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大学における学生の科学的能力育成のための授業研究

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(1)

Bu l l e t i no fFa c u l t yo fEd u c a t i o n , Na g a s a k i Un i v e r s i

ty :

Cu m ic u l u ma n dTe a c h i n gNo

.46(2006)51161

大学における学生の科学的能力育成のための授業研究

‑ポー トフォ リオ を用 いた基礎化学の学習支援‑

星野 由雅 * 林 朋美 **

(平成

1 7

1 0

31

日受理)

A St udy on Te a c hi ngf orEnha nce me ntofSc i e nt i f i cAbi l i t y ofBa c he l orSt ude nt sa tUni ve r s i t y

‑ Suppor tofLe a ml ngBas i cChe mi s t r yby Por t f ol i o ‑

Yos hi mas aHOSHI NO ・TomomiHAYASHI ( Re c e i ve dOc t o be r31 ,2005)

1

は じめに

科学的能力 とは,現象 ・事象 の観察 ・記録 を客観的 に行い,その結果 を過去 の 自己の経 験 あるい は先人の事例 と比較 し,相 同性 あるいは異種性 を兄いだ し,その原 因を考察 し, さらに検証 のための実験 ・観察 の計画 を立案 し,それ を実践す る能力 と言 える。最近,筆 者 の一人 (星野) は,大学生の科学的能力 は以前 よ り低下傾 向にあるのではないか と感 じ

てい る。それ は,学生実験 を指導す る際,学生が現象 を観察 して も,そ こか ら新 たなる思 考の方向性 を兄いだせ ない場面が多 くなってきた ことにある。その原 因の一つ は,学生た ちが事象 について深 く考 えることがで きな くなってい ることにある。では,何故学生たち は事象 について深 く考 えることがで きな くなってい るのであろ うか。社団法人 日本化学会 が全国の大学 の理 系の学科 に行 った

2 00 0

年 の 「大学基礎化学教育 に関す るア ンケー ト調 査報告書

1)の分析結果2)か ら,"学習 に必 要な基礎 的な能力 の低 下" によ り,高等学校 での "化学の授業 内容の理解 が不十分" とな り,その結果知 らない ことが多いために,"知 的好奇心 も喚起 され に くい"高校生像 が浮 かび上がった。実際, この よ うな高校生がその まま大学へ入学 して くる率 は,年 々高 まってい る と考 え られ る。

著者 らは平成

1 6

年度か ら,大学 の初年次 において化学 の基本 的な事項 をしっか りと身 につけさせ るために,ポー トフォ リオを用いて化学の学習 を支援す る授業2)を試みている。

ポー トフォ リオ

( Po r t f o l i o )は, もともと 「

紙ばさみ,書類かばん,かばんに入れた書類 3'

を意味す るもので,その教育面 での定義 は,高浦4)によれ ば 「一人一人 の子供 の学習過程 お よび成果 に関す る情報 ・資料 が長期 にわた り, 目的的,計画的 に蓄積 され た集積物 であ る」 とある。最近, 日本 でも小学校, 中学校お よび高等学校 においてポー トフォ リオ を用 いた学習 の実践 が多 く行われ るよ うになった。 しか し,大学 において このポー トフォ リオ を用いた学習 を実践 してい る例 は,それ ほ ど多 くない。アメ リカでは

,1 9 9 0

年代か ら教員 養成課程 における教育実習生 の指導 に広 く利用 され るよ うになった5)。そのためか, 日本

(2)

5 2

長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.46 (2006年)

の大学 においてもポー トフォ リオは,信州大学での教育実習 6),聖マ リア ンナ医科大学で の学生実習7),奈良教育大学 での 「総合演習 8)な どの実習 ・演習系の授業 に用 い られて い る。 これ は,本来 ポー トフォ リオによる学習がプロセス,つ ま り過程 を重視す る学習で あって,単 なる知識や技能 の習得 を最終 目標 として設定 されていない ことによる。その意 味では,化学 の基本 的な知識や概念 の獲得 を 目的 とした授業 にポー トフォ リオ を用いるこ

とが適切であるか どうかは議論がある。実際,前報2)において,多 くの学生が,ポー トフォ リオによる学習 は 「これ までの学習 をきちん と整理 で き

「復習 が行 いやすい」 と感 じて いなが ら,その効果 を明確 にす ることはできなかった。そ こで,今 回は,ポー トフォ リオ を用いた学習 の効果 を計 ることに主眼 をおいて分析 を行 った。

