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電力系統の電圧安定性解析手法の開発 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 長 尾 待 士

学 位 論 文 題 名

電力系統の電圧安定性解析手法の開発 学位論文内容の要旨

  電 力 系統の電圧 不安定現 象は、従 来電源か ら離れた 重負荷地 点近傍での 比較 的ロ ー カルなも のと考え られてき た。しか しながら 近年の電 源の大容量 化や更 なる遠隔 化、送電 網設備の効 率的運用を目指した長距離基幹送電線の重潮流化、

電化 生 活の一層 の定着に よる負荷 機器の定 出力維持 化などに より、大規 模電力 系統 の 電圧不安 定現象が 注目を集 めるよう になった 。一方、 大規模な電 圧不安 定現象の 基本特性 の解明やこ れに基づく実用的な解析手法の開発は十分でない。

この た め本論文 では、こ の現象の 基本特性 の解明と それをべ ースとした 大規模 系統 用 解析手法 ならびに 安定性評 価指標の 開発をお こなった 。論文の構 成と主 なる成果 は以下の とおりであ る。

  「まえ がき」で は、本現 象に関する 論議の歴 史と主と して対象 系統規模の変 遷によ る視点の 変化、今 日的な要請 から見た 現象把握 と対策立 案の背景につい て概説 した。

  続 いて 第1章 「概 説 」では 、本論の べースと なる「電圧 ・無効電 力」の基 本 特 性と過大 なコンデ ンサー補 償による特 異領域の 出現、そ の領域に おける変圧 器 タップ制 御効果の 逆転など を、水流モ デルとの 対比によ って示し た。さらに 電 力中央研 究所の模 擬送電線 設備を用い た実験の 概要を介 して、電 力系統の潮 流 分 析 か ら は 判 断 し 難 い 不 安 定 現 象 の ロ ー カ ル 性 な ど を 例 示 し た 。

  第2章 「電 圧 安定 性 の 基本 特 性の 解 明 と模 擬実 験による 検証」では 、解析的 検 討 に より1電 源1負 荷系 統 を 例に こ の現 象 が 内包 す る一 般 的 要因 を 定量 的に 分 析 し た。 ま た、模 擬実験に より負荷 固有の特 性の影響 、需要急増 時の電圧 動 揺 、 系 統事 故 時の 電 圧 不安 定 現象 を 示 すと と もに、2負 荷系統を構 成しこの 現 象 が 近 隣 地 点 と 持 つ 相 互 の 影 響 に っ い て 基 礎 的 検 証 を 韜 こ な っ た 。   第3章 「電 圧 安定 性 解 析手 法 の開 発 」 では 、所 与の需給 状況や系統 構成など 全 系条件を 考慮した 各需要地 点の常時安定性余裕を定量的に把握するとともに、

想 定 外 の負 荷 急増、 送電線多 重事故に 対する制 御・操作 効果などを 分析する 手

(2)

法を 開発 した 。そ の内 容は 概略 2 っか らな る。 ひと っは 新し い潮 流計算法の開 発で ある 。こ れは 、電 圧安 定性 解析 が一般的に潮流解の収斂し難い条件からス ター トす ると いう 背景 への 対応 が要 求されたからである。まず、所謂浮遊ノー ドの 扱い をア ドミ ッタ ンス ・べ ース に改め収斂計算上の非線形効果を著しく低 減し た。 また 負荷 の電 圧特 性を 取り 込み、これを対電流ヤコビアン表示とする こと で対 角要 素以 外を 単純 線形 表示 に収め前記に準ずる効果を挙げた。さらに 系統 周波 数を 変数 とし 発電 機制 御系 特性を取り込むことで、スイング・ノード を排 し人 間の 介在 を不 要と した 。ふ たっめは現象のダイナミックなシミュレー ショ ン法 の開 発で ある 。こ れは 万が ーの場合を想定した系統の分離や負荷制限 の 効 果 を 確 認 す る た め の も の で 、 広 域 VQC ( 電 圧 ・ 無 効 電 力 制 御 ) や LFC

