第4章 住宅街の交通静穏化 第4章 住宅街の交通静穏化 第4章 住宅街の交通静穏化 第4章 住宅街の交通静穏化 第4章 住宅街の交通静穏化
4−1 分析の視点 4−1 分析の視点 4−1 分析の視点 4−1 分析の視点 4−1 分析の視点
第3章では中心市街地の歩行者空間確保・改良を分析した上、70年代後半以降は主に歩行者空間 確保や沿道空間改良を目的に導入されてきた面的な交通規制と道路改造を分析した。
交通静穏化が実験された70年代後半(2−4−4−2参考)には、オランダの「ボンエルフ」が 参考にされたために、大きな道路改造を必要とする「交通静穏化ゾーン(Verkehrsberuhigter Bereich)」 が最初に導入された。しかし、道路改造の建設費が高く、デバイスが必ずしも沿道空間と調和しない ために、「交通静穏化ゾーン」が全面的に整備されず、むしろドイツ各地で整備されている「ゾーン 30(Zone 30)」内の狭い道路など、特定なケースに限る。
そこで第4章は「交通静穏化ゾーン」のケーススタディを行わず、ドイツ各地で見られる「ゾーン 30」の整備事例としてハンブルク市のグリンデルホーフを分析し、特に関係者の利害関係とその利害 関係から発生した議論に着目した。
また、今後の発展傾向を把握するために、EUの補助を受けている「シェアド・スペース」の取り 組みに関する分析を行った。この取り組みでは交通規制よりも景観を重視した交通静穏化が目的とさ れ、すっきりした分かりやすい空間形成と、最低眼の交通ルールの確立が重視されている。
なお、第4章は住宅地をテーマとしているために、「ゾーン30」の特殊的なケースである「交通静 穏化商店街(Verkehrsberuhigter Geschäftsbereich)」の詳細な分析は行われていない。
4−2 調査方法 4−2 調査方法 4−2 調査方法 4−2 調査方法 4−2 調査方法
交通静穏化に関する基本的なルールと整備基準を整理するため、「道路交通規則(StVO)」(1)と「道 路交通規則に関する行政命令(VWV StVO)」(2)を分析し、さらに一般的な整備基準となっている「道 路・交通研究会(FGSV)」の交通静穏化に関する説明書(3)と歩行空間整備に関する基準(EFA)(4)に ある諸規定をまとめた。その上でハンブルグの「グリンデルホーフ」における交通静穏化を事例とし て分析するとともに、近年
EU
で注目されている「シェアド・スペース」について調査、分析を行っ た。それらの方法は下記の通りである。
①①①①①「「「「「グググググリリリリンリンンンンデデデデデルルルルルホホホホホーーーーフーフフフ」フ」」」」::::ハンブルク市「グリンデルホーフ(Grindelhof): 」の交通静穏化に関して は、
2006
年11
月にハンブルクの「都市開発・環境局(Behörde für Städtebau und Umwelt)」でプロジェ クトに関するヒアリングを行った上で、現地調査を行い、資料分析などの追跡調査を行った。「グリ ンデルホーフ」の交通静穏化を目的にした住民団体のウェブサイト(5)、や様々な地方紙などのアーカ イブでリンクされている新聞記事を中心に追跡調査を行い、特に交通静穏化に関する意見を洗い出し た。②
②
②
②
②「「「「「シシシシシェェェェアェアアアアドドドドド・・・・・スペース」スペース」スペース」スペース」スペース」:::::オランダのフリースラント州が「シェアド・スペース」に関して発行 した資料調査 (4)を中心に、「シェアド・スペース」の目的と基本的な考え方を整理し、ドイツ国内唯 一のモデル自治体であるニーダザクセン州の「ボームテ村(Bohmte)」における取り組みを分析した。
ただし、整備案がまだ完成していないため、整備効果などに関するデータがまだ存在せず、現地条件 や基本的な整備の考え方を整理するにとどまっている。しかしながら、「シェアド・スペース」を今 までドイツ国内で行われた交通静穏化プロジェクトと比較することによって、交通静穏化の今後の動 向や「シェアド・スペース」の効果に関する簡単な考察を行う。
図 4‑1:第 274.1 号標識、第 174.2 号標識と第 306 号標識
図 4‑2:第 237 号標識、第 240 号標識と第 241 号標識
は第
274.1標識、出口には第 274.2
標識(図
4-1)が立ち、ゾーン内では全面的
な走行速度規制がしかれている(StVO 第
4 1
条 第2
項 第7
)。「 指定 市 街地(geschlossene Ortschaft)」内に、特に住 宅地や歩行者・自転車交通が多い街区、
または道路を渡る歩行者・自転車が多 い街区においては、担当の「道路交通 庁(Verkehrsbehörde)」が市町村の同意 を得て、「ゾーン
3 0
」を指定できる。「ゾーン30」は連邦道路、州道路や郡道 路、または優先権が指定されている道 路(第306標識)以外で可能である。信 号機の設置されている交差点、白い実 線(第295標識)や破線(第
340号標識、
図5-4)の路面標示、または通行義務の ある自転車道(第
237号標識、第 240
号 標識、第241
号標識、図4-2、または第
293標識と第 237標識の組み合わせ;5
−3−1参考)もゾーン内にあっては ならない。すなわち第8条第1項に基づ き、ゾーン内のすべての交差点に関し ては右の道路から来た車両が優先であ る(rechts vor links、図
4-3)
2。ただし、2000
年11
月1
日より前に整備された「ゾーン30」に関しては、整備の当時に もあった、歩行者を守る目的の信号機 があっても良い(第
45
条第1c項)とし ているが、道路空間の改造はあまり行 われていない。「ゾーン
30」や「交通静穏化商店街」
(3−3−2−3参考)は具体的な危険 がなくてもかけられる交通規制である
(第
45
条第9
項)。なお、道路交通規則に基づく標識で 図 4 ‑ 3 :右優先の交差点とロータリ型交差点の交通ルール
写真 4 ‑ 1 :歩行者・自転車通行可能な袋小路
は な い が 、 歩 行 者 と 自 転 車 の 利 便 性 を さ ら に 上 げ る た め に 、 クルマのみにとって袋小路になっている道路の場合は、「歩道自転車道」標識を小さいシールとして 袋小路の標識に貼ることが可能である(写真
4-1)
。「ゾーン
30」を指定するためには、市町村が全面的な交通計画を作成し、その一部として、経済活
動にも公共交通にも適した効率の良い優先道路網(Vorfahrtstraßennetz、第
306
号標識)を計画しなけ ればならない。交通安全および公共の安全と秩序(各種救急車両の通行が可能であることなど)の確 保はこの計画の最大目的である(VWV-StVO第45
条のXI.