2

授業方法

対象 とした授業 は,長崎大学教育学部学校教育教員養成課程 中学校教育 コース理科選修 1年次生の必修科 目の 「化学概論」 (受講者24名)である。 この講義 の中で,毎回講義開 始前 にその 日の講義 内容 に関す る設問プ リン ト (以降 「講義前 プ リン ト」 とよぶ) を配布 し,学生 に5‑ 10分 間で解答 させ た。講義前 プ リン トは,解答後直 ちに回収 した。講義 後 にも講義前 プ リン トと同 じ設 問のプ リン ト (以降 「課題 プ リン ト」 とよぶ) を配布 し, 次回授業 の前 日までに提 出 させ た。教員 は,課題 プ リン トを採点 し,次回授業 冒頭 に学生 に返却 した。次回授業では,課題 プ リン トの回答 を設問 ごとに学生 を指名 して板書 な どに よ り説明 をさせ た。他 の学生 には,課題 プ リン トの解答 で 自分が間違 っていた箇所 を訂正 させ,そのプ リン トをファイ リングしてお くことを指示 した。 また,次の講義 の前 にその プ リン トを見直す ことを求 めた。 さらに,授業 の前 には必ず教科書 の該 当箇所 を読 んで く るよ うに指示 した。計

1 5

回の授業の うち

8

回 目に中間試験

,1 5

回 目に期末試験 を行 った。

講義 はpowerpoint⑥を用いた 自作スライ ドのプレゼ ンテーシ ョンを主体 に行い, 中間および 期末試験 の1週間前 に授業で用 いたpowerpoint⑧ファイル をコンパ ク トディス ク (CD)に 焼 き付 けて受講者全員 に配布 した。また,希望者 には途 中の期間においても適宜powerpoint⑧

フ ァイル を焼 き付 けたcDを配布 した。学生‑のア ンケー トは,各試験前 に実施 した。

3

授業方法のね らい

平成

1 6

年度 の授業 では,講義前 と講義後 に同 じ設問内容 の プ リン トを配布 し,チェッ ク後 その 日の うちに返却 していた。課題 プ リン トは毎回ではな く

2

回に

1

回の割合 で課 し ていた。 この方法で学生は,その 日の講義内容の重要なポイ ン トを事前 に知 ることができ, 効率的 に集 中して講義 を聴講 で きた2)。一方,講義 中に獲得 した知識 の定着 に関 しては効 果 に疑問が残 った。そこで,平成

1 7

年度は講義前のプ リン トは平成

1 6

年度 と同様 に行い, 講義後 のプ リン トは全て課題 プ リン トに切 り替 え,学生 に授業外 の時間に必ず復習 をさせ ることにした。また,次回授業 の冒頭 にも学生 自らに模範解答 をさせ,学生 は同じ設問に 都合 3回接す ることができるよ うにした。 これ によ り,講義 で獲得 した知識 の定着 を図っ

た。

4 学生の授業への取 り組み

この授業‑の学生 の取 り組 み状況 と評価 とを知 るために中間試験 と期末試験 の授業評価

(3)

星野由雅 ・林朋美 :大学における学生の科学的能力育成のための授業研究‑ポートフォリオを用いた基礎化学の学習支援

‑5 3

時 にア ンケー トを実施 した。 そ の結果 を表

1

にま とめた。次 の

5

つ の選択肢 にそれ ぞれ評 点 を付 し,平均値 を算 出 した。 そ う思 う‑ 5点 , どち らか とい えばそ う思 う‑ 4点 , どち らともい えない

‑ 3

点 , どち らか とい えばそ う思 わ ない ‑

2

点 , そ う思 わ ない

‑ 1

点 。 中 間値 は3点 とな る。

表 1 学 生 に よる授 業 ‑ の取 り組 み と評価a)

【中間試験 時】有効 回答者数 :

2 3

( Na9

か らは

2 2

名 )

No .

