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小児がんの子どもの初発時での入院経過における家族の状況に関する文献的研究

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89. 日本小児看護学会誌 Journal of Japanese Society of Child Health Nursing Vol.30 p.89-97, 2021 doi: 10.20625/jschn.30_89. 子どもを看護するにあたり、親は不可分な存在で ある。親は、子どもの発病と入院により、心理的動 揺と生活の変化、経済的負担など多くの影響を受け る。しかし、子どもが入院し闘病するために、親は 欠かせない存在である。Bowlby(1951/1967)の研 究より、子どもは入院により親と離れることで、情 緒面に影響を及ぼす可能性があると考えられた。そ して英国の保健省は、1959 年に子どもの入院に親の 付き添いをすることを奨励し、親の付き添いにより 子どもへの情緒面への影響が少ないことを伝えた. (Ministry of Health, 1959)。加えて、Brazelton (1984/1989)は、「両親を病室に受け入れ、子どもの 情緒的欲求に関する積極的なプログラムを組むこと は、子どもへの家庭からの分離によっておこる心理 的影響を、潜在的なものまでふくめて軽減しようと するものである」(p. 203)と述べている。現在、我. が国においても子どもの入院では、子どもの年齢や 病状、家族の希望にて付き添いを認めている(竹内, 内田,白井他,2019)。 一方、付き添いをする家族についてみてみると、 現在の我が国は核家族化が進み、子どもの入院に伴 い親が付き添うことで、親や家庭に残されたきょう だいの生活環境の変化、心理や身体への影響などが 報告されている(太田,小野,太田他,1992;新家, 藤原,2007;梅田,2011)。病気で入院・治療を受け る子どもの闘病意欲を高めるために家族の存在は大 切であり、家族もそのことはよく理解している。し かし、病院と家庭という二つの生活に親や家庭に残 されたきょうだいの負担が生じている。現在、子ど もの入院の短期化がなされ、病気の子どもの入院に よる子どもやその家族の負担は軽減しているように も思う。しかし、子どもの疾患によっては長期入院 もやむを得ない場合もあり、子どもの長期入院によ る家族の負担が大きいことも報告されている(下山,. Ⅰ.はじめに. 小児がんの子どもの初発時での入院経過における 家族の状況に関する文献的研究. Literary review of the condition of the nuclear families of hospitalized childhood cancer patients in the incipient disease stage. 小代 仁美*1. Hitomi Ojiro*1. 本研究は、小児がんの初発で、入院、治療を受ける子どもの付き添いをしている核家族を中心に、入院から退院までの時 間的経過における家族の状況を明らかにすることを目的とした。「小児がん」、「家族」、「母親」、「父親」、「きょうだい」、. 「付き添い」をキーワードに医学中央雑誌、CiNii にて、会議録を除外した国内文献に絞り、27 件の文献を抽出した。結果、 家族の状況は「診断から初回治療終了時期」、「初回治療終了後から退院時期」の病期で状況が異なっていた。入院時の家族 は、親の心理的混乱がきょうだいへと波紋が広がっていた。この時期は、特に家族の心理面への援助が必要である。初回治 療終了後は、子どもの世話と家事、きょうだいの世話による親の心身の疲労と、退職などによる経済的負担が生じていた。 加えて、きょうだいの登園・登校拒否の問題もあった。この時期は、特に親の心理・身体的負担と経済的負担への援助が必 要である。. キーワード: 小児がん、初発、入院経過、核家族、付き添い Key Words: childhood cancer, incipient disease, hospitalization, nuclear families, attending. 資 料. 抄 録. 受付:2020 年 7 月 18 日 受理:2020 年 12 月 7 日 *1 奈良県立医科大学医学部看護学科/Nara Medical University Faculty of Nursing, School of Medicine. 