【資 料】
児童の孤独感対処方略と学級生活満足度との関係
西村 多久磨* 村上 達也**
本研究では,児童の孤独感対処方略の選択と学級生活満足度との関係を検討した。また,侵害行為認知群に属 する児童の孤独感が,なぜ教師から把握されにくいのかについて孤独感対処方略に着目し明らかにすることを目 的とした。小学生439名を対象に,質問紙調査を実施した。分析の結果,侵害行為認知群に属する児童は,孤独 感の対処方略として自己呈示を使用する傾向があることが示され,それにより孤独感の主観的評価と客観的評価 のズレが生じている可能性が示唆された。また,個人の学級満足度によって選択される孤独感対処方略も異なる ことが示された。これらの結果をもとに,学級生活満足度尺度の4群に対する孤独感対処方略の特徴について整 理した。
キーワード: 児童,孤独感,対処方略
【問題と目的1, 2】
孤独感は子どもの社会性や発達を阻害するという臨 床的観点から,近年,注目を集めており(Heinrich &
Gullone, 2006; Jones, Schinka, van Dulmen, Bossarte, &
Swahn, 2011),日本でも子どもの孤独に関する研究が 再び行われるようになってきた(e.g., 酒井・ローテン バーグ・ルーシー・眞榮城, 2015; 西村・村上・櫻井,
2015)。その引き金となったのはUNICEF(2007)の
子どものwell-being に関するレポートであろう。この
レポートによって,日本では孤独を感じている子ども が世界で最も多いことが紹介されたのである。その割
合は29.8% であり,2位のアイスランドの10.3% と比
べてみても,その割合は極めて高いことがうかがえる。
この他にも,海外の研究では約10%から15%程度で 孤独を感じている子どもが存在することが報告(e.g., Asher, Hymel, & Renshaw, 1984; Cassidy & Asher, 1992)
されている一方で,村上・西村(2012)の国内の調査 では,約4人に1人の児童が学校で孤独を感じている ことが明らかにされている。
悲しいやつらいなどの感情的傾向によって表現され る孤独感は,他者との関係における親密さの欠如や対 人的なトラブルによって生じる(Asher & Paquette, 2003; Parkhurst & Hopmeyer, 1999)。ソシオメトリック テストによる実証的研究(e.g., Asher, et al., 1984; Asher
& Wheeler, 1985; Hymel, Rubin, Rowden & LeMare, 1990;
前田, 1995)でも仲間関係と孤独感との関連が注目さ
れ,仲間関係の乏しさや社会的地位の低さなどが,孤 独感の原因となることが報告されてきた。そして,こ のような社会的関係の結果によって生じた孤独感が,
自 尊 感 情 や 社 会 的 受 容 感 の 低 下 や(Sletta, Valas, Skaalvik, & Sobstad, 1996), 抑 う つ 症 状(Nangle, Erdley, Newman, Mason, & Carpenter, 2003; Qualter, Brown, Munn, & Rotenberg, 2010)と関連を示すことが 明らかにされている。孤独を感じている子どもへの教 育的支援は孤独感によって引き起こされる二次症状の 予防になると考えられるため(村上・西村, 2012),
孤独を感じている子どもへの早急な対応が望まれてい るといえよう。なお,学校の休み時間などでは,みん
* 東京大学・日本学術振興会
** 高知工科大学
1 本研究は,村上・西村(2012)で発表したデータを再分析し たものである。目的が本論文とは異なるため改めて報告した。
2 本論文の一部の内容は,日本カウンセリング学会第45回大 会にて発表された。
なと校庭で遊ぶのではなく,図書室や教室などで,一 人で読書をしたりしている子どももいるが,Qualter &
Munn (2002)によると,こうした子どもよりも,主
観的に孤独を感じている子どもの方が問題を抱えてい るとされている。このように当該研究領域では,客観 的な孤独状態(social isolation)と主観的に孤独を感じ ている状態(emotional loneliness)を弁別した上で,
研究を行う必要性が指摘されているが,本研究は後者 の主観的な孤独感に焦点をあてた研究群に属する。
孤独を感じている子どもへの教育的支援を実現する ためには,まずは孤独を感じている子どもを把握する ためのアセスメントが重要である。しかしながら,孤 独を感じている子どもを特定することの難しさが示唆 されている。例えば,Vernberg, Ewell, Beery, Freeman,