設 問 項 目 平均値

1

授業前 にテ キス トの該 当す る部分 を読 んで,毎 回の授業 に臨 んだ

2 . 9 2

講義 直前 のプ リン トは,講義 を受講す る際 に役立 った

4. 2 3

毎 回の課題 プ リン トは,欠 か さず提 出 した

4. 5 4

毎 回の課題 プ リン トをフ ァイル に保存 してい る

4. 7 5

毎 回の課題 プ リン トは,講義 内容 を理解 す るの に役 立 った

4. 8 6

授業 冒頭 の課題 プ リン トの答 え合 わせ は,有益 で あった

4. 7 7

中間試験 を受 け る前 に課題 プ リン トを見直 して学習 した

4. 4 8

課題 プ リン トを見直す こ とで,講義 内容 の理解 が深 まった

4. 4 9

中間試験前 に配付 され た

cD

内の フ ァイル (ス ライ ド) を見 た

4. 5 1 0 cD

内のファイル (スライ ド) を見ることで講義内容 の理解が深まった

4. 3

ll 授業 で理解 で きなかった事項 につ いて, 自己学習 を行 った

3. 9 1 2

授業 で理解 で きなかった事項 につ いて,教員 ‑質 問 を した

2. 3

【期末試験 時】有効 回答者数 :

2 3

No .

設 問 項 目 平均値

1 3

授業前 にテ キス トの該 当す る部分 を読 んで,毎 回の授業 に臨 んだ

2. 7 1 4

授業前 に これ までのプ リン トの フ ァイル を見直 した

3 . 9 1 5

プ リン トのフ ァイル を見直す ことで理解 が深 まった

4. 3 1 6

授業 で理解 で きなかった事項 について,教員 ‑質 問 した

3. 0 1 7

授業 で理解 で きなかった事項 につ いて, 自己学習 を行 った

4. 2 1 8

化学概論 に関す る資料 は,全 て フ ァイル ‑整理 してい る

4. 4 1 9

プ リン トの フ ァイル は 「化 学概論」 の受講 に役立 ってい る

4. 5 2 0

他 の授業 で も資料 をフ ァイ リングしてい る

3. 6 21

他 の授業 で フ ァイル の 中身 を見返 して, 自己学習 に役立 ててい る

3 . 9 2 2

配付 され た

CD‑ ROM

の内容 をパ ソコンを利用 して観 た

4. 7

a)次の5つの選択肢にそれぞれ評点を付し,平均値を算出した。そ う思 う‑5点,どちらかといえばそう 思 う‑4点,どちらともいえない・‑3点,どちらかといえばそう思わない・・・2点,そう思わない‑ 1点。

(4)

5 4

長崎大学教育学部紀要 教科教育学

N o . 4 6( 2 0 0 6

年)

表1の設問項 目

No .1‑ 1 2

は中間試験時のもの

,No .1 3‑ 2 3

は期末試験時のものである。

一部,設 問項 目は重複 してい る。設 問項 目

N0 .1

No .1 3

は, 中間試験時 と期末試験時の 違いがあるだけで, どち らも 「授業前 にテキス トの該 当す る部分 を読んで,毎回の授業 に 臨んだ」 とい う学生 の予習状況 を問 うた設 問であ る。 この平均値 は

,N 0 .1

2 . 9,No .1 3

2. 7といずれ も中間値 である 3. 0を下回ってい る。 この ことは,学生が授業前 に予習 を

あま り行 っていない ことを示 してい る。実際に, どの位 の人数 の学生が予習 に取 り組んで いたのかを知 るために, この設問項 目の度数分布 を図

1

に示す。図

1

か らわか るよ うに, 積極的 に授業前 にテキス トを読 んだ学生 はいなかった ことがわかる。 この結果 は,期末試 験時で も同様 であった。

う。

1

〔授業前 にテキス トを読 んだ

( No .

1)〕 (中間試験時) の度数分布

次に,課題 プ リン トの提 出状況 を見てみる。設 問項 目

N0 . 3

の 「毎回の課題 プ リン トは, 欠か さず提 出 した

の平均値 は

4 . 5

であ り,多 くの学生 が毎回課題 プ リン トを提 出してい た ことがわか る。 また,設 問項 目

N0 . 4

の 「毎 回の課題 プ リン トをファイル に保存 してい る」では,平均値 は

4 . 7

であ り, ほ とん どの学生が この課題 プ リン トをファイ リングして いた ことがわかる。学生 は, この課題 プ リン トをその後学習 に利用 したのであろ うか。設 問項 目

