はじめに
平成30年 3 月、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を
図るための関係法律整備に関する法律案」が第196回国会に上程された。
後見・保佐の開始を絶対的欠格条項とする規定を全面削除する一括整備法
案である。各種公務員、各種士業法にとどまらず、NPO 法人、医療法
人、信用金庫等の各種法人の役員に関する欠格条項も対象とされている
が、会社法および一般社団・財団法人法上の役員の欠格事由に関しては別
途検討を要するものとされている
(1)。
論 説成年後見制度と取締役の地位
─フランス法の検討から─
内 田 千 秋
はじめに 一 成年後見制度 二 会社の機関 三 被保護成年者と会社役員の地位 四 在任中に後見等が開始された場合の手当て 五 在任中の職務の遂行 おわりに (1) 上山泰「成年被後見人等に係る欠格条項の一律見直しの動向について」週刊社 会保障2975号(2018年)42頁参照。同法律案はその後、第197回国会でも成立せず、禁治産者・準禁治産者であることを取締役の欠格事由とする平成17年改
正前商法254条ノ 2 第 1 号は、昭和56年の商法改正により設けられた規定
である。同規定は、現行会社法では、後見・保佐の開始を欠格事由とする
会社法331条 1 項 2 号に引き継がれている。同規定は、監査役等にも準用
されている
(監査役につき同法335条 1 項、執行役につき同法402条 4 項、清算 人につき同法478条 8 項)。
平成31年 1 月現在、法制審議会会社法制
(企業統治等関係)部会によっ
て、「会社法制
(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案
(2)」が決定されて
いる。要綱案では、同法331条 1 項 2 号を削除し、取締役等
(取締役、監査 役、執行役、清算人、設立時取締役または設立時監査役)への就任について、
成年後見人は成年被後見人の同意
(後見監督人がある場合には成年被後見人 および後見監督人の同意)を得たうえで成年被後見人に代わって承諾しな
ければならない
(保佐人が民法876条の 4 第 1 項に基づいて就任の承諾に係わ る代理権を付与されている場合には、被保佐人の同意を得たうえで被保佐人に 代わって承諾しなければならない)ものとすること、被保佐人は保佐人の同
意を得たうえで承諾しなければならないものとすること、成年被後見人ま
たは被保佐人がした取締役等の資格に基づく行為は、行為能力の制限によ
って取り消すことができないものとすること等が提案されている。
これに対してフランスでは、現行会社法に至るまで、後見や保佐の開始
された者が取締役等になることを禁止する明文の規定は置かれてこなかっ
た。さらに、2007年の成年後見制度の改正の一環で、2008年には、取締役
等の候補者となるに際し、後見人等や後見裁判所等の関与を要求する命令
規定
(デクレ)が定められている。このような状況において、フランスで
は、会社法と成年後見法を調整することの必要性が認識されてきた
(3)。
第198回国会に審議が持ち越された。 (2) 法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会資料28─ 1 「会社法制(企業統治 等関係)の見直しに関する要綱案(案)」第 3 部第 3 ・ 5 参照。要綱案(案)は、 第19回会議(平成31年 1 月16日開催)において、「会社法制(企業統治等関係)の 見直しに関する要綱案」とすることが決定された。すでに別稿
(4)において、被後見人等である社員の地位およびその権利行使
の問題と、被後見人等である取締役等の地位およびその職務遂行の問題を
取り上げたが、それらの議論状況を概観するにとどまった。本稿では、後
者の問題、すなわち、被後見人等である取締役等の地位およびその職務遂
行に関するフランスの議論について、掘り下げて検討することとしたい。別
稿では会社形態ごとの詳しい検討ができなかったので、本稿では、フラン
スの株式会社および有限会社における議論状況に焦点をあてることとする。
一 成年後見制度
1 概要
フランスの成年後見制度は、1804年のナポレオン民法典に遡る。当時
は、成年者保護のための制度として、禁治産
(interdiction)と裁判上の保
佐
(conseil judiciaire)の二つの類型が置かれていたが、「成年無能力者の
権利の改正に関する1968年 1 月 3 日の法律第 5 号」
(以下、「1968年法律」 と略す)によって、精神的または身体的能力の減退の程度の軽い順に、司
法救助
(sauvegarde de justice)、保佐
(curatelle)および後見
(tutelle)の
三つの類型に置き換えられた
(5)。
(3) Henri HOVASSE et Antoine GAUDEMET, Incapacités et société, Actes
pratiques & Ingénierie sociétaire, mai─juin 2012, n° 3, spéc., n° 1 参照。この問題 を取り扱うテーズに、Corinne BOULOGNE─YANG─TING, Les incapacités et le droit
des sociétés, LGDJ, 2007がある。この問題は、民法学者(家族法学者)、商法・会 社法学者、実務家(公証人、弁護士)等により取り上げられている。脚注に掲げる 各仏語文献を参照されたい。また、日本では、吉田夏彦「成年後見人による議決権 行使の問題点」政教研紀要27号(2005年) 1 頁による研究がある。 (4) 拙稿「フランスにおける会社法と成年後見制度の関係」実践成年後見76号 (2018年)67頁参照。 (5) 1968年法律下の成年後見制度については、山口俊夫『概説フランス法(上)』 (東京大学出版会、1978年)462頁以下、稲本洋之助『フランスの家族法』(東京大 学出版会、1985年)126頁以下、須永醇「ヨーロッパ大陸の法制[一]フランス法
2007年には、「成年者の法的保護
(protection juridique)の改正に関する
2007年 3 月 5 日の法律第308号
(6)」
(以下、「2007年法律」と略す)により、成
年後見制度が大改正されている
(7)。同法律のもとで、司法的保護措置
(mesure de protection judiciaire)
として、後見、保佐および司法救助の枠
組みが維持された
(8)。同年改正ではさらに、日本の任意後見契約にあたる将
来保護委任
(mandat de protection future)制度が導入され、専門職後見人
である成年者保護に関する裁判上の受任者
(mandataire judiciaire à la protection des majeurs:MJPM)制度
(9)も創設された
(社会福祉家族法典 L. 471 ─ 2 条)。なお、2015年10月15日のオルドナンス第1288号により、家族の構
成員によって担われる代替的手段を拡充することを目的として、親族代理
権
(habilitation familiale)制度
(10)が創設された
(11)。
圏」須永醇編著『被保護成年者制度の研究』(勁草書房、1996年)179頁以下、田山 輝明『成年後見読本〔第 2 版〕』(三省堂、2016年)174頁以下による紹介がある。 (6) Loi n° 2007─308 du 5 mars 2007 portant réforme de la protection juridique des
majeurs, JO 7 mars 2007, p. 4325, texte n° 12.
