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腎移植後母体よりの児15例および透析管理中母体よりの児6例の比較検討

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Academic year: 2021

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原  平

居女医蕪、霧63巻磯聾欝

欝移植後母体よりの児15例および透析管理中

母体よりの児6例の比較検討

 東京女子医科大学 小児科学(主任: *同 母子総合医療センター(所長:    ナカノ  イクコ   フクヤマ  ユキオ   タカハシ

   中野 育子・福山 幸夫・高橋

   ホシ    ジユン   オオイシ  マサヤ   マツナガ

   温順*・大石昌也・松永

    ミツイシチサコ  ヤマグチキヨコ  タケダ

   三石知左子*・山口規容子*・武田

 福山幸夫教授) 武田佳彦教授,新生児室主任:仁志田博司教授) ナォト  ニシダヒロシ 尚人*・仁志田博司* トモコ   イノウエ  トシロウ 智子*・井上 寿郎* ヨシピコ

佳彦

(受付平成5年6月22日) Comparative Study of Fifteen Neonates of Motllers with Renal Transplants and        Six of Mothers on Renal Hemodialysis Ikuko NAKANO, Yllkio FUKUYAMA, Naoto TAKAHASHI*, Hiroshi NISHIDA*,  Jun HOSHI*, Masaya OISm*, Tomoko MATSUNAGA*, Toshiro INOUE*,          Kiyoko YAMAGUCHI*, Chisako MITSUISHI*       and Yoshihiko TAKEDA*         Department of Pediatrics(Chief:Prof. Yukio FUKUYAMA)   *Meternal and Perinatal Center(Chief:Prof. Yoshihiko TAKEDA, Prof. Hiroshi NISHIDA)       Tokyo Women’s Medical College   Neonates from patients with renal dysfunctlon should be considered high risk infants. We have evaluated such new born babies,15 from mothers with renal transplants and 6 from mothers on renal hemodialysis,who were born at the Maternal and Perinatal Center of Tokyo Women’s Medical College between Oct.1984 and Aug.1992. The points compared were management during pregnancy, the style of delivery, gestational age, birth weight, the rates of intrauterine growth retardation and asphyxia, complications, susceptibility to infection and surveillance.   Although we found that neonates born to transplant recipients did better overall, Some sp㏄ial cases,1ike twins, were at higher risk.          はじめに  慢性腎不全は腎疾患のendstageであり,その 治療法としては透析療法と腎移植がある.腎透析 の技術と機器の向上,免疫抑制剤を含めた腎移植 の進歩は,単に腎不全患者の生命維持ぽかりでな く,多くの患者の社会復帰,更に女性患者の妊娠, 出産を可能とさせてきている.1983年以降,1990 年までの本邦女性腎移植患者1,441名について,妊 娠回数は延べ64回,出産回数は延べ47回と報告さ れている1).一方,透析患者たヒ)い.ては,1981年ま でで,妊娠78例中分娩に到ったのは5例のみで あったが,その後分娩例の増加をみ,1988年まで に19例の妊娠,分娩例が報告されている.  しかし,透析中の母体の妊娠,分娩は母体管理 が困難であることから現時点では原則的には許可 されていない.一方,腎移植後母体の出産報告例 は,特にサイクロスポリンの臨床応用後,.増加傾 向にあるが,妊娠中,全期にわたり母体に投与さ

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れる免疫抑制剤のサイクロスポリンとアザチオプ リン,プレドニンは胎盤を通過することから胎児 に何らかの影響を及ぼしていることが考えられ る3)∼5).我々は腎移植後母体から.の新生児におい てB細胞が極めて少ないことを発見し,免疫異常 の発症に注意を促してきた4).  そこで今回,腎不全患者の妊娠,出産を新生児 の面から見た場合,どのような管理が望ましいか を検討するため,当科に入院した腎移植後母体お よび透析管理中の母体より出生した児の臨床壕を 比較検討した.        対象と方法  1984年10,月より1992年8月に東京女子医科大学 母子総合医療センター(以降,母子センター)で 出生した新生児で,腎移植後母体から出生した児 15例(以降,移植例)と腎不全にて血液透析管理 中の母体よ.り出生した児6例(以降,透析例)で ある(表1,2).これらの児について,妊娠中の 管理方法,分娩様式,白白戸数,出生体重,IUGR (intra uterine growth retardation)の有無,新 表1 腎移植後母体よりの児15例 症例 免疫抑制剤 在胎週数 出生時体重 Apgar score

CYA

AZ

MP

分娩様式 weeks 9 1−5min. 臨 床 経 過 予後

R1 ○ ○  .bS 38 2,898 9−9 AFD,五指症 良好 R2 ○ ○ ○ CS 33 「1,596 6−8 AFD HB , 良好 R3 ○ ○ ○

TV

34 2,675 6−8 AFD, HB 良好 R4 ○ ○ ○ CS .33 1,830 8−8 AFD, HB 良好 R5 ○ ○ ○ 、CS 38 2,712 8−10

AFD

良好 R6 ○ ○ ○‘ CS 37 3,432囁 6−8 HFD . 良好 R7 ○ ○. CS 37 21440 8−9 .

