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(1)

修士論文

対向

SAW 素子による新しい

超音波霧化法に関する研究

平成

14 年 2 月

指導教官

上羽

貞行 教授

提出者

東京工業大学

総合理工学研究科

電子機能システム専攻

00M36220

長瀨

和幸

(2)

i

目次

第

1 章 序論

···

1

1-1 本研究の背景···1 1-2 本研究の目的···2 1-3 本論文の構成···2

第

2 章 弾性表面波素子の特性

···

3

2-1 弾性表面波理論···3 2-2 材質と形状···5 2-3 弾性表面波素子の基本的特性···7 2-3-1 共振周波数···7 2-3-2 振動変位速度と振動速度··· 10 2-3-3 SAW ストリーミング ··· 12

第

3 章 従来の弾性表面波霧化器

···

13

3-1 弾性表面波霧化器の原理··· 13 3-2 キャピラリ表面波理論··· 14

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

···

19

4-1 霧化器の構成··· 19 4-2 各素子の諸特性··· 21 4-2-1 共振周波数··· 21 4-2-2 振動振幅分布··· 22 4-3 新しい超音波霧化器の諸特性··· 24 4-4 まとめ ··· 35

(3)

ii

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

···

36

5-1 霧化器 Wedge ··· 36 5-1-1 SAW 素子形状及び構成 ··· 36 5-1-2 各素子の諸特性··· 38 5-1-3 霧化特性··· 41 5-1-4 異なった霧化器構成の霧化の様子··· 41 5-2 霧化器 Wedge2 ··· 45 5-2-1 SAW 素子形状及び構成 ··· 45 5-2-2 各素子の諸特性··· 47 5-2-3 霧化特性··· 50 5-3 まとめ ··· 53

第

6 章 結論

···

55

6-1 本研究の成果··· 55 6-2 今後の課題··· 55

謝辞

···

57

参考文献

···

58

関連発表

···

59

付録

···

60

(4)

第

1 章 序論

第

1 章 序論

本章では、本研究の背景、目的、本論文の構成について述べる。

1-1 本研究の背景

高分解のプリンティングを実現する前処理として、プリンティング対象である紙や 金属に微細な液滴粒子を均一に薄く塗布することや、微細な液滴を整列して塗布する ような液滴粒子の制御性の高い塗布というものが要求されている。また、インクジェ ットプリンタ等、プリンタ技術の発展により高画質化し、写真並みの出力を得るため、 1 ドットをインク微粒子の集合体 (インクミスト) で記録することにより、ドット毎 の濃度を多段階に制御する方法がある。これを実現するために、微細なインク微粒子 が要求されている。1) 一般的な液体粒径微粒化技術としては、液体と空気のせん断液膜分裂によって微粒 化を行う圧力式微粒化、液体を高速気流によって微粒化する二流体式微粒化、高速で 回転する物体に液体を供給して、回転体周縁や表面から微粒化する遠心式微粒化、電 気力微粒化、熱エネルギによる微粒化などがある。 これらに対し、圧電振動子などによって液体に振動エネルギを与えて微粒化させる のが超音波霧化法であり、圧力式などに比べ、超音波霧化法は、霧化装置の小型化、 省電力化が可能である。超音波霧化法にはいろいろな方法が研究されており、広く利 用されている。たわみ振動させた多孔板から粒子を放出させる方法 2)、スクイーズ膜 を利用した方法、高周波集束音波を水中から水面方向に放射することにより、水面で の液柱分裂から粒子を放出させる方法 3)、振動面に液体を供給し、振動面で形成され るキャピラリ波 (毛細表面波) の波頭から霧化させる方法などがある。 キャピラリ波を利用する霧化法では、噴霧粒子の大きさが超音波振動の周波数に依 存し、高周波であるほど微細な粒子を得ることができる。しかしながら、液体供給機 構が別に必要なこと、霧化性能に設置状態依存性があること等が実用上の問題になっ ている。

(5)

第

1 章 序論

1-2 本研究の目的

本研究の目的は、霧化量の制御・液滴噴霧距離の制御・時間的な制御が可能で、設 置の自由度が高く、要求に応じた制御が可能である、微小な液滴粒子の得られる霧化 器を実現することである。そのために、本研究では対向する 2 枚の SAW 素子で液 体を挟み込む構成のデバイスを提案・試作した。この構成により、設置自由度が増大 し、また、SAWによる音響流 4) で液体が自動供給される。さらに、液体の噴霧方 向を制御できる可能性がある。本研究では、提案した霧化器について、最適な構成に ついて検討を行い、SAW 素子先端形状について検討を行い、液滴噴霧方向の制御に ついて可能性について検討し、霧化能力の設置依存性について評価を行った。

1-3 本論文の構成

まず、第 1 章においては、本研究の背景及び目的について述べている。 第 2 章では、本研究で用いた SAW 素子について基本的特性について述べている。 第 3 章では、今までに報告されている弾性表面波霧化器について触れ、キャピラリ 表面波理論について述べている。 第 4 章では、SAW 素子を 2 枚対向させて霧化器を構成し、その諸特性の測定を 行った。 第 5 章では、SAW 素子の先端形状を楔形に工夫した霧化器を 2 通り試作し、 SAW 素子形状について検討を行い、本研究において試作した 3 通りの霧化器につい て霧化能力の比較検討を行った。 第 6 章では、本研究で得られた成果についてまとめる。

(6)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

第

2 章 弾性表面波素子の特性

弾性表面波霧化器 5) は、超音波域の強い振動を得るために、圧電性基板である 128°回転 Y 板 X 伝搬 LiNbO3 を使用している。本章ではまず、弾性表面波理論を 述べ、LiNbO3 を用いて作成した弾性表面波素子について、共振周波数や振動速度な どの基本的特性について述べている。

2-1 弾性表面波理論

弾性表面波 (surface acoustic wave:SAW) とは、媒質の表面付近にエネルギを集中 させて伝搬する波である。また、一般には二つの媒質の境界面に沿って伝わる弾性波 も含まれる。 弾性表面波は圧電基板の上に作製した櫛型電極弾性表面波変換器 (interdigital transducer:IDT) によって簡単に励振できる。このような素子を利用して、フィルタ や発振器など小形で優れたデバイスが数多く開発されており、総括して、弾性表面波 素子または SAW デバイスとよばれている。 弾性表面波は等方性媒質や圧電性媒質などを伝搬するが、等方性媒質表面を伝搬す るレイリー波が基本であり、最も多く利用されている。

レイリー波伝搬方向

λ

λ/2

(7)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

レイリー波は 1885 年に Lord Rayleigh が半無限弾性体の表面に沿って伝搬する波 として理論的に導いたものである。波のエネルギは表面近くに集中しており、表面か ら深さ 1 波長以内に 90% 以上が含まれている。また、変位成分は進行方向と深さ方 向だけを持ち、両者の成分の位相差は 90°であるため、媒質の各点は図 2-1 に示す ように楕円方向を描く。これらの点は、媒質の表面においては、波の進行方向に対し、 後方楕円回転をし、約 1/5 波長の位置で深さ方向だけの変位になり、それより深いと ころでは前方楕円回転をしている。さらに、レイリー波はその伝搬速度が周波数に無 関係にいつも一定 (速度分散性がない) であるという大きな特徴を持っている。伝搬 速度は結晶のカット面および伝搬方向によって異なる。ただし、速度分散性がないの は同じである。 本研究で利用する振動子、LiNbO3 は異方性媒質であるが、簡単のため等方性媒質 として扱い、以下に簡単な解析法を述べる。 図 2-2 に示すように座標系をおいて、x1 方向をレイリー波の進行方向とする。深 さ方向 (x3 方向) の変位は深くなるに従い小さくなることにより、xi 方向成分の表面 波の変位 ui は