の1.)
。ゾーン式な走行速度規制は通過交通量の少ない地区内道路のみで可能である。目的は主に居住者、
そして歩行者と自転車の利便性と安全性の確保であるため、「業務地(Gewerbegebiet)」や「工業地
(Industriegebiet)」でのゾーン指定は不可能である。また、速度制限を守られるために、様々なハード 整備による統一した空間形成が必要であるが、特に以下のことが求められている。
①車道の境界線を沿道駐車場の指定により明確にし、必要であれば車道外で車両の進入を妨げる斜 線の路面標示(Sperrfläche、第
298
号標識、図 4‑5)を行う。ハード整備の場合は、公共の安全と秩序 への影響、騒音発生と路線バスへの影響が生じないような整備を行う。②交差点の構造やバス路線が「右の道路から来た車両が優先」を許さない場合は、第
301
号標識に より優先権を指定できる。③ゾーンが広い場合は、「30」の路面表示が可能である。このような路面表示が特にゾーン内の優 先道路で推奨される(VWV-StVO第
45
条のXI.
の2.
〜3.)
。「ゾーン
30」の指定は市町村からの依頼に基づき、
「ゾーン30」の指定に関するすべての条件が満たされている場合、または満たされる見込みがある場合にのみ可能である。道路交通庁が「ゾーン
30
を指定し、不要となった標識や交通島などのハード整備はゾーンから撤去しなければならない。2000
年11
月1
日より前に指定された「ゾーン30」内の歩行者用信号機の必要性については個別に判断す
る(VWV-StVO第45
条のXI.
の5.
〜6.)
。4−3−1−2 交通静穏化ゾーン
大幅な道路空間改造により明らかに歩行者優先の空間を整 備するものは「交通静穏化ゾーン(v e r k e h r s b e r u h i g t e r
Bereich)
」である。ゾーンの入り口には第235
号標識、出口には第
326
標識(図4-5)が立つ。ゾーン内では①歩行者は
車道を歩いても良く、子供が車道で遊んでも良い。②すべて の車両は歩行者と同じ速度で走行しなければならない、③ 車両が歩行者を妨げたり、歩行者に危険をもたらしたりはいけないので、車両は必要に応じて歩行者 を待つべきである。同様に④歩行者が必要以上に車両交通を妨げてはならない。⑤駐車は乗り降りや 荷下ろしを除き、指定されている駐車場のみで可能である(StVO第
42
条第4a
項)。道路管理者、または「道路整備庁(Straßenbauverwaltung)」が「交通静穏化ゾーン」の整備を行う。
道路を改造し、滞留が主な目的である空間を形成しながら、地区内へのアクセス機能を保つべきであ る(VWV-StVO第
42
条第325、 326
号標識第2
のII.)
。整備の目的は交通安全の向上だけではなく、道 路改造による住環境改善に重点が置かれ、「交通静穏化ゾーン」内の道路のデザインは空間の滞留機 能を強調することが重要であり、車両交通を重視した整備はできない。そのためには全幅員の断面に 図 4‑5:第 325 号標識と第 326 号標識図 4‑4:第 295 号標識、第 340 号標識、第 293 号標識と第 298 号標識
渡る段差解消が必要とされている一方、ゾーンを通る可能性のある全ての車両が通れる整備が少なく ても必要である。適切な駐車場整備も必要とされているが、駐車場の位置を舗装材や路面表示により 指定した場合は、駐車場の標識は不要である(第
42
条第325、326
号標識第3
のIII.)
。「交通静穏化 ゾーン」内では、その他の道路標識は基本的に不要である(第42
条第325、326
標識第3
のV.)
。地区全体の「交通静穏化ゾーン」指定も、単一道路の「交通静穏化ゾーン」指定も可能ではあるが、
ゾーン内のすべての道路がすべての指定条件を満たさなければならず、例外はほとんど認められない
(第
42
条第325、326
号標識第3
のIV.)
