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日本の建築技術開発の問題点 利用統計を見る

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日本の建築技術開発の問題点

著者名(日)

荻原 国宏

雑誌名

井上円了センター年報

3

ページ

242-200

発行年

1994-07-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002615/

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日本の建設技術開発の問題点

荻原国宏…h・・a ・un・h・ro はじめに  まず次の文章を読んで頂きたい。これは私がある官庁の広報誌に、「21 世紀の土木建設技術」について原稿を依頼された時(1990,12)のもので ある。この原稿は最終的には採用されなかった。ここに書いたことは建 設市場の自由化、建設談合に伴う入札制度の改革が行われている今日で も、特に土木の建設技術をとりまく社会の問題として当てはまると考え ている。   「旧世紀のヨーロッパ(土木の時代の技術)に学ぶ」  18世紀のヨーロッパの運河の発展を調べる機会があり、その時代にお ける運河に関する技術の発展がすばらしい事を知った。運河については 中国でもヨーロッパと同様な時期またはそれ以前から発達をしてきてい る。特に大運河は中国を南北に結ぶ交通網で、中国での2大土木技術の 成果として万里の長城とともに取り上げられ、歴史的に評価されている 巨大土木構造物である。しかしその技術的な発展にはヨーロッパと中国 では大きな差が生じてしまった。その大きな原因はヨーロッパにおける 総合科学技術の進歩発展であり、産業革命によって生じた技術力の差と、 産業革命によって生じた社会の要求、すなわち工業生産物及びその生産 に必要とする原料の大量輸送の手段についての社会的な要求の有無によ る差である。  いわゆる2重こう門に利用されている観音開きの水門(マイターゲー 日本の建設技術開発の問題点 3(242)

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ト)のアイデアは中国の方が早く開発している。川上に船が上がるとき には、堰の所で、人力または馬によるウインチで引き上げており、下が るときには水の流れと共に船が流されて下る方法を取っていた。  船が下るときに使用される水の量、結局は堰の上流に貯水されていた すべての水の量が放出される、この為に使用される水の量を節約する手 法として2重こう門が発明開発されている。前述のマイターゲートはこ のこう門の1種類として開発されたものである。ヨーロッパに於いては レオナルドダビンチによって、このマイターゲートに働く力の問題が解 析されており、現在の2重こう門の技術開発の端緒となっている。  このようなに力学的な解明が出来るまでに発達した技術力、鋼鉄製品 を利用できる産業の力等の総合技術の差が決定的な運河開発技術の落差 を生んだと考えられる。  さて日本における21世紀をにらんでの土木の技術の発展はどのように なるのであろうか、これは対応の仕方によっていかようにもなると言え る。この事はヨーロッパと中国での運河技術の発展の差を見ることによ って学ぶ事が出来る。基礎学問としての理学の進歩、応用技術の開発を 担う工学の発展が関連を持ちつつ、社会のすべての産業からの要求を始 めとして、人間が生活をしている社会基盤の部分からの要求を満たす施 設、構造物を開発できるかによって決まってくると考えられる。  社会からの要求を満たす物が技術によって開発できない場合には、そ れまでの旧来の技術によって出来る物で満足するしかないし、技術に開 発能力があっても社会からの要求がない場合には、また新しい技術の発 展を促す物にはならない。  今、世の中はコンピューターのすざましい発展によって情報化社会が 出現し、技術の蓄積も書物、本の中または個人の技術者の頭の中からコ ンピューターの中に取り込まれている。膨大な辞書がコンパクトディス ク1枚に入ってしまう状況であり、瞬時に目的の語句が引ける時代であ

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る。また人工知能によるエキスパートシステムの発展により、いわゆる 専門家の果たす役割のうち比較的単純な技術的問題の処理はコンピュー ターに移ってしまう事が考えられる。このような情報化社会における専 門家は、より高度な社会要求に答えられる技術開発能力が必要とされる。  近年の民間が主となって開発される技術はコンピューター、自動車を 始めとして、バイオテクノロジイ等では、民間における会社相互の技術 開発の競争力によって世界をリードする技術力を蓄えてきている。しか し一方建設関係では、一一部の部分において、例えば超高層ビル、長大橋 梁、新幹線のように世界的な技術を開発蓄積してきている部分もあるが、 一般の小さな土木構造物では旧来のままの技術にとどまっているものが ほとんどである。  この主たる原因は何であろうか、いくつかの原因が考えられるが、第 一は建設技術の世界が技術開発の競争社会になっていない事である。官 庁工事において新技術の採用までに相当年数がかかるのは衆知の事実で あるし、技術の特許を取得する事によってかえってその技術の採用が遅 れてしまう事がある。従って技術特許はオープンにし誰もが使用しても 良いか、数社で協同して取得する等の事が行われる。この様な状況では 開発した技術は保護されないし、苦労して技術開発をしようとしないで あろう。  第2の原因は建設技術における高度な技術の平均化に大いに役だって いる設計技術基準における問題である。構造物の詳細にまでわたる基準 の規定がかえって制約となり、新技術の開発を束縛している場合もある。 技術基準に無い手法が採用されるまでには、担当者の情熱と相当な努力 が支払わなければならないからである。これは基準が詳細に規定しすぎ るが為に実績主義、前例主義、既往の技術の優先採用に傾き、以前に採 用された技術が重要視され、新しい技術は敬遠される事になる。当然外 国で採用されている技術も日本では前例が無の事と日本の基準に合わな 口本の建設技術開発の問題点 5(240)

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い事を理由に採用されない事になる。  技術後進国であった時代の社会における建設社会全体の技術水準を挙 げる事にはたした、詳細な点にまでわたる技術基準の役割は大いに評価 しなければならないが、担当省庁ごとに若干違っている基準、省庁ごと に特徴を持たせた基準が事細かに決められていては、民間による技術開 発の発展を促すことになり得ない。国が従来主となって果たして来てい る技術開発の手法では、走り出している情報化社会には対応仕切れない 状況が出現する事が考えられる。  この事が特色有る技術を持つコンサルタントの出現を難しくしている し、世界に通じる技術を持つコンサルタントと国内一辺倒のコンサルタ ントを2分化させている事になる。また独自の技術力をもつコンサルタ ントの出現を難しくしている。