(

i

1

~

3

)

=

=

     − − 1 3 x t j x i i

A

e

e

u

υ ω ω υ αω と表せる。ここで、 i (=1∼3) は振幅係数。υ は表面波の速度であり、α は x3 方向 に対する減少定数に相当するものである。いずれも媒質定数や境界条件から決定され る値である。

レイリー波伝搬方向

等方体

x

3

x

2

x

1 図 2-2 座標系

(8)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

この変位からひずみを求め、材料の定数と境界条件を考慮して式を解くと、レイリー 波における変位は最終的に次式のように与えられる。       − − −

−

=

3 3 1 3 1 1 x t j x x

pe

e

e

F

u

p υ ω ω υ ω α υ ω α 0 1 =

u

      − − −

−

−

=

3 3 1 3

1

3 1 1 x t j x x

e

e

p

e

F

j

u

p υ ω ω υ ω α υ ω α

α

ここで、p =-F2/F1 であり、F1、F2 は振幅係数である。これらの式から、変位成分 は波の進行方向と深さ方向だけをもち、u3 は u1 に対して位相が 90° 進んでいるこ とから、媒質の表面付近で、波の進行方向に対して後方楕円回転をしているとレイリ ー波の特徴がわかる。

2-2 材質と形状

SAW 素子の圧電材料として、128°回転 Y 板 X 伝搬 LiNbO3 を用いた。鏡面仕 上げされた表面に、線幅 100µm、ピッチ 400µm、20 対の IDT が設けてある。図 2-3 に SAW 素子の写真を示す。写真中の素子の寸法は図 2-4 に示す通りである。 LiNbO3 上におけるレイリー波の伝搬速度は 3960 m/s である。SAW 素子の共振周 波数 f は、レイリー波の伝搬速度 υ と波長 λ から、

λ

υ

=

f

の式で求められる。波長は電極のピッチで決まり、400µm であるので、共振周波数は 9.6 MHz 前後になるはずである。

(9)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

図 2-3 SAW 素子の構成

43

LiNbO

3

IDT

単位 : [mm]

t = 1

2

16

43

LiNbO

3

IDT

単位 : [mm]

t = 1

単位 : [mm]

t = 1

2

16

単位 : [mm]

10

16

8.1

9

ピッチ : 400 µm

20 対

線幅 : 100 µm

材質 : aluminum

IDT データ

単位 : [mm]

10

16

8.1

9

10

10

16

16

8.1

9

ピッチ : 400 µm

20 対

線幅 : 100 µm

材質 : aluminum

ピッチ : 400 µm

20 対

線幅 : 100 µm

材質 : aluminum

IDT データ

図 2-4 SAW 素子の寸法

(10)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

2-3 弾性表面波素子の基本的特性

2-3-1 共振周波数

圧電基板は一般に共振周波数と反共振周波数とを持つ。共振周波数で最も効率よく 電気エネルギを機械エネルギに変換する。よって、共振周波数を測定し、その周波数 で駆動することによって、効果的な振動を得る事ができる。 本研究で使用するために作成した SAW 素子のうち、ひとつの素子のアドミタンス 特性をインピーダンスアナライザ (HEWLETT PACKARD IMPEDANCE/GAIN-PHASE ANALYZER 4194A) により測定した。素子上に何ものせない場合の結果を、 図 2-5 に示す。LiNbO3 素子端面による波の反射の影響で、共振のピークがいくつも 存在している。アドミタンスの実成分であるコンダクタンス (G) が最大となる周波数 が共振周波数であり、この場合 9.59 MHz であることがわかった。 次に、素子上、先端部に液体をのせ、アドミタンス特性を測定した。その結果を 図 2-6 に示す。さらに、液体の量を 0.01 ml ずつ増していき、そのときのアドミタンス 特性も測定した。 まず、素子上に何ものせていなかった場合にみられた、複数のピークがなくなって いるのがわかる。これは、素子上の液体が波を吸収し、端面まで波が届かず、反射波 がなくなるためである。また、素子上の液体の量を増していっても、共振周波数は変 化していない。液体が素子上にあると G の最大値は大きく減少する。しかしながら、 素子上に液体があるときには、液体を増しても G の最大値に大きな変化はみられな い。したがって、素子上の液体の量は素子の G に影響はないということがいえる。 本研究では、2 枚の SAW 素子により液体を挟み込み、素子を駆動する。そこで、 駆動状況を想定し、液体を 2 枚の素子で挟み込んだ状態で 1 枚の素子のアドミタン ス特性を測定した。その結果を図 2-7 に示す。液体の量は 0.01 ml とした。この場 合の共振周波数は 9.59 MHz であった。したがって、この素子の駆動周波数を 9.59 MHz とした。

(11)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

25

20

15

10

5

0

-5

-10

G [

m

S]

25

20

15

10

5

0

-5

-10

G [

m

S]

9.5

10.0

10.5

9.0

9.5

10.0

10.5

9.0

周波数 [MHz]

G

G

B

B

25

20

15

10

5

0

-5

-10

B [

m

S]

25

20

15

10

5

0

-5

-10

B [

m

S]

図 2-5 弾性表面波素子のアドミタンス特性 (素子上何もなし) 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] 9.5 10.0 10.5 9.0 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G G B B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] 9.5 10.0 10.5 9.0 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G G B B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] 9.5 10.0 10.5 9.0 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G G B B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] 9.5 10.0 10.5 9.0 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G G B B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5 B [ m S] (a) 液体量 0.01 ml (b) 液体量 0.02 ml (c) 液体量 0.03 ml (d) 液体量 0.04 ml 図 2-6 SAW 素子のアドミタンス特性 (素子上水あり)

(12)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

IDT

mist

SAW device

Fluid

IDT

mist

SAW device

Fluid

IDT

mist

SAW device

Fluid

15

10

5

0

-5

G [

m

S]

9.5

10.0

10.5

9.0

9.5

10.0

10.5

9.0

周波数 [MHz]

G

G

B

15

10

5

0

-5

B [

m

S]

図 2-7 SAW 素子のアドミタンス特性 (素子上何もなし)

(13)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

2-3-2 振動変位速度と振動速度

素子の駆動はバーストをかけた交流電圧により行う。たとえば、前述した素子の場 合、駆動周波数 9.59 MHz、バースト繰返し周波数 1 kHz、波数 1000 といったとき には、1 msec の周期ごとに、9.59 MHz のサイン波を 1000 波送ることを意味し、 その駆動電圧の波形は図 2-8 に示すような形になる。バースト駆動をするのは、霧化 に必要とする強い振動が得られるような高い電圧を IDT に連続波で印加すると、発 熱が大きくなり、LiNbO3 基板が割れてしまうためである。バースト交流電圧により 駆動した場合でも、長時間駆動するには、本研究で用いた素子においては、80 V0-p 以 下の電圧でないと素子を破損してしまう。 波数 1000 バースト繰り返し周波数 1 kHz (1 msec) 図 2-8 バースト交流電圧の波形 本研究で用いた素子のうち、ひとつの素子のレイリー波の伝搬方向に対する垂直方 向の振動変位振幅をレーザドップラ振動計 (LDV:Laser Doppler Vibrometer, Polytec OFV 501,OFV2700) で測定した。また、測定した振幅 A、駆動周波数 f か ら、垂直方向の振動速度 V は、

fA

V

=2

π

で計算することができる。 駆動電圧と、振動変位振幅及び振動速度との関係を図 2-9 に示す。本研究で構成す る霧化器を想定し、素子先端部において測定を行った。振動変位振幅が駆動電圧に比 例していることがわかる。

