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アメリカによる現代世界経済秩序の形成-貿易政策と実業界の歴史的総合研究-

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アメリカによる現代世界経済秩序の形成-貿易政策

と実業界の歴史的総合研究-著者

鹿野 忠生

212

発行年

2004

URL

http://hdl.handle.net/10097/14502

(2)

鹿

学 位 の 種 類

学 位 記 番 号

学 位 授 与 年 月 日

学 位授 与 の要件

博 士(文 学) 文 第212号 平 成17年1月13日 学 位 規 則 第4条 第2項 該 当

学 位 論 文 題 目

論 文 審 査 委 員

ア メ リカ に よ る現 代 世 界 経 済秩 序 の形 成 一貿 易政 策 と実 業 界 の 歴 史 的総 合研 究 一

論 文 内 容 の 要 旨

序 」にお い て は、本研究の課題 と視角 を論 じてい る。本研究 は、現代 的問題関心 に基づ いて世界史的 視 点 に立 ち 、 ア メ リカ貿 易 政 策 史研 究 を基 軸 に据 えて イ ギ リス 中心 の世 界 経 済 体 制 か らア メ リカ 中心 の それ へ の 移行 の基 本 的道 筋 を明 らか に す る こ とを課題 と して い る。 す な わ ち、 第 一次 世 界 大 戦 後 の ア メ リカ 貿易 政 策 の推 移 、 と くに大 恐慌 期 に お け る貿 易政 策 の転 換 とそ の延 長 線 上 で の ア メ リカ に よ る世 界 的 自由貿 易 体 制 の創 出 とその過 程 で孕 まれ た ア メ リカ 的特 質 を、 実 業 界 ・政府 ・議 会 それ ぞれ の 立 場 と それ らの相 互 連 関 を総 合 的 に明 らか に す る こ とで 、 アメ リカ に よ る経 済 グ ロー バ ル化 の歴 史 的原 型 を確 定 す る こ とで あ る。 この研 究 の最 大 の特 徴 は、 アメ リカ経 済 とア メ リカ貿 易政 策 との媒 介 環 に位 置 し、 同 国 経済 の心 臓 部 を なす 実 業 界 の 立場 を、 国 内 ・外 で 未使 用 の原 史 料 の分 析 に依拠 して研 究 の軸 心 に据 えた こ とで あ る。 本 論 文 は、 この よ うな視 角 か ら当該 期 の ア メ リカ貿 易 政 策 史 の実 態 を体 系 的 に ま とめ た わ が 国 最 初 の 学 術 研 究 の成 果 で あ る。 本 研 究 の方 法 論 的 基 礎 に は 、次 の 二 つ の理 論 が す え られ て い る。 第一 に は、 わが 国 にお い て は東 北 大 学 文 学 部 ・吉 岡昭 彦 教 授 お よ び同 教授 を含 む多 くの研 究者 に よ るイ ギ リス資 本 主 義 を 中心 とす る帝 国 主 義 の世 界 体 制 に関 す る研 究 の基 礎 をな す多 角 的貿 易 決 済 シ ス テ ム の理 論 、 これ で あ る。第 二 は、 東 京 大 学社 会 科学 研 究 所 ・鈴 木 圭 介教 授 を は じめ とす るわ が 国 の ア メ リカ経 済 史 研 究 者 が 開 拓 し、 蓄積 を重 ね て きた アメ リカ資 本 主 義 の 内部成 長 型 の発 展=産 業 ・貿易 構 造 の変 化 とそれ に規 定 され た 同 国資 本 主 義 の構 造 的特 質 に関 す る理 論 で あ る。 本 研 究 は、 両 史 学 を原 史 料 レ ヴ ェル に おい て 統 一 的 に把握 し、 ア メ リカ貿 易政 策 の推 移 に関 す る総 合 的把 握 を基 礎 として 上掲 の よ うな本 研 究 の課 題 を究 明 し よ う と して い る。

