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Vol.49 , No.2(2001)082Shayne CLARKE「四分律の〓度成立に關する一考察-特に波羅夷學悔の規定をめぐって-」

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Academic year: 2021

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(118)印 度 學 佛 教 學 研 究 第49巻 第2号 平13年3月

四分律 の建 度成立 に關 す る一考察

―特 に 波 羅 夷 學 悔 の 規 定 を め ぐ っ て―1) Shayne CLARKE 律 藏 全 膿 及 び 各 建 度 の成 立 過 程 乃 至順 番 は決 して 明 確 で は な い ・本 稿 にお い て, 波 羅 夷 學 悔 の規 定 を 用 い て 四 分 律 の建 度 成 立 の 檢 討 を試 み た い.波 羅 夷 を 犯 せ ば 不 共 住2)に な る とい うの は周 知 の事 實 で あ るが,ど ん な規 則 に も例 外 とい うもの は あ る・ 波 羅 夷 の 場 合 で も犯 した罪 を 覆 藏 そ うと しな けれ ば,懺 悔 が 許 され,教 團 か ら追 放 され る 事 な く,波 羅 夷 學 悔(與 學沙彌 ・與 學沙彌尼)と い う身 分 で 曾 伽 の 一 員 と して 住 す る事 が 穂 され る3). 學 悔 の 規 定 はパ ー リ律 に は見 當 た らな い が,『 四分 律 』 ・『五 分 律 』・『十 諦 律 』・ 『根 本 有 部 律 』 及 び 『摩 詞 曾 祗 律 』 に は 詳 らか に 説 か れ て い る4).何 れ も難 提 比 丘 (禪難 提)の 誘 惑 乃 至 死 馬 との不 浮 行5)こ 由來 す る と考 え られ るが,そ の 中 の 規 則 は諸 律 に よ って著 し く異 な る.各 律 の 學 悔 に 封 す る規 定 の 比較 は別 稿 に 譲 り,本 稿 で は 『四 分 律 』の建 度 の 成 立 過 程 の 一 端 が垣 間 見 られ る箇 所 に焦點 を絞 りた い. 『四 分 律 』に お け る學 悔 の規 則 つ ま り随 順 行法 に 關 して は,既 に 卒 川 彰 が 「二 十 四 種 の 規 則 を示 して い る」 とい う見 解 を 出 して い るが,残 念 乍 ら細 か い 分 類 は 擧 げて い な い よ うで あ る6).こ の 規 定 は受 戒 建 度 及 び 調 部 に は 出 る が,一 體 幾 つ の 規 定 が あ る か は一 見 して 到 らない.然 し,内 容 を細 か く見 て 行 け ば そ の 他 の 建 度 に 封 鷹 箇 所 が あ る事 に 氣 づ く.先 ず,覆 藏 建 度 の 覆 藏 羯 磨 及 び 呵 責摧 度 の 呵 責 羯 磨 に ほぼ 一 致 す る箇 所 が あ る.こ れ ら との 比 較 の 上,再 槍 討 した 場 合,『 四 分 律 』が 傳 え る學 悔 の規 則 に は三 十 五 事 が示 され て い る事 が 到 る. 呵 責 羯 磨 の説 明 で は 「五 事 不 磨 作 」の もの は 七 つ ほ ど(合 計三十五事)列 擧 され, ち ょ う ど學 悔 の規 定 に合 う7)。一 方,覆 藏 羯 磨 の 方 は,こ れ 以 外 に も色 々 と規 定 が 擧 げ られ て い る が,そ の 中 に學 悔 の 規 則 に 相 當 す る箇 所 に 關 して は 同 じ く七 つ の 匠 切 りが あ り,各 々 「彼 行 覆 藏 者 」 で 始 ま り 「佛 言不 磨 爾 」等 で 區 切 られ る8).こ の 七 つ の規 定 は 凡 そ 呵 責 羯 磨 と類 似 し,又,雨 者 は難 提 比 丘 に科 せ られ た 三 十 五 事 と同一 の趣 旨で あ る事 は一 目瞭 然 で あ る.尚,呵 責 羯 磨 及 び 覆 藏 羯 磨 に お け る 三 十 五 事 を 學 悔 の 規 則 と類 似 す る もの と して 捉 え る の は 古 くは 道 宣 の 『四 分 律 捌