(14)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

また、この素子の駆動周波数と振動変位振幅及び振動速度との関係を図 2-10 に示 す。ここでは、駆動電圧は 60 V0-p、バースト繰り返し周波数 1 kHz、波数 1000 と した。前項で測定したアドミタンス特性における G の最大値と振動変位振幅の最大 値を示す周波数は一致することがわかる。 1.5 1.0 0.5 振動速度 [m /s e c ] 0 1.5 1.0 0.5 振動速度 [m /s e c ] 0 ○ ■ 振動変位振幅 振動速度 ○ ■ 振動変位振幅 振動速度 20 15 10 5 0 振動変位振幅 [n m ] 25 30 20 15 10 5 0 振動変位振幅 [n m ] 25 30 30 40 80 0 駆動電圧 [V0-p] 20 10 30 40 50 60 70 80 0 駆動電圧 [V0-p] 20 10 50 60 70 図 2-9 駆動電圧と振動変位振幅及び振動速度の関係 20 15 10 5 0 振動変位振幅 [n m ] 20 15 10 5 0 振動変位振幅 [n m ] 9.8 9.9 10.0 9.5 周波数 [MHz] 9.7 9.6 9.8 9.9 10.0 9.5 周波数 [MHz] 9.7 9.6 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 振動速度 [m /s ec ] 0.2 0 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 振動速度 [m /s ec ] 0.2 0 ○ ■ 振動変位振幅 振動速度 ○ ■ 振動変位振幅 振動速度 図 2-10 駆動周波数と振動変位振幅及び振動速度の関係

(15)

第

2 章 弾性表面波素子の特性

2-3-3 SAW ストリーミング

レイリー波伝搬面上に水を負荷すると、漏洩表面波となり水中に縦波を効率よく放 射する現象であり、励振パワーを大きくすると水が流動したり、水が微小粒子となっ て飛翔する。これらの水の動きを SAW ストリーミングとよばれている。 レイリー波は、伝搬面上に水が負荷されると界面を伝搬しながら水中に縦波を放射 する。この様子を図 2-11 に示す。放射角 (レイリー角) θR は R W R

=

sin

−1

V

/

V

θ

となる。ここで、VR はレイリー波の伝搬速度、VW は水の伝搬速度である。本研究 において、レイリー角は θR =23°であった。 縦波放射 θR 液体 液体 空気空気 振動子 レイリー波 レイリー角 図 2-11 縦波の水中放射

(16)

第

3 章 従来の弾性表面波霧化器

第

3 章 従来の弾性表面波霧化器

本研究では黒澤実助教授等が報告している、弾性表面波霧化器を基本にして、新し い超音波霧化器を提案・試作している。本章では、弾性表面波素子を用いた基本的な 弾性表面波霧化器の原理を述べ、弾性表面波霧化器における霧化現象の原理である、 キャピラリ表面波理論を述べる。

3-1 弾性表面波霧化器の原理

弾性表面波霧化器は、圧電性基板の上に励振した弾性表面波のエネルギを、基板上 の液体に放射して液体の微粒化のエネルギに変換する。 弾性表面波霧化器の基本構成を図 3-1 に示す。霧化器は櫛形電極 (IDT) を持つ一 枚の圧電性基板から成っている。 振動子の材質は128°回転 Y 板 X 伝搬 である。櫛形電極に高周波電圧(約10MHz) をかけることによりレイリー波 (弾性表面波) が励振される。振動子上の液体の量が 適当であるとき、液体はレイリー波から縦波放射を受け、レイリー波伝搬方向に膨ら む。すると、振動子表面と液体の間に働く吸着力によって電極側に液体が薄く残る。 この液圧の薄い部分の表面に、液体の表面波であるキャピラリ波が発生する。このキ ャピラリ波の振動振幅が大きくなると、液滴が波頭からちぎれ、霧となって飛んで行 く。これが弾性表面波霧化器の動作原理である。

IDT

霧

弾性表面 波素子

液体

IDT

霧

弾性表面 波素子

液体

図 3-1 弾性表面波霧化器の基本構成

(17)

第

3 章 従来の弾性表面波霧化器

3-2 キャピラリ表面波理論

超音波振動子のレイリー波伝搬面上に液体をのせる、図 3-2 のように基板表面を伝 わる弾性表面波から、弾性表面波の減衰とともに振動子上の液体に向かって縦波が放 射され、液厚の薄い部分の表面にキャピラリ波 (毛細表面波) が発生する。キャピラ リ波の振動速度が大きくなると、キャピラリ波の波頭から液滴が分裂し、霧となって 飛んで行く。周波数が高いほどキャピラリ波の波長が短くなり、分裂する液滴の粒径 は小さくなる。 縦波放射 θR 液体 液体 空気空気 振動子 レイリー波 レイリー角 図 3-2 液体への縦波放射 ここで、霧化機構であるキャピラリ表面波について説明する。 図 3-3 は、振動面上の薄い液膜から、キャピラリ波の形成、および液滴の分裂のモ デル図である。(1) から (5) へ、時間的なキャピラリ波の変化を表し、(A) から (C) へと、振動振幅が大きくなったときの変化を表している。液滴の分裂は、振動振幅 (速度) が大きいとき、振動の最大振幅を少し過ぎたところで発生する。 一般に液体の表面波は主に重力が影響する場合の重力波と表面張力が影響する場合 のキャピラリ波の二つに分けられる。これらの二つを含む表面波に関する運動方程式 から、表面波の伝搬速度 υ を求め、これから重力波の速度とキャピラリ波の速度を求 める。

(18)

第

3 章 従来の弾性表面波霧化器

時間経過 T

表面振動振幅

大

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(A)

(B)

(C)

時間経過 T

表面振動振幅

大

(1)

(2)

(3)

(4)

(5)

(A)

(B)

(C)

縦振動

キャピラリ波の振動

t

c

0

滴分裂

縦振動

キャピラリ波の振動

t

c

0

滴分裂

図 3-3 キャピラリ波による液滴分裂のモデル

(19)

第

3 章 従来の弾性表面波霧化器

液体は連続で、振動する非粘性の非圧縮性流体と考える。すると速度ポテンシャル φ のある渦無し流れとなる。いま、図 3-4 のように、波の伝搬方向を x とし、x 軸方 向に液体が無限遠まで続いているとする。垂直軸 (下方を正とする) を z とし、波の 運動を xz 平面の二次元流れとすると、液内のいたるところで次のラプラスの微分方 程式が成り立つ。

0

2 2 2 2

=

∂

∂

+

∂

∂

z

x

φ

φ

この式の解が速度ポテンシャル φ であり、境界条件などを加味してこれを求めるこ とによって波の伝搬速度 υ が求められる。波の運動が非常に小さいと仮定して、重力 波とキャピラリ波の両方を含めた一般の表面波の伝搬速度が、液体の密度 ρ、表面張 力 σ、波長 λ、重力加速度 g を用いて次式のように得られる。