No . 7

「中間試験 を受 ける前 に課題 プ リン トを見直 して学習 したの平均値が

4. 4

で あったことか ら,多 くの学生が中間試験前に課題 プ リン トを見直 したことがわかる。一方, 設問項 目

N o .1 4

の 「授業前 にこれ までのプ リン トのファイル を見直 した」では,平均値 は 少 し落 ちて

,3 . 9

であった。 この ことは,学生が,普段 は試験前 ほ ど課題 レポー トの見直

しを行 っていない ことを示 してい る。

この授業では,学生の 自己学習 を促す教材 として,講義時 に用いた

po we r po i n t

⑧ファイル を入れ た

cD

を作成 し配布 した。 この

CD

を学生が有効 に利用 したか どうかを見てみ る。

設問項 目

N0 . 9

の 「中間試験前 に配付 され た

cD

内のファイル (スライ ド) を見た

の平均 値 は

4 . 5

であった。期末試験時のアンケー ト結果

( No . 2 2

の設問項 目)か らは,その平均 値 はさらに上がって

4.7

であった。 この ことは,学生が非常 によ くこの

CD

を利用 してい

(5)

星野由雅・林朋美 :大学における学生の科学的能力育成のための授業研究一ポートフォリオを用いた基礎化学の学習支援

‑5 5

ることを示 してい る。

では,学生は課題 プ リン トやcDを用いて, どれ くらい 自己学習 を行 ったのであろ うか。

中間試験時のアンケー トの設問項 目No.

1 1

の 「授業 で理解 できなかった事項 について, 冒 己学習 を行 った」の平均値 は

3 . 9

であった。 この値 は,期末試験時 には

4. 2

とな り,学生 が継続 して 自己学習 を行 っていた ことを示 してい る。では,実際 に どの位 の人数 が 自己学 習 を積極 的に行 っていたのであろ うか。図

2

に, 中間試験時お よび期末試験時のアンケー ト結果 の度数分布 を示す。 中間試験時までは

,2 0

名 の学生が 自己学習 を積極 的に行 ってい た ことがわか る。 しか し,それ以降期末試験 まで 自己学習 を積極的 に行 っていた学生 は, 半分以下の

9

名 に減少 していた。一方,設 問項 目No.

1 2

の 「授業 で理解 で きなかった事項 について,教員‑質 問をした」 の平均値 は

2 . 3

と低 く, これ は期末試験時 に, よ うや く平 均値 が

3 . 0

となったが,学生 は理解 で きない事項 を積極 的 に教員 に訊いていなかった こと

を示 してい る。

406284

0

2211 う。

いえば

いえな

いえないない 08642

0

う。

いえ

いえない

いえないない

図2 〔自己学習 を行 った〕の度数分布 :(a)中間試験時 (No.ll), (b)期末試験時 (No.17)

以上 の結果 を見 ると,学生 は予習 についてはあま り行 っていなかったものの,課題 プ リ ン トの見直 しや cDを利用 して,復習 には力 を入れて 自己学習 を行っていたことがわかる。

但 し,理解 できなかった事項 を教員 に訊いて理解 を深 めた学生 はご く一部 に止 まっていた とい えるであろ う。では, この よ うなポー トフォ リオ を用いた学習法で,学生 たちは どこ まで化学 の基本 的な知識 を獲得 し,理解 をしたのであろ うか。

5 学生の知識獲得 および理解度の評価

学生の知識獲得状況お よび到達 した理解度の評価 は,定着性 を考慮 して課題 プ リン トで はな く,全 て中間試験 と期末試験 の結果 を分析す ることで行 った。表2は設問項 目の上段 にアンケー トの項 目を下段 に試験 の問題 を示 してい る。学生 の 自己評価 は,上段 の平均値 (中間値 :

3

点)で示 され る。客観的な評価 は,下段の試験 における得点 (括弧内は満点) の平均値で示 され る。表2の結果か ら,学生の知識獲得お よび理解度が高い項 目は,No.29

(6)

5 6

長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.46 (2006年)

表2 化学 の基礎 的事項 につ いての学生 の 自己評価 と客観評価 (上段 :ア ンケー ト設 問, 下段 :試験 の設 問項 目)

N o .

