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特発性非持続性心室性頻拍症の臨床的,電気生理学的,血行動態的および薬理学的検討

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Academic year: 2021

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Idiopathic Non-sustained Ventricular Tachycardia: Clinical, Electrophysiologic,.Hemodynamic,

Angiographic and Pharmacologic Study

Etsuko TANAKA

Department of Cardiology (Director: Prof. Koshichiro HIROSAWA)

Tokyo Women's Medical College

The pathogenesis and prognostic significance of non-sustained ventricular tachycardia

without overt heart disease (idiopathic VT) is unknown. Therefore, the clinical, electro-physiologic, hemodynamic, angiographic and pharmacologic characteristics were evaluated 50

patlents.

Since two patients had two kinds of VT, number of VT studied was 52 origins of VT,

evaluated by electrocardiographic morphology and endocardial paced mapping, were RV outflow

tract in 48 VT (LBBB pattern with normal or right axis), RV inflow tract in 2 VT (LBBB pattern

with left axis), and LV was suspected in the other 2 VT (RBBB pattern with Ieft axis).

VT was induced by exercise in 18 of 42 patients tested, and by emotional stress test in 5 of 33. Isoproterenol infusion facilitated VT induction in 7 of 12 patients. Programmed stimulation (most often rapid ventricular pacing) induced VT in 7 of 44.

Endocardial catheter mapping was performed in 17 patients, revealing delayed potentials

(DP) in the outflow tract, inflow tract, apex, and mid-portion of the RV, as well as in various locations of the left ventricle (LV). More significantly, DP was recorded at the VT origin in fully 100% of the cases.

In cardiac catheterizations, 21 of 30 patients tested had abnormal volume and/or pressure in the RV and/or LV.

VT were responsive to a wide variety of antiarrhythnic drugs. 31 of the 50 patients had Adams-Stokes attacks, one of whom died suddenly.

In conclusion, delayed potentials were found to be present in idiopathic VT. Also, some

patients displayed abnormal volume and/or pressure in the RV and/or LV, with one case of sudden-death. Thus, it was found that even in patients without overt heart disease, non-sustained

VT can be dangerous and even life-threatening.

In summary, we found the characteristics of idiopathic VT to vary widely among patients, suggesting a variety of pathogenesis. It was also found to be dangerous and possibly

life-threatening in some cases, even in patient・s without overt heart disease.

(2)

緒 言 心室性頻拍(VT)は,一般に心室性期外収縮 (VPB)三連発以上と定義されている.また,その 持続の長さにより,30秒以上続く場合を持続性, これ以下の場合を非持続性と分類されている.し かし,この基準は明確な根拠がなく,他の基準と して自然停止の有無が用いられている.

持続性VTは重症不整脈の1つとされ,

Adams−Stokes発作や心不全を来し,心室細動に 移行し,致死的になり得ると考えられている.し かし,非持続性VTに関する病態および臨床的意 義は必ずしも明らかではない.基礎心疾患特に心

筋梗塞に非持続性VTが合併した場合のriskに

ついては,突然死の発生率が増加する1)という報 告が見られる.一方,明らかな基礎心疾患の認め られないいわゆる健常人に見られる非持続性VT は,約2%と言われる2)∼4)が,そのriskに関しては まだ統一された見解はない. 本研究の目的は,明らかな基礎心疾患の認めら れない非持続性VT(特発性非持続性VT)の臨床 的,電気生理学的,血行動態的および薬理学的特 徴を検討し,さらにその機序と臨床的意義につい て考察することである. 対象および方法 対象は,特発性非持続性VT 50例で,男13例, 女37例,年齢11∼81(41±18)歳である.特発性 とは,理学的所見,胸部レ線写真,心エコー図に おいて明らかな基礎心疾患が認められない症例と した.非持続性とは,前述のごとく心電図上ある いは病歴上5分以上持続するVTがなく,特に治 療を行なわずに自然停止するものとした. 各症例において,下記の8項目について検討し た.1.病歴,2.VTの出現様式,3. VTの発生

部位,4.VTの誘発法,5.遅延電位dylayed

potential(DP),6.心機i能,7.電気生理学的検 査所見,8.治療.病歴では,自覚症状,発症年齢, 罹患期間および予後について検討した.不整脈の 指摘あるいは自覚症状の発現を以て発症とし,発 症から昭和62年4月までを罹患期間とした.VT,

VPBの出現様式は,抗不整脈三下投薬下の

Holter心電図を施行し得た41例について検討し, VPBの1日総数や日内変動パターン,起源数, RonT,またVTの1日総数,日内変動パターン, 形態,最高連発数,最:高VT rateを分析した.日 内変動パターンは,昼型,夜型,昼夜型の3型に 分類した.起源数は,Holter心電図の2つの誘導 より単二性,2源性,3二三,4照性に分類した. VTの発生部位は,12誘導心電図の脚ブロックパ ターン,前額二軸および心内膜ペースマッピング

