T cell receptortc T BIL MHC class CD4 CD8 TIgAIgG IL-2 T IL-2 mna IL-2 CD4 IL-2 mna IL-10Th2CD4 T LPSIFN- /M IL-1, IL-6, TNF- IL-10TNF- IL-10 MH

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全文

(1)

はじめに

潰 瘍 性 大 腸 炎 と ク ロ ー ン 病 は 炎 症 性 腸 疾 患 (Inflammatory Bowel Disease: IBD)のなかでも,

病因が未だ明らかではなく,難治性であることか ら消化器領域において基礎や臨床における研究対 象として今,最も注目されているところである. 両疾患の病因は特定されていないが,病理像や臨 床像の形成に腸粘膜局所における免疫学的生体防 御機構の異常と,その制御機構の破綻が深く関与 していることに異論はない.また,治療について もIBDには表1に示すごとく腸内環境因子,腸上皮 細胞,粘膜下炎症細胞の浸潤,さらに素因など多 くの因子が複雑に係わって病態を形成している. 潰瘍性大腸炎は,大腸粘膜下の非特異性慢性炎 症を主たる病変とするが,種々の自己抗体を認め ることから,自己免疫疾患としての性格を有する と考えられる.一方,クローン病は非乾酪性肉芽 腫性炎症性病変を病理学的特徴とし,これらの肉 芽腫を構成する類上皮細胞やランゲルハンス型巨 細胞が,単球/マクロファージ(Mφ)に由来す ることから,病因の一つとして単球/Mφ系細胞 の機能異常が想定されている. わが国においては,潰瘍性大腸炎は1975年に, クローン病は1976年に特定疾患に指定され,厚生 省の調査研究班が発足し,現在まで基礎的研究は 勿論のこと,臨床的には,診断基準や治療指針が 作成され本症に対する理解が進んできた.潰瘍性 大腸炎の特定疾患受給登録者数は約57,000人,ク ローン病は約16,000人でありますます増加してい る.ここでは,基礎的研究から臨床研究まで最近 の動向を概説する.

慢性大腸炎モデルによる研究

実験的慢性大腸炎モデルは,従来からE. coli, E n t e r o b a c t e r i a l C o m m o n A n t i g e n (ECA), Bacteroides vulgatusなどの腸内細菌やその蛋白, また硫酸多糖体の一つであるcarageenanにより作 成されてきた.近年,デキストラン硫酸ナトリウ ムなどが用いられているが,いずれのモデルにお いても組織学的にみられる腸粘膜の炎症性変化 は,潰瘍性大腸炎類似の所見である.しかし,こ こ数年,遺伝子工学の目ざましい進歩により,特 定の遺伝子を欠失するノックアウトマウスが作製 され,サイトカイン(IL-2やIL-10)のノックアウ 松仁会医学誌39(1):1∼14, 2000

炎症性腸疾患

―最近の動向―

馬場忠雄

滋賀医科大学 第二内科

要旨:IBDの病因と病態に関する基礎的,臨床的研究は,ここ数年目ざましい進展

をとげつつあり,これらの研究成果に基づいて分子生物学を応用した新しい治療法

も臨床応用されつつある.一方,わが国におけるIBD患者の増加要因や成分栄養剤

により病変そのものが治癒することからも臨床疫学的アプローチにより,IBDの病

因の一端が明らかにされるものと考えられる.21世紀には,疾患特異遺伝子の解明

や病因としての腸内細菌叢,食餌抗原などIBDの本質にせまる研究の展開が期待さ

れる.しかし,IBDには腸内環境因子,腸上皮細胞,粘膜下炎症細胞の浸潤,さら

に素因など多くの因子が複雑に係わって病態を形成している.したがって,治療の

基本はそれぞれの因子を考慮し,総合的に行われなければならない.

キーワード:潰瘍性大腸炎,クローン病,炎症性腸疾患

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(2)

トマウスやT cell receptor(TCR)のミュータント マウスに自然発症的に慢性腸炎が惹起されること が明らかとなった.例えば,T細胞の強力な増殖 因子でありB細胞の分化誘導因子でもあるIL-2の 遺伝子欠損マウスでは,生後6∼15週まで生存し たマウスのほぼすべてに慢性の下痢,下血および 直腸脱を認め,病理学的には腸管の肥厚,粘膜の びらんおよび潰瘍形成,陰窩膿瘍,杯細胞の消失 など慢性腸炎の所見が認められる.これらの病変 は,潰瘍性大腸炎に類似して盲腸から直腸に連続 的に存在し,小腸には認められない.大腸粘膜上 皮には,正常粘膜では観察されないMHC classⅡ 抗原の発現が認められ,また,抗大腸粘膜抗体の 存在が証明される.さらに大腸粘膜固有層には, CD4+やCD8T細胞,IgAおよびIgG分泌細胞が著 明に増加している. 興味あることに,これらのマウスを無菌状態で 飼育すると大腸炎の発症は認められない.これら の結果は,IL-2遺伝子の欠失といった腸管粘膜局 所における免疫制御機構に破綻が生ずると,病原 性のない腸内細菌などの通常抗原に対しても免疫 応答が異常となり,大腸炎が惹起されることを示 している.自己免疫疾患に共通する所見としてT 細胞のIL-2 mRNA発現の低下が知られているが, 実際,潰瘍性大腸炎患者における腸管粘膜内IL-2 産生CD4+細胞数の減少が報告されている.しか し,クローン病患者ではIL-2 mRNAの発現は亢進 している. IL-10は,Th2タイプのCD4+ T細胞に由来する 抗炎症性サイトカインの一つで,LPSやIFN-γの 刺激により単球/Mφから誘導される炎症性サイ トカイン(IL-1, IL-6, TNF-α)の産生を抑制する. また,動物モデルにおいてエンドトキシン血症の 致死率はIL-10の投与により改善し,血中TNF-α 濃度が低下する.IL-10遺伝子のノックアウトマウ スでは,十二指腸,近位空腸および近位大腸に腸 炎を発症し,粘膜の過剰な増生,壁肥厚,びらん 形成,陰窩の拡大を認める.腸管上皮細胞には MHC classⅡ抗原発現の増強を認め,やはり無菌 状態で飼育すると,腸炎の発症は抑制される.こ れらの所見は,IL-10の欠失により,腸内細菌叢な どの通常抗原に対する免疫応答の抑制が誘導され ず,慢性腸炎が惹起されることを意味している. これらのノックアウトマウスのみならず,特定 の遺伝子を過剰発現するIL-7トランスジェニック マウス,HLA-B27トランスジェニックラットなど でも自然発症的に大腸炎が惹起される. これらの知見が示唆することは,腸管粘膜局所 の免疫監視制御機構のどこかの破綻により,腸内 細菌叢をはじめとする通常抗原に対する免疫応答 治療戦略 ジスバクテリーの是正 アミノ酸およびペプチド栄養 n-3/n-6比の増加 水溶性食物繊維 吸着剤 酪酸 グルタミン 増殖因子 5-lipoxygenase阻害剤 COX阻害剤 抗サイトカイン抗体(抗TNF-α抗体など) マスト細胞膜安定剤 NOS阻害剤 活性酸素消去酵素剤 白血球除去療法 ステロイド 免疫抑制剤 要因 腸管内     腸内細菌叢の異常     蛋白抗原     脂肪の量と質 腸上皮細胞     透過性亢進     分泌型IgA産生障害     腸上皮損傷 腸粘膜下     炎症性細胞浸潤     活性酸素      NO     エイコサノイド     サイトカイン 全身性     免疫異常     遺伝的素因

