ISBN 978-4-87762-213-8 SFC-RM 2008-008
IMFの
融 資 制 度
-ア
イ ス ラ ン ド
、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リ ー 、
ラ ト ビ ア の ケ ー ス を も と に し
て-平 成21年2月
慶應
義塾大学・総合政策学部
白 井
早 由 里(し
ら い ・ さ ゆ り)
IMFの
融 資 制 度
-ア
イ ス ラ ン ド
、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リー 、
ラ ト ビ ア の ケ ー ス を も と に し
て-平 成21年2月
慶應
義塾大学 ・総合政策学部
白 井
早 由 里(し
ら い ・さ ゆ り)
IMFの
融 資制 度
-ア イ ス ラ ン ド 、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リ ー 、 ラ ト ビ ア の ケ ー ス を も と に し て-慶 応 義 塾 大 学 ・総 合 政 策 学 部 白 井 早 由 里(し らい ・さ ゆ り)1目次
I.現 行 制 度 の 概 要 1-1.IMFの 融 資 制 度 の 概 要 1-2.IMF融 資 の 財 源 と融 資 上 限 (1)IMFの 財 務 構 造 (2)IMFか らの 借 入 れ 上 限 1-3.IMFの 融 資 制 度(1)主
要な融資制度(非 譲許的融資制度)
(2)低
所得 向け融資制度(譲 許的融資制度)
4 4 6 6 8 9 9 II.東 ア ジ ア 危 機 と最 近 の 金 融 危 機 に お け るコンディショナリティ の 変 化 II-1.コンディショナリティ と は (1)コ ン デ イ シ ョ ナ リテ ィ の 概 要 (2)プ ラ イ ア ー ・ア ク シ ョ ン (3)数 量 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リ ア (4)構 造 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リ ア (5)継 続 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リ ア (6)イ ン フ レ ー シ ョ ン ・コ ン サ ル テ ー シ ョ ン ・ク ロ ー ズ (7)イ ン デ イ カ テ ィ ブ ・タ ー ゲ ッ ト (8)構 造 的 ベ ン チ マ ー ク II-2.東 ア ジ ア危 機 下 の コ ン デ ィ シ ョナ リテ イ に 関 す る批 判 (1)金 融 引 き締 め 政 策 へ の 批 判 (2)財 政 政 策 へ の 批 判 (3)構 造 改 革 へ の 批 判 II-3.東 ア ジ ア 危 機 以 降 のIMFに よ る コ ンデ ィ シ ョナ リテ ィ に 対 す る対 応 2 3 3 3 4 4 6 7 7 8 8 9 9 1 2 3 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 1本 論 文 は 外 務 省 委 託 研 究 の 成 果 と して 執 筆 され た も の で あ る。II-4.東 ア ジ ア 危 機 と最 近 の 危 機 に お け るコンディショナリティ の 違 い (1)東 ア ジ ア 危 機 の 特 徴 (2)東 ア ジ ア 危 機 の 教 訓 とIMFに よ る新 しい 対 応 策 (3)東 ア ジ ア 危 機 以 降 の 新 興 市 場 諸 国 を と りま く 国 際 経 済 環 境 の 変 化 (4)東 ア ジ ア 危 機 下 と現 在 の危 機 のコンディショナリティ の 相 違 (5)現 在 のIMF支 援 プ ロ グ ラ ム の 現 時 点 で の 達 成 度 III. IMFの 貸 出 余 力 III・1. IMF金 融 支 援 の 財 源 表.IMFの 金 融 資 源 III-2. IMFの 貸 出 余 力 III・3. IMF支 援 パ ッ ケ ー ジ
参考文献
Appendix I.最 近 の 経 済 危 機 の 下 で のIMF支 援 プ ロ グ ラ ム
Appendix II.東 ア ジ ア 危 機 の 下 で のIMF支 援 プ ロ グ ラ ム
Appendix III.東 ア ジ ア 危 機 と最 近 の 危 機 の 類 似 点 と相 違 点 4 4 6 0 5 9 1 1 3 3 5 7 1 2 3 2 2 2 3 3 3 4 4 4 4 4 4 5 5 5
I.現 行 制 度 の 概 要 I-1.IMFの 融 資 制 度 の 概 要 IMFの 融 資 は 、 次 の 三 つ の 目的 で 実 施 され て い る。 第 一 に 、 加 盟 国 が 国 債 の 債 務 不 履 行 とい っ た 破 壊 的 な 経 済 調 整 を 余 儀 な く され る状 態 を回 避 す る た め の 支 援 で あ る 。 第 二 に 、 IMFが 融 資(そ して 融 資 に付 随 す るIMF支 援 プ ロ グ ラ ム を 通 じて 健 全 な 政 策 を 実 施)す る こ とで 、 民 間 を 中 心 とす る他 の 資 金 の 出 し手(投 資 家)を 呼 び 込 む こ と を 目的 とす る。 第 三 に 、 「資 本 収 支 危 機 」 の よ うな 、 主 と して 金 融 チ ャ ネ ル を通 じて 他 国 に も波 及 し、 大 き な 経 済 的 負 担 を強 い る 結 果 と な る よ うな深 刻 な 危 機 を 回 避 す る こ と を 目 的 と して い る 。2 IMF支 援 は 、 加 盟 国 に よ る支 援 の 申請 に も とづ き 実 施 され る 。 ま ず 、 IMFが 支 援 の要 請 を受 け る と、IMF職 員 が 当 該 国 に 出 向 き 、 当 該 国 政 府 との 間 で 支 援 にむ け たIMF支 援 プ ロ グ ラ ム の 内 容 につ い て の 交 渉 が 開 始 され る。 こ う した 国 は 、 一 般 的 に 、 経 済 危 機 にす で に 陥 っ て い るか 、 そ れ に 近 い 状 態 に あ る。 自 国 通 貨 は 投 機 攻 撃 に あ い 大 幅 に減 価 して お り、 外 貨 準 備 が 枯 渇 し 、 経 済 活 動 が 停 滞 ま た は い ち じ る し く減 少 し、 多 く の 企 業 や 家 計 が 債 務 負 担 の 急 増 に よ り破 た ん 状 態 に あ る。 そ こ でIMFは 当 該 国 の 政 府 と と も に 経 済 問題 に 対 処 す べ く効 果 的 な 経 済 政 策 につ い て 協 議 し、 「IMF支 援 プ ロ グ ラ ム 」(第II章 を 参 照) を 共 同 で 策 定 す る。 プ ロ グ ラ ム で は 、 政 府 が 目指 す べ き 経 済 目標 を 支 援 す る た め に 、 特 定 の 数 値 に も とつ く 目標 値 や 具 体 的 な 構 造 改 革 の 内 容 を 、 達 成 す べ き 日程 と と も に 、 取 り決 め て い る。 詳 細 な プ ロ グ ラ ム の 内 容 は 、 当該 国 政 府 の 代 表(通 常 は 、 首 相 ま た は財 務 大 臣 が 中央 銀 行 総 裁 と の連 名 で 署 名)か らIMF専 務 理 事(現 在 は フ ラ ン ス 国 籍 の ス トラ ス カ ー ン氏)に あ て た 「Letter of Intent」 と呼 ばれ る 文 書 の 形 で 示 され る。 プ ロ グ ラ ム の 内 容 は 当 該 国 の 置 か れ た 経 済 状 況 が 将 来 的 に 変 わ れ ば 変 更 が 可 能 で あ り、 実 際 に プ ロ グ ラ ム が 開 始 す る に つ れ 変
更 され る の が 一 般 的 で あ る。Letter of lntentと と も に 、 IMF職 員 が 作 成 し た 文 書 を合 わ せ
てIMF理 事 会 に提 出 され る。IMF職 員 が 作 成 した 文 書 に は 、当 該 国 の 最 近 の経 済 動 向 、IMF
支 援 プ ロ グ ラ ム の 政 策 、 当 該 国 が 必 要 とす る外 貨 の 不 足 額 と そ の 不 足 額 に 対 す るIMF・ そ の ほ か の 国 際 機 関 や 他 国 政 府 に よ る金 融 支 援 に よ る 補 完 に つ い て の 記 述 、 当 該 国 のIMF融 資 額 の 返 済 能 力 、IMF融 資(分 割 払 い の た め)の 今 後 の 引 出 し 日程 と返 済 の 日程 、 IMF 職 員 に よ る 当 該 国 に つ い て の 全 体 的 な 査 定 な どが 、 詳 細 な経 済 デ ー タ と と も に 明 記 され て い る。 プ ロ グ ラ ム の策 定 で は 、 融 資 制 度(た と え ば 、 後 述 す る ス タ ン ドバ イ 、EFF、 SRF 2「 資 本 収 支 危 機 」 と は 、多額 の資本流 入 を経験 してい た 国が 、突 然 、市 場 の コ ンフ ィデ ン ス を 失 っ た こ とで 急 激 な 資 本 流 出 に 転 じ、そ れ に よ り大 幅 な 通 貨 の 下 落 、国 内 信 用 の 収 縮 、 国 内 需 要 の 激 減 に 直 面 す る危 機 を 指 して い る 。 主 に 新 興 市 場 諸 国 で 発 生 す る 危 機 で 、19 97∼98年 の 東 ア ジ ア危 機 を き っ か け に、 こ う した名 称 が 一 般 的 に使 わ れ る よ うに な っ て い る。 資 本 収 支 危 機 に つ い て は 、 第II章 で 詳 細 に 説 明 して い る。 こ れ に 対 して 、 従 来 型 の 経 済 危 機 は 「経 常 収 支 危 機 」 と呼 ば れ る よ うに な っ て い る。