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「第 一 章 前史 」 で は、L九 世紀 末 以 降 の ア メ リカ貿 易政 策 とそ の特 質 」 につ い て、 と くに南 北 戦 争 以来 初 めて 全般 的 かっ 大 幅 な関税 引 き下 げ の実 現 を果 た した 民主 党 ウ ィル ソ ン政 権 下 で の一 九 一 三 年 関 税 法 成 立 の 歴 史 的意 味 を問 うこ とが課 題 で あ る。 南 北 戦 争 終 了後 に ア メ リカ にお い て は小 農 民 経 済 を もつ 国 内 市場 依 存 型 の 資本 主 義 が確 立 す る。 アメ リカ は後 進 農業 国型 貿 易 構 造 を伴 って イ ギ リス 中心 の古 典 的世 界 市 場 に従 属 的 に編 入 され て お り、 主 要 産 業 諸 部 門 を基 盤 と して 保 護 関 税政 策 が確 立 す るに至 る。 関税 法 は、 産 業 資 本 と農 民利 害 の対 抗 と妥 協 の うち に成 立 して い る こ とか ら、 農 工連 帯 保 護 を基 調 とす る全 般 的保 護 関 税 体 系 を もち、 収 入 関 税 が こ れ を補 強 す る こ とに な る。 重 工 業 型 の 発展 と西 部 農 業 の 発 展 を背景 に、1890年 関税 法 の制 定 を起 点 と し て 保 護 関税 政 策 は拡 大 ・強 化 され る と と もに、 先 進 工 業 国型 貿 易 構 造 へ の 移行 開始 に対 応 し、 部 分 的 に 輸 出拡 大策 が導 入 され る。1893年 恐慌 とそ の後 の不 況 を契機 と して重 工 業 型 の発 展 の基 礎 上 で ア メ リカ 資 本 主 義 が独 占に転 化 し消 費者 収奪 が一 般 化 した時 点 で は 、1909年 関 税 法 にみ られ る よ うに、 ア メ リカ は、 鉄 鋼製 品 等へ の独 占保 護 関税 を含 む高 率 保 護 関 税 体 系 と高 率 収 入 関 税 を もち、 これ を前 提 と した 一 方 的 ・強圧 的輸 出拡 大 策=二 重 関税 制 度 を有 して いた 。 これ に対 し、1913年 関税 法 は、 国外 か らの競 争 を導 入 す る こ とに よって 、 独 占の 弊害 の緩 和 と高 度 被保 護産 業 の改 善 に よ る全般 的 な価 格 低 下 を促 し、 消 費 者 の 救 済 を図 る と とも に、 原 料 ・食 料 関税 の引 き下 げ ・撤 廃 、砂 糖 関 税 の最 終 的撤 廃 を断 行 し、 こ れ を補 強 しよ う と した もの で あ っ た。 個 人 所 得 税 の 導 入 に よっ て 関 税 改 革 に よ る収 入 減 の補 填 が 図 ら れ 、 こ こに財 政 収 入 は国 内の安 定 的財 源 に依 拠 す る途 が 開 か れ る。 この よ うな抜 本 的改 革 の うち に南 北 戦 争 以 来 の農 工 連 帯 保 護 を基調 とす る全 般 的 保 護 関 税体 系 は廃 棄 され る。 アメ リカ は 、西 部 農 業 ・食 品加 工業 の発 展 、 鉄 道 業 の 発展 の基 礎 上 で 、1873年 恐 慌 とそ の後 の 不 況 を 起 点 と し、 イ ギ リス に対 し農産 物 ・加 工 農 産 物 の輸 出 急 増 を軸 と して大 幅 貿 易収 支黒 字 を発 生 させ て い く。 保 護 関税 政 策 は、 イ ギ リス か らの 工業 製 品輸 入 を抑 制 し、 この米 英 貿 易 関係 の変 化 を促 進 した 。 当 該 期 の保 護 関税 政 策 は イ ギ リス 中 心 の 古典 的世 界 市 場 の 崩壊 開始 を ア メ リカ 側 か ら促 進 す る もので あ っ た とい え る。1890年 関 税 法 の 制 定 を起 点 とす る保 護 関 税 政策 の拡 大 ・強 化 は、 イ ギ リスか らの工 業 製 品 の輸 入 を遮 断 し、 イ ギ リス を して アメ リカ市 場 か らの撤 退 を余 儀 な くさせ る と とも に、1893年 恐 慌 とそ の後 の 不況 を起 点 とす る アメ リカ の先 進 工 業 国 型 貿 易構 造 へ の移 行 開 始 と対応 し、 米 加 貿 易 関 係 を は じ め とす る各 国 との貿 易 関 係 にお け る変 化 を も輸 入 貿 易 の側 面 か ら促 進 す る こ とにな る。 当該 期 の 保 護 関 税 政 策 は、 帝 国主 義 的世 界 市場=多 角 的貿 易 決 済 シス テ ム の形 成 開始 と形成 過程 に 対応 す る もの で あっ た とい え る。 これ に対 し1913年 関税 法 は、 ア メ リカ が 先 進 工業 国型 貿 易 構 造 へ の移 行 に伴 っ て工 業 国 と して 世 界 市場 へ登 場 して くる こ とに照応 す る もので あ った 。 「第 二 章 第一 次 世 界 大 戦 後 の 高 率保 護 関税 政 策 の復 活 ・強化 と産 業 界 」 で は、当該期 の高率保護関税 政 策 の 特 質 を規 定 す る主 要 産 業 諸 部 門 の政 策 志 向 を軸 心 に据 え て 、共 和 党 政 権 下 の 高率 保 護 関税 政 策 、 と くに1930年 関税 法 の成 立 の歴 史 的意 味 が究 明 され て い る。 鉄 鋼 業 、 綿工 業 、 羊 毛 工 業 、 新産 業 部 門 を擁 す る化 学 工業 、 そ れ に不 況 に悩 む農 民利 害 を支 持 基 盤 と して 共 和 党政 権 は1922年 関 税 法 を成 立 させ 、 ア メ リカ は報 復 関税 条 項 を含 む 高 率保 護 関税 政 策 へ 復 帰 す る と とも に、伝 統 的 な条 件 付 最 恵 国政 策 か ら無 条 件 最 恵 国政 策 へ と転 換 す る。 これ は、 高 率 保 護 関 税 を 維 持 した ま ま報 復 関税 設 定 と無 条件 最 恵 国待 遇 の結 合 に よ る一 方 的 ・強 圧 的 輸 出拡 大 策 の強 化 を意 味 し て い る。 とこ ろで 、 自動 車 産 業 を中 心 として新 興 の 大 量 生産 産 業 が躍 進 的 に発 展 し、斯 業 は最 大 の産 業 に して 最 大 の輸 出産 業 に成 長 つ つ あっ た 。 したが って 、 国 内 市場 を基 盤 とす る 「自給 自足 」 志 向 に基 づ き旧来 の諸産 業 、 と くに綿 工 業 や 羊 毛 工業 の よ うな停 滞産 業 に対 す る保 護 の強 化 を企 図 した1930年 関 税