表1 炎症性腸疾患に係わる要因と治療戦略

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3 が過剰となり制御できなくなる結果,局所への炎 症細胞の集積,活性化を招き,一連の免疫・炎症 反応が誘導され組織破壊に至ると考えられる.

腸管上皮細胞

炎症性腸疾患はECAなどの腸内細菌あるいはそ の代謝産物,食餌抗原などが何らかの機序により 生体内に入り,次いで再び抗原に暴露された時か ら,腸粘膜において慢性炎症が成立するという Shorter RGらの仮説に従えば,腸内環境因子と生 体を境している一層の腸上皮細胞の物理的・免疫 学的防御機構が最も重要である.遺伝子欠失マウ スの腸上皮細胞の機能にどのような変化が生じ, 腸上皮細胞がどのように活性化されるのか,まだ 明らかではない. 健 常 者 の 大 腸 粘 膜 上 皮 細 胞 は MHC classⅡ (HLA-DR)抗原を発現していないが,IBDの大腸 粘膜上皮細胞はHLA-DR抗原陽性となっている. この変化は,先のサイトカイン遺伝子のノックア ウトマウスでも認められるが,感染性腸炎でも一 過性に大腸粘膜上皮細胞はHLA-DR抗原陽性とな っている.腸上皮細胞のHLA-DR抗原の発現は非 特異的な生体反応と思われるが,IBD患者におけ る腸上皮細胞のHLA-DR抗原の持続的発現は,腸 上皮細胞による抗原提示が持続していることを示 唆するものであり,感作リンパ球の活性化が連続 的に誘導されていることを意味する. 腸上皮細胞では,HLA-DR抗原ばかりでなく, 補体成分C3,Factor B,さらにIL-1,IL-8,IL-10, TNF-αなどのサイトカインを含む多様な蛋白が合 成され分泌されるが,これらは確かに二次的な要 素と考えられる.腸上皮細胞は,粘膜下炎症細胞 による活性化と共に食事内容によっても活性化さ れる.in vitroの系ではあるが,長鎖脂肪は腸上皮 細胞を少しではあるが活性化する.IL-1で刺激す ると,さらに活性化され,IL-8の合成と分泌は増 加する.このように腸粘膜上皮細胞は粘膜下の炎 症細胞は勿論のこと,腸内環境因子によっても活 性化され,その機能を異にする.したがって,腸 上皮細胞は腸内環境因子と生体のcross talkを物理 的・免疫学的機序により遮断し,生体防御の第一 線をなしているが,その破綻こそ,最も重要な要 因であろう(図1).

遺伝的素因

HLA抗原は,T細胞上のTCRに対して,ペプチ ドからなる抗原を提示することにより,T細胞の 活性化および抑制を促しているが,最近,HLA抗 原の抗原特異性そのものが,自己免疫疾患の感受 性に関与していると考えられるようになってきて いる.潰瘍性大腸炎とHLA抗原の関連に関する欧 米の報告についてみると,ユダヤ人においてA2, A10,Bw35,Bw40に増加傾向が認められ,日本 人では,A9,B5,DR2の増加とこれに伴うBw52-DR2ハプロタイプの増加が報告されている. DR2のアロタイプに関する検討では,日本人潰 瘍性大腸炎患者の70∼80%においてDRB1*1502を 認めるが,DRB1*1501はまったく認められていな 炎症性腸疾患

図1 腸上皮細胞と炎症性細胞の活性化

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い.DRB1*1502はBw52と連鎖不平衡の関係にあ り,ここでもハプロタイプの保存が認められる. 一方,欧米における同様の検討では,DR2との関 連は認められたが,そのアロタイプではDRB1*1502 にやや増加傾向を認め,DRB1*1501および1601も 同様に認められた. 日本人クローン病患者ではB51,Bw61,DR4, DRw53の増加が報告されているが,欧米では一定 の結論は出ていない.最近,ヨーロッパにおける クローン病家系の検索から,第16番染色体上にク ローン病感受性遺伝子の存在を示唆する報告がな されている.また,Wegener肉芽腫症患者の血清 中 に 見 い だ さ れ た I g G 自 己 抗 体 で あ る a n t i -neutrophil cytoplasmic antibodies(ANCA)が,潰 瘍性大腸炎においても存在することが見いださ れ,さらにその家族集積性が報告された.アメリ カにおける潰瘍性大腸炎のANCA陽性患者群では, HLA classⅡのDR2抗原の頻度が高く,ANCA陰性 群ではDR4の頻度が高いとされているが,まだ一 定の見解は得られていない.