& Abwender(1995)は,対人トラブルなどの経験が あった際には,他者に報告することや自己開示によっ て孤独感を低くすることができると指摘しているが,
そもそもこうした仲間とのトラブルについては,誰に も相談しないという選択が多くなされることを明らか にしている。他にも,Besevegis & Galanaki(2010)は インタビュー調査によって,子どもが孤独を感じた際 の対処行動(コーピング)を抽出した結果,新しい友 達を探したり,重要な人(親や先生)とコンタクトを 取ろうとしたりすることが挙げられた一方で,さみし いことを忘れようとする認知的対処や,わずかな割合 であるものの攻撃や怒りの表出がなされることも明ら かにしている。これらのことから,子どもは孤独を感 じた際,他者にそれを打ち明けにくく,また同時に,
怒りや攻撃という形で孤独感を表現することがあるた め,孤独感の客観的把握が難しくなっていることが十 分に考えられる。
この孤独感の把握の困難さについて,西村・村上
(2016)は,河村・田上(1997)が開発した学級生活 満足度尺度を用いた研究から一定の見解を示している。
学級生活満足度尺度とは,「級友に認められているか 否か」を表す「承認得点」と「冷やかしやからかいを 受けているか否か」を表す「被侵害得点」を用いて対 象者の学級生活満足度を把握する標準化された心理検 査のことである。彼らの研究では,承認得点が高く被
侵害得点の低い「学級生活満足群」は最も孤独感が低 く,その対となる「学級生活不満足群」は最も孤独感 が高いことが示された。そして,教師による孤独な児 童の抽出との兼ね合いから,承認得点と被侵害得点の ともに高い「侵害行為認知群」の児童は孤独感が低く 見積もられる傾向にあり,ともに低い「非承認群」は 孤独感が高く見積もられる傾向にあることが示されて いる。すなわち,侵害行為認知群の児童は孤独を感じ ていたとしても,まわりの他者(主に教師から)から は孤独を感じていないと評価され,非承認群は実際に は孤独を感じていなくても,孤独を感じていると他者 からは評価される傾向にあることが示されたのである。
その原因として,彼らは,孤独を感じた際の行動,す なわち孤独感対処方略が,そのような孤独感の主観的 評価と客観的評価とのズレを生じさせているのではな いかと予想している。しかしながら,この点について の実証的な検討は現在まで行われてはいない。そこで 本研究では,孤独感の主観的評価と客観的評価とのズ レを説明する要因として孤独感対処方略に着目し,学 級生活満足度尺度の4群と孤独感対処方略との関連を 検討する。
孤独を感じた際の代表的な対処行動について,高齢 者 を 対 象 と し た 研 究(e.g., Rokach, Orzeck, & Neto, 2004)や大学生サンプルをもとにした成人研究(e.g., 花井・小口, 2005; 諸井, 1989; Rokach & Brock, 1998),
青年期(e.g., 工藤, 1986; 吉村, 2008)を対象とした研 究 が す で に 存 在 し て い る が,Besevegis & Galanaki
(2010)は児童期の子どもは孤独感に対して特徴的な 反応を示すことを指摘している。例えば,孤独感に対 しては,基本的に年齢が上がるにつれて他者に援助を 求めたりするなどの積極的な対処できるようになるが,
子どもは成人と比べて対処へのあきらめや逃避行動な ども選択しやすいことが述べられている。また,すで に孤独感に対する対処方略については文化比較による 検 討(e.g., Rokach, Bacanli, & Ramberan, 2000; Rokach
& Neto, 2000; Rokach et al., 2004)が行われており,こ れらの先行研究で強調されていることは,対象となっ た国ごとの独自性である。したがって,日本の子ども を対象に研究知見を蓄積することには大きな意味があ
るといえる。
こ の よ う な 現 状 を 踏 ま え, 村 上・ 西 村(2012, 2013)は,日本の子どもを対象とした自由記述調査を 経て,以下の6つの対処行動を抽出している。それら は自己呈示,肯定的思考,社会的接触,攻撃的対処,
受容的対処,一人遊びである。自己呈示とは,孤独を 感じたとしてもそれを感じていないように振る舞うこ とであり,肯定的思考とは,出来事に対してポジティ ブな意味を見出そうとする認知的な対処のことである。