。交通安全向上と住環境改善のために、「交通静穏化ゾーン」を指定する代わりに①道路ネットワー クの改造による通過交通の除外(袋小路の整備、近道の分断、交差点の筋交い分断など)、②大型車 両など、特定な車両の通行止めや夜間の通行止め、③特に危険な箇所における駐車禁止や走行速度制 限、④一方通行規制、および⑤ハンプ(Aufpflasterung)の整備も可能である。ただし、以上の規制や 整備をいくつか組み合わせない限り、その交通緩和効果はあまり期待できないと指摘されている(第
42
条第325、326
号標識第3
のVI.、表 4-1
〜3、写真 4-2
〜13)
。4−3−1−3 居住者通行可能の歩行者専用道路
車両交通を例外として認める歩行者空間の整備は住宅地内でも可能である。道 路交通規則の規定は特にないが、歩行空間整備に関する基準(EFA)に基づき、
「交通静穏化ゾーン」の代わりに住宅地内では第
239
号標識(図4-6)により歩行
者専用道を指定し、その道路を補助標識により「居住者交通可」に指定できる(4)。(Quer-
) e r r e p s
の 通 交 過 通
除
排 *縁石による道路の分 断
*高木などによる緑化
道 歩
; い 狭 り よ 軸 車 の
は 隔 間 の 間 の
と 1 以m
。 上
備 整 は で 道 歩 断 横 や 点 差 交
、 が る
げ 妨 を 雪 除 や 除 掃 路 道
。 能 可 不 が
る あ が 合 場 る 心
中 の 道 車
ハ る け お に
プ ン (Plateauauf-
) g n u r e t s a l f p
減 の 内 域 区 速
*ハンプ
*多様な舗装材
車 用 乗 は 員 幅 の プ ン ハ
ス バ
、 く 広 り よ 軸 車 の
道 歩
; い 狭 り よ 軸 車 の
は 隔 間 の 間 の
と 1m以上
が 水 や 間 区 路 道 い 多 が 通 交 車 転 自
い て し 適 に 間 区 路 道 い す や り ま た
備 整 は で 道 歩 断 横 や 点 差 交
、 が る
げ 妨 を 雪 除 や 除 掃 路 道
。 能 可 不 が
る あ が 合 場 る
理 整 の 車 駐 (Neuordnu-
s e d g n
n e d n e h u r
) s r h e k r e V
*路面表示(白線、又 よ に ど な 列 の 石 は
) る
*多様な舗装材(アス
、 石 工 人
、 ト ル ァ フ
) 石 然 自
*縁石(車道との間は さ
高 3cm、歩道との間
) い 高 と っ も は
*路面表示(白線、又
) る よ に ど な 列 の 石 は
*多様な舗装材(アス 自
、 石 工 人
、 ト ル ァ フ
) 石 然
*縁石(車道との間は さ
高 3cm、歩道との間
) い 高 と っ も は
要 必 て し 関 に 策 化 穏 静 通 交 の て 全
け 避 は と こ す ら 減 を 数 第 車 駐
、 が
い 多 が 合 場 い な れ ら
図 4‑6:第 239 号標識
4−3−1−4 道路標識を減らす取り組み
連邦政府は
1 9 6 8
年に成立した「道路標識及び信号に関する条約 (Ü b e r e i n k o m m e n ü b e rStraßenverkehrszeichen vom 8. November 1968)
」に証印し、道路標識や路面表示を必要最低限に抑え ることに同意した。それでも、設置されていた道路標識の約2
割が不要であることが「連邦道路工学 研究所(BASt)」の1992 年の研究で明らかになった。しかし、道路標識さえあれば交通の安全性が高 まるという認識が住民の間に根強く、道路標識の撤去が難しいことも同じ研究で判明している。その ため「道路交通規則」の1997
年改訂においては第 39条が導入され、一般の交通ルールが不十分の場 表 4 ‑ 2 :交通静穏化の整備(道路と交差点)( 3 )が初めて連邦法にも盛り込まれることになった。
道路標識があまりにも多いため、
1999年に「連邦会計検査院(Bundesrechnungshof)
」が全国に設置 されている標識の数を減らすことを連邦政府に求め、連邦政府は2001 年に道路交通規則とその行政
命令(VwV StVO)の改正の準備に踏み出した。連邦と各州の代表者で構成される専門委員会と交通 警察の委員会が発足し、住民や様々な関係団体の意見を求めながら行政命令の改正内容を検討してい るが、2002 年に予定されていた行政命令改正もまだ行われていない(6)。道路標識がなくてもよい規制の事例としては「右の道路から来た車両は優先」の基本的な交通ルー ルが挙げられる。優先道路が指定されない場合、標識がないすべての交差点にこのルールが適用され る。その結果、標識を立てる手間と費用が省かれるだけではなく、減速の効果もあると指摘されてい 合にのみ新しい標識の設置が可能になった。この第
39
条により、道路標識に関する国際条約の内容 表 4 ‑ 3 :交通静穏化の整備(道路)( 3 )備
整 目的 主なエレメント 設計基準 備考 型
リ タ ー ロ
点 差 交 (Kreisver-
) r h e k
、 成 形 観 景
速 減 の 両 車
*緑化
*縁石
*ハンプ
*多様な舗装材
通 を 路 道 と さ 広 の 間 空
大 の 両 車 る れ わ 思 と る
る よ に 徴 特 と さ き
交 型 リ タ ー ロ る い て れ さ 化 緑 が 心 中
型 小 る き で が と こ む 踏 を 心 中 や 点 差
能 可 が 点 差 交 型 リ タ ー ロ の の
口 り 入 出
夫 工 (Umbauder
- r h a f n i E
) e h c i e r e b
に 制 規 通 交
く 引 を 意 注
と こ
*高木による狭さく
*ハンプ
*多様な舗装材
5 .