 第3は社会的な要求に土木の技術が対応しきれないほど社会の変化が

急速に進行している状況が現れている事である。例えば毎日首都圏の交 通情報で示される渋滞箇所が、常に同じ場所であり、同じ時間帯に渋滞 が発生していても、数年間たっても解消されないこと。また大型連休と か、旧盆、正月には東名、中央、関越等の高速道が数十キロに及ぶ渋滞 が発生していること。最近では2連休程度の休日でも同様な状態が発生 している。  自動車社会になり若い世代から自動車を取り上げる事が出来ない限り この事態は益々悪化して行くであろう。このような事態を解決すること に対する社会的な要求は、もはやあきらめに近くなってきている。この ような社会的な要求を早急に解決する手法は開発できていなのだろうか。  この事態を解決する土木の技術が無いのか、技術進歩が停止している か、解決する技術手法が有っても採用できない状況になっているとしか 考えようがない。このような状況が続く事は社会から土木技術が高度の 技術でないと見られる原因であるし、若い優秀な技術者を他の分野に取

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られてしまう原因となってしまう。今こそ官界、民間、学会のすべての 技術者からのアイデアをもって解決すべき問題であろう。民間の土木に 限らない技術者を含めてあらゆる分野の技術が取り入れ易い土木行政シ ステムを構築する必要が迫られている。  もう1つの例としては、今年のように首都圏に渇水状態が発生したと きにダムが空になってしまっているのは何故でしょうかと一般の人は考 える。利根川の上流には幾つものダムがあり、それがいずれも同時に空 になっている。雨が降らないからと言えば一応納得できるが、それでも 1つのダムくらい満水とまでいかなくても水が充分に残って貯まってい ても良いのではないかと考える。何故夏になるとダムの水は底が見える くらいまで低くなってしまっているのだろうかと疑問を持つ、洪水が発 生するのを防ぐのだと説明しても、近年の様に気象衛星で降雨前線の移 動状態、台風の移動状態が事細かく把握できる時代に、ハイテクを使っ たダム管理がされていないのが不思議と思われる。  このように社会的な要求に対して現在の土木技術はすべてに対応でき ているとはいえない。これらは主として官庁の技術者が対応に負われる 大きな問題であろうが、数に限りのある官庁の技術者のみで社会変化の 多様で複雑な状態に対応する事は至難の技であろう。早急にこのような 社会の要求に対応できるシステムの確立が望まれる。社会における他の 分野の技術進歩が早いだけに、社会基盤を支える土木の技術が発展しな いのは土木工学への不信となり、ハイテク技術を駆使したダム管理シス テムが他の分野のソフト開発技術者によって開発されてしまうと、一時 代まえにコンピューター(電子計算機)を使って計算して設計したとす れば盲目的に信用してしまった時代の再来となる危険がある。  いまの日本は基礎技術の理学、ハイテク技術の工学において世界に並 ぶか進んでいるかの状態にいる。総合技術力としてはまさに18世紀のヨ ーロッパの状態にある。いまこそ、官界および民間の土木技術者の自由 日本の建設技術開発の問題点 7(238)

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な発想による技術開発能力を発揮させる行政の展開が望まれている時代 は無い。それを行わないと21世紀に向かって世界に寄与できる技術の開 発が出来ないであろう。  思いつくままに駄文を書かせてもらいました、読者に何らかの刺激が 与えられたら満足である。(1990.12.3)  その後、井上円了記念学術センターの「日本の研究」グループに参加 させてもらい、土木技術の研究をすることになった。そこで日本の土木 技術に絡んでいる問題点を明確にしてみようと考えた。かねてから雑誌 「日経コンストラクション」の読者投書欄「ネットワーク」に土木技術 に関する問題を読者が投稿していることを思い出し、これををもとにデ ーターべ一スを構築する事を考えた。構築したデーターべ一スを使って 土木技術の開発に関する問題点を浮き彫りにすることを行った。以下に データーべ一スの構築のことを第1部に、それをもとにした問題点の解 明を第2部にまとめる。 第1部データーベースの構築  雑誌「日経コンストラクション」の読者からの投稿欄には、題名(15 字以内)、本文(800字以内)、投稿者名、年齢、職業が1セットで各号に

4人ないし6人程度の意見が採用されている。これをすべてデーターべ

一ス化した。

 第1章データーべ一スの設計

 投稿欄に載っているデーターは上記の5項(題名、本文、投稿者名、

年齢、職業)であるので、これをそれぞれ1つの項目として登録する事

にし、さらにその原稿の載っている雑誌の号数(発行日)をもう一つの データーとした。従って項目数は6項目である。リレーショナルデータ

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表2 一べ一スのソフトはMicrosoft Accessを使用し上記6項目でデーターテ ーブル(constrO1. mdb)を基礎データーとして作成した。当然文字デー ターを各項目に入力しなければならないが、当初は手入力をしていたが

とても個人ではやりきれないので、OCRソフトWinreader Plusを使い

イメージスキャナを使用して入力することにした。これにより各号の原

稿4∼6件(雑誌2ページ分)を入力し文字訂正を行って約1時間の作

業でテキストデーターの作成が済んだ。さらにこのテキストデーターか らデーターべ一スに入力するのに20分程度の時間を要した。データーべ 一スの作成は都合実働で不慣れの点もあって、実際に稼働するまでに2 週間程度必要であった。現在もデーターの追加をしているが、テーブル の最初の部分を印刷したのが表1である。この表には項目に入っている データーがすべて表示されていないが、データーべ一スにはすべて収容 されている。

 第2章データーべ一スの規模と内容

 この事を思いついたのが1992年になってからであるので、1992年5月8 日号から開始し1994年5月13日号まで、ほぼ2年間にわたって連続にデー ター入力した。一部1990年のものも扱っているがレコード数275件となっ

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表3 ・、瀦鑛鑛‖いう理由で,操用になかなか踏み切れない例もあるようだ。私は,河川♂、

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日本の建設技術開発の問題点 11(234)

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表4

抽出検索「実績」

94Mar/21  ID1: 年月日:  氏名:  年齢:  会社:  標題:  本文: 加藤昌宏   87 90/11/23 35    建改にポも済かしなだーで式で必    るのか一う経しを的き注庁方業く    あ境いキ行,°入期ぺ発官の事い    力環,がで績る導長く案゜こ木て

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ている。  このテーブルのデーターべ一スからクーリエを使って本文中に含まれ る語句を中心として抽出データーべ一スを作成した。「イメージアップ」 「レベルアップ」「会計検査」「技術開発」「技術力」「実績」「新技術」「前 例」「談合」「入札」等である。一部技術問題に関係無い項目も含まれて いるが、第2部の解析での必要性から作成してある。これらの各項目に 含まれるレコード数は次のようになっている。  「イメージアップ」19件「レベルアップ」2件「会計検査」19件  「技術開発」11件「技術力」24件「実績」12件「新技術」5件  「前例」4件「談合」30件「入札」43件  この中には2重に登録されている意見もある。275件の投書から技術関 連の項目は1割から1.5割程度である事が判る。本文記述中に含まれる語 句「実績」での抽出した意見は12件である。これをテーブルとして表し