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法 は、 も はや産 業 発 展 に資 す る とこ ろが な い ばか りか 、 潜 在 的 に進 行 して い た過 剰 生 産 の 問題 を解 決 す る こ ともで きな い。 しか も、自動 車 産 業 は、1929年 に は保 護 関税 よ りも輸 出拡 大 へ の志 向 を強 め て い た。 1930年 法 は斯 業 に とって は、 自己 の輸 出 を 阻害 す る以 外 の何 もの で もな か っ たか らで あ る。 アメ リカ は、 第 一 次 世 界 大 戦 を画 期 と して債務 国 か ら債権 国 へ転 化 し、 貿 易 収 支 は依 然 として 黒字 で あ る うえ、利 子 ・配 当収 入 お よび戦 債 の 受 け取 りが これ に加 わ り、経 常 収 支 も大 幅 な 黒 字 で あ っ た。1920 年代 中葉 以 降 に は ドイ ツ を中 心 とす る 「大 陸 ヨー ロ ッパ 」 が主 要 な貸 し付 け ・投 資 の 対 象地 域 とな り、 これ が 「非大 陸 ヨー ロ ッパ 」(事実 上 イ ギ リス)を 除 くす べ て の地 域 に対 し輸 入 超 過 で あ る当該 地 域 に お け る購 買 力 の形 成 と国 際 収 支 の安 定 化 に寄 与 しっ っ復 活 した全 世 界 に及 ぶ 多 角 的 貿 易決 済 シ ス テ ム を支 え る こ とに な っ た。1930年 関税 法 に よ り保 護 の 強 化 の 対 象 とな っ た の は、 ヨー ロ ッパ 工 業諸 国 か らの ア メ リカ 向 け主 要 輸 出品 で あ った。 したが って 同法 は大 恐 慌 の影 響 と重 な って 当該 諸 国 か らの輸 入 を著 し く抑 制 す る と と もに、 ま さ にそ の時 以降 に ア メ リカ の対 外貸 し付 け ・投 資 が 停 止 しその還 流 が 生 じた の で、 両 者 が 相 俊 って 、 と くに ドイ ツ の国 際 収 支 を著 し く悪 化 させ る こ とに な った 。 旧来 の諸 産 業 の よ うな停 滞 産 業 に対 す る保 護 を 強化 した1930年 関 税 法 は、 アメ リカ の産 業 構 造 の変 化 と逆 行 して い るが 故 に大 恐慌 か らの国 内経 済 の復 興 に とっ て無 力 で あ った ば か りで な く、 債 務 国か ら債 権 国へ の転 化 とい う世 界 市場 連 関 の なか で の ア メ リカ の地 位 の 変 化 と も逆 行 して い るが 故 に対 外 貸 し付 け ・投 資 の 停 止 や その還 流 と相 侯 って 多 角 的貿 易 決 済 シ ス テ ム の崩 壊 を促 進 す る こ とに な る。 大 陸 国 家 ア メ リカ に お いて 主 要産 業 諸 部 門 と農 業 の 主 要部 門 か ら成 る個 別 的 利 害 の 集 積 が 国 民経 済 の 「自給 自足 」 志 向 と して 総 括 され 、 これ に基 づ き 「国 内 問題 」 と して実 現 を みた 高 率保 護 関税 政 策 の全 般 的 強 化 は、 世 界 市 場 の 崩壊 へ の途 に通 じて いた ので あ る。 「第 三 章 大 恐慌 期 に お け る貿 易 政 策転 換 の 中核 的推 進 主 体 」で は、貿易政策転換 をめ ぐる実業界の動 き、 と くに最大 の産 業 に して最 大 の 輸 出産 業 に成 長 した 自動 車 産 業 の 立場 に焦 点 が あて られ る。 まず斯 業 こ そが 貿 易政 策 転 換 の 中核 的推進 主体 を な す位 置 に あ った こ とを確 認 した うえで 、 そ の立場 を互 恵通 商 政 策 の 導 入 ・実 施 ・継 続 を め ぐって 斯業 の 同業 者 団体 で あ る全 国 自動 車商 業 会 議 所(NACC、 同 団体 は の ち に 自動 車 製 造 業 者 協 会 、AMAと 改 称)か ら国務 省 に送 られ た書 簡 ・文 書 の所 論 に即 して 実 証 的 に 明 らか に し、 大 恐慌 期 ア メ リカ に お け る貿易 政 策 転 換 の歴 史 的 特 質 につ い て 若干 の論 点 を提 示 した い 。 NACCは 、 あ らゆ る種 類 の 輸 出 品 を諸 外 国 の大 衆 の 「購 買 力 の範 囲 内 に もた らす効 果 」 を もつ 「関税 率 の 互 恵 的 調整 」 に よっ て 自動 車輸 出 の 回復 を望 む と とも に、基 本 的 に は 国 内市 場 に依 存 して い る産 業 の利 害 を代 表 す る業 界 団体 に相 応 し く、輸 出全 体 の回 復 に よ る 「国 内 の状 況 」 の改 善=経 済復 興 を強 く 志 向 した 。互 恵通 商 協 定 法 に基 づ く政 策 実 施 の時 期 を迎 え、AMAは 、孤 立 主 義 に基 づ く経 済統 制 の脅 威 か ら 「自由経 済 」 を擁 護 す る とい う視 点 に立 って 、 外 国 貿易 の一 層 の 自由化 へ と向 か っ て い く。 無 条 件 最 恵 国待 遇 の原 則 が 決 定 的 に重要 で あ る との認 識 を深 め る とと もに、国 家 に よ る貿 易 統 制 、割 り当て 制 、 為 替 管 理 ・制 限 に も反 対 し、 また 国 内 の 関税 引 き下 げ に よ り輸 入 を増 や して農 産 物 輸 出 の 回復 を図 り、 工 業 製 品 の た め の 国 内市 場 の 再 建 を求 め る よ うに な る。 同 法 の期 限満 了が 迫 るにっ れ て 、AMAは 、無 条 件 最 恵 国待 遇 の原 則 の相 互 保 証 に基 づ く貿 易 の 自 由化 を一 層 推進 し、 多角 的貿 易 関係 の再 建 を とお した アメ リカ と世 界 の貿 易 の拡 大 を志 向 す るに至 る。 ア メ リカ の 巨大 な生 産 力 を最 も よ く体 現 して い る自動 車 産 業 をは じめ とす る大 量 生産 産 業=輸 出産 業 で 成 立 した ビ ッ グ ・ビ ジネ スや その輪 出小 会 社 が 同政 策 の 支 持基 盤 を な して い た こ とは、強 者 の論 理=経 済 的 自由主 義 の発 動 を規 定 す る こ とに な る。 互 恵 通 商 政 策 はそ の本 質 に お いて 輸 出 拡大 策 で あ り、 アメ リカ は 、弱 小 産 業 の諸 品 目の 関税 引 き下 げ の代 償 と し て 、協 定 相 手 国 に対 し農産 物 を も対 象 品 目 と して 譲許 を 求 め て い く。 これ らの諸 企 業 は、 過 剰 生 産 と失