疫学

潰瘍性大腸炎とクローン病の医療受給者証登録 者の年次推移は図2に示す1).両疾患とも確実に増 加しており,潰瘍性大腸炎の有病率は人口10万人 当り18.12で,著しく増加しているが,男女差はな い.クローン病の有病率は5.85で,潰瘍性大腸炎 に比べて低いが,増加している.男7.94,女3.83 で男が約2倍女に比べて多い.潰瘍性大腸炎とク ローン病の初発年齢の分布は図3に示す.いずれ も10代後半から20代後半にかけて多く,社会的背 景も考慮されるべき点が指摘できる.

潰瘍性大腸炎の診断基準

潰瘍性大腸炎の診断基準は,厚生省特定疾患難 治性炎症性腸管障害調査研究班によって改訂され た(表2)2).臨床症状では持続または反復する粘 血便があり,内視鏡検査では粘膜にびまん性に連 続性に易出血性,びらん,潰瘍の多発がみられ, 生検組織で非特異性炎症性細胞浸潤がみられるこ とが強調されている.そして,細菌性赤痢やアメ ーバ赤痢,大腸結核,キャンピロバクター腸炎な どの感染性腸炎,放射線照射性大腸炎,虚血性大 腸炎,クローン病,腸型ベーチェット病などとの 鑑別が必要である.診断された時には,病変範囲 により,直腸炎型,左側大腸炎型,全大腸炎型に 分けられ,易出血,びらん,潰瘍がみとめられる 活動期と緩解期のいずれか,重症度分類(表3) (医療受給者証登録より) 1984∼1998年度

潰瘍性大腸炎

クローン病

0 20 40 患者数 単位(千) 60

図2 IBD患者登録数の年次推移

(守田ら)

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炎症性腸疾患 5 年 齢 0 20 30 male female 10 0∼4 5∼9 10∼14 15∼19 20∼24 25∼29 30∼34 35∼39 40∼44 45∼49 50∼54 55∼59 60∼64 65∼69 70∼74 75∼79 80∼ 40 A (%) 年 齢 0 20 30 male female 10 0∼4 5∼9 10∼14 15∼19 20∼24 25∼29 30∼34 35∼39 40∼44 45∼49 50∼54 55∼59 60∼64 65∼69 70∼74 75∼79 80∼ 40 B (%)

図3 潰瘍性大腸炎(A)とクローン病(B)の推定発症年齢

次のa)のほか,b)のうち1項目,およびc)を満たし,下記の疾患が除外できれば,確診となる. a)臨床症状:持続性または反復性の粘血・血便,あるいはその既往がある. b)○1 内視鏡検査:i)粘膜はびまん性におかされ,血管透見像は消失し,粗ぞうまたは細顆 粒状を呈する.さらに,もろくて易出血性(接触出血)を伴い,粘血膿性の分泌物が付着 しているか,ii)多発性のびらん,潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める. ○2 注腸X線検査:i)粗ぞうまたは細顆粒状の粘膜 表面のびまん性変化,ii)多発性のびらん, 潰瘍,iii)偽ポリポーシス,を認める.その他,ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小・ 短縮が認められる. c)生検組織学的検査:活動期では粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤,陰窩膿瘍,高度 な杯細胞減少が認められる.緩解期では腺の配列異常(蛇行・分岐),萎縮が残存する. 上記変化は通常直腸から連続性に口側にみられる. b)c)の検査が不十分,あるいは施行できなくとも,切除手術または剖検により,肉眼的 および組織学的に本症に特徴的な所見を認める場合は,下記の疾患が除外できれば, 確診とする. 除外すべき疾患は,細菌性赤痢,アメーバ赤痢,日本住血吸虫症,大腸結核, Campylobacter 腸炎などの感染性腸炎,および放射線照射性大腸炎,虚血性大腸炎, 薬剤性大腸炎,Crohn病,腸型Behc,et,リンパ濾胞増殖症などである.

表2 潰瘍性大腸炎の診断基準

(守田ら)

(6)

ではどれに属するかなどから治療方針が決定され る.

