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3.1 国家経済・社会開発計画

3.1.1 初期状況 (1) 背景 この数十年間に伝統的な工業社会から工業を特徴とするサービス社会へ、 急速に変貌を遂げてきた。1970 年代終盤及び 1980 年代初頭からは、第三 次産業部門が雇用と価値創出の中心になっており、サービス業の大部分が 「生産関連」(例えば商品製造の計画や実施)である。

*出典:K.-R. Korte and W. Weidenfeld, eds., “Deutschland - Trendbuch, Fakten und Orientierungen; Opladen (ドイツ−トレンドブック、事実と方向性),” Opladen, 2001. ド イ ツ の 国 民 経 済 は 欧 州 最 大 規 模 で あ る が 、「Internationales Standort-Ranking (国際立地ランキング)*」では、調査対象となった工業 国21 カ国のうち最下位となっている。 *:成果指数 (労働市場(失業率及び生業活動者増加)と成長 (1 人当たり国内総生産及び 潜在成長)という両方の目標分野を視野に入れたうえで、各国の現況を示す情報源と なるもの)だけでなく、第 2 のステップとして、いわゆる活動指数も踏まえている。 活動指数は労働市場や経済成長に刺激を与えるために各国がとった固有の措置を 計測・評価し、そのような形で政治的な活動を知る手がかりとなるものである

*出典:Bertelsmann-Stiftung (ベルテルスマン財団), ed., “Internationales Standort-Ranking (国際立地ランキング),” Gütersloh, 2004. Bertelsmann-Stiftung Website, http://www.bertelsmann-stiftung.de/ 大半の工業国が過去数年の間に失業対策・経済成長面で部分的にではある が、大きな成果をあげているのに対し、特に欧州大陸の大国であるフラン ス、イタリア及びドイツは依然として停滞状態が続いている。 サービス産業への移行と足並みを揃えるように 1950 年代初頭から加速し た経済発展を背景として、旧西独・旧東独において国民の職業能力のレベ ル向上が続いた。このような動向は、教育制度のレベルでは、2 次・3 次 教育構造の拡大を伴う「教育の拡張」として知られるようになり、また社 会構造分析の観点からすると、国民の職業能力向上は下から上へと向かう 階層の組換えとしてとらえられる。つまり、生業活動者に占める大学卒業 者の割合が1950 年代の 3%から 2000 年の 9%へと 3 倍に増え、未熟練者 (正式な職業訓練教育を受けていない従業員)は 1960 年代には生業人口の およそ3 分の 2 であったのが、2000 年には少なくとも 25%にまで縮小し ている。 欧州のほかの工業国と同じく、人口統計上の動向も次のような類似した傾 向をみせていた。 ・ 出生率が低下し、長期にわたって低レベルで推移している (女性 1 人 が生む子供の人数はおよそ1.4 人)。 ・ 自国民の (ドイツ人の)人口比率が減っている。 ・ 国民の高齢化が進んでいる。

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・ ドイツ人住民の絶対数が減少している。 このような人口の衰退は、1960∼70 年代にかけての南欧諸国やトルコから のいわゆる「ガストアルバイター (出稼ぎ労働者)」の移住 (移民の総計が およそ1,200 万人、そのうち約 500 万人が再び国外へ退去)や、冷戦終結と いわゆる「東欧ブロック」の解体によるロシア、ポーランド、ルーマニア、 チェコスロバキア及びカザフスタンのドイツ系移民の受入れ (合計でおよ そ450 万人)で埋め合わされ、人口減少を補って余りあるほどであった。

*出典:Bundesregierung Deutschland (ドイツ連邦政府), ed., “Bericht der Zuwanderungskommission (移住委員会報告書),” Berlin, July 2001. 「労働移住者」や帰還者の労働人口・居住者人口への統合という問題は、 緊急度が増す一方であり、依然として政治努力や世論の中心的なテーマと なっている。今も昔も労働移住者は主として単純労働に必要とされている のであり、正式な職業資格をもたずにドイツで滞在し、現在まで資格をま ったく取得していない状態が続いている。しかし、東欧からの移住者の職 業能力欠如はさほど深刻な問題ではない。失業や長期失業者の大部分を占 めているのは、この両グループなのである。 こうした極めて緊急かつ重要な社会問題を解決するための明確な展望とな ると、まだその兆しさえも認めることができない。次の時代に解決される べき社会政策上の最重要の試練が、ここに残されているのである。 上述した動向と歩調を合わせるように、社会階層とその価値の組換えとい う社会学的な変化もここ 20 年前後の間にほぼ気づかれないまま進行して いる。60∼80 年代にかけての経済成長を支えていたのは、所得の多い専門 労働者や専門事務職員で構成される中間層であったが、この中間層が徐々 に解体していった。歳月の経過とともにこうしたドイツ人の一部はますま す富裕になり、一部は貧困化していった。中間層が縮小・差別化されてい き、中間層にとどまった人々も消費行動・流行の嗜好・慣習等を変えてい った。かつて中産階級に属していたほかの新しい階層も同様である。

