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橡創薬基盤技術の開発(トップ3)全部まとめた分.PDF

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創薬基盤技術の開発に関するシンポジウム

創薬研究の産業化における課題

只今ご紹介頂きました大滝でございます。今 まで諸先生方がより創薬の基盤技術の研究・開 発という観点からいろいろなお話がございま した。次の問題として、ではこのような開発・ 研究の技術を、どのように産業化に結びつける かの検討がヒト・ゲノム解析の修了宣言ととも に欧米だけではなく、東南アジアを含めて国を 巻き込んで、いわゆるバイオテクノロジー若し くはゲノムテクノロジーを応用した産業化ブ ームが起きているのはご存知のとおりでござい ます。このような中で、次から次へと研究若しく は技術開発の推進が続くわけですが、実際にそれ を創薬という観点から見るとどのように応用さ れていくのか、また、そこには問題点若しくは課 題はないのかという点を中心にお話したいと思 います。 スライド1をご覧下さい。 スライド1 ヒト遺伝子配列の解析結果を創薬にどのよ うに応用するかという議論は例えば、5年前に これほど詳細にできたかというと、勿論できな かったのは皆様ご存知のとおりであります。逆 に言いますとこの数年間の遺伝子解析結果の 進展により、創薬は従来とは完全に異なる流れ に入り、パラダイムシフトが起きているのです。 すなわち、メディシナル・ケミストリーを中心と した従来の創薬研究開発では、経験的なスクリー ニング技術を用いてリード化合物を探索してい ました。それが、現在ではヒトゲノム情報を使っ 株式会社バイオフロンティアパートナーズ 代表取締役社長

お お

た き

よ し

ひ ろ

   

創薬のパラダイムシフト

n 従来のMedicinal Chemistry中心の創薬研究からゲノム 情報に基づく創薬手法へ変化 n 創薬ターゲットの特定(標的遺伝子、標的蛋白質の探索・ 同定、受容体・リガンドの一義的関係)・・・ゲノムからの 情報が必須 n 薬理効果と副作用の比の拡大(SNPs解析による作用点 の同定と有効性の確認)

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て創薬していくという流れに変っています。これ がゲノム創薬と皆様に呼ばれているものです。従 来とは異なった創薬の流れが今始まっている のです。その中で起きているのは、先程からの お話にもありましたように、ゲノム解析結果を 利用することにより創薬のターゲットを特定 できる時代に入ったのです。これにより、標的 の遺伝子や標的のたんぱく質、特に創薬のター ゲットとして重要な受容体をゲノム情報から発 見することが可能になりつつあります。また、リ セプターやリガンドの1対1の対応も明確にな ってきます。今後は、このような情報なくして創 薬は考えられなくなると言われています。これは 皆様もまさに感じていらっしゃることだと思い ます。このゲノムからの情報がこれからの創薬に 必須になるのです。これに加えて先程からもお話 がございますように、テーラーメイド医療と言わ れておりますが、患者さん患者さん各人に合った 投薬や治療、そして、できるだけ副作用が少な く薬理効果の高い医薬品を各患者個人個人に 合わせて医薬品開発することがますますこれ から要求されて来るわけであります。このよう な流れの中で、ゲノムの情報が、創薬の中で重 要な役割を負って来ることは事実です。これは逆 に製薬メーカーにとって良いことなのか? 事実 良いこととも言えますが、実際の開発にあたって はかなり辛い戦いになるのではないかというこ とも示唆されるのではないかというふうに思い ます。 スライド2をご覧下さい。 スライド2 2000年の6月、クリントン大統領やブレア首 相、それにプラスしてベンター博士やコリンズ博 士が同席して、ヒトゲノムの塩基配列解析を終了 したという宣言を行いました。これは何を意味し ているのか? まさにヒトゲノムの塩基配列解析 の終了宣言とは言え、政府とはまったく関係のな い場に、アメリカ大統領そして英国の首相が同席 して宣言を行ったということは、まさにこの分 野がアメリカ若しくはイギリスにとって国家 戦略上非常に重要な分野であるということを 世界に高らかに宣言したということでもあり ます。まさにヒトの全遺伝子の解明に伴い、医 薬品や医療だけではなく、エレクトロニクスや ケミカルを含む幅広い産業分野に革命を起こ すということを理解していたからに他なりま せん。まさにゲノム解析の結果は産業政策上も 非常に重要だということを示しています。また、 先程もお話がありましたように、ヒトゲノムの解 析が終了することにより、まさにゲノムの研究が 研究のための研究ではなく、真に産業の進歩にリ ンクし得る国家としても戦略的なテーマになっ たということでもあります。それゆえに国家を巻 き込んだ知的財産権の争奪戦、特に米国は以前よ りこの知的財産権をどのように確保するか、そし て囲い込みをするかというために種々の知的財 産権確保策を着々と整備して来たという流れが あるのです。実際に創薬の場で使われるヒトゲノ ム情報が日本だけではなく世界中がその重要性 に気付きつつあり、今や世界中が競争相手になっ てしまったと言えます。今では開発競争というよ りも開発戦争とも言える状況になりつつありま す。このような中で日本では製薬メーカーはどう 対処したら良いのか? まさに、製薬メーカーだ けで対処できることには限界があるのです。日本 の国として戦略的開発体制を構築しないと、海外 から押し寄せる大波の中で無残にも流され、その 後には何も残らないというような結果になるの ではないか。それゆえに日本が強い分野をきちん と整理し、国家としても重点的に支援して、世界 と競争できる分野を構築していかないといけな いのです。個々の分野で非常に良い技術があった としても、トータルの創薬という観点で知的所有 権を海外企業に押さえられてしまうということ

   

国家戦略としてのゲノム

n ヒト全遺伝子の解明は医薬品や医療など幅広い産業 分野に革命を起こす n ゲノムの研究は今や研究のための研究ではなく、産業 振興に直接リンクしうる戦略的テーマになった n 国家を巻き込む知的財産権争奪戦 n 戦略的開発体制構築の必要性 n 日本が強い分野の整理と重点的支援