90. 日本小児看護学会誌 第 30 巻(2021). 2011)。 加えて、小児がんの子どもの母親の心理として、 病気の告知における衝撃や混乱、治療期間中におけ る気分の落ち込みなど、小児がんの子どもの病期に おける母親の心理状態の変遷がある(木浪,三国, 萬,2010)。小児がんの治療は長期に及び、入院期間 も長い。小児がんの子どもの家族は、子どもが発病 したことの動揺に加えて、病院と家庭の二つの生活 による心身への負担がある。このことより、小児が んの子どもの母親を含む家族にも病期に伴う心身の 負担や生活における変遷があるのではないかと考え た。また、子どもが発病して入院・治療を受ける初 発の時期は、特に子どもや家族に及ぼす影響が大き いと考えた。 そこで、小児がんに罹患した子どもの家族が、子 どもの入院経過のどの時期にどのような影響を受け ているのか、小児がんの初発で、入院、治療を受け る子どもの付き添いをしている核家族を中心に、入 院から退院までの時間的経過における家族の状況を 明らかにしたいと考えた。そのことで、家族への負 担を早期に把握し、看護へとつながると考える。. 研究目的は、小児がんの初発で、入院、治療を受 ける子どもの付き添いをしている核家族を中心に、 入院から退院までの時間的経過における家族の状況 を明らかにすることである。. 親:小児がんの子どもの主たる養育者、または父親 と母親とした。 家族:本研究においては、核家族に焦点を当てるこ ととしたため、小児がんの子どもと同居している主 たる養育者または父親と母親、小児がんの子どもの きょうだいとした。. 小児がんの初発で、入院、治療を受ける子どもの 付き添いをしている核家族を中心に、入院から退院 までの時間的経過において家族がかかえる問題は異 なると考える。小児がんの子どもの家族が、子ども. の入院経過のどの時期にどのような問題をかかえて いるのかを具体化することで、家族がかかえる問題 を早期に把握し、家族のかかえる問題に対して、適 時にかかわることができると考えた。家族への適時 なかかわりにより、家族の健康の維持増進やエンパ ワーメントを高めることにつながると考える。そし て家族が、健康でエンパワーメントが高まること で、子どもの療養の世話ができ、助けとなり、とも に闘病を乗り越えていくことができると考えた。本 研究はその第一段階としての研究である。. 1.対象文献 本研究においては、生活様式、文化の違いを考慮 して国内文献に絞って検討した。また、1960 年代よ り小児がん治療が著しく進歩してきた。治療方法の 改良に伴い、子どもの入院経過が変わるが、小児が んの長期の治療は現在も同様である。また、小児が んの子どもの入院による家族への影響も変化すると 考えられ、がんのある子どもの親への影響に関する 研究は、1970 年代に米国で発表されている(Drotar, Baskiewicz, & Lrvin, et al., 1975)。我が国での研究 の経緯を知る意味においても、検索の期間指定をせ ずに 1964 年~2019 年までとした。文献検索の時期 は2019年12月である。よって、医学中央雑誌Web、 CiNii を用いて、Keyword を「小児がん」、「家族」、. 「母親」、「父親」、「きょうだい」、「付き添い」とし、 会議録を除外して検索した。検索結果より、医学中 央雑誌 Web 297 件、CiNii 50 件が抽出された。ま た、論文の抄録より、小児がんの初発で入院経過に おける家族の現状が記述されている 23 件の論文を 抽出した。さらに、文献の漏れを防ぐためにハンド サーチを行った。また、収集した文献の選定基準を 小児がんの初発の子どもの家族で、付き添いをする 核家族を中心に、入院から退院までにおける家族の 状況が結果として報告されているものとした。その 結果、26 文献を分析対象とした(表 1)。. 2.分析方法 文献にて、小児がんの子どもの初発時の入院で付 き添いをしている核家族の状況に関する結果の記述 を抽出し、小児がんの子どもの入院から退院までを 経時的にまとめた。また、分析対象とした文献は、. Ⅱ.研究目的. Ⅲ.用語の定義. Ⅳ.研究の意義. Ⅴ.研究方法. 91. 原典が入手できる文献のみを対象とし、分析におい ては研究者の意図を損なわないよう正確に反映し、 引用・参照した文献を明示した。 