により検討した。VI波形は,左脚ブロック

(LBBB)型,右脚ブロック(RBBB)型の2つに 分け,前額面軸は,一30.∼+110.を正常軸 (NAD),一30.∼一90.を左軸偏位(LAD),÷110. ∼+180.を右軸偏位(RAD)とした.ペースマッ ピングは15例に行ない,双極カテーテル電極によ り右室内,左室内のそれぞれ10∼20ヵ所において ペーシングし,発作時VT波形と一致した部位を VT発生部位とした. VTの誘発法として,運動負 荷,情動負荷,isoproterenoi負荷および心臓ペー シングを用いた.運動負荷はtreadmill test (TMET)を用い, BruceまたはShe丘eldのプロト コールで42例に行なった.情動負荷はmirror drawing test(MDT)を用い,33例に施行した. MDTは星形図形をその鏡像を見ながらできるだ け速く描写するもので,図形からずれるとブザー が鳴る.この際のあせりと不安を利用したもので ある.10分間の安静後1分間の休憩をはさんで3 分間ずつ3回行ない,再び10分間安静にした. Isoproterenolは11例で0.5∼1.5γを点滴静注し, VTの誘発を試みた.4つの誘発法について誘発

率を求め,比較した.また,TMETとMDTは,

負荷の程度として,血圧,心拍数よりpressure・ rate−product(PRP)を求め,最高値と前値との差

およびVT出現時と二値との差」PRPを算出し

た.また,検査前,検査直後,6分後に血中cate・ cholamine(CA)を測定した.心臓ペーシソグは, 44例に行ない,二二および右室高頻度刺激法なら びに早期刺激法(単一あるいは二連続刺激)を行 なった.早期刺激による心室性反応のうち1∼2 拍のものをrepetitive ventricular response

(RVR),三連発以上のものをVTとし,各々の誘 発率を求めた.VT, RVRのうち,自然発作のVT

(3)

.と同形のものをclinical,異なるものをnon− clinica1とした.また, VTの機序を考察するため

に,早期刺激の連結期とVTあるいはRVRの第

一拍目までの間隔との関係を調べた.DPの検出 には,双極カテーテル電極を用い,右室,左室内 それぞれ10∼20ヵ所の心内膜マッピングを行な い,その有無部位,ペーシングによる影響を検 討した.心臓の大きさは心室造影より求め,心機 能の指標として心拍出量(心係数),拡張終期圧, 拡張終期容量,駆出率を求めた.心臓カテーテル による血行動態の評価,心室造影,冠動脈造影は, 30例に行なった.心係数2.21/min/m2以下,右室拡

張終期圧9mmHg以上,左室拡張終期圧13mmHg

以上を異常とした.心室造影は左右心室とも,右 前斜位30.および左前斜位60.の2方向で行ない, 拡張終期容量は当院の正常値,三二79±11ml/m2, 左室86±12ml/m2の平均値±2×標準偏差より隔 たったものを異常とした.駆出率も当院の正常値, 右回0.59±0.06,左室0.61±0.06の平均値±2× 標準偏差より隔たったものを異常とした.電気生 理学的検査は44例に行ない,洞結節(洞機能回復 時間),心房(不応期,受攻性),房室結節(AH時 間,心房ペーシングによるWenckebach型ブロッ ク出現のrate,不応期), His−Purkinje系(HV時 期,心房ペーシングによるII度HVブロックの有 無)の機能を評価した.治療は下記の抗不整脈剤の 投与を行なった.静注薬として,Vaughan Williams 分類Ia群procainamide200∼400mg, disopyr− amide 50∼100mg, cibenzolin 1.4mg/kg, propafenone lmg/kg, Ib群1idocaine 50 ∼100mg, mexiletine 125mg, tocainide 200 ∼400mg, aprindine 50∼100mg, II群pro− pranolol 2∼4mg, IV群verapamil 5∼10mgを用 い,内服薬として,procainamide 1,000∼2,000mg, disopyramide 200∼400mg, cibenzolin 200 ∼400mg, propafenone 300∼450mg, mexiletine 300∼600mg, tocainide 600∼1,200mg, aprindine 40∼60mg, Ic群Hecainide 100∼200mg,各種β一 遮断剤,verapamil 80∼240mg, bepridil 200 ∼300mgを用いた.薬効評価法としては,心臓 ペーシング,運動負荷,情動負荷,あるいはisO一

Proterenol静注により誘発されたVTおよび自

然のVT, VPBに対する抗不整脈剤の静注あるい は内服投与を行なった.誘発されたVTに対して は抗不整脈剤投与後誘発されないこ「と,自然の

VTに対しては心電図またはHolter心電図で

VTの消失またはVPBの75%以上減少したもの

を効果ありと判定した.いずれかの方法で効果が あれぽ,その抗不整脈剤は有効とした. 統計処理には,t検定およびκ2一検定を用いた. 結 果 1.病歴(表1) VT症・例50例の年齢は,!1歳の若年から81歳の 高齢者におよび,年齢のかたよりはなかった.女 性37例に対し男性13例と,女性に多い傾向があっ たが,有意な差はなかった. 発症年齢は3∼70(31±18)歳と広範囲に渡り, 好発年齢はなかった.罹患期間は1∼36(10±8) 年であった(表1).

