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草地土壌の温室効果ガス・シンク・ソース機能に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 森    昭 憲

学 位 論 文 題 名

草地土壌の温室効果ガス・シンク・ソース機能に関する研究

学位論文内容の要旨

  農耕地の炭素貯留機能を最大限活用するため土壌有機物の適切な管理の重要性が指摘されてい る.草地は長期間に渡り不耕起で管理されることが多く,家畜排泄物などの有機物が施用されるた め,畑地より炭素貯留機能が大きいことが知られている,しかし,窒素固定能を有するマメ科の牧 草による土壌への窒素移譲,更新による草地の耕起,堆肥などの有機物施用は温暖化係数の高いメ タン(CH4)や亜酸 化窒素(N20)の排 出量を 変化させ る可能性 がある ため,草 地が持 つ地球温 暖 化抑制効果を適切に評価するためには,CH4やN20の排出量にも注意を払う必要がある.本研究で は,草地土壌の有機物動態と関わりの深い草種構成,更新に伴う牧草残渣のすき込み,堆肥散布が CH4とN20の排出量に及ばす影響を明らかにするこ,とを目的とし,那須の火山灰土壌の草地におい て実証試験を行った.得られた結果は以下の通りである.

1.草地の草種構成がCH4とNz0の排出量に及ばす影響

  オ ーチ ャ ー ド グラ ス(OG)単 播草 地 , シロ ク ロ ーバ(WC)単 播 草 地,OG/WC混 播草 地 か らの CH4とN20の 排 出 量を 観 測 した . い ずれ の草種 でもCH4吸収が 認めら れ,OG単播 草地,WC単播 草地 ,OGハVC混播 草地のCH4吸収 量は, それぞれ1.8,2.4,1.8 kgCha一1ゾ1であった.WC単播 草地 の容積重 は他の植 生の草地より小さく,WCは土壌通気性を高めることでCH4吸収量を増加さ せたと考えられたが,CH4年間吸収量に有意な処理間差は認められなかった,いずれの草種でも土 壌水 分の増加 とともにCH4吸 収量の減 少が認 められ,土壌通気性がCH4吸収量の経時的変化の主 因と考えられた,WC残渣を介した土壌への窒素移譲は,窒素のターンオーバー速度を増加させた が ,CH4吸 収量を有 意に減少 させな かった.OG単播草 地,WC単播 草地,OG/WC混播 草地か らの N20排出量は ,それぞ れ0139,1.59,0.67 kgNha‑1y・1であり,WCが栽培されるとN20年間排出 量が 有意に増 加した.WC残渣を 介した土 壌への 窒素移譲と植生による窒素吸収量の差がWC単播 草 地冫OG/WC混播草地>OG単 播草地の 順で土壌 中の無 機態窒素 の濃度 を高めた ため, 草種構成 によりN20排出量が異なったと考えられた.

2.草地更新時のNz0排出量

  更新 を行った 草地(更 新草地)と行わない草地(対照草地)のN20排出量を測定した.更新作 業は2005,2006年の8月, 以下のように行った.まず,収穫後にプラウ耕起を行い,牧草の根と 刈株を表層土壌にロータリーですき込んだ.次に,地表面をローラーで鎮圧し,40 kgNha‑1の窒素 肥料を表面散布した後OGを播種した.対照草地では収穫後に肥料散布のみ行った.更新草地と対 照草地 の植生 はいずれ もOGなど イネ科牧 草が主 体であった,この作業から約2ケ月間に渡りN20 排出量を測定した.

  最初 の2週 間,更新 草地か らのN20の排出 量は対照 草地より多かった.すき込まれた根と刈株 から迅速な窒素無機化が起こり土壌中の無機態窒素の濃度が高まったためと考えられた.また,す き込ま れた根 と刈株は 土壌の嫌気的部位を拡大させ,牧草残渣と窒素肥料に由来するN20生成を 増加さ せたと 推察され た,また,耕起によって,更新草地の土壌水分は対照草地よりN20が生成 され易くまた排出され易い領域に分布した可能性も考えられた.2週間経過以後も降雨後には更新 草地か らN20排出が認 められ た.更新草地は裸地に近い状態であったため,地表面が日射で直接 温 め ら れ , 地温 が 対 照草 地 よ り も2.7〜3.0℃高 く ,N20排 出が 助 長 され た と 考 えら れ た .

