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. 緒 言
タイヤは自動車の全重量や圧力を受け止め,その駆動力, 制動力を路面に伝え,熱を発散させる機構を受け持ち,自動 車の様々なパーツの中でも重要な役割を示す.現在,主流と なっているのは,タイヤの回転方向に対して,内部のカーカ スコードの配列が直角になっているラジアルタイヤである. これに対し,バイアス構造では,カーカスコードが斜めになっ ている.乗用車ではすでに約 95% 近くがラジアル化され,ト ラック,バス用タイヤも年々走行性,耐久性に優れると言わ れるラジアルが増加し,93% 弱がラジアル構造となっている. タイヤの内部には内圧を保つための補強材として,カーカ スが用いられているが,このカーカスは工業用繊維に鋼線等 よりなるタイヤコードを並べ,ゴム層で両面を被った,いわ ゆるコーテッドコードのことをさす[1].現在,タイヤコー ドには高強力ナイロンタイヤコードや,ポリエステルタイヤ コードなどが使用されている.走行中,タイヤは路面との摩 擦によって温度が上昇し,停車すると熱を発散することで常 温まで温度が低下するという繰り返し温度変化の下におかれ る.一例を挙げると,重荷を積んで高速道路を連続走行する トラック・バスなどのタイヤの内部温度はおよそ 100°C 以上 にまで達することが報告されている[2].そのため,タイヤ コードとして用いられている高強力ナイロン繊維の繰り返し 温度変化における物性や構造の変化を調査することは大変重 * 連絡先:龍谷大学 REC (Ryukoku Extension Center) 520-2194 滋賀県大津市瀬田大江町横谷 1-5, E-mail: [email protected]Tel: +81-77-544-7297, Fax: +81-77-543-7771
ORIGINAL PAPER
© 2006 The Textile Machinery Society of JapanStructure Variations of High Tenacity Nylon 6 Fiber
on Cyclic Temperature Changes
S
HIBAYA
Miaki
a, T
SUJI
Yoshihiro
b, S
AKURAI
Shinichi
b, I
SHIHARA
Hideaki
a,*, Y
OSHIHARA
Nori
c aDivision of Advanced Fibro-Science, Kyoto Institute of Technology,
Matsugasaki, Sakyo-ku, Kyoto 606
−8585, Japan
b
Department of Polymer Science and Engineering, Kyoto Institute of Technology,
Matsugasaki, Sakyo-ku, Kyoto 606
−8585, Japan
c
TOYOBO Co., Ltd., 1-1 Katata 2-chome, Otsu, Shiga 520
−0292, Japan
Received 2 September 2005; accepted for publication 3 December 2005Abstract
Nylon 6 fibers are used as tire cord in carcass of automobile tire for rubber reinforcement to keep internal pressure. During run state, the internal part of tire is heated up to 100 °C and cooled by stopping, resulting in the same thermal history of Nylon 6 tire cord. It has been reported that crystal phase of Nylon is transformed to other phase under high temperature condition. In room temperature, two reflection peaks assigned to α−phase were observed by wide angle X-ray diffraction measurement for Nylon 6 fiber. On heating, these two peaks became one peak of pseudohexagonal phase at around 70 °C. This transition referred as the Brill transition took place repeatedly by heating and cooling. Also, tensile strength decreased with increasing temperature by heating and increased by cooling. For higher-order structure measured by small angle X-ray scattering, the long period of Nylon 6 lamella was constant on cyclic temperature changes. On the other hand, it was observed that the slope against fiber direction and the size of lamella were irreversibly changed at around 70 °C. It has been reported in former study that the Brill transition was observed at higher temperature region than 150 °C because samples were Nylon 6 pellets and films. Accordingly, the Brill transition temperature changed much lower in high oriented Nylon 6 fiber.