設 問 項 目 下段 :平均得点 (上段 :平均値観点)

2 4

原子 の構造 を, 自分の言葉 で説 明す ることがで きる

3 . 6

2 5

同位体 について,具体例 を挙 げて説 明す ることがで きる

4 . 3

同位体 の例 を挙 げて簡単 に説 明せ よo

2 . 0( 4) 2 6 "1

モル" を 自分の言葉 で説 明す ることがで きる

4 .1 2 7

原子 中の電子 のエネル ギー について説 明す ることができる

2 . 7

(原理 .法則 .式 と説 明文 との相関 を測 る設 問

a ) ) 3 . 0( 6) 2 8

4つの量子数 を挙 げ,それぞれ何 を規定 しているかを説明す る

3 . 8

ことがで きる

2 9

ケイ素 (

1

4Si) の電子配置 を作 ることがで きる

4 .1

リン

( 1 5 P )

の電子配置 を ,軌道の箱 を用い,かつ電子 を矢印記

4 . 0( 5)

早 (TJ) で表 して示せo

3 0

イオ ン化エネル ギー を 自分 の言葉 で説 明す ることがで きる

4 . 0

第一イオン化エネル ギーの定義 を述べ よ○また,次の原子 の組の うち,第一イオ ン化エネル ギーの最 も大 きいものは どれか ?

2 . 8( 4) ( a )Li

,

B

,

C

,

N,F ( b)C

1

,

Ⅰ,

Br

,

F

,

Ne

31

放射線の種類 と実体 を挙げ,その性質を自分の言葉で説明できる

4 . 0 3

つの放射線の種類と実体を示せoまた,各放射線の特徴を一つ挙げよo

5 . 8( 8) 3 2

化学結合 の種類 を4つ挙 げ, 自分の言葉 で説 明で きる

3 . 9

化学結合を4つ挙 げ,その うちの

2

つについて簡単に説明せ よo

8 .1( 1 0) 3 3

極性分子,無極性分子について例を挙げて,自分の言葉で説明できる

3 . 7

次の化合物 を無極性分子 と極性分子 の グルー プに分 けよo

9 . 0

(

1 0) N

2,

NH

3

,CH

4,

HF

,

CO

2,0 2

,HC

l,

CC

14

,CHC

13

,C

60

3 4

6結合 と7T結合 の違 い を 自分の言葉 で説 明で きる

3 . 7

o結合 と7T結合 の違 い を軌道 の図を用 いて説 明せ よo

5 .1( 8) 3 5

結合距離 と結合エネル ギー との関係 を自分の言葉で説明できる

3 . 0 3 6 3

種類の混成軌道について化合物例を挙げ,自分の言葉で説明できる

3 . 2

炭素の代表的な混成軌道 を

3

つ挙 げ,それぞれの代表的な化合

4 . 8

(

1 2)

a)設問内容は以下である。

次のA組にある原理 ・法則 ・式などに最も適した説明をB組の中から選びなさい。但し,適切な説明 文がない場合は空欄にしても良い。解答は"A1‑B7"のように関係のあるものをハイフンで結んで記述 す ること。

A ①不確定性原理,②波動方程式,③フントの規則,④ p ‑ m v チ ‑I (P ‥運動量;m‥質量 ; V:速度 ;A :プランク定数;九 :波長),

C

⑤E=

h v

=

h r

r (E :エネルギー;V‥振動数;C:光の速度),⑥電子のエネルギーの量子化

(7)

星野由雅・林朋美 :大学における学生の科学的能力育成のための授業研究‑ポートフォリオを用いた基礎化学の学習支援‑57

B ①物質も波 としての性質を持つ ことを示 した式,(診電子はエネルギーの低い軌道か ら順 に入ってい く,

③同一原子内には4つの量子数が全 く同じ電子は存在 しない,④電子の位置 と運動量 とを同時に知 る ことはできない,⑤水素原子のスペ ク トル を説明す るためには不可欠なもの,⑥原子 中の電子の運動 状態 を記述 した式

の原子 の電子配置 に関す る項 目,No.32の化学結合 に関す る項 目,No.33の極性分子,無 極性分子 に関す る項 目の3つであ り,平均得点 (満点)はそれぞれNo.29が4.0 (5),No.32 が8.1(10),No.33が9.0(10)と8割以上 の得点 を示 してい る。 これ らに次いで得点が高 いのが,No.30のイオ ン化エネル ギーに関す る項 目が2.8 (4)で7割,No.31の放射線 に関 す る項 目が5.8 (8)で7割,No.34の o結合 と7T結合 に関す る項 目の5.1 (8)で6割以上 となってい る。以上 の項 目については,学生 は知識 を獲得 し,ある程度 の理解 に達 してい るとみなせ るであろ う。一方,No.25の同位体 に関す る項 目では2.0 (4)で5割,No.27の 原子 中の電子 のエネル ギー に関す る項 目では3.0 (6)で5割,No.36の3種類 の混成軌道 に関す る項 目では4.8(12)で