AFD

良好 R8 ○ ○ ○

TV

39 2,960 9−9

AFD

良好 R9 ○ ○ ○ CS 36 2,150 9−10

AFD

良好 R10 ○ ○ ○

TV

37 2,800 9−9

AFD

良好 R11 ○ ○ ○

TV

36 乞,405 9−9

AFD

良好 R12 ○ ○ ○

TV

38 2,300 8−9 IUGR 良好 R13 ○ ○ ○ CS 26 725 4−7 AFD, RDS, HB, ROP, Pickets, CLD 良好 R14 ○ ○ ○ CS 26 629 4−8 AFD, RDS, HB, CLD 良好 R15 ○ ○ ○ CS 33 1,783 8−9 AFD, TTN, Osteomy61itis 良好 AFD:appropriate for date infant. HB;hyperbi蓋irubinemia HFD:heavy for date infant IUGR:intrauterine untrauterine growth retardation CS.:cesarean section TV:trans・vaginal delivery RDS:respiratory distress syndrome ROP:retinopathy of prematurity CLD=chronic lung disease TTN、:transient tachypnea of newborn 表2 透析中母体よりの児6例 症例 分娩様式 在胎週数weeks 出生時体重 @ 9 Apgare sdore @1−5min,. 臨  床  経  過 予 後 H1

VT

26 825 5−6 AFD, RDS, IVH, PDA, HB, NEq, RF 日齢17死亡 H2

VT

32 1,790 7−8 AFD, TTN, HB 良 好 H3

VT

33 1,690 8−9 AFD, HB 良 好 H4

VT

23, 530 1−2 AFD, RDS, CHF, HB 日持1死亡 H5

VT

38 2,764 9−9 AFD, HB 良 好 H6 CS 27 739 3−5 AFD, RDS, CLD, convulsion, brain atrophy 日齢167死亡 IVH:Intraventricular hemorrhage PDA:Patent ductus.arteriosus NEC:Neonatal necrotizing enterocolltis RF:Renal failure CHF;Congenital heart failure 一E146一

(3)

生児仮死および易感染性,生存率を含めた予後を 比較検討した.          結  果  1.妊娠管理  移植例では1例を除き全例でサイクロスポリ ン,アザチオプリン,プレドニンの3剤が投与さ れていた.投与量は妊娠中も妊娠前と同量で維持 されている.透析例での透析年数は様々であった が,透析回数は妊娠前に週3∼4回であったもの が,妊娠中に透析回数,透析時間ともに増やされ ていた.  2.分娩様式  移植例15例のうち10例が帝王切開で経腔分娩の

2倍,透析例では6例中1例のみが帝王切開で

あった.  3.在胎週数  移植例は26週目ら38週で,平均は34.7週.この 内,正期産児は7例.一方,透析例は23週から38 週で,平均は29,8週.1例のみが正期産児であっ た.  4.出生体重  移植例で629gから3,432g,平均は2,182g,低出 生体重児は15例中10例であった.移植例での超未

熟児は双胎例のみである.透析例は530gから

2,764gで,平均は1,389g,半数の3例が超未熟児 で,2,500g以上の児はcase H5の1例のみであっ た.

 5.IUGRの発症

 子宮内発育に関しては,移植例においては免疫 抑制剤の影響によって,透析例においては透析の 影響により,いずれもIUGRの発症の可能性が考 えられるが,実際は移植例において1例の発症を 見ただけであった.  6.新生児仮死  神経学的予後と深い関係があるとされる5分後 のApgar scoreが7以下の症例は,移植例では双 生児例の第2子の1例のみであったが,透析例で は半数の3例が新生児仮死発症であった.  7.合併症  移植例では超未熟児2例にRDS(respiratory distress syndrome)などが見られた.また, Case R1に三指症(母指)がみられた.感染症に関して は,出生体重1,783gの1例(case R15)で,日齢 18に骨髄炎の発症を認めたが,治療後の経過は順 調であった.移植例で新生児仮死の発症をみた双 生児の第2子は,超未熟児であった第1子ともに 生後7ヵ月(修正4ヵ月)の時点で,体重,身長 の面での遅れをみる以外,神経学的発達は順調で あった.  透析例の合併症は,2例(case H1,4)に重症