Key Words: Nylon tire cord, Nylon 6, Brill transition, Wide angle X-ray diffraction, Small angle X-ray scattering
繰り返し温度変化による高強力ナイロン 6 繊維の構造変化
要である. ナイロン 6 はε−カプロラクタムの開環重合によって得られ る[3].ナイロン 6 はアミド基間のメチレン基の数は 5 個であ り,奇数であるため,ナイロン 66 のように分子に対称心が ないため,分子に上向き,下向きの区別が生じる.そのため, 安定な結晶形態としては,Fig. 1 に示すように逆平行鎖のα 型結晶と平行鎖のγ 型結晶が存在する[4−8].γ 型では水素結 合で結ばれた H と O は同じ位相をとるためアミド基の部分で ねじれ,分子鎖はα 型より約 3% 縮んでいる.ナイロン 6 に は,安定なα 型とγ 型以外に,熱処理によってα 型に転移す るβ 型,不安定な擬六方晶型が存在することが知られている. これらの結晶型の間の転移は,ヨウ素処理や温度条件,紡糸 条件などによって起こることが報告されている[9−12].ナイ ロン 66 を 210°C 以上に熱すると,三斜晶が擬六方晶に変態す る現象が X 線回折によって観察される.この結晶形態の転移 は Brill 転移と呼ばれ,種々の脂肪族ナイロンにおいても見ら れる現象である[13].Brill 転移が観察される高温域では,メ チレン−アミド基間のねじれ運動が活発となり,メチレン鎖 のコンフォメーションが著しく乱れる.このとき,水素結合 を保持したまま,分子鎖のパッキングが擬六方晶へと変化す る.ナイロン 6 でも同様に X 線回折や赤外分光分析を用いた Brill転移についての報告がなされている[14−16].ナイロン6 の X 線回折に現れる回折点は,擬六方晶とγ 型とで類似して おり,安定性によって区別される.γ 型結晶は安定であるので, 加熱することでα 型に戻るものを擬六方晶としている[14]. ナイロン 6 の高温域における結晶転移に関しては,ペレット から作製したフィルム状のもので観察されているがこれま で,実製品中で想定される繰り返し温度変化におけるナイロ ン 6 タイヤコードの物性と結晶構造変化および高次構造変化 についての報告は見当たらない.そこで本研究では,高強力 ナイロン 6 繊維の構造と物性変化を温度を繰り返し変化させ て検討し,温度とナイロン 6 繊維の結晶構造および高次構造 との関係を明らかにすることを目的とした.
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. 実 験
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1
試 料
本研究に使用した高強力ナイロン 6 繊維は,溶融紡糸に よって得られ,繊度は 2127dtex,フィラメント数は 304 本で ある.硫酸 20°C 下で測定した相対粘度は 3.55 であった.2
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実験方法
引張試験には 20°C,65%RH に調節した試験室において, 万 能 試 験 機 を 使 用 し て 行 っ た . 変 形 速 度 は 300 mm/min, チャック間距離は 50 mm とした.測定温度域は 20 ∼ 100°C と し,100°C に昇温させた後,20°C まで降温させ,それぞれの温 度域で引張試験を行い,破断時の強度を引張強度 (Tenacity) として算出した. 広角 X 線回折 (WAXD) は X 線発生装置に理学電機製の RU3 (CuKα) を用い,定格出力45 kV−40 mAで行った.検出 器には,位置敏感比例計数管; PSPC50 (Position Sensitive Proportional Counter, PSPC) を用いた.測定温度域は引張試験 と同様に 20 ∼ 100°C とし,昇温速度 0.05°C/s,降温速度 0.2°C/s,保持時間は 100s とした. 高輝度シンクロトロン放射光を光源に用いた小角 X 線散乱 (SAXS) 測定は,SPring−8のBL40B2で行った.波長は0.1 nm, カメラ長は 1.0 m で,CCD カメラ: II−CCD(浜松ホトニクス 製)を用いて 2 次元 SAXS パターンの撮像を行った.測定温 度範囲はこれまでと同様とした.3
. 実験結果と考察
3
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引張試験
Fig. 2に引張試験によって得られた引張強度の温度による 変化を示す.昇温過程では,温度が高くなるにつれて,強 度 が 低 下 し た . 常 温 下 で の 強 度 と 1 0 0 ° C を 比 較 す る と , 1.0 cN/dtex程度,すなわち約 10% 減少していた.また,降温 過程では,温度が低くなるにつれて,強度は昇温過程と同様 Fig. 1 Crystal modification of Nylon 6; (a) α crystal form and(b) γ crystal form.