研究の対象者については、家族 3 件、親 6 件、母. 親 7 件、父親 3 件、きょうだい 7 件であった。また、. Ⅵ.結 果. 表 1 分析対象とした文献一覧. 研究対象 文献番号 タイトル 著者 書誌事項. 家 族. 1 入�院中の小児がん患児に付き添う家族のQOLに 関する調査. 遠藤房子,塩飽仁,寺島美紀子 他 北日本看護学会誌,2(1),1-10. 1999. 2 小�児がん患児と家族に対する多角的な心理・社会 的援助. 高宮静男,松原康策,川本明 他 心身医,44(1),52-58.2004. 3 小�児がんと診断されてから現在までの家族関係の 変化. 山下早苗,城下智世,中原基子 他 小児がん看護,2,40-48.2007. 親. 4 小�児がんで入院中の子どもを持つ両親の心理状態 とコーピングの特徴. 梅田英子,藤村まゆみ,山口佐代 子 他. 大阪大学看護学雑誌,11(1)11- 17.2005. 5 小�児がん患児の親の問題状況と援助関係の法則性 とサポート体制. 森美智子 小児がん看護,1,25-34.2006. 6 小�児がん患児の親の状況危機と援助に関する研究 (その 1)―闘病生活により発生しる状況危機要 因―. 森美智子 小児がん看護,2,11-25.2007. 7 小�児がん患児の親の状況危機と援助に関する研究 (その 2)―闘病過程における状況危機と援助 ニーズ―. 森美智子 小児がん看護,2,27-39.2007. 8 小�児がん経験者の子どもを持つ父親と母親の語り からみる療養生活構築のプロセス. 田邉美佐子,瀬山留加,神田清子 北関東医学会誌,58,35-41. 2008. 9 小�児がん患児をもつ母親,父親の外傷後ストレス 症状―出来事インパクト尺度改訂版(IES-R)に よる解析―. 高宮静男,松原康策,川添文子 他 小児がん,47(1),60-67.2010. 母 親. 10 小�児がん患児の入院初期段階における母親役割の 変化と家族の闘病体験形成プロセス(第 1報). 水野貴子,中村菜穂,服部敦子 他 日本小児看護学会誌,11(1), 23-30.2002. 11 小�児がん患児の治療の安定段階における母親役割 の変化と家族の闘病体制維持プロセス(第2報). 水野貴子,中村菜穂,服部敦子 他 日本小児看護学会誌,12(1), 8-15.2003. 12 入�院中の小児がんの子どもをもつ母親のコーピン グと状況要因および心理的ストレス反応との関 連. 藤原千恵子 日本小児看護学会誌,13(1), 40-45.2004. 13 小�児がん患児の闘病体制形成・維持段階における 母親の心理的プロセス. 服部淳子,山本貴子,岡田由香 他 愛知県立看護大学紀要,13,1-8. 2007. 14 幼�児期の小児がん患児の付き添う母親が父親に抱 く思い. 杉野健士郎,前田孝彦,白井徳子 三重県立看護大学紀要,14, 33-39.2010. 15 初�発小児がん患児をもつ母親への初回化学療法に 関する看護介入の検討. 音美千子,大塚美穂,西岡沙記 他 看 護 研 究 発 表 論 文 集,42, 65-68.2010. 16 小�児がんにより長期入院している小児の母親が認 識する父親の役割と変化と思い. 江里文,大町いづみ,森藤香奈子 他. 長崎大学保健学研究紀要,23(2), 15-21.2011. 父 親. 17 小�児がん患児の発症前後での父親の生活と役割意 識の変化. 橋爪永子,杉本陽子 日本小児看護学会誌,15(2), 46-52.2006. 18 小�児がん患児の父親が困難な状況を受け止めてい くプロセス. 納富史恵,兒玉尚子,藤丸千尋 日本小児看護学会誌,20(3), 59-66.2011. 19 小�児がん患児の父親が患児とのかかわりに抱く思 い―小児がん患児の父親とその他の長期入院を 要する患児の父親の比較―. 入江亘,塩飽仁,鈴木祐子 他 小児がん看護,7,28-37.2012. き ょ う だ い. 20 小�児がん患児のきょうだいの変化ときょうだい関 係に関する研究. 早川香 看護研究,30(4),47-46.1997. 21 環�境変化への適応―小児がんの同胞をもつきょう だいの体験―. 戈木クレイグヒル滋子 日本保健医療行動科学会年報, 17,161-179.2002. 22 小�児がん患児のきょうだいにおける心理的問題の 検討. 小澤美和,泉真由子,森本克 他 日本小児科学会雑誌,111(7), 847-854.2007. 