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も起きかねません。まさに、この点が常に懸念さ れる時期でもあるのです。 スライド3をご覧下さい。 スライド3 国家間の総力戦に突入したと言ってよいので はないかと思いますが、アメリカ政府を始めとし てヨーロッパ各国、そして日本、東南アジア、さ らに、台湾や韓国・中国もゲノム、ゲノムとその 重要性を言い始めております。このような中で、 日本はどうあるべきかをいろいろ議論している 中で、日本の場合、これから本当に産業発展を考 えた場合に、本当にこれでよいのだろうかという 疑問点が非常に多いのです。一例をあげますと、 研究開発の人材の問題があります。人は研究開発 において、非常に重要なポイントになって来るわ けですし、日本は決してアメリカに比べて人材の 層が厚いとは言まえせん。むしろ、人 材の層は薄 いと言ってもよい。数少ない優秀な人達をどのよ うに戦略的に配置し、創薬の研究・開発に結びつ くような、最先端の技術を世界に先駆けて研究・ 開発していくかについての戦略を真剣に立てな ければいけないのではないかと思います。また、 例えば薬効や毒性の問題、そして創薬はただ単に ちょっと化合物を作ればよいという話ではなく、 システマティックなアプローチを通したプロジ ェクトとして進めて行く必要があります。各々の 分野に必要な情報は非常に膨大なものとなりま す。その情報を上手く利用しながら最終的な医薬 品に結びつけるためには研 究・開発の流れの中 で、今何を研究しておくべきか、何を開発してお けばよいかを明確にして集中的に進めなければ なりまぜん。また、重要な技術の開発そのものも 製薬メーカーだけで考えても限界があります。国 を含めたトータルな研究開発システムを構築し、 その中で総合プロデューサーが実際にやるべき ことをいち早くつかみ、国家プロジェクト、企業 研究、バイオベンチャーによる開発というように 研究・開発の主体を割り振りし、総合的に開発し ていく流れを作らないといけないと思います。残 念ながら先程からのお話にもありますように、ヒ トの遺伝子の数は3万から4万と言われており ます。有限の遺伝子の中で特許・知的財産権を押 さえていくのは非常に難しくなります。実際には 国家間の総力戦になるのです。つまり、製薬メ ーカーさんだけが頑張れば良いということで はなく、全国に張り巡らせたネットワークをフ ルに使って組織的に研究推進を進めないと、と ても世界と競争はできません。一方、従来より、 日本の強い分野としてエレクトロニクス・ロボ ティクス・メカトロニクス、そしてナノテクノロ ジーなどがあるわけですが、これらの技術が残念 ながらバイオテクノロジー若しくはゲノムの分 野にはあまり波及して来なかった。すなわち、こ れらの技術が日本のバイオテクノロジーの研究 開発にはあまに寄与して来なかったというのも 事実です。今後早急に、これらの技術を巻き込ん で世界で最初の技術・開発を行う分野を少しずつ 広げていかないと、世界と競争することはできま せん。同時にバイオベンチャー企業を育成し、か つそのバイオベンチャーが創薬過程の重要な研 究・開発部分を担い、かつ、大企業もそのバイオ ベンチャー企業の技術を上手く活用しないと、ゲ ノム産業の振興は遅々として進まないというこ とになるのでははないかと思います。大阪府の場 合、彩都でライフサイエンス分野のサイエンス・ パークを造成中であり、今後、インキュベーショ ンセンターを建築予定ということも含め、場所や 人材の問題、そして関西地区のバイオ情報ハイウ ェイ計画が進んでいます。これらを見ますと、関 東よりもむしろ大阪圈の方が確かに創薬に関し て進んでいるのではないかと考えております。 スライド4をご覧下さい。 先程お話しいたしましたように、現在、テーラ ーメイド医療と呼ばれておりますように、個々の

国 家 間 総 力 戦 に 突 入 し た

      

ゲ ノ ム 産 業 振 興

n研究人材、施設の戦略的配置 n戦略司令部の設置 n総合プロデューサーの任命 n全国に張り巡らせたネットワークによるシステマテックな  研究推進 n日本が強いエレクトロニクス、ロボティクス、メカトロニクス 企業の巻き込み nバイオベンチャー企業の育成と創薬過程への活用

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スライド4 スライド5 患者さんにあった治療法開発という方向を世界各 国が目指しております。これを行うためには多くの 分野の情報を蓄積し、駆使する必要性がますます明 確になってきています。ヒト・ゲノムの塩基配列解 析は、一応去年終わったと言われております。もち ろん100%完全に終わったということではありませ ん。今後は遺伝子の機能解析が中心となります。ま た、遺伝子発現解析、他の動物・植物のゲノム情報 を比較する比較ゲノム学、SNPs解析、プロテオ ミックス、蛋白質−蛋白質相互作用や蛋白質−DN A相互作用、そして、バイオインフォマティクスな どの要素技術の開発がこの数年間進められてきま した。これからはこのような技術を上手く利用しな がら、日本独自の創薬に結びつける流れを作らない と、世界と競争することはできないでしょう。 スライド5をご覧下さい。 先程言いましたテーラーメイド医療を目指した 創薬の流れの中で、ヒト・ゲノムの塩基配列の解析 は終わったわけですが、図で明らかなとおり、初

   

  医 療 の 将 来 像 と 生 命 科 学

ゲノム機能学 遺伝子発現解析 比較ゲノム学 遺伝子多型解析 プロテオミックス 細胞生物学 個体の生理学 バイオインフォマティクス オーダーメード医療 テーラーメード医療 蛋白質間相互作用 バ イ オ テ ク ノ ロ ジ ー の 医 療 へ の 応 用 に 関 す る 基 礎 技 術 群 の 今 後 の 方 向 性 基礎       応用       実用化    ゲノム解析       配列情報      機能解析 染色体地図  遺伝子発現解析 ゲノム創薬 医療 オーダーメード医療 テーラーメード医療 プロテオーム解析 (蛋白質構造・機能) 単一蛋白質 蛋白質ー蛋白質相互作用 DNAチップ プロテインチップ SNPs DNA-DNA相互作用 遺伝子多型解析 DNA診断 培養細胞 胚細胞 組織工学 再生医療 コンビケム HTS 実験動物 バイオ インフォマティクス 出所:社団法人発明協会

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期の段階が終わったにすぎません。これから遺伝 子の機能解析、すわなち、数々の要素技術を駆使 して今後機能解析を進めていくわけです。その中 では、蛋白質解析を始めとする周辺技術も同時に 開発を進めて行かない限り最終目標であるテー ラーメイド医療には到達しないわけです。では一 体このような要素技術の開発を日本の中では誰が 進めていくのか。それを最終的にゲノム創薬に結 びつけるためには、誰がその役目を果たすのかと いうことは非常に重要になポイントになります。 スライド6をご覧下さい。 スライド6 医薬品企業は最先端で研究開発を続けていま すが、ゲノム創薬に取り組もうとしますと、非常 に数多くの要素技術をシステマティックに使って いかないと創薬ができないということになりつつ あります。こうした中で、ヒト・ゲノムの塩基配列 解析結果が出てきたのは製薬メーカーにとって幸 福であったのか不幸であったのかは非常に悩む ところでしょう。もちろん、不幸だと言ってもし かたないのですが、それでもやらなければならな い。とは言え、製薬メーカー1社で実施できるこ とは既に限界に来ています。例えば、データベー ス構築からすべてを製薬メーカーが1社で構築 しようとしても非常に効率が悪い。費用対効果か ら考えても、1社ではやり切れないことが次々と 起きてきているのです。それに加え、医薬品開発 に特異的な問題とも言えますが、10年から10数年 間にわたる長期の開発期間の問題があります。探 索でリードコンパウンドが発見できたとしても、 その後の開発期間が劇的に短くなるということ は少ないのです。薬の開発期間の短縮は今後、 種々の技術開発が進んでも本当に劇的に短くな るかというと、実際には非常に時間がかかると思 います。これらも含め、製薬企業だけに何とかし ろという時代ではもうなくなって来ているので はないかと思います。このような状況への対処 法としては、 技術導入ももちろん一つの戦略と なりますし、バイオベンチャー企業に由来する技 術を活用することも一つの答えとなります。 スライド7をご覧下さい。 今後3万若しくは4万と言われております。特 スライド7 医 薬 企 業 の ゲ ノ ム 創 薬 へ の 取 り 組 み     ・限界(製薬企業1社で実施できることには限界がある)   ・効率性(費用対効果)   ・長期の開発期間への対応   ・技術導入戦略の必要性   ・バイオベンチャー企業の活用