の強度にまで回復した.そのため,繰り返し温度変化におい て強度も可逆的に変化することが推察される.このように, 高強力ナイロン 6 繊維において,温度が物性に与える影響が 大きいことがわかる.
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WAXD
Fig. 3-1から 3-3 に PSPC によって得られた回折強度曲線を 示す.Fig. 3-1(a)∼(d)は一回目の昇温過程,Fig. 3-2(e)∼(h)は 降温過程,Fig. 3-3(i)∼(l)は二回目の昇温および降温過程の回 折強度曲線である.一回目の昇温過程では,温度が高くなる につれて波形が変化し,27°C では 2 つのピークであったが, 温度が高くなるとそのピークが緩やかになり,69°C を超え ると 1 つのピークを持つ波形となった.27°C では 2θ が約20° と約 24° 付近で現れたピークが 69°C では約 21° となった.降 温過程では,温度を低下させていくと 1 つのピークであった ものが 2 つのピークへ戻っていることが観察された.二回目 の昇温および降温過程でも同様に,温度が高い場合は 1 つの ピークとなり,温度が低い場合は 2 つのピークになった.こ のことから,繰り返し温度変化において面間隔が可逆的に変 化していることが推測される. これらのピークから面間隔を算出し,その変化と温度の関 係を Fig. 4 に示した.常温から温度を上昇させると(200)面に おける面間隔は徐々に小さくなり,逆に(002)および(202)面 の面間隔は大きくなり,70°C 近傍で 4.2Å となり,α 型から 擬六方晶型へ転移し,Brill 転移が観察された.約 70°C から 100°Cでは擬六方晶型を維持していた.降温させると,昇温 過程で結晶転移が起こったのとほとんど同じ温度である 70°C付近で,面間隔が 4.2Å から 2 つに分離し,可逆的に結晶 がα 型結晶に転移したことがわかる.再度温度上昇,下降を 繰り返すと,わずかに面間隔は変化しているが一回目の過程 と同様に高温域では 4.2Å であり,低温域では 2 つに分離する 傾向を示した.そのため,α 型から擬六方晶型への結晶転移 が繰り返し温度変化で可逆的に起こることが明らかとなっ た.すなわち,Brill 転移によって発現する擬六方晶型は高温 域では安定であると考えられる.これまでのナイロン 6 に関Fig. 3-2 WAXD intensity profiles of Nylon 6 fiber on cooling process; (e) 64 °C, (f) 51 °C, (g) 39 °C and (h) 34 °C.
Fig. 3-3 WAXD intensity profiles of Nylon 6 fiber on 2nd heating and cooling process; (i) 34 °C, (j) 72 °C, (k) 93 °C and (l) 34 °C.
Fig. 4 d spacing changes of Nylon 6 crystal in fiber on 1st and 2nd heating and cooling processes.
Fig. 3-1 WAXD intensity profiles of Nylon 6 fiber on heating process; (a) 27 °C, (b) 51 °C, (c) 69 °C and (d) 94 °C.
する研究では,ペレットから溶融させて作製したサンプルに 関しての報告がなされており,Brill 転移とされる転移温度は サンプル作製条件や測定条件によって異なるが,150 ∼ 200°C の温度域で観察されている.しかし,本研究のように高倍率 延伸された繊維においては,Brill 転移は,従来よりも低温域 である 70°C 付近で起こることがわかった.