*出典:Die ZEIT, “Die Krise des Gelsenkirchener Barocks (ゲルゼンキルヘンの バロックの危機),” October 21, 2004. Frankfurter Allgemeine Zeitung (FAZ:フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイ トゥング紙), “Wer im Kadett Rekorde bricht, wird Kapitän (カデットで記録を 破る者がキャプテンになる), October 18, 2004. 以前の中間層の大部分は、現在緩やかに没落の道を辿っており、生活の余 裕を失いつつある。50∼80 年代にかけての戦後期の右肩上がりとは好対照 であり、そうした成長傾向には翳りがみえてきた。インフレーション率を 考慮に入れると、平均の純所得はこの10 年間におよそ平均 0.6%減少して いる。その前の数十年間は右肩上がりであり、1 年間の上昇率が 2 桁にの ぼる時期もあった。 こうした動向の主な原因となったのは、70 年代に社会福祉国家としての側 面が強調され、年金の水準が引き上げられるとともに始まり、つい数年前

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まで続いていた社会保険料の増大にある。 このように、かつて国家を支えていた中間層が収入の多い階層と少ない階 層に二極化したことで、今日、ドイツ人の消費行動にも変化が現れている。 その影響を受けたのが次のような企業である。 ・ マ イ ナ ス の 影 響 を 受 け た 伝 統 的 な 企 業 ( 百 貨 店 グ ル ー プ の KarstadtQuelle、自動車メーカーのオペル及び食品小売店チェーンの Spar 等) ・ プラスの影響を受けた特別な名門企業としての価値をもつブランド企 業 (BMW、メルセデスベンツ、アウディ及び多くの新参のファッショ ン業界企業) 人々の消費行動も大きく変化している。かつての中間層に代わって現在そ の地位を占めている人口グループを専門家は「スマートショッパー (賢い 買物客)」と名づけている。お金を戦略的に使う人々であり、ある方面では 倹約を重視し、その分だけ別の方面で支出の余力を残す。そうした行動で 利益をこうむるのが、特に食品分野で絶対的な安値を提供しているLIDL、 ALDI 及び PLUS といった商業企業やディスカウントストアである。これ ら少数のディスカウントストアが食品市場の 50%以上をすでに制圧して いる。 経済の構造転換に伴い、労働界でも労働需要、労働関係及び労働時間等の 面でこれに呼応する構造転換が起こっている。 ・ 20 年以上前から専門能力に対する雇用制度の要求が上がりつつあり、 能力レベルの上下の雇用機会の格差がいっそう大きく広がっている。 職業能力が低いほど、労働市場における地位も低い。こうした低熟練 労働者に対する労働需要は今後も好転しないものと思われる。 ・ 無期限のフルタイム労働契約を特徴とする「標準労働関係」が数十年 にわたり一般的であったが、在宅労働・パートタイム労働・期限つき 雇用関係・被用者派遣・出向労働・課税適用限度額を考慮した低収入 就業・請負契約等の枠組みのなかでの新しい形態の自営業等の方向へ 次第に変わりつつある。 ・ 労働時間の推移は、経済的・社会的に広範囲の影響を及ぼす 2 つの明 確な傾向で特徴づけられる。すなわち1 つは、特に 70 年代の平均約 40 時間から 2000 年の平均 36 時間弱へという週労働時間の明らかな 労働時間短縮であり、もう1 つは、フレックスタイム規定の枠組みの 中での労働時間の弾力化である。 ところが、2004 年の夏から、こうした傾向に変化の兆しがあらわれ始めて いる。グローバルな事業展開をいっそう強めるコンツェルンが、経済のグ ローバル化という主張を盾に、賃金コストを削減するための譲歩を従業員 や労働組合から引き出そうとしている。そのために、週労働時間の (再度 の)最大 40 時間への延長、労働協約を超える手当ての廃止及び事業所によ る社会福祉事業の打ち切りといったおよそ考えられる限りの手段が検討さ

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れている。従業員や労働組合も自らの地位を無抵抗のまま手放したりはし な い 。 そ の こ と は 、2004 年秋の オペル (ジ ェネラルモ ータース)や KarstadtQuelle で行われた最近のストライキが物語っている。 上述のような構造転換や、その結果として鉱業部門が (雇用政策の意味か らは)考慮の対象にならないほど縮小し、重機械製造業や造船業が世界市場 で伝統的な地位を失い、建築・土木・道路建設業でも大幅に自動化が進ん だこと等から、およそ200 万人の低熟練労働者がすでに長期にわたる構造 的失業に陥っている。そのため失業保険の負担が膨大になっており、賃金 税や社会保険の歳入減少がこれに結びついている。 失業率が高いにもかかわらず、労働力不足の現象がみられる。例えば、2001 年12 月には約 9.6%の失業率に相当するおよそ 400 万人の失業者がおり、 それと同時に、労働局には389,000 人分の求人が登録されていた。労働局 への届け出がある求人は平均して3 件に 1 件なので、およそ 120 万人分の 職場が空いていたと考えられる。しかも空きポストの件数は50%近くも増 加しており、これと足並みを揃えるように、最近の専門労働力不足を嘆く 企業団体や業界団体の報告書が続々と出されている。こうした矛盾には次 のようにいくつかの説明が可能であろう。