(7) 2007年改正については、窪幸治「フランスにおける成年者保護制度の改正」総 合政策 9 巻 2 号(2008年)169頁、小林和子「後見─後見に関する2007年 3 月 5 日の法律第308号(立法紹介)」日仏25号(2009年)229頁、今尾真「フランス成年 者保護法改正の意義と理念」新井誠ほか編『成年後見法制の展望』(日本評論社、 2011年)165頁以下、山城一真「フランス成年後見法の現状概観」実践成年後見42 号(2012年)126頁による紹介がある。同年改正後の条文翻訳には、清水恵介「フ ランス新成年後見法」日本75巻 2 号(2009年)241頁がある。 (8) これらの保護措置の対象となる者に対して、伝統的に《incapables》(無能力 者)、その後に《majeurs protégés》(被保護成年者)という表現が用いられてきた が、徐々に《vulnérabilité》(脆弱であること)といった表現に置き換わりつつあ る。Thierry FOSSIER, Michel BAUER et Emmanuèle VALLAS─LENERZ, Les tutelles,
Accompagnement et protection juridique des majeurs, 7e éd., ESF, 2016, p. 21参 照。本稿では主として、「被保護成年者」という語を用いる。 (9) MJPM は、後見人団体(社会福祉家族法典 L. 471─ 2 条 2 項 1 号)、個人(同 項 2 号)および施設職員(同項 3 号)である。 (10) 親族代理権制度を含め、フランス成年後見制度の直近の調査研究として、公益 社団法人商事法務研究会『各国の成年後見法制に関する調査研究報告書』(平成30 年 1 月)フランス〔山城一真〕がある。
フランスでは、2014年末現在、後見・保佐・司法救助制度に服する者は
679,600人、そのうち被保佐人は313,400人
(年齢の中央値は54歳、平均値は 55歳)、被後見人は364,500人
(年齢の中央値は65歳、平均値は64歳)である
(12)。
2012年公表の文献によれば、企業長
(chef d’entreprise)の12%以上が60歳
以上であり、40%以上が50歳以上であるという
(13)。今後はより企業長の高齢
化が進むと考えられるが、すでに、在任中に後見等が開始される会社役員
が増えつつあると指摘されている
(14)。
日本では、同じく2014年末において、成年後見制度
(成年後見、保佐、 補助、任意後見)の利用者数は166,289人であり、うち成年後見の利用者数
が136,484人、保佐の利用者数が20,429人である
(15)。直近
(平成29年12月末日 時点)では、利用者数210,290人、うち成年後見の利用者数が165,211人、
保佐の利用者数が32,970人に増加した。利用者全体の平均年齢等は明らか
にされていないが、平成29年の後見人等の選任案件のうち、本人が65歳
以上の者は、男性では男性全体の約70.0%、女性では女性全体の約86.3%
を占めている
(16)。
佐・司法救助・親族代理権は司法的保護措置、将来保護委任は合意による保護措置 に分類される。(12) Thibault CRUZET et Marie LEBAUDY, 680 000 majeurs sous protection judiciaire
fin 2014, Infostat Justice, juill. 2016, No. 143, p. 1 参照。この記事は、司法省のウェ ブサイト(http://www.justice.gouv.fr/statistiques─10054/infostats─justice─10057/) から入手可能である。また、2007年改正後の制度の運用状況に関しては、内田哲也 「フランスにおける改正成年者保護制度の運用状況」公証169号(2013年) 3 頁、
2015年の申立件数・保護措置の推移・年齢構成に関しては、山城・前掲注(10) 8 頁以下参照。
(13) Sophie SCHILLER et Hubert FABRE, La protection de la société contre l’état de
vulnérabilité de son dirigeant, JCP N 2012. 1933, spéc., no 2 参照。
(14) Grégory MOUY et Charlotte ROBBE, Mesures de protection et dirigeant de
société, Gaz. Pal. 2, 3 octobre 2013, nos 275 à 276, p. 2920参照。
(15) 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況─平成24年 1 月〜12月 ─」11頁参照。
(16) 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況─平成29年 1 月〜12月 ─」 6 頁、12頁参照。
2 被保護成年者の保護
フランスでは、法的能力は、権利能力
(capacité de jouissance)と行為能
力
(capacité d’exercice)の二段階に区別される
(17)。権利能力は権利および義
務を有する資格であり、すべての自然人は原則として、権利能力を有す
る。行為能力とは、自分自身でその権利および義務を行う権能である。精
神的または身体的能力の減退の程度に応じて、司法救助・保佐・後見の三
類型が用意されているが、2007年改正法のもとでは、司法救助は、一時的
な法的保護または特定の行為の代理を受ける必要がある者を対象とするも
のであって
(18)、後見・保佐とは性格が異なる
(19)。以下では、後見・保佐類型を
念頭に置いて、検討を進める。
( 1 )後見
精神的または身体的能力の減退
(民法典425条)によって、民事生活の行
為
(actes de la vie civile)において継続的に代理されなければならない者
は、後見の対象となる
(同法典440条 3 項)。被後見人は行為能力を有しな
いので、原則として、後見人は、民事生活のすべての行為において被後見
人を代理する
(同法典473条 1 項)。後見人
(tuteur)は、単独で、被後見人
の資産管理
(gestion du patrimoine)に必要な保存行為
(acte conservatoire)および管理行為
(acte d’administration)を行うことができるが
(同法典504 条 1 項)、処分行為
(acte de disposition)をする際は、家族会
(conseil de famille)、それがない場合には後見裁判官
(juge des tutelles(20))の事前の許可
(17) 中村紘一ほか監訳『フランス法律用語辞典〔第 3 版〕』(三省堂、2012年)64頁 参照。 (18) 司法救助の期間は最長 1 年である(民法典439条 1 項)。司法救助のもとに置か れた者は、原則として行為能力を保持する(同法典435条 1 項)。その者がした法律 行為は、単なる損害を理由として取り消し、または過分の場合には減殺することが できる(同条 2 項)。 (19) 山城・前掲注(10) 6 頁(注 4 )は、日本法における補助類型はフランス法に おける保佐類型に解消されていると指摘する。
を受けなければならない
(同法典505条 1 項)。
被後見人が、後見人の代理なくして行うことができた行為を単独で行っ
た場合には、その行為は、単なる損害を理由とする取消しまたは過分な部
分の減殺の訴え
(同法典435条)の対象となるにすぎない
(同法典465条 1 項 1 号)。他方で、代理されなければならない行為を被後見人が単独で行っ
た場合には、損害を被ったことを証明する必要なしに、その行為は法律上
当然に無効である
(同項 3 号)。
( 2 )保佐
精神的または身体的能力の減退によって、民事生活の重要な行為におい
て継続的に補佐され、または監督されることが必要である者は、保佐の対
象となる
(民法典440条 1 項)。被保佐人が、後見の場合に裁判官または家
族会の許可を要する行為を行う際は、保佐人
(curateur)の補佐が必要で
ある
(同法典467条 1 項)。補佐
(assistance)とは、同意、実際には連署す
ることが想定されている
(21)。管理行為に関しては、被保佐人は単独で行うこ
とができる。
被保佐人が、保佐人の補佐なくして行うことができた行為を単独で行っ
た場合には、その行為は、単なる損害を理由とする取消しまたは過分な部
分の減殺の訴えの対象となる
