動向について述べている。第 2 章では、「分子間相 互作用に基づくネットワーク型計算機械の研究」と して、分子の論理を利用した新しいアルゴリズムの 構築を目指し、能動機械としてのコントロールフ ロー・クラスタ、エネルギー最小化に基づくネッ トワークの繋ぎ換え規則、アクティブノードプロ グラムによるネットワーク構造の自己組織化、分 子エージェントとプログラムフロー・コンピュー ティングについて述べている。第 3 章では、「生物 システムにおけるシグナル伝達とその計算・通信 システムへの応用」として、細胞シグナル伝達ネッ トワークとその形式モデル、シグナル伝達ネット ワークの動態分析、細胞シグナリング・パスウェ イに対する誤り訂正符号について述べている。 第 2 部「分子通信技術の研究動向」では、「バイ オ ICT としての分子通信技術」として、生物的な 情報通信技術である分子通信技術について、生物 システムにおける分子通信、分子通信アーキテク チャ、分子通信の設計について述べている。 以上の内容を通して、生命の持つ優れた機能から ヒントを得て情報処理モデルを構築することによ り、様々な情報処理システムや情報通信システムを 設計し、実用的な問題を解決できることが示される。 また、生命の持つ機能そのものを分子レベルで利 用することにより、分子を用いた情報通信システ ムを構築できることが示される。これらの技術の 中身は、既に実用化されているものと、将来的に 実用化が期待されているものを多数含んでいる。 「生命に学び」未来の情報通信システムを設計・ 構築することは、現代に至るまでの科学・技術の 発達の歴史からみると、「新しいパラダイムの創 造」であると考えられる。「知性」の本源であるヒ トや動物の脳の示す優れた構造や機能が、40 億年 という永い生命進化を経て初めて獲得されてきた 事実に思いをはせると、人智の遠く及ばない精妙 かつ深遠な生命の構造と機能だけでなく、生命進 化のメカニズムそれ自体を虚心坦懐に学ぶことに より、我々に実りある多くのアイデアをもたらす 可能性がある。 本特集では、生命に学ぶ情報通信技術の研究動 向と分子通信技術の研究動向、それらの将来動向 などについて解説する。情報通信研究機構神戸研 究所未来 ICT 研究センター(KARC)で実施されて きた研究内容(第 1 部:「生命に学ぶ情報通信の 研究動向」)と、共同研究先であるカリフォルニア 大学アーバイン校(UCI)での研究内容(第 2 部: 「分子通信技術の研究動向」)を中心に、国内外で 行われている関連研究についてもレヴューしなが ら概要を紹介する。 第 1 部「生命に学ぶ情報通信技術(ICT)の研究動 向」の第 1 章では、「生命に学ぶ情報通信技術(ICT)」 として、「なぜ生命に学ぶのか?」という命題に対 する回答を与えることにより、脳機能モデルリン グに基づく情報処理、生命進化に学ぶ情報処理、 細胞の初期進化モデリングに基づく情報処理及び 最近注目を集めている複雑系ネットワークの研究 1
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