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業 問題 の 同時 的 解決 を め ざ して 国 内 市場 の再 建=「 自 由経 済 」 の擁 護 を 図 って い くた め に、 自己 の製 品 よ り も農 産物 の輪 出 回復 の方 に 「重 大 な 関 心」 を抱 き、 多 角 的 貿易 連 関 の維 持 を とお して これ の実 現 を 図 ろ う と して い た か らで あ る。 民 主 党 ル ー ズ ヴ ェル ト政 権 下 で 成 立 した1934年 互 恵 通 商協 定 法 は、 ア メ リカ貿 易 政 策 史 上 、画 期 的意 味 を もつ 。 「合 衆 国産 品 の国 外 市場 を拡 張 す る」目的 を もつ 同法 は、各 国 と通 商 協 定 の 締結 を 図 るた め に 議 会 に よ る大統 領 へ の現 行 関 税 率 の50%ま で の変 更 権 限 の委 任 を規 定 す る と とも に、 既 に1923年 に導 入 を みて い た無 条 件 最 恵 国待 遇 の 原 則 が条 文化 され、 ア メ リカ は貿易 自由化 の方 向 を鮮 明 に打 ち 出 して く る。 「第 四 章 貿易 政 策 転 換 を め ぐる実業 界 と政 府 お よ び議 会 との 関係 」 で は、 貿 易政 策 転 換 の背 景 、貿 易 政 策 転 換 に対 す る実 業 界 の立 場 、貿 易 政 策 転換 に対 す る政 府 と議 会 の立 場 を明 らか に し、前 述 の諸 点 を 重 ね合 わせ て 、同政 策 の 内実 を立体 的 に明 らか に し、貿易 政策 転換 の歴史 的意 味 を究 明 して みた い。 互 恵 通 商政 策 の導 入 を め ぐって 、輸 出 を軸 と して貿 易 全体 の 回復 を 図 る こ とに よ って 国 内経 済 を復 興 させ る とい う点 で 、NACC(AMA)や ア メ リカ製 造 業 者輸 出協 会(AMEA、 の ち に全 国外 国貿 易 協 会 、 NFTAと 改 称)、政 府 、 民主 党 は その 立場 を 同 じ くして いた 。 これ に対 し、 国 内産 業保 護 の 立場 を堅 持 す る とい う点 で 、 アメ リカ関 税 連 盟(A皿)や 全 国製 造 業 者 協 会(NAM)と 共 和 党 は同 じ立場 を とっ て い た。 同政 策 の実 施 に際 して は、 無 条件 最 恵 国待 遇 の原 則 の 適 用 に基 づ く多 角 的 貿 易連 関 の再 建 を とお し た世 界 とアメ リカ の貿 易 の回 復 とこれ に よ る国 内経 済 の復 興 、 と くに農 産 物 輸 出 の回 復 に よ る国 内工 業 製 品 市場 の再 建=失 業 問題 の 解 決 が 、AMAやAMEAに お い て主 張 され 、国務 省 の 立場 も これ とほ とん ど 同 じで あ った 。 これ に対 し、ATLは あ くまで も国 内産 業 保 護 の立場 を貫 い て い る。 同政 策 の 継続 を め ぐ り、無 条件 最 恵 国待 遇 の原 則 に基 づ く多 角 的 貿 易連 関 を とお した 世界 とア メ リカ の貿 易 の 回復 が 、AMA やNFTA等 に よ って 引 き続 き主 張 され 、政 府 や 民主 党 で 唱 え られ た 「経 済 的 繁 栄 に よ る永 続 的平 和 」 の 主 張 も これ に照応 す る もので あ った 。 これ に対 し、ATLやNAMは 、国 内産 業 保 護 の 立 場 か ら関税 引 き下 げ の歯 留 めの設 定 を主 張 し、 無 条 件 最 恵 国待 遇 の原 則 に基 づ く協 定 税 率 の第 三 国 へ の 拡 張 に反 対 し、共 和 党 の 主 張 も これ と変 わ る と ころが な い 。 1934年 互 恵通 商協 定 法 の成 立 と延 長 に基 づ く貿易 政 策 の転 換 に よ って、 推 進 派 の業 界 団体 ・政 府 ・民 主 党 の 立場 が政 策 的 に実 現 し、 批 判 派 の 業界 団体 ・共 和 党 の 立場 が政 策 的 に否 定 され て い る。 この こ と は、強 者 の論 理 で あ る経 済 的 自由主 義 とそれ を保 証 す るた め の平 等 主 義 が 貫 徹 して い くこ と、す な わ ち、 大 量 生産 産 業=輸 出産 業 で 成 立 した 大企 業 の利 害 に沿 って 諸 外 国 に対 し工 業 製 品 のみ な らず 同製 品 の 国 内市 場 の 回復 をめ ざ して農 産 物 を も対 象 とす る貿易 制 限 の緩 和 と平 等待 遇 の保 証 を要 求 し、 そ の代 償 と して 高 率 保護 関税 に依 拠 して 存 続 して い る弱小 産 業 の諸 企 業 へ の保 護 を 削減 し、 多 角 的 貿 易 シ ス テ ム の 再 建 に よ る世界 とア メ リカ の貿 易 の 回 復 とこれ に よ る国 内経 済 の復 興 を果 た して い くこ とが 、基 本 方 向 と して確 定 す る こ とに な る。 この よ うに、 貿易 政 策 の転 換 は、 内 部成 長 型=国 内市 場 依 存 型 とい うア メ リカ 国 民 経 済 の もつ特 質 と世 界 市 場 連 関 に 占 め るそ の 中 軸 国 と して の地 位 に照 応 して遂 行 され た の で あ る。 1934年 互 恵通 商協 定 法 の成 立 を起 点 とし、 ア メ リカ は伝 統 的 な高 率保 護 関税 政 策 か ら貿 易 自由化 の方 向 へ と180度 の 政 策転 換 を遂 げ て い る。 「第 五 章 国務 省 に よ る互 恵 通 商政 策 の展 開 と矛 盾 の 内 包」で は、 ハ ル国 務 長 官 や セ イ ア ー 国務 次 官 補 の 互 恵 通商 政 策 にっ いて の問題 把握 と政 策 志 向 を検 討 した 。協 定 関 税 と無 条 件 最 恵 国待 遇 の原 則 との結 合 が 互 恵通 商政 策 の核 心 を なす もの で あ っ た が、 国 務 省 の 立場 に は 後 者 の原 則 を よ り重視 す る傾 向が 看 取 され る。 そ の意 味す る もの が 何 か を 明 らか に しつ つ 、 同政 策 が孕