(同法典465条 1 項 1 号)。他方で、補佐され
なければならない行為を単独で行った場合には、被保佐人が損害を被った
ことが証明されなければ、その行為を無効とすることができない
(同項 2 号)。
3 被保護成年者の会社に関する行為の保護
2007年改正後の民法典では、会社
(société(22))に関する若干の行為が管理
(20) 後見裁判官は、小審裁判所裁判官がつとめる(司法組織法典 L. 221─ 3 条)。 (21) 山 城・ 前 掲 注(10) 6 頁(注 6 ) 参 照。 ま た、FOSSIER, BAUER et VALLAS─行為ないし処分行為と定められている。資産の現在の管理に関する管理行
為、および恒久的かつ本質的に資産を拘束する処分行為とみなされる行為
のリストは、コンセイユ・デタの議を経たデクレによって定めるものとさ
れた
(民法典496条 3 項)。そこで、「保佐または後見のもとに置かれた人の
資産管理行為に関し、民法典452条、496条および502条の適用による2008
年12月22日のデクレ第1484号
(23)」
(以下、「2008年デクレ」と略す)が公表され
た。
同デクレはまず、管理行為を「異常なリスクのない、被保護者
(personne protégée)の資産の活用行為または運用行為」
(2008年デクレ 1 条 1 項)、処
分行為を「被保護者の資産内容に対する重大な変更、資金価値の明らかな
減少、またはその権利者の権利の恒久的な変化により、現在または将来に
向かって、資産を拘束する行為」
(同デクレ 2 条 1 項)と定義している。そ
のうえで、同デクレの付表 1 において、管理行為または処分行為とみなさ
れる行為を列挙し
(同デクレ 1 条 2 項、 2 条 2 項)、付表 2 において、管理
行為または処分行為と推定される行為を例示列挙している
(同デクレ 1 条 3 項、 2 条 3 項(24))。
付表 1 および付表 2 は、法人格を有する団体に関する諸行為も掲げてい
る。たとえば、総会での議決権行使は原則として管理行為と推定される
が、特別な議事日程
(定款変更、合併・分割など)に関する投票の決定は処
分行為と推定される
(同デクレ付表 2 ─Ⅰ─ 2o、 2 ─Ⅱ)。また、「業務執行者
(22) 《société》(ソシエテ)は、民法分野では「組合」(清水・前掲注( 7 )280頁 参照)、会社法分野では「会社」と訳されることが多い。本稿では、「会社」の語を 用いる。(23) Décret n° 2008─1484 du 22 décembre 2008 relatif aux actes de gestion du patrimoine des personnes placées en curatelle ou en tutelle, et pris en application des articles 452, 496 et 502 du code civil, JO 31 déc. 2008, p. 20631, texte n° 94. 2008 年デクレの概要を紹介するものとして、シルヴィー・ルロン=原恵美(訳)「フラ ンス法における他人の財産管理( 1 )─一般法の委任および特別の委任─」慶 應ロー23号(2012年)237頁参照。
および取締役の職 務
(25)への立候補
(candidature aux fonctions de gérant et d’administrateur)」は、処分行為とみなされる行為である
(同デクレ付表 1 ─ Ⅲ (26) )。したがって、被後見人が株式会社の取締役の候補者となる場合には、
後見人は、家族会または後見裁判官の事前の許可を得なければならない
(民法典505条 1 項)。被保佐人には、保佐人の補佐が必要である
(同法典467 条 1 項)。
二 会社の機関
1 会社形態
フランスの「会社
(société)」は会社契約
(contrat de société)に基づく
ものであり
(民法典1832条以下)、民事会社
(同法典1845条以下)と商事会社
(商法典第 2 編)に区分される
(27)。商事会社には、合名会社、合資会社、有限
会社、株式会社、株式合資会社および略式株式会社がある。このうち、有
限会社および略式株式会社は、一人会社として設立することも可能であ
(25) 本稿では《administrateur》に「取締役」の訳語をあてたが、2008年デクレは 《administrateur》の職務への立候補を「法人格を有する団体に関する行為」とし て い る の で、 法 人 格 を 有 す る 非 営 利 社 団(association) や 経 済 利 益 団 体 (groupement d’intérêt économique)の理事(administrateur)も、同デクレの規 制対象に含まれることになる。Armelle GOSSELIN─GORAND et Jean─ChristophePAGNUCCO, Le majeur protégé dans la société, in Nouveau droit des majeurs
protégés, dir. Gilles RAOUL─CORMEIL, Dalloz, 2012, pp. 111 et suiv. 参照。
(26) 後に検討するように(五 3 参照)、被保護成年者であっても会社役員としての 責任を負うと解されているので、2008年デクレが、業務執行者および取締役の職務 への立候補を処分行為と性質決定したことは正当化できる、と指摘されている。 HOVASSE et GAUDEMET, op. cit. (note 3 ), no 71参照。
(27) フランス会社法の近時の翻訳作業として、加藤徹ほか「フランス会社法( 1 〜 14)」関学64巻 1 号137頁、64巻 3 号(2013年)423頁、64巻 4 号339頁、65巻 2 号289 頁、65巻 3 号(2014年)259頁、65巻 4 号373頁、66巻 3 号(2015年)173頁、66巻 4 号345頁、67巻 2 号109頁、67巻 3 号(2016年)41頁、67巻 4 号213頁、68巻 3 号 (2017年)191頁、68巻 4 号97頁、69巻 3 号(2018年)183頁がある。
る。民事会社
(民法典1842条 1 項)および各商事会社
(商法典 L. 210─ 6 条 1 項)は、商業会社登記簿への設立登記によって法人格を取得する。
INSEE
(国立統計経済研究所)によれば、2015年末日現在、有限会社が
1,537,199社
(うち、一人会社は401,875社)、略式株式会社が429,671社
(う ち、一人会社は158,204社)、株式会社は33,659社である
(28)。すなわち、商事会
社の77%が有限会社であり、株式会社はわずか 2 %にすぎない。
2 株式会社の機関
株式会社の株主数は 2 人以上であるが、規制市場または多角的取引シス
テムにおいてその株式の取引が認められている会社では 7 人を下回ること
ができない
(商法典 L. 225─ 1 条 2 項(29))。株式会社には、取締役会
(conseil d’administration)を置く一層制
(旧型)と、執行役会
(directoire)および
監査役会
(conseil de surveillance)を置く二層制
(新型)があり、定款の定
めによりいずれかを選択することができる
(同法典 L. 225─57条(30))。二層制
は、ドイツ法から着想を得て、商事会社に関する1966年 7 月24日の法律第
537号により導入されたものである
(31)。
(28) SIRENE ; traitement DGE─P 3 E, in Rapport Notat─Senard, L’entreprise, objet d’intérêt collectif, mars 2018, p. 97参照。この統計は、Maurice COZIAN, Alain
VIANDIER et Florence DEBOISSY, Droit des sociétés, 31e éd., LexisNexis, 2018, no 37;
Philippe MERLE, Droit commercial, Sociétés commerciales, 22e éd., Dalloz, 2018, no
