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遺伝子型と表現型を考慮した共進化現象のモデル化

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Academic year: 2021

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(1)2L-1. 情報処理学会第66回全国大会. 遺伝子型と表現型を考慮した共進化系モデル 牧野 浩二† 東京工業大学 [email protected]. 1. はじめに. 生物の世界では多種の生物が相互作用しなが ら進化する共進化という現象がある.本研究は この共進化に着目し,生物の進化の一端を解明 することを目的としている.実際の生物は生体 情報として遺伝子を持っているが,その遺伝子 が異なっても同じ形質が現れることがある. 本稿ではこれらの関係を遺伝子型と表現型と して共進化のモデルを構成する.共進化のモデ ルを単純化し,かつ議論を分かりやすくするた めに,「花」と「蜂」の 2 種類の生物のみが存 在する環境を想定する[1]. 以下ではまず花と蜂のモデルを示し,次に 2 種の生物の相互作用により共進化と種分化が生 じ多種安定系が形作られることを示す.このモ デルを用いたシミュレーションを行い,遺伝子 型と表現型の対応関係の共進化への影響につい ても検討する.. 2. 花と蜂のモデル. 本モデルは蜂が蜜を集めて花の受粉を行う受 粉フェーズと交配を行うための交配フェーズか らり,花,蜂共にそれぞれ後述のアルゴリズム を用いて子を産むことで増殖する.特に蜂は実 際の蜂のような女王蜂を用いず,また多くの生 物に見られるような雌雄も用いない.以上の 2 つのフェーズを 1 ステップとし,決まったステ ップ数だけ生存すると寿命として死滅する. 花と蜂は共にある長さのビット列の遺伝子型 を 3 つ持つ.花の場合はそれぞれの遺伝子型に よって花の色,花の形,蜜の味が決まり,蜂の 場合は好みの色,蜂の形,適合する密が決まる. 本稿では遺伝子型により決まる形質を表現型と 呼ぶ.. 2.1 受粉フェーズ 蜂は以下の 3 つの行動を順に規定回数行う. 1. 蜂は一定のエネルギを消費して好みの色の 花へ飛ぶ.ただし,エネルギがなければ飛 ばない. 2. 花の形と蜂の形が合えば蜂に付着した花粉 をその花に付け,その花の花粉を蜂に付着 Coevolution Model Considering Genotype and Phenotype † MAKINO Kohji・Tokyo Institute of Technology ‡ NAKANO Kaoru・Tokyo University of Technology. 中野 馨‡ 東京工科大学 [email protected] させることで受粉を行う.ここで用いる花 粉には花の遺伝子情報が記載されている. ただし,最初に訪れた花には蜂に花粉がつ いていないため花に花粉を付けない. 3. 形が一致し,かつ蜜が対応していれば蜂は 花からエネルギを得ることができる.ただ し,花は 1 ステップに一定量のエネルギを 生成するため一定数以上の蜂が飛来したと きその蜂はエネルギを得ることができない.. 2.2 交配フェーズ 受粉フェーズが終了すると,蜂と花は以下の 手順で子を生む.交配は 2 つの個体が選ばれる とまず,遺伝子の全ビットを比較してその差が 閾値以下のときのみ,その遺伝子間で交差が起 こり,1 個体産出される.交差は遺伝子型ごとに 行われる.この個体の遺伝子にある確率で突然 変異を加えることとする. z 蜂の交配 受粉フェーズ終了後の残存エネルギが初期エ ネルギを上回っていた場合,その量によって 交配の回数が決まる. z 花の交配 受粉した花粉の数だけ種子を作る.種子の遺 伝子は運ばれてきた遺伝子と自己の遺伝子の 間で上述の手順に従い生成される.花の個体 数に上限を設定しており,種子はこの個体数 に達するまで発芽し,上限に達すると,残っ た種子は発芽しない. 2.3 共進化と種分化 花は色と形が同じならば蜜にかかわらず蜂が 飛来するため受粉できる.そこで,色と形が同 じで蜜が違う花も繁栄し,種分化が生じると考 えられる.この種分化により蜂も色と形は同じ で好む蜜が異なる蜂が繁栄すると考えられる. また,色の異なる花とその色を好む蜂が同時 期に生じると花は受粉することでがき,蜂はエ ネルギを得られるため,色の異なる花とそれを 好む蜂の種が分化すると考えられる.. 3. シミュレーション.  遺伝子型は色・形・蜜のそれぞれ 4 ビットと し,表現型はそれぞれについて A・B・C の 3 種 とする.花や蜂の表現型を表すのに色・形・蜜. 2−15.