ρλ

πσ

π

λ

υ

2

2

+

=

g

k / 2

π

λ

= k / 2

π

λ

=

0

l 液深

z

x

k / 2

π

λ

= k / 2

π

λ

=

0

l 液深

z

x

図 3-4 座標系

(20)

第

3 章 従来の弾性表面波霧化器

本研究で問題とするような、波長 λ が小さいときには、キャピラリティが支配的にな るので、この表面波の伝搬速度は次式となる。

ρλ

πσ

υ

≅

2

(3.1) 波の周期を τ とすると、その伝搬速度が υ であるので、表面波の波長は

λ

=

υτ

である。この関係から式 (3.1) は、

ρλ

πσ

τ

λ

υ

=

=

2

と、書き換えられる。この式より、

ρ

πσ

τ

λ

2 2 3 = を得る。さらに、レイリー波の発振周波数を fe、キャピラリ波の周波数を fk とする と、 k

f

1

=

τ

であるので、 2 3

2

k

f

ρ

πσ

λ

=

(3.2) が得られる。 レイリー波の発振周波数 fe と、キャピラリ波の周波数 fk の間には、

2

/

e k

n

f

f

=

・

なる関係が存在し、n は自然数で、

n

=

1

以外はめったに起こりえないとしている。 それで、多くの報告では、

2

/

e k

f

f

=

として、霧化特性を表している。そこで、これらの関係式を用いて式() から次式が得 られる。

(21)

第

3 章 従来の弾性表面波霧化器

3 1 2

8

=

e

f

ρ

πσ

λ

粒径

d

− はキャピラリ波の波長 λ に比例すると考えられるので、比例定数 κ を用 いて、 3 1 2

8

=

− e

f

d

ρ

πσ

κ

(3.3) のように表される。よって、この式から、粒径

d

− は発振周波数 fe の –2/3 乗に比 例し、発振周波数 fe が高いほどキャピラリ波が細かになり、その波頭から分裂する液 粒群平均粒径

d

− が小さくなることがわかる。 これまで報告されている、周波数と粒径の関係をまとめたものが図 3-5 である。式 (3.3) における κ の値は研究者により差があるものの、駆動周波数が高くなると理論 式に沿って粒径が小さくなっているのがわかる。これまで報告されているのは図 3-5 の通り、数十 kHz から数 MHz である。本研究における駆動周波数は 10 MHz か ら 50 MHz であり、これまでに例のないものである。式(3.3) において

κ

=1.0 と しても、10 MHz における平均粒径は 3µm 以下であると予想される。 図 3-5 駆動周波数と液滴の平均粒径関係 10 M 1 M 100 k 10 k 共振周波数 [Hz] 平均粒径 [µ m ] 10 M 1 M 100 k 10 k 共振周波数 [Hz] 平均粒径 [µ m ]

(22)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

第 3 章で述べたような弾性表面波霧化器は考案されている。しかしながら、実用の 点からは、霧化性能の設置依存性の問題や、液体の供給方法の簡略化、また、液滴飛 翔方向の制御等に問題があると考えられる。それらの問題を克服するために、対向す る 2 枚の SAW 素子で液体を挟み込み、霧化を行う超音波霧化器を考案・試作した。 本章では、試作したデバイスの構成を示し、各素子の特性を述べ、デバイスを駆動し た際に得られる霧化量を測定した。また、2 枚の素子の特性と得られる霧化量との関 係を調べた。さらに、液体の性質が霧化量に与える影響を調べるため、液体の性質を 変化させて霧化量を測定した。

4-1 霧化器の構成

本研究では、SAW 素子を 2 枚用いて、図 4-1 に示すような超音波霧化器を構成 した。すなわち、素子の IDT が設けられている面 (SAW が伝搬する面) 同士を向き 合わせ、素子間に液体を供給する。SAW は液体中に縦波を放射し、液体を振動させ る。SAW 強度を大きくしていくと SAW ストリーミングにより水が SAW の伝搬方 向に流れる。液体が SAW 素子の先端に到達し、SAW から液体中に漏えいした弾性 波によってキャピラリ波を発生する。キャピラリ波の振動速度が大きくなるとキャピ ラリ波の波頭から微細な液滴が分裂し、液体が霧となって飛んで行く。 液体を 2 枚の SAW 素子ではさみ込むことにより、どの方向に設置しても液体が こぼれることがなく、液体の供給と霧化を同時に行うことができ、液体の噴霧方向を 制御できる構成となっている。 図 4-2 に霧化の様子と霧化器の構成の図を示す。図 4-2 中の霧化器を構成する一 方の素子を素子 A、もう一方を素子 B とする。ここで、この構成の霧化器を本研究 では、「霧化器 Normal」と名付けることにする。

(23)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

霧 SAW 素子 図 4-1 本研究が提案する超音波霧化器の構成及び霧化の様子 IDT 霧 SAW 素子 液体 IDT 霧 SAW 素子 液体 霧化器 Normal 霧化器 Normal

素子 B

素子

A

側面図 液体 霧 IDT 液体が移動する 液体が移動する SAW 素子 図 4-2 本研究が提案する超音波霧化器の構成

(24)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

4-2 各素子の諸特性

4-2-1 共振周波数

圧電基板は共振周波数で最も効率良く電気エネルギを機械エネルギに変換するとい うことは第 2 章 2-4-2 で述べた。効率良く霧化量を得るため、各素子を共振周波数 で駆動することを考える。そこで、第 2 章 2-4-2 と同様にして図 4-2 中の素子 A と素子 B の共振周波数を求めるため、各素子のアドミタンス特性を測定した。その 結果を図 4-3 に示す。ここで、測定は素子間に液体を挟み込んだ状態で行った。各素 子の共振周波数、コンダクタンス G、共振の鋭さ Q を表 4-1 に示す。 15 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 10 5 0 -5

G [

m

S]

15 10 5 0 -5

G [

m

S]

9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] 9.5 10.0 10.5 9.0 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G G B B 15 10 5 0 -5

B [

m

S]

15 10 5 0 -5

B [

m

S]

(a) 素子 A

15

10

5

0

-5

G [

m

S]

9.5

10.0

10.5

9.0

周波数 [MHz]

G

B

15

10

5

0

-5

B [

m

S]

15

10

5

0

-5

G [

m

S]

15

10

5

0

-5

G [

m

S]

9.5

10.0

10.5

9.0

周波数 [MHz]

9.5

10.0

10.5

9.0

9.5

10.0

10.5

9.0

周波数 [MHz]

G

G

B

B

15

10

5

0

-5

B [

m

S]

15

10

5

0

-5

B [

m

S]

(b) 素子 B 図 4-3 各素子のアドミタンス特性

(25)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

表 4-1 素子 A、素子 B の諸特性 素子名 共振周波数 コンダクタンス G 共振の鋭さ Q A 9.59 MHz 11.1 mS 135.1 B 9.59 MHz 12.7 mS 129.7