非持続性VTの自覚症状として最も多いのは

動悸(62%)で,眩量(52%)がこれに次いだ. 失神(28%),胸痛(24%),息苦しさ(16%)は, 比較的少なかった.眩量,失神を含めたAdams− Stokes発作は,31例(62%)と高率に見られた. 50例中44例(88%)で何らかの自覚症状が見られ, 6例(12%)は無症状であった.これらの自覚症 状と,年齢,性別とは特に関連が見られな:かった (表2). 1例(症例26)は,24歳時,海外旅行での睡眠 中突然死した.Rate 240bpmの昼型の多形性VT を有し,運動負荷,情動負荷でいずれもVTが誘 発され,精神的ストレス時にめまいが頻発し,失 神の既往があった.

2.VTの出現様式

VPBとVTの出現様式を表3に示した. VPB

1日総数は1,043∼67,798(21,123±20,543)で あった.日内変動パターンは昼夜型が25例と多く, 昼型が12例で続き,夜型は4例と少なかった.起 源数は単源性か2源性で,71%が富源性であった.

RonTは41%に見られた. VTの1日総:数は1

∼15,261(763±2,417)回とぼらつきがあった. 日内変動パターンは,昼型が30例と多かったが, 一144一

(4)

表1 発症年齢と罹患期間 症例No 性 年齢 発生年齢(歳) 罹患期間(年) 1 F 30 26 4 2 F 46 32 14 3

M

68 62 6 4 F 23 5 18 5 F 51 41 10 6 F 27 13 14 7 F 33 27 6 8 F 50 44 6 9 F 29 9 20 10 F 59 56 4 1!

M

52 18 36 12 F 53 弓7 6 13

M

54 35 19 14 F 36 30 6 15 F 57 43 14 16 F 23 12 11 17 F 46 30 16 18 F 16 13 3 19 F 22 13 9 20

M

34 30 4 21 F 51 28 23 22

M

14 12 2 23 F 56 48 8 24 F 59 47 12 25 F 69 60 9 26 F 24 3 21 27 F 39 36 3 28 F 59 45 12 29 F 48 24 24 30 F 21 14 7 31 F 51 47 4 32

M

!3 10 3 33 F 19 14 5 34 F 29 25 4 35

M

42 13 29 36 F 30 15 15 1 37 F 21 16 5 38

M

35 14 21 39 F 24 16 8 40 F 13 8 5 41

M

48 43 5 42 F 45 23 22 43

M

81 68 13 44 F 53 47 6 45 F 74 70 4 46 F 63 63 1 47 F 11 11 1 48

M

28 28 1 49

M

5ユ 48 3 50 F 49 48 1 mean±SD 41±:18 31±18 10±8 表2 自覚症状の種類とその出現率 自覚症状 出現例 出現率 動 悸 31 62 眩 量 26 58 失 神 14 28 胸 痛 12 24 息苦しさ 8 16 Adams−Stokes発作 31 62 夜型も5例に見られた.VTの形態は,38例と大部 分が単形性だったが,3例が多形性であった.VT 最高連発数は3∼297(33±63)連発であり,最高 VT rateは120∼300(201±44)bpmであった. Holter心電図記録中, VTに伴なう自覚症状は15 例(37%)に見られたが,VT連発数やrateとは 明らかな関連は見られなかった、 3.VTの発生部位 12誘導心電図のV1波形および前額面軸より,50 例52種類のVT波形を分類すると,表4に示すよ

うな4つに分けられた.LBBB十NAD型が最も

多く46種類(88%)見られ,LBBB十LAD型,

RBBB+LAD型, LBBB+RAD型はそれぞれ2

種類ずつ見られた.これらのうち,心内膜ペース マッピソグで部位が確認されたのが15ヵ所であっ た.LBBB十NAD型は13ヵ所で確認され,右室流 出路であった.LBBB十RAD型, LBBB十LAD型 はそれぞれ1ヵ所ずつ確認され,右室流出路,右 室流入路であった.2種類はRBBB一トLAD型で あった.

4.VTの誘発法

4つの誘発法のそれぞれの誘発率を表5に示し た.誘発率は,isoprotereno1静注が最も高く64%, 次いで運動負荷43%,心臓ペーシング,情動負荷 は低く16%,15%であった.

TMETによりVTが誘発された18例のうち,

運動中のみVTが見られたのは6例,運動後のみ 見られたのは4例,運動中と後のいずれとも見ら れたのは8例であった.VTは,1.8∼11.5(6.0± 3.1)METSで出現した. MDTにょりVTが誘発 された5例のうち,負荷中のみ見られたのは3例 で,負荷中と後の両方に見られたのは2例であっ 一145一

(5)

表3 VPB, VTの出現様式(41例)

VPB

VT

1日総数

ツ(mean±SD) i2!123±20543)1043∼67798 1日総数ツ(mean±SD)