4 〜5.5m間での車道 幅
減
様 多
、 で 要 必 が ン イ ザ デ く 引 を 意 注
て れ さ 薦 推 が 化 確 明 る よ に 材 装 舗 な
る い
斜 の 点 差 交
断 分 め
- l a n o g a i D (
) e r r e p s
の 通 交 過 通
限 制
*ボラード
*倒せるボラード
*縁石による道路の分 断
*高木などによる緑化
低 最 は 隔 間 の ド ー ラ ボ
限1.5m(車いす)
せ 倒
、 ば れ 有 が 要 必 す 通 を 両 車 急 救
要 必 が ド ー ラ ボ る 備
整 目的 主なエレメント 設計基準 備考 プ
ン ハ
(Auf- - e t s a l f p
g n u
r )
減 の 内 域 区 速
*高木
*ハンプ
*多様な舗装材
は に 間 の 道 歩 と プ ン ハ
約 さ
高 2〜3cmの縁石が は
さ 長
; 要
必 5〜10m
が 車 急 救 や 間 区 路 道 る 通 が ス バ 線 路
材 装 舗
; 能 可 不 備 整 で 間 区 路 道 い 多
道 先 優
; 要 必 は 化 確 明 る よ に 夫 工 の
し と プ ン ハ を 点 差 交 は 合 場 い 無 が 路
。 能 可 は と こ る す 備 整 て
島 通 交
(Verkehrs- l e s n
i )
向 全 安 通 交
形 観 景
、 上
の 両 車
、 成
速 減
*高木などによる緑化
*縁石
す 援 支 を 断 横 の 者 行 歩
を 員 幅 の 島 通 交
る 2 以m は さ 高 の 石 縁
、 で
上 2
〜3cm(自転車が透場 高
;
) い な が 差 段 は 合
島 通 交 る あ て え 植 が 木
く べ る な を 員 幅
の 3 以m き
べ る す に 上
) し 無 に 特
(
写真 4 ‑ 2 〜 7 :交通静穏化デバイスの整備事例(ハンブルク、ボン)
ている交差点(十字路)。 ている交差点(T 字路)。分断されている道路には方向変 更ができるループが整備され、街路樹による緑化が行わ れている。
沿道駐車場の整備によりクランクをつくった交差点。手 前の道路は自転車が逆方向で通行可能な道路であるため に、入り口には自転車の車線が指定されている。自動車は まっすぐしかいけないが、自転車が自由にあらゆる方向 に行ける。
自転車が逆走行可能な一方通行道路の出口が狭く整備さ れ、自転車が安全に道路に入ることができる路線が路面 表示により指定されている。
ゾーン入り口での狭さく。街路樹や両側のモニュメント により、道路の狭さが強調されている。
ゾーン入り口での幹線道路沿い歩道が舗装材で強調され、
道路があることはボラードと歩道より細かい石畳でしか わからない。その結果、住宅地内の道路が幹線道路から 見てあまり目立たない。
写真 4 ‑ 8 〜 1 3 :交通静穏化デバイスの整備事例(ハンブルク、ボン)
多くの歩行者が道路を横断する場所においては道路全体 が歩道レベルまで上げられ、自然石で舗装されている。
このハンプの出入り口や歩行者が渡るところの境界線に は赤い自然石が使われている。さらに、花壇による狭さ くや街路樹が使われている。
ゾーン内の車道の中心にあるハンプ。車軸の広いバスや 救急車両、そして自転車が問題なく通ることはできるが、
乗用車はスピードを落とさなければならない。
左右の駐車場指定によるゾーン 30 内のクランク。歩行者 が数多く道路を渡るところではさらに花壇が整備され、
道路内の舗装材が石畳である。
左右の駐車場指定による交通静穏化ゾーン内のクランク。
駐車場が道路と異なった舗装材のみにより指定されてい る。花壇、植え鉢、ボラードや街路樹が道路をさらに狭 く見せている。
ゾーン30内の交差点に整備されているシケインとモニュ メント。ベンチもあるので、小型広場のような整備であ る。モニュメントはローマ時代から使われている道路に ふさわしく、地域で発掘されたローマ時代のモニュメン トの複製である。
左右の駐車場整備とモニュメントによるクランク。
交通静穏化を行う際は、①車道の減幅、②道路の出入り口にある交差点の改造、③シケインの設置、
④ハンプの設置、④交通島やロータリ型交差点の整備、⑤クランクの整備、⑥通行止めの設置、⑦舗 装材の変更、⑧沿道駐車場の整理や⑨緑化などの方策がある。しかし、単にデバイスの選択と組み合 わせだけではなく、色や建設材の選択を慎重に行い、整備の際に周辺の市街地へ特別に配慮すること が必要である(3)(表
4-1
〜3
と写真4-1
〜12)
。「ゾーン
30」と異なり、
「交通静穏化ゾーン」の整備は交通量の少ない道路のみで可能である。または交差点に限った整備など、局地的な「交通静穏化ゾーン」整備は認められていない(4)。
4−3−2−2 空間形成
進入が見込まれる最大の車両に適した車道を確保することは必要が、特に中心市街地で整備される 交通静穏化ゾーンにおいて荷さばきなどの特別な空間利用が想定される場合はEAE 85/95(7)で推奨さ れている道路幅員以上の幅員が必要な場合はある。
デバイス(表
4-1
〜3)により適切な空間を整備し、高木により空間利用を明らかにすることが推
奨されている。道路交通規則に基づき、歩車共存の空間である「ゾーン
30」
、歩行者優先の空間である「交通静穏 化ゾーン」、また歩行者専用の空間である「歩行者ゾーン」内では、原則として路線バスを通さない こととなっているが、片方向のみのバス通行を計画した場合はバス専用車線の幅員を3.5m、双方向
のバス交通を計画した場合は、バス専用車線の幅員を6.5m