*出典:Deutscher Instituts- Verlag (ドイチャー・インシュティトゥーツ・フェア ラーク出版社), ed., “Zuwanderung (移住),” Dossier no. 21 (書類番号 21), Köln, 2002. (a) 失業者が紹介された求人に必要な専門能力を備えていない。 いわゆる「ミスマッチ失業」を言い換えたもので、例えば、業界の構 造転換によって引き起こされる場合がある。つまり、古い産業が縮小 し、別の新しい産業が成立して拡張すると、被用者の能力に対する要 求内容も変化する。縮小した業種で職場を失った人間がすべて新しい 能力を身に付けられるわけではない。そのような人は最悪の場合失業 者となる。 (b) 個人的な資質 (年齢・体格等)の点で失業者がその仕事に適していな い。 多くの長期失業者の能力が時代遅れであったり不十分であるばかりで なく、50 歳を超えていたり健康上の問題も抱えているという観察に基 づいている。そのために専門能力を身につけさせる措置が成功する確 率が限定されている。同時に、単純労働を通じて再び労働市場に参画 する道のりも険しい。低賃金の仕事にはある程度の身体的適性が求め られることが珍しくないからである。賃金補償給付の制度もあるが、 それでも安い賃金しか得られない労働を始めようという意欲をあまり 起こさせない。失業保険金や社会扶助のほうが労働から得られる賃金 よりも多いという場合がよくあるのである。 (c) 失業者と求人の地域的な分布が同じでない。 個々の労働局の管轄区域における失業率を眺めてみると、求職者と求 人の地域的分布の不均衡が、失業の有無の重要な要因になっているこ

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とがわかる。旧東独地域では20%を超える失業率が珍しくないのに対 して、バイエルン州のフライジングは事実上の完全就業状態にある。 そこで各地の労働局はいわゆる労働力の移動性促進援助により、すぐ に職に就くことができる地域へと失業者を移動させようと試みている。 (d) 斡旋を事実上受けていない失業者が増え続けている。 労働局に失業を届け出たときに失業とみなされるが、その際、実際に 仕事を探しているかどうかは問題にされない。失業を届け出ている人 の中には、例えば、個人的、年齢、経済的な理由から生業活動に関心 がない者も多い (現在の法律状況では、「見かけ上の失業者」が実際に どれくらい存在しているのかを正確に解明することができない)。まだ 検証が終わっていないBundesanstalt für Arbeit (連邦労働代理局)の 調査では、新しい職を積極的に探しているのは失業者のおよそ半数に 過ぎないと推定されている。 世界市場のグローバル化 (その結果としての合併・企業買収・吸収等を含 む)と関連するこのような労働市場の動向はドイツでも 80 年代から続く合 理化へとつながっており、その帰結として、一定の慢性的失業とは異なる 失業が生まれた。 合併や合理化を進める企業はむしろ社会政策立法を好機ととらえて、適当 な失業状態を意図的につくることで「余剰」の高齢従業員を法定の定年前 退職 (早期定年)へと追いやるために利用してきた。それに呼応して、法律 で 65 歳の退職年齢 (通常の場合)が規定されているにもかかわらず、年金 受給の開始年齢は、2001 年には 62.5 歳まで下がっている (生業能力低下 年金の支給を受ける場合、すでに60 歳で受給資格発生年齢となる)。55∼ 64 歳のグループの就業率が 37%と欧州でも最下位レベルにある。

*出典:Bundesanstalt für Arbeitsschutz und Arbeitsmedizin (連邦労働保護・労働医療施 設), ed., “Ohne die Älteren geht es nicht! (年長者なしではやっていけない!),” Dortmund,

2004. Bundesanstalt für Arbeitsschutz und Arbeitsmedizin Website, http://www.inqa.de/ K. Schwenn, “Nur eine Minderheit der Beschäftigten Arbeitet nur bis zum Alter von 65 Jahre (従業者の少数派だけが 65 歳までしか働かない),” in FAZ, May 5, 2003. 法律による 65 歳の年齢制限まで働くのは男性就業者の 4 分の 1 に過ぎな い (女性はほぼ半数)。例えば、旧西独地域では男性の 31%がすでに 60 歳 で早期年金生活に入っている。人口動態に関わる未解決の問題と結びつく こうした動向は、年金保険における中期的な資金難につながっており、今 からすでに解決の道筋を探っていかなくてはならない。 医療保険制度も、いろいろな連立政権が法律改正を再三試みているにもか かわらず、現在では資金調達の限界に行きついており、持続的・抜本的な 新しい方向づけが求められている。 (2) 政界と経済界による解決への取組み 過去、連邦政府だけでなく野党・企業連合会・労働組合の側からも社会制

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度の根本的な改革のための提案が作成されてきており、年金保険・医療保 険・介護保険の改革を目指した具体的な法律改正が 2004 年から導入され ている。失業保険の大幅な改正もすでに部分的に実施されているが、一部 はまだ解決されていない (調査中項目 3.3 を参照)。 あらゆる改革計画の基本となるのが持続的な税制改革である。停滞期を過 ぎたドイツ経済は再び上向きになっている。2004 年 1 月 1 日から税制改革 の第 1 段階として、個人や事業所に対する大幅な租税軽減が行われた (最 低税率を16%へ、最高税率を 45%へ引き下げることによる 150 億ユーロの 所得税減税となる。基礎控除額も7,664 ユーロへ引き下げられた)。

*出典:Bundesregierung Deutschland (ドイツ連邦政府), ed., “Agenda 2010 - Deutschland bewegt sich (アジェンダ 2010−ドイツが動く),” Berlin, February 2004.