社会的接触とは,孤独を感じた際にそれを減らすため に他者との接触を求めることであり,攻撃的対処は物 にあたったり他者を攻撃したりすること,受容的対処 は,孤独感に浸ること,そして一人遊びは,他者との 距離を一度置き,一人で活動をすることである。この 中でも侵害行為認知群の児童が取りやすく,かつ客観 的評価と主観的評価のズレを生み出していると予想さ れる対処行動のパターンとしては以下の二つが考えら れる。まず一つ目は,自己呈示である。自己呈示とは 孤独を感じたとしても,さみしさを感じていないふり をすることである。このような行動を取ることによっ て,教師を含むまわりの他者は,彼らはさみしさを感 じていないものと判断していると考えられ,上述した 孤独感の主観的評価と客観的評価のズレを生み出して いると予想される。二つ目のパターンは,社会的接触 と攻撃的対処との組み合わせである。侵害行為認知群 の児童の自己認知によるソーシャルスキルは良好であ り (e.g., 小野寺・河村・武蔵・藤村, 2004),孤独を感 じた際には,対人リソースを活用しやすい状況にある と考えられる。しかしながら,一方では対人関係を悪 くする攻撃的対処を行っていることも予想されており
(小野寺他, 2004),それによって孤独を感じやすい 社会的環境を自ら作り出してしまっている可能性が考 えられる。攻撃的対処は,教師の目の届くところでは 自重されることが予想されるため,教師からは社会的 接触だけを行っているように見えてしまう。この結果 が孤独感の主観的評価のズレを生み出すことも考えら れた。以上の二つを本研究の予想とした。
【方 法】
調査対象
A県内の公立小学校2校の4年生から6年生439名
(4年男子66名, 女子66名, 5年男子108名, 女子84 名, 6年男子65名, 女子50名)を対象とした。
調査時期
2010年12月から2011年2月であった。
調査内容
孤独感対処方略 村上・西村(2013)が作成した児 童用孤独感対処行動尺度を用いた。この尺度は,24 項目から構成され,「自己呈示(例:元気なふりをする)」,
「肯定的志向(例:自分で自分を勇気づける)」,「社 会的接触(例:ほかの人のところへ行く)」,「攻撃的 対処(例:友だちにぼう力をふるう)」,「受容的対処(例:
一人でおちこむ)」,「一人遊び(例:一人でしゅみに していることをする)」,の6下位尺度がそれぞれ4項 目によって測定される。「この半年の間,さみしい気 持ちになった時,さみしい気持ちをへらすため,あな たはどのようなふるまいをしましたか。以下の書かれ ているふるまいをしたことがあるかどうか答えてくだ さい。」と教示し,「1:まったくしなかった」,から「4: よくした」の4段階評定で回答を求めた。
学級生活満足度 河村・田上(1997)が作成した尺 度を用いた。「承認」と「被侵害」の因子がそれぞれ 6項目で測定される。4件法(1:まったくそう思わな
い, まったくない, 2:あまりそう思わない, あまりな
い, 3:少しそう思う, 少しある, 4:とてもそう思う,
よくある)による回答を求めた。
手続き
孤独感対処方略尺度と学級生活満足度尺度は,児童 を対象として,学級活動の一部の時間を用いて集団方 式で実施した。フェイスシートに,学校の成績に一切 関係がないこと,個人のプライバシーは保護されるこ との2点を明記した。また本調査は担任教師による主 導のもと学級ごとの集団方式で実施された。
【結 果】
尺度の信頼性の検討および記述統計
各尺度の信頼性を検討するために,Cronbachのα 係数を算出した。学級生活満足度尺度の下位尺度であ る承認はα = .81,被侵害はα = .80,であった。孤独 感対処方略について,自己呈示はα = .81,社会的接 触はα = .77,攻撃的対処はα = .75,肯定的思考はα
= .74,一人遊びはα = .64,受容的対処はα = .66,で あった。一人遊びと受容的対処の内的一貫性は低い値 であったが,以降の分析では,加算平均得点を下位尺
度得点として扱うこととした。平均値と標準偏差およ び尺度間の関連をTable 1に示した。
学級生活満足度の 4 群と孤独感対処方略との関係 学級生活満足度尺度の全国平均値をもとに,対象者 を4群に分類した3。その結果,学級生活満足群が 221名(50.3%),非承認群が80名(18.2%),侵害行 為認知群が54名(12.3%),学級生活不満足群が84 名(19.1%)となった。次に,これらの4群を独立変数,
孤独感と孤独感対処方略を従属変数とする一要因の分 散分析を行った。結果をTable 2に示した。自己呈示,
社会的接触,攻撃的対処,受容的対処において群の主 効果が有意であったため,Tukey法による多重比較の 検定を行った結果,以下のことが明らかになった。ま ず,自己呈示については,学級生活満足群と侵害行為 認知群の得点が非承認群よりも高かった。社会的接触
3 4群のカッティングポイントは,図書文化社より公表されて おり,年度によって更新されることがある。調査実施時期(2010 年時)においては,承認得点が17点から18点の間,被侵害 得点が11点から12点の間で群分けをすることとなっていた。
Table 1 本研究で使用した尺度の平均値と標準偏差および尺度間の相関関係