    

目標とするビジネスの明確化

特定遺伝子 試薬 診断 遺伝子治療 ア ン チ セ ン ス 医 薬 リボザイム医薬 ペ プ チ ド ・ 蛋 白 医 薬 蛋白質高次構造 低分子医薬 SNPs (研 究 試 薬 ,プ ロ ー ブ な ど ) (有 効 性 お よ び DDSに 依 存 ) (反 応 速 度 お よ び DDSに 依 存 ) (有 効 性 お よ び 安 定 性 に 依 存 ) (デ ー タ ベ ー ス 商 売 が 可 能 か ) (12∼ 15年 の 開 発 期 間 ) (テーラーメイド医療の進捗に依存 ) (DNAチップ ,蛋 白 チ ッ プ な ど) (ベ ク タ ー 系 開 発 に 依 存 )

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定遺伝子の機能が順次解明されてくるわけです が、ビジネスとして考える際にどの分野の製品開 発を狙うのかを明確にしていかなければなりま せん。つまり、遺伝子によっては直接遺伝子治療 に利用できるものもありますし、アンチセンスの RNAとかリボザイムをデザインして医薬品へ と導びく戦略もたてられます。また、この遺伝子 の産物でありますペプタイド或いはたんぱく質、 或いはその抗体を抗体医薬として開発する場合 も考えられます。また、低分子医薬をドラッグデ ザインするという流れに進む場合もあるでしょ う。このように特定の遺伝子をどのような分野で ビジネス化していくかを、製薬メーカーとして絞 っていかなければならないのです。その流れの中 で必要なデータ、或いは技術を誰が開発するかも 同時に考えなければいけない。これが基盤技術開 発で一番重要なポイントになってくるのです。 スライド8をご覧下さい。 スライド8 今後日本の製薬産業をいかに支援するか? こ れを真剣に考えなければいけない時期に来てい るのではないかと考えております。この一つとし てゲノム創薬のためのインフラ構築が挙げられ ます。そのためには、迅速で、使い勝手の良いデ ータベースを構築し、そのデータベースを上手く 使って、創薬に結びつけるエキスパートシステム を作っていかなければならないでしょう。そのた めには国・大学がこの分野をちゃんと理解してサ ポートしていかなければいけません。また、日本 の中でも、バイオベンチャーが今続々と設立され つつあります。これらのベンチャーの中には特異 的な技術を引っさげて製薬産業と共同研究・開発 を進める例が去年から今年にかけて日本の中で も起きて来ました。まさに川下及び川上両面から 日本の製薬メーカーが世界の製薬メーカーと競 争していくために必要なインフラの整備を進め ていかないとゲノム情報を用いた産業化はある 程度限られたものにしかならないと考えます。こ の流れをいかに作っていくか日本の製薬産業が 世界と競争していけるかどうかのポイントにな るのではないかと考えております。 以上です。 有難うございました。

製薬業界からのゲノム創薬への期待

ご紹介有難うございます。製薬協・研究開発委 員会の委員長をしております奥田でございます。 先程お話をされました大滝先生のお話に、私は 全て賛成する者であります。まさに創薬開発と いうものが全世界レベルで同時にやられる時 代になったこと、それからICH活動の進展に よりまして、医薬品の承認許可については国境 がなくなりつつあるという時代を迎えて、我々製 薬企業は非常に激しい競争の真っ只中に入って います。その中で大滝先生のような大きな絵は私 にはまだ書けませんが、一つの企業でできない研 究環境を作るために非力な研究開発委員会が2 ∼3年の間にどういうことをしてきたかという ことをお話をして、それから基盤研究所に我々が 今の段階で望んでいることをお話したいと思い ます。 スライド1をご覧下さい。 大滝先生は製薬企業だけに任せておくのは 気の毒だというような論調でお話をされたわ けですが、さればと言って製薬企業がその真只 中で頑張らなければいけない。自動車や電気と か、現在の日本を背負っている基幹産業があり ますが、これがいつまでも日本を養ってくれると は限らないという観点から見れば、我々が属する 日本製薬工業協 会 研究開発委員長 委員長

お く

ひ で

製 薬 産 業 を い か に 支 援 す る か

製薬産業 バイオベンチャー企業 ゲノム創薬インフラ(国、大学など)

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スライド1 ライフサイエンス、その中のコアである製薬企業 がよほど頑張らなければいけないという気概に も燃えております。そういう考え方の元で、私達 がどうしてきたかということをこれから簡単に お話したいと思います。今日の話のポイントはこ の三つでございます。ゲノム創薬に対して我々が どうして来たかということ、技術移転のシステム 構築が必要であるということを訴えたいという こと、最後に基盤研に対する期待をお話したいと 思います。 スライド2をご覧下さい。 スライド2 ゲノム創薬に対する取り組みとしましては、ミ レニアムプロジェクトに完全に協力する形で、そ こに書いてありますように、日本人の薬物動態関 連遺伝子多型に関する研究、それからタンパク質 構造解析に関する研究、この二つをコンソーシア ムとして立ちあげました。今後どうしたらいいの かと考えまして、取りあえずまだ完全に具体的に 詰まった話ではございませんが、下の2点を考え ております。 スライド3をご覧下さい。 スライド3 日本人の薬物動態関連遺伝子多型に関する研 究といたしまして、製薬協に加盟している企業の 中から43社が参加しまして、3年間で10億円のお 金を出資してそういうコンソーシアムを作るこ とにしました。これは完全にミレニアムプロジェ クトに製薬企業として協力をするという考えの もとに、お金を出しました企業に、独占的な権利 というのは最初から考えていません。このコンソ ーシアムから生み出された情報は全て公開する つもりでございます。そのコンソーシアムで三つ のテーマ・目的・仕事を作っております。一つは 試料等とドネーションの標準的手法の確立、薬物 動態関連遺伝子多型の頻度解析、薬物動態関連遺 伝子の機能解析、この三つをやりたいと考えてお ります。 スライド4をご覧下さい。 PSC(ファルマ・スニップ・コンソーシアム) の研究体制です。左上のドネーションシステムの 確立ということでございます。これは東京女子 医科大学にお世話になりまして、そこで製薬協 のホームページ或いは一部のマスコミで募集 をしましたボランティア1,000名余りを募りま して、そこで採血します。もちろんインフォー ムドコンセントを取ったうえで採血し、それから 多少の検査をしました。それからそこでDNAサ ンプルを作って頂きました。これはPSCの方か ら東京女子医科大学に作業については委託をい