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む矛 盾 点 を指 摘 して い く。 〕 ハ ル の不 況 原 因認 識 に よれ ば、 各 国 の 「経 済 的 ナ シ ョナ リズ ム」 の政 策 が 国 際貿 易 を崩 壊 させ 、 これ に よって 各 国 にお け る生 産 と消 費 の均 衡 が破 壊 され て各 国 経 済 は崩壊 し、 その結 果 、 ア メ リカの 外 国貿 易 が 減 少 した た め、 国 内 で過 剰 生産 と失業 問題 が 顕 在 化 した とされ る。 した が っ て互 恵 通 商政 策 導 入 の 政 策 的 意 図 は、工 業 製 品 と農 産 物 の余 剰 の 輸 出 を促 進 し、過 剰 生産 と失 業 問題 を解 決 す る こ とにあ っ た。 ア メ リカの輸 出 貿易 を拡 大 す る に は、 国 際貿 易 の 回復 に よ る各 国 経 済 の復 興 が必 要 で あ る。 した が っ て 同政 策 ゐ方 式 として 、互 恵 原 則=双 務 主 義 と平 等 原 則=多 角 主 義 の両 立 が 図 られ た。 同政 策 の実 施 期 に お いて は、 ア メ リカ 貿易 の 「三 角 的 」性 格 の認 識 に基 づ い て 、 と くに平 等 原 則=多 角 主 義 を基 礎 と した ア メ リカ の輸 出貿 易 の拡 大 と国 際 貿易 の 回復 がハ ル や セ イ アー に よっ て主 張 され る。 当 該 期 以 降 に は、 「経 済 的 ナ シ ョナ リズ ム」 の政 策 を前提 と した貿 易 求 償協 定 や為 替 清算 協 定 が 広 が りをみ せ始 め て くる ので あ り、彼 らは この よ うな双 務 主 義 の広 が りに対 し、 ア メ リカ の輸 出貿 易 の拡 大 と国 際 貿 易 の 回復 を 妨 げ る もの と して危 機 意 識 を抱 い て い た。 同政 策 の 継 続 期 にお い て は、 政 策 の継 続 を必要 とす る根 拠 と して 、 ハ ル に あ っ て は経 済 的 繁 栄 に よ る世 界 平 和 の 維 持 の 主 張 が 前面 に 出 て くる。 とはい え 、 セ イ ア ー も述 べ て い る よ うに、 排 他 的 な 特権 授 受 の政 策 に基 づ く双務 的貿 易 シ ス テ ムが 拡 大 す れ ば 、平 等 待 遇 の 政 策 に基 づ く自由 な多 角 的 貿 易 シ ス テ ム の再 建 は不 可 能 とな る。 アメ リカ の対 外 貸 し付 けの停 止 と1930年 の 関 税 引 き上 げ は、 貿 易 収 支 赤 字 と債務 の 支 払 い の双 方 の義 務 を負 う債 務 国 の国 際 収 支 を悪 化 させ 、 当該 諸 国 か ら アメ リカ へ の金 の流 出 を余儀 な くさせ て い る。 債 務 国 は アメ リカ か らの輸 入 を避 け 、 自己 の商 品 を購 入 す る国 か ら輸 入 す る と とも に、 金や 外 国為 替 を用 い ない で 国際 貿 易 を決 済 す る よ う迫 られ た。 互 恵通 商政 策 も矛 盾 点 を孕 んで いた 。 ア メ リカ の政 策 にお い て輸 出拡 大 に よる国 内経 済 の復 興 と これ に資 す る限 りで の多 角 的貿 易 シ ステ ムの再 建 とい う国 益優 先 の 志 向 が そ の 内実 を規 定 して い る限 り、 双務 的 貿 易 シ ス テ ム の構 築 を め ざす ドイ ツ との対 決 色 を強 め る と ともに、 多 角 的 貿 易 シス テ ム の再 建 は ほ とん ど不 可能 とな る。 戦 争 の みが この 限界 を突 破 す る こ とが で き る。 ア メ リカ は、第 二 次 世 界 大 戦 に よ って ドイ ツ と日本 を撃 破 し、 さ らに イ ギ リス 中心 の 帝 国 ブ ロ ッ クを弱 体 化 させ 、 その 圧倒 的 な経 済 力 を背景 として 自己 の国 益 に基 づ い て 自国 中心 の世 界 的 自由 貿 易体 制 を形 成 して い くこ とにな る。 世 界 大 恐慌 と第 二 次 世 界 大 戦 の なか か ら、 現 代 世 界 経 済 秩 序 が生 み 出 され て くる。 「国 際通 貨 基 金」 (IMF)や 「関 税及 び 貿易 に関 す る一 般協 定 」(GATT)か ら構 成 され る ア メ リカ に よ る世 界 的 自由 貿 易体 制 の形 成 はそ の原 型 を なす もの で あ った 。 「第 六 章 ア メ リカ に よ る世 界 的 自 由貿 易 体 制 の創 出 と実 業 界 」 の課 題 は、 大 恐 慌 期 に お け る貿 易 政 策 の転 換 の 歴史 的 意 味 と、GATT成 立 の歴 史 的意 味 を実 業 界 と 政 府 の立 場 に即 して 明 らか に し、 これ らを統 一 的 に把 握 す る こ とに よ って ア メ リカ に よ る経 済 グ ローバ ル化 の起 点 を確 認 す る と ともに、 そ の なか に孕 まれ た ア メ リカ的 特 質 を 究 明 す る こ とで あ る。 ア メ リカの 貿 易 政 策転 換 は、20世 紀 型産 業 構 造 へ の転 換 を推 進 した 新興 の大 量 生 産=輸 出産 業 で成 立 した大 企 業 を 中核 的 支 持 基 盤 と して 遂 行 さ れ た。 実 業 界 と国 務 省 の政 策 的 意 図 は、 互 恵通 商 協 定 法 に よっ て議 会 か ら委 任 され た大 統 領 の通 商権 限 を行 使 しつ つ 関 税 その他 の 貿易 障壁 の低 減 と無条 件 最 恵 国 待 遇 の保 証 を骨 子 とす る二 国間 の通 商協 定 の締 結 を推 進 し、 輸 出 貿 易 の拡 大 に よる国 内 経 済 の復 興 を図 る こ とに あ った 。 実業 界 や 国務 省 の 間 で は、 この こ とは無 差別 待 遇 に基 づ く多 角 的 貿 易 シ ス テ ム の復 興 に よ っ て よ りよ く果 た され う る との 認 識 が あ り、 政 策 遂 行 で は平 等待 遇 の原 則 が 重 視 され た。 したが っ て ア メ リカ にお け る貿易 政 策 の転換 は、 国 際貿 易 全 体 の復 興 へ の展 望 を も含 み、 世 界 的 自由貿 易 体 制 生 成 の萌 芽 を孕 む もの で あ っ た とい え る。 この よ うな政 策 はイ ギ リス帝 国 内へ の進 出 に は一 定 の成 果 が み