以上に設計するべきである。すべての交通静穏化に関しては、排水溝、ストリートファーニチャー、または舗装材や照明器具の デザインを重視した、分かりやすい整備が必要である(3)。
4 4 4
4 4− − − −4 − 4 4 4 4 「 「 「 「 「交 交 交 交 交通 通 通 通 通静 静 静 静 静穏 穏 穏 穏 穏化 化 化 化ゾ 化 ゾ ゾ ゾー ゾ ー ー ー ーン ン ン ン ン」 」 」 」 」の実態 の実態 の実態 の実態 の実態
「交通静穏化ゾーン」は住宅地では整備可能ではあるが、そもそも交通量が少なく走行速度が遅い、
短い地区内道路しか「交通静穏化ゾーン」の整備に向かないとされている(5)。「交通静穏化ゾーン」は 最近も整備されているが、新規整備の際にも、既存道路の再整備の際にも、住民が工事費の一部を負 担しなければならない(5,6)。また、マウンドアップ歩道の解消が義務づけられているため、民地にあ る歩道の撤去も必要となる(7)。沿道住民が負担しなければならない工事費の割合が各市町村の条例に より定められ、具体的な割合は工事の内容や地方自治体により異なるが、一般的に工事費の
3
〜7
割 に相当すると思われる(8,9,10)。「交通静穏化ゾーン」の道路空間デザインは周辺の道路と明確に異なり、滞留が優先であることが 全ての道路利用者に伝わらなければならないが、整備が不適切な場合は運転者がゾーン内の速度制限
を十分に認識せず、特にゾーン内で安心して遊んでいる子供や高齢者に危険をもたらすことが指摘さ れている(6)。さらに、デバイスやごちゃごちゃした空間のためにクルマの前に飛び出そうな子供など が運転者から認識しにくいという指摘もある(11)。
「交通静穏化ゾーン」に関して指摘されている最大の問題が、交通ルール違反の多発である。ゾー ン内の交通ルール(主に①判例事例としては時速
4
〜7
キロの速度制限、②歩行者と車両のお互いの 思いやり、③駐車場以外での駐車禁止)に関する意識が低く(12,13,14)、速度制限を守らない自転車(15)や 車両交通を妨げる歩行者も問題を起こしている場合がある(16)。通過交通がないので、主にゾーン内居 住者が交通ルール違反を起こしている(16,17)。楽しいイベントや商店などがなければ、「交通静穏化ゾーン」を整備してもにぎわいが創出されな いので(18)、車両交通のスピード抑制に悩む市町村が多いようである。ゾーン内に標識をおくことがで きず、デバイスを増やしている市町村(19)や、道路空間再構成の予算がないなどを理由に「交通静穏化 ゾーン」を「ゾーン
30」に再指定する市町村
(20,21)もある。また、道路改造の手間や費用がかかるため に住民に望まれている「交通静穏化ゾーン」の整備を拒否する市町村(22)や、道路改造を必要としない 独自の全面的な交通静穏化策を導入する市町村もある(23)。「交通静穏化ゾーン」に指定される道路は一般的に細いため、消防車や救急車のスペースを確保す ることが最優先で、デバイスや緑化のためにゾーン内の駐車スペースが少なく(24)、駐車違反や駐車場 探し交通が問題となる地区もある(25)。さらに、子供の遊びが「交通静穏化ゾーン」内で許容されてい るので、沿道居住者が普通は静かにしないといけない昼間の
12時〜2
時や夜の8時以降の時間帯でも
ボールの遊びなどから発生する騒音を我慢しなければならないとする判決もある(16)。この2点、つま り駐車場の不足と子供の遊びから発生する騒音の恐れが「交通静穏化ゾーン」整備への住民の反対の 主な理由である(23,27)。その結果、近年は「交通静穏化ゾーン」を主に既成中心市街地(28,29)や新開発の住宅地(19,30,31,32,33)に限 ることが多い。また、自転車がクルマと同じ速度制限を守らなければならないので、「交通静穏化ゾー ン」を自転車交通ネットワークに組み込むことはできない。
4−5 交通静穏化の整備に伴う議論 4−5 交通静穏化の整備に伴う議論 4−5 交通静穏化の整備に伴う議論 4−5 交通静穏化の整備に伴う議論 4−5 交通静穏化の整備に伴う議論
【 【 【 【 【事 事 事 事 事例 例 例 例 例】 】 】 】 】ハンブルク市グリンデルホーフ ハンブルク市グリンデルホーフ ハンブルク市グリンデルホーフ ハンブルク市グリンデルホーフ ハンブルク市グリンデルホーフ 4−5−1 道路の位置と特徴
4−5−1 道路の位置と特徴 4−5−1 道路の位置と特徴 4−5−1 道路の位置と特徴 4−5−1 道路の位置と特徴
かつて城壁に囲まれていたハンブルクの中心市街地よりやや北西にある「グリンデルホーフ
(Grindelhof)」(図
4-7)は 19
世紀末に開発された賃貸住宅街の一つである。当時は低所得者が多く、ハンブルクの中でもとりわけ人口密度が高かった。地区内にはユダヤ人の宿舎(Wohnstift)はあった が、地区内の多くのユダヤ人が
1942
年以降には強制収容所に収容された。地区が第2次世界大戦の 空中爆撃で大きな被害を受け、戦前の人口密度に至らない程度の復興しか行われなかったため、街並 みは大きく変わった(37)。戦後の再開発に伴い、「グリンデルホーフ」の近くにハンブルク大学の校舎 が数多く建設された。「グリンデルホーフ」の交通問題が
80
年代以降議論された(43)が、幅員わずか70cm
の自転車道で発 生する自転車対歩行者事故や自転車の交通安全など、「グリンデルホーフ」の交通問題に関する議論 は90
年代後半以降加熱した(38)。しかし、交通安全向上を目指した交通規制が提案されても、規制へ の反対はなお根強かった4。4−5−2 4−5−2 4−5−2 4−5−2