1∼15261 i763±2417) 昼 型 12(29) 昼 型 30(73) 日内変動パターン 瘁i%) 昼夜型 25(61) 日内変動パターン 昼夜型 6(15) 夜 型 4(10) 夜 型 5(12) 単源性 29(71) 置形性 38(93) 起源数 瘁i%) 二源性 12(29) 形 態 多形性 3(7) 工連発 瘁i%) 4G(98) 最高連発数beats(mean±SD) 3∼297 i33±63) Ron T 瘁i%) 17(41) 最高VT rate b垂香imean±SD) i20!±44)120∼300 表4 VTのQRS波形による分類と心内膜ペース マッピングにより診断されたVT発生部位との関 係 脚ブロック+軸偏位型 VTの種 ゙の数 心内膜ペース }ッピングで フ確認部位 確認され ス部位数 LBBB+NAD型 46 右室流出路 13 LBBB+RAD型 2 右単流出路 1 LBBB+LAD型 2 右室流入路 1 RBBB+LAD型 2 末施行 末施行 LBBB:左脚ブロック, RBBB:右脚ブロック,NAD: 正常軸,RAD:右軸偏位, LAD:左軸偏位 表5 VTの誘発法とその誘発率 誘 発 法 施行例 誘発例(%) 運 動 負 荷 itreadmill test) 42 18(43) 情 動 負 荷

imirrOr draWing teSt) 33 5(15)

isoproterenol静注 11 7(64) 心臓ペーシソグ 44 7(16) た. 運動負荷によりVTが誘発されたのは,施行例 42例中18例(43%)であったが,誘発例のVTの 日内変動パターンは昼型または昼夜型であった. MDTにより, PRPは6,072∼12,810(8,918± 1,938)mmHg/minから7,500∼19,680(11,657± 3,069)mmHg/minに増加し, TMETにより, 6,440∼14,880(9,786±2,043)mmHg/minから 12,800∼32,900(23,898±4,450)mmHg/minに 増加した(図1).

」PRP(最高二一前値)は, TMETでは

5,960∼22,716(14,1!2±4,076)mmHg/minと大 きく,MDTでは306∼6,870(2,738±1,545) mmHg/minと小さかった, TMETは, VT誘発 例13,439±4,657mmHg/min,非誘発例14,633±

3,591mmHg/minと差がなかったが, MDTで

は,VT誘発例4,219±835mmHg/minに対し,非 誘発例2,474±1,511mmHg/minとVT誘発例で 大きかった(p<0.05).負荷中にVTが誘発され た例の∠PRP(VT出現時一二値)は, TMETで は3,160∼15,806(7,100±3,571)mmHg/min, MDTでは3,243∼4,974(3,946±756)mmHg/ minとTMETで大ぎかった(p〈o.05)が,下限 はいずれも3,000mmHg/min以上であった(表 6).

血中CAは,図2,3に示すごとくTMETで

は,前,直後,6分後,noradrenaline O.33±0.20 ng/m1,0.60±0.20ng/m1,0.35±0.11ng/ml, adrenaline G.036±0.021ng/ml,0.036±0.031 ng/ml,0.042±0.020ng/m1とnoradrenalineで 有意に増加した(p〈0.01).MDTでは, norad− renaline O.24±0.14ng/ml,0.24±0.11ng/ml, 0.24±0.10ng/ml, adrenaline O.026±0.020ng/ ml,0.033±:0.30ng/m1,0.042±0.035ng/mlと, 検査後adrenalineの増加がみられた(p<0,05). 一!46一

(6)

PRP mmHg/min 20,000 10,000

NS

P<0,01 P〈0.0ユ 「一一『㎜一 u「一一一一一一「 mean±SD 20,000 10,000

NS

P<0.01 P〈0,01 「一一一一一一一一1「一

。L____一上L__。L一____二二__

前 中 6分後 前 中 6分後 (最高値) (最高値) MDT TMET

図1 Mirror drawing test(MDT),treadmill test(TMET)におけるpressure−rate

product(PRP)の変化

rnean±SD n=42

表6 MirrQr drawing test(MDT), treadmill test

(TMET)における∠PRP(最高値一興値)および 」PRP(VT出現値一群値) ∠PRP(最高値一前値)mmHg/min

MDT

TMET

VT誘発例 3420∼5474i4219±835) 5960∼22716i13439±4657) VT非誘発例 306∼6870i2474±1511) pく0.05 4504∼21440i14633±3591) NS ∠PRP(VT出現時一前値)mmHg/min

MDT

TMET

負荷中にVT

U発された例 i3946±756)3243∼4974 i7100±3571)3160∼15806

TMETによりVTが誘発された18例中10例

は,β一遮断剤投与後再検したところ,6例でVT

が誘発されなかった.MDTでは,5例中4例で

β一遮断剤投与後再検し,全例∠PRPは3,000

mmHg/min以下に減少し, VTは誘発されな

かった. 心臓ペーシングは44例に行ない,7例(16%) でVTが誘発された.右上高頻度刺激では,44例 中5例(11%)にVTが見られた.右室早期刺激 法のうち,単一早期刺激ではVTは誘発されず, 二連続刺激で38例中3例(8%)た誘発された. 右室早期刺激によりclinical VTあるいはRVR