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られ るが、 割 り当て 制 や為 替 管 理 の よ うな直 接 的貿 易 制 限 を もつ 国 々 に 対 して は効 果 に乏 し く、 この点 は二 国 間交 渉 の限 界 を示 す もので あ った 。 国際 通 商 関 係 にお け る無 差 別 待 遇 に基 づ く関税 そ の他 の 貿 易 障 壁 の低 減 とい う通 商協 定 計画 の諸 原 則 は 、大 西洋 憲 章 や 相 互援 助 協 定 第 七 条 を経 て 、 多角 的貿 易 シス テ ムの再 建 を め ざす 「諸提 案 」 の なか で の 「機 構 案 」 に お いて 諸 原 則 の概 略 として具 体 化 され た。 さ らにITO憲 章 の 作成 に 至 り、 これ らの諸 原 則 が 多 角 的協 定 に適 合 す る よ う入 念 に条 文 化 され 、 そ の重 要 部 分 はGATTの 成 立 に よっ て全 世 界 に適 用 され る こ とに な った 。 「双 務 的 ・多 角 的 」 交 渉 で 、無 条 件 最 恵 国待 遇 の例 外 と して 帝 国特 恵 関税 の存 続 は 認 め られ た ものの その 引 き上 げや 新 設 が 禁 止 され、 直 接 的 貿 易制 限 の一 般 的廃 止 も約 束 され た の で、 世 界 貿易 の 多角 的 シ ス テ ム の復 興 へ の途 が 開 か れ た の で あ る。 この意 味 に お いて 、GATTの 成 立 は戦 後 の 世界 的 自由貿 易 体 制 の起 点 を なす もので あ り、 その支 持 基 盤 は、 互 恵通 商政 策 を その 導 入 以 前 か ら一 貫 して支 持 して きた 国 際化 した大 企 業 で あ った 。 ジ ュ ネ ー ヴ会 議 に向 けて の実 業 界 の 立場 は 「ア メ リカの シ ス テ ム(=自 由企 業 体 制)に 基 づ く世 界 経 済 の拡 張 」 で あ った 。 そ れ故 に、 この 「アメ リカ の シ ス テ ム 」が 、戦 後 ア メ リカ に よっ て推 進 され る経済 グ ローバ ル化 の根 幹 に据 え られ て い くの で あ る。 「自 由企 業体 制 」 とそ の拡 延 に基 礎 を置 き、 貿 易 ・為 替 や投 資 の 自 由化 と、 これ らを確 保 す るた めの 自国 の基 準 に基 づ く平 等 な競 争条 件 の実現 をめ ざす 現代 世 界 経済 秩序 の原 型 が、こ こに生 み 出 され て くる こ とにな る。 な お、 「補 論 一 アメ リカ貿 易 政 策 史研 究 か らみ たハ ル ・ノー ト」 で は、 セ イ ア ーの 無 差別 待 遇 の原 則 を 重視 す る 「『無 条 件 』最 恵 国 政 策 」論 とア メ リカ の圧 倒 的経 済 力 を武器 とす るハ ル に よ る五原 則 に基 づ く 「開放 的貿 易 シス テ ム 」 の提 唱 に基 づ い て 、同 「ノー ト」が、 日本の 「大東亜共栄圏」構 想 と真 っ向か ら対 立 す る もの で あ る こ とを明 らか にす る とと もに、 ア メ リカ の極 東 政 策 の総 決 算 に留 ま らず、 ア メ リ カ を 中心 とす る 「ア メ リカ の シス テ ム」 に基 づ く世 界 的 自 由貿 易体 制 が形 成 され て くる とい う世 界 史 的 文脈 の なか で その 歴 史 的意 味 を把 握 す べ きで あ る こ とが 指 摘 され て い る。 「後 記 」に お い て は 、現 代 の ア メ リカ 貿 易政 策 とわが 国 の 位 置 につ い て本 研 究 の成 果 か ら許 され る範 囲 で 簡 単 に 言 及 し て い る。GATTを 発 展 的 に 解 消 し1995年1月 に発 効 した 「世 界 貿 易 機 関 」(WTO)の 設 立 協 定 に っ い て は 、 ア メ リ カ は 自 国 の 基 準 に 基 づ く知 的 財 産 権 の 保 護 の 強 化 の 実 現 に 成 功 し て お り、 こ の 点 が 最 も重 視 さ れ る べ き こ と、 い わ ゆ る ア メ リカ 的 価 値 観 は 「自 由 企 業 体 制 」 に 基 礎 を 置 き 、 こ れ に 適 合 的 な 「価 値 体 系 」 と し て 存 続 して い る こ と 、 ア メ リカ 型 「民 主 主 義 」 の 本 質 に つ い て は 、 選 挙 は 富 者 が 権 力 を 買 う 、 い わ ば 権 力 の 「商 品 化 」 の 過 程 で あ る こ と、 ア メ リカ こ そ が 本 物 の 資 本 主 義 国 で あ り、 そ の 人 々 は 「ビ ジ ネ ス ・ピ ー プ ル 」 で あ る こ と、 こ れ らの 諸 点 は 本 研 究 に お い て 実 業 界 の 立 場 を 軸 心 に 据 え た こ と と深 く関 わ っ て い る こ と、 ア メ リカ に よ る経 済 グ ロ ー バ ル 化 の 進 展 の うち に あ っ て 、 日本 は い ま、 従 来 どお りア メ リ カ に 依 存 ・従 属 、 さ ら に は 隷 属 して い くの か 、 あ る い は 自 立 へ 向 か う芽 を 育 て る方 向 へ い くの か とい う重 大 な 選 択 を 迫 られ て お り、 後 者 へ の 道 は ア メ リ カ に よ っ て 厳 し く妨 げ られ て い る こ と、 同 グ ロ ー バ ル 化 が この ま ま 進 行 す れ ぼ 、 わ が 国 社 会 の 崩 壊 へ の 道 に 通 じ て い る こ と等 を 論 じ て い る。

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

本 論 文 は、6章 か ら構 成 され て い る。 本 論 文 は、 建 国 以来 保 護 貿 易 制 を基 調 として 、関 税 政 策 を財政 収 入 と結 びつ けて きた ア メ リカ が、 第

