金支払額を五と. 理されるわけである.ただし,株式売却後も親. する.なお,子会社資産の簿価と公正価値との. のケースとは違い,このケースでは,株式売却. 差額は無視できるものとする.このとき,時点. 後は子会社が連結の範囲から除外される.した. 1,すなわち支配獲得時点では,時点0で取得. がって,子会社のバランスシートを連結バラン. された株式の保有利得が実現するとともに,そ. スシートから除外し,残存株式を持分法で評価. れが時点1の公正価値で評価替えされる.その. する必要がある.そうすれば,この取引によっ. 公正価値を1’。とすると,為一為の保有利得が実. て子会社が関連会社になった場合,連結会計か. 現し,投資勘定がるから∫’。へと評価替えされる. ら持分法への連続性が保たれる.. ことになる.結局,時点1では,為+五の投資.  それに対して,支配の継続性から判断すると,. 勘定とE1の資本勘定が相殺され,差額(1’o+. 親会社は子会社株式の売却日に子会社資産を包. 五)一州があれんとして資産計上される.. 括的に売却するとみなされるであろう.この観.  したがって,もし,支配獲得前に取得された. 点によれば,株式売却によって子会社事業への. 株式に持分法が適用されているとすれば,その. 投資が清算され,その後の株式保有は金融商品. 利益測定は支配獲得日に中断されることになる. の保有とみられる.そうであるならば,残存株. であろう.持分法から連結会計への連続性が断. 式は子会社株式の売却日に新規取得されたもの. たれるのである.つまり,子会社資産に対する. として処理されるしかない.したがって,その. 支配を獲得した時点で,資本が再測定され,以                ノ 後はそれが利益測定のベースとなる.こうした. 株式の保有利得が実現するとともに,それが株. 会計方法は,持分概念が資産概念に依存するフ. る.いったん子会社株式を全部売却し,ただち. レームワークではむしろ当然なのかもしれない. にその一部を買い戻したと擬制して処理するわ. lo)∫事実, FASB(2003)とIASB(2003)によ. けである.結局,(1)売却によるキャッシュ・イ. って支持されているのは,支配を獲得した時点. ンフローと(2)子会社純資産に対する親会社持分. 会社が子会社資産に対する支配を維持する前節. 式売却日の公正価値で評価替えされることにな. でそれまでの利益測定ベースを変更する会計方. 額から残存株式の公正価値を控除したものとの. 法なのである11).. 差額が利益計上され,残存株式は公正価値でバ.  10)持分概念が資産概念に依存するフレームワー クのもとでは,持分法の存在理由が問われるであろ う.支配獲得前に取得された株式に対して,一行連 結ともいわれる持分法を適用することは,その株式 を金融商品ではなく事業資産とみていることを意味 する.こうした考えかたと概念フレームワークとの.  11)FASB(2003)とIASB(2003)では,全部の. 整合性は検討の余地がある.. 株主)に配分される.. れん法(full goodwill method)とよばれる会計方法が. 示されている.これによれば,会社が他社の株式の 100%未満を取得しでその会社を支配したとき,仮に 100%取得していたならば計上されるであろうのれん 額が推定され,それが支配株主と非支配株主(少数.