4-2-2 振動振幅分布

次に、各素子のレイリー波の伝搬方向に対する垂直方向の振動変位振幅と印加電圧 との位相差の関係を LDV により測定した。このときの印加電圧との位相差とは、印 加電圧の波形と素子の振動波形をオシロスコープで取り込み、測定位置での位相進み、 位相遅れを測定した結果である。図 4-4 に測定系を示す。SAW 素子が透明であるこ と、また、波長が 約 400 µm と短いことを考慮して、より精密に振動振幅分布を測 定するために、LDV のレーザ光の径を小さくし、焦点深度を短くする目的で、対物 レンズを LDV と素子の間に用いた。このことにより、LDV のレーザ光の径は数十 µm、となり、焦点深度も小さくなった。 測定結果を図 4-5 に示す。ここでの測定条件は、各素子共に、駆動周波数 9.59 MHz、バースト繰り返し周波数 1 kHz、波数 1000 とした。y 軸に関しては基板中 心線上の素子最先端部を位置 0 とし、IDT に向かって LDV を動かし、先端より 3 mm の箇所まで測定を行った。また、y 軸に関しては、図 4-5 より、進行波成分と ともに定在波成分が存在することがわかる。これは、素子端面における波の反射の影 響であると考えられる。また、各素子において位相差はなく、さらに振動振幅分布の 山と谷の現れる位置が、先端からほぼ同じ位置であるということがわかる。これは、2 枚の素子をバースト交流電圧の位相差 0°で同時に駆動させれば、2 枚の素子が同時 に同様の振動分布で駆動するということである。

IDT

レーザドップラ

振動計

対物レンズ

側面図

測定ライン

0

SAW 素子

IDT

IDT

レーザドップラ

振動計

対物レンズ

側面図

側面図

測定ライン

0

SAW 素子

図 4-4 振動振幅分布の測定系

(26)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n ] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ]

θ

A

(a) 素子 A 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n] 0 -180 180 位相差

θ

[° ] 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n] 0 -180 180 位相差

θ

[° ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ]

θ

A

(b) 素子 B 図 4-5 各素子の振動振幅分布

(27)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

4-3 新しい超音波霧化器の諸特性

SAW 素子を 2 枚用いて新しい超音波霧化器を提案・試作した。新しい超音波霧化 器の諸特性を測定した。ここでの駆動周波数を 9.59 MHz とし、バースト繰り返し周 波数:1 kHz、波数:1000 とした。霧化実験の実験系を図 4-6 に示す。バースト交 流電圧を制御するために 2 台の発振器を用いる。1 台の発振器からもう 1 台の外部 トリガのかかった発振器 (2 CH) へバースト駆動制御をするために矩形波 (1 kHz) の 参照信号を送る。また、2 CH 発振器はそれぞれのチャンネルの出力波形の位相進み、 位相遅れの制御も可能である。これらのことより、9.59 MHz のサイン波を 1000 波、 2 CH で同時発振が可能となり、霧化器を構成する素子 2 枚同時駆動が可能となり、 また、2 枚の素子への入力電圧の位相差も操作が可能である。

CH1

CH2

CH1

CH2

バースト駆動用

トリガ信号

CH1

CH2

トリガ信号

霧化器

オシロスコープ

Iwatsu DS-8812

発振器(出力2CH)

WAVE FACTORY WF1946

発振器

HEWLETT PACKARD 3314A

バースト波

EN MODEL 240L RF POWER AMPLIFIER

増幅器

バースト波

図 4-6 霧化実験の実験系

(28)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

本研究における入力電力は以下の式によって求める。 電圧 Vrms、電流 I、コンダクタンス G を用いて 2 rms rms GV IV W= = とする。さらにバースト駆動を考慮する。例えば、バースト繰り返し周波数 1 kHz の間には、9.59 MHz のサイン波は 9590 波ある。このとき、バースト波数 1000 と すれば、残りの 8590 波分の時間を休むことになる。ゆえにデューティーは 1:9.59 となり、本研究の 1 枚の素子へ供給する電力は W/9.59 ということになる。さらに、 SAW 素子を 2 枚用いて霧化実験を行う際の全供給電力は、構成された霧化器への供 給電力の合計である。

(1) 霧化量測定方法

本研究では、霧化量を以下のように測定する。 ① 素子間に計量済み (0.01 ml ∼ 0.015 ml) の液体を、基板中心線上、霧化器先 端に注射針によって注入し、液体で素子間が満たされるようにする。 ② 霧化器にバースト交流電圧を印加し、同時に霧化時間の計測を始める。 ③ 液体が霧化され、素子間を液体が満たさなくなったら、電圧の印加を停止し、 時間の計測も停止する。 ④ 素子間に残った液量を計測し、実際に霧化された液量を算出する。 ⑤ 実際に霧化された液量と霧化時間より、1 分間あたりの霧化量に換算し、本研 究における霧化量とする。 測定方法を図 4-7 に示す。

素子駆動中

電圧印加停止

液体注入

霧化器を前面から見た図

霧化器を前面から見た図

SAW 素子

液体

(29)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

基板中心線上に液体を置いたときに最も霧化量を多く得られる。しかしながら、 IDT からのパワーフローがあるため、素子先端において基板中心線上に液体を保持で きず、左右に液体がシフトしてしまい、霧化量を効率良く得られなくなってしまうこ とがある。そこで、その問題を解決するため、図 4-8 (a) のように素子の両端にグリ ス (DOW CORNING : HIGH VACUUM GREASE) を塗った。しかしながら、グリ スを塗ることにより、振動振幅の減少や端面での反射の影響の変化等、振動に対する 影響が考えられる。そこで、グリスを塗る前とグリスを塗った後の基板中心線上の振 動振幅と電源電圧との位相差の関係を測定した。その結果を図 4-8 (b)・(c) に示す。

SAW 素子

グリス

液体

霧化器を前面から見た図

霧化器を前面から見た図

(a) 素子上にグリスを塗った様子 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n ] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ]

θ

A

(b) グリスあり 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n] 0 -180 180 位相差

θ

[° ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ]

θ

A

(c) グリスなし 図 4-8 素子上のグリスの有無による振動への影響

(30)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

図 4-8 より、グリスを塗ることにより振動への影響がみられない。したがって、こ の形状の霧化器にはグリスを用いることにする。

(2) 素子間間隔と霧化量

まず、2 枚の素子を用いる際の素子と素子の間隔の大きさと霧化量の関係を測定し た。その結果を図 4-9 に示す。ここでの測定条件は、2 枚の素子を駆動し、各素子共 に、駆動周波数 9.59 MHz、バースト繰り返し周波数 1 kHz、波数 1000、全供給電 力 2 W とした。また、霧化させる液体には水道水を用いた。 図 4-9 の点が示す素子間隔のとき、霧化現象が起こり、その他の点では霧化現象は みられなかった。霧化現象が現れた素子間隔で、最も霧化量の得られた素子間隔は 1.27 mm であった。これより、素子間隔と霧化量は密接な関係があり、霧化器を構成 する素子により素子間隔は決まるということがいえると考えられる。以後の「霧化器 Normal」に関する測定は素子間間隔を 1.27 mm にして行った。

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0

素子間隔 [mm]

0

0.002

0.004

0.006

0.008

0.010

0.012

霧化量

[m

l/

m

in]

1.27 mm

図 4-9 素子間間隔と霧化量の関係

(31)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

(3) 駆動方法と霧化量の関係 提案した霧化器の駆動方法と霧化量の関係を測定した。以下の 2 通りの駆動方法を 比較検討した。 ① 1 枚の素子にのみバースト交流電圧を印加 ② 2 枚の素子に同電圧のバースト交流電圧を同時に印加 霧化量は霧化器への全供給電力により比較を行った。その結果を図 4-10 に示す。 ここでの測定条件は、各素子共に、駆動周波数 9.59 MHz、バースト繰り返し周波数 1 kHz、波数 1000 とし、素子間隔は 1.27 mm とした。霧化させる液体には水道水 を用いた。 0 2.0 4.0 6.0 8.0 全供給電力 [W] 0 0.12 0.10 0.08 0.06 0.04 霧化量 [m l/ m in ] 9.59 MHz 1 枚駆動 9.59 MHz 9.59 MHz 1 枚駆動 1 枚駆動 9.59 MHz 9.59 MHz 2 枚駆動 9.59 MHz 9.59 MHz 9.59 MHz 9.59 MHz 2 枚駆動 2 枚駆動 0.02 図 4-10 駆動方法と霧化量の関係

