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談話行動の実験社会言語学的研究 : 目標と資料収 集方法について

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国立国語研究所学術情報リポジトリ

談話行動の実験社会言語学的研究 : 目標と資料収 集方法について

著者 江川 清

雑誌名 研究報告集

巻 1

ページ 105‑116

発行年 1978‑03

シリーズ 国立国語研究所報告 ; 62

URL http://doi.org/10.15084/00001061

(2)

談話行動の実験社会言語学的研究

一目標と資料収集方法について一

江 川

はじめに

 われわれは言語行動,ことに談話の行動様式を研究するための方法について 国語研究所内外の多くの仲間と共岡で討議を行ったり,資料の収集を行ってい る。この研究は今年度から始まったものであり,まだ構想の域を出ない面が多 い。各方藤の方々より御助言いただければ幸いに思う。

 本稿では研究目標やそのための資料収集の方法などをごく大雑端に述べる。

これに続く江川,杉戸,米田の三篇の論文で,われわれがねらっていることの 具体的な方策の一部を示すつもりである。この三篇はそれぞれの執筆者が独自 の観点で記したものである。この中には共同討議の結果,ある程度は一致した ものもあり,また統一見解が得られていないものも含まれていよう。したがっ て,この三篇で互いに矛惜した記述があるかも知れないことを断っておく。

 人間のコミュニケーション行動を,言語的(verba1)コミュニケーションと 非言語的(non・verbal)コミュ=ケーションー話しことばを中心に考えれば,

音声的(vcca1)と非音声的(non−voca1)一一とに区分して考えることが多い。

Hinde①はこの二つのコミュニケーションの関係を,

 音声的コミュニケーション

三野職∴ど竺暮簿1攣し。ン_

       leor

(3)

のように図式化している。この他にもいくつかの分類がなされているが,現実 のコミュニーシeン行動の大部分は音声的・非音声的の両者が共存ないしは補

完しあった形でなされている一たとえば,Hindeの図式の中の副言語的

(paralinguistic)なものは,音声的なものに付随するものにすぎない場合があ る反面,むしろこちらの方が主となる場含も多い。

 従来,コミュニケーーションの音声的あるいは非音声的の二側面は,それぞれ 別個にとりあげられた研究は数多くみられるが,それらを牛舎的に関連づけて いるものは少ない。われわれの究極的な繭標はこの総合的な観点からコミュニ ケーション行動の実態を明らかにすることであり,そのコミュ=ケーション・

モデルを作成することである。そのための記述の方法や分析の枠組みを確立し ようというのが当面の大きな課題である。

 コミュ=ケーション行動は祉概言語学的研究が指摘しているように,行鋤の 生じる場面や行為者閥の社会的・心理的諸関係などによっていろいろ変化する ものである。われわれとしてもいろいろな場面や状況の中でコミュケーーシgン 行動を研究したいのではあるが,先行モデルがほとんどない現状ではあまり多

くの場藤をとりあげても消化不良を起しかねないと思われる。そこで,蟻面は 研究対象をく座談 の場面に絞り,座談メンバーの構成を実験的にコントra ・一 ルし,その中で生じるすべての言語行動を観察・記録することにした。この研 究は,言語的・国書語的な多角的な観点から分析しなければならないため,多 分に試行錯誤約な色彩が強い。そのため資料の収集にあたっては,いろいろな 段階で繰り返して観察・検:試することが可能なビデオ録画方式を採用した。

 なお,コミュニケーション行動は文化の型と強い連関をもっていることを考 え,臼本の二大文化圏の中心たる東京・大阪の両地域で資料収集を行ってい

る。

資料収集の方法

1. 場   麟

われわれがとりあげた座談場爾は,参加メンバーに自分の生活空間とは離れ

       106

(4)

た会場に出向かせ,様子のわからない他のメンバーとコミュニケーションをも つことを強いられるという側面がある。一般の人々にとってはこのような経験 は皆無であるか,また,あったとしても希な場面でもある。いいかえると,買 物(2)とか乗物に乗るとか雑談するとかいった誰でもが日常の生活の中で頻発に 行っているような場面に対し,座談場面はきわめて特殊であり,く往の言語生 活 からほど遠いものである。

