東京女署學會羅誌第9巻第3號
愚
説
血液凝固に就て
東京女子讐學西門學校鞭 末 吉
雄
治
血液力斌管外に出ると撒分後に凝固する事はH常吾人の遭遇する現象である。止ヒ血 液の凝固は如何なる機序に依って起るかに就ては,古くより多くの人々によって研究 せられて居る。今それ等の大要に就て述べたいと思ふ。 Schmidt(1870)は血液が1血管外に出ると,そこに酵素の如きものが出來そのもの の作用に依って血液凝固が起る事を實験し,その物質をThrombinと命名した。血 管内ではThrombinの作用を現はし得なV・Prothrombinとして存在し,それが出 血して一二管外に出るとThrombinに漿化し,初めてその作用を現はすがため血液が 凝固するとV・ふのである。 Hammersten(1880)は更にThrombinの作用は血液中に溶解せる繊維素原を緻 維素に攣化凝固せしめる事であって,之がために血液凝固とV・ふ現象が起る事を明か にした。Arthus u. Pages(1890)はlin液から「カルシ=ウムJを除去すると血液凝固が起ら ぬ,從って9ft液中の「カルシ;ウム」が拍1液凝固に必要なものである事を誰明した。 更に Schmidt(1893)はProthrombinがThrombinとなるには損傷を受けた組総液中 に存在する或る成分が必要である事を實験した。 以上述べた事實が基礎となり,その後多くの人々によりこの問題が研究されたので あるが,併し今日に於て玲未だ其機序が充分明かに刹って居なV・のである。 以上のやうな次第であるから,共機序に就て色kの読が多くの人々に依り提出され たのであるが,今其中の代表的のものに就て述べる。 Morawlzの読(1904) 一一一第9巷287一
出血するとItiL液中の「カルシ=ウム」と,損傷した血小板叉は組織より出で計る液の 中に含まれて居る Thtombokinase と話する物質とに依りて,.血液中に存在する ProthrombinがThrombinに曲論する。 Thrombinが生すれば之に依って1虹忌中の繊維素原が繊維素に攣化する師ち血液が 凝固するといふのである。 Bordetの詮(1912) Prothrombin(之をBordetはSergzymと稔し蛋白質に屡する)と,組織の中にあ る庵る物質自pちCyrozym(之はLecithin であるとV・ふ)とが結合し,更にそれに 物ルシウム」が結合して,Thrombinが出來るとV・ふのである。血液中にはSero− zymはその前階級なるProserozymの形となって存在し,出ditするとSerozアmに憂 化する。Thrombinが出論ると前の読と同様に繊維素原を繊維素に縫化せしめrkL液凝 固が起るとv・ふ。 Howellの詮(1925) :Howellは血液凝固を防ぐ物質を肝臓より取出し之を}leparin と命名した。此 Heparin は血液の中に存在して居るが,出血すると損傷した山L小板から叉は組織中 から出て來る物質が,(之はKephalinであるといふ)Heparinと結合するのでその 結果:Heparinと結合して居たProthrombinが離れる。此游離したProthrombinが 「カルシzウム」と結合してThrombinになるといふ。從來血小板や組織中から毘て 來る血液凝固を促進する物質はLecithinであると言はれて居たのが, Kephalinであ ることを提唱した。 Fuchsの詮(1929) 出di1するとKepha lin(損傷した部分の組織液叉は忍歩したるthL小板中に含まれて 居る)と蛋白質との結合したものがProthrombinとAntiprothrombin(Heparinの やうな)と結合せるものに作用し,ためにProthrombinが游離する。3(ni1小板及び .組織液中には已にProthrombin並にKephalinを含有するが故に,其中よりProth一一 rombinが出で慮り之に血液の.「カルシ=ウム」が結合してThrombinとなる。叉血 小板及び組織液より出でたる過剰のKephalinは,血液中のProthrombinとAnti− prothrombin.ニの結合物に反面してProthrombinを離し之よりThrombinを生する とV・ふのである。帥ち三つの方法に依って游離したProthrombinが供給され之が Thromb1nに憂化する,夫故に,多量のThrombinが生成されて血液凝固が起ると 恥ふQ
一第9巻288一