潰瘍性大腸炎の治療

(1)一般的な注意事項 本症は種々の肉体的・精神的ストレスが再燃や 増悪の契機となることが多い.したがって,治療 の原則はこれらのストレスを取り除くこと,すな わち安静である.中等症・重症では入院治療が原 則である.重症のなかでも,激症例や出血の著し い症例,中毒性巨大結腸症などでは絶食とし,中 心静脈栄養により充分なカロリー補給と腸管安 静を行い,電解質異常,低蛋白血症の是正に努 める3) (2)薬物療法 本症の内科治療に用いる基本的な薬剤は,副腎 皮質ステロイドとサラゾピリン である.サラゾ ピ リ ン は , ア ラ キ ド ン 酸 代 謝 に お い て , 5 -lipoxygenaseとくにcycloxygenase活性を阻害し, ロイコトリエンB4などの産生を抑制するほか,好 中球の走化性や遊走の抑制,活性酸素やサイトカ イン産生の抑制など,多彩な薬効を有している (図4). また,平成8年より,サラゾピリン の有効成 分であるアミノサリチル酸(5-ASA:ペンタサ ) も使用可能となっている.本邦におけるサラゾピ リン とペンタサ の二重盲検試験では,軽症・ 中等症の活動期潰瘍性大腸炎に対するペンタサ の有効率は70.3%であり,サラゾピリン とほぼ 同等であったが,副作用発現率は,サラゾピリ ン 28%に対しペンタサ 12%と,有意に少なか った4)また,サラゾピリン不耐症においても90% の症例に投与可能であり,安全性に優れた薬剤で ある5) 潰瘍性大腸炎の基本的な治療指針は,厚生省特 定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究班により改 定案が示されている(図5)6).重症度,および疾 患の罹患範囲から治療薬剤,投与法を選択する. 軽症や中等症では,サラゾピリン やペンタサ 錠 を用いる.直腸炎型では,サラゾピリン や リンデロン の坐剤も有効である.全結腸型や左 側結腸型では,ステロイド(ステロネマ )の注 腸療法もよく使用される.約2週間の治療により 改善があれば治療を継続し,緩解となればステロ イドを中止し,サラゾピリン (2 g/day)やペン タサ (1.5 g/day)で緩解維持療法を行う.改善 がなければ,プレドニン 30∼40 mg/dayの経口 投与を行う. 重症では十分な全身管理のもとに,プレドニ ン の経口投与または経静脈投与を行う.サラゾ ピリン やペンタサ も併用する.とくに高カロ リー輸液下に水溶性プレドニン 1.0∼1.5 mg/kg B.W./dayを分注する強力静注療法は,重症例にも 高い有効率が報告されている.しかし,われわれ の施設における検討では,重症例でも,とくに内 視鏡所見で下掘れ潰瘍形成例では強力静注療法の 有効率は高くなく,手術を余儀なくされる症例も 多い.プレドニン の動注療法やステロイドパル ス療法なども有用な治療法であるが,当科の動注 療法の成績では,強力静注療法から2週間以上経 過した後に動注療法を施行しても有効率は低い. 中等症・重症例でプレドニン の経口投与,経 静脈投与を行ったのち症状の改善がみられれば, 2週間おきに漸減する.減量の基準は,プレドニ ン 20 mg/dayまでは2週間に10 mgずつ,以後は2 週間に5 mgずつが望ましい. ステロイド離脱困難例,減量により再燃する症 例,ステロイド禁忌の症例では,アザチオプリン 50∼100 mg/dayまたは6-MP 30∼50 mg/dayなど の免疫抑制剤を用いる.免疫抑制剤については, 投与するタイミングおよび投与量に注意する必要 がある.また,効果発現までには一定の期間が必 要である.近年,サイクロスポリンやタクロリム スなどの臨床治験成績も報告されているが,長期 的な有効性が問題である. 潰瘍性大腸炎の病変部粘膜では,5-lipoxygenase 活性が高く,ロイコトリエンB4濃度が高いことが 報告されており,ロイコトリエンやトロンボキサ ンといったアラキドン酸代謝産物の合成阻害剤や 受容体拮抗剤が,本症の新しい治療薬として開発 されている7) (3)白血球除去療法 遠心分離法によるリンパ球除去療法が慢性関 節リウマチ患者に奏効したことから,潰瘍性大 腸炎に対しても本法を使って活性化した白血球 を選択的に吸着除去し,腸粘膜局所にリクルー トする活性化白血球を減少させ炎症を抑制する R R R R R R R R R R R R R R R R R R R R R R R R R

(7)

炎症性腸疾患 7

PG:Prostaglandin,LT:leukotriene,TX:thromboxane,SASP:salicylazosulfapyridine, 5-ASA:5-aminosalicylic acid,5HPETE:5-hydroperoxyeicosatetraenoic acid

(細胞膜) リン脂質 prostaglandin G2 prostaglandin H2 5 HPETE leukotriene A4 リポキシゲナーゼ SASP SASP SASP PGI2 TXA2 LTC4,D4 LTB4 PGE2 SASP,5-ASA シクロオキシゲナーゼ アラキドン酸 フォスフォリパーゼA2 ステロイド

図4 アラキドン酸カスケードおよびステロイド,SASP,5-ASAの作用部位

注)軽症の3),4),5)の(−)とは37.5℃以上の発熱が ない,90分以上の頻脈がない,Hb10g/dl以下の貧 血がない,ことを示す. 注)重症とは1)および 2)の他に全身症状である3)ま たは4)のいずれかを満たし,かつ6項目のうち4 項目以上を満たすものとする.軽症は6項目すべ てを満たすものとする. 注)上記の重症と軽症との中間にあたるものを中等 症とする. 注)重症の中でも特に症状が激しく重篤なものを激 症とし,発症の経過により,急性激症型と再燃 激症型に分ける. 1)排便回数 6回以上 重症と 軽症と の中間 4回以下 (+++) (+)∼(−) 3)発 熱 37.5℃以上 (−) 4)頻 脈 90/分以上 (−) 5)貧 血 Hb10g/dl以下 (−) 6)赤 沈 30mm/h以上 正常 2)顕血便 重 症 中等症 軽 症

表3 潰瘍性大腸炎の重症度の診断基準

(8)