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SAXS
F i g . 5に は 昇 温 お よ び 降 温 過 程 に お け る 2 次 元 S A X S (2d-SAXS) パターンの散乱像を示す.2d-SAXS パターンは 4 点像を示した.この結果から高次構造組織として,ヘリング ボーン型(綾織り模様型)の形態が示唆される.常温である 25°Cの散乱像を Fig.5 (a)に示したが,結晶ラメラが非晶相を 介して周期的に繰返しているが,結晶ラメラは繊維軸とは直 交しておらず,繊維軸に対してラメラが傾いていることが特 徴的である.温度を上げていくと,(e)で示したように 100°C ではその 4 点スポットの強度(散乱強度)が弱くなり,水平 方向に離れていた 2 つのスポットが若干近づいたことが確認 できる.100°C から一転,温度を低下させると Fig. 5 (f)のよ うに 2d-SAXS パターンは元には戻らず,繰り返し温度変化 では非可逆的な変化を示した. 2d-SAXSパターンから得られる特徴を定量的に捉えるため に,Fig. 5 に示した散乱像から座標変換することによって散 乱強度の方位角分布を表わす図を作成する.まず,2d-SAXS パターンの形状因子 (q, φ)の関係をFig. 6に示した.2d-SAXS パターンからの画像変換は自作のソフトウェアによって行っ た.ここで,q は散乱ベクトルの大きさで,式(1)で与えられる. q= (4π / λ) sin (θ / 2) (1) λ は X 線の波長,θ は散乱角である.ここで φ は散乱強度 ピークの開き角である.qmは散乱強度ピークの散乱光強度 I(q)が最大値となるときの散乱ベクトル,q* はその強度最大 位置間の距離を示す. まず,4 点像のクロスストリークを詳細に解析することに よって,結晶ラメラの繰返し周期(長周期)L を評価した. また,4 点像の散乱光強度は,上述の特徴を持つ高次構造組 織の量的指標と見なし得る.さらには,これをラメラ晶(板 状晶)の 2 次元的な広がりの指標とすることができる.Fig. 7Fig. 5 SAXS patterns of Nylon 6 fiber in terms of temperature change; (a) to (e) show heating processes and (f) shows cooling process.
Fig. 6 Parameters in 2d-SAXS pattern of Nylon 6 fiber. q: scattering vector, qm: peak position, q*: distance between
peaks and φ: angle of aperture.
Fig. 7 1d-SAXS profiles on cross-streaks, converted from the 2d-SAXS patterns shown in Fig. 5.
に 2d-SAXS パターンから抽出した散乱光強度プロフィール I(q)を示す.各温度において,I(q)ピークが存在した.この ピークはフィブリルのような構造がある程度周期的に配列し ていることに起因すると考えられる[17].Fig. 7 に示した散 乱プロフィールに見られる極大位置 qmから,式(2)により長 周期 L を算出した. L= 2π / qm (2) Fig. 8に示すように,長周期 L は温度を昇温させてもほと んど変化せず,繰り返し温度を変化させてもほとんど変化し ないことがわかった.そのため,長周期は繰り返し温度変化 において変化せずに一定であることが明らかとなった. 2d-SAXSパターンが 4 点像を示す場合,Fig. 6 に破線で示 した 2 つの強度最大位置間の散乱光強度のラインプロファイ ルは,M 字型となり,2 点像の場合は 1 つのピークを持つ. そのため,このラインプロファイルのピーク間における散乱 強度の高低差を見ることでストリークの形を定量的に評価で きる.1 つのピークの場合,高低差は 0 となる.この高低差 と温度の関係を Fig. 9 に示した.温度が高くなるにつれて, 高低差が減少し,70°C 付近で 0 となった.繰り返し温度上昇, 下降を繰り返しても回復せず,0 のままであった.このこと から,2d-SAXS パターンにおける 4 点像は繰り返し温度変化 において不可逆に変化することがわかった. 強度最大位置間の距離 q* と qmから式(3)にしたがって散乱 強度ピークの開き角φ を算出した. φ = 2 sin−1(q* / 2qm) (3) Fig. 10に散乱強度ピークの開き角と温度の関係を示した. この散乱強度ピークの開き角は繊維軸に対するラメラの傾き を示すため,温度が高くなるにつれてラメラの傾きが小さく なったことがわかった.再度温度を変化させてもラメラの傾 きが小さいまま変化せず,非可逆的であった.すなわち,一 旦高温で傾きが緩やかになった結晶ラメラは,そのままの状 態で安定であることを意味していると考えられる. 4点スポットの強度(散乱 X 線の強度)は,上述の特徴を 持つ高次構造組織の量的指標と見なし得る.さらには,これ をラメラ晶(板状晶)の 2 次元的な広がりの指標と見なし得 る.そこで,これらの点に注目するため,4 点スポットの強 度の温度変化を詳細に調査した.強度変化は Fig. 7 に示した 散乱光強度プロフィール I (q)のピーク面積から算出した. Fig. 11に温度との関係を示す.4 点スポットの強度は,温度 を高くすると徐々に減少し,70°C 付近で急激に減少するこ とがわかった.一方,繰り返し温度変化ではほとんど回復し ていなかった.すなわち,ラメラ晶の 2 次元的な広がり(大 きさ)は,70°C 付近で急激に減少し,繰り返し温度変化に よって回復せず,ラメラの傾きと同様に非可逆的な変化であ
Fig. 9 Intensity difference between two peaks of line profiles shown as broken line in Fig. 6 2d-SAXS patterns.