ゲノム創薬に対する取り組み

(製薬協 研究開発委員会) • 現 在 ま で の 活 動 – 日 本 人 の 薬 物 動 態 関 連 遺 伝 子 多 型 に 関 す る 研 究 (ファルマ スニップ コンソーシアム) – タ ン パ ク 質 構 造 解 析 の 研 究 ( 蛋 白 質 構 造 解 析 コンソーシアム) • 今 後 の 課 題 – プロテオームファクトリー – 安 全 性 予 測 (トキシコゲノミクス)

概要

• ゲノム創薬に対する製薬協の取り組 み • 技術移転(産官学連携)のシステム 構築の必要性 • 基盤研に対する期待

日 本 人 の 薬 物 動 態 関 連

遺 伝 子 多 型 に 関 す る 研 究

1.試 料 等 ド ネ ー シ ョ ン の 標 準 的 手 法 の 確 立 2.薬 物 動 態 関 連 遺 伝 子 多 型 の 頻 度 解 析 3.薬 物 動 態 関 連 遺 伝 子 の 機 能 解 析 参 加 企 業  43社 (製 薬 協 加 盟 企 業 ) 期 間     3年間(平成12年 度 ∼ 平 成 14年 度 ) 費 用     3年間で10億円 ファルマ スニップ  コンソーシアム : P S C

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スライド4 たしまして、ボランティア募集については我々が 主体的にやったと思います。現在、1,000人のボ ランティアの採血は完全に終わりまして、DNA 調製も大部分できつつあるという状態でござい ます。それから先程お話になりました東京工大の 石川先生の方へ、これは企業の研究者と先生との 間で共同研究という形を取っておりますが、機能 解析を行っています。右上の理化学研究所の方に これは委託をしまして、スニップの頻度解析をお 願いしております。それからまだどこに頼むかと いう話は決まっていませんが、そこでPSCが 取ったデータについては、どこかの適当な受託 機関に委託をしてそれをデータベース化した いと考えております。それから、これも先程お話 されました国衛研の先生の所と薬剤反応性につ いては連携を取りながら作業を進めていくとい う形で行っております。 スライド5をご覧下さい。 それからまだまだ機能解析をするべき時期で あって、次の構造解析などに移るのは早いという ことをおっしゃる先生もおられますが、研究・開 発をするための環境作りを考える立場としまし ては、やはりタンパク質の構造解析をする手段を 製薬企業が持つ必要があると考えまして、播磨テ クノポリスにあります大型放射光施設スプリン スライド5 グ8、ここにたまたま測定ビームラインを増設す るという話がありましたので、そこに乗せて頂き まして22社で建設費用5億5千万円、それから毎 年の運営費1億円が必要ですが、そういうコンソ ーシアムを製薬協加盟会社22社で先月6月にコ ンソーシアムを立ちあげました。従って、ここは 参加企業が平等に測定時間を分け合って、自社の 興味のあるタンパク質構造解析をその測定装置 を使って測定する環境を作りました。それから、 テクノポリス自体は国立の巨大研究所でござい ますので、宇宙開発事業団とかいろいろなところ と深い関係がございます。従って、将来的には宇 宙開発事業団の宇宙船の中でタンパクの結晶化 をするようなチャンスにまで広がっていくとい うような夢を持っています。 東 京 女 子 医 科 大 学 膠 原 病 リ ウ マ チ 痛 風 セ ン タ ー ・採血、アンケート調査 ・DNA調製 倫 理 審 査 委 員 会

PSC

・ボランティア募集   ・機能解析 理 化 学 研 究 所 横 浜 研 究 所 遺 伝 子 多 型 研 究 セ ン タ ー ・S N P頻 度 解 析 ミレニアムプロジェクト ( 薬 剤 反 応 性 ) 委託 東 京 工 業 大 学 大 学 院 生 命 理 工 学 研 究 所 ・ 機 能 解 析 委 託 、 受 託 機 関 ( 検 討 中 ) ・データベース化 共同研究 倫 理 審 査 委 員 会 倫 理 審 査 委 員 会 委 託 連携

研 究 体 制

大 型 放 射 光 施 設 Spring- 8に 創 薬 産 業 ビ ー ム ラ イン(専用ビームライン)を建設し、参加企業で 共 同 利 用 将 来 的 に は 、 宇 宙 開 発 事 業 団 (結晶化)や 理 化 学 研 究 所 (N M R 等 )との 共 同 研 究

参 加 企 業   22社 ( 製 薬 協 加 盟 企 業 ) 建 設 費 用   5.5 億 円 年 間 維 持 費 1 億 円 蛋白質構造解析コンソーシアム タンパク質構造解析

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スライド6をご覧下さい。 スライド6 それからこれは今後のお話でありまして、まだ 完全に私達委員会の中で結論が出た話でもあり ませんし、具体的な話はまだ何もないわけであり ますが、構造解析の次にやるべき我々のテーマと してこんなことを考えております。 スライド7をご覧下さい。 これも夢でありますが、プロテオームをやって いく過程でこういう一連の作業を、できればゲノ ム解析のところで、日本の偉い先生方が自らゲノ ム解析をこつこつとやられて、非常にスピードが 遅かったという反省も踏まえて、この一連の作業 をファクトリー化、工場化されたようなシステム でできはしないかというようなことも考えてお ります。 スライド7 スライド8 スライド8をご覧下さい。 それから私の前に先生方がいろいろとお話を されたわけでございますが、その中でも同じよう な話がありまして、我々は研究・開発の初期の段 階で安全性に問題ありという形でいろいろな化 合物をドロップアウトさせております。その中に は非常に優れた医薬品になる可能性を持ったも のもまだ残っているということも考えまして、初 期の段階で安全性を予測する方法を何か考えら れないか。そういう意味で安全性を予測するため 機能ゲノム科学の推進 • プロテオミクス – タンパク質プロファイリング – (2次元電気泳動・質量分析・2次元HPLC 等) – タンパク質間相互作用 – (酵母2ハイブリッドシステム・プロテインチップ等) • トランスクリプトーム解析 – 転写された遺伝子の一群のプロファイリング • バイオインフォマティクス – 遺伝子構造の予測・アノテーション情報の付加 – 他生物との相同性検索などによる構造・機能予測 – タンパク質立体構造予測・化合物分子設計 – パスウェイの構築 組織採取・組織培養 ↓ タンパク質可溶化 タンパク質抽出液調製 固定化pH勾配 等電点電気泳動   ↓ SDS-PAGE   ↓ 銀染色,CBB 染色 二次元電気泳動 画像読みとり    ↓ スポット検出     ↓ スポット・マッチング    ↓ ディファレンシャル解析 酵素消化 プロテインチップ   ↓ ペプチドフィンガープリント   ↓ ペプチドシーケンス 画像処理 データベース検索 文献検索 モチーフ分析 相互作用分析 パスウエイ分析 バイオインフォマティクス 同定および機能解析 質量分析・配列解析 デ ー タ ベ ー ス 組織等 試料