4−5−2 1 9 9 8 1 9 9 8 1 9 9 8 1 9 9 8 1 9 9 8 年の 年の 年の 年の 年の「 「 「 「ゾ 「 ゾ ゾ ゾ ゾー ー ー ーン ー ン ン ン ン 3 0 3 0 3 0 3 0 」 3 0 」 」 」 」整備 整備 整備 整備 整備
「交通静穏化ゾーン」など、ハード整備を中心に行われた交通静穏化には限界があると判断され、ハ ンブルク市がドイツ国内でも先端的に「ゾーン
30」を整備した。2000
年当時には全市域に700
以上 の「ゾーン30」が指定され、市の道路ネットワーク(総延長は約 3,900km)のほぼ 45%に達した。幹
線道路の確保の必要から、ゾーン規制は住宅地内のみで可能であり、「ゾーン30」の新たな指定はほ
とんど行われない時期だった(39)。図 4‑7:「グリンデルホーフ」の位置、交通規制と特徴(116,117)
「グリンデルホーフ」は「ゾーン
30」を指定できない「地区間道路(übergeordnete Straße)
」に指定 されていた(図5-7)が、1
日19,000
台以上 (44)の交通量があることが1998
年の「ゾーン30」の指定
をうけるきっかけとなった(34)。住民運動はゾーン規制を求めていたが、「地区間道路」の指定のため に地区行政が住民の要求を支持しても「州建設省(Baubehörde)」の同意が必要だった(40)。元々の整 備案では歩行者エリアの確保を目指していたが、商工会議所の根強い反対の結果、この計画は中止と なり、新たに車両交通を認めるゾーン規制をかけることが決まった(42)。再整備計画内容は、歩行者と自転車の従来の空間確保、自動車車線の
4.5m
までの減幅、そして一 方通行規制であった5(43)。「ルトシュバーン(Rutschbahn)」から「グリンデルアレー(Grindelallee)」の 間に時速30km
の規制が設けられ、一方通行規制がハンブルクで初めて整備された「自転車幹線道路(Veloroute)」6の一部である「ボルン通り(Bornstraße)」から「グリンデルアレー」の間に設けられる ことになった(34,39)。この規制の結果、「グリンデルアレー」から「ハッラー通り(Hallerstraße)」への 抜け道が塞がれ(44)、交通量減少が見込まれた。整備費は約
110
万マルクであった(43)。この空間のデザ インは「都市改新・都市デザインの先端的プロジェクト(wegweisendes Projekt zur Stadterneuerung undStadtgestaltung)
」として「ドイツアスファルト連盟(Deutscher Asphaltverband)」の賞を受賞した(45)(図4-8、写真 4-14
〜24)
。しかし、商工会議所が行った調査の結果、ゾーン規制が多くの沿道商店にとって閉店のきっかけに なることが判明した。道路交通の障害になることを懸念した「全ドイツ自動車クラブ(ADAC)」だけ ではなく、沿道の商店主や複数の政治家もゾーン規制に反対した(41)。ゾーン規制の中止を求めた商店 主たちが
1998
年2
月25
日に300
人が署名した請願書(Petition)を市のCDU(キリスト教民衆同盟)
に提出した。商工会議所はこの請願書を積極的に支持しなかった(42)。 図 4 ‑ 9 :「グリンデルホーフ」再整備の経過
図 4 ‑ 8 :「グリンデルホーフ」再整備(市作成の図面に基づく)
改造工事開始をきっかけに、
1998
年8
月17
日には住民と商店主が参加した、「ゾーン30」の整備に
反対したデモ行進が行われたが、関係者それぞれの立場が大きく異なり、参加者は30
人程度しか集 まらなかった。その一方、主な整備目的が排気ガス公害を減らし、子供の健康を守ることにあること を評価している住民もいた。住民団体と市役所はさらに、クルマで地区外から来る小売店の客が少な く、地区内に住んでいる客が多いために、ゾーン規制が売り上げに大きな影響を与えないことを指摘 した(46)。しかし商店主たちはこの意見に反論し、地区住民が客としてあまり当てにならないと強調し た。他方で、ゾーン規制により周辺地区で交通量が増加することを懸念した地区外住民もいた(43)。 1998年9
月には、道路を整備前の状況に戻すことを求めて、6
名の商店主が行政裁判所での訴訟を 起こした。訴訟の理由書は「ハッラー通り」と「ローテンバウムショセー(Rothenbaumchaussee)」で の渋滞問題発生を指摘し、整備が「グリンデルホーフ」のユダヤ人地区内の商店街としての歴史にふ さわしくないだけではなく、「グリンデルホーフ」がBプランで幹線道路として指定されているので、
交通静穏化が条例である
B
プランと矛盾することを強調した(47)。しかしこの訴訟は成功しなかった(48)。
整備が完成した翌年の
2
月には大幅な売り上げ減少を訴えた小売店主7もあったが、工事が終わっ て売り上げが回復したことで満足した小売店主もいた(48)。また、店舗を売ろうとしても、買い手が付 かないと訴える商店主もいた(49)。広くなった歩道でオープンカフェが増えた結果、地区の雰囲気は変わった(50)。それに対して、魅力 的な飲食店を発見して初めて店内に入るドライブ客が多かったので、売り上げがゾーン規制以来30%
で減少したと述べた飲食店経営者もいた(49)。
小売店主のあいだでは特に駐車場に関する議論が加熱した。せっかく整備された駐車場や荷さばき スペースが長期の違法駐車のために機能しないことや駐車場が全体的に少ないことが特に批判の対象 となった(48)。または、売り上げ問題が特に議論された「グリンデルホーフ」北部では、住民の自家用 車が一日中店舗前の駐車場に止まっていることが商店主に激しく批判され、駐車券の自動販売機の導 入が提案された(51)。