な ど)お よ び そ れ に よ っ て 決 ま る プ ロ グ ラ ム の 実 行 期 間(後 述 す る ス タ ン ドバ イ 融 資 制 度 で は プ ロ グ ラ ム 実 施 期 間 は 三 年 以 内 が 一 般 的)が 決 定 され る。 プ ロ グ ラ ム の 実 施 期 間 に 、 あ らか じ め 定 め たIMF融 資 額 を 、 プ ロ グ ラ ム の 進 展 度 を 定 期 的 に モ ニ タ ー し、 順 調 に推 移 して い る こ と確 認 しな が ら、分 割 し て提 供(借 り手 国 側 か らみ れ ばIMF融 資 額 の 引 出 し) して い く こ とに な る。 融 資 制 度 が 決 定 す れ ば 、 返 済 期 間 も 自ず と決 ま る こ と に な る 。IMF が 各 期 の モ ニ ター 後 に 支 払 う金 融 支 援 の 提 供 は 、正 式 に は 「Purchase」 と 呼 ば れ て い る(自 国 通 貨 と交 換 にSDRや 外 貨 を購 入 す る形 を と る た め 、 こ の よ うな 用 語 が 使 わ れ て い る)。 反 対 に 、IMFへ の 返 済 はSDRや 外 貨 を 返 済 し、 自 国 通 貨 を 買 い 戻 す の で 「Repurchase」 と呼 ばれ て い る(正 確 に は 、IMF支 援 プ ロ グ ラ ム の な か の 具 体 的 な 数 値 や 構 造 改 革 の 内 容 を 明 記 した 「コンディショナリティ 」(と くに 後 述 す る 「パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア 」) の 達 成 を 確 認 した の ち に 、IMFは 融 資 を実 施 す る。 達 成 され な か っ た 場 合 、 IMFプ ロ グ ラ ム は 中 断 し、IMF融 資 の 引 出 し が で き な くな る。 しか し、 各 モ ニ タ ー 期 に 実 施 され る 当 該 国 政 府 との 交 渉 の な か で 、 当該 国 の 置 か れ た環 境 が 政 府 の コ ン トロ ー ル で き る要 因 以 外 の理 由 で 大 き く変 わ っ た 場 合 に は 、 プ ロ グ ラ ム の 内 容 の 修 正 が 行 わ れ て い る 。 こ の 場 合 、 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア を か り に達 成 で き な か っ た と して も、 政 府 が で き る か ぎ りそ の 目標 か ら大 き くか い 離 しな い 努 力 を 実 施 した こ とが 明 らか で あれ ば 、 政 府 は 「ウ ェ イ バ ー(Waiver)」 を 申 請 す る こ と も 可 能 で あ る。 申 請 が認 め られ た 場 合 、IMFプ ロ グ ラ ム は 中 断 せ ず 、 IMF融 資 額 の 引 出 しが で き る。 一 般 的 に 、 加 盟 国 がIMFに 金 融 支 援 を 申請 して か ら、 理 事 会 で 承 認 され る ま で に は 二 週 間 程 度 の 時 間 が か か る 。 しか し、 資 本 収 支 危 機 の よ うに 早 急 に 多 額 の 融 資 が 必 要 な 国 に は こ の よ う な 時 間 が か か る プ ロ セ ス は 適 切 で は な い 。1995年 に は 「Fast-Track
Emergency Financing Procedures」 と呼 ば れ る新 た な 審 査 手 続 き が 創 設 され 、 「例 外 的 な
状 況 」 に あ る 国 に 対 して は 、 迅 速 な 審 査 でIMF支 援 プ ロ グ ラ ム を承 認(す な わ ち融 資 の 開 始)で き る よ うに して い る。1997年 の 東 ア ジ ア 危 機 の 発 生 を き っ か け に 、 こ の 審 査 手 続 き が ひ ん ぱ ん に 活 用 され る よ うに な っ て い る。 こ こ で い う 「例 外 的 な 状 況 」 と は 、 金 融 市 場 の 安 定 化 が お び や か され て お り、 迅 速 に対 応 しな い と 当 該 国 だ け で な く 国 際 金 融 シ ス テ ム 全 体 に波 及 し て 打 撃 を及 ぼ す お そ れ が あ る場 合 、 と され て い る。IMFが 当 該 国 か らの 支 援 要 請 の 意 向 を うけ る と、IMF職 員 が 準 備 す る短 い 報 告 書 が 早 急 にIMF理 事 会 に 配 布 され る 。 そ してIMF職 員 と 当 該 国 政 府 の 間 でIMF支 援 プ ロ グ ラ ム の 内 容 に つ い て 相 互 理 解 が 達 成 され る と、 理 事 会 が48∼72時 間 以 内 に 申請 され た プ ロ グ ラ ム(上 記 したI MF職 員 に よ る文 書 とLetter of Intent)の 内容 に つ い て 検 討 に 入 る。 こ の 迅 速 な 審 査 プ ロ セ ス は 、1997年 に は タ イ 、 イ ン ドネ シ ア 、 韓 国 、 フ ィ リ ピ ン 、2001年 に は トル コ に適 用 され て い る。 そ の 後 、 し ば ら く は 活 用 され て い な か っ た が 、2008年 に は グル ジ ア 、 本 論 文 で あ つ か う(2008年9月 の リー マ ン ・ブ ラ ザ ー ズ 破 た ん 直 後 に 経 済 状 況 が 大 幅 に 悪 化 しIMF支 援 を う け て い る)ア イ ス ラ ン ド、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リー 、 ラ トビ ア の 四 力 国 に も適 用 され て い る。
多 くの 場 合 、IMF融 資 額 そ の も の は 資 本 収 支 危 機 の 直 面 して い る 国 が 必 要 とす る 資 金 の 規 模 に 比 べ て 、 そ れ ほ ど大 き くは な い 。 つ ま り、 資 本 収 支 危 機 を 止 め る ほ どの 資 金 を 提 示 で き る わ け で は な い 。 こ の た め 、 世 界 銀 行 、 ほ か の 国 際 機 関 、 他 国 の 政 府 な どが 協 調 して 「IMF支 援 パ ッケ ー ジ 」 と して 金 融 支 援 を 行 う こ とが 多 い 。 ま た よ り重 要 な 点 は 、 IMF 支 援 が き っ か け と な っ て 、 民 間 の 資 本 が 再 度 流 入 を始 め 、 当 該 国 の 経 済 復 興 が 比 較 的 早 く な され る こ とが 期 待 され て い る01MF支 援 プ ロ グ ラ ム の 目的 は 、単 にIMFが 実 施 した 融 資 が き ち ん と返 済 され る こ と を 確 保(信 用 リス ク へ の 対 処)す る た め だ け で な く、 ほ か の 国 際 機 関 、 各 国 政 府 、 民 間 投 資 家 な ど を含 む 国 際 コ ミ ュ ニ テ ィ か ら新 た な 資 金 供 与 が な され る こ と を促 す 点 に あ る とい え る。IMF支 援 プ ロ グ ラ ム に対 す る 国 際 コ ミ ュ ニ テ ィ の 信 頼 度 が 高 い か ら こ そ 、 そ う した 予 想 が 可 能 に な る の で あ る。IMF支 援 プ ロ グ ラ ム に 対 し て は 世 界 か ら さ ま ざ ま な 批 判 が な さ れ て い る が 、IMF支 援 プ ロ グ ラ ム の 位 置 付 け 、 お よ び そ の 役 割 は 今 日 も 変 わ っ て い な い 。 さ ら に 、IMF融 資 は 、 現 状 の 危 機 を解 決 す るた め に の み 実 施 され る わ け で は な い 。 危 機 防 止 の 目的 で な され る こ と も 多 い。 こ の 場 合 、IMF融 資 制 度 は 「プ リ コー シ ョナ リー 制 度
(Precautionary Arrangement)」 と呼 ば れ る 。 当 該 国 は 、 IMF融 資 額 を設 定 す る もの の 、
実 際 に借 り入 れ る こ とな く、 同 じ よ うに ス タ ン ドバ イ やEFFの 融 資 制 度 の も と でIMF支 援 プ ロ グ ラ ム を採 用 し、コンディショナリティ を 達 成 す る こ と が 義 務 付 け られ る。 こ う し た 対 処 に よ り当 該 国 の 置 か れ て い る 国 際 収 支 状 況 を 早 期 に 改 善 し、 深 刻 な 経 済 危 機 に 陥 る 可 能 性 を 回 避 す る狙 い が あ る 。 も っ と も 、1997年10月 の イ ン ドネ シ ア の よ う に 当 初 は プ リ コー シ ョナ リー 制 度 を 採 用 し、 ス タ ン ドバ イ 融 資 制 度(の ち にEFFに 転 換)の も と でIMF支 援 プ ロ グ ラ ム を 実 施 して い る うち に 、 国 際 収 支 状 況 が 悪 化 して 実 際 にIMFか ら 融 資 の 引 出 し を行 う結 果 とな る 国 も あ る 。 1-2.IMF融 資 の 財 源 と融 資 上 限 (1)IMFの 財 務 構 造 世 界 銀 行 な ど の ほ か の 国 際 機 関 と異 な り、IMFは 加 盟 国 の 通 貨 と加 盟 国 の 外 貨 準 備 資 産 の 一 部 を保 有 す る 場 所 で も あ る。IMFは 、 これ らの 通 貨 と外 貨 資 産 を 使 っ て 、 国 際 収 支 問 題 に 直 面 す る 国 に金 融 支 援 を して い る 。IMFの 融 資 に は 、 通 常 の融 資(非 譲 許 的 融 資)と 譲 許 的 融 資 が あ る。 通 常 の 融 資 を す る た め の 財 源 は加 盟 国 の 拠 出 す る ク ォ ー タ を も とに し
て お り、 「一 般 資 源 勘 定(General Resources Account)」 で 管 理 され て い る 。 IMFに 加 盟 す
る 際 に 、 新 規 加 盟 国 は ク ォ ー タ を適 用 され 、 そ れ は 世 界 経 済 全 体 に お け る そ の 国 の 相 対 的 な 地 位 に も とつ い て 定 め られ て い る。 加 盟 国 は こ の ク ォ ー タ の25%を 外 貨 資 産(IMFが 受 け 入 れ る外 貨 やSDR)で 、 残 りは 自国 通 貨 で お さ め て い る。 前 者 が 「リザ ー ブ ・ポ ジ シ ョン 」 と呼 ば れ て お り、加 盟 国 が 国 際 収 支 問 題 に 陥 っ た 場 合 に は 、 た だ ち に使 うこ とが で き る 。3 3あ る加 盟 国 の リザ ー ブ ・ポ ジ シ ョン は 、IMFが こ の 国 の 通 貨 を使 っ て ほ か の 加 盟 国 に 融
リザ ー ブ ・ポ ジ シ ョ ン は 、 国 際 収 支 問 題 に直 面 した と き に は ほ か の 利 用 可 能 な 通 貨 に 交 換 す る こ と が で き る の で 、 各 国 の外 貨 準 備 資 産 の 一 部 を構 成 して い る。 IMFが 金 融 支 援 を 実 施 す る と き は 、 こ う して ク ォ ー タ を 通 じて 得 られ た 外 貨 資 産 を 活 用 す る 。 さ らに 、 財 務 状 態 が 良 い と判 断 され る加 盟 国 に 対 して は 、IMFが 保 有 す る こ う した 国 の 通 貨 を外 貨 資 産 と交 換 す る よ うに 要 請 す る。 こ の よ う に して 得 た 外 貨 資 産 を、IMFは 融 資 制 度 を通 じて 必 要 な加 盟 国 に 金 融 支 援 す る 財 源 と して用 い て い る 。