(13) 子会社株式の追加取得と売却一支配概念と利益測定一(大雄 智). (273)89. ランスシートに計上される.. 請求権と定義したうえで,支配の継続性と持分.  この会計方法を記号で示すと以下のようにな. の継続性という2つの規準から,子会社株式の. る.いま,親会社が時点0で完全子会社を設立. 追加取得と売却の実質を判断し,その会計方法. し,その後,時点1でその子会社株式のうち. を明らかにした.持分の継続性から判断すると,. 100α%(0.5<α<1)を売却したとする.子会. 現金を対価とする子会社株式の追加取得は,少. 社への出資額または子会社株式への投資原価を. 数株主持分の取得とみなされパーチェス法に準. 乃,時点0の子会社資本の簿価をE。,時点1の. じて処理される.株式を対価とする追加取得は,. それを瓦とし,売却によるキャッシュ・インフ. 親会社持分と少数株主持分との結合とみなされ. ローを.M、とする.また,売一時におけるこの. 持分プーリング法に準じて処理される.結局,. 子会社株式の公正価値を1’。とする.このとき,. 対価の種類に応じて会計方法が決まるのである.. この処理のもとでの子会社株式売却益はつぎの. それに対して,支配の継続性から判断すると,. ように表される.. 対価が現金であろうと株式であろうと,子会社.   砥一α㌃(E1−Eo)+(1一α)(1も一撃). 株式の追加取得は企業実体による自己株式の取.  ニル五一El+(1一α)∫も. 得,すなわち資本取引として処理される..  ここで,個別ベースの売却益M1一αるから子.  前述のとおり,子会社株式の追加取得を資本. 会社資本の増加分または子会社剰余金(E1−Eも). 取引とする考えかたは,FASBとIASBによっ. が除かれているのは,いったん子会社株式を全. て支持されている.それは,取引の実質が持分. 部売却したと擬制されているからである.また,. の継続性ではなく支配の継続性から判断される. (1一α)(為一乃)が加算されているのは,残存. ことを意味するが,実は,その考えかたを支え. 株式の保有利得が実現利益とされたことを意味. ているのは概念フレームワークであるといって. している.その結果,残存株式は(1一α). よい.第2節で確認したとおり,SFAC 6では,. {る+(E1−Eo)iではなく,(1一α)為でバラン. 持分概念が資産概念に依存している.資産は支. スシートに計上される.. 配にもとつく概念であるため,結局,持分概念.  したがって,この取引によって子会社が関連. が支配概念に依存することになる.そうである. 会社になった場合,連結会計から持分法への連. ならば,支配の継続性が持分の継続性を決める. 続性は断たれる.つまり,子会社資産に対する. ことになり,2つの判断規準を用意する意味が. 支配を失った時点で利益測定のベースが変更さ. ない.つまり,すべての取引の実質を支配の継. れるわけである.前述のとおり,こうした会計. 続性から判断すれば十分なのである.したがっ. 方法は,持分概念が資産概念に依存するフレー. て,子会社株式の追加取得が,支配の継続性に. ムワークではむしろ当然なのかもしれない.事. もとづいて,企業実体による株主への資本の払. 実,FASB(2003)とIASB(2003)によって. い戻しとして処理されたのと対称的に,子会社. 支持されているのは,支配を失った時点でそれ. 株式の売却も,少数株主による企業実体への資. までの利益測定ベースを変更する会計方法なの. 本の払い込みとして処理される.. である.このフレームワークでは,支配の継続.  また,持分概念が資産概念に依存するフレー. 性にもとづいて資産が測定され,その資産にも. ムワークによれば,親会社は支配獲得日に子会. とづいて資本と利益が測定される.. 社資産を包括的に取得するとみなされる.支配. 6.おわりに. 獲得前に取得された子会社株式があるときには,. それが支配獲得日に公正価値で評価替えされ,. 本稿では,支配概念を企業の資産に対する力. 保有利得が実現する.そこでは,支配獲得前の. と定義し,また,持分概念を企業成果に対する. 株式取得が金融商品への投資とされ,それが支.

(14) 横浜経営研究 第24巻 第3号(2003). 90(274). 配獲得日に清算されると考えられている.だか らこそ,支配獲得日に利益測定のベースが変更 されるのである.また,子会社株式を売却して 支配を失うケースでは,.親会社はそこで子会社. 資産をすべて売却するとみなされる.残存する 子会社株式があるときには,それが支配を失っ た日の公正価値で評価替えされ,保有利得が実. 現する.そこでは,残存株式の保有は金融商品. エ〉’o, 6’Ele1ユ2e12亡s of F∫12allcfa1 5亡a亡e112e12fs, a. replacemeη亡of FAsB Concep亡s S亡a亡emeη亡2>b.. 3伽corpora亡ゴη9∂ηameηdmeη亡of FASB Ooηcep亡s S亡a亡eme撹Nb.2,(平松一夫訳「財務. 諸表の構成要素」平松一夫・広瀬義心血(2002) 『FASB財務会計の諸概念(増補版)』中央経済 面)..   (1995) ,Exposロre Draf亡, Proposed S亡a亡em eη亡of月naηC∫aLACCOロη6ηg S亡aηdards’ Conso万da亡ed.F1η∂ηcfa1 S亡a亡emen亡s’Po五cy aηd. Pfoced口res。. への投資とされ,それが支配を失った日からス.   (1999) ,Exposαre Draf亡  θぞevlsed♪ ,. タートすると考えられている.. .Proposed S亡a亡emeη亡of F加aηcfa1 ACCOαη亡加9.  