は8例に誘発されたが,連結期とVTあるいは

RVRの第1拍までの間隔との関係は,連結期が

短くなるほど長くなる逆相関6例,不定なもの2

例であった。右房高頻度刺激でも,VTは4例

(9%)に誘発された(表7). 5.遅延電位 カテーテル電極による心内膜マッピングによ り,表8,および図4に示すような右室内,左室 内の各部位にV波の立ち上がりより100∼160ms 後にDPが確認された. DP出現率は,右室心尖部 24%,流入路38%,中間部53%,流出路100%,左 室心尖部25%,自由壁42%,中隔壁62%,流出路 20%であった.DP出現率の高かった右室流出路 を自由壁と中隔壁とに分けると,自由壁53%,中 隔壁65%であった.ペースマッピングでVT発生

部位が確認された14例全例で,VT発生部位に

DPが見られた.右室ペーシングによりV−DP間 隔の延長およびWenckebach型ブロックが,3例 において確認された.図5に右室流出路における 一147一

(7)

君0.50 論 蓼 葦 響 署 田 2 0 NS O @ NS NS u一一}一一一一「「一一一一一一一一一1 mean±SD 氏≠P2 0.50 0 NS P<0.01 Pく0.01 「一一一一一一一「「一一一一一一一 mean±SD n=10 前 直後 6分後 前 直後 6分後 MDT TMET

図2 Mirror drawing test(MDT), treadmill test(TMET)における血中nor− adrenalineの変化 箱 論0.05 箒 揖 鍔 省 P<0.05 「一一一一一一一「一一一一一「 0 別 .直後 MDT

図3 Mirror drawing test adrenalineの変化 0,05 mean±SD n=12 0 6分後 目1」 (MDT), treadmill test mean±SD n二10 直後 6分後

TMET

(TMET)における血中 DPと同部のペーシングの実例を示した. た.心係数は2.83∼4.41(3.68±0.53)1/min/m2 6.心機能(表9) といずれも正常値を示した.右室の拡張終期圧は

肺動脈圧,肺動脈懊入圧はいずれも正常であっ 3∼12(7±2)mmHgで,9mmHg以上は6例で

一148一

(8)

表7 心臓ペーシングによるVT, VPB, clinica1 RVRの誘発

刺 激 法 施行例 非持続性VTU発例(%)

VPB

U発例(%) clinical RVRU発例(%) 右房高頻度刺激 44 5(11) 7(16) 一 酒室高頻度刺激 44 4(9) 3(7) 一 単一刺激 44 0 一 4(9) 右室 ♀厲h激 二連続刺激 38 3(8) 一 3(8) 合 計 44 7(16) 7(16) 5(11) 表8 心内膜カテーテルマッピングによる遅延電位(17例) 右 室 左 室 症例 mo. 心尖部 流入路 中間部 流出路 ゥ由壁 流出路?u壁 心尖部 自由壁 中 隔 流出路 11

NT

十 一 十

NT

NT

NT

NT

18 一 } 十

NT

} 一

NT

22 一 十 十 一 十 一 十 一 31 一 十 十 十 十

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一 十

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㌦35 十 十 十 一

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NT

NT

37 十 十 十 十 一 一 十

NT

38 一 『 一 十 一 一 一 十

NT

39 一 『 十 一 十 十

NT

40 十 十 十

NT

十 十

NT

42 一 十 十 十 一 十 十 43 十 十

NT

NT

NT

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45 十

NT

NT

NT

NT

46 一 } 十 一

NT

NT

NT

47 48 十 十 十 十 十 .ト 一 49

NT

50 十 十 十 十

NT

施行例 17 16 17 17 17 8 12 13 5 出現率 4 6 9 9 11 2 5 8 1 出現率(%) 24 38 53 53 65 25 42 62 20 +:遅延電位有,一:遅延電位無NT:その部位のマッピングは施行せず. 自由壁,中隔壁を合わせた右室流出路では,遅延電位の出現率は100%であった. あった.左室の拡張終期圧は,5∼17(11±3)

mmHgで,11例が13mmHg以上であった.拡張終

期容量は,右室70∼150(103±23)ml/m2,左室 54∼135(87±20)ml/m2で,それぞれ13例,5例 が拡大していた.駆出率は一室34∼61(50±8)%, 左室42∼75(57±9)%で,それぞれ10例,2例が 低下していた,心室瘤などの形態異常はなく,冠 動脈造影所見は,すべて正常であった.巡閲に何 らかの異常が見られるのが17例,左室に何らかの 異常が見られるのが14例であり,各指標のうち1 つ以上異常を示す例は,21例(70%)と高率に認 められた. 7.電気生理学的検査所見 洞結節,His−Purkinje系はいずれも正常であっ た.房室結節は,機能低下,促進がそれぞれ3例, 二重伝導路が6例に見られた.心房受攻性は13例 (30%)に見られ,non−clinical RVRは26例(59%) に認められた. 8.治療 薬効評価を行なった48例中34例では退院後も薬 一1ξ9一

(9)

表9 心臓の大きさと機能(30例) 症例 心係数 拡張終期圧(mmHg) 拡張終期容量(ml/m2) 駆 出 率(%) No. (」/min/m2) 右 室 左 室 右 室 左 室 右 室 左 室 2 4.33 7 14