ク ォ ー タ に も とつ く財 源 が 少 な くな っ た とき に は 、IMFは 、GAB(General Arrangements
to Borrow)とNAB(New Arrangements to Borrow)を 通 じて 借 入 れ る こ と で 、 不 足 分 を補
うこ とが で き る。 必 要 が あ れ ば 、 外 国 政 府 や 民 間 市 場 か ら も資 金 調 達 が で き る。 た だ 今 日 ま で 、IMFは 民 間 部 門 か ら資 金 調 達 に 踏 み 切 っ た こ とは な い 。 こ の ほ か に 、加 盟 国 は既 存 の 外 貨 資 産 を 補 う役 割 を果 た すSDRを 使 うこ と もで き る。SDR はIMFが 創 設 した 準 備 資 産 で 、 す べ て の加 盟 国 に対 して ク ォ ー タ に 比 例 して 無 条 件 で 配 分 され て い る。 加 盟 国 は こ のSDRを 使 っ て 、 ほ か の加 盟 国 か ら外 貨 資 産 を入 手 し、 国 際 的 な 支 払 い に使 うこ とが で き る 。SDRは 通 貨 で も な く、IMFの 負 債 で も な い 。 SDRは 「自 由 に 利 用 可 能 な 通 貨 」(こ れ はIMFに よ っ て 定 め られ て お り、 ドル 、 ユ ー ロ、 円 、 ポ ン ドな どの ハ ー ド ・カ レ ン シ ー を指 して い る)に 対 す る 引 き 出 し権 で あ る。SDRを 使 う場 合 に は 、 加 盟 国 はIMF支 援 プ ロ グ ラ ム を 実 施 す る 必 要 も な い し、 返 済 す る 必 要 も な い 。 た だ し 、 自 国 に配 分 され て い るSDR以 上 にSDRを 使 っ て 利 用 可 能 な 通 貨 を入 手 し た 場 合 に は 、 そ の 差 額 に た い してSDR金 利 を 支 払 う こ とが 義 務 付 け られ る 。 こ の 場 合 、 ほ か の 加 盟 国 の い ず れ か の 国 が 自国 に 配 分 され て い る以 上 のSDRを 保 有 す る 結 果 とな っ て い る。 こ う した 国 は 、 そ の超 過 分 につ い てIMFを 通 じてSDR金 利 を 受 け 取 る こ と に な る 。 SDRは 、 IMFに お い て 計 算 単位 と して も使 わ れ て い る。SDR金 利 は ドル 、 ユ ー ロ、 円 、 ポ ン ドの 加 重 平 均 金 利 で 、 IMFの 通 常 の 融 資 制 度 で 適 用 され る 金 利 計 算 の 基 礎 と して 活 用 され て い る。 SDRの 値 は 、 ドル 、 ユ ー ロ 、 円 、 ポ ン ドの 四通 貨 か ら構 成 され るバ ス ケ ッ トで 表 され 、 日々 各 通 貨 の 市 場 レー トを も と に 計 算 され て い る 。SDRは 公 的 資 産 で あ り、 ほ とん どは 加 盟 国 が 保 有 して い る(バ ラ ン ス 分 の みIMFの 一 般 資 源 勘 定 で 一 部 管 理 され て い る)。 SDRは1970∼72 年 に総 額93億SDRが 加 盟 国 に配 分 され て い る。 第 二 回 目 は 、1979年 ∼81年 に配 分 され 、 第 一 回 目 と合 わ せ た 総 額 は214億 ドル に 達 して い る。SDRは 各 国 の 外 貨 準 備 資 産 の わ ず か な 部 分 を 占 め て い る に 過 ぎな い の で 、 加 盟 国 は 前 述 した 通 常 の 融 資 制 度 の も と で IMFか ら金 融 支 援 を うけ る の が 一 般 的 で あ る。 譲 許 的 オ ペ レー シ ョン は 、 後 述 す る譲 許 的 融 資 制 度 で あ るPRGFな どに 適 用 され る もの で あ る。 こ こ で は 、 財 源 はPRFGト ラ ス トに よ っ て 管 理 され て お り、 前 述 した 一 般 資 源 勘 定 と は扱 い が 異 な っ て い る 。 同 トラ ス トが 中央 銀 行 、 政 府 、 公 的 機 関 か ら市 場 金 利 で 借 入 れ る こ とで 、 資 金 調 達 を 実 施 して い る。IMFの ク ォー タ な どが 財 源 に な っ て い な い こ とに 資 をす る場 合 に 、25%を 上 回 る 。 こ の と き 、 こ の 通 貨 を 借 り入 れ た 国 の リザ ー ブ ・ポ ジ シ ョ ンは25%を 下 回 る こ と に な る。 ・
留 意 す る 必 要 が あ る。PRGFは 低 所 得 国 向 け 融 資 な の で 低 金 利 が 適 用 され る た め 、 IMFに
よ る 低 利 貸 出 金 利(年0.5%)とIMFに よ る調 達 金 利 の 差 額 分 は 、 先 進 国 政 府 か らの拠
出 やIMFの 資 金 か ら ま か な っ て い る。 ま た 、 IMFは 「HIPCs(Heavily Indebted Poor
Countries)」 に対 して は 、当 該 国 が 持 続 可 能 な 対 外 債 務 状 態 を 回 復 す る の を助 け る た め に 、 グ ラ ン トに よ る支 援 も行 っ て い る 。 (2)IMFか らの 借 入 れ 上 限 IMF融 資 額 に は 上 限 が 設 定 され て い る。 年 間 の借 入 れ は 、 ク ォ ー タ の100%、 累 積 で 300%ま で と定 め られ て い る。 東 ア ジ ア 危 機 が 発 生 す る ま で は 、 多 くのIMF融 資 額 は ク ォ ー タ の100%を 下 回 る こ とが 多 か っ た 。 しか し、 国 際 資 本 移 動 が 活 発 化 す る に つ れ 国 の 数 と して は 多 く は な い が 、 ク ォ ー タ を 上 回 る融 資 額 が 必 要 な 国 も 増 え て い る 。 こ の 上 限 を こ え て 融 資 を 受 け る 場 合 は 、 こ れ ま で は1983年 に 設 定 され た 「例 外 的 な 状 況 条 項
(Exceptional Circumstances Clause)」 が 適 用 され て き た が 、 メ キ シ コ で1995年 に経
済 危 機 が発 生 す る ま で は ほ とん ど使 わ れ る こ と が な か っ た 。 メ キ シ コ で は ス タ ン ドバ イ 融
資 制 度 の も とで 、 ク ォ ー タ の688%ま で の借 入 れ が 認 め られ て い る。 しか し、 資 本 収 支
危 機 に 直 面 す る 国 が 増 え る に つ れ 、2002年 に は 「例 外 的 ア ク セ ス ・フ レー ム ワー ク
(Exceptional Access Framework)」 を創 設 して い る。現 在 、資 本 収 支 危 機 に 直 面 して い る
ほ とん どの 国(ア イ ス ラ ン ド、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リー 、 ラ トビア を含 む)で こ の フ レー ム ワー ク が 適 用 され て い る。 こ の例 外 的 ア ク セ ス ・フ レー ム ワー ク は 、 資 本 収 支 危 機 の よ うな 経 済 危 機 に 陥 っ た 国 を 対 象 に 、 民 間 に よ る新 規 資 金 供 与 な ど を 促 進 す る た め に 導 入 され た も の で あ る。 適 用 され る に は 、 つ ぎ の 四 つ の 条 件 を満 た す 必 要 が あ る 。 第 一 に 、 当 該 国 の 資 本 収 支 が 例 外 的 な圧 力(つ ま り多 額 の 資 本 流 出)に 直 面 して お り、 通 常 のIMF融 資 額 の 上 限 で は とて も 対 処 で き な い 状 態 に あ る こ と で あ る。 第 二 に 、IMF職 員 に よ る 厳 密 で シ ス テ マ テ ィ ッ ク な 分 析 の 結 果 、 債 務 が 持 続 可 能 な 状 態 に な る可 能 性 が 高 い こ とが 示 さ れ る場 合 で あ る 。 第 三 に 、 IMF融 資 が 橋 渡 し とな る こ と で 、当 該 国 が 民 間 の 金 融 市 場 へ の ア ク セ ス を 再 び 得 られ る(つ ま り民 間 資 金 の 新 た な 借 入 れ が で き る)可 能 性 が 高 い こ とで あ る。 第 四 に 、 当該 国 のIMF 支 援 プ ロ グ ラ ム が 成 功 す る(予 定 どお りに 実 施 され る)可 能 性 が か な り高 い こ とで あ る。 ア イ ス ラ ン ド、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リー 、 ラ トビ ア で は 、IMF理 事 会 に 提 出 され た(I MF職 員 が作 成 した)文 書 に 、こ う した 四 つ の 条 件 を 充 た して い る こ とが 説 明 され て い る。 ス タ ン ドバ イ 、EFF、 SRFは ク ォ ー タ を100%超 え た 融 資 を受 け る こ とが で き 、 例 外 的 ア ク セ ス ・フ レー ム ワー ク 、 ま た は例 外 的 な 状 況 条 項 の も と で 適 用 され て い る。 こ の 例 外 的 な ア クセ ス 金 額 の 上 限 は 、 あ らか じめ 設 定 され て い な い。IMFが 当 該 国 の 国 際 収 支 の 圧 力 規 模(つ ま り外 貨 不 足 の 大 き さ)、 債 務 持 続 可 能 性 、 民 間 資 金 な どへ の ア ク セ ス を再 び 確 保 す る 能 力 、 経 済 政 策 の盤 石 さ な どに 応 じて 、 ク ォ ー タ を超 え る借 入 れ 規 模 を 設 定 して い る。 ま た 、 こ う した 国 に 対 して は 、IMF支 援 総 額 の う ち多 額 の 資 金 を 、 理 事 会 承 認 後 に た だ ち に 融 資 す る 最 初 の 引 出 し の 際 に 、 集 中 的 に 提 供 し て い る(こ の 引 出 し の 仕 方 は