Fig. 10 Relationship between peak angles of scattering intensity and temperature.
Fig. 11 Peak area change as the index of lamella size in 1d-SAXS profiles shown in Fig. 7.
Fig. 8 Long period calculated by the Lorentz-corrected profiles of Nylon 6 crystal in fiber.
ることがわかった.この温度域は,WAXD で観察された結 晶転移が起こるのと同様である.そのため,この温度域で水 素結合が変化しやすく,高次構造にまで影響を与えたことが 推察される.
3
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繰り返し温度変化における構造変化
Fig. 12に繰り返し温度変化における高次構造組織のモデル 図(ラメラ晶の側面図)を示す.繰り返し温度変化において, 結晶構造は 70°C 付近で Brill 転移により,α 型から擬六方晶 型へ可逆的に変化するが,図に示したように,ラメラの傾き と 2 次元的な広がり(大きさ)は非可逆であることがわかっ た.また,長周期は温度を変化させても一定であった.引張 強度は可逆的であったことから,引張強度は結晶構造の転移 により影響を受けて変化することが示唆される.これまでの 報告では,150 ∼ 200°C とされていた Brill 転移が,ナイロン 6 繊維では,70°C 付近で観察された.これは,本研究では, 高度に一軸に配向した繊維を用いたため,結晶内の水素結合 性が無配向物とは異なっているためであると考えられる. Brill転移によって現れた擬六方晶型では,メチレン鎖のコン フォメーションが著しく乱れているために,高温域における 引張強度が低下することが報告されている[13].そのため, ナイロン 6 繊維においても,Brill 転移によるメチレン鎖のコ ンフォメーションの乱れが引張強度に影響を与えたと考えら れる.また,高温域でラメラの大きさが減少したのは,メチ レン−アミド基間のねじれ運動が活発となり,結晶構造が擬 六方晶型へと変化する際に,水素結合がわずかに分断された ためであると考えられる.これまでの研究ではペレットやフ ィルムを用いて検討が行われており,その場合,Brill 転移の 際には水素結合が保持されると考えられてきたが,本研究で 用いた高倍率延伸された繊維に場合では異なった挙動を示す ことが明らかとなった.4
. 結 言
高強力ナイロン 6 繊維を用いてその繰り返し温度変化での 物性と構造変化を検討した.その結果,繰り返し温度変化に おいて,引張強度とα 型から擬六方晶型への結晶構造転移, すなわち Brill 転移は可逆的に変化するが,ラメラの傾きと 2次元的な広がり(大きさ)は非可逆であることがわかった. また,温度に関わらず長周期は一定であった.これらの転移 温度が 70°C 付近であることから,高延伸された繊維の場合, メチレン鎖のコンフォメーションの乱れが従来よりも低温側 で起こり,Brill 転移温度が低くなることが明らかとなった. また,ナイロン 6 繊維の場合,Brill 転移点では,水素結合が わずかに分断されることが示唆された.References
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