Bundesregierung Deutschland Website, http://www.bundesregierung.de/ この税制改革は消費を刺激し、企業の投資活動を促進していっそうの成長 と雇用につなげようというもので、2005 年 1 月 1 日からは個人に対して さらにおよそ 65 億ユーロの減税が実施され、所得税率が 15%、最高税率 が42%まで引き下げられることになっている。 社会保険制度の持続的な資金調達のための提案を作成させるべく連邦政府 が招集したいわゆる「Rürup-Kommission (リュールップ委員会)」は、政 府が今断固とした処置をとらなければ、社会経済の枠組み条件の変化によ って年金保険・医療保険・介護保険の役割が失われるとしたうえで、社会 保険制度の資金面を持続的に安定化するための現実的かつ実施可能な解決 への道を政府に提言した。資金調達の持続性を増すことが、制度を維持す るための前提条件である。さらに、別の条件として高い雇用水準、適度な 経済成長及び低い失業率があげられる。 同委員会は、具体的には下に掲げるような改正を提言している。連邦政府 はこれらの改正を議会立法手続きですでに部分的に実施しているが、今後 の実施を待たなければならない部分もある。

*出典:Bundesministerium für Gesundheit und Soziale Sicherung (連邦保健・社会保 障省) ed., “Nachhaltigkeit in der Finanzierung der sozialen Sicherungssysteme (社会保 障制度の資金調達における持続性),” Bericht der Rürup-Kommission (リュールップ委員 会報告書), Berlin, August 2003.

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表 3-1 社会保険制度改正案 年金保険 医療保険 介護保険 ・ 法定年金受給資格の発生年齢を従 来の65 歳から 67 歳へ引き上げる。 ・ 年金受給資格の発生年齢を 2011 年から段階的に引き上げる。 ・ 早期受給の場合には年金の減額を する。 ・ 生業能力低下年金や重度障害者に 対する老齢年金における例外を減 らし、チェックを厳しくする。 ・ 制度維持のファクターを年金計算 式に追加し、年金生活者と保険料 支 払 者 の 関 係 の 変 化 に 対 応 さ せ る。それにより、保険料率が2030 年まで 22%以上に増えないように する。 ・ 60 歳での早期年金受給を防ぐ。 ・ 受給資格の発生年齢を63 歳に引き 上げ、減額率を増やすことで早期 年金受給を難しくする。 ・ 年齢に関係のない給付除 外をなくす。 ・ 社会復帰と予防の充実、 患者の自主性の向上 ・ 競争を重視した支出側の 改革 ・ 市民保険又は頭割り一律 制度のいずれかに向けた 財源の立直し ・ 義歯保険と疾病時の賃金 継続支払を労使対等負担 の財源から除外する。 ・ いわゆる診察料の導入 ・ 人口動態要因に備えた 資金調達をするため、 2001 年から年金生活者 の保険料を引き上げる。 ・ 給付金のスライド制 ・ 通院介護と入院介護を 財政上同じ扱いにする。 2003 年秋に連邦政府と野党の間で合意され 2004 年 1 月 1 日付けで発効し た保健制度改革では、国際比較でみて高いレベルにあるドイツの健康保障 が維持されている。この改革は、保健制度費用の削減に貢献するものであ り、保健制度における競争を高め、被保険者の自己責任を増やすことによ って疾病保険金庫の負担が軽減される。この改革は法定医療保険の負担を 年に100 億ユーロ以上軽減し、2005 年から平均の保険料率を 13%の大台 以下に引き下げることを目指している。

*出典:Presse- und Informationsamt der Bundesregierung Deutschland (ドイツ連邦政 府出版情報局), ed., “Agenda 2010 - Deutschland Bewegt sich (アジェンダ 2010−

ドイツが動く),” Berlin, February 2004. さらに、別の重要かつ急を要する政府の改革計画として、社会扶助制度の 新規定と、時間的に期限が区切られた失業保険金受給に続いて無期限で給 付される失業救済金の新規定がある。 この両方の社会給付制度が並存していることが現在、著しい行政コストと 不透明性につながっている。社会編入に向けた努力の過程で相互調整や責

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任感が欠けていれば、職業斡旋のテンポに遅れがでる恐れがある。将来的 に、こうしたインターフェースをほぼ不要にするために、給付を受けてい る者は決まった同一の機関を通じて 1 種類の給付を受領するようにする。 そのために保険外の給付について疾病保険金庫の負担を軽減させる (例え ば、母性保護手当て・出産手当て・死亡見舞金等を削除)。2005 年からは 義歯に対する給付、2006 年からは疾病給付 (疾病時の賃金消滅一時金)も 別個に履行されることになる。さらに、薬剤とその適用に対する追加支払 い規定や、医療行為の利用について被保険者1 人が四半期に 1 度支払う 10 ユーロのいわゆる診察料が導入された。 2005 年 1 月 1 日から失業社会給付は次の 3 本立てになる。 ・ 失業保険金 I (現在の失業保険金に相当) ・ 失業保険金 II (租税で資金調達され、貧窮度に応じて決まる新たな失 業保険) ・ 社会保障給付金 (現在の社会扶助に相当) 現行の租税制度も緊急に改革すべきものと位置づけられており、連立政権 と野党の双方から議案が出されて妥協が図れているが、今のところまだ実 現に向けた提案はない。

3.2 国家人的資源開発 (HRD)計画

2001 年に行われた Personalentwicklung und Qualifikation / National HRD- Programs Deutschland hat in der internationalen Vergleichsstudie zum Bildungsstand der Schüler (PISA:学生の教育水準に関する国際的な比較調査)で、 ドイツの成績水準は相当低いものであった。

*出典:Deutsches Institut für Pädagogische Forschung (DIPF:ドイツ教育学研究協会), “Vertiefender Vergleich der Schulsysteme ausgewählter PISA-Teilnehmerstaaten (PISA 参加

国から選んだ学校制度の掘り下げた比較),” Frankfurt am Main and Berlin, July 4, 2003. 集中的な公開討論が行われた後、憲法に基づいて教育を管轄する 16 の連邦州で実 行に移されるべきさまざまな解決への取組みが提出された。連邦政府は各連邦州の 学校・教育政策に対して直接の影響力はないものの、教育政策に対する総合的な責 任を認知している。

*出典:Presse- und Informationsamt der Bundesregierung Deutschland (ドイツ連邦政府出 版情報局), ed., Agenda 2010 - Deutschland bewegt sich (アジェンダ 2010−ドイツが動く),

Berlin, February 2004. これまで長年にわたり教育分野の予算が切り詰められてきたことを受け、現在の連 邦政府は、教育や研究への投資を重視したうえで、政権の成立以来その資金を36% 引き上げてきた。

*出典:Bundesministerium für Bildung und Forschung (BMBF:連邦教育・研究省), “Bildung auf einen Blick 2004 (教育概観 2004).”