「Front・loaded」と呼 ばれ て い る)。そ して 、残 りの 融 資 額 を 、プ ロ グ ラ ム 実 行 期 間 内 で(プ ロ グ ラ ム の モ ニ タ ー 期 に 合 わ せ て)数 回 に分 割 して 支 援 す る の が 一 般 的 で あ る 。 2002年 にIMF理 事 会 が 例 外 的 ア クセ ス ・フ レー ム ワー ク を 採 用 した と き 、理 事 会 は 、 例 外 的 ア ク セ ス をす る 国 に は 高 い 金 利 で満 期 日が 短 い(後 述 す る)SRF融 資 制 度 を 適 用 す る こ とを 想 定 して い た 。 つ ま り、 資 本 収 支 危 機 に 陥 っ た 国 でSRFが 採 用 され る場 合 、 「突 然 で 破 壊 的 な 市 場 の コ ン フ ィ デ ン ス が 喪 失 した こ と で 大 規 模 な 短 期 資 本 の 流 出 が 発 生 す る な ど の 例 外 的 な 国 際 収 支 の 赤 字 に 落 ち い っ て い る 国 」 で あ り、 強 固 な 政 策 を 実 施 し、 十 分 な金 融 支 援 が あ れ ば 比 較 的 短 期 に 国 際 収 支 問 題 を 改 善 で き る 状 態 に あ る こ と が 想 定 され て い る 。 韓 国 で は プ ロ グ ラ ム の 当 初 か らSRFが 適 用 され た わ け で は な く、 プ ロ グ ラ ム 開 始 後 の1997年12月18日 の 第 一 回 プ ロ グ ラ ム の モ ニ タ ー(正 式 に は 「レ ビ ュ ー 」 と呼 ば れ て い る)の 際 にSRFが 適 用 され て 、 ク ォ ー タ の1938%を 上 限 に 必 要 が あ れ ばIMF か ら融 資 を 受 け られ る こ と に な っ た 。1998年7月 にIMF支 援 を う け た ロシ ア で は 、EFF 融 資 制 度 の も とでSRFが 適 用 され ク ォ ー タ の356%ま で の 融 資 が 受 け られ る と され た。 ス タ ン ドバ イ 融 資 制 度 の も とでSRFが 適 用 され た ケ ー ス と して は 、1998年 の ブ ラ ジル で は600%、2001年 の トル コ で は1560%、 同 年 の ア ル ゼ ン チ ン で は800%、 2002年 の ウル グ ア イ で は571%な どが あ る。4 し か し、 そ の 後 、 い く つ か の 国 で は 、 資 本 収 支 危 機 に 陥 っ た と して も 国 際 収 支 の 調 整 は ゆ っ く り と行 わ れ 、SRFの よ うに返 済 期 間 が き わ め て 短 い 融 資 制 度(通 常 二 年 ∼ 二 年 半 、 一 年 延 長 可 能)は 適 切 で は な い こ とが 、 明 らか に な っ て き て い る 。 こ の た め 、 ア イ ス ラ ン ド、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リー 、 ラ トビア で はSRFが 採 用 され ず 、 ス タ ン ドバ イ 融 資 制 度 の も とで ク ォ ー タ を は る か に 上 回 る 融 資(例 外 的 な ア ク セ ス)を 確 保 して い る。 こ の 結 果 、 SRFで あ れ ば レー ト ・オ ブ ・チ ャー ジ に300∼500べ 一 シ ス ・ポ イ ン ト上 乗 せ され 高 い 金 利 を 支 払 わ な け れ ば な ら な い と こ ろ を 、200べ 一 シ ス ・ポ イ ン トの 上 乗 せ で 済 む こ と に な る。返 済 期 間 も長 くな り、 ア イ ス ラ ン ドGプ ロ グ ラ ム 期 間 は 二 年 間)は2015年 、 ウ ク ライ ナ(二 年 間)お よ び ハ ン ガ リー(17カ 月)は2015年 に 、 ラ トビア(27カ 月)は2016年 に 返 済 の 完 了 が 期 待 され て い る。 1-3.IMFの 融 資 制 度 (1)主 要 な 融 資 制 度(非 譲 許 的 融 資 制 度) 非 譲 許 的 な 融 資 は 、 レ ー ト ・オ ブ ・チ ャ ー ジ(Rate of Charge)と サ ー チ ャ ー ジ が 適 用 さ れ る 。 レ ー ト ・オ ブ ・チ ャ.__.ジは(1)SDR金 利(SDFバ ス ケ ッ トを 構 成 す る ドル 、 ユ ー ロ 、 円 、 ポ ン ドの 短 期 マ ネ ー マ ー ケ ッ ト金 利 の 加 重 平 均 で 毎 週 算 出 し て い る)と(2)そ の ほ か(IMFの 利 益 マ ・ー ジ ン の 確 保 な ど)か ら な る 。 サ ー チ ャ ー ジ は 、 IMF融 資 か ら の 引 出 額 や 引 き 出 し期 間 に 応 じ て 適 用 され 、融 資 制 度 に よ り手 数 料 が 異 な っ て い る 。主 要 なIMF 4ト ル コ は2002年 に ス タ ン ドバ イ 融 資 制 度 の も とで ク ォ ー タ の1330%ま で の 借 入 れ が 認 め られ て い る が 、SRFは 適 用 され て い な い 。
の 融 資 制 度 は 、「ス タ ン ドバ イ 融 資 制 度(Stand-By Arrangement)」 と 「EFF(Extended Fund Facility)」 で あ る。 ス タ ン ドバ イ 融 資 制 度 は 、1952年 に創 設 され た も っ と も 古 く 、 中 所 得 国 で も っ と も 活 用 され る 一 番 重 要 な 融 資 制 度 で あ る。 短 期 的 に 国 際 収 支 の 赤 字 に 陥 っ て い る 国 を 対 象 と す る た め 、 プ ロ グ ラ ム の期 間 は通 常12∼24か 月 が 中心 で あ る 。IMFへ の 融 資 返 済 は 二 年 三 カ 月 か ら四 年 以 内 に 実 施 され る(一 年 延 長 可 能)。 ス タ ン ドバ イ もEFFも 、 国 際 収 支 が 赤 字 に 陥 っ た 国 が 、 マ ク ロ経 済 の 不 均 衡 を修 正 す る こ とで 国 際 収 支 を 改 善(つ ま り外 貨 準 備 の 蓄 積)す る 目的 で 支 援 され て い る 。 しか し、EFF は 、 こ の ほ か に よ り時 間 が か か る構 造 的 な 問 題 に も と り くむ 必 要 が あ る 国 を 対 象 と して い る 。 こ の た め プ ロ グ ラ ム 実 施 期 間 は ス タ ン ドバ イ 融 資 制 度 よ り も長 期 と な り、 三 年 が 一 般 的 で あ る。 プ ロ グ ラ ム に は 税 改 革 ・金 融 セ ク タ ー 改 革 ・国 営 企 業 の 民 営 化 ・労 働 市 場 の 柔 軟 性 を 高 め る改 革 な どが よ り多 く含 ま れ る こ とが 多 い 。IMFへ の 返 済 は 四 年 半 か ら七 年 以 内 に 実 施 され る(三 年 間 の延 長 が 可 能 で あ る)。 ス タ ン ドバ イ もEFFも 金 利 は 、 レー ト ・オ ブ ・チ ャー ジ に サ ー チ ャ ー ジ を加 え た も の が 適 用 され て い る。 サ ー チ ャ ー ジ は 、IMF融 資 額 の 引 出 額 が ク ォ ー タ の200%以 上 、30 0%以 下 な らば100べ 一 シ ス ・ポ イ ン ト、 ク ォ ー タ の300%を 超 え る場 合 に は200 べ 一 シ ス ・ポ イ ン トが 適 用 され て い る。 東 ア ジ ア 危 機 を き っ か け に 新 た に 導 入 され た融 資 制 度 が 、前 述 した 「SRF(Supplementary Reserve Facility)」で あ る。1990年 代 に新 興 市 場 諸 国 で み られ た 突 然 の 市 場 コ ン フ ィデ ン ス の 喪 失 に よ り、 多 額 の 資 本 流 出 が 発 生 して お り、 通 常 のIMF融 資 額 で は 明 らか に 不 足 す る 国 を対 象 とす る。こ の 制 度 の も とでIMFか ら早 急 に 多 額 の 融 資 を 受 け る こ と が で き る。 SRFで は原 則 と して ク ォ ー タ に よ る 借 入 れ 上 限 が 設 定 され て い な い 代 わ りに 、 他 の 融 資 制 度 よ り も金 利 が 高 く、 しか も 短 期 の 返 済 が 必 要 で あ る 。 適 用 金 利 は 、IMFに よ る最 初 の 支 払 時 期 か ら一 年 間 は レー ト ・オ ブ ・チ ャ ー ジ に加 え 、サ ー チ ャ ー ジ と して300べ 一 シ ス ・ ポ イ ン ト上 乗 せ 、 一 年 終 了 時 期 に さ ら に50べ 一 シ ス ・ポ イ ン ト上 乗 せ 、 そ の 後 、 半 年 ご とに50べ 一 シ ス ・ポ イ ン ト、 最 高500べ 一 シ ス ・ポ イ ン トの 上 限 が 設 定 され て い る。 SRFの 適 用 金 利 が 他 の 融 資 制 度 よ り高 い の は 、 き わ め て 短 期 間 に 多 額 の 融 資 を うけ る こ と へ の あ る 種 の ペ ナ ル テ ィ とい え る。IMFへ の 返 済 は 一 年 か ら一 年 半 で 実 施(二 分 割 で 支 払 い 、 第 一 回 目がIMFに よ る融 資 支 払 い 開 始 して 一 年 、 二 回 目が 一 年 半 以 内)さ れ る(た だ し一 年 間 の 支 払 い 猶 予 が認 め られ る)。 韓 国 で 最 初 に 採 用 され 、 そ の 後 、 ロ シ ア(1998 年)、 トル コ(2000年)、 ア ル ゼ ンチ ン(2001年)、 ブ ラ ジ ル(2001∼02年)、 ウル グ ア イ(2002年)な どで 適 用 され て い る。 た だ し、SRFは 短 期 融 資 制 度 で あ り、 IMF支 援 プ ロ グ ラ ム 自体 は ス タ ン ドバ イ ま た はEFFの も とで 実 施 され て い る こ と に留 意 す る必 要 が あ る。5
5こ の ほ か、CCL(Contingent Credit Line)が1999年 に 導 入 され た が 、2003年 に 廃 止 さ れ て い る 。 現 在 は 適 切 な 経 済 政 策 を 実 施 し て い る が 、 他 国 か ら金 融 チ ャ ネ ル を 通 じ
最 近 導 入 され た 新 た な 融 資 制 度 と し て 、 「短 期 流 動 性 融 資 制 度(Short-Term Liquidity