(負 荷・ 周波 数制 御) の模 擬が 肝要 となる。このためには、電力系統運用の現 場か らき め細 かい 注文 をき くと とも に変化に対応し易いソフトとすることもポ イン トで ある 。

   第4 章 「電 圧安 定性 の評 価指 標の開 発」 では 、前 章で 述べ た解析結果を実運 用 上にど う用 いる かを 論じ た。 対象としているのはまず中央の系統運用者と各 需 要地の 1 次 変電 所の 運用 者で あるが 、広 い意 味で は前 者に は設備計画の立案 者 も含む 。電 圧不 安定 現象 が生 じた場合直接対応するのは需要地の変電所運用 者 であろ うか ら、 まず 需要 地で 日常的に何を監視すべきかを論じた。学問的な 立 場から 種々 の監 視指 標が 提案 されていたが、これらを横並びに比較してみる と それぞ れの 特徴 はあ るも のの 限界を示す需給条件に差はみられなかった。そ こ で現場 感覚 では 最も 分か り易 い限界供給カとその時点での供給実態との差を 監 視指標 とし て提 案し た。 これ は前章で提案している解析ソフトで極めて簡便 に 得られ るも ので ある 。中 央で 全系の健全さを監視する指標としては、線路イ ン ピーダ ンス によ る無 効電 力損 失と総需要との比を提案した。これは最も基本 的 なもの とし て認 識し 得る が、 設備計画においては他に考慮すべき事柄も多く 1 っ の評 価項 目と いう こと にな ろう。 これ らに より 、電 圧不 安定現象の本質的 要 因 が 明 ら か に す る と と も に 、 予 防 対 策 や 緊 急 時 操 作 の 立 案 に 資 す る 。    「あとがき」では以上で述べた現象論やソフト開発上の工夫などをさて置き、

その実用上の留意点のみを示した。

(3)

学 位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 助教授

長谷川 土谷 大西 本間 北

学 位 論 文 題 名

    淳 武士 利只 利久 裕幸

電力 系統の 電圧安定 性解析手法の開発

  電 力 系 統 に お い て は 、 系 統 内 の 各 地 点 に お け る 電 圧 を 常 に 適 正 な 許 容 範 囲 内 に 維 持 す る 必 要 が あ り 、 そ の た め の 電 圧 ・ 無 効 電 力 調 整 設 備 を 適 切 に 配 置 す る と と も に 、 十 分 な 調 整 能 カ を 発 揮 で き る よ う 制 御 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 電 力 系 統 の 設 備 お よ び 運 用 の 状 況 に よ っ て は 、 電 圧 を 適 正 範 囲 に 維 持 で き ず に 大 規 模 な 停 電 に 到 る 可 能 性 が あ り 、 電 圧 不 安 定 現 象 と 呼 ば れ て い る 。 こ の 現 象 は 、 重 負 荷 地 点 近 傍 の 比 較 的 ロ ー カ ル な 問 題 と 見 ら れ て い た が 、 電 源 の 大 容 量 化 と 長 距 離 送 電 化 、 長 距 離 送 電 幹 線 の 重 潮 流 化 、 定 出 力 特 性 を 持 ち 電 圧 の 制 御 に 逆 作 用 を し が ち な 負 荷 の 増 大 な ど に よ り 、 大 規 模 電 力 系 統 に お い て も 現 象 が 顕 在 化 し て き た 。 一 方 に お い て 、 大 規 模 な 電 圧 不 安 定 現 象 は 、 そ の 基 本 特 性 の 解 明 が 必 ず し も 十 分 で は な く 、 実 用 的 な 解 析 手 法 も 十 分 に は 開 発 ・ 確 立 さ れ て い な い 実 状 に あ る 。