M SD 2 3 4 5 6 7 8
1 承認感 3.04 0.57 -.48 *** .15 ** .22 *** -.26 *** .26 *** -.09 -.15 **
2 被侵害感 1.70 0.61 .08 -.06 .19 *** -.04 .13 ** .36 ***
3 自己呈示 2.36 0.88 -.03 -.04 .29 *** .21 *** .37 ***
4 社会的接触 2.18 0.86 -.02 .37 *** .09 .02 5 攻撃的対処 1.42 0.55 -.03 .15 ** .16 **
6 肯定的思考 2.36 0.83 .27 *** .15 **
7 一人遊び 2.45 0.78 .27 ***
8 受容的対処 1.81 0.69
***p<.001,**p<.01
Table2 学級生活満足度尺度における4群の孤独感対処方略の平均値と標準偏差および分散分析の結果
学級生活満足群
(n=221)
非承認群(n=80)
侵害行為認知群
(n=54)
学級生活不満足群
(n=84) F値 h2 多重比較
(5%)
自己呈示 2.40
(0.86) 2.10
(0.86) 2.55
(0.95) 2.39
(0.87) 3.42 * .02 非<満,侵 社会的接触 2.35
(0.85) 1.91
(0.86) 2.23
(0.83) 1.94
(0.80) 8.14 *** .05 非,不満<満 攻撃的対処 1.32
(0.46) 1.58
(0.67) 1.39
(0.50) 1.59
(0.59) 7.55 *** .05 満<非,不満 肯定的思考 2.47
(0.82) 2.11
(0.79) 2.68
(0.87) 2.09
(0.70) 10.05 *** .06 非,不満<満,侵 一人遊び 2.40
(0.77) 2.39
(0.83) 2.59
(0.77) 2.56
(0.75) 1.50 .01 受容的対処 1.67
(0.57) 1.69
(0.71) 2.06
(0.66) 2.15
(0.81) 13.70 *** .09 満,非<侵,不満 注 1)( )値は標準偏差.
注 2)満=学級生活満足群,非=非承認群,侵=侵害行為認知群,不=学級生活不満足群
***p<.001,*p<.05
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Figure 1 学級生活満足度の4群と孤独感対処方略との関係
Figure 1 学級生活満足度の4群と孤独感対処方略との関係
については,満足群の得点が非承認群と学級生活不満 足群よりも高かった。攻撃的対処については,非承認 群と学級生活不満足群の得点が学級生活満足群よりも 高かった。肯定的思考については,学級生活満足群と 侵害行為認知群の得点が非承認群と学級生活不満足群 よりも高かった。そして,受容的対処については,侵 害行為認知群と学級生活不満足群の得点が学級生活満 足群と非承認群よりも高かった。
次に学級生活満足度と孤独感対処方略との関係をよ り詳細に検討するため,主成分分析を用いてこれらの 関係を視覚的に表現することにした。具体的な手続き は以下の通りであった。まず,六つの孤独感対処方略 の得点を用いて,抽出する主成分を2に設定した上で,
主成分負荷量を算出した。そして,学級生活満足度尺 度の4群における各孤独感対処方略の主成分負荷量の
平均値と各孤独感対処方略の主成分負荷量をもとに Ward法によるクラスタ分析を行った。クラスタ数を 1から4に設定した結果,クラスタ数を3に設定した 場合が最も解釈が容易であった。結果を Figure 1 に図 示した。まず,学級生活満足群は,肯定的思考と社会 的接触と同クラスタとなった。また,侵害行為認知群 は,受容的対処,一人遊び,自己呈示と同クラスタと なった。さらに,学級生活不満足群と非承認群は攻撃 的対処と同クラスタを形成した。これらの結果は,各 群と同クラスタとなった孤独感対処方略が,それらの 群において,相対的に使用されやすいことを意味して いる。
【考 察】
本研究では,孤独を感じている児童を抽出すること の困難さに関する知見に対して,児童が孤独を感じた 際の対処行動に着目し,学級生活満足度尺度による4 群を用いた検討を行った。具体的には,学級生活満足 度尺度によって分類された4つの群に属する児童の孤 独感対処方略の得点を比較し,主成分負荷量をもとに クラスタ分析を用いて,西村・村上(2016)が明らか にした知見を支持する結果が得られるかどうかを確認 した。その結果,侵害行為認知の児童については予想 された二つの対処行動パターンのうち自己呈示による 対処パターンがあてはまることが示された。以下,4 群ごとに知見を整理していく。
