258 (68) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
オオ ヒガシ セイ ジ大東誠司(昭和3
博士(医学) 乙第1315号平成4年10月16日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
肝心閉塞性黄疸時における肝血行遮断に関する実験的研究 一全身ならびに肝血行動態,酸素需給動態におよぼす影響について一 (主査)教授 羽生富士夫 (副査)教授 浜野 恭一,東間 紘論 文 内 容 の 要 旨
研究目的 肝門部での肝血行遮断(Pringle法)は術中の出血量 を軽減するうえで極めて有用な方法であり,肝切除に 際してしぼしぼ臨床応用されている,しかし閉塞性黄 疸時における肝血行遮断の影響についての十分な研究 はなされていない.そこで閉塞性黄疸時の肝血行遮断 のおよぼす影響について,全身ならびに肝における血 行動態,酸素需給動態の面から実験的に検討した. 対象および方法 雑種成犬を用い,総胆管二重結紮・切離後2週間を 経た黄疸犬15頭(黄疸群)と正常犬8頭(正常群)と を比較した.静注麻酔下にSwan-Ganzカテーテルを 挿入し平均動脈圧,心係数,全末梢血管抵抗などの全 身の血行動態を測定.また大腿動脈,門脈および肝静 脈にカテーテルを留置し,各々の血液ガス分析を施行 するとともに,肝動脈,門脈血流量を電磁流量計を用 いて測定し,肝の血行動態ならびに肝酸素供給量,肝 酸素消費量,肝酸素利用率などの酸素需給動態を測定 した.次に肝一部にて肝動脈,門脈とを同時に20分間 遮断し,血行遮断前,遮断解除直後から解除後60分ま での全身ならびに肝における血行動態,酸素需給動態 の経時的な変動について観察した. 実験成績 1)肝血行遮断前の状態では,’黄疸群では正常群に比較して平均動脈圧に差はないものの心係数は充進
(p<0.05),全末梢血管抵抗は低下(p<0.05)してお り,全身の血行動態はhyperdynamic stateセこあった. また黄疸群の肝動脈,門脈血流量は正常群より増加 (p〈0.01)しており,肝酸素供給量,肝酸素消費量も 増加(p<0.01)していた. 2)肝血行遮断解除後,正常群での肝動脈血流量は増 加し,逆に門脈血流量は遮断解除直後は低下したもの の解除後15分以降は回復していた.これに対し黄疸群 での肝動脈血流量の増加率は正常群より低く(解除後 30分以降p〈0,05),門脈血流量の回復も遅延してい た. 3)正常群の肝酸素供給量は遮断解除直後には低下 したものの,解除後15分以降では逆にわずかに増加し ており,肝酸素消費量,肝酸素利用率については遮断 解除直後より著明に増加していた.これに対し黄疸群 の肝酸素供給量は遮断解除直後より全経過を通じて低 下しており,肝酸素消費量,肝酸素利用率の増加率に ついても正常群と比較して著しく低下(遮断解除直後 p<0。05,解除後15分以降p<0.01)していた. 考察および結論閉塞性黄疸時の全身の血行動態はhyperdynamic
stateにあり,黄疸肝における酸素需要は充進している ことが示唆された.閉塞性黄疸時のこうした状況下に おいて肝血行遮断を行うことにより,肝での酸素利用 は障害され肝酸素需給動態は著しく破綻することが明 らかとなった.様々な肝細胞障害がi惹起されている閉 塞性黄疸時においては,急激な肝血行遮断の負荷に対 する代償能力は低下しており,肝血行遮断の危険性を 十分に認識しておく必要がある. 一892一259