のRDSの発症をみ,その内の1例は頭蓋内出血

にて,他の1例は呼吸不全および心不全にて死亡 した.また,case H6は出生時より高度の脳萎縮と 難治性痙攣を認め,日齢167にやはり死亡した. case H2,3,5は児の予後が良好であった.  8.生存率  移植例は100%生存しているのに対し,透析例で は50%であった.透析例の内,死亡した3例はい ずれも32週未満で,新生児仮死を発症した症例で あった.case H4, R11は姉妹例で,母親は第1子 死亡率(case H4)腎移植を受け,3年後に生児 (case R11)を得ている.          考  案  出生体重2,500g未満,在胎罪数37週未満の早産 児は,正常新生児には見られない合併症発症の可 能性があり,腎不全患者の妊娠,分娩といったリ スクの高い妊娠では周産期管理上,いかに良い状 態で母体内環境を保ちつつ,在胎週数の延長を図 るかが重要となってくる.更に,腎移植後,透析 中母体よりの児はそれぞれに特殊な条件のもとに 出生するハイリスク新生児でもある.  移植例では母体の易感染性,移植腎機能の低下, 胎盤機能低下と妊娠中にも継続投与される各種免 疫抑制剤による胎児の免疫能低下と催奇形性が最 も懸念される.  透析例では,透析患者に存在する内分泌機能障 害により,排卵障害と月経不順が多く見られる, 従って妊娠の可能性も健常者に比べて低いもの の,妊娠に気がついた時点で既に妊娠中期となっ ている場合も多い.胎児発育に関しては,母体に 見られる尿毒症,貧血,高血圧,易感染性,代謝 性アシドーシス,透析による急激な循環動態の変

(4)

動や抗凝固剤,高率に発症する羊水過多症などの 影響が懸念される6)7).透析患者の自然流産率の高 さ(26.9%と通常の約2倍7))は透析患者が妊娠に 不適当な状態にあり,母子への危険性が高いこと を示唆するものであろう.  妊娠管理については,当院母子センターでは, 腎移植患者の妊娠,出産許可条件を設定してい る8)(表3).移植例での早産は45∼60%といわれ ており,原因としては,腎機能の低下と長期ステ ロイド投与による結合組織の脆弱化が前期破水に 関与しているとの説明がある9).しかし,今回の検 討例では前期破水や易感染性はあまり問題になら ず,切迫症状は少なく,早産になった例では,主 に移植腎機能の低下と母体高血圧のコントロール 不良が原因であった.  透析例の妊娠出産管理(表4)の問題点は,感 染を含めた切迫早産症状で,今回の透析例に経膣 分娩が多かったのは透析患者の易感染性による頚 管成熟傾向があり,切迫早産の症状が強く,結果 的に経膣分娩となったものと考えられる.透析患 者では,発熱,白血球増多などの典型的感染徴候 を認めないにも関わらず,感染症が存在し,流早 産の原因になるという指摘もある7).透析例中帝 王切開となった1例は,初診時すでに21週であり, 表3 腎移植患者の妊娠許可条件(東女医大母子セ  ンター) 1.移植後2年以上良好な健康状態を保っている. 2.移植腎機能が良好である.  (DGFR>50ml/min   血清クレアチニン<2.Omg/dl  (2)蛋白尿がない.  (3)拒絶反応のおそれがない,  (4)少量の免疫抑制剤で移植腎機能が維持できている. 表4 血液透析患者の取扱い基準(東女医大母子セ  ンター) 1.原則として妊娠を許可しない, 2.以下の場合妊娠継続することがある.  (1)強い挙用希望がある.  (2)無帽透析開始後数年経過しており循環動態が安定し   ている.  (3)慢性腎炎以外の合併症がない. 在胎週数25週で透析回数を週3回から4回に増や したものの,胎児発育遅延を認め,27週,胎児仮 死の疑いにて帝王切開となったものである.透析 例で唯一,38週の正期産であった例は兄妹例の第 2子(case H5)で,母体は第1回妊娠中(case H2) に透析導入を受け,出産後離脱,4年後の第2子 妊娠中に再度,腎機能の低下をきたしたため,透 析導入になっている.当然透析期間も短ぐ,残存 腎機能も他の透析患者に比べると良好であったこ とが推測される.  胎児発育については.,移植例,透析例ともに IUGR発症の可能性があるが,今回の検討例では 子宮内発育に関して,比較的問題はないと思われ る.移植例でのIUGRの発生率は20%といわれて いるが,免疫抑制剤の投与量が今回の例では少な

かったことがIUGR例が1例しか見られなかっ

た理由と思われる9).  但し,透析例で早産の傾向が強いことを考慮に いれるならぽ,正期産児であった場合の透析例の 胎児発育が順調であるかどうかについては疑問の 余地があろう。従って,出生体重については在野 週数の問題と同じということになる.今回の例か ら透析例の方が妊娠継続に困難があり,早産とな り,出生体重が小さくなっているのがわかる.