商工会議所が小売店を対象に聞き取り調査を行い、沿道の
71
店舗のうち57
店舗からの返事を得る ことができた。その結果によれば、店舗の過半数の売り上げが減少し、25人の職場が無くなった8。 商工会議所は、「ゾーン30」は一般住民にしか利益にならないと主張して、1999
年末に「ゾーン30」
整備への反対を強め、商業者への影響が生じない場合にのみゾーン規制をかけることを商工会議所が 強く要求した。その一方、歩行者の交通安全と騒音対策が市の重要な課題であることが緑の党(GAL)
に指摘され、環境改良による店舗の家賃上昇なども小売店の経営問題に影響した可能性を建設省が指 摘した(52)。さらに、住民団体は市の全域における小売店売り上の減少を指摘した(51)。
小売店主とは異なり、一般住民は交通静穏化を歓迎した。地区内の交通量が減り、排気ガスによる 大気汚染、特に大型トラックによる振動と騒音の公害が無くなったので、住環境が良くなったことを 喜んだ人が多かった。さらには、子供が拡幅された歩道で安全に遊べるようになったことも歓迎を受 けた(51)。
一般住民と商店主の和解のため、社会民主党(SPD)は住民と商店主を40人招いて話し合いを行っ た。この議論の結果、マーケティングとサービス向上を目指し、にぎわいのある空間形成を目標に掲 げた商店会(Werbegemeinschaft)が
2000年 2
月に設立された。とりわけ「ハッラー広場(Hallerplatz)」 と「ハルトゥンク道路(Hartungstraße)」の間にある商店主が駐車場問題に頭を悩ませていたので、駐 車場の整理と駐車券販売機の導入も商店会に検討された。商店街とは別に、「地区マーケティング(Quartiersmarketing)」のワーキンググループも発足した写真 5‑25)(53)。
4−5−3 4−5−3 4−5−3 4−5−3
4−5−3 2 0 0 1 2 0 0 1 2 0 0 1 2 0 0 1 2 0 0 1 年の政権交代による方針転換 年の政権交代による方針転換 年の政権交代による方針転換 年の政権交代による方針転換 年の政権交代による方針転換
2001年
9
月23
日の市議会選挙(Bürgerschaftswahl)の結果、社会民主党(SPD)と緑の党(GAL)の連立政権9が終わり、キリスト教民主同盟(CDU)、自由民主党(FDP)とシッル党(Schill-Partei)
自動車 4 車線、バス専用車線 2 車線道路のグリンデルア レー。
(撮影:Joachim Müllerchen)
グリンデルホーフから見たグリンデルアレー交差点。手 前には自転車の左折車線がある。
グリンデルアレー交差点から見たグリンデルホーフの入 り口
(撮影:Joachim Müllerchen)
グリンデルホーフ沿いの自転車道と民間敷地への入口
グリンデルホーフ沿いの自転車道とオープンカフェ
(撮影:Joachim Müllerchen)
グリンデルアレー交差点から見たグリンデルホーフの入 り口
写真 4 ‑ 1 4 〜 1 9 :再整備後のグリンデルホーフ
写真 4 ‑ 2 0 〜 2 4 :再整備後のグリンデルホーフ 自転車専用道路ボルン通りの入り口
(撮影:Joachim Müllerchen)
グリンデルホーフ方面のボルン通り。茶色の小屋は自転 車車庫。
(撮影:Joachim Müllerchen)
グリンデルホーフから見たアジェンデ広場 一方通行道路のためにグリンデルホーフが南方面で通行
止めになっているので、迂回ができるロータリーが整備 された。
アジェンデ広場の駐輪スペースとオープンカフェ。右の道路は「グリンデルホーフ」。
(撮影:Joachim Müllerchen)
と交通政策方針
新 し い 連 立 政 権 が 連 立 協 定
(Koalitionsvertrag)を結び、交通の分野にお いては自動車交通の速度向上と障害物の撤去 を重視し、交通量減少を交通発展計画(VEP)
の目標に掲げた前政権11から、政策の方針は 大きく変わった。新政権の主な政策は①純粋 な住宅地以外での「ゾーン
30」の解除
12、② 学校前での「ゾーン30」の夜間解除、および③ボラードなどの「障害物」の撤去と標識の みによる交通規制であった。さらには速度違 反の取り締まりを事故多発地に制限するこ と、交通の安全性と環境への負荷の許容範囲 のもと、幹線道路での速度制限を
60km/h
へ 引き上げること、高速道路に防音壁と蓋を整 備 す る こ と 、「 駐 車 場 付 置 義 務 の 免 状 金(Stellplatzablösegebühr)」を駐車場整備のみに 使うこと13など、自動車交通を重視した政策 が提案された。その一方、駐輪場の整備を必 要最低限に限り、路線バスの速度向上14を目 的としたバスベイの撤去を中止し、バス専用 車線を必要最低限に限ることにより、新政権 は交通のウエイトをさらに自動車交通にシフ トさせようとしていた1 5。前政権の参議会
(Senat)により提案された
LRT
の導入16(55)も 自動車交通の邪魔者扱いとなり(56)、シッル党 はLRT
整備の中止を求め、地下鉄の整備を目標に掲げた(55)。なお、「グリンデルホーフ」の交通規制を解消することが重要な目的であることを新交通大臣がイ ンタビューでも強調していた(57)。
4−5−3−2 「グリンデルホーフ」に関する議論の展開
政権交代の前にやっと落ち着きを見せ始めた「グリンデルホーフ」に関する議論にも改めて火がつ いた。この議論は住民の激しい抵抗にあい、野党の妥協案、そして与党が新たな交通規制案をダスと