23 小�児がん患者の同胞への説明の現状―病状説明の ツール作成についての検討―. 大力久美子,岩崎麻利子,日野ゆ かり 他. 大阪府立母子保健総合医療セン ター雑誌,27(1),17-20.2011. 24 幹�細胞移植ドナー候補となったきょうだいに対す るトラウマの視点からの心理的評価. 東飛鳥,小林明雪子,小澤美和 他 日本小児心身医学会雑誌,22(1), 63-68.2013. 25 小�児がん患児のきょうだいへの母親のかかわり― きょうだいと母親の思いとの関連―. 橋本美亜,藤田あけみ 保健科学研究,8(2),35-44, 2018. 26 小�児がんの患児のきょうだいが抱えた困難とその 意味づけ―ライフストーリーで語られたことか ら―. 堀井まゆ,細渕富夫 埼玉大学紀要 教育学部,67(2), 221-240.2018. 92. 日本小児看護学会誌 第 30 巻(2021). 研究対象者の小児がんの子どもの病名について記載 されていたのは 12 件、その内、血液造血器腫瘍 66%、固形腫瘍 14%、その他(不明を含む)20%で あった。研究デザインは、質的研究 14 件、量的研究 11 件、事例研究 1 件であった。 小児がんと診断された初発時の子どもが、入院し て退院するまでの家族の状況は、「診断から初回治 療終了時期」と「初回治療終了後から退院時期」に 分かれた(図 1)。以下、二つの病期における小児が んの子どもの家族(以下、家族)の状況を述べる。 なお、初回治療とは、小児がんの初発時に最初に受 ける治療とした。. 1.「診断から初回治療終了時期」の家族の状況 この時期は、小児がんの子ども(以下、子ども) の診断から入院直後の家族の状況と入院直後から初 回治療終了時の家族の状況に分かれる。 1)診断から入院直後の家族の状況. 家族、特に親は入院前に告知された子どもの病名 に、心理的ショックを受け、不眠が続く日々を過ご. しながら子どもの入院準備をしており、入院直後の 親は心理的にも身体的にも疲労している状態であっ た(文献 6,15,18)。加えて、親は心理的に混乱状 態にあり、子どもの病気の受容や理解が十分伴って いない(文献 10,15,18)。そして、突然に起こっ た子どもの病気と入院で親は、現実感がないような 状態で医師からの説明を受け、負担を感じながら子 どもの治療への意思決定の参加をしていた(文献 2, 13,15)。子どもが入院してすぐに治療が開始され、 親は子どもの闘病の世話や病棟の規則に沿った生活 などが始まり、目まぐるしい状況の変化に適応する 努力をしていた(文献 10)。そして親は、子どもの 付き添い、家事、子どものきょうだい(以下、きょ うだい)の世話などの役割を急場凌ぎで調整してい た(文献 10,16,17)。 子どもには主に母親が付き添いを行い、父親が家 庭に残っているきょうだいの世話、家事などを行う 役割となっていたことが多く報告されていた(文献 8,10,11,14,16,17)。そして、母親の家庭役割 である家事やきょうだいの世話などの代行を父親が. 図 1 子どもの入院経過における家族の状況. 93. 担うこととなり、サポートする第三者の検討を親自 身で行っていた。家庭役割をサポートする第三者 は、祖父母、親の姉妹が多かった(文献 6,8,10, 16,21,24)。家庭役割のサポートが得られない場合 は、父親が仕事を早退する、あるいは時間調整でき る部署への配置換えをするなど、職場との調整をし てきょうだいの保育園または幼稚園の送迎などの育 児や家事という役割を担っていた(文献 10,14, 16,17)。父親は、家族内での父としての役割は、家 計を支える・収入を得ることと子どもの教育である と考えており、子どもの発病前後ともその考えは変 わっていなかった(文献 17)。そして、急場凌ぎの 役割調整は、きょうだいの世話をどうするかを優先 的に考えていた。特に困難が生じたのは、きょうだ いが幼児期以下の年齢で、日常生活での身の回りの ことがひとりでできず、大人の世話を必要とするこ とであった(文献 10,26)。そして、親の付き添い 生活と家庭に残った親ときょうだいの生活を整える 対策は、同時期に行われていた(文献 10)。 一方、きょうだいは、子どもの病気に関する情報 を得たのは親からがほとんどであった(文献 20, 21,23)。しかしその時期は、発病直後、闘病中など さまざまであったが、子どもの発病直後における きょうだいへの病気の説明は、病名や治療の副作用 が主であった(文献 20,21,23)。