Facility)」 が あ る。2008年10月 に 創 設 され 、 新 興 市 場 国 で これ ま で 健 全 な 経 済 政 策
を 実 施 して き て い る が(Strong Track Recordが あ る が)、 現 在 の 金 融 危 機(国 際 資 本 市 場
の 不 安 定 な 動 向 に 起 因 す る 問 題)で 一 時 的 で 早 急 な 多 額 の 金 融 支 援 が 必 要 な 国 を対 象 とす
る。 通 常 の 分 割 融 資 や 融 資 条 件 を と もな う こ とな く借 入 れ で き る の が 画 期 的 な 点 で あ る。 そ の 代 わ りに 、 これ ま で だ け で な く 、 今 後 も健 全 な マ ク ロ経 済 政 策 を維 持 す る こ と が 期 待
され て い る。 これ は か つ てIMFが 導 入 した 融 資 制 度 の 「CCL(Contingent Credit Line)」
に代 わ り、当該 国 に 使 い や す く工 夫 され た 仕 組 み で あ る。借 入 れ 上 限 は ク ォ ー タ の500% ま で 、満 期 は き わ め て 短 く、最 初 のIMF融 資 の 引 出 し 日か ら三 ヵ月 と定 め られ て い る 。 IMF 融 資 の 引 き 出 し は 十 ニ カ 月 の 間 に 三 回 ま で 認 め て い る。 金 利 は 、 通 常 の レー ト ・オ ブ ・チ ャー ジ と通 常 の サ ー チ ャ ー ジ が適 用 され る。つ ま り、サ ー チ ャ ー ジ は 、 ク ォ ー タ の200% を超 え る場 合 に は100べ 一 シ ス ・ポ イ ン ト、300%を 超 え る場 合 に は200べ 一 シ ス ・ ポ イ ン トが 適 用 され る の でSRFの よ うな 高 い 金 利 を 支 払 う必 要 は な い 。2009年2月 現 在 、 申請 して い る 国 は な い 。
こ の ほ か 、 「CFF(Compensatory Financing Facility)」 、 「緊 急 支 援(Emergency
Assistance)」 お よび 「貿 易 統 合 メ カ ニ ズ ム(Trade lntegration Mech瀟ism)」 が あ る。 CFF
は1963年 に創 設 さ れ 、 世 界 商 品 価 格 の 変 動 な ど に よ り輸 出 収 入 の 突 然 の 激 減 や 穀 物 輸 入 価 格 の 急 増 な ど 当 該 国 の 政 府 が コ ン トロー ル で き な い 理 由 で 国 際 収 支 が 悪 化 した 国 に適 用 され て い る 。IMF融 資 額 は 、 通 常 、 ク ォ ー タ の10∼55%以 内 と され て い る。 金 利 は レー ト ・オ ブ ・チ ャ ー ジ が 適 用 され る が 、 サ ー チ ャ ー ジ は控 除 され る。IMFへ の 返 済 は 二 年 三 ヶ月 月 か ら四 年 以 内 に な され る こ とが 期 待 され る(一 年 間 の 延 長 が 可 能)。 一 方 、 緊 急 支 援 は 、 自然 災 害 や 軍 事 的 紛 争 に よ っ て 国 際 収 支 の 赤 字 に 陥 っ て い る 国 を対 象 と し、 金 利 は低 所 得 国 の 場 合 は 低 金 利(PRGFと お な じ0.5%)で 支 援 が 実 施 され て い る。1962年 よ りIMFは 自然 災 害 に よ っ て 打 撃 を う け た加 盟 国 に支 援 を して お り、1 995年 に は 紛 争 が 終 了 し た加 盟 国 に も支 援 を 行 っ て い る 。 現 在 で は こ れ ら を 「緊 急 支 援 」 と して 、 一 つ の 融 資 制 度 に ま と め て い る。IMF融 資 額 は 、 一 般 的 に 、 ク ォ ー タ の25∼5 0%以 内 が 一 般 的 で あ る。 緊 急 支 援 で は 、 当 該 国 政 府 の 政 策 遂 行 能 力 に 配 慮 して コ ン デ イ シ ョナ リテ イ(た と え ば 、 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア)を と も な わ な い とい う特 徴 が あ る 。 こ こ で は 経 済 政 策 ア ドバ イ ス や 技 術 支 援 を 伴 う こ とが 多 い 。 サ ー チ ャ ー ジ は 適 用 さ れ て い な い 。IMFへ の 返 済 は 三 年 三 カ 月 か ら六 年 で 完 済 が 義 務 付 け られ て い る。近 い 将 来 、 EFFやPRGFの 融 資 制 度 の も と でIMF支 援 プ ロ グ ラ ム が 実 行 され る こ とが 期 待 され て い る 。 最 近 で は2008年 に ハ リケ.___ン被 害 を う け た ド ミニ カ 共 和 国 が330万 ドル(ク ォ て 経 済 危 機 の 影 響 を 受 け る 場 合 に備 え て 、 あ らか じめIMFと 資 金 枠 を設 定 して お くた め に 創 設 され た。 融 資 枠 の 上 限 はSRFと 同 じ く無 制 限 で あ る が 、 CCLに つ い て は ク ォ ー タ の 300∼500%の 範 囲 内 が 期 待 され る と明 記 され て い る。 申 請 す れ ば 自 ら 自国 経 済 の 脆 弱 性 を認 め た こ と に な りか ね な い こ と を恐 れ て 、 こ の 制 度 を 活 用 す る加 盟 国 は 皆 無 で あ っ た 。
一 タ の25%) 、 洪 水 の被 害 を う け た バ ン グ ラデ シ ュ が2億1770万 ドル(25%)、 紛 争 終 結 した ギ ニ ア ビサ ウが570万 ドル(25%)の 支 援 を受 け て い る。 最 後 に 、 貿 易 統 合 メ カ ニ ズ ム で は 、WTOの も とで 多 角 的 貿 易 自 由 化 を 進 め て い る国 が 、 特 恵 関 税 に よ る ア ク セ ス を 喪 失 ま た は 農 業 補 助 金 の 撤 廃 に よ る食 糧 輸 入 価 格 の 上 昇 に よ り 国 際 収 支 が 悪 化 して い る 国 へ の 支 援 を 対 象 と して い る。2004年 に 導 入 され た が 、 新 た な 融 資 制 度 と い う よ り も、 既 存 の ほ か の 融 資 制 度 を 活 用 して い る加 盟 国 が 外 貨 不 足 に 陥 っ て もIMF融 資 を 確 保 で き る とい う予 測 可 能 性 を 高 め る狙 い が あ る。 こ の 仕 組 み を つ か う こ とで 貿 易 自由 化 の 影 響 が よ り明 確 にIMF支 援 プ ロ グ ラ ム の 作 成 に 反 映 され 、 予 想 以 上 の調 整 が 必 要 な 場 合 に もIMF融 資 が 提 供 され る とい う点 で 、 IMF融 資 額 が そ うで な い 揚 合 よ り 若 干 増 え る 傾 向 が あ る 。 これ ま で の と こ ろ バ ン グ ラ デ シ ュ 、 ドミニ カ 共 和 国 、 マ ダ ガ ス カ ル な ど が 活 用 して い る。 (2)低 所 得 向 け 融 資 制 度(譲 許 的 融 資 制 度)
低 所 得 国 向 け融 資 は低 金 利 で 実 施 され 、 「PRGF(Poverty Reduction Growth Facility)」
と呼 ばれ て い る。IMFは 、 譲 許 的 融 資 制 度 を1980年 代 に 導 入 し、 当 時 はESAFと 呼 ば
れ て い た 。PRGFは これ ま で 以 上 に 貧 困 削 減 と経 済 成 長 に 焦 点 を 当 て 、 当該 国 の 主 体 性
(Ownership)を 高 め る 融 資 制 度 と して1999年 に創 設 され 、 ESAFに 置 き換 え られ て
い る。ESAFに 比 べ 、貧 困者 に 配 慮 した 政 府 の 歳 出 削 減 を認 め る よ うに な っ て い る。 PRGF
で は 、rPRSP(Poverty Reduction Strategy Papers)」 と よ ば れ る 当 該 国 稼 府 が 、国 際 機 関 ・
外 国 政 府 ・NGOな ど と協 調 して 策 定 す る包 括 的 国 家 戦 略 と整 合 的 に な る よ うに 、 IMF支 援 プ ロ グ ラ ム が 策 定 され て い る。国 際 収 支 の 改 善 と同 時 に持 続 的 成 長(そ れ に よ る貧 困 削 減 、 生 活 水 準 の 向 上)を も た らす こ とを 目的 と して い る。PRGFは 、 世 界 銀 行 が提 供 す る譲 許 的 融 資 制 度(IDA)で 設 定 され る一 人 当 た り所 得 基 準(09年 会 計 で は2007年1人 当 た りGNIで1095ド ル 未 満)に 該 当 す る 国 が 対 象 とな っ て い る。 金 利 は わ ず か0.5%、 返 済 は 五 年 半 ∼ 十 年 の 間 に な され る こ とが 義 務 付 け られ る 。2008年8月 現 在 、78力 国 がPRGF融 資 を 受 け る資 格 が あ る と され て い る。 通 常 の 融 資 額 は 、 ク ォ ー タ の 最 大14 0%ま で の 上 限 の な か で 実 施 され て い る(例 外 的 に185%ま で 引 き 上 げ る こ と も あ る)。 IMF支 援 プ ロ グ ラ ム は 三 年 間 が 一 般 的 で あ る。
こ の ほ か 、低 所 得 国 に 適 用 され る融 資 制 度 「Exogenous Shocks Facility」 が あ る。食 糧 ・ 燃 料 価 格 の 高 騰 や 自然 災 害 な どの 政 府 が コ ン トロー ル で き な い も の の 、 深 刻 な 打 撃 を経 済 に 及 ぼ す よ うな 対 外 的 な 経 済 シ ョ ッ ク(か く乱 要 因)に 対 処 す る こ と を 目的 と して い る。 2008年9月 に修 正 が な さ れ 、 急 速 で か つ 十 分 大 規 模 な シ ョ ッ ク に 直 面 す る 低 所 得 向 け 支 援 とい う視 点 か ら コ ン デ ィ シ ョナ リテ イ の 内 容 が 整 理 され て い る。 こ の 融 資 制 度 で 適 用 され る金 利 も わ ず か0.5%で 、IMFへ の 融 資 返 済 は 五 年 半 か ら十 年 で 完 了 す る こ と と さ れ て い る。
II。東 ア ジア 危 機 と最 近 の 金 融 危 機 に お け る コ ンデ ィ シ ョナ リテ ィの 変 化