たのが表2である。またこの中のID番号221(11件目のデーター)の内

容をフォームとして印刷したのが表3である。この中には6項目のすべ

ての内容が表示されている。ID番号87をレポートとして印刷をしたのが

表4である。以下第2部でこのようにして抽出された意見を中心に建設

技術に絡む問題点の分析をする。

第2部建設技術の関連問題

 第1部で述べた「日経コンストラクション」の読者の投書欄(ネット ワーク)をもとに作成したデーターべ一スをもとに建設技術にからむ問 題、特に新技術の採用、技術開発に関連したところをまず解析してみる。 方法としては項目「本文」中にある注目すべき語句によって、その語句 が含まれる投書を集めて、読者がどのような事を考え、それが何が原因 で起こり、どのような処置が今後必要であるかを考察する。 日本の建設技術開発の問題点 13(232)

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第1章 「技術開発」「新技術」についての問題 抽出データーべ一ス「技術開発」には11件、「新技術」には5件のデー ターがあり、それらの意見の重要と思われるところを書き出すと以下の 様になる。特に筆者が注目した部分は下線を引いてある。まず技術開発 のデーターべ一スからは以下のものがある。 1) (技術開発を進められる環境を)、右城猛、93/3/12 「……コンサルタントが官公庁から受ける委託業務費には、技術研究費と技 術報酬が含まれている。名目通りに運用すれば労働日数の40%を研究閉発に 費やせるはずだ。しかし、実際には、コンサルタントの技術者による研究は ほとんどなされていない。この大きな原因は、会討検査対策としての資科作 成と発注方式および積算方式にある。・・…・コンサルタントの平均的な経常利 益率は3%程度といわれている。これは、企業が存続していくうえで最低限 必要な利益。このような状況で、技術研修や研究開発に投資しろというのは 無理な話だ。……発注方式は現在、複数企業に対する指名競争入札制度にな っている。企業が独自で技術開発を行っても、その技術が複数の同業他社で 使用される環境をつくらない限り、採用される機会が少ない。さらに、実績 に基づいた積み上げによる積算方式の下では、標準歩掛かりのない新しい技 術は採用されにくく、開発費用の回収も遅れる。コンサルタントの技術が十 分評価され技術開発によるメリットが生まれる環境の整備を望む。」 2) (体質変えぬ土木業界の将来に不安)、匿名、93/4/9 「……日本社会の持つ矛盾や閉鎖性の縮図である建設業界。欧米から市場解 放要求を受けても、旧態依然として続く談合体質。この体質を必要悪と是認 しながら、いざ発覚すると責任のすべてを建設会社に取らせる役所の体質。 ……^に技術力のない企業は淘汰される時代が来たのかもしれない。ゼネコ ンで技術開発に携わる私が日ごろ感じているのは、私が勤務する会社はもち ろん、業界全体が、生き残りをかけるはずの技術開発に、まだ本気では取り 組んでいないということだ。しのぎを削って技術開発を行っている他産業と は、力の入れ方に雲泥の差があるといっても過言ではない。……原因には、 馴れ合い合い体質や受注のシステムがある。なによりも、合理化や新工法に よる技術向上が、必ずしも企業としてのもうけにならない部分があ 1・らだ。 技術力以外の営業力が受注できるかどうかの大きなウェイトを占める。…… 工期や工費を短縮しても、それはもうけの目減りでしかなく、その企業努力

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を認め、評価してくれる発注者は皆無だ。……」 3) (技術の遅れを自覚して競争理念を)、田中正博、93/9/24 「……過去20数年間、国内外の土木建設技術を見てきて感じたのだが、品質 や能率、価格を含めた欧米の技術開発の総合力を100とすると、日本のそれは 20前後であると言っても過言ではない。品質管理においては、欧米に比べて 優れた部分が多々あるが、工期短縮コストダウンへの努力などは欧米に20∼30 年、遅れをとっているように感じる。……現在の日本の土木技術や機材の大 半が欧米のコピーやライセンス技術で純国産技術の輸出は数えるほどしかな い。この事実に全国民が目を向ける必要がある。基本にもどって、フェアに 競争の理念で努力すれば、今世紀中に総合力で世界のレペルに追いつけるか もしれない。……」 4) (社会に貢献できる建設業に)、可児正人、92/5/8 「……建設業界は、技術力を備え、かつ自由でフェアな真に社会に貢献でき るような体勢にはほど遠いといった感がある。建設業の使命は重い。努力を 積み重ね、技術開発に取り組み、社会に貢献できるような体勢を早急に整え なければならないと思う。建設事業は社会の人々の最も身近なことであるに もかかわらず、これまでは工事の発注先ばかりに顔を向けてきたことが多か ったのではないかと大いに反省している。」 5) (技術で競争する体質に転換を)、松岡誠、92/8/14 「技術力で競争する業界に変わることの必要性を感じている。建設業は単品 生産のため、比較されることが少なく、企業や個人の技術力が客観的に評価 されにくい。技術力が受注に直接、結び付くことが少ないため、技術力より 営業力の強化に重点を置くことになり、官庁OBの獲得合戦などか盛んに行 われる状況になっている。……発注者と元請けの関係改善は、仕事を手土産 にした天下りを法的に禁止するくらいの強力な措置を講じない限り難しいだ ろう。……下請け会社の方が技術力で勝負できる環境にあるのではないかと 思う。今後は意欲ある下請会社が技術競争を展開し、それが建設業界全体の 体質改善を進める原動力になるだろう。……」 6) (新しい一技術者としての対応)、川田博一、92/12/25 「……現状の「豊かさ」のレベルを維持しながら、諸問題を解決することは 非常に困難ではないか。特に一企業一個人としてどうやってアプローチした らいいかについては、難しさを日々感じている状態だ。やはり、環境問題へ の対応は行政レベルで行わざるをえないと思う。行政的な位置付けがはっき りしなければ企業が活動するのは難しい。私自身としては、現在の環境問題 に対して国がどのような理解を持っていて、将来的にどんな対応をしようと H本の建設技術開発の問題点 15(230)