また、きょうだ いへ、子どもの病気に関する情報提供が十分でない 場合もあった。親自身が、子どもの病気に対して十 分受容できておらず、心理的に混乱状態であったた め、きょうだいへの説明まで余裕がなかったことや 親自身がよく理解できていないのにきょうだいにど のように話したらよいかわからないこと、きょうだ いの年齢が低いため説明してもわからないだろうと いうこと、話さなくても自然にわかるだろうと思っ たことなどが理由であった(文献 20,21,23)。ま た、子どもに病名告知をしていない場合は、きょう だいから子どもに伝わることを心配して、親はきょ うだいへも子どもの病気に関する情報提供はしてい なかった(文献 21)。親は、きょうだいに子どもの 病気のことを伝えるか否かは、きょうだいの年齢を 考慮しており、子どもの発病時のきょうだいの年齢 が 9 歳以下は伝えないという報告もあった(文献 21)。そして、子どもの病気の説明で、理解できる きょうだいの年齢は 12 歳~15 歳という報告もある. (文献 20)。またきょうだいは、子どもの病気の説明. を受けることで、落ち込む、泣き出すなど動揺、混 乱、ショックな様子ではあったが、子どもの闘病に 協力する姿勢であった(文献 21,23,25)。 2)入院直後から初回治療終了時の家族の状況. 付き添いの親(主に母親であるため以下、母親) は、心理的混乱状態ではあるが病院のシステムに慣 れることに努め、状況を受け止めることができず泣 いている子どもの傍にいなくては、という思いで闘 病の世話を始めていた(文献 3,10,11,13)。また 母親は、自身の食事や入浴が十分にできない病院で の付き添い生活よりも、子どもの闘病の世話を優先 に考えていた(文献 1,10)。そして、就業している 母親は、子どもの病気をきっかけに休職や離職をし て子どもの闘病の世話に専念している場合もあった. (文献 6,12,13)。一方、家庭にいる親(主に父親 であるため以下、父親)は、毎日の面会で子どもと の遊び、会話、食事や身体拭きなど闘病の世話を行 い、面会できない時は電話やメールにて子どもと時 間共有をする努力をしていた(文献 14,19)。そし て家族は、病院と家庭と離れた生活で時間的余裕が ない状況においても、母親を中心に可能な限り電話 での情報交換や面会することで一緒に過ごせる時間 を作り、家族が一丸となって子どもの病と闘うため に、つながる努力をしていた(文献 3,10,16,17, 19,20,25)。 初回治療時期において、入院直後に生じていた親 の心身疲労は軽減することなく続いていた。心理的 疲労の原因は子どもの病状の心配に加えて、きょう だいの心配もあった(文献 1,10)。きょうだいが乳 児の場合は、母親が父親の休日に、昼間だけ付き添 いを交代して、きょうだいの育児をしていた(文献 10)。一方、身体的疲労については、母親の子どもの 闘病の世話や付き添い生活の疲労、父親の仕事をし ながら家庭と病院の往復やきょうだいの世話、家事 をする疲労、となっていた(文献 10,14)。 そして、きょうだいは、子どもの入院で生活環境 の変化を強いられた。きょうだいの生活環境は、親 が不在の時間帯に同居していない祖父母など親戚が 自宅にくる場合、祖父母など親戚の家に預けられる 場合、ひとりで過ごす場合、があった(文献 21)。 親から何も知らされないまま生活環境が変わるきょ うだいもいた(文献 21)。 しかし、この時期においても、家族の心身の疲労 は続いていた。母親は、治療開始とともに、病気の. 94. 日本小児看護学会誌 第 30 巻(2021). 症状、治療の副作用などに苦しむ子どもの姿を傍で 看て、子どもの身体がどのような状態になるのか予 測がつかない不安と心配で眠れない日が続いていた. (文献 10)。父親も、子どもの病気が“がん”である ことから、死への恐怖を感じながら眠れない日々を 送っていた(文献 18)。このように親の心理的負担 は、子どもが死んでしまうのではないかなど、複雑 な心理状態でストレスが高まっている、という悪い 健康状態であり、外傷後ストレス反応(Post-Trau- matic Stress Reaction:PTSR)や外傷後ストレス障 害(Posttraumatic Stress Disorder:PTSD)となる ケースの報告もある(文献 2,4,9)。