ともに学び合う児童の育成を目指した授業づくり 高度学校教育実践専攻 実習責任教員 木下 光二 教員養成特別コース 実習指導教員 野村 篤 穴見 真里奈 キーワード:ともに学び合う,他者との関わり,発問,問い返し 1 はじめに 筆者の育てたい児童像は、「他者と協働するこ とができる児童」である。人々が生きていく上 でカギとなる力、キー・コンピテンシーの1 つ に、「多様な集団における人間関係形成能力」が あり、他者との関わりが重要であることが分か る。しかし、「児童生徒の問題行動等生徒指導上 の諸問題に関する調査」(2009)で、児童生徒が 不登校となった一因として、友人関係をめぐる 問題が挙げられているように、他者との関わり に悩む者もいる。どの児童も、それぞれ、すば らしい力を持っており、その力を他者との関わ りの中でも発揮し、輝きながら生きていって欲 しい。これが、筆者の育てたい児童像に込めた 願いである。授業を中心とした学校生活の中で、 児童が他者とよりよく関わっていく素地を培う ことができるようにしたいと考える。 2 基礎インターンシップ 1 年次後期、徳島市内の A 小学校の 3 年生に 配属され、授業実践を行った。 算数科「三角形」の授業では、児童の発言を授 業に活かすことができなかった。授業のプロト コルを検討すると、筆者自身が進めようとして いる授業の流れから外れた発言を、聞き流して しまっていた。そもそも、児童の発言をもとに 授業を進めていくという考えがなかったのだと 思われる。 一方、道徳「ぼくらは小さなかにはかせ」の授 業実践では、事前に行ったアンケートの効果も あり、児童から多くの発言を引きだすことがで きた。しかし、児童同士でお互いの考えや思い を深め合うことはできなかった。その一因とし て、筆者が児童の発言を広げたり深めたりする ような言葉かけができなかったからだと考える。 前述したことをふまえて、基礎インターンシ ップで得た授業実践における課題は、「児童の発 言をつなげたり深めたりする。」ことだと考えた。 3 ともに学び合う授業について 一人の児童の発言を他の児童にも広げて、児 童一人一人の考えを深める。このような、「とも に学び合う」授業を行いたいと考えた。 1.「ともに学び合う」とは 嶋野(2013)は、「学び合う」ということについ て、「自己との対話を重ねつつ、他者と相互に関 わりながら、自分の考えや集団の考えを発展さ せて、共に実践に参加していくこと」と定義する。 自分自身の考えを持ち、他者の発言を聞きなが ら考えを再構築することだと捉える。 2.筆者が考える、ともに学び合う授業 ともに学び合う授業の前提として、児童が授 業に参加できることを大切にしたい。それは、 児童が授業に対して興味を持ち、教師に問われ ていることや、今自分は何をしなくてはならな いかが分かっている状態である。そして、以下
の4 つのともに学び合うための活動を大切にし たい。①児童が考えや思いを持つ、②児童が思 いや考えを周囲に伝える、③児童の発言等を課 題解決に向かわせる、④話し合い、聴き合う授 業である。 これらの要素をもとに、2 年次の総合インタ ーンシップを行った。 4 総合インターンシップ 2 年次 4 月から、鳴門市内の B 小学校でイン ターンシップを行った。 1.道徳「かぼちゃのつる」2015 年 6 月 4 日 (1)手立て ア 児童の興味を引きつけ、発問等を理解でき るようにするために、板書の工夫を行う。 イ 児童の多様な考えや思いを引きだし、学び 合うために役割演技を導入する。 (2)分析と考察 ①手立てアについて 「(かぼちゃのつるは)ぐんぐんのびていきま した。」という文章の一部を抜き取ったセンテン スカードを提示し、つるを伸ばすかぼちゃの気 持ちを尋ねた。すると、発問に沿っていない発 言があった。文章の一部だけではなく、発問内 容を記したものを提示するべきであった。 ②手立てイについて 犬達に注意されたかぼちゃの気持ちをもとに 役割演技を導入した。