プロテオーム:シ ス テ ム 解 析 の 流 れ の 1例

9 安全性予測(トキシコゲノミクス) 1.研究開発の初期段階で安全性を予測する 方法の開発 2. 創薬基盤として,開発候補化合物の安全性 を予測するためのデータベースを構築 3. In silico での化合物の安全性予測

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のデータベースを何か考えられないか。それから インシリコで化合物の安全性予測を現在のゲノ ムに関する知識を用いて予測ができないか。こう いうことも考えております。 スライド9をご覧下さい。 スライド9 次は技術移転の方に話は移ります。これは特に 意味はなく、アメリカと日本でTLO関係につい てはこれ程の差があると知って頂きたいための データでございます。 スライド10をご覧下さい。 スライド10 先程大滝先生もお話されましたように、一つの 企業で自社が必要とする創薬シーズを全て賄う ということはほとんど不可能でございますから、 やはり大学或いは国研のアカデミアの先生から 寄せられる知見、それからベンチャー企業が持っ ているいろいろなシーズ。そういうものを上手に 取りあげて製薬企業が創薬していくというプロ セスが必要だと思います。先程のスライドでもお 示ししましたように、日本ではまだまだベンチャ ーというものは未成熟でございます。従って、当 面は共同研究を企業と大学或いは国研の先生方、 それ以外の方と共同研究をしながらシーズをひ ろっていくという作業を取らなければいけない。 そういう意味でインキュベーションをする何ら かの手立てが必要だというように考えておりま す。 スライド11をご覧下さい。 スライド11 これが最後のスライドです。そういうことも含 めて我々は基盤研についてこのスライドで示し ましたようなことを期待したいというように思 っております。最初はデータベースの話でござい ますが、これは先程の安全性予測のためのデータ ベースという意味合いもございますが、本日お話 になりました殆どの先生方がデータベースの重 要性を訴えておられます。これはデータベースの 必要性・重要性ということは皆様はご存知なので すが、なかなかそれを作るための予算措置が取ら れていない。もちろん私もデータベースというも のが必要だと思いますが、やはりこの部分はひ弱 な製薬企業に任せるのではなく、国家プロジェク トという形で一つのまとまったデータベースを 是非作って頂きたい。それから作るだけではなく、 データベースというのはメンテナンスとアップ デートが必要でございますから、それに必要なラ ンニングコストは是非そちらの方で面倒を見て 頂きたいというように思います。それから2番目 はわがままな希望かもしれませんが、1社だけの 研究支援でできないということは大滝先生が言 技術移転の日本の現状 (日米比較) (日本は現状、米国は1999 年までの累 積 ) 日本 米国 大学発ベンチャー企業数 128 2,256 技術移転機関(TLO)数 20 139 TLO を通じた技術移転件数 69 15,480

産官学連携システム

大学 ・ 国 研 ︵ ア カ デ ミ ア ︶ 製薬企業 TLO 共同研究 ベンチャー企業 発明/技術など 産 業 化 インキュベーション

基盤研に期待すること

• 医 薬 開 発 研 究 の 基 盤 研 究 と 創 薬 に 必 要 なData Base の 構 築 (Ex. 医 薬 品 の 安 全 性 ・有 効 性 予 測 の た め の D B) • 研 究 資 源 の 研 究 と 研 究 資 源 の 企 業 へ の 供 給 • 研 究 環 境 の 提 供 産 官 学 の 共 同 研 究 や ヘ ゙ ン チ ャ ー 企 業 の た め の 研 究 施 設 の 提 供 • 医 療 ニ ー ズ や 産 業 界 の ニ ー ズ を 考 慮 し た 外 部 評 価 者 を 加 え た 厳 格 な 研 究 評 価

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われたとおりでございますから、その分について もお考え頂きたいという希望でございます。それ からこれは基盤研の方の構想の中に入っており ますが、産官学の共同研究やベンチャー企業が研 究をするための施設の提供をして欲しい。是非そ ういう構想は実現をして欲しいというように思 います。最後に、医療ニーズや産業界のニーズを 考慮した外部評価者を加えた厳格な研究評価。こ れも目新しいことではなく、過去いろいろな国か らの研究費が出て研究されたものもたくさんあ りますが、得てして内部評価で終わっていて社会 のために本当に役に立ったかという観点からの 評価というのはそんなに多くないということの 反省と批判を込めての注文でございます。 以上でございます。

総 合 討 論

写真 (堀先生) それでは総合討論に入らせて頂きたいと思い ます。 時間がおしておりますので、演者の先生方には できるだけ効率よくいろいろなご意見をお伺い したいと思います。 本日は、ゲノム創薬という大きなテーマの下に いろいろな角度から解説をして頂いたわけです けれども、フロアの方から幾つか質問が来ており ます。まずそれをご紹介してお答えを頂きたいと 思います。 市川先生に、例として示された医薬品はTN Fの抗体やIC阻害薬のリガンド因子やリセ プターに関するものであったが、シグナル伝達 因子そのものをターゲットにすることも今後 考えられるのでしょうか。クロストーク、重複 等、複雑に関与しあっているため、伝達因子その ものはターゲットになりにくいと思われるが、市 川教授はどのようにお考えでしょうかというご 質問でございますが、いかがでございますでしょ うか。 (市川先生) 大変難しい質問です。この問題そのものはこれ から作る基盤研究所で一生懸命考えなければな らないものであろうと思うのです。私の感じだけ で申しあげますと、無論、このお書きになられた 方のご意見に私も賛成なのですけれども、ただ、 クロストーク、重複等、複雑に関与しているけれ ども、たぶんシグナル因子を標的とする薬という のは、開発は可能であろうというように思ってお ります。それはどういうことが前提として必要か ということになると、いろいろな考え方、一つは 非常にミクロなレベルでのシグナル因子の相互 作用というものが、もっともっとミクロで解析さ れなければいけない、要するに蛋白質レベルでお 互い同士の、例えば、AとBとCという繋がりが あるとしたら、A、Bの繋がりと、同時に横から XとYが入ってきた時に、その蛋白とがどういう 形で繋がっていくのかというようなことがまだ 分っていないわけで、クロストークというのは物 質レベルで動くときと蛋白としてのシグナルが 流れていくときという場合には、非常にミクロな 蛋白レベルの解析、これは今盛んに行われている プロテオミクスをはじめとして行われている成 果を利用すればやがては可能になるだろうとい うことです。実際問題、薬としては低分子物質を 考えなければならない。最初はペプチドが考えら れて、次に低分子にもっていくというような方向 で可能ではないかと思います。それからもう一点 は、もう少しマクロなレベルではそういう因子が 一体どこに存在 しているかという細胞内での 局在性、或いはその局在性にしてもその環境で すね、それをもう少し解析することによって、例 えば、それは膜の周辺になるのか膜の中に埋もっ ているのか、或いは他のどういうオルガネラにあ るのかという知識を得ることが必要であろうと 思います。もちろんその時には、そういう物質の 量的なコンテントも一つのファクターになって くるかと思います。もう一点は、それぞれのシグ