4

割 に止 まってい る。では, これ ら6割未満 の平均得点 で あった項 目で十分 な理解 に達 した学生 は,何人いたのであろ うか。そ こで, これ らの項 目 に関す る得点 の度数分布 を見てみ る。

64208642

0

■l■l■l■l

987654321

0

0

1 2 3 4

098765432

1 0

0

1 2 3 4 5 6

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112

図3 平均得点の低かった設問項 目における学生の得点分布状況 :

( a)

同位体 に関す る設問 郎0.25),(b)電子のエネルギーに関する設問 餅0.2の,(C)混成軌道に関する設問 糾0.36)

(8)

58 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.46(2006年)

この度数分布 の結果 を見てみ る と,満点 を獲得 した学生が数名,あ とは主 に半分以下の 点 しか得点 できていない とい う似 た分布状況 を示 した。 この ことは,ある特定の項 目に対

しては,学生 によって理解度 に大 きな差 があるこ とを示 してい る。

ところで,平均得点が高かった項 目および平均得点が低かった項 目に関 して,学生 自身 は どう自己評価 を行 っていたのであろ うか。い くつかの項 目について, 自己評価 と客観評 価 との関係 を見てい く。

設問項 目No.29,30,31,32,33,34な ど平均得点が高かった項 目の 自己評価 の平均値 は

3. 7‑ 4.1

であ り,学生の 自己評価 と客観 的な評価 とが,ほぼ一致 していた とい える。

一方,平均得点が低かった項 目No.25,27,36の 自己評価の平均値 は,それぞれ 4.3,2.7, 3.2であった。No.25の同位体 に関す る設 問では学生 の 自己評価 は高かったが,客観 的評 価 では平均得点 は

5

割 であった。 これ は,学生が単 に "原子番号が同 じで質量数,つま り

中性子数 が異 なる原子 同士の関係" と同位体 の定義 のみだけ述べれ ば良い と認識 していた ことによる。解答 は,定義 に加 えて,同位体 の性質,つま り "化学的性質 は同じであるが, 反応速度 な どの物理的性質が異 なること"が要求 されていた。 このよ うに学生 の知識深度 と教員側 が求 める知識深度 にはじめか ら差 が生 じていた ことが, 自己評価 と客観 的評価 の 違いになって現われ たもの と考 え られ る。他 のNo.27お よび No.36の学生の 自己評価 の平 均値 はそれ ほ ど高 くな く,学生 もこれ らの項 目については学習が足 りない ことを認識 して いた と考 え られ る。

6 学生のポー トフォ リオ学習に対する評価

学生 自身 はこのポー トフォ リオ学習 をどのよ うに評価 していたのであろ うか。表1中の 設 問項 目の うち,No.2,5,6,8,10,15,19,23が学生のポー トフォ リオ学習 に対す る 評価 の一端 を示 してい る。それ らの項 目だけ,抜 き出 して表

3

に示す。

3

学生 によるポー トフォ リオ学習 に対す る評価 (

1)

a

)

No. 問 項 目 平均値

2 講義直前のプ リン トは,講義 を受講す る際に役立った 4.2 5 毎回の課題 プ リン トは,講義内容 を理解す るのに役立った 4.8 6 授業 冒頭の課題 プ リン トの答 え合わせは,有益であった 4.7 8 課題 プ リン トを見直す ことで,講義内容の理解が深 まった 4.4 10 cD内のファイル (スライ ド)を見ることで講義内容の理解が深まった 4.3 15 プ リン トのファイル を見直す ことで理解 が深 まった 4.3 19 プ リン トのファイルは 「化学概論」の受講 に役立っている 4.5

a)次の5つの選択肢にそれぞれ評点を付し,平均値を算出した。そう思う‑5点,どちらかといえばそう 思う‑・4点,どちらともいえない‑3点,どちらかといえばそう思わない‑2点,そう思わない‑1点。

これ らの設問の平均値 は,いずれ も4点 を超 えてお り,ポー トフォ リオ学習 の中で最 も 単純 な,"プ リン ト類 をファイ リングし, それ を見直す" とい う学習 を,学生 が有益であ

(9)

nho)fcnJir77)

くノ

fc359

表4 学生 によるポー トフォ リオ学習 に対す る評価 (

2)

一 自由記述‑

No. 講義直前のプ リン ト学習は, どのよ うな効果があつたと思いますか ? 課題 プ リン トによる学習は, どのような効果があつた と思いますか ? 1 今 日何 を習 うのか, 自分が何 を知 らないのか知 ることができたo 一週間内にす ることで復習 になった と思 うo