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考えているかを知りたい。……」 7) (補修工事の現状に一言)、匿名、92/10/23 「……補修の重要性自体は着実に認識されてきた。また、補修用材料、工法 についての指針なども確立されつつある。しかしながら一方で、実際に構造 物を管理する立場にある官庁の担当者の補修に対する認識はまだまだ低いと 感じることが多い。……実際に補修工事を計画する段になると、積算の通り 易い従来通りの工法を深く考えずに採用しがちで、新しい技術を検討しよう との姿勢に欠ける。……ますます重要度と緊急性が増していくであろう補修 工事、そしてそのための技術開発をスムーズに行うために、私が必要だと思 うことが三つある。それは短いサイクルで替わる発注側祖当者の任期の問題 と補修に関する教育の問題、そして予算上の措置や積算の充実だ。……」 8) (新技術には発注者側の理解が必要)、西田薫、94/1/28 「プロポーザル方式をはじめ、建設省や各自治体では発注方法の見直しを行 っている。それにともない、コンサルタント各社では受注に際し、技術開発 を重要なポイントとして位置付けるようになってきた。社会が高度技術を要 求するようになってきていることもあり、技術力を売り物にしてきた企業に とっては、以前にもまして新技術の閉発を重視する傾向が強まっている。技 術力で生き残っていくためには、研究に要する十分な時間と費用、そしてそ れ相応の人材の確保が不可欠だ。……残業をいとわずに業務をこなすことに よって利潤を上げる、あるいは技術開発を行う、といった従来のやり方では、 若手を育成したり、新しい技術の開発や堤案を自由に行える環境を保ち続け ることはますます困難になるだろう。優秀な技術者を確保するために必要な ことは、労働環境を整備することだと思う。そのためには発注者側に、高い 技術力に対する正当な評価と、技術開発の必要性への理解を望みたい。」 9) (社会基盤整備に行政と業界は努力を)、小西正郎、93/2/26 「……先日まで道路の鋪装工事をしていたのに、今度は水道工事で同じ場所 の掘り返しを行っている。建設業界に身を置く我々は、看板を注意深く見れ ば全く別種の工事をしていることが分かるが、一般の人の目には「建設会社 はいったい何をしているのか」というふうに映っているのではないかと懸念 している。縦割り行政の弊害と言ってしまえぱ終わりかもしれないが、税金 でせっかくつくったインフラを、それとはまた別の税金で壊して埋め戻し…… 現実に矛盾を感じているのは私だけではないと思う。……こうした状況を打 破するために、まずもって必要なのは、行政面での効率的な運用だろう。一 方、我々建設業界も、迅速に補修できる道路構造や補修後にも不陸を生じさ せない工法など、よりよい社会基盤の整備を担うための技術開発を進めてい

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くべきだ。」 10) (土木工事は微生物環境を考えて)、滝善樹、93/3/26 「……ハードウエアを構築するのを専門とする土木技術者は、目にみえない 微生物の分野には通じていないのではなかろうか。しかし、土木工事にあた っては、こうした視点で施工方法なり環境対策なりを検討し、有効な手段を 堤案してもらいたい。よく言われる「開発と環境の調和」も、微生物のレベ ルから考えていかなければならない時代なのだ。」 11) (健全な調整を経て一般競争へ)、船岩充、94/05/13 「汚職事件にともなってゼネコン各社が長期間にわたる指名停止を受けてい る。当事者にとってはたいへん重要な問題だ。しかし、事件の本質と建設業 の本質を考えると、一般に行われている議論は筋違いのような気がしてなら ない。……談合の形をとった調整作業は、この世界ではある程度、必要だと 思う。どの会社でも請け負うことができる工事ならまだしも、高度な技術を 要する工事や大規模な工事において、調整作業を一切なくして入札を行った ら、完成品の安全を保証するのは難しいと思う。小さな会社ができもしない 工事を安く入札し、その結果、手抜き工事を招いてしまうよりは、話し合い で技術力のある施工者を決めることの方が、健全な社会資本をつくりあげる ためには必要だろう。……健全な競争のためにはどうしたらよいのだろうか。 それには施工者間の格差をなくさせる努力が必要だと思う。例えば利益の一 部を技術開発に当てることを義務付け、技術力を前面に押し出して競争させ る。……健金な話合いという段階を経て一般競争に移行するのが施工者に受 け入れられやすいやり方だと思う。もちろんそれには、各施工者が常に技術 力を高める努力をすることが前堤となる。互いが技術力を堂々と見せ合って 戦う姿を待ち望んでいる。……」 「新技術」のデーターべ一スからは以下の様になるが、一部「技術開 発」と重複しているので、それについては標題のみとした。 1) (地球の環境保護に思う)、松沢秀秦、93/05/14 「……地球環境がどんどん悪化していることは間違いない。私が考えるには、 地球を救う手だては、両極の意見を持つ人間がお互いに批判し合っているだ けではなく、より一層、技術を発展させることしかないのではなかろうか。 例えば、二酸化炭素を多量に消費するバイオ植物、砂漠を緑化させるための 太陽電池や井戸、石油などの消費量を低減させるための新しいエネルギーの 日本の建設技術開発の問題点 17(228)

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開発促進など、必要と思われる技術はいくらでもある。もちろん、省資源型 のライフスタイルの確立も重要だ。私たちの世代だけでは、これらの技術を すべて開発する時間はないだろう。しかし無駄をなくし、新技術の開発への 投資を促進するといった方針は、いち早く確立すべきではないだろうか。……」 2) (発注者も新技術を受け入れる体制を)、横田篤、93/5/28 「……「技術堤案できぬ建設会社は覚悟を」に一言。建設会社が、役所の発 注工事に対して新技術新工法の導入を堤案するなど、前向きな姿勢を示さな い限り、その会社の未来はないだろうとの御指摘を興味深く読まさせて項い た。……建設業における技術開発投資をみると、売上げ高に占める研究開発 費の割合が0.5%と、全産業平均の2.8%に比べてきわめて低水準にとどまっ ている。これには、様々な要因があろうが、開発実用化にともなうリスクの 存在が大きく影響しているように思う。建設会社が省力化のために多額の資 金と長い投資期間をかけて新技術の開発を進めても、なかなか、公共事業に は採用されないからだ。……基準類を整備することは、人が生活するための 最低限の社会資本を達成するためには有効だろう。しかし、それが、逆に手 かせ足かせとなり、発注者が特例を認めにくい環境をつくっているのではな いだろうか。……建設会社が技術提案能力を備えるように努力することはも ちうんだが、発注者も、新技術を積極的に採用するための制度の見直し、意 識改革など大胆な取り組みをして欲しい。」 3) (新設もいいが補修工事も注目して土木屋が補完し合うべき)、高橋輝 明、92/7/10 「……本当に「魅力ある建設業」を実現するためには、職場環境の改善、体 質の改善はもちろんのこと、いかに新しい技術を導入、普及させるかがキー ポイントだと思う。……長期的な視野に立って新技術を採用していくべきだ。 そのための有効な手法として提案発注(プロポーザル)方式があると思う。官 庁でもシステム開発などの分野では、この方式を導入して成果を上げている。 ……v 4) (公共工事でもプロポーザル方式を)、加藤昌宏、90/11/23 「……構造物の新設の方がはなやかなので、どうしても新設工事における新 しい工法や新技術を駆使した現場が脚光を浴び、紹介される。これがメンテ ナンス分野の工事にも拡大されることを望む。維持や補修工事も土木の一つ であり、大切な役割を担っていることを、他の人々にも知ってもらいたいと 思っている。」 5) (新技術には発注者側の理解が必要)、西田薫、94/1/28、「技術開発」8)