また、親の PTSR は、主に子どもに付き添っている母親に多く 現れており、個人的資質、父親の支援の程度、子ど もの症状の重さによって差がみられた(文献 2)。さ らに母親は、自分自身で子どもの病気を回復に向か わせたいという強い思いがあり(文献 3,11,12)、 一方で医療従事者に助けを求める傾向があるという 報告もあり、子どもの病気の衝撃と環境の変化によ るストレスの大きさがあった(文献 4)。PTSR は、 臨床心理士による心理的援助を受けて、子どもの入 院 1 か月以内で改善傾向にあるという報告があり. (文献 2)、特に母親への多職種による援助の効果が 示唆された(文献 2,9)。. 2.「初回治療終了から退院時期」の家族の状況 初回治療終了の時期は、入院後 1 か月程度という 報告があった(文献 11,13)。化学療法による治療 を受ける子どもの親は、初回の化学療法が終了する 頃になると、診断時の心理的ショックから立ち直 り、心理的混乱状態は緩和してくる(文献 13,15)。 そして、治療の経過や治療により起こる症状が理解 できるようになり、子どもに向き合えるようになる. (文献 11,13)。 病状が安定した子どもの親は、治療による症状の 変化が予測できるようになることで、子どもの闘病 の世話に余裕がもてるようになる(文献 11,13)。 そして母親は、短時間の帰宅、父親と付き添いの交 代で帰宅、子どもの外泊で家庭に帰宅することで、 家事やきょうだいの育児ができるようになる(文献 11)。一方、治療が順調に進まない、病状が悪化した などと、期待に反する治療経過となってしまった子 どもの親は、心身の疲労が強い状況ではあるが、子 どもの病状に適した闘病の世話ができるようになる. (文献 6,13)。しかし、子どもの病状が安定してい る、安定していないにかかわらず子どもの長期入院 により、入院期間中の親は心身の疲労が強度であ り、父親と母親の両者に差はなかった(文献 4,5, 7)。そして、親の心理的疲労の原因は、子どもの病 状の心配と学校教育、学校復帰への心配、子どもと きょうだいとの間の葛藤が多くを占めていた(文献 1,2,3,5,6)。子どもときょうだいとの間の葛藤 とは、子どもの世話に追われ、きょうだいの世話が 十分にできないことで、きょうだいに寂しい思いを させていることや、生活環境が変わったことを我慢 させていることに何もしてあげられない思いによる ものであった(文献 1,6)。 また、親の身体的疲労の原因について母親は、子 どもの闘病の世話に加えて、病院で過ごすことで自 身の食生活が不規則、睡眠時間が短く熟睡感がな い、自由な時間がない、が多大であった(文献 1, 6,7,17,20)。父親は、面会に際する自宅と病院の 往復による移動時間、家事ときょうだいの世話に追 われて時間的余裕がない状況は依然と続いており、 ひとりになれる時間が少ないなどであった(文献 7, 11,20)。 子どもの入院による家族への影響の大きさの誘因 として、親の関係性とソーシャルサポート量があっ た。父親と母親が互いのサポート力が高い場合、父 親や母親の心理面における助けやきょうだいの世 話・家事などの助けとなるソーシャルサポート量が 多い場合、家族は困難を乗り越えやすく、少ない場 合は困難度が高い。困難を乗り越える要は、母親へ の父親からの情緒面のサポートであった(文献 1, 5,6,7,8,13,14,15,16)。具体的には、父親が 毎日短時間でも子どもの面会にくること、週末など 付き添いを交代すること、母親の話を聞く、相談者 となるなど、心の支えとなり、心身の極限状況を両 者が共有し、励まし合うことである(文献 6,14, 15)。しかし、子どもの治療やきょうだいの問題など で、父親と母親の間に価値観の違いによる感情的ズ レが生じ、心身の疲労が強度でもあることから父親 と母親間の喧嘩が起こり、家族の危機的状況となる ことがある(文献 6,7)。他方では、実在モデルで あるほかの患児と母親は、親にとって最良のソー シャルサポートとなっている(文献 13,15)。また 父親は、祖父母などの支えがあったことで子どもの 病気と戦えたという連帯感を感じており、この連帯. 95. 感は母親も感じていた(文献 8,15,16)。 一方、きょうだいは、子どもの容姿の変化に衝撃 を受けて病状を心配し、子どもの闘病に協力的で、 親が傍にいない寂しさはあるものの親からの期待に 応えたい思いで我慢していた(文献 21,22,23, 25,26)。