2 自分の予習の度合い,持っている知識の確認 授業内容の復習, 自己学習‑の活用

3 自分のわか らない ところがわかったo まとめに役立ったo

4 自分の知 らない ところが どこかを理解できるo 授業内容がより深 く理解できるo

5 自分の分か らない ところが確認できるo 復習 になったo

7 その 日の講義の輪郭が見えてよかつたo 復習 をす るとい う意味で役 に立ったo 8 自分がわか らない ところを確認 し,授業内容の理解 を深める効果○ 復習 として理解 を深める効果○

9 今か らどのようなことを学ぶのかが分かったo 講義の復習がしやすい○

10 その 日の講義のポイ ン トを知 ることができたo 講義の復習 .見直 しに役立った○

ll その講義の内容がわかったo その講義の理解度がわかったo

13 今 日の学習内容がわか り,授業が受けやすかつたo 授業でやったことを復習できた○

14 自分の今の知識がわかる○ 復習の機会が与 えられ るo

15 自分の分か らない ところを理解す ることができる○ 復習 に加 え, 自己学習啓発の効果があつた と思 うo 16 どれほど自分が理解 していない ところがあるかわかるo 授業内容の復習 を促すo

17 自分の予習が どれ くらいできたか,高校の知識が どれだけ残っているかを ノー ト,テキス トを使って授業の復習をす ることができ,理解 を深めるこ

確認す ることができた○ とにつながつた と思 うo

18 どんな内容 を今 日す るのかがわかったo 授業で理解できた ところとそ うではない ところが明確 になった○

19 その 日にや る内容 をざっと確認できたo 復習す ることで,す ぐに忘れないようにできたo

21 復習す ることでその事項 を, 自分の頭 に定着 させ ることができたo

24 講義内容 に興味 を持つ ことができるo 学習 したことを確実にす ることができるo

(10)

60 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.46 (2006年)

る と評価 してい ることを示 してい る。次 に, ア ンケー トの 自由記述欄 か らよ り詳 し く学生 のポー トフォ リオ学習 に対す る評価 を探 ってみ る。表4に講義前 プ リン トと課題 プ リン ト の効果 について訊いた設 問 に対す る 自由記述 の回答 を示す。 これ をキー ワー ド別 にま とめ た もの を表

5

に示す。

5

自由記述 の回答 の キー ワー ド別 分類

① 講義直前の プ リン ト学習 は, どの よ うな効果が あ った と思 いますか ? 記述 内容 記述数 (延べ)

自己の知識 の確認 ※ ll

講義内容 を知 る 8

自己 目標 の設定 2

予習の確認 2

講義 内容‑の興味の喚起 1

② 課題 プ リン トに よる学習 は, どの よ うな効果が あ った と思 いますか ? 記述 内容 記述数 (延べ)

復習

1 6

自己の理解度の確認 2

自己学習‑の応用 2

授業 内容 の理解 1

学習事項 のま とめ

1

5

の(丑講義前 プ リン トの効果 を訊 いた設 問 に対す る回答 では,"自己の知識 の確認"

が11名 ,"その 日の講義 内容 を知 る"が8名 であった。興味深 い こ とに,"自己の知識 の 確 認" につ いて述 べ てい る11名 の うち,8名 が 自己に不足 してい る知識 について述べ て い る。 これ は,講義前 プ リン トが 自己の これ までの知識 を振 り返 る契機,つま りポー トフォ リオ学習が 目指す学習過程 での "自己評価" を学生が 自然 に行 っていたことを示 している。

この "自己評価 " は, その後 の学習者 自身 による 目標設定 な どの学習動機 ‑ と通 じる重要 な要素 とな る。その意味で, この授業 で採用 したポー トフォ リオ による学習支援 は,ある 一定 の 目的 を達 した とい えるで あろ う。

5

の② 課題 プ リン トの効果 を訊 いた設 問 に対 す る回答 で は,"復 習" を挙 げた学生が ほ とん どを占めた。平成

1 6

年度 の授業 で は,復 習 を行 っていた学生 が一部 に限 られてい た。今 回の よ うに講義前 プ リン トと同 じ設 問の課題 プ リン トは,学生 に とって新 たに問題 を解 く行為 よ り,精神 的 に安易 に取 り組 めた と考 え られ る。

(11)