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 以上の文書から注目すべき事は (1)コンサルタントでも建設会社でも技術開発をしてもそれが建設の 計画、工事に採用されにくい状況にあり、技術を同業他社にも使用され る環境をつくらないといけないこと、従って新技術を開発しても企業と しても利益に直結しないことの指摘である。 (2)工事等の入札が技術競争での勝負では無く、営業力での勝負にな っている。したがって企業としては技術開発にあえて投資をしてまで技 術を磨く必要がない。無駄な出費はしないほうが良いし、その分の資金 は営業に回した方が仕事獲得には効率が良いわけである。 (3)新しい技術を開発しても他社にまで開放しなければならない状況

は、1つには技術力競争でなく営業力競争の業界では、何も1社で技術

を独占して仲間はずれになっている必要もない。 (4)2つ目は工事の標準価格を官庁が決める場合に、実績にもとずく 積算体系を取っている。従って、1社のみでは実績があがらない。従っ て標準歩掛かりに新技術はのってこない。官側の技術者としては出来る だけ標準歩掛かりにある技術を採用することが会計検査時に有利である という事情がある。 (5)同様な事が設計基準、施工基準等に載っている技術は採用できる が、これらに載っていない技術はなかなか採用されない、すなわち実績 の無い技術は採用されない状況にある。 (6)全般的な技術開発の総合力は欧米を100とすると日本は20程度との 指摘が出てきている。投書者のほとんどが技術開発の出来る環境を強く 望んでいる。  第2章 「技術力」に関連する意見と問題点  「技術開発」についての要約をしてみて建設技術の発展を阻害してい るところの問題がかなり根が深いことが判って来た。そこで「技術力」 u本の建設技術開発の問題点 19(226)

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をターゲットにして投稿意見を抽出してみた。関連する意見は24件であ る。これらの中には「技術開発」で採用された意見もある。そこでそれ 以外の意見の主要な部分を以下に紹介する。 1) (施工者もグローバルなコスト意識を)、匿名、93/03/12 「……競争原理本来の良さをべ一スにして、日本全体のトータルコストにも 少しは思いをはせ、さらには地球規模のグローバルコスト意識を加味して、 後世に良いものを伝え残したいと願う。……こうした無駄を真の無駄として 意識できるかどうかが問われるのだと思う。」 2) (提案できぬ建設会社は覚悟を)、匿名、93/04/09 「土木業界は、ほかの産業と違い、技術力で競い合い、新しいものを取り入 れていくことが非常に少ない。大手の建設会社が工事を請け負うときにはま だ「こういうものを採用してはどうか」と提案してくることが時にはあるが、 中小の会社にいたっては皆無だ。……私たち発注者が建設会社に提案を求め ても、はっきりしたものは返ってこない。……工期や費用の増額をなんとか してくれというものばかり。こうした状況は、この業界で談合が当たり前に 行われているためだと思う。仕事を取る順番は決まっているので、よりよい 施工法なりを考える気すらないのではないか。……土木の世界は全体が公務 員の一家族のようなもので、発注者、業界ともに、財布の中身が合えばよい となりがちだ。……一つひとつの工事に対してこういう方法でやりたいと明 確に提案できない会社は仕事を取れない時代がくることを知るべきだ。…… 少なくとも入札や設計を実際に担当する私たちは、いい加減な会社に仕事を 取らせたくないと考えている。この先々は、技術力、総合力を選定基準とす るようになっていくだろう。建設会社が役所におんぶしたままでいれば安泰 と考えるのは間違っている。これに早く気付き、今からその覚悟で努力しな ければ、時代に対応できなくなるだろう。」 3) (体質を変えぬ土木界の将来に不安)、匿名、93/04/09、「技術開発」2) 4) (問題を議論できる業界に)、一野武史、93/05/14 「 非常にうまく体系づけられた理論(それが正しいどうかは別として) に基づいて構造物が作られている一方で、純粋な技術以外の面では、業界と して未解決な部分が大変多いということ。……皆ものをつくるための理論に はこだわり、発注者、コンサルタント、ゼネコンはお互いに議論を戦わす。 しかし、技術的に本当に納得がいかなくても、なあなあのうちに決まってし まうように感じることがよくある。……少しでも人の意思が入り込む余地が

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あるところは、権力で押し切られる。そんな感じがする。経駄工学という言 葉があるが、それに伴って悪い習慣が生まれ、それががっちりと建設業界に 組み込まれているような気がしてならない。……下請け会社の人と話した時 に、「中小の会社がつぶれてしまうから談合は絶対必要」と聞いた。良いモノ をつくるためだったら米国みたいに自由競争にして、技術力のない会社は消 えてもいいのではないかと思う一方で汚い部分があるからこそ失業率も低く、 一応モノをつくる人が確保されているのかとも考える。……モノをつくるこ と自体には魅力を感じている若者は多いが、それを打ち消すほどいやなイメ ージも伝わっているのではないだろうか。……業界での上下関係ははっきり しているのだから、高いレベルでの意見と意見のぶつかり合いのなかで解決 していくことが必要だと感じる。」 5) (建設業界について思うこと)、匿名、93/08/27 「……、昭和30年代には、技術提案型の入札の時代があった。審査採用にあ たって、設計思想や技術力の評価に発注者、学者などが入り乱れ、結局は最 小数量、最低価格が採用され、必ずしもうまく機能しなかった。多様な価値 観のなかから一つのものを選び出すシステムが欠けていたのが原因だと思う。 ……﨣 が利権となって不純な関係が成立することのないようなシステムを つくり出すことだ。腹芸からロジックへ、閉鎖型から開放型のシステムへ切 り換える必要がある。」 6) (業界を甘やかした自治体幹部は再考を)、匿名、93/09/24 「……劣悪な建設会社が大手を振って建設業界を仕切っている。これは、昔 から、市側が「臭いモノにはふたをしろ」と言わんばかりに、地元の会社を 甘やかしてきた結果であると思う。技術力がなくても受注してきた会社の施 工能力は、まったく向上しない。……できばえは悪く、とても完成検査で合 格に値するものではない。……不合格を与えても、次回の入札では再び指名 されている。この矛盾には、本当に嘆かざるをえない。……役所の上層部は、 自分たちがまいた種の結果であるせいか、「まあまあ、そう言うなよ」で終わ ってしまう。私は役所の第一線にいて、市民が市のやり方に対して強い不信 感を募らせているのを肌で感じている。……」 7) (技術力もって入札を正したい)、山本尚史、93/11/26 「……指名のあり方そのものを見直してほしいと思う。例えば橋梁工事の場 合橋長20m程度の桁橋であっても、日本を代表するようなそうそうたるメン バーが名を連ねて入札に参加する時がある。ところが、無名の地元企業がそ こに参加しようとしても指名を受けることができない。施工能力にかかわら ず、実績がない企業は指名審査の段階で落選してしまうのである。……実績 日本の建設技術開発の問題点 21(224)