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ナル因子が全部の細胞が同等に持っているわけ ではないので、その辺を明快に解析することが必 要であって、それが分れば、次にターゲッティン グその他で可能性はあるのではないかと思いま す。 (堀先生) 有難うございます。非常に簡潔にお答え頂いた のですけれども、私から質問させて頂きたいと思 います。今まで開発されている多くの薬剤は、受 容体の拮抗薬というのが非常に多いです。いわゆ るホルモンというのは、足らないときに補充する というホルモン療法はもちろんあるのですけれ ども、多くの病態ではむしろ、シグナルの刺激が 過剰であって、それを押さえることによって病態、 特に慢性病態を改善しようとする試みが多いと 思います。しかし、細胞内のシグナル伝達を押さ えますと、数少ないシグナル伝達がクロストーク するために、シグナル伝達をコントロールするの がむずかしく非常に薬になりにくいのではない かなと思います。それよりも機能がハッキリさせ ている受容体をターゲットにする方がやはり理 に合っているのかなというクラシックな考え方 を持っているのですが、何かそれについてコメン トございますでしょうか。 (市川先生) 先生のお話はそのとおりだと思います。私は 今、この質問を書かれた方は多分そこは十分に考 えられている前提で書かれたのかなと思います けれども、第一はそこだと思います。それは一番 特異性がハッキリしておりますので、量も質も認 識できれば一緒ですから、それが第一だろうとい うふうに思っております。 (堀先生) それから、もう一点、どなたでも結構ですけれ ども、今後、例えば心臓だけに効く、まあコンデ ィショナルノックアウトのようにですね、ある臓 器に、非常にスペシフィックに効くというような 考えでの創薬というのはあまり現実的ではない のでしょうか。リセプターがある臓器にだけ発現 している場合はそれでいいと思うのですけれど も、多くの場合にはかなりオーバーラップがある と思いますが、臓器にターゲットをあてたような 治療という戦略はないのでしょうか。もしどなた か。はい、お願いします。 (石川先生) 例えば、肝臓特異的ターゲティングだったらア シアログリカン受容体をターゲットとすれば、ド ラッグのデリバリーができますし、それは実現可 能だと思います。 (堀先生) そういうコンセプトで開発された、或いは開発 中というものはあるのでしょうか。今後の問題な のでしょうか。 (増保先生) 今、石川先生が言ったそのままを例に取ると、 例えば、インターフェロンとアルブミンを結合さ せた分子というのは、もう申請されて認可された というような話、日本じゃないですけれどもそう いう話を聞きましたけれども、アルブミンの受容 体というのも肝臓にありますね、という意味で、 きっとそのアルブミンをつけるという試みとい うのは、半減期を延ばすだけではなくて、ターゲ ティングという意味も含むのではないでしょう か。 (堀先生) 有難うございます。それからもう一つのご質問 は、加藤先生、まあ小澤先生も同じミレニアムの プロジェクトで共通しておられますので、いずれ の先生にお答え頂いても結構なのですけれども、 ゲノムワイドなスキャニングをこれから進めて いくということであったが、ゲノムワイドにはか なりの量のデータ解析が必要なため、すぐに結果 はでてこないと思われます。何か、解析方法にお 考えがあるのでしょうかというご質問ですが。 (加藤先生) このゲノムワイドアプローチというのは、ミレ ニアムプロジェクトのスタートのときから必要 性が指摘されていたのですけれども、今年の四月 に明確な計画が立てられてこれをスタートする ようにということになりました。これに対する答 えは、かなり、スケジュール的には明確になって おります。どうするかといいますと、理化研と癌 センターにタイピングセンターがこの秋開業す るわけです。その場合に、新聞でも報道されてい ますように、このタイピングセンターでは千検体 をゲノムワイドにスキャンニングするというこ

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とが決まっております。私どもは高血圧ですが、 その場合は、200検体をこのタイピングセンター に送るということが決まっております。この200 検体は、高血圧チーム12施設が加わっているので すが、この12施設が手分けをして200検体をタイ ピングセンターに送る。この場合は、一定の高血 圧の診断基準に合う検体に絞って200検体を送る わけです。そうしますと、大体、秋からスタート して、これは中村 祐輔先生のインベーダ法でや るので、非常に早く解析結果が出るといわれてい ます。恐らく来年の3月くらいまでには解析が終 わって、解析結果が各チームに送られてくる。そ れで各チームが手分けして臨床情報等をつき合 わせて、高血圧と関係があると思われるスニップ を探し出して、そのうちのいくつかが見つかれ ば、それを我々が持っている何千検体というもの にあてて、それを検証するという具体的な方法は 決まっております。ただ、それがスケジュールど おり行くかどうか、これはやってみないと分らな いと考えています。 (堀先生) 恐らく、ご質問のニュアンスも、私なりに解 釈するとゲノムワイドにスニップスを解析する ということは、一つのマーカーとして解析すると いう意味と、例えば、関連遺伝子が含まれる近傍 を解析して、ファンクションと結びつけるように ターゲットをフォーカスィングするような方法 がいいのかというご質問ではないかなと思うの ですが。 (加藤先生) ですから候補遺伝子をやる場合は今言われた 前半の部分だと思うのです。これは各センターで 我々が進めていくのですが、テクニカルにはかな り実現はできると思うのです。ゲノムワイドの場 合は、とにかく全部の遺伝子について、何百、 何千検体についてタイピングセンターがやりま すので、これはお金と時間が非常にかかるもので すが、それだけのお金を、年間10億円をかけてタ イピングセンターがかなり早くやってくれると いうことになるのです。そのタイピングセンター には臨床情報は送りませんので、解析結果だけが 返ってくるということで、それをいかに早く我々 が多数の臨床情報と結びつけるかというところ が、まだ有効な方法を模索しているところです。 (堀先生) 小澤先生何かコメントございませんか。 (小澤先生) 私達の薬剤反応性のほうは、ゲノムワイドであ る必要があるかどうかということで議論があっ たのですけれども、当座はターゲットジーンアプ ローチを主体にしてやっていくべきであろう。 (堀先生) その方が効率がいいのですね。 (小澤先生) 効率がいいでしょう。私達は遺伝子の研究とは 別に実際の代謝動態の面から、インビトロの系を 用いて、なるべく上手く組み合わせてビボを反映 させたいと思っています。そのような研究も交ぜ ながらターゲットの遺伝子の寄与を考えながら やりたいと思っているわけです。そうすれば、効 率よく研究が進められると思っております。「ゲ ノムワイド」の実態がわかる前は、ジーンチップ で、これはアフメトリックスですけれども、ヒュ ースニップ(HuSNP)というのがあるのです。 これはランダムに、今までコケージャンを中心に して見つけられてきたものがのせられています。 そういうことを実際にやったことのある研究員 がチーム内にいるものですから、そういうことをや らなくてはいけないのかなと考えました。 (堀先生) それから先生にもう一つお聞きしたかったの は、薬剤反応性というのは、先生の場合には恐ら く血中濃度ということだけにフェノタイプを限 られているような気がしたのですけれども、実際、 臨床では、薬剤反応性というともっといろんなフ ェノタイプがあります。例えば、心不全の患者さ んにβブロッカーを使うと、それが効く人と効か ない人がいる。そういう反応は必ずしも血中濃度 ではない可能性が随分高いのですが、そういうも のを今後どのようにアプローチしていかれるの でしょうか。 (小澤先生) それは私どもの一番最初の方のスライドで、フ ァーマコダイナミックスのところに範疇に入る べきことだろうと思います。今取り急ぎ考えてい るのは心不全というか、抗不整脈薬でNaチャネ