・ペンタサ錠(1.5∼2.25g/日)  またはサラゾピリン  (3∼4.5g/日) ・リンデロン坐剤(1∼2mg/日)  またはサラゾピリン坐剤  (1∼2g/日)併用 ・ペンタサ錠(1.5∼2.25g/日)  またはサラゾピリン  (3∼4.5g/日) ・ステロネマ(100∼200ml/日)  またはリンデロン坐剤  (1∼2mg/日)  またはサラゾピリン坐剤  (1∼2g/日)併用可 中等症で 炎症反応あり (*1) 有効 無効 効果不十分 2週後効果なし 入院 入院 2週後効果なし または途中で増悪 2週間以内 改善あり プレドニソロン 経口中止 軽 症 中等症 重 症 劇症型 手術 中毒性巨大結腸症 直腸炎型 継続 左側大腸炎型 全大腸炎型 坐剤をステロネマ(100 ∼200ml/日)に変更 ペンタサ錠 (1.5g/日) またはサラ ゾピリン (2g/日) 維持量持続 ステロネマ中止 ペンタサ錠また はサラゾピリン 2週間以上投与 後徐々に減量 ・全身管理 ・プレドニソロン経口または  点滴静注(40∼80mg/日,  1∼1.5mg/kg)または  ACTH点滴静注または筋注  (40∼50単位/日) ・ペンタサ錠(1.5∼2.25g/日)  またはサラゾピリン  (3∼4.5g/日) ・ステロネマ(100∼200ml/日)  (排便回数増加時中止) ・広域スペクトル抗生物質併用  (発熱,白血球増多時短期間) プレドニソロン経口追加 (30∼40mg/日) アザチオプリンまたは6MP 経口追加(50∼100mg/日, 1.5∼2mg/kg) プレドニソロン経口 20mg/日に減量以後 2週間毎に5mgずつ 減量 プレドニソロン経口漸減, 中止ついで免疫抑制剤中止 プレドニソロン経口40mg/日で 緩解導入後,2週間毎に30mg, 20mgと減量 ・強力静注療法(*2)または  プレドニソロン動注療法(*3) ・経静脈的栄養補給 緩解 緩解 短期間 *1:炎症反応 CRP1.0mg/dl以上または 赤沈30mm/h以上 *2:強力静注療法 1)経口摂取を禁ずる 2)水溶性プレドニソロン40∼80mg  (成人では1∼1.5mg/kgを目安とする.4回分注).  この他,ACTH1日40∼50単位の点滴または筋  注を加えてもよい. 3)広域スペクトル抗生物質 4)輸液,電解質特にカリウムの補給,経静脈的栄養  補給,血漿蛋白製剤,輸血 *3:プレドニソロン動注療法 選択的腸間膜動脈撮影後,上・下腸間膜動脈内に, 症状に応じてそれぞれに水溶性プレドニソロン10∼ 20mgを,カテーテルを通じて動注する.有効例で は通常3日以内に効果が現れる.やや有効な場合は 追加動注を行ってもよい. 継続 離脱困難・再燃 緩解

図5 潰瘍性大腸炎治療指針改訂案

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炎症性腸疾患 9 年齢 性 病型 病悩期間 前治療 効果 24歳 1 女性 全結腸炎型 初発 4ヵ月 TPN,PSL 50mg iv 著効 27歳 2 女性 全結腸炎型 再燃 11ヵ月 TPN,PSL 60mg iv 無効 73歳 3 男性 左側結腸炎型 再燃 11年 PSL 20mg po 有効 17歳 4 女性 左側結腸炎型 初発 2週間 TPN,PSL 40mg iv 著効 18歳 5 男性 全結腸炎型 再燃 2年 TPN,PSL 40mg iv 有効 29歳 6 女性 全結腸炎型 再燃 12年 TPN,PSL 40mg iv 無効 35歳 7 女性 左側結腸炎型 再燃 7ヵ月 TPN,PSL 40mg iv 著効 21歳 8 男性 左側結腸炎型 再燃 7ヵ月 TPN,PSL 40mg iv 有効 20歳 9 男性 全結腸炎型 再燃 2.2年 TPN,PSL 15mg po 無効 30歳 10 女性 全結腸炎型 再燃 3年 TPN,PSL 40mg iv 無効 27歳 11 女性 全結腸炎型 初発 10ヵ月 TPN,PSL 60mg iv 無効 38歳 12 女性 左側結腸炎型 再燃 4年 TPN,PSL 50mg iv 有効

表4 重症潰瘍性大腸炎に対する白血球除去療法

試みが行われた.白血球系細胞の吸着・除去療法 には(1)遠心分離器を用いて主にリンパ球を除 去するリンパ球除去療法(Lymphocytapheresis) と酢酸セルロースビーズを用いたカラムに血液を 灌流し顆粒球・単球系白血球を吸着除去する顆粒 球・単球除去(Granulocyte-monocytapheresis), さらにポリエステル繊維を用いたカラムで白血球 系 細 胞 を 吸 着 除 去 す る 白 血 球 除 去 療 法 (Leukocytapheresis: LCAP)がある. 1995年Sawadaらにより潰瘍性大腸炎に対する LCAPの有効性が報告され,難治性炎症性腸管障 害調査研究班のプロジェクト研究として全国多施 設によりプレドニソロンとの比較検討が行われ た.その結果プレドニソロン群で有効以上が40% であったのに対し,LCAP群では約70%が有効以 上と判定され,LCAP群が有意に有効であった. 副作用の出現率はプレドニソロン群で約70%に精 神症状,皮膚症状,脂質・蛋白代謝異常などがみ られたが,LCAP群では20%に手足のしびれなど の神経症状,悪心・嘔吐の消化器症状,悪寒戦慄 などの全身症状がみられたにすぎなかった.潰瘍 性大腸炎重症例におけるLCAPの成績を表4に示し た.重症例においても有効率は高く,また,ステ ロイドの減量などにも有効であり,潰瘍性大腸炎 の重症例に対する新しい治療として,位置づけら れるものである. (4)シクロスポリン シクロスポリンは細胞内レセプターと結合し, T細胞のIL-2,IFN-γなどの産生を抑制し,ヘルパ ーT細胞機能を抑制することにより免疫抑制効果 を発揮する.7日間のステロイド強力静注療法が 無効であった20例にシクロスポリン4mg/kg/日経 静脈投与により7日間以内に改善効果が認められ たのは9例であった.また,178例の潰瘍性大腸炎 重症例のうち62%が緩解し,16%が大腸切除を受 け,22%(39例)がシクロスポリンの静注を受け たが,そのうちの43%(17例)に有効性が認めら れている.副作用としては腎障害,肝障害,易感 染性がある.今後ステロイド無効例に対して,タ クロリムスと共にその臨床効果が期待される.