2 でも紹介されている。 (29) 白石智則「最低株主数の引下げ─非上場株式会社における最低株主数の引下 げに関する2015年 9 月10日のオルドナンス第1127号」日仏29号(2017年)254頁参 照。 (30) 現行法上の株式会社の機関構成については、鳥山恭一「コーポレート・ガヴァ ナンスとフランス会社法(上・下)」監査459号13頁、460号(2002年)69頁参照。 近時のコーポレート・ガバナンスに関する動向については、石川真衣「フランスに おけるコーポレートガパナンス・コードと会社法」早比51巻 3 号(2018年) 1 頁に 詳しい。 (31) 各機関の権限につき、布井千博「フランスにおける株式会社の監査役会 (Conseil de surveillance)について」一論88巻 3 号(1982年)414頁、山口幸五郎 『会社取締役制度の史的展望』(成文堂、1989年)113頁以下、来住野究「フランス
( 1 )一層制の株式会社
一層制株式会社では、取締役
(administrateur)は、通常総会
(assemblée générale ordinaire)によって選任される
(商法典 L.225─18条 1 項)。法人取
締役も可能である
(同法典 L. 225─20条、常任代理人の選任が必要)。定款に
より、取締役は一定数の株式を保有しなければならない旨を定めることが
できる
(資格株(32)、同法典 L. 225─25条 1 項)。
取締役会は、少なくとも 3 人の取締役から構成される。定款により、18
人を超えない限度で取締役の最大員数を定める必要がある
(同法典 L. 225─ 17条 1 項)。取締役会は、会社の活動の方針を決定し、その実施を監視す
る
(同法典 L. 225─35条 1 項)。
取締役会会長
(président du conseil d’administration)は取締役会によって
取締役の中から選任されるが、自然人でなければならない
(同法典 L.225─ 47条 1 項)。取締役会会長は、取締役会の作業を組織しかつ指揮し、会社
の機関の健全な運営を監視する
(同法典 L. 225─51条)。
会社の業務全般の指揮
(direction générale)は、取締役会会長か、取締
役会が選任する執行役員
(directeur général)(自然人のみ)が行う
(同法典 L. 225─51─ 1 条 1 項)。前者の体制
(統合型)をとるか、後者の体制
(分離 型)をとるかは、定款の定めによる
(同条 2 項(33))。執行役員
(統合型の場合 には取締役会会長、同条 3 項)は、会社の名において行為する最も広範な権
株式会社法における業務執行機関と代表機関の分化」法政論究25号(1995年)121 頁、鳥山恭一「株式会社の業務執行機構と監督機構─フランスにおけるその展開 ─」民商117巻 4 ・ 5 号(1998年)569頁参照。 (32) 資格株制度につき、鳥山・前掲注(30)下71頁、出口哲也「取締役資格と株式 保有要件」関学59巻 1 号(2008年)59頁、同「フランスにおける取締役の自社株式 保有義務の展開」立正大学法制研究所研究年報17号(2012年)37頁参照。 (33) 従 来、 取 締 役 会 会 長 は 執 行 役 員 の 地 位 を 兼 ね て お り、PDG(Président─ Directeur Général)と呼ばれていた。鳥山恭一「PDG と取締役会─フランス株 式会社法における業務執行機構の形成─」早法73巻 3 号(1998年)25頁参照。コ ーポレート・ガバナンスの観点から、2001年 5 月15日の法律第420号(NRE 法律) により分離型が置かれた。限を有する
(同法典 L. 225─56条第Ⅰパラグラフ 1 項)。執行役員は、第三者
との関係において会社を代表する
(同パラグラフ 2 項)。また、執行役員の
提案に基づき、取締役会は執行役員を補佐することを任務とする担当執行
役員
(directeur général délégué)(自然人のみ)を選任することができる
(同法典 L. 225─53条 1 項)。定款により、 5 人を超えない限度でその最大員
数を定める必要がある
(同条 2 項)。取締役会は、執行役員との合意に基
づき、担当執行役員に付与する権限の範囲および期間を決定する
(同法典L. 225─56条第Ⅱパラグラフ 1 項)
。担当執行役員は、第三者に対しては執行
役員と同一の権限を有する
(同パラグラフ 2 項)。
与信機関、保険企業等の公益事業体
(entités d’intérêt public、同法典 L. 820─ 1 条)では、監査委員会
(comité d’audit)の設置が義務づけられる
(同法典 L. 823─19条(34)第Ⅰパラグラフ)。また、すべての株式会社では、計算
書 類 の 法 定 監 査
(同 法 典 L. 823─ 9 条)を 任 務 と す る 会 計 監 査 役
(commissaire aux comptes)を選任しなければならない
(35)(同法典 L. 225─218 条)。 6 年の任期で
(同法典 L. 823- 3 条 1 項)、通常総会により選任される
(同法典 L. 823─ 1 条第Ⅰパラグラフ 1 項)。
(34) 監査委員会につき、拙稿「法定監査指令の国内法化─2006年 5 月17日の EC 指令第43号を国内法化する会計監査役に関する2008年12月 8 日のオルドナンス第 1278号」日仏26号(2011年)175頁、同「法定監査制度の改革─会計監査役職に 関する2016年 3 月17日のオルドナンス第315号」日仏20号(2017年)265頁において 紹介した。 (35) ただし、現在国会で審議中の PACTE 法律案では、一定の基準を超える商事 会社についてのみ会計監査役の選任を義務づけることが提案されている(株式会社 もその対象となる)。同法律案の提案理由によれば、EU 会計指令(Directive 2013/34/UE)34条に照らし、貸借対照表の総額400万ユーロ、税控除後の総売上高 800万ユーロ、または、事業年度中の従業員の平均人数50人の 3 つの基準のうち、 事業年度の終了時に 2 つの基準を超える商事会社に対して、会計監査役の選任義務 を課すことが予定されているという。Projet de loi relatif à la croissance et la transformation des entreprises, Ass. Nat., No 1088, Exposé des motifs, pp. 9 et suiv. 参照。( 2 )二層制の株式会社
二層制株式会社は、執行役会
(directoire)によって指揮される。執行役
会構成員の員数は最大 5 人であるが、規制市場においてその株式の取引が
認められている会社では、定款の定めにより 7 人まで引き上げることがで
きる
(商法典 L. 225─58条 1 項)。資本が15万ユーロ未満の会社では、執行役
会に代わり単独執行役員
(directeur général unique)を置くこともできる
(同条 2 項、L. 225─59条 2 項)。執行役会構成員・単独執行役員は自然人で
なければならないが、株主以外から選任することもできる
(同条 3 項)。
執行役会は、会社の名において行為する最も広範な権限を有する
(同法 典 L. 225─64条 1 項)。執行役会構成員および執行役会会長は、監査役会に
より選任される
(同法典 L. 225─59条 1 項)。執行役会会長・単独執行役員
は、第三者との関係において会社を代表する
(同法典 L. 225─66条 1 項)。
さらに定款をもって、監査役会が他の執行役会構成員に代表権を付与する
ことができる旨を定めることができる。この場合、その執行役会構成員は
執行役員
(directeur général)と呼ばれる
(同条 2 項)。
監査役会
(conseil de surveillance)は、少なくとも 3 人の監査役会構成
員から構成される。定款の定めにより、18人を超えない限度でその最大員
数を定める必要がある
(同法典 L. 225─69条 1 項)。法人が監査役会構成員
となることも可能である
(同法典 L. 225─76条)。定款により、監査役会構
成員は一定数の株式を保有しなければならない旨を定めることができる
(資格株、同法典 L. 225─72条 1 項)。監査役会構成員は通常総会によって選
任される
(同法典 L. 225─75条 1 項)。監査役会は、執行役会による会社の業
務執行の恒常的な監督を行う
(同法典 L. 225─68条 1 項)。
監査委員会の設置と会計監査役の選任については
( 1 )で述べたのと同
様である。
3 有限会社の機関
有限会社の社員数は、1 人以上
(商法典 L. 223─ 1 条 1 項)、100人までであ
る
(同法典 L. 223─ 3 条)。有限会社では、1 人または数人の自然人が業務執
行を行う
(同法典 L. 223─18条 1 項)。この業務執行者
(gérant)は、社員以