反面、子どもと面会ができないことや親に 気にかけてもらえない、親が子どものほうばかり向 いている、などの思いから孤独感や嫉妬心を抱いて いた(文献 25,26)。加えて、親と過ごす時間が少 ない、親が疲れている・イライラしており家庭内が 落ち着かないことなども含めてきょうだいは、情緒 不安定、反抗的態度、登園・登校拒否、PTSR となっ ている場合も報告されていた(文献 20,21,22, 23)。そして、きょうだいの登園・登校拒否の始まり は子どもの入院の半年以内であった(文献 15,21)。 子どもに父親と母親の注意が集中しがちであり、 きょうだいの寂しそうな表情や笑顔がなくなるなど の反応に親が気付かないことも誘因と考えられた. (文献 26)。またマイナスの変化があったきょうだい は、小児がんの子どもより年上か年齢が近いきょう だいであり、親の付き添いの有無に差はなかった. (文献 20)。また、子どもの治療過程において骨髄移 植(造血幹細胞移植)が選択される場合があり、移 植ドナーとしてきょうだいが候補となるケースがあ る。きょうだいによっては、移植ドナー探しにより 子どもの病気を知るという場合もあった(文献 21, 24)。そしてきょうだいは、移植ドナー候補となるこ とで精神的・身体的ストレスとなり、そのことがト ラウマとなって PTSD となった、という報告もある. (文献 24)。. 家族への影響は子どもの入院経過において変化し ており、子どもの病状に左右されていた。加えて、 家族への影響は、きょうだいの年齢や養育内容、親 をサポートする存在の有無によっても異なる。さら に、子どもの治療やきょうだいの世話に対する父親 と母親間の考えがマッチしているかどうか、父親と 母親がコミュニケーションをもち協力体制にあるか にもよる。そして、小児がんの子どもの初発時にお ける入院経過に伴う家族の状況は、「診断から初回 治療終了時期」、「初回治療終了後から退院時期」の 病期で異なることが明らかとなった。以下、病期ご. とに考察を述べる。. 1.「診断から初回治療終了時期」の家族 子どもの入院時、家族は心理的混乱状態にある。 親は、入院前に受けた病気の告知により、子どもが 死ぬのではないかなど不安を感じていた。一般に、 言葉から別の言葉を思い出すという言葉の連想は、 その言葉の意味と呼ばれる観念(知識や思い出)を 含んでいる(戸川,1979)。親は、“がん”という言 葉から過去に得た知識で“死”を連想している。ま た、子どもの病気を受け入れたくないなど、さまざ まな思いから混乱し、現実感がない状態である。 一方、きょうだいは、子どもの病気の説明を受け るか否かは、きょうだいの年齢、親の思いや心理状 態などによりさまざまである。しかしきょうだい は、親の普段と違う危機的な様子、子どもが家にい ないことや生活環境の変化などから、家族の異変を 感じ取っており心理的混乱状況にある。また親は、 子どもの付き添いなどから、これまでの家庭や社会 での役割を調整していく作業も同時に行っている。 加えて、我が子の治療の選択・決定への参加をしな くてはならない親の負担もある。しかし、この状況 に対して家族なりに乗り切ろうとしていた。父親と 母親は、互いに協力し、話し合いながら、子どもに とってより良い治療の選択をする努力をし、きょう だいも、親から子どもの病気の説明を聞くことで闘 病に協力する姿勢を示している。中野と野嶋(2005) は、「家族は主体的な存在であり、家族自身の力で 様々な状況を乗り越えていくことができる集団であ る」(p9)と述べている。父親と母親、きょうだい という家族構成員が力を合わせて乗り越えようとす る姿も伺える。 子どもの入院時における家族の乗り越える力を弱 めているのは、親の心理的混乱であると考える。心 理的混乱状態にあることで親が、医師による病気や 治療に関する説明(informed consent)を理解でき ていないことが予測され、きょうだいへも説明がで きない。加えてきょうだいは、親を通じて家族の異 変を感じ、親からきょうだいへと混乱の波紋が広 がっている。子どもやきょうだいへの心理的影響を 最小限にするために、この時期は特に親に対する心 の健康への配慮が必要である。親は、心情に応じて 伝え方やかかわり方を工夫する支援を期待している. (平谷,法橋,市来他,2018)。看護師は、親の心情. Ⅶ.考 察. 96. 