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-923-四 分 律 の建 度 成 立 に 關 す る一 考 察(S.CLARKE) (119) 補 隨 機 羯 磨 』 及 び 『行 事 紗 』 等 で あ り,こ こ に そ れ を 窺 わ せ る よ うな 文 章 が 見 ら れ る9).又,こ う し て 規 定 を 五 つ の グ ル ー プ に 分 け る 事 は 漢 譯 等 の 特 色 の み な ら ず,パ ー リ律 の 擧 罪 羯 磨 を解 す る 文 に も見 られ る10).從 つて,こ の 分 類 法 は 印度 起 源 の もの で あ る と考 え られ,道 宣 等 の解 繹 は 少 な く と も こ こ で は 印 度 の 實 態 を 反 映 して い るか に思 わ れ る. 尚,此 處 で 論 究 す べ き 問 題 は,三 十 五 事 の分 類 よ り寧 ろ,そ の 四 つ 目の 五 事 で あ る.受 戒 建 度 で は,次 の如 く説 かれ る.「(1)不 得 更 犯 此 罪 ・飴 亦 不 慮.(2)若 相 似 若 從 此 生.(3)若 悪 於 此 者.(4)不 得 非 曾 羯 磨(5)及 作 羯 磨 者.」11).此 處 で 注 目 した い の は 「若 悪 於 此 者 」 とい う文 で あ る.覆 藏 羯 磨 及 び 呵 責羯 磨 の 中 に こ の よ うな 文 が 見 られ る の は 何 の 不 都 合 も ない が,學 悔 の 規 定 に 出 て く る と若 干 疑 問 を 抱 く.何 故 な らば,五 篇 七 聚 の 第 一 とな る波 羅 夷 よ り悪 しき又 は 重 き罪 とい うの は 少 な く と も波 羅 提 木 叉 に お い て は あ り得 な い か らで あ る.こ の 文 は 明 らか に 呵 責 羯 磨 或 い は覆 藏 羯 磨 の 規 定 を そ の ま ま借 用 した もの と見 るべ き で あ り,そ の 逆 は あ り得 ない.換 言す れ ば,律 藏 の 編 纂 者 は 學 悔 の 規 則 を 呵 責 ・覆 藏 羯 磨 等 よ りそ の ま ま 抜 き取 り,こ の 不 都 合 に氣 づ く事 な く,こ の ま ま傳 え て き た と考 え られ る.こ れ は 何 らか の 形 で 健 度 の 成 立.編 纂 過 程 を物 語 つて い る と言 え よ う. この よ うに 同 一 資 料 内 にお い て 或 る規 定 が そ の ま ま 別 の 規 則 に 取 り入 れ られ る 事 が 見 られ るの は 法 藏 部 傳 承 の 律 の み な らず,『 摩 詞 僧 祗 律 』の 學 悔 羯 磨 で は式 叉 摩 尼 の 二 雨 學 十 八 事 が ほぼ そ の ま ま借 用 され て い る よ うに 考 え られ る12).然し,こ の 場 合 は,不 都 合 と思 われ る 理 由 も特 に な く,寧 ろ 沙 彌 尼 と比 丘 尼 との 中 間 的 存 在 で あ る式 叉 摩 尼 とい う見 習 い期 間 は沙 彌 と比 丘 の 間 に課 せ られ る事 が な い 爲, 比丘 と沙彌 の 中 間 的存 在 とな る學 悔人 に採 用 され るの は とて も合理 的 に思 われ る13). こ こで は 律 の 編 纂 者 が學 悔 制 度 の 制 定 及 び 導 入 に よ って か な り頭 を 悩 ま せ た の で は な か ろ うか と考 え られ る.從 つて,大 衆 部 で は 中 間 的 な 存 在 で あ る事 を 重視 し, 一 方 法 藏 部 は僧 残 罪 を覆 藏 した 比 丘 に科 せ られ る 罪,つ ま り波 羅 夷 以 外 で は最 上 の 罪 に封 す る罰 を 以 て 學 悔 を認 めた と考 え られ る の で あ る. 1)本 稿 は 國 費 外 國 人 留 學 生 と して 援 助 を頂 い た 研 究 成 果 の一 部 で あ る.こ こ に 日本 國 の 勤 勉 な 納 税 者 に 衷 心 よ り謝 意 を表 した い.小 生 の拙 い 日本 語 を 直 して 下 さ った平.岡聰 氏 に も,又,有 盆 な 示 唆 を下 さ つた 並 川 孝 儀 ・佐 々 木 閑 爾 博 士 に も感 謝 申 し上 げ る. 2)不 共 住(asamvasa)は 通 常 「共 に住 む べ か らず 」 と解 繹 され,教 團 追 放 に 値 す る と思 わ れ るが,経 分 別 を讃 む 限 り,羯 磨 な どへ の参 加 權 が剥 奪 され る 位 で 果 た して これ が 教 團 追 放 に 相 當 す るか は 疑 問 に思 う.

