中国の都市における緑地景観の評価
―高層住宅地内の緑を対象とした CVM による実証分析―
李家斉(資源環境経済学講座・環境経済学分野)
【背景】中国の都市は急速に発展が進み、開発による緑地の減少期を経て、緑地の重要性が認識
され始めている。都市緑地の内訳は公園、住宅の緑、街路樹等であり、本研究では住宅の緑に着
目する。中国では高層住宅が都市住民の主な住宅である。高層住宅地内には緑地が存在している
ことが多く、この緑地は、高層住宅の住民が費用を支払い,維持管理を行っている。土地の所有
権のない中国において、共有の緑地でありながら、個人が明確にコスト負担を行っている高層住
宅地内の緑地は、住民の環境意識を明らかにするために適した環境であると考えられる。日本に
おいて、マンション内の景観についての研究はあるが、中国における研究は見当たらない。加え
て、高層住宅における特徴、つまり低層階と高層階には眺望景観の違いがあると一般的に考えら
れるが、その違いによる宅地内緑地の評価の差は明らかになっていない
【目的】都市における緑地として重要な位置づけであり、住民の環境意識を評価するために適し
た高層住宅地内の緑地を対象に、住民による環境評価を明らかにすることを目的とする。また、
階層による評価の違いを明らかにする。住宅地内の緑地は人々の日常生活で利用頻度が一番高い
緑とも言えるため、住民による宅地内緑地の評価結果を適用し、住民たちが住環境の維持向上を
どのように考え、どのような価値を感じるのか、それを究明することで、都市景観計画や開発者
側にとっても参考になることが期待される。
【方法】仮想評価法を用いて、アンケート調査を実施した。調査期間は 2020 年 9 月から 10 月、
調査対象地は中国西安市の二つの住宅地(以下、①及び②と記載)である。居住者 SNS グループ
に依頼し web によるアンケート調査と、知り合いの居住者に依頼し紙媒体によるアンケート調査
の2つの方法で実施した。有効回答数は、①107 人②91 人であり、総戸数の①10%②20%である。
分析に使用したソフトウェアは栗山らの EXCEL で出来る CVM、WTP の推定には対数線形ロジットモ
デルを適用した。
【分析結果】 二つの高層住宅地の結果を比較すると、①の WTP は中央値 9 元/月、平均値 11 元/
月、②の WTP は中央値 10 元/月、平均値 16 元/月であり、②の評価が高い。次に性別や年収、環
境に対する意識等に関する 18 個の質問を説明変数として重回帰分析した結果、①4 変数、②2 変
数が有意となった。①で有意となった変数は、1.年齢が若いほど WTP が低くなる、2.学歴が高い
ほど WTP が低くなる、3.都市景観を重視するほど WTP が高くなる、4.宅地内景観の維持管理を高
く評価するほど WTP が高くなる、であった。②で有意となった変数は 1.年齢が高くなるほど WTP
が高くなる、2.環境保護活動に参加したことがある人は WTP が高くなる、であった。①、②共
に、階層は有意とならなかった。
【結論】都市景観を重視する人、宅地内景観の維持管理を評価する人、環境保護に参加したこと
がある人は、宅地内の緑地を高く評価していることが明らかになった。一方で、年齢による影響
は①と②で逆になっている。これは2サンプルの年齢構成の違いに起因すると考えられる。高層
住宅地内の住民の評価額は現在の緑地の状況に対する認識を前提に決定していると考えられる。
①は緑化率が高く、維持管理状況も全般的に良い。②は、宅地内景観現状に対する住民満足度が
低く、より良い緑地を創るため、より高い支払い意思額を表明したと言える。都市住民は身近な
緑を評価し、より良い緑地創出に費用負担の意思があることが明らかになった。
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