潰瘍性大腸炎の手術適応

表5に示す病態は手術適応となる.絶対的適応は 緊急あるいは準緊急手術となることが多い.相対 的適応は議論されるところであるが,入院を繰り 返す場合や,ステロイドの総量が10,000∼15,000mg を超える例,慢性持続型で,ステロイドによって も病勢のコントロールが困難な場合には手術の適 応が考慮される.

癌化とサーベイランス

潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の頻度は,対象 集団の年齢,経過観察期間によって異なるものの, わが国では0.5∼1.0%で欧米に比べて低い.癌化

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のリスクファクターとしては大腸炎の罹患範囲, 罹病期間,発症年齢,発病時の重症度などである. 癌は,全大腸炎型で10年以上の罹病期間,慢性持 続型に多い.潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の特 徴は表6に示した8).すなわち,多発癌で,周囲と の境界が不明瞭な平坦浸潤型で低分化型腺癌が多 いことである.したがって内視鏡により早期の癌 を見つけることは困難で,色素内視鏡を積極的に 行う必要がある.また生検は全大腸にわたって10 ∼20ヵ所程行う.生検組織をp53染色することが 早期診断の手がかりとなる.

クローン病の診断基準

クローン病の診断基準は厚生省特定疾患難治性 炎症性腸管障害調査研究班によって大きく改訂さ れた9).その要点は臨床的観察所見が強調されたこ とであろう(表7).縦列するアフタ様潰瘍の診断 的意義が重要視され,非乾酪性肉芽腫が認められ れば,クローン病と診断できる.いずれの所見も クローン病に特異的なものではなく,従って臨床 経過を含め,総合的に診断することが大切である.

クローン病の治療

クローン病の治療の考え方としては,炎症を抑 え,栄養状態の改善を図る内科治療が主とされて いる.狭窄や瘻孔形成などにより手術を行う場合 にも,腸管の切除範囲はなるべく小範囲にとどめ て狭窄形成術(stricture-plasty)などを行うのが 原則である.内科治療は薬物療法と栄養療法に分 けられる.以下に厚生省特定疾患難治性炎症性腸 管障害調査研究班による治療指針を中心に,それ ぞれの基本指針を述べる. (1)栄養療法

成分栄養剤(Elemental Diet: ED)や中心静脈

通常型大腸癌 UC起因性大腸癌 前駆病変 腺腫あるいは dysplasia de novo 好発年齢 60歳代 40歳代 好発部位 左側 全大腸 多発癌 3∼5% 29% 低分化・粘液癌 まれ 42% p53 変異 晩期に出現 早期に出現

表6 潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の特徴

絶対的適応 1)急激な全身状態の悪化 2)大出血 3)中毒性巨大結腸症 4)保存的治療に反応しない重症型 5)穿孔 6)狭窄

7)癌化またはhigh grade dysplasia 相対的適応 1)慢性難治例 2)局所または全身合併症を伴うもの ステロイドの副作用 社会的適応 就学,就職,就労,結婚,出産, 長期の通院,長期・頻回の入院

表5 潰瘍性大腸炎の手術適応

(11)

炎症性腸疾患 11 1. 主要所見 病型分類  本症の病型は縦走潰瘍,敷石像または狭窄の存在部位による(例:小腸型,小腸大腸型, 大腸型,直腸型,胃・十二指腸型など),これらの所見を欠く場合は特殊型とする.特殊型には 多発アフタ型や盲腸虫垂限局型などがある A. 縦走潰瘍 B. 敷石像 C. 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫 A. 縦走潰瘍のみの場合,虚血性大腸炎や潰瘍性大腸炎を除外することが必要である B. 敷石像のみの場合,虚血性大腸炎を除外することが必要である 副所見bのみで疑診とした場合は同所見が3ヵ月恒存することが必要である 腸結核などの肉芽腫を有する炎症性疾患を除外することが必要である 1. 主要所見のAまたはBを有するもの 2. 主要所見のCと副所見のいずれか1つを有するもの 確診例: 1. 副所見のいずれかを有するもの 2. 主要所見のCのみを有するもの 3. 主要所見AまたはBを有するが虚血性大腸炎,潰瘍性大腸炎と鑑別が出来ないもの 疑診例: 2. 副所見 a. 縦列する不整形潰瘍またはアフタ b. 上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形潰瘍またはアフタ 注3) 注1,2) 注4) 注1) 注2) 注3) 注4)