外からも選任することができる
(同条 2 項)。業務執行者は総会または書
面協議において、社員により選任される
(同項、L. 223─29条 1 項)。社員相
互の関係では、業務執行者の権限は定款をもって定めるが、定款に定めが
ない場合には、業務執行者は会社の利益においてすべての業務執行行為を
行うことができる
(同法典 L. 223─18条 4 項、L. 221- 4 条)。第三者に対する
関係では、業務執行者は、会社の名において行為する最も広範な権限を有
する
(同法典 L. 223─18条 5 項)。会計監査役の選任は、一定規模以上の有限
会社
(36)においてのみ義務づけられる
(同法典 L. 223─35条)。
三 被保護成年者と会社役員の地位
1 従来の議論
フランスでは、会社の任務
(mandat social)を行うために完全な法的能
力を要求する法律上の規定は存在していない。そのため、被保護成年者に
会社役員
(37)の地位を認めることができるかについて、裁判例および学説は対
(36) 貸借対照表の総額1,550,000ユーロ、税控除後の総売上高3,100,000ユーロ、ま たは、事業年度中の従業員の平均人数50人の 3 つの基準のうち、事業年度の終了時 に 2 つの基準を超える有限会社が対象となる(商法典 R.221─ 5 条、R. 223─27条)。 前掲注(35)も参照。 (37) 会社の役員は、会社を指揮する(diriger)ことから派生して《dirigeant》と呼 ばれるが、業務執行権を有しない取締役は、本来これに含まれない。しかし、倒産 法 上 の 資 産 不 足 責 任(五 3 参 照) を 定 め る 商 法 典 L. 651─ 2 条 1 項 に い う 《dirigeant》 に は、 取 締 役 も 含 ま れ る と 解 さ れ て い る。COZIAN, VIANDIER etDEBOISSY, op. cit. (note 28), no 770参照。他方で、《mandataire social》の語には、
一層制株式会社における取締役・取締役会会長・執行役員・担当執行役員と、二層 制株式会社における執行役会構成員・監査役会構成員が含まれる。鳥山・前掲注 (30)下81頁参照。しかし、これらの取締役等と会社の関係は、民法典に定める委 任(mandat)ではないと解されてきた。取締役等は、会社の名および計算におい
立していた
(38)。
学説には、被保護成年者を会社役員に選任することはできないと主張す
る見解
(否定説(39))と、保佐のもとに置かれたとしても営業を行うことが禁
止されないのと同様、業務執行者の職務も禁止されないと述べる見解
(肯定説(40))
が見られた。なお、委任
(mandat)に関する民法典1990条は、開放
されていない未成年者
(mineur non émancipé(41))を受任者
(mandataire)と
して選任することを認めている。しかし、否定説は、フランスでは伝統的
に、会社役員は株主の受任者ないし会社の受任者ではなく会社の「機関
(organe)」であると解されてきたことを根拠に
(42)、同条は肯定説の論拠にな
らないと主張する
(43)。
て行為をする以上は株主の受任者ではなく、また、会社が固有の意思を有しないこ とから会社の受任者でもないのであり、会社の機関(organe)であると説明され る。MERLE, op. cit. (note 28), no 117; G. RIPERT et R. ROBLOT, par Michel GERMAINet Véronique MAGNIER, Traité de droit des affaires, t. 2, Les sociétés commerciales,
22e éd., LGDJ, 2017, no 1667等を参照。そこで本稿では、《mandataire social》とい う語が指す範囲の者を「会社受任者」ではなく「会社役員」と呼ぶことにする。 (38) 学説・裁判例の対立状況につき、HOVASSE et GAUDEMET, op. cit. (note 3 ), no
65参照。
(39) Mémento pratique Sociétés commerciales 2005, Francis Lefebvre, 2004, no 1820; Thierry FOSSIER, L’entreprise familiale et l’incapable, Defrénois 2001, art. 37296参
照。早稲田大学フランス商法研究会『注釈フランス会社法第 1 巻』(成文堂、1976 年)237頁、同『注釈フランス会社法第 2 巻』(成文堂、1977年)473頁にも、この 点に関する記述がある。
(40) Thierry BONNEAU, obs. sous CA Paris, 4 avril 1997, Dr. sociétés 1997, comm.
177参照。 (41) フランスでは、18歳未満は未成年者(mineur)である(民法典388条 1 項)。た だし、婚姻した場合(同法典413─ 1 条)、または、16歳以上で開放(émancipation) がなされた未成年者(同法典413─ 2 条)は、民事生活のすべての行為について能力 を有する(同法典413─ 6 条 1 項)。 (42) この点につき、前掲注(37)の記述を参照。会計監査役と会社の関係について ではあるが、拙稿「フランスにおける会計監査役の任務と民事責任( 2 )─会計 監査役のフォート (faute)に関する判例の分析を通じて ─」早法81巻 2 号 (2006年)97頁でも、この点について論じた。
事実審裁判例にも対立が見られる。被保佐人となって数年が経過した不
動産民事会社
(44)の業務執行者
(gérant)について、Paris 控訴院1997年 4 月 4
日判決
(45)は、「保佐制度は、理論的には、不動産民事会社の業務執行者の職
務の遂行を妨げるものでない」と述べている
(当該業務執行者の裁判上の解 任が認められた事案)。これに対して、Paris 控訴院2002年 7 月 2 日判決
(46)は、
同族株式会社の取締役会会長について、「保佐のもとに置かれたことによ
り、株式会社の取締役の任務を遂行するのに必要な法的能力をもはや有し
なくなった」と判示した
(多数派株主でもある元取締役会会長の主導した総 会決議について多数派の濫用を理由とする無効等が申し立てられた事案)。
2 2008年デクレ
そのような議論状況の中、2008年デクレによって、業務執行者および取
締役の職務への立候補が処分行為とみなされる旨が定められた
(2008年デ クレ付表 1 ─Ⅲ)。さらに、破毀院商事部2009年 9 月29日判決
(47)は、健康状態
の悪化により保佐のもとに置かれた同族株式会社の取締役会会長につい
て、被保佐人は「自己が放棄していない取締役会会長の職務を行うことを
禁止されるわけではない」と述べている。
しかし、同デクレ公表後も、被保護成年者に会社役員の地位を認めるこ
との可否について、学説の対立は見られる。法文で認められているので業
JCP E 2009. 2066, spéc., p. 36; HOVASSE et GAUDEMET, op. cit. (note 3 ), no 66参照。(44) フランスでは、実務上、未成年者や被保護成年者の資産管理スキームとして、 (不動産)民事会社がよく用いられているという。HOVASSE et GAUDEMET, op. cit.
(note 3 ), no 2 参 照。 そ の 利 用 目 的 や 利 用 方 法 に つ い て は、Jean─Christophe PAGNUCCO, Le contrat de société et le majeur protégé, in Le patrimoine de la
personne protégée, dir. Jean─Marie PLAZY et Gilles RAOUL─CORMEIL, LexisNexis,
2015, p. 151, spéc., nos 2 et suiv. が詳しい。
(45) CA Paris, 4 avril 1997, JurisData no 1997─020959, Dr. sociétés 1997, comm. 177, obs. Thierry BONNEAU.
(46) CA Paris, 2 juill. 2002, JurisData no 2002─190681, JCP N 2003. 1201, note Thierry FOSSIER; Bull. Joly Sociétés 2002, §257, p. 1204, note Paul LE CANNU.