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-922-(120) 四 分 律 の 建 度 成 立 に 關 す る 一 考 察(S .CLARKE)

3)與 學 沙 彌 尼 の 存 在 に つ い て は 拙 稿Shayne Clarke,"The Existence of the Supposedly Non-existent Siksadatta-sramaneri:A New Perspective on Payajika Penance,"『 佛 教 研 究 』,第 二 十 九 號,2000,pp.149-176を 参 照 さ れ た い. 4)Samantapasadikaに 於 け る 波 羅 夷 學 悔 と 思 わ れ る 記 述 に つ い て は,山 極 伸 之 「律 規 定 の 展 開 に お け る サ マ ン タ パ ー サ ー デ ィ カ ー の 意 義 」 『印 度 學 佛 教 學 研 究 』 第 四 十 五 巻 第 一 號,1996,pp.113-117照. 5)T.1428,P.809a8-c2(受 戒 健 度);T.1428,PP.972b11-973a3(調 部). 6)卒 川 彰 著 作 集 第14巻 『二 百 五 十 戒 の 研 究1』,春 秋 肚,1993,p.130:「 『四 分 律 』 で は,こ れ を 「波 羅 夷 戒 」 と 称 し,さ ら に こ の 比 丘 を 「波 羅 夷 比 丘 」 と称 し て い る ・ そ し て そ の 随 順 行 法 と し て,二 十 四 種 の 規 則 を 示 して い る.」 7)T.1428,p.889c4-28. 8)T.1428,p.904a20-b7. 9)T.1808,p.506c12-13.(割 注):「 懺 波 羅 夷 法;佛 言.若 比 丘 比 丘 尼.若 犯 波 羅 夷 已. 都 無 覆 藏 心 當 如 法 懺 悔.與 學 戒 羯 磨 奪 三 十 五 事 蓋 形 行 之.」.又,T.1804,p.97al9-20: 「佛 言.與 波 羅 夷 戒 己.當 行 隨 順 法.奪 三 十 五 事.略 同 僧 綱 法 中.」(こ の 後,道 宣 は 波 羅 夷 戒 の 場 合 に の み 更 に 加 え られ る 規 定 を 出 す が,紙 幅 の 制 約 上,省 略 す.)以 上 の 文 で は 「僧 綱 法 」 と は 恐 ら く 「僧 綱 大 綱 篇 第 七 」 の 事 を 指 し,そ こ で は 「三 十 五 事 」 と詞 責 羯 磨 の 細 か い 分 類(T.1804,P.19c6-28)が あ る.つ ま り,波 羅 夷 學 悔 を 説 明 す る に 當 た り,道 宣 で す ら 呵 責 羯 磨 の 規 定 を 用 い て い る 事 が 判 る.

10)Oldenberg, H.ed., The Vinaya Pitakam,LOndon: PTS,1964,vol.2,Cullavagga, P. 23:」 Pancahi bhikkhave angehi samannagatassa bhikkhuno apattita adassane ukkheparniya-kammam na patippassambhetabban <中略>aparehi pi...yaya apattiya samghena apattiya

adassane ukkhepaniyakamman katam hoti tam apattim apajjati, annam a tadisikam, tato va papitthataram, kammam garahati, kammike garahati, imehi kho... na patippassambhetabbam.

ll)T.1428,P.809b21-2.T.1428,PP.972c22-24(調 部);T.1428,P.889c16-18(呵 責 建 度):「 不 鷹 復 更 犯 此 罪.蝕 亦 不 鷹 犯.若 相 似 若 從 此 生 者.若 復 重 於 此.不 鷹 嫌 羯 磨 及 羯 磨 人.」;T.1428,p.904a29-bl(覆 藏 建 度):「 若 犯 此 罪.若 相 似.若 從 此 生.若 重 於 彼.呵 他 羯 磨 及 作 羯 磨 者.佛 言 不 鷹 爾.」 参 照. 12)『 根 本 有 部 律 』 に も 別 住 と學 悔 の 規 定 に は パ ラ レ ル が 見 ら れ る. 13)此 處 で 問 題 と な る の は 學 悔 尼 の 存 在 で あ る.理 窟 か ら 言 え ば,學 悔 尼 に は 學 悔 と 同 じ 規 定 が 科 せ られ る と す れ ば,こ の 場 合 に は 式 叉 摩 尼 と 同 じ隨 順 行 法 が 科 せ られ る 事 に な る で あ ろ う. 〈キ ー ワ ー ド>學 悔,與 學 沙 彌,與 學 沙 彌 尼,『 四 分 律 』,呵 責 羯 磨,覆 藏 羯 磨,建 度 (佛 教 大 学 大 学 院)

参照

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