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  2005年 は ,67日 間 に 更 新 草 地 と 対 照 草 地 か ら , そ れ ぞ れ5.3土1.4,2.8士0.7 kgNha‑lのN20排 出 が認 めら れた .2006年は ,65日間 に更 新 草地 と対 照草 地 から ,そ れぞ れ2.1土0.6,0.96士0.42 kg N ha‑lのN20排 出 が 認 め ら れ ,2005,2006年 と も 更 新 草 地 か ら のN20排 出 量 は 対 照 草 地 よ り 有 意 に 多 か っ た . 更 新 に 伴 うN20排 出 量 に 大 き ぬ 年 次 間 差 が 認 め ら れ た 原 因 は , 更 新 時 の 土 壌水 分や 更 新 後 の 降 雨 量 の 年 次 間 差 に 伴 う 脱 窒 に よ るN20生 成 量 の 違 い と 推 察 さ れ た . 3.堆肥 散布が草地からのNz0とCH4の 排出量に及ばす影響

  堆 肥 と 化学 肥 料を 組み 合わ せ て散 布し た草 地( 堆 肥区 )と 化学 肥料 の みを 散布 した 草 地( 化学 肥 料 区 ) か ら のN20とCH4の 排 出 量 を 測 定 し た . 堆 肥 は ,2004年は15 Mg ha‑1,2005年 は30 Mg ha‑l を 両 年 と も11月 に表 面散 布し た ,化 学肥 料は3,5,7,9月に 堆肥 区と 化 学肥 料区 に表 面 散布 した . 堆 肥 区 は ,1年 間 に 堆 肥 か ら 無 機 化 す る 窒 素 量 と 硫 安 に よ る施 肥量 の合 計が210 kgNhaIly・1と な る よ う 調 整 し た . 化 学 肥 料 区 は , 硫 安 を210kgNhly一1散 布 した .堆 肥 区と 化学 肥料 区 の植 生は , いずれもOGなどイネ科牧草が主体で あった.

  堆肥 区と 化 学肥 料区 のN20の 年間 排出量は,それぞれ7.0〜11.0,4.7〜9.1kgNha一1ゾ1の範囲に あ っ た .N20年 間 排 出 量 は 堆 肥 区 が 化 学 肥 料 区 よ り 有 意 に 多 く , 堆 肥 散 布 後 に 排 出 さ れ たN20が 堆 肥 区 か ら のN20年 間 排 出 量 を 増 加 さ せ た 原 因 と 推 察 さ れ た . 堆 肥 散 布 直 後 のN20排 出 量 は 僅 か で あ っ た が , 降 雨 後 に 堆 肥 区 のN20排 出 量 が 高 ま っ た た め , 堆 肥 中 の 無 機 態 窒 素 と 易 分解 性有 機 物 か ら 新 た にN20生 成 が 起 こ っ た と 推 察 さ れ た . 堆 肥 散 布 を 除 け ば , 地 温 が 高 く 降 雨 量の 多い 時 期 に 施 肥 に よ り 土 壌 中 の 無 機 態 窒 素 の 濃 度 が 高 ま る こ と でN20排 出 量 が 増 加 し た と 推 察さ れた , 施 肥 窒 素 当 た り のN20排 出 量 は 施 肥 後10日 間 の 積 算 降 雨 量 と 有 意 な 相 関 関 係 が 認 め ら れ ,N20年 間 排 出 量 の 年 次 間 差 は , 施 肥 直 後の 降雨 パ ター ンの 年次 間 差に 起因 する と考 え られ た. また ,3月 の 早 春 施 肥 か ら11月 の4番 草 収 穫 ま で の 牧 草 生 育 期 間 中 , 堆 肥 散 布 はN20排 出 量 に 影 響 し な か っ た.

