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学 位 論 文 要 旨

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Academic year: 2021

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(別紙様式第3号)(Format No. 3)

学 位 論 文 要 旨

SUMMARY OF DOCTORAL THESIS

氏名 Name: 吉原亮平

題目 Title: Newly developed system for analyzing in vivo mutation in higher plants and characterization of spinach CPD photoreactivation

高等植物のin vivo突然変異解析システムの開発とホウレンソウのDNA傷害光 回復の特性

生物は常に種々の突然変異原に曝されている。突然変異は生命の進化の過程で 多様性を生み出す重要な現象ではあるが、ほとんどの場合生命機能の欠損や遺 伝病など重篤な影響をもたらす。植物はその着生という性質上、種々の変異原 から逃れることができない。特に植物の生育環境では、変異原の一つである紫 外線に曝される機会が他の生物に比べて多い。

紫外線は、DNA上の隣り合った二つのピリミジン塩基間でピリミジン二量体 を形成させる。ピリミジン二量体にはシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD) と6-4光産物(6-4PP)の2種類が存在する。このDNA傷害が突然変異の原因となる。

生物はこれらDNA傷害を修復するDNA修復遺伝子を持っている。植物にもDNA 修復遺伝子が存在しているが、多くの動物にはない光回復と呼ばれる特徴的な 修復機能を持っている。光回復は可視光エネルギーを利用してピリミジン二量 体を効率的に開裂させる。光回復系には2種類あり、CPDと6-4PPをそれぞれ特 異的に修復するCPD光回復系と(6-4)光回復系である。

本研究に先がけて、紫外線照射時の生成量が多いCPDを修復するCPD光回復遺 伝子を主要農作物であるホウレンソウからクローニングすることに成功し、さ らにcDNAの全長を決定した。本研究ではこのDNAを用いてホウレンソウ光回復 について検討した。

cDNA

の配列を他の生物種の

CPD

光回復遺伝子と比較すると、

植物以外の生物とも高い相同性のあることが示された。機能的には、この遺伝 子で形質転換した光回復欠損大腸菌では光回復活性の回復がみられ、さらにゲ ノム上に生成した

CPD

の光依存的減少の程度は非形質転換菌に比べて有意に高 かった。これらの結果から、ホウレンソウから得られた本遺伝子は光回復遺伝 子であると結論づけた。

ホウレンソウ光回復遺伝子の各組織での発現量を雄株及び雌株それぞれにつ いて

Real-Time PCR

により定量したところ、両株とも花や葉で高かったが、根で の発現量は他の組織に比べて低かった。

本研究で得られたホウレンソウCPD光回復遺伝子を野生型シロイヌナズナに 導入してコピー数を増やしたところ、紫外線に対して耐性を示す個体を作製す

(2)

る事ができた。光回復は高等植物の紫外線DNA傷害の修復に重要なはたらきを していること考えられ、また紫外線耐性作物開発の可能性が示されたことから、

将来の食料供給への寄与が期待される。

高等植物のin vivoにおける遺伝子突然変異の特性を塩基配列のレベルで調べ るために、新たに突然変異検出システムを開発した。変異検出のターゲット遺 伝子として、大腸菌rpsL遺伝子をシロイヌナズナへ導入した。この遺伝子をスト レプトマイシン

(Sm)

耐性大腸菌に導入すると感受性になるが、変異が生じると

Sm

耐性となり

Sm

を含む培地でコロニーを形成する。ポジティブセレクションが できる。変異原処理後にプラスミドレスキューによって導入遺伝子を植物体か らプラスミドとして回収してスクリーニングを行った。 このシステムを用いて

ethylmethanesulfonate(EMS)

誘発変異を調べたところ、クローンの出現頻度が

20

倍以上上昇していた。得られたクローンの変異スペクトルを調べたところ、他 の生物種で

EMS

に特徴的と報告されている

G:C

塩基対が

A:T

塩基対に変わるト ランジション型塩基置換が検出された。このことから、植物

DNA

においても他 の生物種と同様のDNA傷害が生じ、変異の原因となっていることが示唆された。

さらに、塩基置換変異を起こした塩基に隣接する塩基の種類を調べたところ、

すでに報告されているように5’-PuG-3’のグアニン塩基でG:CがA:Tに変わるトラ ンジションが誘発される傾向がみられた。さらにグアニンの5’側のプリン塩基が 他の生物種ではグアニンであったが、植物ではアデニンである傾向が強かった。

よって、変異スペクトル自体は他の生物と同じでもその近傍配列の比較から、

植物独自の変異誘発メカニズムが存在する可能性が示された。

本研究で開発した植物の変異検出システムによって高等植物の染色体DNAで 生じた変異の検出が可能であることが示された。これを用いて今後紫外線や放 射線などによる誘発変異の特徴を解析するとともに、各修復遺伝子欠損体にお いてどのような紫外線誘発突然変異が検出されるかを調べる予定である。さら にこのシステムは多様な変異原に応用でき、突然変異スペクトル解析といった 基礎的な研究にとどまらず、環境汚染の評価などの応用的な用途にも利用可能 である。

参照

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