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ルのなかで特に心臓に発現しているもの、ファイ ブとシックスだと思うのですけれども、それに特 化してスニップの探索的研究を進めたらどうだ ろうというように考えております。 (堀先生) 有難うございました。 それから、増保先生、あの完全長cDNA、こ れは日本のお家芸といいますか、現在、8,000ク ローン位が公開されているわけですか、それは 具体的にはどのように利用されて、例えば創薬 に、どういうインパクトを与えているのでしょう か。 (増保先生) 8,000クローンという形で公開しているわけで すけれども、そのうちの6,000は前もって特許出 願をしているのです。その特許が成立するかどう かというのはちょっと置きまして、一応特許に対 して手を打っているので是非使って欲しいとい うようには思っています。現在までのところ 5,000∼6,000のなかで、一緒に共同研究をした、 或いは特許に加えて共願にしたといった類のも のというのは大体100クローンしかないのです。 100クローンというのが少ないのか多いのかよく 分らないのですけれども、製薬企業の方が選んだ 遺伝子の数というのは5,000∼6,000から100とい うところです。 (堀先生) そういたしますと、完全長cDNAの場合には 機能解析をしなくても特許の対象になると考え ていますか。 (増保先生) それはその時々の技術レベルによって審査官 が違った決定をくだすと思うのですけれども、い つも問題になるのですけれども、日本とアメリカ の特許制度というのはそういった部分で大きな 違いが相変わらずあると思うのです。ですから、 私達のところでは基本的にアメリカの出願は先 にやっているということです。 (堀先生) 今後、そういうものから全て蛋白を作っていっ て、片っ端からこれは何をしているものかという ようなそういう銃弾爆撃的な解析が行われてい くというようにお考えですか。 (増保先生) 一応、本年度からだと思いますけれども、蛋白 質をゲートウェイというベクター系に入れて作 っているということをヘリックス研ではないの ですけれども、国のプロジェクトとして進められ ています。ですから、その蛋白発現については、 今後進んでいくというように考えています。 (堀先生) 有難うございます。石川先生は、ファイザーか ら行かれて、特に産・官・学の協調というような ことを最初に指摘されたのですが、本日、大滝さ んも実はそのようなお話で、我が国でニーズが高 いことはよく分ったのですが、そういう連携人材 を育てていくために、まず何をしなければいけな いかということをお考えがございましたら。 (石川先生) 私、たまたま縁があって昨年6月に東工大に 移りましたけれども、その時に私がアピールした ことは何かといいますと、産業界に役に立つ人材 を育成するということでした。それはファイザー にいたということもありますし、それと癌センタ ーにいた(米国のM.D.アンダーソン)癌センタ ーにいた経験に基づくものです。特にM.D.アン ダーソン癌センターにいた時にはアデノウイル スにP53の野生系をいれて、そして肺癌に臨床応 用するという研究を見ておりましたので、いかに 早く大学及びNIHがその研究を押し進めるか というのを目の前で見ていました。それと同時 に、M.D.アンダ−ソン癌センターでは、毎日、 病院のレストランで患者さんと一緒に食事をし ています。そうしますと、基礎研究者がいくら奇 麗事を言ったってダメであって、癌患者さんを治 すことの重要性を体験しました。髪の毛も落ちて 真っ白な顔をして、それでも食事をしている。点 滴をしながらでも食事をしている。そういう患者 さんをみたときに、我々がいかに無力だというの を知って、それで頭をガァーンと殴られたような 感じがしました。それでファイザーという製薬企 業に行って、よし、薬を作ろうと決心しました。 薬を作っている間に今度はいろいろな問題が出 てきて、技術移転の問題にも出くわしましたし、 それと同時に、今度は2010年から2020年に創薬と いうものが国際的に競争がはげしくなってきま

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すので、そうしたときの人材というものを考えな くてはならないと思いました。ですから、例えば、 バイオインフォマティックス、ケモインフォマテ ィックスも含めてそういう人材育成というのは これから必要であるし、もう一つ大事なことは、 サイエンス以外にもビジネス感覚をもった研究 者を作るということが大事だと思います。 (堀先生) 有難うございます。実は、大滝さんもビジネス マインドを持ったベンチャーの起業をするよう な人をいかに育てていくかということと、目利き の人を如何にスカウトし、いかに育てていくか ということを、いつもおっしゃっておられます が、海外の取り組みと比べて我が国がこれから何 を、まず始めなければいけないかということをち ょっとお聞かせ頂けませんか。 (大滝先生) 私自身は、この14∼15年間、アメリカ、ヨーロ ッパ、オーストラリアのバイオベンチャーに投資 を続けてきました。欧米では産・官・学連携が非 常に活発に進められており、例えば、ベンチャー 企業に行き、名刺交換を行ったら大学の教授だっ たと言うことがよくあります。それもノーベル賞 受賞学者だったりする訳で、これはアメリカであ ったら驚くことではありません。また、逆に、ノ ーベル賞学者から会いたいからちょっと来てと 言われ、大学を訪れますと、自分の机から3、4 のビジネス・プランを出してきて、「今度バイオ ベンチャーを作るんだけど、お金出してよ」と頼 まれることも多々あります。このようなことが当 たり前の世界にこの10何年間かいまして、それに 比べると日本はとてもそんな状況にはないという ことを肌身で感じていました。そこで5年前に文部 省を訪ね、産・官・学連携の在り方に関わる研究 者連絡会議を作って頂きました。この中でTLO 設置なども検討を続けてまいり、現状23のTLO が全国に設置されたのです。アメリカやヨーロッ パに何とか追いつくことを目標にTLOを作っ てきたとも言えます。 もちろん実際に進めて来る過程で、日本の場合 はいろいろ細かいところで使い勝手の悪いことが 数多く出てまいりまして、まだ、本当にうまく動い ていないのも事実です。そ の意味では、依然として すべての問題が解決されているとは言えません。と はいえ、アメリカでバイドール法ができたのは20 年前のことです。逆に言えば、日本はアメリカに20 年遅れで産・官・学連携のシステム構築を始めた ということになります。現状、23の承認TLOが 設立できたと言う事実はこれをうまく育てられ れば、日本も今後何とかなるのではないかという 期待に繋げなければいけないと考えます。 実際の現場で動いている大学の先生の中には、 うまく動かないではないかというご意見がある ことは勿論聞いています。文部省でも全国の国立 大学の事務局長を集めて説明会を2回か3回開 いてもらっています。ただし、末端の学部などま でいくと独自に倫理規定とかが定められており、 先生方はがちがちに縛られて何もできないとい うご意見をお聞きしています。そのような意見は 文部省にフィードバックしております。このよう に大きな流れとして見ると、我が国にも一応の流 れはできたと言えます。一方、それに加えて人材 確保の問題があります。我が国においては人材は もっともつとお寒い状態でして、まだ、教育する システムもできているとは言えません。ただし、 来年の概算要求で経済産業省と文部科学 省が技 術の目利きも含めた人材の養成を目的として予 算を取ろうとしております。今後は人材の養成に 重点が移りつつあると考えたら良いのではない でしようか。 (堀先生) 有難うございました。もう時間もございません ので、最後に奥田さんに、ご指摘のありましたP SCですね、ファーマコ スニップス コンソーシ アム。海外では既に大きなものが動いております が、それと比べてどういうようにお感じになりま すか。 (奥田先生) 確かにおっしゃる通り小さなものですけれど も (堀先生) それでもやっていかなければ。 (奥田先生) そうです。それと、私説明のときに抜かしたと 思うのですけれども、ボランティアは、健康とは どういう状態かということの定義は非常に難し