しかし児童は困惑し、う まくいかなかった。その一因として、指示不足 だったことが考えられる。また、発問後に考え る時間を設けず、すぐに役割演技を行ったため、 児童はしっかりかぼちゃの気持ちをしっかり考 えられていなかったのだろう。 ③手立てアイ以外について:良かった点 「 (かぼちゃさんは)泣いているときにどん な気持ちだったんだろうね。」と発問を行い、隣 同士で話し合うように指示をした。多くの児童 が話し合い、学び合うことができたと考える。 ④手立てアイ以外について:反省点 授業後、授業を深めることができなかったと 感じた。発問内容に問題があったと考える。「(か ぼちゃは)つる伸ばしよるとき、どんな気持ちか な?」と発問を行った。児童から、「うれしい。」 という発言があった。「うれしい。」というだけ の発言にとどまるのではなく、もっと率直な思 いを引きだしたかった。児童から多様な発言を 引きだす発問により、授業自体も深まるだろう。 (3)成果と課題 ①成果 発問を行った後に、ペア活動を導入し、隣同 士で話し合うことでお互いの考えや思いを聞き 合うことができた。 ②課題 児童の実態に沿って、指示等をして、役割演 技を行う必要があった。 児童の率直な考えや思いを引きだすことがあ まりできなかった。発問の精選が必要である。 2.道徳「ぽんたとかんた」 2015 年 6 月 8 日 「かぼちゃのつる」での反省点をふまえ、道 徳「ぽんたとかんた」の授業実践を行った。 (1)手立て ア 児童の興味を引きつけ、学び合いに参加で きるよう、教材の提示を紙芝居で行う。 イ より率直な思いを引きだすために、発問の 工夫を行う。また、問い返しを行い、児童の 考えを深められるようにする。 ウ ペア活動や役割演技を導入し、新たな視点 を得て、自分の考えを持つことができるよう にする。 (2)分析と考察
①手立てアについて 紙芝居で教材提示を行った。多くの児童が引 きつけられていた。教材への考えや思いを持ち やすくなったと考える。 ②手立てイについて 「ぽんたは心の中でどんなことを言ってると 思う?」と発問を行った。すると、「大丈夫かな。」、 「ぼくも遊びに行きたいって言ってる。」と児童 の率直な発言を引きだすことができた。 また、「大丈夫かな?」と言う発言に対し、「大 丈夫かなって、優しいなあ。優しいねえ。だっ て、かんたくん先に行ってしまったのに。」と問 い返した。その後、問い返しには沿わない発言 が続いた。もう少し発言を集めてから、問い返 すべきだった。しかし、手を挙げずに座ったま ま、「だって、お友達やけんで。」とつぶやく子 がいた。この発言を取り上げて、児童同士考え を深め合うことができたと考える。 ③手立てウについて 前時の反省から、本時では役割演技前にペア 活動を導入し、考えを持てるようにした。しか し、役割演技をする児童は困惑していた。役割 演技前の発問が分かりづらかったと考える。自 分自身の考えが持てず、ペア活動が成立しなか ったのだろう。また、机間指導の際に、児童が どのような考えを持っているか把握し、それを もとに指名すべきだった。 ④手立てアイウ以外について:良かった点 ほめて、聞く態度を持続させることができた。 (3)成果と課題 ①成果 教具や発問の仕方の工夫により、児童が考え を持ちやすくしたり、発言しやすくしたりする ことができた。また、ともに学び合う際に必要 となる聞く態度を持続させることができた。 ②課題 問い返しのタイミングを、その場の状態に応 じて考える必要があった。また、どの児童も考 えを持つことができるように、発問や授業の流 れを工夫する必要があった。 3.国語科「うみのかくれんぼ」2015 年 10 月 1 日 「うみのかくれんぼ」は児童にとって、2 単 元目の説明的文章である。文章中には、「なにが、 どのように かくれて いるのでしょうか。」と いう「問い」に対し、三種類の海の生き物につ いての「答え」が列挙されており、事柄の順序 が分かりやすく説明されている。