(32)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

図 4-10 より、全供給電力が同じとき、2 枚の素子に電圧を印加して霧化を行うと、 1 枚の素子に電圧を印加して霧化を行う場合に比べて約 1/2 の霧化量になることがわ かる。しかしながら、1 枚の素子のみに電圧を印加して霧化を行う場合では、印加電 圧を高くする必要があり、素子に印加できる電圧は破壊限界があるため、ある程度限 られるため、最大霧化量が限られる。2 枚の素子を用いれば、1 枚の素子へは低い印 加電圧でより多くの霧化量を得ることができる。また、1 枚の素子のみの場合よりも 2 枚の素子の場合の方が小さい電力で霧化は始まる。これらのことから、素子 2 枚を 用いて霧化を行う方が霧化器としては有効であるといえる。

(3) 素子間角度と霧化量

素子間の角度と霧化量の関係を測定した。測定方法は図 4-11 (a) に示す。測定した 結果を図 4-11 (b) に示す。図 4-11 (b) より、素子間の角度が 0°、すなわち 2 枚の 素子を平行にして霧化を行うとより多くの霧化量が得られることが明らかになった。 θ θ

IDT

霧化器 図 4-11 (a) 測定方法

0°

10°

20°

駆動電圧 [V

0-p

]

60

40

20

0

0

0.06

0.08

0.04

0.02

50

70

30

10

0.1

80

(33)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

(4) 素子間の振動の分布と霧化量

2 節で述べたように、各素子の振動振幅分布は振動変位、位相差ともに、同様の分 布となっている。したがって、SAW 素子を対向させ、2 枚の素子それぞれへ印加す るバースト交流電圧の位相差が 0° のとき、霧化器の間隙での素子それぞれの振動変 位の様子は図 4-12 (a) のように互いの素子の振動変位が対称になっている。これを 2 枚の素子が対称に振動しているとする。また、印加するバースト交流電圧の位相差が 180°のとき、霧化器の間隙での素子のそれぞれの振動変位の様子は図 4-12 (b) のよ うに互いの素子の振動変位が非対称になっている。これを 2 枚の素子が非対称に振動 しているとする。 2 枚の素子の振動の分布と霧化量の関係を、電力と霧化量の関係として図 4-12 (c) に示す。ここでの測定条件は、各素子共に、駆動周波数 9.59 MHz、バースト繰り返 し周波数 1 kHz、波数 1000 とし、素子間隔は 1.27 mm とした。霧化させる液体に は水道水を用いた。2 枚の素子が対称に振動しているときのほうが、非対称に振動し ているときよりも 2∼3 倍の霧化量を得られることがわかった。 (b) 非対称に振動 (a) 対称に振動

0

2.0

4.0

6.0

8

全供給電力 [Wh]

0

0.12

0.10

0.08

0.06

0.04

霧化量

[m

l/

m

in

]

0.02

対称モード

非対称モード

.0

(c) 振動の分布と霧化量 図 4-12 2 枚の素子の振動の分布

(34)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

(5) 液滴噴霧距離と霧化粒子の分布の様子

霧化された霧化粒子の、霧化器先端からの液滴噴霧距離を測定した。ここでは、液 滴噴霧の様子をデジタルビデオカメラで撮影し、その画像を分析することにより液滴 の噴霧距離を測定した。また、水道水にインクを混ぜ合わせ、普通紙へ霧化粒子を吹 きつけた際の霧化粒子の分布の様子を確認した。これは、霧化器先端の前方 5 mm の 位置に普通紙を設置し、5 秒間霧化粒子を吹きつけた。それらの結果を合わせて図 4-13 に示す。ここでの測定条件は、各素子共に、駆動周波数 9.59 MHz、バースト繰り 返し周波数 1 kHz、波数 1000 とし、素子間隔は 1.27 mm とした。霧化させる液体 には水道水を用いた。図 4-13 より供給電力が大きくなるにしたがって、液滴の噴霧 距離も大きくなることがわかる。また、供給電力が大きくなるとより狭い領域に絞っ た霧化粒子の噴霧を行うことが可能であるということがわかった。 以上のことから、霧化器前方への霧化粒子の噴霧が可能であり、供給電力によりそ の距離を制御可能である点、供給電力が大きいとき狭い領域に絞った霧化粒子の噴霧 を行うことが可能である点、これらの点から、霧化粒子の噴霧方向が制御可能である ということがいえる。

* 霧化器先端より

5 mm の箇所に

普通紙を設置

供給電力 [W]

0

0

5.0

10.0

4.0

6.0

2.0

8.0

15.0

液滴飛翔距離

[m

m

]

2.5 cm

インクを紙に塗布した様子

図 4-13 液滴飛翔距離と霧化粒子の分布の様子

(35)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

(6) 液体が霧化するまでの時間

霧化器にバースト交流電圧を印加してから霧化が始まるまでの時間を測定した。測 定は、図 4-14 (a) のようにして行う。霧化器先端から、1 mm の箇所を He-Ne レー ザを通過させる。レーザ光の先には、受光器を設置する。液体が霧化され、霧化粒子 が前方に噴霧されると、受光器の反応が弱くなる。電圧印加開始と受光器の反応が弱 くなった時間差を測定し、その時間をこの霧化器の霧化し始める時間とした。その結 果を図 4-14 (b) に示す。図 4-14 (b) より、供給電力が高くなるにつれて、霧化し始 めるまでの時間は短くなっていることがわかる。6 W のとき、応答時間は 0.25 msec である。また、IDT から霧化器先端までの距離は 3.3 mm であり、IDT で励振され るレイリー波の速度は 4000 m/s であるので、レイリー波が先端に到達するまでにか かる時間は約 0.8 µsec である。これは、霧化開始時間と比べると、非常に小さな値で ある。このことから、レイリー波が素子先端に到達するまでの時間は無視できる。し たがって、この実験によって得られた値は本霧化器の霧化する間での時間といってよ い。 測定点 受光器 He-Ne レーザ 霧化器 (a) 測定系

8.0

6.0

4.0

2.0

0

0

2.0

1.0

3.0

4.0

応答時間 [m se c]

供給電力 [Wh]

(b) 液体が霧化するまでの時間 図 4-14 液体が霧化するまでの時間

(36)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

(8) 設置自由度の検討

霧化器 Normal を用いて、設置自由度の評価を行った。その様子を図 4-15 に示す。 図 4-15 のように、あらゆる方向に霧化器を傾けても霧化現象は起こり、なおかつ霧 化器の先端が向いている方向に霧化現象が起こった。このことから霧化器を向けた方 向に霧化粒子を噴霧することが可能であり、設置自由度が高いということがいえる。