このように,持分概念が資産概念に依存する とすれば,支配の獲得と移転にもとづいて資産. が測定され,その資産にもとづいて資本と利益 が測定される.企業結合と同じく子会社株式の 追加取得と売却についても支配の継続性からそ の実質が判断され,それに応じた会計方法が適. 用されるFASBとIASBでは,その原則が一貫 して適用されているといってよい..企業結合会. 計という限定された領域ではあるが,一貫性を もつ会計システムが構築されつつあるのである.. ただし,その成果と限界は,持分と資産を互い に補完しあう概念とみるフレームワークのもと. 5亡a12 dardS/1)α17)ose a12 d PO万cyl.   (2001) ,5亡a亡e1ηe11亡of飾aηcfa1/4 ccoロ1f亡加9 5亡a1コdards Nb.14エ’Bαs加ess Comわ加a亡ノ。ηs..   (2001),S亡a亡emen亡of Ffηaηcfa1 Accoロη面9. 5亡aηdards No, 142/ Goodwfll aηd O亡her 血亡aη9め1e/lsse亡s..   (2003) ,Sα1ηn2ary of Teη亡a亡1ve Decfsfons,. B口s1ηess Comわf1:1a亡∫012s’Pαrcllase Me亡」hod Proced口res aηd Oer亡af11 13s口es 1∼ela亡ed 亡。 亡11 e. ACCOロη亡fη9丘)r a刀d.Repor6ηg of〈bηCOη亡ro伽9 0レ伽orゴ亡yク 加亡eres亡s, (http://www.fasb.org/. project/bcpm_tent_dec.pdf). International Accounting Standards Committee   (lnternational Accounting Standards Board)   (19$9),Framework fbr亡he Prepara亡foη aηd   脅ese1コ亡a亡fo1ユof l島コa12cゴal S亡a亡e1エ1e12亡s..    (1998),1ね亡elrηa亡foηa1/4 ccoα12亡f12g S亡aηdard. での会計システムと比較しながら明らかにする.   一τノ15 22   〔revfsed  1998♪   J Bロs加ess. 必要がある.支配概念が資本と利益の測定を制.   Oom b加aが0ηS.    (1998),11コ亡erηa亡fo12a1/4ccoα12亡f12g S亡andard. 約するシステムに対するそうした検討は今後の 課題としたい..   IAS 31  (}evfsed −Z998♪  ’勘ancla1五∼ePor亡∫η9   0f加亡eres亡s fηノ∂fη亡γeη亡ロre&.    (2002),Exposαre Draf亡’ED 3 B乙1s∫ness. 参考 文献.   Oom b1刀aが0ηS..     (2003), Pro.ノec亡 Sα1121ηary,・B乙1s112コ口s. American Institute of Certified Public Accountants.   Com bfηaだ0ηS  (Pllase ∬ク ’ノIPPlfcaがon of亡11e.   (1957),Committee on Accounting Procedure,.   Pロrchase Me亡hod (http://www.iasc.org.uk/.   .Accoロ諏η9 Research Bロπe6ηsハ配).481 Bロs∫ness.   docs/projects/busc6m2−ps.pdf).   Comわ1ηa亡∫oηs(Sαpersedes c血ap亡er7ωof.   OpfηfoηエVと).16r Bこ1s加ess Comわ加a亡ノ。ηs.. Ijiri, Yuji (1975),Theory of、4ccouη亡fηg   Measロreme鉱Studies in Accounting Research   No.10, American Accounting Association(井   尻雄士(1976)『会計測定の理論』東洋経済新報.    (1973),Accounting Principles Board,ノ1PB.   社)..   Accoロη伽g Research Bロ〃e珈s皿).43ブ,.    (1970),Accounting Principles Board, APB.   S亡a亡emeη亡No.4’Bas/c Coηcep亡s aηd   /ICCO口12亡fηg Prf1]C∫Ples 〔乃2 derlyfη801;Y12 a12 cfa1. Paton, W. A.(1949),Essen亡fals of.Accoun亡加g∼..   revfsed ed∫60η, The Macmillan Companyl.   51亡a亡emeη亡s of Bαsfηess 伽亡elp1ゴses (Jil蛭川頁一. 江村稔(1959)「資産持分と資本持分」『會計』第76.   訳(1973)『アメリカ公認会計士協会・企業会計.   巻第3号,31−44頁..   原則』同文舘).. 津守常弘(2002)「会計基準形成の論理』森山書店. 藤井秀樹(1997)『現代企業会計論一会計観の転換と   取得原価主義会計の可能性一』森山書店.. Financial Accounting Standards Board(1985),   S亡a亡enユeη亡of F加aηc/a1 Accoロη亡fηg Coηcep亡s. 〔おおたか さとる 横浜国立大学経営学部助教授〕.

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参照

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