表7 クローン病の診断基準

栄養(Total Parenteral Nutrition)による栄養療法

はクローン病のprimary therapyとされ,その有用 性は広く認められている.栄養療法は腸管の安静 や栄養状態の改善のほか,食事抗原の除去が免疫 異常を是正するのに大きい意味をもつと考えられ ている.したがって,クローン病における栄養療 法では,栄養状態の改善が得られるのみならず, 病変の治癒,炎症反応の改善も期待できる.瘻孔 についても栄養療法で閉鎖する症例も多い. 活動期クローン病で,とくに病勢が重篤な場合, すなわち高度の狭窄や瘻孔形成がみられる場合, 下痢が頻回な場合,栄養障害が著しい場合には, 中心静脈栄養を行う.病状が改善すれば,引き続 き経腸栄養療法に切り替える.一方,活動期クロ ーン病でも病勢が重篤でない場合には最初から経 腸栄養療法を行う. 経腸栄養療法では成分栄養剤を経鼻チューブを 用いて低濃度,低用量から開始し,しだいに2,000 kcal/day以上の維持量へと漸増する.緩解が得ら れれば維持療法へと移行する.中心静脈栄養や成 分栄養療法中には週1∼2回の脂肪乳剤の経静脈投 与を行い,必須脂肪酸欠乏に陥らないように留意 する. 半消化態栄養剤においても,成分栄養剤と同等 の治療効果が得られるとの報告もあり10),経腸栄 養剤の選択にあたっては病型や消化吸収機能も考 慮して製剤を選択し11),また,各種栄養パラメー タを用いた栄養評価により治療効果を判定する. 緩解期においても成分栄養剤などによる在宅経 腸栄養療法の有効性が確認されている.とくに1 日30 kcal/kg B.W.以上の在宅成分栄養療法では, きわめて高い緩解維持効果が得られることが報告 さ れ て い る1 2 ). ま た , 製 剤 の 選 択 に は 患 者 の Quality of Life(QOL)やActivity of Daily Life (ADL)も考慮し,経口的に摂取可能な半消化態 栄養剤やペプチド経腸栄養剤を用いてもよい. 長期にわたり成分栄養療法を行う場合には,微 量元素欠乏や腸粘膜萎縮などに注意する必要があ る.とくに,現在用いられている成分栄養剤には 必要量の亜鉛やセレンが含まれておらず,適宜補 充し,欠乏症を予防することが必要である13) 併用する食事は,低脂肪低残渣食とし,スライ ド方式で徐々に食事を増量する.しかし,成分栄 養剤は1,200 kcal/day以上になるように投与する. 摂取する脂肪の質については,n-3系の脂肪酸が緩 解維持に有効との報告もあり14),今後の課題であ る.クローン病の栄養療法では普通食に移行する と再燃する症例も多いので,再燃徴候がみられた ら完全成分栄養療法に変更する. (2)薬物療法 クローン病の薬物療法としては,サラゾピリ ンR,メサラジン,副腎皮質ステロイド,免疫抑

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制剤,メトロニダゾールなどが用いられるが,病 変の罹患部位により有効性が異なる.サラゾピリ ン は,大腸内の腸内細菌のazoreductaseにより 分解されて生じる5-ASAが有効成分であり,とく に大腸型クローン病に有効である.小腸型クロー ン病ではステロイド剤が主体であったが,平成8 年6月より5-ASAをエチルセルロースによりコーテ ィングした徐放性腸溶剤であるペンタサ (メサラ ジン)が使用可能となり,大腸型クローン病,小腸型 クローン病のいずれにも有効性が期待される. したがって,クローン病薬物療法の指針は次の ようにまとめられる(図6)15) 小腸型,あるいは小腸病変が主体の場合にはプ レドニン 30∼60 mg/dayの投与を行い,改善が みられれば2週間おきに減量する.また,ペンタ サ 1.5∼3.0 g/dayを用いるか,プレドニン にペ ンタサ を併用してもよい.症状が不変,あるい はプレドニン の減量が困難な場合には,アザチ オプリン(50∼100 mg/day)や6-MP(30∼50 mg/day)を併用する. 大腸型,あるいは大腸病変が主体の場合は,サ ラゾピリン 3.0∼4.0 g/day,あるいはペンタサ 1.5∼3.0 g/dayで治療を開始し,改善がみられれ ば減量する.症状が不変であればプレドニン 30 ∼60 mg/dayを併用する.これでも改善がみられ なければ,アザチオプリン(50∼100 mg/day)や メトロニダゾール(750∼1,000 mg/day)を併用 する.肛門病変に対してはサラゾピリン坐剤 も 有 効 で あ る が , メ ト ロ ニ ダ ゾ ー ル ( 7 5 0 ∼ 1,000mg/day)を用いる. クローン病の新しい治療としては,抗サイトカ イン療法として抗TNF-α抗体やIL-10による治療 が試みられている.とくにVan Dullemenらの TNF-α抗体を用いた優れた治療成績16)は,従来 の薬物療法とまったく異なった新しい治療薬とし て注目されている.細胞性免疫,液性免疫を増幅 するとされるCD4陽性T細胞に対する抗CD4抗体も 有効との報告がある17) その他,ステロイド抵抗性クローン病に対して IL-10を0.5∼25μg/kg,1週間投与し,50%の緩解 R R R R R R R R R R R 経腸栄養法 フラジール 750mg 効果 不十分 減量 離脱困難 プレドニソロン 40∼50mg 減量・離脱 イムラン 50∼100mg 初診・診断時 急性増悪期 入院 (栄養療法) 外来 (緩解維持療法) (薬物療法) 完全静脈栄養法 在宅経腸栄養法 1,200kcal以上 在宅経腸栄養法 1,200kcal前後 and or ペンタサ 1.5∼3g (サラゾピリン) ペンタサ 3g (サラゾピリン) (在宅経腸栄養法) 緩 解 有 効 用量は1日量を示す 病勢が重篤な場合 外科手術 合併症が改善しない場合 無 効 悪 化

図6 クローン病治療指針改訂案

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炎症性腸疾患 13 がえられた.さらに,NF-KBはIL-1やTNF-αによ り細胞内で活性化され,炎症に関与する遺伝子群 の発現に重要な役割をなすが,NF-KBを抑制する ことにより,実験的大腸炎が軽減される.サイト カイン遺伝子レベルの治療法が今後の方向性を示 すものかもしれない. また,炎症性腸疾患の病態にアラキドン酸代謝 物であるロイコトリエンB4やトロンボキサンA2な どが関与していることが知られており,これらの 合成阻害薬や受容体拮抗薬の臨床試験も行われよ うとしている. (3)その他 近年,炎症性腸疾患の新しい治療法として白血 球除去療法が注目されている.白血球除去フィル ターの種類によっても有効性が異なるが,潰瘍性 大腸炎の高い有効率に比べ,クローン病での有効 性は評価が定まっていない18)

クローン病の手術適応

クローン病の治療は,内科的治療が原則である が,外科的治療は合併症によって生じている病態 を改善するために行われるものである.外科的適 応は表8に示すごとくである.手術後においても 吻合部口側に再発がみられることが多く,病変部 の切除範囲は最小限にとどめるべきである.小腸 病変に対しては狭窄形成術(stricture-plasty)が 行われる.クローン病では肛門部病変が,ほとん どの症例でみられ痔瘻に対してはSeton法が行わ れる.