学級生活満足度の 4 群と孤独感対処方略との関係 まず学級生活満足群の児童は,自己呈示や社会的接 触,肯定的思考の得点が高く,これらの中でも,特に 社会的接触と肯定的思考を選択する傾向にあることが わかった。この結果は学級生活満足群の児童の特徴を よく表していると考えられる。学級生活満足群の児童 は,まわりの児童との対人関係が最も安定しているこ とから,孤独を感じた際には気軽に他者への援助を求 めることができるのであろう。また,そうした見通し が孤独機会をネガティブに捉える認知傾向を最小限に 抑えることにつながり,肯定的な見方を可能にしてい るともいえる。ただし,自己呈示の得点も高いことか ら満足群に属する児童は孤独を感じた際にそれを表に 出さない可能性も考えられ,この点には注意が必要で ある。次に,非承認群に属する児童は,攻撃的対処,
学級生活不満足群と同クラスタに属することが示され た。この結果は,攻撃的対処に関して,非承認群の児 童は学級生活不満足群の児童と同様に,選択しやすい ということを意味しており,対処パターンも学級生活 不満足群の児童と類似していることを意味している。
また,全般的に対処方略の得点が低いという特徴も明 らかにされた。非承認群に属する児童の行動的特徴の 一つとして,行動的反応の低さがたびたび報告(e.g., 村上・西村, 2014)されるが本研究の結果はそれらの 知見と一致するものであるといえる。また一つの可能
性ではあるが,非承認群に属する児童は孤独場面を過 小に評価している可能性があり,それが対処行動得点 の全般的な得点の低さにつながっているのかもしれな い。侵害行為認知群に属する児童は,自己呈示や肯定 的思考,受容的対処の得点が高く,主成分分析の結果 からは,これに加えて,一人遊びを選択する傾向にあ ることが示された。自己呈示を選択しやすいという結 果は本研究の予想を支持するものであり,教師が孤独 を感じている児童を把握することの困難さに対して有 益な示唆を与えるものである。侵害行為認知群に属す る児童は孤独を感じた際に,孤独を感じていない,も しくは気にしていないふりをすることによって,まわ りからは孤独を感じていないように見られてしまうの であろう。また,肯定的思考の得点も高かったことか ら,孤独を感じたとしても肯定的な思考によって状況 を乗り越えようとすることも明らかにされた。一方で,
受容的対処や一人遊びを選択することも示されており,
自己呈示や肯定的思考と併せてこれらの対処行動の共 通項を見出すとすれば,基本的に侵害行為認知群に属 する児童は孤独に対しては個人内での解決を図ろうと するようである。ただし,孤独感は対人関係のトラブ ルによって生じるとされていることから,これらの対 処行動が問題の根本的な解決につながっているかどう かについては疑わしい。肯定的思考についても物事の 良い面を見出すだけであり,対人関係の修正には直接 は関連しないものと考えられる。したがって,侵害行 為認知群に属する児童は孤独経験に対して一定の反応 を示してはいるものの,やはりその対処行動の選択に は疑問が残り,今後は対処行動の結果を踏まえた議論 も必要となるであろう。最後に,学級生活不満足群に 属する児童は,受容的対処や攻撃的対処の得点が高く,
非承認群と同クラスタに配置されたことから,孤独へ の反応が似ていることが示された。学級生活不満足群 に属する児童は最も援助ニーズが高く,仲間関係にお ける対人的リソースの乏しさが特徴である。そのため,
孤独に対してうまく対処できず,攻撃的対処のような 望ましくない反応を示してしまうと考えられる。そし て,この反応が悪循環を起こしている可能性が高い。
つまり,他者に対して攻撃的に振る舞ってしまうため,
ますます仲間から敬遠されてしまい,孤独を感じやす い環境が自然とできあがってしまうのではないだろう か。また,受容的対処の得点も高く,孤独感に浸りや すい傾向にあることから,慢性的な孤独感およびその 二次的症状に注意する必要があろう。学級生活不満足 群にいる児童には,特に孤独を感じた際の対処行動に ついて積極的な指導が望まれているといえる。
以上より,学級生活満足度尺度による4群の児童に おいて孤独感対処行動の選択に群間差があることが示 された。そして,侵害行為認知群に属する児童が自己 呈示を選択しやすいことが明らかにされたため,西村・
村上(2016)の知見を説明する証拠を提出することが できたといえる。担任教師は児童の孤独の主観的評価 を直接知ることはできず,その児童の振る舞いを通し て把握するしかない。その際には,本研究で示された 知見を踏まえた上で,児童の孤独感に対する主観的評 価と客観的把握のギャップを埋めていく努力が必要で あろう。このように教育実践に対する有意義な視点を 提供することができたことから,本研究には大きな意 義があったものと考えられる。
本研究の限界および今後の課題
上記の成果は得られたものの,本研究では,学級集 団の状態(満足度)を考慮した検討を行ってはおらず,