務執行者・取締役の職務への立候補は可能といえるが、推奨はできないと
指摘するにとどめる立場もある
(48)。これに対して、被保護成年者に会社役員
の地位を認めることについて否定的な立場をとるものも多い。後者の立場
は、会社役員の就任要件は法律が定めるべきものであり、デクレの規定
(命令規定)から、被保護成年者が会社役員になることができるとする根
拠を引き出すことはできないと主張する
(49)。さらに、自身で行おうとしても
行為が禁止されているか、補佐または代理を受けることが要求される者に
は、会社の名において行為をすることは認められないとする
(50)。
なお、2008年デクレは、取締役の資格を前提としない職務
(執行役員、 担当執行役員)や二層制株式会社における職務に言及していないが、類推
あるいは当然解釈により、これらの職務への立候補についても取締役と同
様に解すべきものとされている
(51)。
3 2016年の債務法改正の影響
フランスでは伝統的に、委任は代理を伴うものと解されており、民法典
には代理に関する通則は存在しなかった
(52)。「契約法、債務に関する一般的
制度および証拠を改正する2016年 2 月10日のオルドナンス第131号
(53)」
(以 (48) Jean─Jacques LEMOULAND, La société familiale et l’incapable, Journ. sociétés2016, No. 143, p. 37; GOSSELIN─GORAND et PAGNUCCO, op. cit. (note 25), pp. 112 et
suiv. 参照。
(49) HOVASSE, op. cit. (note 43), p. 36参照。
(50) HOVASSE et GAUDEMET, op. cit. (note 3 ), no 67; Antoine GAUDEMET, note sous
Cass. 1re civ., 12 juill. 2012, Rev. sociétés 2013. 86, spéc., no 9参照。同旨、COZIAN, VIANDIER et DEBOISSY, op. cit. (note 28), no 861参照。
(51) COZIAN, VIANDIER et DEBOISSY, Ibid. 参照。
(52) 幾代通=広中俊雄編『新版注釈民法(16)債権( 7 )』(有斐閣、1989年)215 頁〔中川高男〕、柳勝司『委任による代理』(成文堂、2012年)12頁以下参照。 (53) Ordonnance no 2016─131 du 10 février 2016 portant réforme du droit des
contrats, du régime général et de la preuve des obligations, JO 11 févr. 2016, texte no 26. 同オルドナンスについては、荻野奈緒ほか(訳)「フランス債務法改正オル ドナンス(二〇一六年二月一〇日のオルドナンス第一三一号)による民法典の改
下、「2016年オルドナンス」と略す)
は、法の調和化というヨーロッパの原
則から着想を得て
(54)、民法典中に代理に関する通則を置いた。代理の通則
は、法律による代理、裁判による代理および合意による代理に適用される
(民法典1153条参照)。
会社法上の法定代表
(représentation légale(55))が、民法典に定める法律に
よる代理
(représentation légale)に該当するのか合意による代理に該当す
るのかという議論もあるが
(56)、いずれに該当するにせよ、会社の法定代表者
に対して代理の通則が適用される
(57)。ただし、会社契約は民法典に定める典
型契約
(contrats spéciaux)の一つであるから、会社法に特段の定めが置か
れている場合は、代理の通則の適用が排除される
(同法典1105条 3 項)。
代理の通則中にある同法典1160条は、「代理人の権限は、その者が無能
力
(incapacité)となり、又は禁止を課される場合には、終了する
(58)」と定
める。法定代表者の権限に対する無能力および禁止の効果は会社法上定め
られていないので、法定代表者については同条が適用されるという解釈が
有力になっている
(59)。ここでいう「無能力」とは、司法救助、保佐、後見、
正」同法69巻 1 号(2016年)279頁参照。同オルドナンスは、2018年 4 月20日の法 律第287号により追認されている。(54) Rapport au Président de la République, JO 11 févr. 2016, texte no 25参照。 (55) 《représentation》の語は、民法・成年後見法に関する文脈では「代理」、会社
法に関する文脈では「代表」に訳し分けることとする。
(56) Mustapha MEKKI, Les incidences de la réforme du droit des obligations sur le
droit des sociétés:rupture ou continuité? Rev. sociétés 2016. 483, spéc., no 24; François TERRÉ, Philippe SIMLER, Yves LEQUETTE et François CHÉNEDÉ, Droit civil,
Les obligations, 12e éd., Dalloz, 2018, no 234が、会社の法定代表は法律による代理 に該当すると解するのに対し、Guillaume WICKER, Le nouveau droit commun de la
représentation dans le code civil, D. 2016, chron. 1942, no 9は、法律によりその権 限が定められている一方で法定代表者が社員により選任されることを理由に、法定 代表は法律による代理と合意による代理の双方の性質を有すると位置づけている。 (57) COZIAN, VIANDIER et DEBOISSY, op. cit. (note 28), no 861参照。反対、RIPERT et
ROBLOT, op. cit. (note 37), no 1667─ 1 参照。
(58) 同条の条文訳は、荻野ほか・前掲注(53)294頁を参照した。
親族代理権、または将来保護委任のいずれかの保護措置に服することを指
す
(60)。「代理人の権限の終了」は、法定代表者の地位を終了させる
(61)。したが
って、法定代表権を有する会社役員、すなわち、一層制株式会社の執行役
員・担当執行役員、二層制株式会社の執行役会会長・執行役員・単独執行
役員、および有限会社の業務執行者は、いずれかの保護措置のもとに置か
れた場合にその職務を終了する
(62)。
これに対して、法定代表権を有しない会社役員
(取締役、執行役会構成 員、監査役会構成員)には同条の適用がないので、これらの者は在任可能
である
(63)。
4 会社法の簡素化に関する議員提出法律案
債務法改正の動きとは別に、会社法制の簡素化を目的とする一連の会社
法改正
(64)の延長で、2014年 8 月 4 日には、元老院議員 Thani M
OHAMEDS
OILIHI824; Les effets de la réforme du droit des contrats sur la capacité et la représentation des sociétés, BRDA 11/16, inf. 22, no 13; Mémento pratique Sociétés commerciales 19, 50e éd., Francis Lefebvre, 2018, no 13285参照。
(60) BRDA, Ibid., no 14参照。Olivier DESHAYES, Thomas GENICON et Yves─Marie LAITHIER, Réforme du droit des contrats, du régime général et de la preuve des
obligations, 2e éd., LexisNexis, 2018, p. 294は、委任に関する民法典2003条は成年 者後見を委任の終了事由とするが、同法典1160条は同法典2003条を一般化したもの であり、すべての代理およびすべての無能力の場合に適用されると説明する。 (61) BRDA, Ibid., no 15; Mémento pratique Sociétés commerciales 19, op. cit. (note
59), no 12440.