 このような問題点が認められるにもかかわらず,あえて座談場面を対象とし た最大の理由はビデオ資料が比較的得やすいことにある。資料の得やすさとい うのは,どデオ録画に必要な照明やスペースなどの物理的条件の他に,参加メ ンバー金員が録画を;承諾してくれていることに.もある。第二の理由は,座談は 人工的に構成される場面である点にある。つまり,参加メンバー相互の組合せ は観察の側である程度まで恣意的に決定しうることであり,ひいては後の分析 にこれが役立つことである。

 2. 座談グループの構戒

 一一つの座談グループは原則として,司会者1名と4名の被調査者とから成り 立っている。司会者はわれわれの硬究グループの(依頼を受けた)者があたり,

他のメンバー相互間の宣撫な発言を妨げないよう留意しながら談話をり一ドし た。しかし,いくつかのグループでは司会者の属性一一性,年齢など一一を変 えたり,司会の進め方一聞き出し役,自分もメンバーの一員として積極的に 参加,あるいは標準語だけを使うか被調査者と同一方書を使うかなどに変化を

もたせるようにした。

 また,被調査者の組合せにあたっては,生育地,性,年齢,親疎関係などを 考慮したが,録画の都合上一一定の会場に集めることや歓談しやすい条件をつく るなどの制約から,事前のコントm一ルがうまくいかなかったグループがいく つかみられる。なお,生育地については次項に示す各調査地点での二世以上の 者を対象と決めているが,一一一lkも若干含まれている。ここで再調査老をネイテ ィヴとしたのはあとの分析のために変数をできるだけ少なくしておきたいから であり,ある程度研究が進んだ段階ではこの欄限をはずしたいと考えている。

      107

(5)

1グループあたりの座談晴間はおよそ1〜1.5時間である。

 3. 調査地域・時期

 この研究は正式には昭和52年度から出発したものであるが,その前年の51年 度かち資料の収集を行っている。現在までに調査が行われたものは,進行中の

ものを含め,以下の3地域である。

地  域  調査時期 船 場*

(大阪市)

中河内**

(大阪府)

51. 8. 9

  Nl1

52. 9. 6

  N9

下  緯丁*** 52.8.3

(菓京都)       〜17

録霞場所

人聞組織研究所 会議霊 朝臼広告社大阪 支社スタジオ 圏語研録音教材 編集霊

録画資料 5

8

録音のみ

の資料

6

1

3

1

o

第一次文字

化済資料

11

3

3

  * 島之内,堂島を一部含む  ** 講河内を一一部含む

 *綜 王1月以降にさらに資料拡充の予定(現時点では計6グループ完了)

 第一次文字化は原則としてカナ表記・文節分かち書きであり,ポーズやイン トネーションなどの情報は付撫されていない。非音声的コミュニケ・・一一シgンと の対応をはかるためにどのような文字化テキストを作成すべきかが今後の検討 課題の一一つである。

 4. 録画の方法

 録画資料の作成にあたっては,国語研究所(3)あるいは大阪外国語大学④所蔵 のビデオテープコーダを吊いた。また,ビデオの音声をカバーするために,こ れとは男懸に2台のマイクロホンを用いてステレオ録音を行った一音声の文字 化は主としてこのテープから行った。

 使用会場の構造や座談メンバー一の人数の関係で録画・録音のための機器や人 員の配置はやや異なるが基本的には下図のようになっている。

 ビデオカメラの操作1# ,・座談の姶めの自己紹介時のみ発話者ひとりひとりを アップで追ったが,あとは主としてA〜Dの4名の被調査者全員が岡一画面に        108

(6)

録画・録音のための配置図(東京下町地区の場合)

D

c

マイク tw

司会蕎

ビデオカメラ

tw 員隠しの

しきり

B A

ビデオコーダー

モnタ・一テレビ

  o

 観察者

スデレオ 録音器

収録されうるよう(5)にロングで撮影した。ロング撮影を行ったのは,われわれ の目的からすると話者の動きと同じくらい(以上)に聞き手の反応をも記録し ておく必要があると考えたからである(6)。

 5.資料の剃約

 このようにして得られた資料には,先に述べた場藤の制約の他にもいくつか の制約がある。一つは写されているという緊張感を被調査者に与えていること

である一Uング撮影の段階ではカメラのそばは無人であることから多少は緩

和されたようではあるが。第二は現行のビデオ機器の解像度にかかわることで あるが,表惜とか視線の方向といった微妙な面の分析には耐ええないものであ ること(7)。この二点はわれわれの資料のみならずビデオ観察全般がもつ短所で あるが,この資料独自の制約も多い。たとえば,撮影の都合上被調査者を椅子 に腰かけさせたため,彼らの自由な動きの大部分を封じてしまったことやから だの上半身の動きしか観察しえなくなっている。また,椅子の配置が不自然       109