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いのですけれども、一応健常人の方の血液を 1,000人分頂いて、いろいろなところで患者さん の機能解析等をやられる際のリファレンスとし て最小といっていいのか、取りあえず1,000人あ ればリファレンスになり得るだろうという目的 で取りあえずやりました。それから、三省庁の研 究倫理指針に基づいた倫理委員会をいち早く作 って、とにかくドネーションシステムとしてはこ ういうようにやったらいいんだというモ デルを 作るということに意義を見つけて、取りあえずP SCを立ちあげました。 (堀先生) 是非お願いしたいと思います。時間を少しオー バーしましたが、フロアの方で是非という方いら っしゃいますでしょうか。もし無いようでござい ましたら、最後に岸本先生に総括を頂ければと思 います。

総 括

最近、病気の科学の原理、原則に基づいて作ら れてきた「くすり」がビリオンダラーのマーケッ トになっているのが幾つかあります。 1例をあげますと、リウマチの治療に使われる 抗TNF抗体、乳がんのハーセプチン、或いは慢性 骨髄性白血病のチロシンキナーゼのインヒビター といったようなものは原理、原則から「くすり」 となってきたものであります。しかし、それには 原則の発見から20年の歳月がかかっています。 TNFが夢のガンのくすりとして見つかって きたのが70年代後半から80年代はじめ、それから Eγb−B2は、何か分からない成長因子の受容 体としてクローニングされてきてからやはり20 年、フィラディルフィア染色体が見つかってから もっと長い時間が経過しており、かような長い過 程を経てそれぞれに関連する「くすり」ができて きました。 セルバイオロジー、イムノロジー、ヘマトロジ ー、モレキュラーバイオロジー・アンド・メディ スンが「くすり」につながってきました。TNFの 最初のクローニングも日本で行われていますし、 Eγb−B2の発見、そしてその遺伝子のクローニ ングも日本ですが、残念なことに、これらに関連 する「くすり」は日本からは出ていません。 今言ったようなフィールドで、非常に基礎的な 分野と臨床或いは「くすり」を作ることの連携が 今までできていなかった。日本ではそういうとこ ろがうまく機能してきていなかったことの一つ の例になるのではないかと思います。 ゲノムシークエンスがわかってくる、或いは cDNAが全部とらえられてくる、或いはいろい ろな病気でSNPsの検索が集積してくるとい ったようなことが、「くすり」のターゲット、「創 薬」のターゲットにつながってくる、そして効果 と副作用との関係もわかってくるということで、 20年かかったことが、多分数年でできるような時 代に入ってくることになります。 そうなってきますと、先程から言っていますけ れども、一つの企業でできることではないという ことにもなりますし、その短い凝縮された時間に 20年のものが入ってこなくてはならない。いかに ゲノムのシークエンスがわかって、cDNAがわ かっても、やはりバイオロジーとメディスンは必 須のものでありまして、「くすり」が作られてく るためには、その間に非常に進んだバイオロジー とメディスンがなければ「くすり」としてできて こないことになります。 すべてをうまく連携させて、全体を一つの大き なきちんとした、戦略といいますか、チームをつ くりあげていくことが非常に重要なことになる だろうと思います。 関西地方はそれに対して一つの良い場所であ ろうと思います。創薬、「くすり」を作るという ことは関西の伝統であります。 大阪大学総長

き し

も と

た だ

み つ

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関西の西の端にはSpring8があります。8Ge V(ギカエレクトロンボルト)というのは、シカ ゴの7GeV、グルノーブルの6GeVに比較し て世界一であります。 大阪大学にはタンパク質研究所があります。40 年前にすでにタンパク質研究所という名前がつ いていました。今、プロテオミクス等と言ってい ますが、40年前にすでにタンパク質研究所が作ら れていました。 このタンパク質研究所がストラクチャル・バイ オロジーで非常にすばらしい成果をあげていま す。それがSpring8と結びつく、或いは近くの“彩 都”にできる「創薬」の研究所と結びつく。バイ オロジーとメディスンとして大阪大学医学部附 属病院というやはり世界的に通じるアカディミ アがあります。 そういうものが全部、今、バイオ情報ハイウェ ーで結ばれることで、全体が一つの研究所として 機能するといったような戦略を考えれば、そこか らたぶん世界と競争し得るものが生まれてくる のではないだろうかと思います。 こういうことがどんどん進むようになって研 究者にとって果たして幸か不幸かということも 考えてしまいます。 数十年前にフィラディルフィアで、慢性骨髄性 白血病患者のある特殊な染色体に必ず決まった 染色体の転座がある。それはなぜなのか、それは 病気にどうつながっていくのかが、ablの発見に つながり、そして最終的には「くすり」にまでつ ながってきました、そこには大きなロマンがあり ました。 しかし、今、DNA情報のコンピューター解析、 ミレニアム計画或いは、科学技術基本計画の急速 な進展のもとで、何かしらサイエンスをするもの からロマンを取り去っていくような方策が進め られているという感じもします。 しかしながら、創造的な人が、そういう進展の 中からでも多分、思いもかけない創造的なユニー クなロマンを創出してくるのではないかと、そう いうことに期待をかけて、私のご挨拶とさせて頂 きます。有難うございました。 (本稿は、大阪府と共催で当協会が平成13年7 月4日(水)メルパルク大阪において開催した「創 薬基盤技術の開発に関するシンポジウム」におけ る講師の講演要旨です。)

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