(62) Mémento pratique Sociétés commerciales 19, Ibid., nos 10030, 31140, 42531 et 42681参照。同文献(nos 11112 et 31020)はさらに、法定代表者として被保護成年 者を選任することは禁じられていないが、無能力となった時に代理人の権限は終了 するから、そのような選任は法的効力を有しないとする。
(63) Sophie SCHILLER et Didier MARTIN, Guide des pactes d ’actionnaires et
d ’associés 2018, LexisNexis, 2017, no 485; Mémento pratique Sociétés commerciales, op. cit. (note 59), no 11112参照。
(64) 会社法の簡素化を目的とする近時の各立法に関する紹介として、白石智則「会 社法の簡素化─法の簡素化および行政手続の軽減に関する2012年 3 月22日の法律第 387号」日仏28号(2015年)189頁、同「企業活動の簡素化と安定性強化のための会
氏の手による議員提出法律案が元老院に提出された
(65)。同法律案
(以下、 「簡素化法律案」という)では、後見または保佐のもとに置かれた有限会社
の単独業務執行者を交代させるための総会招集手続を整備し、株式会社の
取締役等が後見または保佐のもとに置かれた場合に当然に辞任したものと
みなす規定を置くことが提案された
(66)。会社法上、辞任には、「任意辞任
(démission volontaire)」 と「強 制 辞 任
(démission forcée)」
(= démissiond’office;当然辞任)
がある。強制辞任は、解任
(révocation)と区別するた
めにそのように呼ばれている。強制辞任は、たとえば、制限年齢への到
達
(67)、違法な兼任
(68)、会社の解散または組織変更、株式会社の一層制から二層
制への変更等から生じる
(69)。
社法改正─会社法に関する2014年 7 月31日のオルドナンス第863号」日仏28号 (2015年)202頁、同「企業活動の簡素化─企業活動の簡素化に関する2014年12月20 日の法律第1545号」日仏29号(2017年)249頁がある。(65) Proposition de loi de simplification, de clarification et d’actualisation du code de commerce, présentée par M. Thani MOHAMED SOILIHI, Sénat, No 790(2013─
2014)参照。
(66) 破毀院第一民事部2012年 7 月12日判決(五 1 参照)を受けて、2014年 6 月17日 開催の公証人会議(Congrès des notaires)では、後見または保佐のもとに置かれ た会社役員を当然に辞任したものとみなすものとし、後見人または保佐人は会社役 員の終任について法定の公示を行い、必要があれば会社役員の交代について判断す る総会を招集しなければならないものとする立法提案がなされた。Proposition notariale relative au dirigeant vulnérable, Dr. famille 2014, comm. 137, obs. I. M 参 照。Rapport par M. André REICHARDT, Sénat, No 657(2015─2016), p. 45でも、公
証人最高評議会が、法律案のような法的安全措置を置くことの有益性を強調してい たと指摘されている。公証人と会社法務の関わりについては、拙稿「フランス公証 人制度の近時の展開─公証役場の会社化に関する検討を中心に」公証法48号 (2019年刊行予定)でも触れている。 (67) 会社役員の年齢制限につき、奥島孝康『フランス企業法の理論と動態』(成文 堂、1999年)126頁以下、早稲田大学フランス商法研究会・前掲注(39)第 2 巻473 頁以下、562頁以下、595頁以下、618頁以下、鳥山・前掲注(30)下70頁以下参照。 (68) 会社役員の兼任制限につき、鳥山・前掲注(30)下70頁、出口哲也「フラン スにおける取締役の兼任制限(一〜二・完)」関学57巻 2 号240頁、57巻 3 ・ 4 号 (2006年)476頁参照。
簡素化法律案は、2016年 6 月 1 日の元老院法律委員会において検討・修
正された。当時、国会でいわゆる Sapin 2 法律案の審議が行われていた
ので、元老院第一読会は、簡素化法律案の内容を盛り込んだ修正案を採択
した
(70)。しかし、その点に関する元老院側の修正提案は国民議会で支持され
ず、Sapan 2 法律
(「透明性、不正防止および経済活動の現代化に関する2016 年12月 9 日の法律第1691号」)においても立法化されることはなかった。簡
素化法律案はその後、2018年 3 月 8 日に元老院第一読会において採択さ
れ、同日、国民議会に提出された
(71)。国民議会では、審議が進められていな
いようである
(72)。法律案の内容は、後述する
(四 3 参照)。
四 在任中に後見等が開始された場合の手当て
1 会社法上の各種制度の利用
会社役員の終任事由には、死亡、任期満了、辞任
(当然辞任を含む)、解
任等がある。2008年デクレ以降、保護措置のもとに置かれた会社役員の職
務を終了させるためにとりうる手段について、多くの文献で検討されるよ
うになった。当該会社役員が
(任意)辞任しようとしないおそれもあるの
で
(73)、そのような事態を想定して解任の可否が検討されている。
摘による。任意辞任と強制辞任について、早稲田大学フランス商法研究会・前掲注 (39)第 2 巻472頁以下参照。(70) Rapport par M. François PILLET, t. I, Sénat, No 712(2015─2016), p. 183参照。
修 正 案 に つ い て は、Projet de loi relatif à la transparence, à la lutte contre la corruption et à la modernisation de la vie économique, Sénat, No 174(2015─2016), pp. 121 et suiv. を参照。
(71) Proposition de loi de simplification, de clarification et d’actualisation du droit des sociétés, Ass. Nat., No 759参照。
(72) 元老院のウェブサイトでは、同法律案の審議状況が確認できる(https://www. senat.fr/espace_presse/actualites/201803/simplification_du_code_de_commerce. html)。
( 1 )株式会社における解任
①総会による解任一層制株式会社においては、取締役の任期は、 6 年を上限として定款を
もって定められる
(商法典 L. 225─18条 1 項)。通常総会は、取締役をいつで
も解任することができる
(随時解任の原則、同条 2 項(74))。通常総会は、少な
くとも議決権のある株式の 5 分の 1 を有する株主が出席し
(代理人による 出席も含む。同法典 L. 225─98条 2 項(75))、その議決権の過半数をもって決定す
る
(同条 3 項)。問題は、保護措置のもとに置かれた取締役が多数派株主
でもある場合である。
総会の招集権は取締役会または執行役会にあり
(同法典 L. 225─103条第Ⅰ パラグラフ)、議事日程は招集を行う者が決定する
(同法典 L. 225─105条 1 項)。ただし、一定割合の株式を保有する株主は、解任議案を議事日程に
記載するよう請求することができる
(76)。少なくとも資本の 5 %
(資本の大き さによりその割合は逓減する)の保有が要求されるので
(同条 2 項)、より少
数派の株主はこの権利を行使することができない
(77)。
(73) このようなケースにおける解任について破毀院判例が公表されていないことか ら(( 2 )②参照)、本人ないし代理人が辞任をするか、解任を受け入れているので あろうという分析もある。Marie─Hélène MONSÈRIÉ─BON, obs. sous Cass. 1re civ.,12 juill. 2012, RTD com. 2013. 104, spéc., 105参照。 (74) 株式会社の会社役員の解任制度につき、早稲田大学フランス商法研究会・前掲 注(39)第 2 巻471頁以下、561頁、583頁以下、597頁以下、625頁、有限会社の業務 執行者の解任制度につき、早稲田大学フランス商法研究会・前掲注(39)第 1 巻 269頁以下参照。このほか、各商事会社における解任制度について、高橋紀夫「フ ランス商事会社法における指揮者(dirigeants)の解任」平出慶道先生・髙窪利一 先生古稀記念『現代企業・金融法の課題(上)』(信山社、2001年)431頁参照。 (75) 第 1 回目の招集時の定足数である。これを満たさず、第 2 回目の招集が行われ る場合には、定足数は課されない(商法典 L. 225─98条 2 項)。 (76) フランスの株主提案権制度に関する近時の調査・研究として、一般財団法人比 較法研究センター「株主提案権の在り方に関する会社法上の論点の調査研究業務報 告書」(平成28年 3 月)61頁以下〔白石智則〕、白石智則「フランス法における株主 提案権」白鴎23巻 2 号(2017年)137頁がある。