-1-1.コ ンデ ィ シ ョナ リテ ィ と は (1)コ ン デ ィ シ ョナ リテ ィ の概 要 IMFか ら金 融 支 援 を受 け る場 合 、 当該 国 は 、 国 際 収 支 問 題 を解 決(つ ま り国 際 収 支 を 赤 字 か ら黒 字 に転 換 し、 外 貨 準 備 を 蓄 積 す る こ と)す る た め に 、 お よ びIMFか ら受 け た 一 時 的 融 資 の 返 済 を確 保 す る た め に 、 適 切 な 政 策 を 実 行 す る こ とが 義 務 付 け られ て い る。 こ の 政 策 の 内 容 は 、 当 該 国 政 府 が 選 択 し、 デ ザ イ ン し、 実 行 す る 一 義 的 責 任 を 負 うも の と され て い る(実 際 に は 、IMF職 員 が 主 導 し、 政 府 との 交 渉 で 策 定 され て い る)。 通 常 、 IMF 支 援 プ ロ グ ラ ム の 中 に含 ま れ る 政 策 は 、 早 急 の 対 外 不 均 衡 問 題 の 解 決 を め ざす 短 期 的 なマ ク ロ経 済 政 策 を 多 く含 ん で い る。 しか し、 状 況 に よ っ て は長 期 的 な 経 済 安 定 や 経 済 成 長 に 不 可 欠 と判 断 され る 場 合 に は 、 そ れ 以 外 の 政 策 を 含 む こ と も あ る(た と え ば イ ン フ レ抑 制 の た め の 所 得 政 策 、公 的 債 務 削 減 、金 融 セ ク ター の 強 化 策 な ど)。 こ う した 一 連 の 政 策 が 「政策 プ ロ グ ラ ム(Policy Program)」(い わ ゆ る 「IMF支 援 プ ロ グ ラ ム 」)と 呼 ば れ て い る。 そ
れ らは 、(前 述 して い る よ うに)当 該 国 政 府 代 表(た と え ば 首 相 か 財 務 大 臣 、 中 央 銀 行 の 総
裁 との 連 名)か らIMF専 務 理 事 に宛 て たLet七er of Intentと 呼 ば れ る文 書 に 記 載 され 、 当
該 国 政 府 がIMFに 金 融 支 援 を要 請 す る 形 式 を と る。 Letter of Intentで は 、プ ロ グ ラ ム期 間
中 に 実 践 す る予 定 の 財 政 政 策 ・金 融 政 策 ・為 替 政 策 ・金 融 セ ク タ ー 改 革 ・そ の ほ か(た と
え ば 民 間 債 務 リ ス ケ ・賃 金 抑 制 な どの 所 得 政 策 ・そ の ほ か の 構 造 改 革)が 具 体 的 に 説 明 さ
れ て い る。 こ の 文 書 に は 「Technical Memorandum of Understanding」 と呼 ば れ る 文 書 が
添 付 され て お り、 こ こ で は プ ロ グ ラ ム の モ ニ タ ー 時 期(ス タ ン ドバ イ で あ れ ば 四 半 期)ご との 達 成 時 期 と と も に 詳 細 な 数 値 目標 や 政 策 目標 が 明 記 され て い る。 これ ら の 文 書 と と も に 、 当該 国 政 府 がIMF理 事 会 に金 融 支 援 を 申請 す る形 を と る。 これ らの 文 書 を も と にIMF 理 事 会 が 審 査 し、 承 認 をす る。 承 認 を 経 て 、IMF融 資 の分 割 払 い の うち 第1回 目の 支 払 が た だ ち に 実 施 さ れ る。 そ れ と 同 時 に 、 当該 国 政 府 は 合 意 し た 政 策 の 実 行 を 開 始 す る 義 務 を 負 うこ と に な る。 IMF支 援 プ ロ グ ラ ム に は 、 具 体 的 な 数 値 目標 や 構 造 改 革 な ど の 政 策 目標 が 明 記 され て お り、 これ ら を 総 称 して 「コ ン デ ィ シ ョナ リテ イ 」 と呼 ん で い る。コンディショナリティ は 、 IMFガ イ ドライ ン(2000)に 詳 細 に記 載 され て い る が 、 基 本 的 な 仕 組 み は 「プ ライ ア ー ・ア ク シ ョ ン(Prior Action)」 、「パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ リア(Performance Criteria)」、
「イ ンデ イ カ テ イ ブ ・タ ー ゲ ッ ト(lndicative Target)」 、 「構 …造 的 ベ ン チ マ,_.._.ク(Structural
Benchmarks)」 な ど か ら 構 成 さ れ て い る 。 前 述 し たTechnical Memorandum of
Understandingに 明 記 され る 詳 細 な 目標 に 相 当 す る もの で あ る。 IMF融 資 は分 割 支 払 い さ
れ て お り、 そ れ に よ り 当該 国 の 政 府 が 公 約 した 政 策 を き ち ん と実 行 して い る かIMF職 員 が
モ ニ タ ー を して い る。 こ の モ ニ タ ー をす る とき に 、 き ち ん と政 策 を 遂 行 して い る か を判 断 す る の に 重 要 な 役 割 を も つ の が これ らの 指 標 で あ る。
(2)プ ラ イ ア-Iア ク シ ョン プ ラ イ ア ー ・ア ク シ ョ ン は 、IMF理 事 会 がIMF支 援 プ ロ グ ラ ム を 承 認 す る前 に 、 当 該 国 政 府 に 実 行 を 義 務 付 け る 政 策 で あ る 。 必 ず し もす べ て の プ ロ グ ラ ム に 含 ま れ るわ け で は な い が 、 プ ロ グ ラ ム を成 功 に 導 く た め の 土 台 と して 必 要 不 可 欠 な 場 合 に 、 活 用 され て い る 。 た と え ば 、 ア イ ス ラ ン ドに よ っ て2008年11月 採 用 され た プ ロ グ ラ ム の ケ ー ス で は 、 (通貨 暴 落 の 中 で 為 替 レー トを 安 定 化 させ る た め に)政 策 金 利 を18%へ 引 き 上 げ お よ び (包括 的 な 経 済 政 策 を 実 行 す るた め の 調 整 を 促 進 す る た め)関 連 省 庁 か ら構 成 され る委 員 会 設 置 の 二 件 が 、 プ ラ イ ア ー ・ア ク シ ョ ン と して 含 ま れ て い る(Appendix Iを 参 照)。20 08年12月 に プ ロ グ ラ ム が 採 択 され た ウ ク ラ イ ナ の ケ ー ス で は 、(こ れ ま で の ドル ・ペ ッ グ制 を 完 全 に放 棄 して)変 動 相 場 制 の 採 用 、 銀 行 救 済 条 件 を 示 した 法 令 の 発 行 、 銀 行 対 策 実 施 に 関 連 す る権 限 を 中央 銀 行 へ 付 与 す る た め に既 存 法 の 改 正 、Prominvest Bank(第 六 位 の 地 場 銀 行)の 救 済 整 理 の 完 了 と い っ た 四 つ の 政 策 の 実 施 が 含 ま れ て い る。2008年 12月 にIMF支 援 プ ロ グ ラ ム が 承 認 され た ラ トビア の ケ ー ス で は 、 Parex銀=行(最 大 手 の 地 場 銀 行)の 経 営 者 に よ る 政 府 へ の 再 建 計 画 提 出 、2009年 度 補 正 予 算 の 国 会 成 立 、 地 方 政 府 職 員 の 平 均 報 酬15%削 減 を 明 記 した 議 定 書 に 対 す る政 府 の 署 名 の 三 つ の 政 策 が 含 ま れ て い る 。2008年11月 に プ ロ グ ラ ム が 承 認 され た ハ ン ガ リー で は 、 プ ラ イ ア ー ・ ア ク シ ョン は含 ま れ て い な い 。 (3)数 量 的 パ フ ォ 一 マ ン ス ーク ラ イ テ リア パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア は 、コンディショナリティ の な か で も も っ と も 重 要 な 指 標 で 、 これ を 各 モ ニ タ ー 期 に達 成 しな い とそ の 期 に 予 定 され て い るIMF融 資 の 引 出 しが 行 われ な い こ と に な る 。 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ リア は 、 「数 量 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ
テ リア(Quantitative Performance Criteria)」、 「構 造 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア
(Structural Performance Criteria)」、「継 続 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア(Continuous
Performance Criteria)」 か ら構 成 され て い る。 数 量 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア の 内 容 は 、 マ ク ロ経 済 政 策(つ ま り財 政 政 策 、 金 融 政 策 、 為 替 政 策 な ど)が 中 心 で あ る。 金 融 政 策(た と え ば 中央 銀 行 に よ る 貸 出 上 限 、 べ 一 ス ・マ ネ ー の 上 限)、 財 政 政 策(財 政 赤 字 の 上 限 、 政 府 に よ る借 入 れ 上 限)、 な らび に 外 貨 準 備 残 高(ま た は 外 貨 準 備 残 高 の 変 化)の 下 限 な どが 、 典 型 的 な 指 標 と して 含 ま れ て い る(Appendix Iを 参 照)。 こ の 理 論 的 根 拠 は 「フ ァ イ ナ ン シ ャ ル ・プ ロ グ ラ ミ ン グ」 と呼 ば れ て お り、 今 日ま で こ の根 拠 は 変 わ る こ とな く維 持 され て い る(詳 細 は 、 白井 【1999】参 照 を)。IMF支 援 プ ロ グ ラ ム の 目的 は 当 該 国 の 国 際 収 支 の 黒 字 化 に あ り、 持 続 的 に 国 際 資 本 が 当 該 国 に 流 入 し、 外 貨 準 備 を あ る程 度 蓄 積 で き る状 態 の 実 現 を 目指 して い る 。 こ の た め 、 外 貨 準 備 残 高 ま た は 変 化 幅 の 下 限 を数 量 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ リア と して 含 め る こ とが 多 い の で あ る 。 ア イ ス ラ ン ド、 ウ ク ラ イ ナ 、ハ ン ガ リー 、 ラ トビア で も 、 こ の 指 標 が 数 量 的 パ フ ォー マ ン ス ・ ク ラ イ テ リア と して 含 ま れ て い る(Appendix Iを 参 照)。 外 貨 準 備 の 変 化 は 、経 常 収 支 と資