  堆肥区 と化学肥料区からのCH4年間 排出量は,それぞれー0.ワ4〜―0.16,−O.84〜―0.52kgChfly11 の 範 囲 に あ っ た . 堆 肥 散 布 はCH4年 間 排 出 量 に 有 意 に 増 加 さ せ な か っ た が ,7〜9月 に か け て の3 番 草 生 育 期 間 中 は 堆 肥 区 か ら のCH4排出 量は 化学 肥 料区 より 有意 に多 く ,夏 期の 堆肥 分 解に より 堆 肥 区 のCH4吸 収 量 が 相 対 的 に 減 少 し た 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .CH4排 出 量 は 土 壌 中 のNH4・N濃 度 や 土 壌 水 分 が 高 い ほ ど 多 く な り ,Mむ _Nに よ るCH4酸 化 阻 害 や 降 雨 に 伴 う 土 壌 通 気 性 の 低 下 がCH4 吸収量の 経時的変化の原因の一部と 推察された.

4. 結 論

  本 研 究 は, 草 地に おけ る土 壌有 機 物の 動態 と関 わ りの 深い 草種 構成 , 草地 更新 に伴 う牧 草 残渣 の す き 込 み , 堆 肥 散 布 が 草 地 か ら のCH4とN20の 排 出 量 に 及 ば す 影 響 を 土 壌 理 化 学 性 な ど の 違 い に 重 点 を 置 い て 明 ら か に し た . シ ロ ク ロー バ は土 壌通 気性 を改 善 する こと でCH4吸 収量 を増 加 させ , 土 壌 中 の 無 機 態 窒 素 の 濃 度 を 高 め る こ と でN20排 出 量 を 増 加 さ せ た . 混 播 草 地 か ら のN20排 出 量 を 抑 制 す るた め ,窒 素固 定量 を考 慮 して 窒素 施肥 量 を削 減す るこ とが 重 要と 指摘 され る. 草 地更 新 は , 牧 草 の根 や 刈株 を土 壌に すき 込 むこ とで ,土 壌 中の 無機 態窒 素の 濃 度を 高め ,嫌 気的 微 小部 位 を 拡 大 し , 土 壌 水 分 をN20が 生 成 さ れ 易 く , ま た 排 出 さ れ 易 い 領 域 に 分 布 さ せN20排 出 量 を 増 加 さ せ た .N20排 出 量 を 抑 制 す る た め ,で きる だけ 更 新頻 度を 少な くし , 地温 や土 壌水 分の 高 い時 期 を 避 け て 更 新 を 行 う こ と が 重 要 と 指 摘 さ れ る . 堆 肥 散 布 後 の 降 雨 でN20排 出 量 が 高 まり , 堆肥 散 布 はN20年 間 排 出 量 を 増 加 さ せ た . 一 方 , 堆 肥 散 布 後 のCH4排 出 量 は 僅 か でCH4年 間 排 出 量 に 影 響 し な か っ た .N20排 出 量 を 抑 制 す るた め, 堆肥 か らの 窒素 無機 化量 を 考慮 し窒 素施 肥量 を 削減 す る こ と が 重 要 と 指 摘 さ れ る ,

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学位論文審査の要旨 主査    教授   波多野隆介 副査    教授   長谷川周一 副 査    教 授    平 野 高 司

学 位 論 文 題 名

草地土壌の温室効果ガス・シンク・ソース機能に関する研究

  本論文 は7章 からなり ,図13、 表13、引用 文献133を含む67ぺージの和文論文で,他に参考論 文4編が添えられている。

  農耕地 の炭素貯留機能を最大限活用するため土壌有機物の適切な管理の重要性が指摘されてい る,草地は長期間に渡り不耕起で管理されることが多く,家畜排泄物などの有機物が施用されるた め,畑地より炭素貯留機能が大きいことが知られている.しかし,草地が持つ地球温暖化抑制効果 を適切に 評価するためには,CH4やN20の排出量にも注意を払う必要がある,本研究では,草地土 壌の有機 物動態と関わりの深い草種構成,更新に伴う牧草残渣のすき込み,堆肥散布がCH4とN20 の排出量に及ばす影響を明らかにすることを目的とし,那須の火山灰土壌の草地において実証試験 を行った・

1.草地の草種構成がCH4とNz0の排出量に及ぼす影響

  イ ネ 科の オ ー チャ ー ド グ ラス(OG)単 播 草地 , マメ科 のシロ クローパ(WC)単播草 地,OG/WC 混播草地 からのCH4とN20の排 出量を測 定した .いずれ の草地と もにで はCH4吸 収され ていた。

CH4吸 収量 は ,OGで1.8,WCで2.4,OG7WCで1.8 kgCha‑l y‑lであっ た.WCは土 壌通気 性を高 めること で有意ではないが,CH4吸収量を増加させた.また,降雨による土壌通気性の変化がCH4 吸収 量 の 季節 変 化 の主 因 と 推 察し た .N20排 出量 はOGで0.39,WCで1.59,OG/WCで0.67 kgN ha‑1 y‑1であり ,WCではN20年間 排出量が 有意に 増加した .その 理由とし て,WCの 残渣からの 大きな窒素無機化が原因と考えた.