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さらに、「Zukunft Bildung und Betreuung (教育と福祉の未来)」という全日制学校 プログラムを作成して、教育機会を改善するための決定的な貢献を果たそうと試み ており、2003∼07 年の間に 40 億ユーロを費やして全日制学校の増設・充実を支援 することにしている。こうした全日制学校では、より長い期間にわたって集中的に 生徒の面倒をみて能力を伸ばすことができる。そのことは PISA 調査でドイツより も成績の良かった他国での実績が証明している。基幹学校・実科学校・ギムナジウ ムを 3 本の柱とする 19 世紀以来の伝統的な学校制度は、多くの教育政策評論家に よって今日の惨状を生んだ要因とみなされているが、連邦政府及び 16 の州政府の 大多数は、依然としてこの制度を問題視していない。 (1) 職業教育と継続教育 約 30,000 件の生業となり得る職業・ジョブが労働市場にあると見込まれる。 これらの職業には、正式な職業教育の課程・修了を通じてでなければ就くこと ができない次の 5 つの職業分類又は職業部門が含まれている。これらの分野 は法律で特別に規定・保護されている。 (a) 職業訓練教育の二元的システムで国が公認する職業教育が必要な職業 (Industriekaufmann/-frau (有資格商人)等)

Berufsbildungsgesetz (BBiG:職業教育法)又は Handwerksordnung (HwO:手工業法)により規定されている。 (b) 学校での職業教育が必須の職業 (宣伝助手等) 全般的には州法によって規定され、また、医療保険制度では多くの場合連 邦法によって規定 (高齢者介護士・看護婦等)されている。 (c) 継続教育必要職業 管轄機関の地方レベルで規定 (メディア専門家等)、又は連邦で統一的に 規定 (有資格産業マイスター等) (d) 職業高等学校 州法により規定 (専門技術者等) (e) 大学での職業教育が必須の職業 (心理学士等) 州法及びHochschulrahmengesetz (HRG:大学大綱法)によって規定 ド イ ツ 職 業 訓 練 教 育 の 二 元 制 シ ス テ ム に お け る 約 350 種類の国による 「Anerkannten Ausbildungsberufe (公認職業教育必要職業)」は、職業教育で 重要な役割を演じている。1 学年の卒業生のおよそ 3 分の 2 がこれらの職業に 入ろうとするためである。そのため、連邦政府の人材育成政策でもこれらの職 種が最も重要な役割を果たしている。 公認職業教育必要職業が備えている特別な意義は、法律的に次のような特徴が ある。 (a) 「Berufsmonopol (職業独占)」、すなわち 18 歳未満の青少年は国の公認 職業教育必要職業機関でのみ職業教育を受けることが許可される。 (b) 幅広く構想された職業上の基礎職業教育と、質の高い職業活動を営むため に必要な専門的技能・知識とを含んでいる職業訓練教育に関する要求事項 である。こうした能力が秩序だった職業教育課程の中で育成されると同時

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に、必要な職業経験の獲得も可能となる。 (c) 公認職業教育必要職業の職業教育課程を内容的・時間的に規定する BBiG である。BBiG は、現在 345 種類ある職業教育必要職業の 90%以上につ いてBMBF により法規命令として制定されており、事業所内での教育に ついて連邦全土で統一的に規定している。二元制システムの学校内での教 育、すなわち定時制職業学校については管轄権が各州にある。

*出典:E. Sauter, “Die staatlich anerkannten Ausbildungsberufe (国家公認職業教育必要職 業),” in Handbuch der Aus- und Weiterbildung (職業教育と継続教育のハンドブック),” 147 Erg.Lfg ch. 3120, Verlag Deutscher Wirtschaftsdienst (フェアラーク・ドイチャー・ヴィルトシ

ャフツディーンスト出版社), Köln, February 2003. また、具体的には、BBiG により少なくとも次の点が規制される。 (a) 職業教育必要職業の名称 (b) 職業教育期間 (c) 職業教育必要職業の全体像 (技能と知識) (d) 職業教育の枠組計画 (職業教育の実施に関する手引き) (e) 試験の要求事項 BBiG の規定は最低設定事項であり、事業所はいつでもその範囲を超えること ができる。ただし、BBiG の最低設定事項は、事業所と職業教育生との間の職 業教育契約の構成要素であり、したがって、法的に訴求可能な職業教育の要素 でもある。 二元制システムによる国の公認職業教育必要職業の背景には、職業上の初期職 業教育を規律するための構成原理としての職業構想がある。職業構想では次の ような職業教育を指向している。 (a) 職業教育は、能力標準に合わせて 1 本に束ねられた関連する諸活動を準 備するものである。 (b) 職業教育は、職業上の行為能力を身に付ける目的及び自力で学習を継続す るための基礎として、専門的な力と複数の専門分野にまたがる力とを結び つけるものである。 (c) 職業教育は、特に青少年を社会に統合及びその後青少年を社会的に守るた めに主要な貢献を果たすものである。