霧化器をたて方向に

10°

傾けた場合

霧

霧化器

霧化器を横方向に

10°

傾けた場合

霧

霧化器

霧化器をたて置きした場合

霧

霧化器

図 4-15 設置自由度の評価

(37)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

(7) 液体特性と霧化量の関係 液体の物性的性質と霧化量の関係を調べるため、液体の表面張力と霧化量の関係を 測定した。液体の表面張力の調整は、 ml の純水に ml の中性洗剤を段階的に注入 していくことで行った。その結果を図 4-15 に示す。表面張力が低いほど、霧化量が 得られることがわかった。霧化現象を考えたとき、表面張力が小さい方が、液滴が液 体表面を打ち破るエネルギーは小さくて済むので、霧化器のエネルギーを霧化へのエ ネルギーに使うことができ、霧化量が増えると考えられる。しかしながら、表面張力 が N/m 以下では、素子の間隙に液体を保持できず、液体を霧化することはできなか った。 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 霧化量 [m l/ m in ] 0.1 0.02 0.04 0.06 0.08 0 表面張力 [N/m] 超純水 供給電力 : 5.4 W 図 4-16 液体の表面張力と霧化量

(38)

第

4 章 対向 SAW 素子による新しい超音波霧化法

4-4 まとめ

本章では、本研究が提案する霧化器の構成を述べた。霧化器を構成する SAW 素子 の特性の測定を行い、素子間の振動振幅と位相差の関係を明らかにした。 霧化器の最適な構成を検討するため、試作した霧化器の諸特性を測定した。その結 果、以下のことが明らかになった。 ・ 2 枚の素子間間隔・素子間角度には適切な大きさがある。霧化器 Normal では 素子間間隔 1.27 mm、素子間角度 0°であった。 ・ 提案する霧化器の構成では、SAW 素子 1 枚のみの駆動よりも、2 枚を駆動し たほうが有効である。 ・ 素子上の振動変位分布と霧化量の関係を検討し、2 枚の素子が対称に振動して いるとき、多くの霧化量が得られる。 ・ 液滴の噴霧距離及び液体が霧化し始めるまでの時間を測定し、噴霧方向の制御が 可能であることを確認し、時間的にも制御可能である可能性を見出した。 ・ 設置自由度の検討を行い、霧化器をどの方向に傾けても、液体がこぼれることが なく素子間に保持することが可能である。また、霧化器を傾けても霧化器前方へ の霧化粒子の噴霧が可能である。 ・ 液体の物性的特性 (表面張力) と霧化量の関係を検討し、表面張力の小さい液体 ほど霧化量を得られる。

(39)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

第 4 章では、今までに報告されている弾性表面波霧化器を応用し、2 枚の SAW 素子を対向させて、霧化器を構成した。諸特性を測定した結果、本研究が提案する霧 化器の有効な構成を得ることができた。そこで、さらなる霧化能力の向上を目的とし て、SAW 素子の先端形状を工夫し、2 枚の SAW 素子を用いて構成する霧化器を提 案・試作した。素子先端部の IDT が設けられていない面を角度 30°に削って楔形に した 2 枚の素子を用いて霧化器を構成した「霧化器 Wedge」、素子先端部の IDT の設けてある面を角度 30°に削って楔形にした 2 枚の素子を用いて霧化器を構成し た「霧化器 Wedge2」の 2 通りの霧化器を構成した。

5-1 霧化器 Wedge

5-1-1 SAW 素子先端形状及び構成

SAW 素子には、第 2 章 2 項で述べた SAW 素子と同様の素子を用いた。素子先 端部の IDT の設けられていない面を角度 30°に削って、楔形に加工した。楔形にし た素子を用いた霧化器の構成と実際に楔形に加工した素子を図 5-1 に示す。図 5-1 中の霧化器を構成する一方の素子を素子 C、もう一方を素子 D とする。ここで、こ の構成の霧化器を本研究では「霧化器 Wedge」と名付けることにする。

(40)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

9.57 MHz

9.57 MHz

IDT SAW 素子

9.57 MHz

9.57 MHz

IDT SAW 素子 SAW 素子 SAW 素子 霧化器 Wedge 霧化器 Wedge 側面図 側面図 IDT 霧 SAW 素子 液体

素子

D

素子

C

(a) 霧化器の構成 1 mm 1 mm

27°

22°

1 mm 1 mm LiNbO3 (a) SAW 素子先端形状 図 5-1 霧化器 Wedge の SAW 素子先端形状及び構成

(41)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

5-1-2 各素子の諸特性

(1) 共振周波数

図 5-1 中の素子 C と素子 D の共振周波数を求めるため、各素子のアドミタンス 特性を測定した。その結果を図 5-2 に示す。ここで、測定は素子間に液体を挟み込ん だ状態で行った。各素子の共振周波数、コンダクタンス G、共振の鋭さ Q を表 5-1 に示す。 20 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 20 (a) 素子 C

20

10

5

0

-5

G [

m

S]

9.5

10.0

10.5

9.0

9.5

10.0

10.5

9.0

周波数 [MHz]

G

G

B

15

10

5

0

-5

B [

m

S]

15

20

(b) 素子 D 図 5-2 各素子のアドミタンス特性 表 5-1 素子 C、素子 D の諸特性 素子名 共振周波数 コンダクタンス G 共振の鋭さ Q C 9.57 MHz 10.0 mS 81.0 D 9.57 MHz 11.0 mS 135.0

(42)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

(2) 振動振幅分布

各素子のレイリー波の伝搬方向に対する垂直方向の振動変位振幅と印加電圧との位 相差の関係を LDV により測定した。素子 C に関しては、図 5-3 中の x 軸、y 軸、 u 軸、v 軸に関して測定し、素子 D に関しては、y 軸に関して測定した。測定結果 を図 5-4 に示す。ここでの駆動周波数を 9.57 MHz とし、バースト繰り返し周波 数:1 kHz、波数:1000 とした。 x y x y SAW 素子 表面 SAW 素子 表面 IDT

u

v

u

v

SAW 素子 裏面

SAW 素子 裏面

図 5-3 測定軸 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ] 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 位置 [mm] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n ] 0 30 20 10 振動振幅 A [m n ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ] 0 -180 180 位相差

θ

[° ]

θ

A (a) 素子 C y 軸の振動振幅分布

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

位置 [mm]

0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

位置 [mm]

0

30

20

10

振動振幅

A

[m

n]

0

30

20

10

振動振幅

A

[m

n]

0

-180

180

位相差

θ

[°

]

0

-180

180

位相差

θ

[°

]

θ

A

(b) 素子 D y 軸の振動振幅分布 図 5-4 (1) 各素子の振動振幅分布

(43)

第

章

素子先端形状の工夫

0

0.5

1.0

1.5

2.0

位置 [mm]

0

30

20

10

振動振幅

A

[m

n

]

0

-180

180

位相差

θ

[°

]

θ

A

5 SAW

(c) 素子 C u 軸の振動振幅分布

0

0.5

1.0

1.5

2.0

位置 [mm]

0

15

10

5

振動振幅

A

[m

n

]

0

-180

180

位相差

θ

[°

]

θ

A

(d) 素子 C v 軸の振動振幅分布 図 5-4 (2) 各素子の振動振幅分布 図 5-4 (1) (a)、(b) より、y 軸に関しては、進行波成分と定在波成分が存在してい ることがわかる。また、素子の最先端部分では振動振幅の大きさが減少しているのが わかる。この素子を作成する際、素子先端を楔形にすることによって先端部分での振 幅の増幅を期待していたのだが、大きく予想とは異なった。しかし、(b) の 0.5 mm 以下で見られるように、明らかに振動のモードが変化していることが分かる。これは、 レイリー波の垂直成分が基板の底に到達し、反射してきた波と干渉が起こり、素子先 端部分においてはバルク波にモード変化しているのではないかと考えられる。この点 については、今後検討が必要である。各素子において位相差が 180°となっており、 さらに振動振幅分布の山と谷の現れる位置が、反対になっているということがわかる。 これは、2 枚の素子をバースト交流電圧の位相差 0°で同時に駆動させると、2 枚の 素子は非対称で振動するということである。 図 5-4 (2) (c) の u 軸に関しては、楔部分基板裏面でも振動しており、波長を計算 すると、基板裏面とほぼ同じ値となり、このことによって、基板表面を伝わってきた レイリー波が楔部分で基板裏面に回り込んでいることがわかる。また、素子先端では 表面とほぼ同じレベルの振幅が得られている。