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とは何か。売上高、技術力、有資格者の数など、もっともらしい数字も実績 を表現するには必要だ。しかしそればかりが、指名に残るための決定的なデ 一タではない。重要なのは、過去に指名を受けたことがあるかどうかなので ある。……それでは現在のように競争の厳しい世の中で生き延びていくため には、どんな手を打てば最初の指名実績ができるのだろうか。私は結局のと ころ、営利に執着しないコンサルティングを行うことで技術を表現し、徐々 に信頼を得ていくというような、地道な努力しかないと考えている。……」 8) (企画力で勝負できる土壌を)、野口哲史、93/12/10 「建設業界における受注競争力、政、’ッ、民を巻き込んだ恣意(しい)に満 ちたものであることは、世論の指摘するところだ。この元凶のようにいわれ るのが指名競争入札制度である。この制度が今まで支持されてきたのは、建 設関連の地場産業の育成と施工品質の維持という二つの役割があったからだ といわれている。現実に照らすと見直しも必要だ。まず、地場産業の育成と いう役割だが、公共工事の使命として大切な要素だとはいえ、現在は地元に 配慮した建設版の「食糧管理制度」のような働きしかしていない。人手を集 めて登録しさえすれば公共工事にありつける建設業のシステムが50万社もの 乱立を許している。いつまでも労勧集約型産業から脱皮できないのは、この すべての企業を保護する政策に原因があると思う。……企画や計画の段階か ら民間に任せる方法を導入することを早急に検討すべきだと考える。……会 計法、建設業法を改正してでもコンストラクション・マネジメントの手法を 取り入れ官公庁は行政面に集中すべきだろう。残念ながら、各企業は従来の 制度を維持するのにかなりのコストをかけているのが実情だ。しかしこれら は本来、技術競争に向けられるべきものだと思う。建設業の健全な発展のた めに、企画力や技術力で評価できる制度の確立を切に願っている。」 9) (問われる技術者の力量)、椛木洋子、93/12/24 「国民に対し、自由競争の下で有効に税金が使われていることを示す必要が あるだろう。しかし、ここでやっかいなのが自由な競争という考え方だ。あ る程度、形の決まったものをつくる場合なら、価格で勝負することも可能だ ろう。しかし、土木の分野では単品生産が基本である。だから、純粋な価格 競争にそぐわないものもあると思う。我々コンサルタントが通常手がけるプ ロジェクトは、ほとんどがゼロからの出発である。この場合の設計費は、ア イデアに対する報酬といえる。……設計の対価に見合うように、新たに設定 する一定の予算内で、いかに高品質のものを提案できるかという競争になる と思う。そこでは技術者の力量が厳しく問われることになりそうだが、これ は歓迎すべきことだ。この競争が定着していくためには、各社の技術力や成

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果を的確に評価するシステムを確立しなければならないのはいうまでもない。 ……驪ニの経営方針や発注者のスタンスも、そろそろ技術を重視する方向に 変わっていかなければならないのではないか。」 10) (市場競争原理が働く仕組みが必要)、川口徹、90/11/23 「土木事業では、企画、設計などの創造的な仕事の実権は、発注機関である 役所が握っている。しかし私は、官庁が高い技術力や情報を持っていた時代 は終わったと考えている。これを補完するには、企画や設計の分野で民間活 力が働く方法、つまり市場競争原理が働く仕組みを作る必要があると思う。 ……d事を受注するために官庁OBを採用しなければならないなどという仕 組みを徹底的に改めなければ業界は変わらない。純粋な技術や創造力の競争 によって仕事を受注するようにならなければ、建設業界はほかの産業からま すます取り残されるだろう。官庁に気を使うことなく、建設業界全体で正面 から議論すべきだ。」 11) (製造業離れによる空洞化が心配)、薄田治堆、90/11/23 「ここ数年、理工系学生の製造業離れが社会問題として取り上げられるよう になった。特に首都圏においてこの傾向が著しく、昭和63年に製造業に就職 した理工系学生は全体の40%にも満たなかったという。放っておけば、近い うちに、製造業の技術力の低下を招き、ひいては日本経済の将来をも危うく するのではないか。」 12) (社会に貢献できる建設業に)、可児正人、92/05/08、「技術開発」4) 13) (技術で競争する体質に転換)、松岡誠、92/08/14、「技術開発」5) 14) (コンサルタントの体質改善を)、匿名、92/11/27 「……建設コンサルタントに要求される業務内容は、より多様化、高度化し ている。しかし、実務面では、相変わらず従来の設計を踏襲するだけにとど まっている。それどころか、最低限の照査すら怠った成果品が増えているよ うで、最近は設計の不備を会計検査で指摘されることも多い。……多くのコ ンサルタントは体質改善を建前の世界でしかとらえていない。このため、自 分たちが危機に直面している現実を理解できないでいる。こんな企業体質を 産んでいる大きな要因として「OB体質」の発注体系に依存した経営方針があ る。……いくら成果品の質が悪かろうと、報告書を納めさえすれば、また仕 事を受注できるのである。このため「人数さえ集めれば設計はできる」とい う技術軽視の考えと、生産能力を無視した受注量優先の経営がまかり通る。 ……Z術者側の問題は能力ある人材の不足だ。多くの実務担当者が、膨大な 業務量に疲れ切っていることも事実だが、ものを計画・検討し、最良の案を 提案するというコンサルティングの基本ができない技術者も多くなっている。 日本の建設技術開発の問題点 23(222)