写真 4‑25:グリンデルホーフ内小売業者が共同に立て ている宣伝看板
(撮影:Joachim Müllerchen)
①①①①連立政権の規制緩和案と住民の怒り①連立政権の規制緩和案と住民の怒り連立政権の規制緩和案と住民の怒り連立政権の規制緩和案と住民の怒り連立政権の規制緩和案と住民の怒り::::新政権の設立から:
3ヶ月も経たない 2001
年12
月6
日に、住民がアルトナ地区の「シュトレーゼマン通り(Stresemannstraße)」の交通規制解除に反対するデモ 行進を行い、住民投票17を準備した18。それに対して、メットバッハ(M. Mettbach)氏が「グリンデ ルホーフ」の交通規制緩和の重要性をさらに強調した。その一方、野党の社会民主党と緑の党は、住 民団体と警察、「全ドイツ自動車クラブ(ADAC)」、「全ドイツ自転車クラブ(ADFC)」、タクシー運営 者団体、大学、商工会議所、手工業会議所(Handwerkskammer)、小売業者団体(Einzelhandelsverband)
のさらなる意見交換を求めた(58)。
「シュトレーゼマン通り」の住民に倣って、「グリンデルホーフ」の住民団体は
2002
年1
月4
日に「住民投票申請(Bürgerbegehren)」と提出し、住民投票を行うために必要である、区内で選挙権を持っ
ている約
5,500
人の署名を集める作業に取りかかった(59,60)。社会民主党が求めていた専門家との意見交換がその
3
日後に「アイムスブュッテル地区中心市街地委員会(Kerngebietsausschuss Eimsbüttel)」 で開かれ、約100
人の住民が出席した(61)。小売店(62)やタクシー業界(63)を除くと、交通規制を支持す る意見が圧倒的に多く、特に住民と飲食店の客は交通規制を喜ぶことが明らかになった。また、商工 会議所が2001
年10
月に調査した結果によると、小売店の70%は、一方通行規制には反対しても、店
舗の前での新しい駐車場やオープンカフェを運営できる空間を失うような車線拡幅を望んでいない(62)。さらに、整備前からは道路沿いの小売店舗が
72
軒から65
軒に減少し(61)、賃貸店舗の借り手の回 転が速くなり、売り上げが50%で減少した小売店もあることが指摘されたが、ゾーン規制がこの経
営状況悪化の唯一の原因とは言えないと商工会議所の代表者も認めていた(62)。住民と小売業者の議論の結果、メットバッハ氏が無条件の規制緩和をあきらめ、新しい解決方法を 探ると約束した(64)。
数日後の
1
月9
日には、メットバッハ氏は「シュトレーゼマン通り」で開かれた住民と専門家との 議論に参加し19(65)、「シュトレーゼマン通り」の住民は翌日の10日にさらなるデモ行進を行った20(66)。「シュトレーゼマン通り」に関する住民投票申請名簿が
2
月15
日にアルトナ区役所に提出された(67)。 約50
人の住民(68)と一緒に、メットバッハ氏は2月 14
日に「グリンデルホーフ」の現地視察を行い、住民との意見交換を行った(34,69)。しかし、メットバッハ氏が具体的な改造案も出さず連立協定を守る ことの重要性を強調するばかりだった。彼は同じ14日までに住民投票申請に同意した約2,250名の署 名を集めた住民団体(70)の勢いを見て、「グリンデルホーフ」問題の解決は時間がかかるので、「ハッ ラー広場」付近の駐車場問題解決を優先すると、述べた(68)。
メットバッハ氏が視察を行った
10
日後の24
日に、「グリンデルホーフ」の住民と数人の商店主が 交通規制緩和に反対したデモ行進を行った(71)。参加者は約200
人で(72)、デモ行進を支持した映画館経 営者は参加者に温かいワイン(Glühwein)を配り、沿道のレストランは食べ物を提供した21(73)。 ②②②②社会民主党による妥協案と商店会の取り組み②社会民主党による妥協案と商店会の取り組み社会民主党による妥協案と商店会の取り組み社会民主党による妥協案と商店会の取り組み:社会民主党による妥協案と商店会の取り組み::::社会民主党が1
月29
日の区議会に妥協案とし ての新しい改造案を提出した。これは「グリンデルホーフ」の交通規制を現状通りのままで「ハッラー 広場」を改造し、歩行者と自転車にとって使いやすい空間整備を行うというものであった。社会民主 党は、小売店の経営問題は交通規制とは関係がないことを強調し、通過交通が地区に隣接する幹線道 路の交差点にも影響を及ぼすので、交通規制を緩和すると渋滞の原因にもなりうることを指摘した(38)。
妥協案のおよそ一ヶ月後には小売店の経営者が動き出した。店舗案内の、大きさ約
1m
2の看板(写真
5-25)を「グリンデルホーフ」の5箇所に配置した。この看板の費用を分担した経営者は自分の商
店のロゴマークと宣伝を看板に記載することができた22(71)。大型店舗やショッピングセンターに対抗 するため、沿道にある数多くの家族経営の店舗は、統一したウェブサイトのデザインやマーケティン グを必要とした。「グリンデルホーフ」南部がオープンカフェで栄え、雰囲気が良くなった一方、北 部には歩道内駐車が多く、オープンカフェの営業が不可能であることが新しく設立された「小売店協 会(Interessengemeinschaft)」によって批判された。小売店協会はさらに、域内には劇場、映画館、ギャ ラリー、大学など魅力的な施設が多いため、さらなる交通規制によって魅力が向上する可能性がある 強調した。協会はその第一歩として「ハッラー広場」の歩行者中心の整備を求めた(76)。