また、議事日程に
(解任)議案を記載させることができたとしても、解
任対象者が決議に参加することを禁止する法文はないので
(78)、取締役が多数
派株主である以上、総会の承認を得ることはほぼ不可能といえる
(79)。
②多数派の濫用株式会社では、有限会社のように裁判上の解任制度が法定されていない
(( 2 )②参照)。そこで、
(少数派)株主には、判例法上認められている多
数派の濫用
(abus de majorité(80))を申し立てる余地があると指摘されてい
63), no 487は、そのように指摘する。もっとも、総会は、議事日程に記載がなくと も、取締役または監査役会構成員を解任し、かつその後任者を選任できることにな っている(商法典 L. 225─105条 3 項)。この点につき、フランス商法研究会・前掲 注(39)第 2 巻472頁、高橋・前掲注(74)464頁以下、自石智則「仮取締役により 招集される総会における議事日程の決定」白鴎23巻 1 号(2016年)93頁以下、鳥山 恭一「『議事日程』に記載がない議題にかかわる株主総会決議の効力」早法93巻 2 号(2018年)97頁参照。 (78) 解任決議における議決権行使は管理行為と推定される行為に該当するので (2008年デクレ付表 2 ─ 1 ─ 2o)、原則として、後見人は単独で被後見人を代理し、 被保佐人は保佐人の同意なく単独で、議決権を行使することができる。Mémento pratique Sociétés commerciales 19, op. cit. (note 59), nos 46873, 46882 et 46883; COZIAN, VIANDIER et DEBOISSY, op. cit. (note 28), no 1021参照。この点は、早稲田大学フランス商法研究会・前掲注(39)第 2 巻729頁でも言及されている。
(79) SCHILLER et FABRE, op. cit. (note 13), no 9; SCHILLER et MARTIN, op. cit. (note
63), no 487; MOUY et ROBBE, op. cit. (note 14), p. 2921; Antoine BOUQUEMONT, Comment pallier la vulnérabilité du dirigeant par les clauses des statuts, JCP N 2014. 1213, spéc., no 7参照。 (80) 多数派の濫用に関する研究として、豊崎光衞「株式会社における多数決の濫 用(三)」法協58巻 3 号(1940年)24頁、龍田節「資本多数決の濫用とフランス法」 論叢66巻 1 号(1959年)31頁、井上明「フランス法における局外株主の保護手段」 成城 2 号(1978年)36頁以下、神田秀樹「資本多数決と株主間の利害調整(三)」 法協98巻10号(1981年)62頁、清弘正子「少数派による資本多数決の濫用とその制 裁〜フランスにおける理論と判例〜(上・下)」国際商事24巻 9 号933頁、24巻10号 (1996年)1054頁、同「株主総会における多数決濫用とその理論〜フランス法の示 唆〜」国際商事26巻 8 号(1998年)805頁、同「株主総会における資本多数決濫用 と権利濫用理論─フランス法との比較研究─」奥島孝康教授還暦記念第一巻 『比較会社法研究』(成文堂、1999年)515頁、藤原雄三「フランス商事会社法にお ける少数者株主の保護」平出慶道先生・髙窪利一先生古稀記念『現代企業・金融法
る
(81)。ただし、多数派の濫用が認められるには会社の利益
(intérêt social)の侵害、多数派の利得および少数派の損害という要件を満たす必要がある
ため
(82)、すべての場合に多数派の濫用が認められるわけではない。被保護成
年者が会社役員かつ多数派株主であることによりその解任決議が否決され
るようなケースにおいては、職務を維持することが会社の利益に反し、か
つ、その維持が、混乱した業務執行の被害を被る少数派株主の犠牲におい
て、自己の精神障害に関わらず在任することに固執する多数派株主の利益
を守ることを目的とするものであることが立証されればよいという指摘が
ある
(83)。関連事案に、Paris 控訴院2002年 7 月 2 日判決
(三 1 参照)がある
(84)。
③仮の管理者の選任②以外にも、法定の制度ではないが、
(少数派)株主は、裁判所に対し
て仮の管理者
(administrateur provisoire)の選任を請求することができる
(85)。
の課題(下)』(信山社、2001年)803頁、山本真知子「フランスにおける株主・社 員の議決権濫用による総会決議不成立と損害の回復」酒巻俊雄先生古稀記念『21世 紀の企業法制』(商事法務、2003年)847頁、同「フランス会社法における少数派株 主・社員の権利濫用概念の生成─三つの破棄院判決を中心に─」倉澤康一郎先 生古稀記念『商法の歴史と論理』(新青出版、2005年)933頁、ミシェル・ジェルマ ン=鳥山恭一(訳)「フランス法特別講義 株主の平等」慶應ロー15・16号(2010 年)192頁以下等を参照。(81) SCHILLER et FABRE, op. cit. (note 13), no 9; SCHILLER et MARTIN, op. cit. (note
63), no 487; MOUY et ROBBE, op. cit. (note 14), p. 2921; BOUQUEMONT, op. cit. (note 79), no 7参照。
(82) 多数派の濫用の定義および要件につき、COZIAN, VIANDIER et DEBOISSY, op. cit.
(note 28), nos 575 et suiv. 等を参照した。
(83) SCHILLER et FABRE, op. cit. (note 13), no 9; SCHILLER et MARTIN, op. cit. (note
63), no 487の指摘による。多数派の濫用により決議が否決された場合の制裁につい ては、山本・前掲注(80)議決権濫用847頁以下、同・前掲注(80)権利濫用938 頁以下参照。 (84) 同判決は、司法救助のもとに置かれた際に取締役会会長を解任され、保佐に移 行した後に取締役を辞任した多数派株主が、少数派株主の犠牲で、会社の事実上の 指揮を行い続けることを可能にする経営体制を組織したことが多数派の濫用にあた るとした。
仮の管理者は、会社の重大な危機の場合に例外的に選任されるものであ
り、判例法上、会社機関の麻痺および急迫の危険の要件を満たすことが要
求されている
(86)。もっとも、会社役員に対する後見等の開始が、常にこの要
件を満たすとは限らない。
仮の管理者は、裁判上の管理者
(administrateur judiciaire)の名簿の中か
ら選任される。裁判上の管理者とは、裁判上の決定により、他人の財産管
理・その補佐・監視の職務を遂行する任務を負う受任者である
(この職業 は、商法典 L. 811─ 1 条以下により規制されている)。仮の管理者の任務の範
囲は、裁判所の決定により定められる。仮の管理者は一時的に現職の会社
役員に取って代わり、会社を脅かす危機を回避するのに必要な手段をとら
なければならない
(87)。
なお、司法的保護措置の機関
(後見人等)は、その職務の遂行において
なしたフォート
(faute)から生じた損害について責任を負う
(民法典421 条)。被保佐人が業務執行者である不動産民事会社において、保佐人が、
仮の管理者を選任させるためにいかなる行動もとらなかった場合に、保佐
人のフォートを肯定した裁判例がある
(Paris 控訴院2013年12月 5 日判決(88))。
14), p. 2921; SCHILLER et FABRE, op. cit. (note 13), no 10; BOUQUEMONT, op. cit. (note
79), no 8の指摘による。
(86) COZIAN, VIANDIER et DEBOISSY, op. cit. (note 28), nos 595 et suiv. 参照。早稲田
大学フランス商法研究会・前掲注(39)第 2 巻567頁以下、井上・前掲注(80)40 頁以下、白石・前掲注(77)85頁参照。
(87) COZIAN, VIANDIER et DEBOISSY, Ibid., nos 599 et suiv. 参照。その権限の範囲に
総会の招集も含まれる点につき、LE CANNU et DONDERO, op. cit. (note 69), no 502;
Mémento pratique Sociétés commerciales 19, op. cit. (note 59), no 32319参照。 (88) CA Paris, 5 déc. 2013, JurisData no 2013─030256, Dr. famille 2014, comm. 134,
obs. Ingrid MARIA. 同事案は強化型の保佐(curatelle renforcée)に関する事案であ
ったが、単純保佐の場合には、保佐人に故意または重大なフォートがあったことが 必要となる(民法典421条)。保佐人は代理権を有しないのが原則であるが、収入の 受領や支出の決済について保佐人に代理権を付与することが認められており、それ を強化型の保佐という(同法典472条)。
④取締役以外の会社役員の解任