この点,注意が必要である。河村・武蔵(2012)がす でに指摘しているように,児童は所属する学級集団の 影響を強く受けるため,例えば,満足度の高い学級集 団では社会的接触などの対人リソースに関連する対処 方略が使用されやすくなるなど,学級集団の状態によ る調整効果が予想される。また,分散分析の結果から 示唆されたように,各孤独感対処方略に対する学級生 活満足度の効果の大きさにはばらつきがみられている。
自己呈示と一人遊びについては,学級生活満足度の効 果が小さく,その使用の判断は個人特性によるところ が大きいと考えられる。一方,受容的対処や肯定的思 考については,個人特性による影響はあるものの,学 級生活満足度による中程度の効果がみられている。こ のように孤独感対処方略の使用は,学級集団の影響お よび個人の学級満足度の程度によって左右されること が予想され,今後は,学級集団の状態や各孤独感対処
方略の特徴を踏まえた上での検討が必要であると考え られる。
また,本研究で着目した孤独感対処方略を使用した 後の結果についてはまだ明らかにされておらず,そも そもそれらの対処方略が孤独感の低減に対して有効で あるかどうかも定かではない。例えば,Rokach(2001)
は青年や成人,そして高齢者の孤独感対処の効果につ いて検討した結果,成人が最も孤独感に対する効果的 な対応を行っていることを報告している。つまり,そ の前の段階にあたる青年もしくは児童期の子どもは孤 独感に対して適切な対処ができていない可能性も想定 され,少なくとも本研究で使用した孤独感対処方略の 効果を明らかにした上で,各4群に対する適切な教育 的対応を議論していくことも必要であろう。さらには,
本研究で得られた結果はあくまで平均的な傾向に過ぎ ず,慎重な解釈が求められる。特に二つ目の仮説,す なわち,侵害行為認知群に属する児童が孤独を感じた 際に社会的接触と攻撃的対処を行うという仮説は,あ くまで主成分分析とクラスタ分析の併用による解析で は支持されなかっただけであるともいえる。基礎得点 を参照すれば,彼らは社会的接触も相対的には行って いるのである。これらの点に留意しながら,本研究で 明らかとなった知見が,学級生活満足度尺度における 各群の児童理解につながることが期待されよう。
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(2017年1月18日受稿,2017年12月28日受理)
The Relation Between Coping Strategy With Loneliness and School Satisfaction
Takuma Nishimura (University of Tokyo / Japan Society for the Promotion of Science) Tatsuya Murakami(Kochi University of Technology)
This study examines the relation between coping strategy with loneliness and school satisfaction; additionally, we focus on the characteristic behaviors for loneliness on children belonging to “shingaikoui ninchi” group. Participants were 439 elementary school students from 4th to 6th grades. The results indicated that children with “shingaikoui ninchi” group had a tendency to select a strategy of self-presentation which may yield the gap between subjective and objective evaluation of loneliness on children. Furthermore, we found that selecting the coping strategy with loneliness depended on individual’s school satisfaction. These results contributed to reveal the characteristics of four groups determined by school satisfaction scale in terms of coping strategy with loneliness.
Key words: children; loneliness; coping strategy