(7)

なため,被観察者間のコミュニケーションの方向に何らかの影響を与えている

恐れカミ弓蚕い(8)。

 この種の不自然さは今後可能な限り取り除いていきたいと考えている。

 おわりに

 現在われわれは次のような事項の整理・分析にとりくもうとしている。

1) 非警語的な行動の要素を掘出し,行動観察のための指標となるカテゴリー  表を作成する。

2)録音資料をポーズ,ストレス,イントネーシn一ンや相手や状況による音の  高低などの事項を含む形でテキスト化する。

3)録画資料を「行動記述」「行動の文獣化」というべき形でテキスト化する。

4) 2と3とが対応する資料を作成する。

5) 談話の平調的経過に伴う,話題の変化,発話量,コミュニケP・一一ション・ネ  ットワークの成立・変化などを記述,分析する。

6)談話における話しことばの文章・文・単語など(狭義の)言語的分析を並  行して行う。

7) 話しかけ明野受け型といったような被調査者のタイプ別の談話行動特性を  調べる。

8)東窟・大阪の各資料を比較し,談話行動の地域差について一事日貸究を行

 う。

9) 言語的・非言語手段によるコミュニケーションを総合した言語行動モデル  を求める(9)。

 最後に,本稿に続く三篇で共通に用いたく資料〉について簡単にふれてお く。これは昭和51年8月9日,大阪市「船場地区」で収録した五つの資料のう ちの一一つである。文字化部分は座談の中聞あたりの約6分間である。テキスト

としてはきわめて不充分なものであり,これが最終テキストのサンプルではな いことを断わっておく。

〔付記〕本研究は昭和52年度文部省科学硬究費特定研究「言語」(「談話行動の実        110

(8)

験祉会雷語学的研究」代表者 渡辺友左)を受けて実施したものの一部

である。

(1) Hinde R, A. (ed.) 1972  Non−verbal Communication , Cambrige Univ.

  Press.

(2)洋服,呉服の買い物での言語行動を調べたものとしては,杉戸清樹・沢木幹栄   1977「衣服を買う時の言語行動一その諸側藤の観察」言藷盤三二,N◎.314があ   る。

(3)Sony AV・3500(オープンテープ用)およびSony・2950(カセットテープ擢)

(4) S◎ny AV−360G(オープンテープ飛)

(5)会場の広さや被調査者の乱数によっては,司会者も画漁に収まるようにし

  た。

(6) 予備撮影で発話者ひとりひとりをアップで追う試みをしてみたが,1台のカメ   ラだけでは発二者の交替を追跡することは不可能であった。ビデオ装置を複数に   することができれば,より細かい動きをもとらえることができようが。

(7) ビデオ観察の濡燕短衝については,辻敬一郎,松田埋,1974「観察法のための   装丁,設備」(続有恒,蓼阪良二編『心理学研究法10 観察』東大出版会),山田   寿子,飯高京子,1977「言語発達観察法に関する研究一乳幼児期の母子相互関係   を観察玄寸象として」教心乱,25,3,などを参照さ才したい。

(8)Hall T. H.1966(B高敏隆,佐藤旧訳)rかくれた次元』みすず書房(王970)

  などproxemics研究では,人と人との聞の距離や位置が非言語的コミ=ユケー   ションの重要な地位を占めるとされている。

(9)出語研究所では本研究以外にも二つの雷語行動様式の研究が行われている。

  「日独語の対照雷語学約研究」のうちの「日独語各点者の言語行動様式の対照的研   究」と触本入と外圏人との需語行動様式の姥較対照的研究」とである。前者は   筆麿らも参加しているものであり,後気は日本語教育センターで行われている。

  われわれのを含め,この三つの言語行鋤様式の研究は少しずつ視点が異なってい   るものであるが,互いの成果をうまくとり入れることによって総合的な言語行動   モデルに近づけることができるであろう。

〈資 料〉

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薬晶問麗の男性

文具関係の勇性 子ども服店の男性        lll

一都は鷹有名詞

( は,ほぼ岡時発話

(9)

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(11)

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(12)

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