Bundesinstituts für Berufsbildung Berlin (BiBB:ベルリン連邦職業教育協 会)の中央委員会が BBiG に基づいて 1974 年に作成した基準一覧が、職業教 育必要職業の認定・近代化・取消しを行う実際の業務のための基礎となってい る (BiBB の役割と機能については調査中項目 7.3 を参照)。 (a) 時期的に限定されず個々の事業所にも左右されない、能力に対する十分な 需要 (b) できるだけ広い分野で自己責任のある優れた活動をするための職業教育 (c) 幅広く構想された職業上の基本教育 (d) 秩序だった職業教育課程の可能性 (e) ほかの職業教育必要職業との十分な区別

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(f) 職業教育目標の学問的な処理方法を明確にする可能性 (g) 2∼3 年半までの職業教育期間 (h) 継続教育及び職業上の昇進のための基礎 (i) 技能や知識を応用するに当たって独力で考えて行動する力の獲得 (2) 人材開発の展望 既存の二元的職業教育制度は、効果と機能性の限界に突き当たりつつあり、次 のような試練に立たされている。 (a) 経済・技術が転換する大きなダイナミクスや、事業組織と労働組織の変化 に対応していかなくてはならない。 (b) 工業・生産社会から知識・サービス社会への転換に、職業の多様性の点で も追随していく。 (c) 特に、初期職業教育必要職業を学習継続のための基礎とし、能力や専門知 識をいっそう獲得していくための適応能力を身に付けさせる。 このような試練への対応策として実際の規制活動では、職業教育必要職業の発 展のために次のような互いに関連する3 つの構成要素が効果をあげている。 (a) ダイナミックな職業性 (b) 多彩な構造化による弾力性 (c) 付加的な能力判定による職業教育と継続教育の一本化 より高い柔軟性を約束するアングロサクソン系統のモジュールシステムを分 析していく中で、上述した職業性の基準が近年更に大きく展開されている。特 に 連 邦 政 府 が 主 導 す る 「 Bündnis für Arbeit, Ausbildung- (unter Einbeziehung der Wirtschaft und Gewerkschaften) und Wettbewerbsfähigkeit (雇用・職業教育 (経済界や労働組合を含む)・競争力の ための同盟)」は、そのために重要な貢献を果たしている。この同盟の加盟者 は、獲得や認定が段階的になされる部分的能力 (モジュール化)への分解が行 われる初期職業教育に反対する姿勢を次第に鮮明にしつつあるが、上述した職 業構想に基づく職業教育に代わる説得力ある代替案は依然として見出せてい ない。アングロサクソン系を模範としてモジュール形式で断片的に部分的能力 を獲得させるようなことをすれば、労働市場における職業教育修了の透明性が 制約され、そのために専門労働者の移動性が損なわれるばかりでなく、(伝統 的な)試験費用も是認できないほど増大するであろう。 こうした背景の下で手工業制度の改革も進められており、将来的には「危険な傾向 のある手工業活動」のみがHwO の狭い範疇に含まれることになる。このことは、 それ以外の手工業であれば、たとえ手工業者がマイスター試験を受けていなくても すべて自営で行えるということを意味している。数百年に及び手工業イヌングの特 権をこのように緩和することで、ブラインド製作者・機械工・レンガ積み工・塗装 工とペンキ工・銅細工師等は最低 10 年間の職業実務を証明することができれば、 マイスター試験を受けずに営業することができるようになる。ただし、安全性に関 連する要求や特別な衛生面の要求が課される手工業、例えば、電気技師・食肉製造 業者・眼科光学器械の取扱者等は、以前と同じくHwO の規定に服することになる。

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こうした改革の帰結として、手工業における職業教育の職場が中期的に減少する可 能性がある。職業教育の実施を許可されるのは、マイスターが運営する手工業事業 所か、Ausbilder-Eignungs-Verordnung (AEVO:職業教育者適性命令)の規定に定 める教育学の付加的職業教育を受けた手工業者に依然として限られるからである。 (3) 大学の立地 ドイツの大学で学ぶ人の割合は著しく増えており、1998 年の 28%から 2003 年には 36%へと上昇し、今なお伸び続けている。大学で過ごした後に労働市 場で成功する確率は、ほかのどの職業教育の場合よりもはるかに高い。しかし ながら、1 つの年代で大学の勉強を始める人の割合は 19%と、現在のところ Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD:経済協 力開発機構)の平均値である 32%を大きく下回っている。

大学卒業者全体の 3 分の 1 が自然科学や工学学部系で勉学を終えており、こ うした特に将来性のある学部でドイツは第 2 位を占めている。特に、自然科 学については大学で勉学を始める人が 1998 年から 72%増えており (37,600 人から64,600 人)、工学では 35%増えている (44,900 人から 60,800 人)。

*出典:BMBF, “Bildung auf einen Blick 2004 (教育概観 2004).” BMBF Website, http://www.bmbf.de/ OECD, ed., “Education at a Glance 2001 (教育の国際比較 2001 年),” 2001.