2.草地更新時のNz0排出量

  更新を 行った草 地(更新 草地) と行わな い草地 (対照草 地)のN20排出量を約2ケ月間測定し た.いずれもイネ科牧草主体である,更新草地は,収穫後にプラウ耕起を行い,根と刈株を表層土 壌にロータリーですき込み,地表面をローラーで鎮圧し,40 kgNha.lを表面散布した後OGを播種 した.対照草地は,収穫後に肥料散布のみ行った.更新草地と対照草地から,それぞれ2.1〜5.3, 0.96〜2.8 kgNha‑lのN20排出が認 められ,更新草地からのN20排出量は対照草地より有意に多か った.その理由として,更新草地では,すき込まれた根と刈株から窒素無機化が起こり,土壌中の 嫌気的部 位が拡 大し,更 新草地 の土壌水分は対照草地よりN20が生成され易く,また排出され易 い領域に分布したためと推察した.N20排出量には年次間差が見られた.その原因を,更新時期の

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土 壌 水 分 や 更 新 直 後 の 降 雨 量の 差 に 伴 う脱 窒 に よるN20生 成 量 の違 い に よる と 推 察し た . 3.堆肥散布が草地からのN20とCll4の排出量に及ぽす影響

  堆肥と化学肥料を散布した草地(堆肥区)と化学肥料のみを散布したイネ科牧草主体の草地(化 学肥 料区)か らのN20とCH4の排出 量を測定 した.堆 肥は,15〜30 Mg ha‑lを11月に表面散布し た,化学肥料は3,5,7,9月に表面散布した,堆肥区は,堆肥の窒素無機化量と硫安の合計が210 kgNha‑1 y‑lとなる よう調整した.化学肥料区は,硫安を210 kgNha‑1デ散布した.堆肥区と化学 肥料区のN20の年間排出量は,それぞれ7.O〜11.0,4.7〜9.1 kgNha‑1y・1の範囲にあった.N20年 間排 出量は堆 肥区が化学肥料区より有意に多く,堆肥散布後に排出されたN20が堆肥区からのN20 年間 排出量を 増加さ せた.と くに地 温が高く 降雨量の多い時期の施肥によりN20排出量が増加し た. 施肥窒素 当たり のN20排 出量は 施肥後10日問の積算降雨量と有意な相関関係が認められ,堆 肥散 布後の降 雨によ って無機 態窒素 と易分解 性有機物から新たにN20生成が起こったと推察され た.堆肥区と化学肥料区ともにCH4は吸収されていた.年間吸収量は,堆肥区で0.74〜0.16 kgCha‑l ゾ1,化学肥料区でO.84〜0.52 kgCha‑ly・1の範囲で,両者に差はなかった.CH4吸収量は土壌中の NH4‑N濃度や土壌水分が高いほど小さい傾向があった.

4.結論

  以上 から,草 種構成 ,草地更 新に伴 う牧草残渣のすき込み,堆肥散布は,とくにN20排出量に 強く 影響を及 ぼすこ とが明ら かとな った.そ して,1)混 播草地か らのN20排出量を抑制するた め, 窒素固定 量を考 慮して窒 素施肥 量を削減 すること が重要 である,2)草地更新によるN20排 出量を抑制するため,更新頻度を少なくし,地温や土壌水分の高い時期を避けて更新を行うことが 重要 である,3) 堆肥散布 によるN20排出 量を抑制 するに は,堆肥 からの窒素無機化量を考慮し 窒素施肥量を削減することが重要である,と結論づけた.

  以上のように,本研究は,草地管理に伴う温室効果ガスの放出について検討し、その抑制方法を 提示したものであり,関連学会等で高く評価されている,よって,審査員一同は,森昭憲が博士(農 学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた,

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参照

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