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若い技術者が育つ土壌が失われているのだ。……状況を変えるには、正当な 技術競争が可能になるような施策を、発注者側が採る必要があると思う。優 良会社を登用し、不良会社を排除する明確な行政システムを設けるなど、か なり強硬な手段を講じなければ、コンサルタント業界の体質改善は難しいだ ろう。……コンサルタントが生き残る道は、計算・製図を専門とする官庁の アシスタントに徹するか、技術力を商品とする本当の「コンサルタント」に 転身するかの二者択一である。……」 15) (魅力アップに必要な二つのこと)、八幡敏正、92/08/28 「……我々、仕事に忙殺されているコンサルタントにとっては実に垂誕もの であった。土木職場の魅力アップが望まれて久しいが、次の2点が肝要なの ではないか。一つは土木技術者自身の資質の向上である。繁忙なためもある が、多くの土木技術者は自身の資質向上に怠慢な傾向がある。現場技術者は 目先の書類作成や段取りに追われるマネジャーと化し、コンサルタントは自 己提案能力のない発注官庁のドラフターか計算機に成り下がっている。…… 土木事業が限定特注生産品であるということをさらに強く認識すべきという ことだ。工場規格生産品とは異なるため、適正受注以上の増産は非増益的で あり、暇疵発生の原因ともなる。受注産業であるからには発注側で適正単価 で発注すべきと考える。高品位の技術力で余裕のある仕事をし、収益増加と いうのが一番だと思う。」 16) (コンサルの能力に応じた発注を)、矢部栄光、92/11/13 「……建設コンサルタントが乱立気味で、コンサルタントとは名ばかりの単 なる「製図屋」が多くなっている。特に地方では、この傾向が強く、設計に 際して何の検討も行わずに我々発注者に「どうしましょうか」と聞いてくる 場合さえある。……頼りないコンサルタントでも、優秀なコンサルタントで も委託料は基本的に同じ。それぞれが受ける報酬も同じだ。これでは優秀な 技術者は報われない。……発注者側も委託業務を「コンサルタント的業務」 と「設計製図的業務」に分け、能力に応じて仕事内容を分けるようなシステ ムをつくるなどで、技術力を持つコンサルタントが活躍できる場を提供する 必要がある。……」 17) (品質保持のためには指名が必要)、相川致治、93/10/08 「世間で入札制度に対する議論が高まっている。マスコミは一律に、一般競 争入札がベストという論調だ。しかし日米関係を含めた戦後の歴史をみても、 私は簡単には同調できない。戦後米国の宣伝にいかに私たちが振り回された か、身近な例をみてみよう。米よりもパンのほうが頭によいとか、肉食のほ うが体によいなどと聞かされた覚えがあるが、なんのことはない。米国から

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の小麦粉や肉の輪入が増えただけで、今では、米食や魚のほうがベターだな どと言っているではないか。・…・・土木構造物は、見かけや落札価格が同じで あっても、でき上がりの品質によって、耐用年数は大きく異なる。……土木 構造物の耐久性は、完成品を見ただけではわからない。施工会社の技術力、 質の高さだけが良否を左右するといえる。発注者が質の高い会社だけを入札 に参加させるところに、指名競争入札対制度の良さがある。」 18) (技術資料を評価する第三者機関を)、匿名、94/01/14 「……客観的に技術力で勝負することには賛成だ。……技術資料を公正に評 価できる第三者機関があれば、努力も報われるというもの。しかし現実には、 世間であれほど非難されているのにもかかわらず、相変わらず談合が行われ ておリ、技術資料の提出は世論の非難をかわす一手段であるようにすらみえ る。このままでは、どんなに新しい入札制度を導入しても根本的な改善には ほど遠い。……」 19) (過保護からの自立に取り組む時)、堀義博、94/03/25 「……建設業界ではいまだに被害者意識が非常に強い。例えば、地方の中小 建設会社の問では、「なぜ大手ゼネコンの巻き添えを食わなければならないの か」という考え方が大半を占めているようだ。しかし、そのような考え方自 体がこの業界の甘えを表しているよういるに思う。これまで建設業界はどれ だけ国に保護されてきたことだろう。建設業の許認可は実に容易に取得でき る。不況時には景気対策として公共投資を増やしてもらえる。外国企業の参 入も制限している。……現在の下請け任せの施工体制では、どの元請け企業 が施工しても結果は同じである。下請け施工体制の見直し、下請け企業を指 導できる力をもった技術者の育成、このようなところから始めて、各企業が 技術面で独自性を出すにはどうしたらよいかを真剣に考えることだと思う。 …・・ソ格だけの競争には限度があり、最終的には技術力の差が勝敗を決める ことになるだろう。公共工事といえども自由競争の経済原理が適用されるの は当然である。価格や技術力など、客観的に比較できる尺度で勝負できるよ うな土壌が早く培われることを望んでいる。真に競争力のある強い業界とな るために、建設業界はまず被害者意識をなくし、過保護であったという状況 を認識することから出発しなければならないと思う。」 20) (新技術には発注者側の理解が必要)、西田薫、94/01/28、「技術開発」8) 21) (道路の補修工事は昼間に)、太田裕志、94/02/11 「……維持や補修に対する必要性が年々高まってきている。私は道路の維持 管理の作業に携わっている。……道路を新設するにあたっては、完全な規制 の下、十分な時間を割いて工事が行われている。ところが、補修ということ B本の建設技術開発の問題点 25(220)

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になると話は別である。作業は夜間に回されがちで、しかも真夜中から早朝 にかけての限られた時間のなかで行っている。交通の妨げにならないように 工事を進めなければならない、というのが主な理由だ。……今後は適切な作 業を行うことができなくなるだろう。一部の車線を制限したり、通行止めの 区間を設けることで、既に昼間の工事を行っている発注者もある。すべてに 導入するのは難しいと思うが、少しずつでも昼間の仕事か増えていくことを 願っている。」 22) (役所も技術力高めるシステムを)、匿名、93/01/08 「……役所の規模や事業が拡大するのに伴って、職員が目先の事業執行に追 われるようになった。一つひとつの工事が終わりさえすればよいと考えてい るようにさえみえる。……発注者側の技術力が育たない原因は、日常の雑務 に追われて自主的な勉強を怠ってしまう点にある。たとえば、単純な応力計 算のミスもチェックできないといったことも起こる。2年に一度の会計検査 すら、コンサルタントが処理しているのが実態だ。行政マンとして街づくり の夢を描くのも、会計検査も、ひとのふんどしを頼りにしているのでは情け ない。……役所にはシステム化された研修制度もないし外部の研修に参加し てもその場限りになりがち。結局、新人が育たないのでコンサルタントに頼 る構図が続いてしまう。これをどこかで断ち切り、若手を育てる環境をつく るしか方法はない。そのためには、既存の体制に新たなシステムをはめこむ だけの裁量が求められよう。……」 23) (格差が縮まる競争を望む)、平沢雅己、94/04/08 「……政府が今年1月に出した「公共事業の入札・契約手続きの改善に関す る行動計画」では、94年度から一定基準額以上の工事については一般競争入 札を採用し、基準額以下の工事についても透明性、客観性、競争性を高める こととなっている。……この改革で超大手企業だけが得をするような事態が 起きないことだけを願っている。周知の通り、わが国の建設会社の数は53万 社に及ぶと言われている。しかし、建設投資額の半分近くの受注は、大手ゼ ネコンの数十社で占められており、そのなかでも上位と下位の格差は非常に 大きい。このような状況のもとで技術力や実積だけを重視して競争を行った のでは、力のある企業ばかりが伸びて、中堅以下の企業がつぶれてしまう恐 れがある。……中堅以下の企業に対してビジネスチャンスが増えるように制 度を見直し技術力をつけさせることがまず必要だ。大手企業との格差が少し でも縮まれば、より活性化した魅力ある建設業界になると考えている。」 24) (健全な調整を経て一般競争へ)、船岩充、94/05/13 「汚職事件にともなってゼネコン各社が長期間にわたる指名停止を受けてい