本 収 支(IMF国 際 収 支 マ ニ ュ ア ル で は 現 在 「金 融 収 支 」 と呼 ばれ て い る)の 合 計 に 等 し く な る こ と か ら、 つ ぎ の(1)式 の 関 係 が 成 立 す る 。 経 常 収 支 と資 本 収 支 の 合 計 は 国 際 収 支 (総合 収 支)と 呼 ばれ て い る。
外貨準備 の変化 e
経常収支 +
資本収支 =国 際収支
(1)
経 済 危 機 状 況 下 で 外 貨 準 備 を増 や す た め に は 、 経 常 収 支 を 黒 字 化 す る こ と 、 資 本 収 支 の 流 出(資 本 収 支 が マ イ ナ ス と な っ て い る状 態)を で き る だ け 食 い 止 め る政 策 が 必 要 で あ る。 経 常 収 支 は 、 政 府 部 門 の 貯 蓄 ・投 資 バ ラ ン ス と民 間 部 門 の 貯 蓄 投 資 バ ラ ン ス に等 しい 。 経 常 収 支 = (S-1)民 間+ (S-1)政 府(2)
政 府 部 門 の 貯 蓄 ・投 資 バ ラ ン ス は 財 政 収 支 に 等 しい 。 した が っ て 、 経 常 収 支 を改 善 す る た め の 政 策 と して は 、(大 幅 な財 政 赤 字 が 継 続 して い る状 態 で あ れ ば)政 府 の 財 政 収 支 の 改 善 が 必 要 と な る。 こ の た め 、 数 量 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア で は 財 政 赤 字 の 下 限 を 設 置 す る こ とが 多 い の で あ る 。 ア イ ス ラ ン ド、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リー 、 ラ トビア の い ず れ も 政 府 の財 政 収 支 を抑 制 す る指 標 が 、 数 量 的 パ ブ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ リア と して 含 ま れ て い る 。 財 政 収 支 目標 は 、 当該 国 の 事 情 に応 じて 中 央 政 府 とす る こ と も 、 一 般 政 府 とす る こ と も あ る。 ま た 、 財 政 収 支 の 他 、(利 払 い 負 担 を 除 く)プ ライ マ リ・一 ・バ ラ ンス を指 標 と して 採 用 す る こ と も あ る 。 どの 指 標 を選 択 す る か はIMF職 員 と政 府 の 交 渉 の な か で 決 定 され る。 さ ら に 、 政 府 の対 外 債 務 の急 増 を 抑 え る た め に 、 政 府 に よ る 対 外 借 入 れ に 上 限 を設 定 す る こ と も 多 い 。 ア イ ス ラ ン ドの ケ ー ス で は 、 中 央 政 府 に よ る新 規 の 中 ・長 期 対 外 債 務 契 約 に 上 限 を設 定 して い る だ け で な く、 中央 政 府 に よ る短 期 対 外 債 務 残 高 や 国 際 機 関 ・外 国 政 府 へ の 対 外 債 務 の 延 滞 累 積 額 に 上 限 を 設 定 す る な ど、 他 国 に 比 べ て 詳 細 な 債 務 関 連 の 指 標 をパ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア と して 導 入 して い る。 これ は 、 ア イ ス ラ ン ドの 対 外 債 務 が 国 の 経 済 規 模 に 比 べ て 著 し く大 きい た め に(対 外 債 務 残 高 の 対GDP比 は2006年 に4 55%と 、 ウク ラ イ ナ の50%、 ハ ン ガ リー の90%、 ラ トビ ア の115%を は る か に 上 回 っ て い る 、 投 資 家 の コ ン フ ィデ ン ス を 回 復 す る た め に 必 要 と判 断 され た 指 標 だ と考 え ら れ る。 金 融 政 策 つ い て 、 「マ ネ タ リー ・サ ー ベ イ 」(中 央 銀 行 と商 業 銀 行 の バ ラ ン ス シ ー トの 合 計)と 呼 ば れ る マ ク ロデ ー タ が 重 要 で あ る。 マ ネ タ リー ・サ ー ベ イ で は 、 つ ぎ の(3)式 の 関 係 が 成 り立 っ て い る。 マ ネ ー ・サ プ ラ イ の 変 化 e 純 対 外 資 産 の 変 化 + 純 国 内 資 産 の 変 化 (3)マ ネ ー ・サ プ ラ イ は 、 つ ぎ の(4)式 の よ う に 、 貨 幣 の 信 用 乗 数 に べ 一 ス ・マ ネ ー(ハ イ パ ワ ー ド ・マ ネ ー ま た は リ ザ ー ブ ・マ ネ ー と も 呼 ば れ て い る)を 掛 け 合 わ せ た も の に 等 し く な る 。 マ ネ ー ・サ プ ラ イ = 信 用 乗 数*べ 一 ス ・マ ネ ー
(4)
イ ン フ レを 抑 制 す る た め に は 、 金 融 引 き締 め政 策 を実 施 す る必 要 が あ る。 そ れ に は 、 中 央 銀 行 の べ 一 ス ・マ ネ ー の伸 び を 抑 制 す る か 、 貨 幣 の 信 用 乗 数 を 引 き 下 げ る 必 要 が あ る。 べ 一 ス ・マ ネ ー の 伸 び を 抑 制 す る に は 、 公 開 市 場 操 作 で 売 りオ ペ レー シ ョン を 実 施 して 政 策 金 利 を 引 き 上 げ る か 、 公 定 歩 合 を 引 き 上 げ る 措 置 が と られ る。 貨 幣 の 信 用 乗 数 を 引 き下 げ る に は 、 法 定 準 備 預 金 比 率 を 引 き 上 げ る措 置 が と られ る 。 べ 一 ス ・マ ネ ー は 中央 銀 行 の 負 債 側 の 項 目 に位 置 し て お り、 次 の(5)式 に示 され て い る よ うに 、 中央 銀 行 の 純 対 外 資 産 と純 対 外 債 務 の 合 計 に等 しい 。 べ 一 ス ・マ ネ ー = 中央 政 府 の 純 対 外 資 産 + 中 央 政 府 の 純 国 内 資 産 (5) 政 府 の 財 政 赤 字 が 経 常 収 支 の赤 字 を も た ら し、 国 内 需 要 を 急 増 させ て 景 気 過 熱 に よ る イ ン フ レ圧 力 を も た ら して い る 場 合 、 あ る い は財 政 引 き 締 め を 実 施 した い 場 合 、 数 量 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア と して 、 べ 一 ス ・マ ネ ー の 伸 び 率 に 上 限 を課 す こ とが あ る(ウ ク ラ イ ナ の ケ ー ス を参 照)。 そ の ほ か 、 金 融 政 策 と して 、 上 記(5)式 の 中央 銀 行 の 純 国 内 資 産 の 項 目の な か に含 ま れ て い る 、 「政 府 部 門 へ の 貸 出 残 高 」 の 伸 び に 上 限 を 設 定 して 抑 制 す る 政 策 が 、 数 量 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア と して 含 ま れ る こ とが 多 い(ア イ ス ラ ン ドと ラ トビア の ケ ー ス)。 ハ ン ガ リー は イ ン フ レー シ ョ ン ・タ ー ゲ テ イ ン グ を採 用 して い る た め 、 直 接 的 に イ ン フ レ 目標 を 設 定 し、 事 実 上 の パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア と して 扱 っ て い る(下 記 の イ ン フ レー シ ョ ン ・コ ン サ ル テ ー シ ョ ン ・ク ロ ー ズ を参 照)。 (4)構 造 的 パ フ ォ ー マ ン ス ーク ラ イ テ リア 構 造 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ リア に は 、構 造 改 革 に 関 連 す る政 策 が 多 く含 ま れ て い る 。 こ の た め 、 数 量 的 パ フ ォ ・一マ ン ス ・ク ライ テ リア と異 な り、 国 に よ っ て 大 き く内 容 が 異 な っ て い る。 ア イ ス ラ ン ドの ケ ー ス で は 、 国 有 化 した 国 内 大 手 三 大 銀 行(新 銀 行)へ の 少 な く と も10%へ の 増 資(2009年2月 末 ま で 実 施)と 専 門 家 に よ る 金 融 セ ク タ ー の 規 制 ・監 督 方 法 に つ い て の 評 価 の 実 施(2009年3月 末 ま で 実 施)が 含 ま れ て い る。 ウ ク ラ イ ナ の ケ ー ス で は 、 主 要 銀 行 に 対 す る査 定 完 了(2008年12月 末 ま で)、 す べ て の 問 題 銀 行 の 解 決(2009年6月 末 ま で)、 お よび2009年 予 算 の 成 立(2009年4月 末 ま で)が 明 記 され て い る。 ハ ン ガ リー で は 国 内 銀 行 支 援 パ ッ ケ ー ジ の 国 会 成 立(200 8年11月10日 ま で 実 施)、 ラ トビ ア で は2009年 第2次 補 正 予 算(2009年3月 末 ま で)が 含 まれ て い る。 補 正 予 算 の 成 立 は 財 政 政 策 の 一 環 で は あ る も の の 、 予 算 の 成 立 とい う行 為 自体 は 数 値 化 で き な い た め 、 あ る種 の 構 造 改 革 とみ な す こ と も で き る。
(5)継 続 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア
数 量 的 パ フ ォVマ ン ス ・ク ラ イ テ リア と構 造 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ リア の ほ か に 、
継 続 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア(Continuous Performance Criteria)を コ ン デ イ シ