(44)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

図 5-4 (2) (d) の v に関しては、振幅は非常に微小ではあるが、振動していること が確認できた。

5-1-3 霧化特性

「霧化器 Wedge」の霧化特性について測定した。ここでの測定条件は、各素子共に、 駆動周波数 9.57 MHz、バースト繰り返し周波数 1 kHz、波数 1000 とし、素子間隔 は最も霧化量の得られた 1.27 mm とした。霧化させる液体には水道水を用いた。 また、素子への印加電圧を高くしていくと、SAW ストリーミング力が強過ぎて、 液体が霧化する前に、液体が流されて素子裏面に回り込んでしまう。そこで、液体が 素子先端裏側に流れるのを防ぐため、先端部の裏面にグリスを塗って撥水性をもたせ た。このことにより、素子裏側に液体が流れるのを防ぐことができる。 その際、グリスが基板上の振動を吸収してしまい、振幅が小さくなってしまったり、 振動のモードが変化してしまったり、グリスの振動への影響が考えられる。しかしな がら、LDV で確認したところ、振動が弱くなったり振動のモードが変化してしまっ たりした現象はみられなかたので、本研究では素子に撥水性を持たせるためグリスを 用いることにする。

(45)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

(1) 霧化量

2 枚の素子の振動分布と霧化量の関係を、霧化器への供給電力と霧化量の関係とし て、図 5-5 に示す。 「霧化器 Wedge」を構成する素子の場合、2 節 (2) で述べたように、素子自体の 振動の位相が 180°ずれた分布となっている。したがって、SAW 素子を対向させ、2 枚の素子それぞれへ印加するバースト交流電圧の位相差が 0° のとき、2 枚の素子は 非対称に振動している。また、印加するバースト交流電圧の位相差が 180°のとき、 2 枚の素子は対称に振動している。 図 5-5 より、2 枚の素子が対称に振動しているときのほうが、非対称に振動してい るときに比べて、およそ 1.5 倍の霧化量を得られることがわかった。

0

2.0

4.0

6.0

8

全供給電力 [Wh]

0

0.12

0.10

0.08

0.06

0.04

霧化量

[m

l/

m

in]

0.02

対称モード

非対称モード

.0

図 5-5 2 枚の素子の振動の分布と霧化量

(46)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

(2) 液滴噴霧距離

素子先端部からの液滴の噴霧距離を測定した。その結果を図 5-6 に示す。 「霧化器 Wedge」では、図 5-7 のように、SAWによる基板裏面への空気流の影 響により、霧化粒子が裏面に流され、霧化器前方に多くの霧化粒子を噴霧することが できない。素子先端部分、裏面を何かで覆うなどし、霧化粒子の噴出し口と空気の流 れを遮れば、霧化粒子を基板裏面に巻き込まれることなく、霧化器前方に噴霧するこ とが可能であると考えられる。 0 2.0 4.0 6.0 8 供給電力 [W] 0 15.0 10.0 5.0 液滴噴霧距離 [m m ] .0 図 5-6 液滴噴霧距離 空気流 霧 図 5-7 霧化の様子

(47)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

5-1-4 異なった霧化器構成の霧化の様子

素子先端を楔形に加工した結果、図 5-4 (2) のように、楔部分では素子裏面でも強 く振動していることがわかった。そこで、その振動を利用して液体を霧化させること を考えた。ここでは、霧化器の構成を図 5-8 のようにした。霧化粒子が霧化器前方に 噴霧することを想定して考えたとき、今まで検討してきた霧化器と違って、霧化粒子 の噴出し口の後方が大きく開いており、液体供給機構が容易に組み込めるのではない かと考えた。そこで、液体の霧化を試みたところ、霧化現象を確認できた。その様子 を図 5-8 に示す。霧化現象を確認できたが、図 5-8 に見られるように、霧化器前方 ではなく霧化器の内側に霧化粒子を噴霧した。これは、IDT の設けてある面の基板上 を伝搬してきたレイリー波が先端で楔部分の基板裏面に回り込み、基板裏面へ進行し ているためであると考えられる。 楔部分の基板裏面に液体を置いて、素子を駆動し液体の流れを確認したところ、素 子先端方向ではなく IDT の方向へ水は流れた。また、基板裏面でも同様の現象を確 認できた。したがって、基板裏面では、レイリー波が基板表面より回り込み、回り込 んできたレイリー波が IDT の方向へ進行していると考えることができる。

IDT

SAW 素子

液体

霧

図 5-8 異なった構成の霧化器と霧化の様子

(48)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

5-2 霧化器 Wedge2

5-2-1 SAW 素子先端形状及び構成

SAW 素子には、第 2 章 2 項で述べた SAW 素子と同様の素子を用いた。素子先 端部の IDT の設けられている面を角度 30°に削って、楔形に加工した。楔形にした 素子を用いた霧化器の構成と実際に楔形に加工した素子を図 5-9 に示す。図 5-9 中 の霧化器を構成する一方の素子を素子 E、もう一方を素子 F とする。ここで、この 構成の霧化器を本研究では「霧化器 Wedge2」と名付けることにする。

霧化器 Wedge_2

霧化器 Wedge_2

IDT

霧

SAW 素子

液体

側面図

側面図

9.74 MHz

9.74 MHz

9.74 MHz

9.74 MHz

SAW 素子

IDT

霧

液体

素子

F

素子

E

(a) 霧化器の構成 図 5-9 (1) 霧化器 Wedge2 の素子形状及び構

(49)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

30°

1 mm 1 mm (b) SAW 素子先端形状 図 5-9 (2) 霧化器 Wedge2 の素子形状及び構

(50)

第

5 章 SAW 素子先端形状の工夫

5-2-2 各素子の諸特性

(1) 共振周波数

図 5-9 中の素子 E と素子 F の共振周波数を求めるため、各素子のアドミタンス 特性を測定した。その結果を図 5-10 に示す。ここで、測定は素子間に液体を挟み込 んだ状態で行った。各素子の共振周波数、コンダクタンス G、共振の鋭さ Q を表 5-2 に示す。

20

10

5

0

-5

G [

m

S]

9.5

10.0

10.5

9.0

9.5

10.0

10.5

9.0

周波数 [MHz]

G

G

B

15

10

5

0

-5

B [

m

S]

15

20

(a) 素子 E 20 10 5 0 -5 G [ m S] 9.5 10.0 10.5 9.0 9.5 10.0 10.5 9.0 周波数 [MHz] G G B 15 10 5 0 -5 B [ m S] 15 20 (b) 素子 F 図 5-10 各素子のアドミタンス特性 表 5-1 素子 E、素子 F の諸特性 素子名 共振周波数 コンダクタンス G 共振の鋭さ Q E 9.74 MHz 13.5 mS 110.3 F 9.74 MHz 13.4 mS 130.5

図

Table 1 The kind of etching liquids

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