OECD Website, www.oecd.org/ (4) 大学改革 1999 年にほかの欧州 30 カ国以上とともに行ったボローニャ共同宣言により、 2010 年までに (多少なりとも)統一的な欧州高等教育圏を創出することを義 務づけられた。それ以後、大学 (専門大学・総合大学)では、過去 50∼100 年 を通して行われた大学改革と同様に極めて根本的な教育改革が現在まで進行 している。また、学位「ディプロム」が廃止され、その代わりに「学士 (バチ ェラー)」と「修士 (マギスター)」という学位が導入された。この関連で授業 構造や成績点数もモジュール形式になる。こうした経緯はいずれも世論とほぼ 無関係に進められており、世間においてもこの根本的な教育問題にはあまり関 心がないようである。 現時点では、企業で新規採用を担当するごく少数の人事責任者だけが新たなバ チェラー・マギスター取得者の扱いを準備しているに過ぎない。こうした改革 のプロセスはすでに少なくとも 5 年前から進行しているが、国民一般の認知 度は、これよりもはるかに低い。 政府がトップダウンで命じた非常に抜本的かつ広範囲に及ぶこのような教育 改革が、大学の教師・学生から望まれていなかったために支持を得られないま ま実施されたことや、連邦や州の責任ある政治家も当初から十分な決意と説得 力をもって広報活動と推進に当たってこなかったことが、上記のような状況と 関わっている。

ようやく一昨年あたりから、Ständigen Konferenz der Kultusminister der Länder in der Bundesrepublik Deutschland (KMK:ドイツ連邦共和国州文

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化相常設会議)が一般的な拘束力をもつ枠組・構造データに関して決議を採択 し、大学地域についてこれが拘束力をもつ旨を宣言したことで、改革の速度が 速まってきた。それまでは (改革に積極的な)大学だけが独力で、改正された 大学大綱法とこれに呼応する州の大学法とに基づいてボローニャ宣言を解釈 していた。こうした実験段階の結果、大半のケースでは各専門分野の名称を、 「フォアティプロム (ディプロム前段階)」からバチェラー・ディプロムから マギスターへと変更したに過ぎず、授業内容・授業構造・試験制度等には何ら 改変が加えられなかった。そのため現在、ボローニャ宣言の要求事項に即して 認定された形で、もしくは認定可能な形で編成されたバチェラー課程やマギス ター課程はごく少数に過ぎない。 しかし、今後控えている教育改革は一見して感じられるよりもはるかに複雑で ある。それは、今ある構造を別の構造で引き継ぐのではなく、すべてを変更し てしまう改革であり、すなわち、授業活動をテーマごとのブロックに断裁し (モジュール化)、学生の学業成績を査定し (成績点数)、カリキュラムを国際化 し、外部機関による認定を行い、労働市場に直結させることなのである。

3.3 雇用政策 (雇用創出計画)

2002 年の春、連邦首相シュレーダーはフォルクスワーゲンの取締役ペーター・ハル ツを議長とし、政界、産業界、有識者及び労働組合の代表で構成される 15 人の委 員会を招集した。このいわゆる「Hartz-Kommission (ハルツ委員会)」は、労働局 組織の機構改革、低賃金保護の拡大、派遣労働・パートタイムの拡大、仕事を始め る失業者に対する要求限度基準の厳格化及び自営業の起業促進等を提言した。 *出典:Ministerium für Wirtschaft und Arbeit (経済・労働省), ed., “Moderne Dienstleitungen

am Arbeitsmarkt (労働市場における現代のサービス業),” Bericht der Kommission für Moderne Dienstleistungen am Arbeitsmarkt (Hartz-Kommission) (労働市場における現代のサービス業委

員会), Berlin, October 2002. 連邦政府の目標は、こうした提言を生かして約400 万人の失業者数を 2005 年まで に半減させることである。そのために連邦政府は、失業者を減らす以下の5 つのス テップを決議した。

*出典:Bundesministerium für Wirtschaft und Arbeit, ed., “Wirtschaftsbericht 2003 (経済報告 書2003), Berlin 2003. ・ 経済政策は成長と雇用を伸ばすことを主眼におく。そのために租税負担を軽く し、債務を返済し、研究、教育、家族及びインフラのための未来投資を強化す るという「財政政策の魔法の三角形」を堅持することが必要である。そのため には先を見越した構造政策が必要であり、これは企業の設立・誘致・成長のた めの有利な枠組データを設定するとともに、商品やサービスの市場における競 争の障害物を除去・防止する構造政策でなければならない。さらに、保険料支 払いの低減という結果をもたらす社会保障制度の改革が必要である。 ・ 労働市場政策と労働促進は、失業者ができる限り早急に最初の労働市場で再び

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職場を見つけられるように構造改革を進める。ハルツ委員会はそのための構想 を打ち出している。生業を有しない者への支援を強化し、社会への再編入に向 けた新しい道を切り開くとともに、労働力受入れへの圧力を強めることが必要 である。 ・ 労働協約政策においては、今までよりも事業所側の利益を優先して斟酌する。 事業所の経済状況や低熟練労働者の生産性にいっそう即応した賃金を認可し ていかざるを得ない。 ・ 各企業は、長期的な側面によりいっそう目を向け、若い従業員の職業教育、高 齢従業員の雇用及び全従業員の継続教育について考えていく。人口統計上の動 向を加味すれば考察がいっそう進捗すると思われる。 ・ 社会においては改革の必要性に対する理解を深め、社会的な団結を国家の役割 としてだけでなく各個人の役割として訴えていく。 上述した必要なステップのうち、単独で労働市場の問題を解決できるものは1 つも ない。例えば、新たな雇用を創出するための成長が不足していれば、労働市場改革 は限定的にしか失業を減らすことができない。また、成長が伸びても、労働市場の 柔軟性が高くならなければ雇用効果は限られる。したがって上の5 つのステップが すべて歩調を合わせる必要がある。 ハルツ委員会の提言を踏まえたうえで、次のような基本政策が2003∼04 年に相応 の法律により具体化された。 (a) 失業者の仲介を促進し、労働行政に新しい組織構造をつくる。