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る。当事者にとってはたいへん重要な問題だ。しかし、事件の本質と建設業 の本質を考えると、一般に行われている議論は筋違いのような気がしてなら ない。……談合の形をとった調整作業は、この世界ではある程度、必要だと 思う。どの会社でも請け負うことができる工事ならまだしも、高度な技術を 要する工事や大規模な工事において、調整作業を一切なくして入札を行った ら、完成品の安全を保証するのは難しいと思う。小さな会社ができもしない 工事を安く入札し、その結果、手抜き工事を招いてしまうよりは、話し合い で技術力のある施工者を決めることの方が、健全な社会資本をつくりあげる ためには必要だろう。・…・健全な競争のためにはどうしたらよいのだろうか。 それには施工者間の格差をなくさせる努力が必要だと思う。例えば利益の一 部を技術開発に当てることを義務付け、技術力を前面に押し出して競争させ る。……健全な話合いという段階を経て一般競争に移行するのが施工者に受 け入れられやすいやり方だと思う。もちろんそれには、各施工者が常に技術 力を高める努力をすることが前提となる。互いが技術力を堂々と見せ合って 戦う姿を待ち望んでいる。……」  以上の意見から「技術力」に関連する事をまとめると次のようになる。 (1)現在まで各社が技術競争をしてきていない。まともな技術を持っ ていなくても52万社の中には地方の工事を受注できていた例もある。ま た大手の建設会社のいずれに発注しても遜色無い仕事を仕上げる事が出 来ていた。このことを考えると日本における建設技術は平均化しており 飛び抜けたものはない状況にある。  このような状況が生じたのは何故か、その一つは技術力よりは営業力 に力を入れた方が会社としては投資効果が短期にあがるし効率的である。 その効果を最も早く挙げるためには、高級官僚の天下りである。技術開 発に投資するよりはるかに効率的である。営業力を強くするためには業 界での影響力を強くすることである。このためには政治力に直結するの が手っ取り早いし、政治家にとっても魅力ある仕事になるわけである。 したがって技術力は業界の平均程度を維持し、官側にも受け入れやすい 状況での開発で良いことになる。すなわち標準積算基準に載せられやす 日本の建設技術開発の問題点 27(218)

(27)

い程度で、どこの会社でも利用できる事が条件となる。従って特許をと って技術を十数年間独占しようとする事はタブーとなってくる。 (2)この様な業界で指名競争入札制度から一般競争入札制度に転換す ると、技術力の無い会社が低価格で落札し品質の悪い工事をする点を指 摘する意見が出てくる。このため一般競争入札にはにわかに賛成出来な い、指名競争入札の良い点を改良すべきとの意見が出てくるわけである。 これは従来から施工した工事にだれがどれだけの責任を持つか明確にな っていないからである。表面上では施工業者が負う事になっているが、 投書にも出されているように問題を起こした業者がすぐにつぎの工事を 受注することがあるとされている。 (3)また52万社ある建設業者、コンサルタントで提案型の入札に耐え られる業者はいくらもいないことが推定される。従ってコンサルタント を設計製図屋とコンサルタント屋に分割する提案も出てくる。これも従 来から行政が技術開発型の発注を指導をしていないし、ある場合には便 利屋的な業務委託をしているからである。ましてや会計検査対策の仕事 をコンサルタントに委託することは、技術力をつけさせる事には全くな っていないし雑務を押しつけている事になる。このことは官側の技術者 の日常業務が多すぎて、それ以外の仕事に手が回らないこと、新技術を 勉強しようにも時間がないことが指摘されている。 (4)このような背景を考慮すると外圧に屈して、にわかに一般競争入 札制度やプロポーザル方式の入札制度を導入しても成功しないとの指摘 は、当たっているかもしれない。導入しても対応できる程の力を業界が 持っていないと考えられる。従って表面上は官側、民側双方が力を合わ せて繕うでしょうが、混乱が生ずる事が推測される。過剰に保護されて いる業界では、親に保護されている子供のように、突然見放されるよう な事をされても、自ら解決する手段を見いだせないでしょう。強い行政 指導が必要になる事が推測される。

(28)

(5)投稿者の多くは技術競争になることを望んでいる。しかし冒頭で 述べたように現在の建設業界は営業部の競争であって技術部での競争で はない。その上民間側で開発した新しい技術、アイデアも発注者の官側 が認めないものは技術として認定されないし、採用もされない。そこに あるのが過去に採用されたと言う実績という壁である。これをまともに 解釈すると新技術はいつまでたっても全く採用されないことになるが、 実際には勇気ある官側の職員によって細々と採用されている。何故実績 という壁が出てくるかを推測すると、官側で予算を積算するときに新技 術については積算基準が無いことに起因する。民側の提案する資料をも とに積算することになるが、そのことが会計検査の時点で説明が出来な ければいけないことになる。それまでの努力をして新技術を採用するか は、官側の技術者の大きな悩みであろうと推測する。従って多くの場合 は従来技術を採用する事になる。 (6)このような状況を考えると、投稿者が言うように、ある工事を新 技術で予定工事期間より早く終了して、利益を挙げるような事は許され ない事になる。すなわち積算基準に無い工法、新技術で施工することは、 官側の技術者の積算根拠を失わせる事になる。当然会計検査の時点で官 側の技術者が工事価格を高く見積もった責任を追及される事になる。し たがって予定工事期間を著しく短縮して工事を仕上げることはまずいこ とになる。 (7)投稿者の多くが望むような技術力による競争、プロポーザル型の 競争が行われるようになった時にいくつかの間題が生ずるであろう。そ の一つは官側、発注者側の技術者に技術力を評価出来る実力が無い場合 がある。多くの官側の技術者も日常の業務に追われており、新技術を勉 強する暇がないのが実状である。価格競争のように数字で割り切れない ところで判断をすることになり、難しい決断をすることになる。もう1 つの民側では技術力が無いために入札に参加することが難しくなる企業 ll本の建設技術開発の問題点 2g(216)

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