末吉=血液.凝固に就て 3 .Fi6cherの読(1934) Fi・scherは最近thL液凝固に話し最も多くの業績を報告してみる入である。此人の詮 に一依る.と,Prothromb{n,「カルシュウム」及びThrombokinaseに依ってThrombi11 .が出治るとV・ふ黒占は薪し∀・事・ではないが,從來の詮と異る黙は,第一にProthrornbin lより.、Thrombinに鍵化するためには等電黙が中性になる事:が必要である.といふので ある。帥ちProthrombin(蛋白質)は等電黙PH 5・o,であるがThrombinに攣化す ・るのにはそのPHが中性に移行しなければならなV・のである。 Heparinにて凝固を防 ・ぐ事の出藍るのは此等電黙が酸性の方に移行するが故であるとv・ふ。 第二に今迄は ThrombokinaseがKephalinであると言はれて居たが, FischerはKephalin 1ではな 矯ζ言ふのである・その理由は・元來KephalinはAlkohol不溶性のものであるか ら之を精製するにはAlkoholを用みて行ふのであるが,然るに之をAlkoho1で洗面 し純緯のものにすると,次第にその作用を失ふのである。故にKephalinではなV・と 矯ふのである。 以上が今日迄護表されて居る代表的の詮である。今之等の読を通覧して見るに,次 ./の黙が何れの読にも探用されてるるものである。 第一に,Thrombinに依妙繊維素原が凝固して繊維素となるといふ事。 .第二に・,Thrombinは血管中にては作用せざる形に於て存在する事(Prothrombin)。 第主に,出血すると「カルシュウム」及びThromboki【laseの如き既に組織中に存 −在する物質に依ってThrombinになるとV・ふ事である。故に此三二は先づ一般に認 められて居る黙である○ ..aSるに上記のThrombokinaseは如何なる物質であるか。初めぱ..・Lecithinなplと 言はれたが後にはKephalinであると言はれ,殆ど確實的であったが,叉最:近Fischer はKephalinでないと言ひ・出した,困れはKephalinをAlkoholで純粋にすると, 次第にその作用が無くなる島影から斯く言ふのである,.果して斯くの如くKephalin で無V・のであるか,然らば今迄Kepha玉inであると殆ど一般に信じられ,たのは如何な る理由に依るのであるか,此難に就て我教室に於て研究した.が其結果は次の如くであ る。 元払.Kephalinの構造はGlycerin÷飽和脂酸十不飽和脂酸十燐酸÷Ko臨m沁で ある。而して此成分の一一つva不飽和脂酸がある,今Kephalinlによく似た1講i造を有す
る:LecithinのCadmium化合物は, Alkoholに溶け難v・ものであるが, Lecithin を構成して居る不飽和脂酸が高度の不飽和脂酸である場合には,比較的酒精に多く溶
けることを實験した。之と同様の∼二とがKephalinの際にもあり得ると考へて實験し たが其結論果してKephalinにもA}kOhQlに比較的可溶性のものがありそれが高度 の不飽和脂酸より成るものがあって,』血液凝固を著しく促進せしめるものである事を’ 明かにした。 次に」畷夜凝固を促進せしめるは,Kephalinのみにてもその作用はあるが,之に蛋 白質を結合させたものは,非常に作用が謡い。そこで各組織のKephalin及び:蛋白.質 に就て,その作用の彊さを槍査して見た所,下表の如き結果.を得たのである(第一表A> 第 一表 A 鹸。.5。,,伽,。.・5。、 1tttttt”t ’t謝 照 1 .蛋 白 肺 心 筋 肝 脾 腎
1〈eph: lin
凝固時剛蛋白lK・pha1・・瞬固va間
40t 5t301t 7r30,r 17t 0 60t 0 6/0. 箭 一」 一 肺 11!0 一一 心㍉ 1 12/30
一「筋〔・7t・
一 肝 6’0 一 ・ 脾 4’0一 腎 i 7!o
此面で見る如く肺臓の蛋白と心臓の い,叉肺臓の蛋白と腎臓の]肺
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1 一一 Kephalin 肺 心 筋 肝 脾 .腎 肺 心 筋 肝 脾 腎 60/0 7/0 5/30”. 25t30U st’ Oi 6δノ0 6/0 6ノ.0 5/O、 12/30” 12/30” 41! O ’ 1 を結合させたものが最:も作用が彊 Kephaiinを結合したものも作用が強V・,何れの場合に. 於ても,i蛋白は常に肺臓のものが最強く,.Kephalinは常に心臓のものが彊いのであ・ る。 何’故に心臓のKephalinが払込V・のであるかを槍面した所,心臓の.Kephalin・中に は高度不飽和脂酸を有する Kephalinが多量に含有して居るからである事が明かと なった。 血液凝固を促進せしめる Kephalinは高度不飽和脂酸を含有するが故に・この黙一第9管290一
末吉=血液凝固に就て 5