(i) Bundesanstalt für Arbeit (BA:連邦労働施設)をいっそう現代的なサービ ス企業に組織変更する。「連邦労働代理局」という名称とし、本部・地方 管理局・地域レベルの労働代理局という編成にする。 (ii) 労働市場政策の最重要かつ最も低コストの手段としての労働斡旋を充実 させ、人員を補強し、官僚制の障害物を取り除く。 (iii) 新たな「ジョブセンター」を労働力と求人の仲介の中心となる最前線の機 関とする。 (b) 給付制度の構造を一新する。 (i) これまでの給付権は、特に低所得層の低熟練者や長期失業者の場合、失業 者に仕事を始めさせるための刺激にあまりにも乏しい。 (ii) 失業したときの経済的・社会的な過酷さを和らげるため、現在、失業者は 請求権に応じて失業保険金・失業救済金・社会扶助をそれぞれ異なる金額 で受け取っている。こうした横断的給付は、貧困の境界の定義の関係上、 最も低い労働協約部門の賃金とほぼ同額であり、そのため失業者が仕事を 始めるのを拒否してしまう。2005 年 1 月 1 日から失業と社会扶助を統合 していわゆる失業保険金II とすることで、そうした状況を変えていく。 (iii) 高齢の被用者はソーシャルプランを通じて経済的に保護しながら早めに 労働プロセスから失業状態へ移行させ、年金を優遇受給できる定年前退職 へと導いていくのが従来の方針であったが、2004 年 1 月 1 日からはそれ が難しくなっており、場合によっては妨げられている。

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(c) 時間労働を正式採用への入り口として活用する。 (i) 事業の柔軟性を向上させ、それによって企業の競争力を強化する雇用形態 としての時間労働や派遣労働を日陰の存在から救いだし、「社会に仲間入 り」させる。 (ii) 雇用契約に繰返し期限をつけることを禁じる特別な期限設定禁止が廃止 された。 (iii) 繰返し雇用の禁止や、派遣期間を 24 カ月に制限する規定も同様に廃止さ れた。 (iv) 同時に「イコールペイ (賃金平等)」の原則が法律に明記された。ただし、 これは労働協約によって改変することができる。

(v) いわゆる「Personal Service Agenturen (PSA:人材サービス機関)」の設 置により、奨励していく斡旋中心の時間労働に新しい形態をつくる。 (d) 独立への架け橋を設置していく。 (i) 創業や若い中小企業はイノベーションプロセスを前進させ、将来性のある 働き場所と職業教育の場を創出するので、若い企業の設立と運営のひとつ ひとつのステップについて新しく編成された幅広い支援体制がとられて いる。 (ii) 新たな創業者は、今後、1 年間の利益が 25,000 ユーロを超えなければ、 最初の 4 年間の間は商工会議所や手工業会議所への加盟料支払いが免除 される。 (iii) 独立したいと考える失業者に対するこれまでの支援は、いわゆる橋渡し金 によって行われていた。2003 年初頭からは起業意欲のある失業者に創業 者補助金を支払うことによって、いわゆる「Ich-AG (私会社)」がこうし た振興手段を補うものとする。 (e) 失業者の労働市場への再編入を、次のような数多くの方策によって支援する。 (i) 斡旋困難者や高齢失業者に対する実習時の社会編入補助金 (ii) 特別に該当する重度障害者に対する特別な社会編入補助金 (iii) 失業者や失業の恐れがある人々に対するトレーニング措置 (iv) 新規設立時の採用補助金並びに創業時の橋渡し金 (v) 雇用創出措置と構造適応措置 (vi) ミニジョブの振興 (f) 職業教育や継続教育の提供品質を向上させる。 (i) 職業教育を修了していない (つまり低熟練者に分類される)人々は、失業 率が平均以上に高く、明らかな増加をみせているので、これらの人々に特 別な助成策を講じる。 (ii) 失業者における専門能力の欠如は、従業員を募集している多くの企業が適 当な候補者を見つけられない主な原因となっている。失業者に対する的確 な継続教育措置によってこうした状況の改善を図る。 (g) 労働法を弾力的に運用する。 (i) 解雇保護法の取扱いが難しくなってきており、小規模事業ところでは部分

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的に採用の障害になっている。 (ii) パートタイム・期限設定法に基づく労働契約の期限設定の運用を弾力化し、 業界固有の必要性を考慮に入れることができるようにする。 (iii) 労働や社会福祉に関する数多くの法律には、特定の雇用人数を対象とする 規準値が含まれており、これを下回ると使用者に対する義務が生じるよう になっている。こうした基準値のいくつかはすでに撤廃・削除されている。 (h) 労働協約法の見直しをする。 (i) 労働協約は労働市場法規の中で重要な秩序政策上の機能を果たしている が、すべての労働協約が事業所の規則や取決めに十分な自由裁量の余地を 残せるわけではなくなっている。 (ii) 労働協約当事者が、事業所や実務に即した規定を横断的労働協約から引き 出せるようにするために、政府が進行役を務める意向である。例えば、賃 金の選択・補足の可能性及び労働協約上の例外的低報酬・開放条項を認め ることにしている。 【参考文献】

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