本授業はもく ずしょいについて書かれた文章を主に取り扱い、 それとともに文章全体のまとめを行った。 (1)手立て ア 黒板に本文をまとめた表を掲示し、児童が事 柄や文章構成上の順序に気付けるようにする。 イ 教師が児童の言葉をまとめてしまうのでは なく、児童の発言に対して問い返しを行う。 ウ 児童が本文に線を引く等して、自分の考えを 持った後にペア活動を導入する。また、ペア活 動の際に話し合う内容を提示する。 (2)分析と考察 ①手立てアについて 「うみのかくれんぼ」の文章全体を振り返り、 文章全体に対して考えを持てるようにしようと、 学習してきたことをまとめた表を黒板に提示し たが、もっと発達段階を考慮した手立てを考え るべきであった。表だけを用いて文章構成の工 夫に気付かせることは難しかったと考える。 ②手立てイについて 授業の冒頭で、発問に対して筆者が意図して いない答えを言った児童がいた。その後、筆者 は児童の発言は取り上げずに、他の児童に発言
を促した。この児童の発言も大切にしつつ、学 級全体で答えの根拠を考え、問題に迫るべきで あった。 ③手立てウについて 話し合うことを提示し、ペア活動を行った。 線を引いた箇所について話し合うように指示し たが、児童はあまり話し合わなかった。恐らく、 話し合いたい内容でなかったからだ。 本単元の導入の時間でペア活動を行い、生き 物を見つけたことを話し合わせたときは、児童 は楽しそうに話し合っていた。話したい、また は他の人のお話を聞いてみたいという気持ちに なる活動を行う必要があると改めて気付いた。 (3)成果と課題 ①成果 話したいと思うような話題を提示し、児童同 士で話し合うことができた。また、話すことを 提示して、話し合いやすくなったと考える。 単元を通して、児童の実態に合わせて、授業 計画を行うことが大切だと実感できた。 ②課題 意図していない発言を、授業に活かせなかっ た。全体に問い返すことで、活かすことができ たと考える。また、ペア活動の充実を図れなか った。話し合いたくなる活動を行う必要がある。 5 2 年間の学び (1)授業実践について 前述した他に、次の3 点を心がけて、ともに 学び合う授業を目指していきたい。 ①児童を理解する 児童にはきっと、発言したいという気持ちが ある。しかし、発問を行うと、手が挙がらない こともある。児童が授業に参加できていないと 感じた際、自分自身の授業を振り返りたい。 ②児童の発言を大切にする姿勢を持つ 児童に、お互いの意見を大切にしてほしいの であれば、筆者自身が児童の言葉を大切にした い。発言を教師自身がどのように扱うか、児童 は見ている。それによって、児童の他者の発言 に対する姿勢が変わるだろう。 ③メリハリを大切にする ずっと同じ表情や声色だと、授業に変化がな く、単調になる。児童が授業に集中するために も、表情や声等にメリハリを持たせたい。 (2)学級経営について 授業の時間も含めて、児童と関わる際に心が けたいことを述べる。メンターが児童と関わる 姿を見て考えた。 ①「好き」を伝える 児童1 人 1 人、教師からの愛情の感じ方は違 う。ありとあらゆる方法で児童に「好き」を発 信していきたい。 ②メリハリのある関わり方 叱る時は表情や声色を一層厳しくする。普段 との差があり、伝えたいことが伝わりやすくな る。叱った後はすぐに普段の表情に戻る。この メリハリが児童の学級での居心地を良くする。 ③ 教師の日々の声かけの大切さ メンターは児童が発言することを忘れてしま った際、「思い出したらまた言ってね。」と声を かける。ある時、メンターではなく児童が、優 しい声で「思い出したらまた言ってね。」と言っ ていた。教師の日々の声かけが児童の心を優し い気持ちにするのだと実感した。 (3)最後に 児童に人々と関わる楽しさや喜びを味わって もらう、また教師自身が優しさや愛情を伝えた いという気持ちを忘れず,子どもの成長を支え る教師として堂々と頑張っていきたい。