 合併症については,移植例の2例にRDSなど

がみられたが,これは免疫抑制剤投与による影響 よりも児の未熟性に起因するものと考えられる. 前述したように免疫抑制剤を服用している母体か らの児は,B細胞が極めて少ない状態にあり,そ の易感染性の合併症は当然予想される問題であ る.しかし,今回の例で重篤な感染症はcase R15 に骨髄炎の発症があったのみである.従って,そ のような児に易感染性があるとはいえないであろ う.しかし,骨髄炎の例が早産児であったことは 免疫グロブリンの移行が少ない早産例では感染の リスクが高いことを示唆しているのかもしれな い.  催奇形性に関しては,アザチオプリンは大量投 与の場合,103人中7例の新生児に先天異常がみら れたという報告がある‘).また,ステロイド及びシ クロスポリンの使用も先天性奇形の可能性が示唆

(5)

されてるものの,実際には大きな奇形の報告はな い2)3)5)8)9).今回検討した例からも強い催奇形性が あるとはいえないであろう.  透析例の合併症では,case H 1,2の死亡例は主 に未熟性と新生児仮死に起因すると思われる.し かし,発症機序は不明ながら,脳の高度の萎縮と 難治性痙攣の発症(case H6)が見られ,死亡した 例があり,単に早産児,極小未熟児である以上に 透析例の場合は児のリスクが高いと思われる.今 回の結果で生存率が,移植例の方で圧倒的に優れ ていたのは,主に移植例に早産傾向が少ないこと によると言えるだろう.しかし,同じ,早産,極 小未熟児でありながら,移植例の2例が順調に経 過し,透析例の3例が死亡しているのは極めて対 照的である.  今回,新生児の臨床像を比較することにより, 腎不全患者の望ましい妊娠,出産管理を検討して きた.移植例,透析例のいずれの場合も,正常妊 娠に比較すると流,早産の可能性は非常に高く, 依然としてハイリスク妊娠,新生児である.しか し,移植例では透析例に比較すると早産の傾向が, 少なく,死亡例もなく,また易感染性も見られず, 予後も良好であった.これは妊娠,分娩許可条件 に適合した移植例は,その腎機能が妊娠,分娩に 耐えうるものであり,児にとっての母体内環境が ある程度,保証されていることをも意味するだろ う.従って,現段階では挙児を希望する腎不全患 者に対しては,透析中の妊娠は児の予後が不良で あることをよく理解してもらい,可能であれぽ腎 移植後の妊娠を勧めるべきであると考えられる. しかし,腎移植後妊娠も腎機能の低下の見られる 例や双胎例など適応が甘くなると今回のように早 産などの問題例は増加するはずであり,安易な妊 娠許可は依然として注意が必要である.  この論文を福山教授定年記念論文として捧げる.  本論文の要旨は,第37回日本未熟児新生児学会(平 成4年11月13日)において発表した.       文  献  1)東間 紘:腎移植。臨婦産 46:223−225,1992  2)東間紘:透析・移植患者の妊娠,分娩.第1回   腎と妊娠研究会記録集:66−72,1992  3)光田信明,細野 剛,中村紀彦ほか:腎移植と妊   娠.産婦治療 64:422−427,1992  4)高橋尚人,星  順,仁志田博司ほか:免疫仰制   剤服薬母体より出生した新生児の免疫能の検討.    日産婦  2 :106−107, 1992  5)Davison JM: Renal transplantation and preg・   nancy. Am J Kidney Dis 9:374−380,1987  6)平松裕司,佐藤 靖:前脳透析中の妊産婦管理.   産婦治療 65:417−421,1992  7)武田佳彦,尾崎郁枝,安達知子ほか:腎透析患者

  の周産期管理の問題点.産婦実際38:

  1777−1781, 1989  8)中林正雄,尾崎郁枝,武田佳彦ほか:妊娠と腎(疾   患)透析ならびに腎移植患者の妊娠.産と婦 58:   587−591, 1988  9)Gaudier FL: Pregnancy after renal planta−   tion. Gynecol Obstet 167:533−543,1988

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