文献

1)守田規一,守田佳子:発病率,有病率,食習 慣,死亡率.馬場忠雄編.炎症性腸疾患.第1版. へるす出版.東京:1-23,1999. 2)樋渡信夫:潰瘍性大腸炎診断基準改定案.厚 生省特定疾患難治性炎症性腸管障害調査研究 班平成5年度研究報告書(班長:武藤徹一郎). 90-92,1994. 3)馬場忠雄,佐々木雅也:炎症性腸疾患の内科 的治療.消外 20:59-65, 1997. 4)棟方昭博,樋渡信夫,武藤徹一郎,他:メサ ラジン経口放出調整剤N-5 ASAの潰瘍性大腸炎 に対する有用性の検討;サラゾスルファピリ ジンを対照とする二重盲検群間比較試験.薬 理と治療 22:2555-2583,1994. 5)棟方昭博,千葉満郎,樋渡信夫,他:メサラ ジン経口放出調整剤N-5 ASAの潰瘍性大腸炎に おけるサラゾスルファピリジン(SASP)不耐 症 患 者 に 対 す る 有 用 性 . 薬 理 と 治 療   2 2 : 2585-2605,1994. 6)棟方昭博,下山孝:潰瘍性大腸炎治療指針改 訂案.厚生省特定疾患難治性炎症性腸管障害 調査研究班平成10年度研究報告書(班長:下 山孝).123-125, 1999. 7)馬場忠雄,佐々木雅也:アラキドン酸カスケ ード.武藤徹一郎,他編.炎症性腸疾患,第 1版.,医学書院,東京:46-49,1999. 8)辻川知之,馬場忠雄:潰瘍性大腸炎における 大腸癌発生と早期発見.日臨 57:2608-2613, 1999. 1)絶対的適応  腸閉塞,穿孔,大量出血,中毒性巨大結腸症で は,救命のため緊急手術もしくは準緊急手術を要 する.癌合併も絶対的適応であるが,上記症状が 無い場合は待期的手術を原則とする. 2)相対的適応  膿瘍,内瘻,外瘻の他,発育障害,難治性狭窄 や内科的治療無効例,さらに二次性の肛門部病変 が含まれる.すなわち肛門周囲膿瘍,排膿の多い 有痛性痔瘻が手術適応となる.また腸管外合併症 では壊疽性膿皮症が病変部腸管切除の適応となり 得る.(重症の原発性硬化性胆管炎では肝移植の 適応となるものがある.)

表8 クローン病の手術適応

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9)馬場忠雄,佐々木雅也:Crohn病の診断と治 療の現状.医のあゆみ 178:496-501, 1996. 10)植木光彦,松井敏幸,山田美加,他:活動期

Crohn病の経腸栄養療法;amino acid based diet と oligopeptide based diet による randomized controlled trial.日消病会誌 91:1415-1425, 1994. 11)名生諭史,佐々木雅也,藤山佳秀,他:脂肪 消化吸収障害と経腸栄養剤の選択:steatocrit に よ る 消 化 吸 収 障 害 の 評 価 . 消 化 と 吸 収 17:32-35, 1994. 12)福田能啓,奥井雅憲,小坂 正,他:クロー ン病の在宅経腸栄養療法におけるコンプライ アンスの低下とその対策.JJPEN 15:1183-1188,1993. 13)福田方子,馬場正道,木村敏郎,他:栄養療 法施行中のクローン病患者における血清セレ ン値.消化と吸収 18:88-91,1995. 14)Belluzzi A, Brigonola C, Campieri M et al:

Effect of an enteric-coated fish-oil preparation on relapses in Crohn’s disease. N Engl J Med 334:1557-1560, 1996.

15)馬場忠雄:クローン病の治療指針.馬場忠雄 編,炎症性腸疾患,第1版,へるす出版,東 京:201-209,1999.

16)Van Dullemen HM, Van Deventer SJ, Hommes DW et al : Treatment of Crohn’s disease with anti-tumor necrosis factor chimeric monoclonal antibody(cA2). Gastroenterology 109: 129-135, 1995.

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18)Lerebours E, Bussel A, Modigliani R et al: Treatment of Crohn’s disease by lymphocyte apheresis: A randomized controlled trial. Gastroenterology 107: 357-361, 1994.

Inflammatory Bowel Disease:Recent Trends

Tadao Bamba

Second Department of Internal Medicine, Shiga University of Medical Science

Basic and clinical studies on the etiology and pathophysiology of inflammatory bowel disease (IBD) have progressed remarkably in the past several years. Based on the results of these studies, new therapies have been developed from the viewpoint of molecular biology, and are applied clinically. On the other hand, part of the etiology of IBD will be clarified by way of clinical epidemiological analyses of factors that are causing increases in the number of patients with IBD, and because of the fact that an elemental diet can cure such lesions. Investigations of specific genes of IBD and studies on pathogenesis of IBD from viewpoints of intraluminal bacterial flora and food antigens are anticipated in the 21st century. IBD develops as a result of a complicated interrelation of many factors such as the intraluminal environment, intestinal epithelial cells, submucosal infiltration of inflammatory cells and immunological response. Therefore, the therapy of IBD should be performed taking each factor into consideration.

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参照

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