  本 論 文 で は 、 大 規 模 電 力 系 統 を 視 野 に 据 え て 、 電 圧 不 安 定 現 象 の 基 本 特 性 の 解 明 、 そ れ に 基 づ ぃ た 大 規 模 系 統 用 解 析 手 法 の 開 発 、 電 圧 安 定 性 の 評 価 ・ 監 視 指 標 の 開 発 に 関 し て 論 じ て お り 、 新 し く 得 ら れ た 主 要 な 成 果 は 、 以 下 の3点 に 集 約 さ れ る 。

  第 一 に 、 電 圧 安 定 性 の 基 本 特 性 を 、 簡 単 な 系 統 に お け る 詳 細 な 解 析 的 検 討 と 模 擬 実 験 と に よ り 解 明 し て い る 。 す な わ ち 、1電 源1負 荷 系 統 に 対 す る 詳 細 な 解 析 的 検 討 に よ り 、 電 圧 不 安 定 現 象 が 内 包 す る 一 般 的 要 因 を 定 量 的 に 明 ら か に す る と と も に 、 模 擬 実 験 に よ っ て 、 負 荷 固 有 の 特 性 の 影 響 、 需 要 急 増 時 の 電 圧 動 揺 、 系 統 事 故 時 の 電 圧 不 安 定 現 象 、 近 隣 地 点 と の 相 互 影 響 に つ い て 、 解 析 的 検 討 か ら 得 ら れ た 知 見 を 検 証 し て い る 。 こ の 知 見 は 、 実 際 に 大 規 模 停 電 に ま で 到 っ た 電 圧 不 安 定 現 象 に 起 因 す る 事 故 の 理 解 に 、 大 き く 貢 献 し た 。   第 二 に 、 全 系 の 需 給 状 況 や 系 統 構 成 な ど に 基 づ き 、 各 需 要 地 点 の 常 時 安 定 性

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余裕の定量的把握ができる解析手法や、想定外の負荷急増や送電線多重事故に 対する制御・操作の効果を分析できる解析手法を、はじめて開発・確立した。

すなわち、前者については、従来収束が難しいとされていた条件下で電力系統 の電圧や潮流の分布を計算できる新しい潮流計算法を開発している。また後者 については、各種の制御機能や電力系統運用に関する多岐に亘る機能をも模擬 できるダイナミック,シミュレーション法を開発している。これらの解析手法 により、種々の条件下で電圧不安定現象がどの様に現れるのか、系統の条件を 変えるとどのような影響が出るか、時間の推移とともに現象はどのように進展 するか、電圧・無効電カの制御に電圧安定性の面から要求される性能はどのよ う なも のか など 、多く の知 見を はじ めて得 るこ とが できる こと とな った 。    第三に、実運用の面から解析によって得られる知見をどのように用いるかに ついて詳細に分析し、実運用現場の技術者にとって最も分かり易い電圧安定性 の監視指標を提唱し、その有効性を明らかにしている。先ず、学問的立場から 提案されていた種々の監視指標(実運用面では必ずしも理解し易くはないもの が多い)が、それぞれの特徴は有するものの、電圧安定性から見た限界供給カ を与える需給条件の評価であまり差をもたらさないことを明らかにした上で、

実運用現場で使いやすい監視指標として「限界供給カとその時点での供給実態 との差」を新しく提案している。この指標は、前述の新しい解析手法によって 簡単に算出・評価ができる。また、電力系統全体の健全さを中央で監視する際 の指標として「線路インピーダンスによる無効電力損失と総需要の比」を提案 している。有用かつ基本的な指標である。

   これを要するに、著者は、大規模電力系統の電圧不安定現象に関して、その

基本特性の解明、解析手法の開発・確立、評価・監視指標の開発について多く

の新知見を得たものであり、電力工学、電力系統工学に対して貢献するところ

大なるものがある。よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与され

る資格あるものと認める。

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