星野由雅・林朋美 :大学における学生の科学的能力育成のための授業研究‑ポートフォリオを用いた基礎化学の学習支援

‑6 1

6 ポー トフォ リオ学習の今後の展 開

平成

1 6

年度 に引き続 き,平成

1 7

年度の 「化学概論」 の授業でポー トフォ リオ による学 習支援 を行 い,学生が 自ら講義前 プ リン トの度 に "自己評価" を行 うとい うポー トフォ リ オ学習が 目指す 目的 をある程度達成 で きた。ポー トフォ リオ学習 の効果 は,特定の項 目を 除けば,化学の基礎 的な事項 について知識 の獲得 と理解 を深 めることに貢献で きた といえ る。 このよ うに,学習過程 に重 きをお くのではな く,知識の獲得や理解 を深 める学習,棉 的 に言 えば "成果"が問われ る学習 においても, ポー トフォ リオ学習がある一定 の効果 を 示す ことを明 らかにした。今後 は,ポー トフォ リオ学習 を化学系の授業全体,つ ま り講義 に限 らず,実験,演習 にも広 げ, とか く断片化 しがちな知識や実験手法 ・技能 を化学 に関 す る "知" の統合 として,学生 が捉 え られ るよ う展 開 を図 りたい。

本稿 は,科学研究費補助金 (基盤研究

( C)(2) )

「教員養成段 階 にお ける学生 の科学 的能力 向上 のための大学授業改善 に関す る実証的研究」 (研究代表者 :林 朋 美,課題番 号 :

1 6 60 40 0 6)

の分担研究 の成果 の一部 である。

参考 文献

1)大学化学教育検討小委員会委員 (小林啓二,阿万智治,伊藤 卓,岩揮康裕,大橋 ゆ か子,荻野和子,上方宣政,鈴木孝治, 中田宗隆,松本和子,丸毛‑彰)発行者 :大 学基礎化学教育 に関す るアンケー ト調査報告書,p

p. 9‑ 3 4

,(社) 日本化学会,2

0 00

年.

2)

星野 由雅,林 朋美 :大学 における学生の科学的能力育成 のための授業実践‑ ポー ト フォ リオ を用いた化学の学習支援 (予稿)‑,長崎大学教育学部附属教育実践総合セ ンター紀要,第4号,p

p. 45‑ 5 4

,20

0 5

年.

3)三省 堂編集所編 :グラン ドコンサイス英和辞典,p. 20 2 8

,三省 堂,2

0 01

年.

4)

高浦勝義著 :ポー トフォ リオ評価入 門,pp.1

6‑1 7

,明治 図書,2

00 0

年.

5)

ポー トラン ド州立大学卓越性推進セ ンター ポー トフォ リオ ・ワーキング ・グルー プ (翻訳 :山岸 み ど り):昇格 とテニ ュア審査 のためのポー トフォ リオ作成 の手 引き, 高等教育 ジャーナル一高等教育 と生涯学習‑ ,第

1

1号

,p p.1 2 9‑1 40

,20

03

年 .

6)

信州大学教育学部附属教育実践総合セ ンター ホームペー ジ

( ht t

p://

c e r t . s h i ns h u‑ u. a c . j p/ p t / Po r t f o l i o / i nd e x. h t ml )

:教育実習

we b

ポー トフォ リオ,2

00 5

1 0

5

日更新 .

7

)週 間医学界新 聞第

2 5 6 3

号記事 :ポー トフォ リオで 「意思 あ る学 び を実践」‑聖 マ リ アンナ 医大 ク リニカル ・クラー クシ ップにお ける取 り組 み,2

00 3

1 2

8日.

8)

a)川崎謙一郎,神保敏弥,南

春男,重松敬一, 日野圭子 :大学学部授業 「総合演 習」 における大学生の授業評価 についての授業実践 Ⅱ一情報機器 を用 いてポー トフォ リオ的評価 を構成 して‑,奈 良教育大学附属教育実践総合セ ンター研究紀 要,第

1 3

号,p

p.1 1 7‑1 25,2 0 0 4

年 ;

b)川崎謙一郎,神保敏弥,南

春男,重松敬一 :大学学 部授業 「総合演習」 における大学生 の授業評価 についての授業実践 (Ⅲ)‑情報機器 を用 いたポー トフォ リオ的評価 の構成 (II)‑,奈 良教育大学附属教育実践総合セ ン ター研究紀 要,第

1 4

号,p

p.1 71 ‑1 81

,2

00 5

年.

参照

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