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一 次 世 界 大 戦 前 に 自由 貿 易政 策 へ と転 じ、 それ を踏み台 として1934年 の無差別 ・平等 の互恵通商政策 を 採 用 して い くこ と、 この 巨大 な政 策 転換 の基 盤 をな した実 業 界 の利 害 とその 実 態 を解 明 す る こ とを課題 と して い る。 その た め 、史 料 的 に は議 会 史 料 は も とよ り、 膨 大 な公 文 書 史 料(企 業 ・業 界 団 体 よ り国務 省 宛 書 簡 ・文 書 等)や 産 業 ・貿 易 統 計 を収集 し、 これ を分 析 して い る。 まず 、 第1章 一前 史 一19世 紀 末 以 降 の アメ リカ貿 易 政 策 とそ の特 質 一。 こ こで は、19世 紀 末 か ら20世 紀 初 頭 の アメ リカ の産 業 ・貿 易構 造 の展 開 が分 析 され 、20世 紀 初 め に はそ の構 造 が、 重 工 業 主 導 の先 進 工 業 国 型 へ と転換 した こ と、 それ が輸 出 市場 の拡 大 を求 め る政 策 志 向 を生 み 、 関税 率 の大 幅 引 き下 げを 内容 とす る1913年 関税 法 の採 用 を促 して ゆ く歴 史 過 程 が 考 察 され て い る。 そ の なか で 建 国 史 上 は じめ て 所 得 税 導 入 が 行 わ れ る こ とで1913年 関税 法 が、 財 政 収 入 確 保 の 目的 を常 に 随伴 して き た アメ リカ 関税 政 策 史 上 、 画期 的 な 関税 改 革 で あ った こ とが解 明 され て い る。 次 い で 第2章 「第 一 次 世 界 大 戦 後 の高 率保 護 関税 政 策 の 復 活 ・強化 と産 業 界 」 で は、 第 一 次世 界 大 戦 か ら1929年 恐 慌 前 後 まで の高 率保 護 関税 体 制 へ の復 帰 の過 程 と産 業界 の 立場 、 政 策 志 向が分 析 され て い る。 当 該期 の高 率 保 護 関 税 、1922年 関税 法 、1930年 関 税 法 設 定 へ の転 換 を迫 っ た もの は、鉄 鋼 業 、 綿 工 業 、 羊 毛工 業 、新 興 化 学 工 業 そ して農 民利 害 で あ った 、 と筆者 は 結論 づ け、 共 和 党 政 権 が保 護 関税 政 策 と報 復 関税 制 度 そ して無 条 件 最 恵 国待 遇 制 度 を使 い分 けつ つ 、一 方 的、 強 圧 的 に輸 出 拡大 政 策 に うっ て 出 た こ とを解 明 して い る。 同時 に 、 この高 率 保 護 関 税 政 策 下 にお い て新 しい ア メ リカ の産 業 構 造 を リー ドす る部 門 と して 自動 車 産 業 が発 展 した こ とを産 業 部 門分 析 に よっ て 明 らか に して い る。 この高 率 保 護 関税 の客 観 的効 果 は、 特 に この 自動 車 産 業 に とって は、輸 入 の抑 制 が ア メ リカへ 輸 出 す る国 々 の購 買 力 を低 下 させ 、 そ う した 国 々 の債 務 支 払 い能 力 を限 定 した こ と、 同 時 に ア メ リカ の輸 出産 業 へ の報 復 関 税 の設 定 を結 果 した こ とで も っ とも不 利 に作 用 した こ とが結 論 づ け られ て い る。 この 時期 、 世 界 市 場 関 連 で は、 ア メ リカ は債 務 国 か ら世 界 最 大 の債 権 国 へ と転換 して お り、 イ ギ リス に代 わ っ て第 一 次 世 界 大 戦 前 の多 角 的貿 易 ・決 済機 構 を主 導 す る使 命 を帯 び て い た に もか か わ らず 、 保 護 関税 政 策 の採 用 が 、 この 多角 的貿 易 ・決 済機 構 を崩 壊 させ る強 力 な一 因 をな した こ とが指 摘 され て い る。 第3章 「大 恐 慌 期 にお け る貿 易 政 策 転 換 の 中核 的 推進 主 体 」 で は、1929年 世 界大 恐 慌 の過 程 で 、 高 率 保 護 関 税 体 制 の廃 棄 と貿 易政 策 転 換 を求 め る強 力 な 利害 が前 面 に 出 て くる こ とが 明 らか に され る。 それ は、 国 内市 場 を上 回 る過 剰 生産 能 力 を有 す る に到 っ た 自動 車 産 業 で あ り、彼 らの 「輸 出市 場 拡 大 」 の 利 害 が 最 終 的 に高 率保 護 関税 体 制 の廃 棄 、 互 恵 通 商政 策 採 用 へ の主 導 的 なイ ンパ ク トとな った こ とが 解 明 され て い る。 こ こで は、統 計 資 料 に依 拠 した産 業 ・貿易 構 造 の分 析 だ けで な く、 当該 期 に お け る 自動 車 産 業 と国務 省 との連 携 を裏 付 け る数 多 くの原 史料(企 業 ・業 界 団 体 よ り国務 省 宛書 簡 ・文 書 等)が 提 示 され る と とも に、何 よ りも 自動 車 産 業 の 現実 的利 害 が 同時 代 史 料 を使 って 明 らか に され て い る。 その現 実 的 利 害 とは、 国 内 市場 を横 溢 す る 巨大 な 生産 力 を 背景 に、 何 よ りも輸 出 市場 を拡 大 す るた め に、輸 入 関 税 率 の引 き下 げ と農 産 物 輸 出の 促 進 を支柱 と して、 保 護 関 税 を要 求 す る弱小 産 業 切 り捨 て を図 ろ う と す る ピ ッ ク ・ビジ ネ ス、 自動 車 産 業 の 利 害 で あ り、 それ が 大 統領 権 限 の も とで 国務 省 が 推 進 した 互 恵通 商 協 定 とその延 長 の政 策 に貫 徹 して い た と論 者 は み て い る。 す なわ ち この利 害 こそが 、 無 差 別 ・平 等 の 互 恵 通 商 政策 を世 界 市場 に対 して 押 し出 しう る中核 的 な推 進 主体 で あっ た こ とが解 明 され て い る。 第4章 「貿 易政 策 転 換 を め ぐる実業 界 と政 府 及 び議 会 との関係 」 で は 、大 恐 慌 を契 機 に崩壊 した 多角 的 貿 易 ・決済 シ ス テ ム の 中で 、 この新 興 の ア メ リカ の ビ ッ グ ・ビジ ネ ス が いか な る政 策 要 求 を民 主 党や 議 会 そ して政 府 に対 して突 きっ けて い っ た の か を 同時 代 史 料 を駆 使 して解 明 して い る。 この 章 の分 析 の 白眉 は、 貿易 政 策 論 争 の分 析 で あ り、 そ れ ぞ れ の立 場 や 利 害 、政 策 志 向 が丹 念 か っ 実 証 的 に跡づ け られ て い る。 こ こで は多 数 派 で あ る 自動 車産 業 ・政 府=国 務 省 ・民主 党 が、 輸 出産 業 主 導 の輸 出拡 大 に よ る