ョナ リテ イ に含 め る こ とが あ る。 達 成 時 期 を定 めず 、 プ ロ グ ラ ム 期 間 中 は 常 に 実 施 が 義 務 付 け られ る政 策 で あ る 。 この 政 策 を怠 っ た 場 合 、IMF支 援 の 中 断 に な り うる た め 重 要 な基 準 で あ る 。 継 続 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア は 、 ウ ク ラ イ ナ 、 ハ ン ガ リー 、 ラ トビ ア の プ ロ グ ラ ム で は 定 め られ て い る。 ウ ク ライ ナ で は 、 経 常 収 支 に 関 す る為 替 取 引 に 対 す る 規 制 導 入 の禁 止 、 複 数 為 替 レー トの 導 入 の 禁 止 、IMF協 定 第 八 条 と非 整 合 的 な 二 国 間 支 払 協 定 の 締 結 の 禁 止 、 輸 入 規 制 の適 用 の 禁 止 な どが 含 ま れ て い る 。 ウ ク ライ ナ で は 資 本 流 出 を抑 制 す る た め に 、 詳 細 な 為 替 規 制 を 導 入 して い る た め 、 経 常 収 支 な ど貿 易 取 引 関 連 や 特 定 の 輸 入 規 制 の導 入 を 防 ぐべ く、こ の よ うな 内容 の 指 標 が 明 記 され た と考 え られ る。ま た 、 経 済 危 機 前 に は 事 実 上 の ドル ・ペ ッ グ制 を 採 用 して い た の を 変 動 相 場 制 に移 行 して お り、 柔 軟 で で き る 限 り歪 み を も た ら さ な い 為 替 制 度 を維 持 す る た め に も 、 複 数 為 替 レー トの 導 入 を 禁 止 す る項 目が 明 記 され た と思 わ れ る 。 ハ ン ガ リー と ラ トビ ア の ケ ー ス で は 、 債 務 の 延 滞 を 累 積 しな い こ と と い っ た 内 容 が 含 ま れ て い る。 継 続 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リ ア で は 、 東 ア ジ ア 諸 国 の プ ロ グ ラ ム で は 見 られ な か っ た 新 しい 指 標 で あ る。 (6)イ ン フ レー シ ョ ン-コ ンサ ル テ ー シ ョ ン ・ク 口-ズ さ ら に 、 「イ ン フ レー シ ョ ン ・コ ンサ ル テ ー シ ョン ・ク ロー ズ(ln且ation Consultation Clauses)」 とい う項 目 が 、コンディショナリティ に含 ま れ て い る。 こ の 項 目 は 新 し い も の で 、1997∼98年 の 東 ア ジ ア 危 機 の 際 に 導 入 され たコンディショナリティ に は 見 られ な い 。 東 ア ジ ア 危 機 を き っ か け に 、 タ イ 、 イ ン ドネ シ ア 、 韓 国 を は じ め 、 多 くの 新 興 市 場 諸 国 が 変 動 相 場 制 を 採 用 す る よ う に な っ て い る。 こ の た め 、 変 動 相 場 制 の も とで の 新 た な 反 イ ン フ レ政 策 と し て 、 「イ ン フ レー シ ョン ・タ ー ゲ ッテ ィ ン グ 」 を 採 用 す る 国 が 非 常 に 増 え て い る 。 こ う した 環 境 の 変 化 を反 映 して 、 現 在 で は 、 変 動 相 場 制 の も と で イ ン フ レー シ ョ ン ・タ ー ゲ テ イ ン グ を 採 用 して い る 国 に つ い て は 、 上 記 の ク ロー ズ が 適 用 され て い る。 同 ク ロー ズ で は 、 イ ン フ レ 目標 の 上 限 と下 限 が 設 定 され て お り、 こ れ を超 え た 場 合 に は 理 事 会 の コ ン サ ル テ ー シ ョン が 完 了 しな けれ ばIMF融 資 が 中 断 す る こ と に な り、 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ラ イ テ リア に相 当 す る 目標 で あ る。 ハ ン ガ リー の ケ ー ス で は 、2008年 当 初 に 為 替 レー トの 変 動 範 囲(バ ン ド)の 設 定 を 撤 廃 し、 イ ン フ レー シ ョン ・タ ー ゲ テ ィ ン グ に 比 重 を お い た 金 融 政 策 を 実 施 して い る。 ハ ン ガ リー の 場 合 、 最 終 的 な イ ン フ レ 目標 は3%で 、 これ に 向 け た イ ン フ レ率 を 段 階 的 に 上 限 ・下 限 の 範 囲 を 四 半 期 ご と に設 定 して い る。2008年 末 ま で に イ ン フ レ率 は 上 限7. 1%、 下 限3.1%、 中 央 値5.1%と 目標 値 が 設 定 され て い る。09年3月 末 ま で に は 上 限6.8%、 下 限2.8%、 中 央 値3.8%と の 目標 値 が 明 記 され て い る 。 ウ ク ライ ナ で は 経 済 危 機 以 前 は 事 実 上 の ドル ・ペ ッ グ 制 を 採 用 して い た が 、 現 在 は 管 理
フ ロー ト制 を採 用 して い る 。 い ず れ はイ ン フ レー シ ョ ン ・タ ー ゲ テ イ ン グ を 採 用 す る意 向 で あ る が 、 現 時 点 で は そ の 前 に 高 い 水 準 に あ る イ ン フ レ率(1998年 は26%予 想)の 大 幅 な 抑 制 が 喫 緊 の課 題 で あ る た め 、 イ ン フ レ シ ョー ン ・コ ン サ ル テ ィ ン グ ・ク ロ ー ズ は 設 定 され て い な い 。 ア イ ス ラ ン ドは も と も と変 動 相 場 制 とイ ン フ レー シ ョ ン ・タ ー ゲ テ イ ン グ を 採 用 して い た が 、 実 際 の イ ン フ レ率 は イ ン フ レ 目標 を つ ね に 上 回 る状 態 に あ っ た 。 現 在 は 、 国 内 三 大 銀 行 の 破 綻 に と も な う経 済 打 撃 に よ り四 力 国 の うち も っ と も経 済 危 機 が 深 刻 で あ り、 た だ ち に イ ン フ レー シ ョン ・タ ー ゲ テ イ ン グ を 採 用 で き る 状 態 に は な い 。 中 期 的 に は 再 び 採 用 す る予 定 で あ る が 、 現 在 は 実 施 し て い な い た め 、 プ ロ グ ラ ム で は 同 ク ロ ー ズ は 設 定 され て い な い 。 (7)イ ン デ ィ カ テ ィ ブ ・タ ー ゲ ッ ト こ の ほ か 、コンディショナリティ で 頻 繁 に み られ る指 標 と して 、 イ ンデ イ カ テ イ ブ ・タ ー ゲ ッ トが あ る 。 マ ク ロ経済 政 策 を中心 とす る内容 が多 い 。 多 くの場合 、 プ ロ グラ ム期 間 の な か で も っ と後 に 実 施 予 定 のIMF支 援 プ ロ グ ラ ム の レ ビ ュ ー の な か で 、 数 量 的 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ イ ア に 転 換 す る 予 定 で あ る が 、 現 時 点 で は 先 が 読 み に く い た め 、 と りあ えず イ ン デ イ カ テ イ ブ ・タ ー ゲ ッ トと して 数 値 目標 が 明 記 され て い る も の が 多 い(こ れ ら の イ ン デ イカ テ イ ブ ・タ ー ゲ ッ トはAppendix Iで は 明 示 され て い な い こ と に留 意)。 こ の ほ か の イ ンデ イ カ テ イ ブ ・ター ゲ ッ トと して は 、Appendix Iで 明 ら か な よ うに 、 細 か な 指 標 は そ れ ぞ れ の 経 済 危 機 の 原 因 や 置 か れ た 内 外 の 環 境 な ど に よ っ て 異 な っ て い る。 ハ ン ガ リー の ケ ー ス で は 中 央 政 府 の 債 務 残 高 の 上 限 を 、 ラ トビ ア の 場 合 に は(財 政 赤 字 削 減 策 の 一 環 と して)一 般 政 府 の 賃 金 報 酬 へ の 上 限 を含 め て い る。 パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ リア で は な い が 、 そ れ に付 随 す る重 要 な数 値 目標 が 設 定 され る こ と が 多 い 。 (8)構 造 的 ベ ン チ マ-ク 最 後 に 、 構 造 改 革 の な か で パ フ ォ ー マ ン ス ・ク ライ テ リア に は 含 め な い も の の 、IMF支 援 プ ロ グ ラ ム を 達 成 す る の に 重 要 な 政 策 が構 造 的 ベ ン チ マ ー ク と して 含 ま れ て い る。 構 造 的 ベ ンチ マ ー ク は 、構 造 改 革 関連 の 政 策 か ら な るが 、客 観 的 に モ ニ タ ー す る の が 難 しい か 、 そ れ 自体 がIMF の 中 断 を 左 右 す る もの で は な い が プ ロ グ ラ ム の成 功 で 重 要 な 政 策 の 一 部 で あ る 政 策 が 含 まれ る。 全 体 と して は 、 銀 行 セ ク タ ー の 改 革 に 関 す る 内 容 が 多 い 。 た と え ば ア イ ス ラ ン ドの ケ ー ス で は 、 銀 行 の 資 産 回 収 戦 略 の 策 定(2008年11月 末 ま で 実 施)、 国 有 化 され た 各 銀 行 の ビ ジ ネ ス 計 画 の レ ビ ュ ー(2009年1月15日 ま で)、 旧 ・新 銀 行 区分 に よ る銀 行 救 済 策 へ の 評 価(2009年1月 末 ま で)、 そ して 中期 財 政 再 建 実 行 計 画 の 策 定(2008年 末 ま で)が 含 ま れ て い る 。 ウ ク ラ イ ナ の ケ ー ス で は(外 貨 取 引 を活 発 に す る た め に)外 貨 取 引税 の 撤 廃(2009年4月 末 ま で)、 中央 銀 行 に よ る詳 細 な銀 行 情 報 の 開 示(2009年1月 末 ま で)お よび(将 来 的 に イ ン フ レー シ ョン ・タ ー ゲ テ イ ン グ の 導 入 を 目指 して)中 央 銀 行 の独 立 性 強 化(2009年6月 末 ま で)が 明 記 され て い る。 ア イ ス ラ ン ド、 ウ ク ライ ナ 、 ハ ン ガ リー 、 ラ トビ ア い ず れ の 国 で も銀 行 危 機 が発 生 して い る こ とか ら 、 銀 行 セ ク タ ー の 立 て 直 し を 図 り、 信 認 を 回 復 す る た め の 政 策(た と