(2) 交配に必要なエネルギを集めることができない ためと考えられる. BAA. 600. 400 300 200. AAA. 100 0 0. 100. 0001. 0010. 0100. 0001. 0010. 0100. 0101. 0111. 0110. 1001. 1011. 1101. 1010. 1100. 0011. 0101. 1110. 0111. 0110. 1001. 1011. 1101. 1111 1011 White. : Phenotype A. 1011 Gray. : Phenotype B. Black. : Phenotype C. 図 1.対応表 1. White. Gray. : Phenotype B. 花の個体数. number of flower. 400 CAA. 300. BAA. 200 AAA. 0 0. 1100. 100. 蜂の個体数. 1110. Black. 200. BAB. 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0. CAB. BAA. AAC. CAC. CAA. AAB AAA. 0. 100. 200. step. 花の個体数. 図 4.対応表 2 を用いたときの各ステ ップごとの蜂と花の個体数. : Genotype : Phenotype A. 200. 100 step. 500. 1111. : Genotype. AAA. 0. 600. 1000. 1010. AAB. 図 3.対応表 1 を用いたときの各ステ ップごとの蜂と花の個体数. step 0011. 200. 蜂の個体数. 0000. 1000. BAA. 1000 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0. step. 100 0000. number of flower. number of bee. 500. number of bee. を順に並べて AAB のように表す.例えば,この 表現型を持つ蜂が AAA の表現型を持つ花へ飛来 した場合,色と形は一致しているため受粉はで きるが蜜を得ることはできない.遺伝子型と表 現型の対応は図 1,図 2 に示すような対応表を用 いる.例えば 0010 0101 1110 の遺伝子は対応表 1 を用いた場合には表現型が ABC となり,対応表 2 を用いた場合には ACA となる.対応表中の線は 遺伝子型が 1 ビットだけ異なる型を結んでおり, 特に太線は同じ表現型を示している.図 1 は遺 伝子型中の 1 の数によって表現型を設定してお り,図 2 はランダムに表現型を設定している. 交配可能とする遺伝子の差の閾値を 4 とした. 例えば 0010 1101 0110 の遺伝子と前述の遺伝子 の差は 4,8 ビット目だけであるため 2 となり, この遺伝子を持つときは交配可能となる.また, 交配時の突然変異確率を 1%とした.  花・蜂はそれぞれ 5[point],8[point]の初期. : Phenotype C. 図 2.対応表 2. エネルギを持つ.蜂は飛ぶたびに 1[point]のエ ネルギを消費し,蜜を得ることができると花か ら 2[point]のエネルギを得て,花は 2[point]の エネルギを失う.1 ステップの間に蜂は 5 回花に 飛行することができる.蜂の後輩回数は残った エネルギから初期エネルギである 5 を引いた回 数とし,交配回数だけエネルギを 1[point]ずつ 消費する.交配フェーズ終了後,花は初期エネ ルギの 8[point]に回復するが,蜂は交配後のエ ネルギを用いて次のステップを行う.  シミュレーションの初期個体は花と蜂共に遺 伝子が 0000 0000 0000 の個体を 10 個体用いた. また,花の生存数の上限を 1000 個体とした. 図 3,4 にはそれぞれ対応表 1,2 を用いたとき の各世代ごとの花と蜂の個体数を示す.寿命を 1 ステップにしたときは 100 ステップ以内に全て 死滅することが確認されている.そのため寿命 を 2 ステップとして以下のシミュレーションを 行った.  図 3,図 4 から 2.3 節で述べたように花は蜜だ け異なる種が分化していることが分かる.しか し,蜜だけ異なる蜂の種は分化していない.こ れは蜜が異なる花に飛来する確率が低いために.  さらに,色が異なる花の種が分化しており, 蜂の種もこれに合わせて分化していることが分 かる.本研究のモデルで共進化が生じ,多種安 定系が形作られていることが分かる.また,遺 伝子型と表現型の対応の違いにより種分化と共 進化の起こりやすさに違いが生じていることが 確認できた.これは対応表 2 では 1 ビット異な るだけで表現型が変わる遺伝子型が多く存在す るため突然変異により異なる表現型をもつ個体 が多く生成されるためと考えられる.. 4. おわりに. 本稿では生物界に見られる種分化による多種 安定系の生成について報告した.モデルを単純 化するために「花」と「蜂」の 2 種に着目して モデル化を行った.このモデルをシミュレーシ ョンすることで種分化と共進化を生じさせ,種 安定系を形成できた.  今後はパラメータと共進化や種分化への関係 を検証していく.. 参考文献 [1] 中野馨.: “生命をつくる,” 臨時別冊・数理 科学, SGC ライブラリ 9, pp. 68-84 (2001). 2−16.

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