日本小児看護学会誌 第 30 巻(2021). を理解した上で、親が落ち着いた気持ちで子どもの 病気を受け止め、理解できるように支援していく必 要がある。野嶋(2003)は、「家族は、独自の健康に 対する価値観や健康文化を有している」p9 と述べて いる。家族がもつ独自の価値観や文化を大事にした 上で支援することが重要と考える。 次に、子どもの初回治療時期においては、副作用 で苦しむ子どもの姿や慣れない付き添い生活をする 親と家庭の役割や社会役割を担わなければならない 親の心身の負担が続くことで、PTSR や PTSD を発 症していた。親が病気にならないために早期の支援 が必要である。. 2.「初回治療終了後から退院時期」の家族 この時期の家族は、子どもの治療経過や病状に よって状況が異なる。特に、治療が順調に進まない 子どもの親は、入院時から現れていた心身の疲労が 強い状況が続く。一方、病状が安定した子どもの親 は、初回治療が終了すると治療による子どもの症状 の変化が予測できるようになり闘病の世話に余裕が もてるようになるが、心身の疲労は続いている。つ まり、子どもの病状にかかわらず親の心身の疲労は 続いている。 子どもの入院日数と親の QOL は関連しており、 入院日数が長いほど母親の QOL が低く、付き添い による体の痛みと睡眠の質の低下が原因であった. (栗田,神谷,高橋他,2013)。また、1 か月以上の 長期入院により、父親の仕事と休日の付き添い、病 院と自宅の往復など、休息する時間がないことでス トレスが重なり心身の負担があることが報告されて いる(福井,本田,法橋,2016)。付き添い生活、家 庭と病院の往復、きょうだいの世話と仕事の両立な どが長期に及ぶことで父親と母親の心身の疲労は増 強している。付き添いをしている親は母親とは限ら ず、この時期より父親も交代で付き添いをしている ため、父親と母親の体調、病院での生活状況(食事、 清潔、睡眠・休息)、付き添い者のサポート状況、家 族の協力体制について状況把握をした上で、家族の 状況における危機は何か、危機を乗り越える力を支 援する必要がある。 一方、きょうだいは、寂しさ、孤独感などから子 どもの入院半年以内に登園・登校拒否が現れてい た。太田(1996)は、母親の付き添いがきょうだい に及ぼす影響として、病児の入院 1 か月未満できょ. うだいに登園・登校拒否が現れた、と報告している。 子どもの初回治療終了はおおよそ 1 か月という結果 であることより「診断から初回治療終了時期」から、 きょうだいのマイナスの変化に注目しておく必要が あると考える。 最後に、親の経済的負担について考えたい。母親 は、休職や離職、父親は職場の配置換えなどを行っ ている。病児の長期入院に伴い、親の仕事量の調整 や退職、勤務時間の減少により収入の減少がある家 庭が存在する(福井,本田,法橋,2016)。小児がん の治療費は、公的助成制度で費用負担の軽減がなさ れるが、付き添いの親の食費、見舞い時の交通費な どは、すべて家族負担である。小児がんの治療は長 期に及ぶため、子どもの治療費以外での家族の出 費、親の収入の減少も予測されることを念頭におい て看護をする必要がある。. 子どもの初発時の入院経過における家族の状況 は、「診断から初回治療終了時期」と「初回治療終了 後から退院時期」の病期に分かれた。「診断から初回 治療終了時期」の家族は、心理的混乱の状態であり ながら、子どもの闘病の世話、子どもとともに入院 生活へ適応する努力をしつつ、家族成員の役割や生 活の調整を行っていた。「初回治療終了後から退院 時期」の家族は、子どもの病状により左右されるが、 治療経過が理解でき、生活に余裕がもてるようにな る。入院の各病期における家族への看護を検討して いく必要性が示唆された。. 利益相反 開示すべき COI 関係にある企業・組織およ び団体などはない。. なお、本研究は日本学術振興会科学研究費(演題番号: 18K17569)の助成を受けて実施した。本研究は日本小児看護 学会第 28 回学術集会にて発表した内容に加筆修正した。. 文 献 Bowlby, J.(1951)/黒田実郎訳(1967).乳幼児の精神衛生.. 岩崎学術出版社. 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参照

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