NT

105

NT

49 3 2.94 10 10 94 80 35 54 6 424 8 12

NT

88

NT

58 7 3.67 6 14 131 112 152 52 11 3.78 8 11 71 80 54 62 12 2.97 8 15 122 110 144 44 14 3.68 6 !1 99 84 58 63 15 3.23 6 11

NT

78

NT

75 17 3.64 5 6 117 135 53 52 18 3.33 !2 13 150 .120 44 49 19 3.51 6 9

NT

75

NT

56 22 3.65 6 14 80 66 37 49 23 3.98 4 6 134 121 45 52 29 4.06 11 13 140 !21 50 52 30 3.81 3 5 97 78 49 59 31 3.85 5 5 70 79 59 65 32 3.99 9 13 124 68 56 70 34 4.54 3 10 120 89 45 54 35 3.22 7 10 107 66 45 49 37 4.41 6 8 104 71 34 58 39 4.52 10 15 84 69 52 60 41 3.55 6 10 102 91 51 64 42 4.44 10 12 101 79 52 54 44 3.32 5 17 70 72 58 61 45 2.83 5 11 113 88 56 67 46 4.20 8 17 70 54 61 74 47

NT

NT

NT

86 88 59 70 48 3.48 5 7 88 77 39 52 49 3.27 8 14 112 90 46 49 50 2.83 8 11 85 75 54 42 平均± W準偏差 3.70±0.51 7±2 11±3 103±23 87±20 50士8 57±9 NT:検査施行せず 剤が投与されていた.16例は,医師の判断または 患者の通院中断により抗不整脈剤は投与されな かった.12薬剤の使用例数と有効率を衷10に示し た.有効率は31∼58(44±9)%で,各薬剤の有効 率に有意な差はなかった.Vaughan Williams分 類1群の薬剤は31∼52%,β一遮断剤は30%,IV群 は36%∼58%の有効率であった.症例42(45歳, 女性)は,失神,計量があり,薬剤に難治性のた め,外科的にVT発生部位である王室流出路の切 除および凍結術を行なった.術後,自然発作も誘 発によるVTも見られなかった. 考 察

VTの発生部位

明らかな基礎心疾患の認められない,いわゆる 特発性VT, VPBの発生部位に関しては,いくつ

かの報告がある.特発性VPB 67症例のVPBの

起源を,心電図とベクトル心電図より推定すると, 76.1%は右室起源で,その84%は右室流出路,6% が心尖部起源であった5).特発性VTの研究では, 22例中21例が右室流出路起源であった6).また,器 質的心疾患の認められない反復性,単形性VT 22 例は,全例右室流出路起源であった7).さらに,右 回起源の非虚血性VT 38例のQRS軸は,正常軸 一150一

(10)

RA

、 ロ

勢魂

●轟

TV

f鐙

RV

▲▲ ■聰■。■@ △△ 8 frontal Vlew PA

RV

▲ Tv RA .麺▲ ロ ロ伝会 ’盈’

RA:rignt atrium RV:right ventricle

PA:pu[monary artery 図4 心内膜カテーテルマッピングによる右室内遅延 電位(DP)(17例) 右室正面像,側面像におけるDPの部位と引数を示 す. RV outflow HB RV apex 1 1ateral view TV=tricuspid vaive

■臆

[・へ

_一_ 鼠

表10 各種抗不整脈剤の有効性(抗不整脈剤投与例 48例)

I n 皿 a》R aVL aVF V, Vg V3 V4 V5 V。

華縞・庫葺轟

Vaughan villiums @ 分類 抗不整脈剤 使用例 有効例 有効率i%) procainamide 18 7 39 Ia disopyramide 37 15 41 cibenzolin 12 6 50 propafenone 17 7 41 Hdocaine 13 6 46 tocainide 13 4 31 Ib mexiletine 28 13 46 aprindine 25 13 52 IC frecainide 11 6 55 II β一遮断剤 33 10 30 IV verapami1 36 13 36 bepridil 12 7 58

VPB

器:警

華譲

韮酵磯

図5 症例49 上段:心内膜カテーテルマッピングにおける遅延電位 (DP)を示す. 下段:心内膜ペースマッピング時の,自然発作時VT 波形と右室流出路のペーシング波形を示す. 24例,右軸8例,左軸4例,不定2例であった8). 本研究における50例52種類のVTでは,50種類が 右室起源と考えられ,心内膜ペースマヅピングで 確認された所見を合わせると,48種類が右室流出 路,2種類が右室流入路起源であった. 右室流出路にVT, VPBが多発する原因とし て,古くRosenbaUlnらは,右室前乳頭筋の機械的

伸展の可能性をあげている9).また,right

ventricular dysplasiaセこおいても右室流出路が心 筋病変の好発部位の1つである10).したがって,特

発性VTにおいても右室流出路に心筋病変が存

在している可能性が示唆されるが,今後の病理学 的研究が必要と考えられる.