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国 内景 気 の回 復 、 雇用 の拡 大 、 農 産 物 輸 出 の 拡大 とい う一 連 の政 策 効 果 を生 み 出す 政 策 論 理 、並 び に そ れ を実 現 す る手 段 と して の1934年 互 恵 通 商協 定 法 とい う大 統 領 府=国 務 省 の 時 限つ き の無 差 別 ・平 等原 則 の通 商 政 策 が もつ世 界 史 的意 味 が 強 調 され て い る。 また この3年 時 限 の協 定 法 の 延 長 を め ぐる政 策 論 争 もフ ォ ロー され て い る。 論 争 当事 者 の 対 立 す る主 張 を裏 付 け る史料 は過 不 足 な く、 考 察 、 分析 され て い る。 この よ うな アメ リカ の1934年 互 恵 通 商協 定法 の展 開 は、 何 よ りも内部 成 長 型 、 国 内 市 場依 存型 の アメ リカ経 済 の特 質 が 、世 界 市 場 の多 角 的 な 市場 連 関 を通 して の み発 展 しう る とす る確信 が その基 礎 に あ った か らこ そ可 能 とな っ た こ と。 この確 信 は、第 一 に、 三 角 貿 易 の 伝統 を もつ ア メ リカ の 経験 と有 機 的 に関 連 して い た こ と、 そ して 第 二 に将 来展 望 として は、 清 算 協 定 や 双務 取 引 さ らに は 自給 自足 圏 を志 向 す るブ ロ ッ ク経 済 志 向 の英 国 、 わ けて も ドイ ツ とは決 定 的 な対 抗 関 係 を構 成 せ ざ る を得 ない とす る基 本 認 識 が 政 府 部 内 に存在 して い た こ とを も解 明 して い る。 第5章 「国務 省 に よ る互 恵 通 商 通 商 政 策 の展 開 と矛 盾 の 内包 」 は、1934年 互 恵 通 商 協 定 の政 策 主体 と な った 政 府 、 国務 省 の代 表 で あ るハ ル 国務 長 官 や セ イ ア ー 国務 次 官補 の世 界 市 場 認 識 や 政 策 意 図 が彼 ら の演 説 や 議 会 で の 証 言 を 中心 に分 析 され て い る。 こ こで は、 大 恐 慌後 の 経済 政 策 分 析 の重 点 が研 究 史上 ニ ュー デ ィー ル 政 策 にお か れて き たの に対 して 、互 恵通 商 協 定 政 策 とい う対 外貿 易 政 策 へ の転換 の 意 味 が十 分 に明 らか に され て こなか った こ とへ の批 判 が 論 者 の 分 析 に精 彩 を 与 え て い る。 こ とにハ ル や セ イ ア ー の政 策 構 想 は、 単 に大 恐 慌 後 の短 期 的 な 景気 回復 策 と して で はな く、無 差 別 ・平 等 の 世 界 経 済秩 序 の形 成 を展 望 し、 多 角 的貿 易 関 連 の回 復 に よ る 「世 界 平 和 」 の実 現 を意 図 す る もので あ っ た こ とが 明 ら か に され て い る。 第6章 「アメ リカ に よる世 界 的 自由 貿 易体 制 の創 出 と実 業 界 」 にお い て は、 国 際 通 貨基 金(IMF)お よび関 税 及 び貿 易 に関 す る一 般 協 定(GATT)に よ って 構 成 され た ア メ リカ に よ る第 二 次 世界 大 戦 後 の 世 界 的 自 由貿 易体 制形 成 の歴 史 的起 点 が 、1930年 代 の互 恵 通 商 政 策 に あ り、 直接 的 に は開 戦 と同 時 に戦 後 世 界 経 済 秩 序 を展 望 して な さ れ た 「世 界 貿 易 の 多 角 的 シ ス テ ム の再 建 」 へ の政 策 構 想 が 、 いか な る基 盤 を背 景 に持 つ もの で あ っ た のか を、 特 に実 業界 との関 連 で 、 実 証 的 に明 らか に して い る。 その 際 、論 者 は特 に国 内 経 済復 興 の契 機 を多 角 的 な貿 易 シス テ ム の再 建 と輸 出産 業 に よ る輸 出拡 大 を志 向 した アメ リカ の実 業 界 の 基 本要 求 が、 自 由競 争 に基 づ く 「自由企 業 体 制 」 を全 世 界 に普 及 させ る点 に あ った と結 論 づ け て い る。 本 章 に は、 日米 開戦 の契 機 とな った 「ハ ル ・ノー ト」 に関 す る補 論 が 付 け られ て い る。 そ こで 、 論者 が強 調 して い るの は互 恵 通 商 政 策 に基 づ く多 角 的貿 易 シ ス テ ムの 全 世 界 的構 築 を望 む ア メ リカ と自給 自 足 の閉 鎖 的 ブ ロ ッ クの形 成 、 大 東 亜 共 栄 圏 を志 向 す る 日本 との基 本 的 な 対 抗 関係 の存 在 を証 明 す る史 料 と して だ けで はな く、戦 争 を い とわず 「国 際 的 な 多 角 的 な貿 易 ・決 済 体 系 」 を構 築 せ ん とす るア メ リカ の積 極 的 な意 思 表 示 が示 され た文 書 と して 「ハ ル ・ノー ト」 が 位 置 づ け られ るべ き こ と、 そ の意 味 にお い て 巨大 な生産 力 を背景 と した ア メ リカの 内 部成 長 型 ・農 工 並 進 型 の経 済 が 現代 世 界 経 済 秩 序 の 展 開 を 基 本 的 に規 定 して い る こ とを知 る た め の最 重 要 文書 で あ る と して い る。 理 論 経 済 学 の立 場 か らは 、現 代 の グ ロ ーバ リゼ ー シ ョンの構 造 や 意 味 につ い て は 、 す で に様 々 な理 論 的整 理 が な され て い る。 しか し論 者 の よ うに、 同 時代 の政 策 形 成 とその 遂行 に携 わ り、 関 係 した 政 府 、 議 会 あ るい は実 業 界 の 人 々 が残 した第 一 次 史 料 に さか の ぼ っ て膨 大 な史 実 に分 け入 り、 現 代 史 の 史 的構 造 を総 合 的 に解 明 した もの は稀 で あ っ た。 この点 に論者 の独 創 性 と最 大 の貢 献 が あ る。 よっ て本 論 文 の 提 出者 は博 士(文 学)の 学位 を授 与 さ れ るに充 分 な資 格 を 有 す る もの と認 め られ る。

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