VTの誘因

本研究のVT症例の73%が昼型で,昼夜型を含

めると88%になり,昼に反復性VTおよびVPB

が頻発して見られた.運動負荷でVTが誘発され た18例は,いずれもVTの日内変動パターンは昼 型または昼夜型であった.運動負荷により誘発さ れたVT症例18例中5例は,情動負荷でも誘発さ れた11).情動ストレスと心室性不整脈との関連を 見ると,重症心室性不整脈の多くの場合,情動ス トレスが先行していた12)との報告がある.運動負 荷,情動負荷ではいずれもPRPが増加するが, ∠PRP(最高値一前値)の大きさは,運動負荷が情 動負荷に比べ圧倒的に大きかった.誘発例と非誘 発例の4PRP(最高値一前値)を比較すると,運 動負荷では差はないが,情動負荷ではVT誘発例 が非誘発例に比べ大きく,∠PRP(VT出現時一前 値)の下限はいずれも約3,000mmHg/minであっ た.換言すれぽ,∠PRPが3,000mmHg/min以上 になるような負荷が加わり,交感神経緊張状態に なると,VTが出現する症例が存在すると考えら 一151一

(11)

れる.運動負荷で誘発されたVT症例に対するβ・ 遮断剤投与後の再検では,∠PRPの変化は小さ かったが,60%の症例ではVTが予防された.一 方情動負荷では,」PRPは3,000mmHg/min以下 に減少し,全例VTは誘発されなかった. 血中CAも負荷により増加した.運動負荷では noradrenalineは0.33ng/mlから0.60ng/mlに増 加,adrenalineは有意な変化がなかった.情動負 荷では,adrenalineが0.026ng/mlから0。042ng/ mlに軽度増加し, noradrenalineは変化しなかっ た.血中CAの値の評価は明らかにされておらず, 心室性不整脈の出現と静脈内CA濃度とは関連が なかった13>との報告もある.血中CAの役割は明 らかではないが,isoproterenolの静注では, VT 誘発率が各誘発法の中で最:も高かった.従来の報 告でも,exercise−induced VTでは全例isoproter・ enolで誘発され14)15),また心臓ペーシングのみで は誘発されない例にisoproterenolを加えること によりVTが誘発されている16)が,その機序は明 らかでない.

本研究のVT症例中の12%は夜型のVTであ

り,VPBも夜間に多発していた.この夜型VT 5 例は,運動負荷,情動負荷,isproterenol負荷のい ずれでも誘発されなかった.迷走神経刺激により VTの停止は報告されている切が,迷走神経刺激 がVTの誘因と考えられる症例の報告は他には 見られない.しかし本研究の症例38は著者らが既 に報告している18)ように,典型的な夜型VTで, 睡眠中にVTが頻発し,抗choline−esterase剤や phenylephrine静注による昇圧後VPB, VTが誘 発されており,迷走神経刺激がVTの誘因となり 得ることが示唆された. VTの誘因が自律神経のみで説明可能とは考え られないが,日内変動パターンや各誘発法および 薬剤の反応から,VTの出現のためには,交感およ び副交感神経の両者の自律神経の関与が考えられ た. 心機能 右室の心機能特に拡張終期容:量および駆出率の 正常値は,Gentzlerらは81±12.3ml/m2日置び 0.51±0.08と報告している19)が,報告者により異 なり,今後の研究が必要と考えられる. 本研究では,当院の正常値により判定すると, 右下では17例(57%),左室では14例(47%)に異 常が見られ,何らかの心機能異常は21例(70%) に認められた.このように,特発性VTに高率に 心機能異常が見られたことは,その病態を考える 上で,臨床上重要であると考えられる.1983年 Pietrasらは,38例の右室起源の非虚血性VT症 例の約半数に右室機能異常が見られた8)と述べて いる. 1978年,Fontaineらは,右四起源のVTを有し,

右室の電位および壁運動の異常のある症例を

“arrhythmogenic right ventricular dysplasia

(ARVD)”と提唱している.本研究で対象とした

特発性VTで右心機能異常を認めた症例は

ARVDとの鑑別が問題となるが,両者は同一の病 態である可能性も考えられる20).

VTの機序

特発性非持続性VT 50例は, VTの発生部位, 日内変動パターンおよび誘因は単一なものではな く,抗不整脈剤に対する反応も一定の傾向が見ら れなかった.したがって,VTを単一の機序で説明 することは困難と考えられる.笠貫らは,特発性 持続性VT 15例の機序を考察し,reentry, trigger−

ed activityが考えられ,またabnormal

automaticityを示唆する症例も1例に見られ

た21)と述べている.

CAや交感神経緊張状態により惹起されるVT

は,現在考えられているVTの3つの機序である reentry, triggered activity, abnormal

automaticityのいずれでも説明可能である.すな わち,交感神経緊張状態またはCAの投与は病的 心筋の異常自動能を促進し22),reentry回路内の 病的心筋の不応期を短縮し回復期の不均一性を増 加させる23).また,after potentialのmagnitude を増加させ,triggered activityを惹起する24). 心臓ペーシングでVTが誘発されたのは,44例 中7例(16%)と低率であった.これは,他の報 告でもほぼ同様である25).早期刺激では,3例 (8%)でいずれも二連続刺激で初めて誘発され た.したがって,VT誘発例は心臓ペーシングで誘 一152一

(12)

発されることから,異常自動能は考えにくく,re−

entryかtriggered activityが考えられた.両者の 鑑別に関して,早期刺激の連結期と誘発された VTの第1品目までの間隔が重要視されており, reentryでは逆相関, triggered activityでは正相 関を示すと言われている26).VT誘発例にclinical

RVR誘発例を加えると8例になり,早期刺激連

結期とVT第1拍目の間隔は,2例の不定例を除

けば6例が逆相関を示し,正相関は認められな かった.したがって,早期刺激で誘発されたVT 症例は,reentryの可能性が高いと考えられた.高 頻度刺激では5例(11%)でVTが誘発された. 他の1例は,isoproterenol投与中の高頻度刺激で VTが増悪した.高頻度刺激によって誘発される VT, VPBの機序は明らかでないが, triggered activityの可能性も否定できな:い.

50例の特発性非持続性VT中17例に心内膜

マッピングを行ない,全例にDPを認めた. DPは 心室内の各部に見られたが,右室流出路,流入路

を含む18ヵ所のVTの発生部位には100%DPが

認められた.持続性VTを持つ心筋梗塞やARVD

では心内膜,心外膜マッピングによりDPが見ら れており,病的心筋内でのmicro reentryが示唆 されている.本研究で記録されたDPがreentry の原因となっているかどうかは不明であるが,DP の存在は,少なくとも病的心筋の存在を示唆する 所見と考えられた. 自覚症状と予後 従来,非持続性VTは自覚症状を伴なわないこ とが多い27)とされてきた.しかし,最近の報告では 高言起源の器質的心疾患のない反復性VTは,22 例中17例で何らかの自覚症状を伴った7)との報告 も見られる.本研究でも,50例中88%と高率に何 らかの自覚症状が見られ,Adams−Stokes発作は 31例(62%)と高率に認められた.したがって,

非持続性VTは従来考えられていたより多くの

症例で自覚症状を伴うこと,および失神発作が少 なくないことは,臨床上非常に重要と考えられる. 明らかな基礎心疾患を伴わないVT, VPBの予 後に関しては,種々の報告がある.いわゆる健常 人に見られる心室性不整脈は突然死のriskを増 加させない28)∼30>,24例の右室起源の非持続性VT 症例の平均30ヵ月のfollow upでは死亡例,新た な心疾患の出現はなく,自然寛解も見られた31).逆 に,明らかな心疾患のない心室性不整脈は突然死 のriskを増加させる32),明らかな心疾患のない24 例のVT症例の平均7.5年目follow upでは,抗不 整脈剤が投与されていなかった3例の持続性VT 症例が突然死した33)との報告もある.本研究にお ける平均10年の罹患期間を持つ特発性非持続性

VT 50例では1例が突然死しており,しかも

Adams−Stokes発作は62%と高率に見られること から,特発性VTは必ずしも予後良好な:疾患では ないと考えられる. 抗不整脈剤の治療効果については,主に心筋梗 塞症例に関する報告が見られる.Graboyらは重 症心室性不整脈を持つ123例について検討し,抗不 整脈剤がこれらの不整脈を抑制できた症例はでき なかった症例に比べて有意に突然死の率が少な かった34)と述べている.特発性非持続性VTに 限った系統的な報告は見られないが,自覚症状特 にAdams−Stokes発作がある場合はもとより無 症状であっても,Holter心電図や運動負荷,心臓 ペーシングなどの充分な検査を行ない,有効な治 療法を慎重に検討するべきであると考えられる. 結 論 特発性非持続性VT 50例について,臨床的,電 気生理学的,血行動態的および薬理学的検討を加 えた. 発症年齢は3∼70(31±18)歳,罹患期間は1 ∼36(10±8)年で,Adams−Stokes発作は31例 (62%)に見られ,1例は突然死した.VPBの1 日総数をま1,043∼67,798(21,123±205,437) と頻 発して見られ,VTも1∼15,26!(763±2,413)回 と多かった.昼型のVTが多く73%を占めてい た.VT発生部位は,大部分右山流出路であった が,高冷流入路,左室にも見られた.VTは, iso− protereno1負荷で58%,運動負荷43%,情動負荷 15%,心臓ペーシングにて16%に誘発された.心 内膜マッピングにより,右回,左室内にDPが見ら れ,VTの起源部位(右山流出路)には100%認め られた.心臓カテーテル検査にて,右室の異常は 一153一

(13)

18例に,左室の異常は15例に見られ,何らかの心 機能異常は21例(70%)と高率に認められた.各 抗不整脈剤の有効率は,31∼58(44±9)%で各薬 剤問で有意差はなかった.明らかな基礎心疾患の 認められないいわゆる特発性非持続性VTは,単 一な病態ではないと考えられ,また従来考えられ ていたように必ずしも予後良好ではないと考えら れた.したがって,自覚症状の無い場合でも,治 療の有無に関しては慎重に決定する必要があると 考えられる. 稿を終えるにあたり,御指導と御校閲を賜りました 広沢弘七郎教授に深謝申し上げますと共に,御教示頂 きました笠貫宏博士に心から謝意を表します.また 種々の御協力を頂きました教室の諸先生並びに検査 室の皆様に御礼申し上げます. 文 献

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