J. Jpn. Acad. Mid., Vol.17, No.2, pp.6-15, 2003.12
原
著
分娩時の会 陰損傷 に よる後遺症 の比較 に関す る研 究
A comparative
study
on aftereffects
of
perineum injury
島 田 真 理 恵(Marie SHIMADA)1),2) 要 約 目 的 本 研 究 の 目的 は, 分 娩 時 に 会 陰切 開術 を受 けた 褥 婦 と会 陰 切 開術 を行 った 場 合 と同 等 の 会 陰 損 傷 で あ る第 二 度 会 陰 裂 傷 とな った褥 婦 の 後遺 症 (創部 痛 や 排 尿 トラ ブ ル の 有 無, 日常 生 活 上 の 支 障) の 程 度 に は差 が あ るの か ど うか を明 らか にす る こ とで あ る。 方 法 首 都 圏3病 院 に お い て,正 期 産 で 経 膣 分 娩 し,対 象 の 条 件 を 満 た した初 産 婦165名(切 開 群,第 一 度 裂 傷 群,第 二度 裂 傷 群 の3群 に分 類)を 対 象 に,自 記 式 質 問 紙 を用 い て産 褥4,5日 目 に調 査 を行 い, 有効 回答 が 得 られ た147名(89.1%)の 結 果 を統 計 的 に分 析 した。 結 果 1.分 娩 当 日,産 褥1,3日 目の 会 陰 の 痛 み(違 和 感)の 程 度 を ビ ジ ュ ア ル ア ナ ロ グ ス ケ ー ル に示 して も ら った 結 果 で は,3群間 に差 は認 め られ な か っ た 。 また,裂 傷2群 は分 娩 当 日か ら産 褥1日 目 に か けて,痛 み が 有 意 に軽 減 したが,切 開群 に有 意 な 軽 減 はみ られ な か っ た 。 2.産 褥 早 期 の 排 尿 困 難 や 尿 意 の低 下 に つ い て は,ど の群 も半 数 以 上 が 自覚 して お り,3群 間 に差 は な か った 。 3.生 活 上 の 支 障 の 程 度 の 比 較 で は,切 開群 は第 一 度裂 傷 群 と比 較 して,立 った 姿 勢 か ら座 る動 作 の支 障,睡 眠 し に くさ を有 意 に強 く感 じて い た 。第 二 度 裂 傷 群 と切 開群,第 二 度 裂 傷 群 と第 一 度 裂 傷 群 との 間 に は,有 意 差 は認 め られ な か っ た。 結 論 会 陰 切 開 術 を受 け た褥婦 と第 二 度 会 陰 裂 傷 とな った 褥 婦 の産 後 の後 遺 症 に,大 きな差 は な か っ た 。 少 な く と も第 二 度 裂 傷 群 の産 後 の後 遺 症 が切 開群 よ りひ ど い とい う こ とは な い と言 え る。 キ ー ワ ード 褥 婦,産 褥 期,会 陰 切 開術,会 陰裂 傷 Abstract PurposeThe purpose of this study is to clarify if there is a difference in aftereffects (perineumpain,
1)東 京 都立 保健 科 学 大学 (Tokyo Metroporitan University of Health Sciences)
2)昭 和 大学 医 学部 衛 生学 教室 (Department of Hygiene and Preventive Medicine, Showa University School
of Medicine)
分 娩 時 の会 陰損 傷 に よ る後 遺 症 の比 較 に関 す る研 究
pain, difficulties in urination or daily life) between puerperal women who received an episiotomy and those who experienced a second degree spontaneous perineum laceration, which is equal to an episiotomy.
Method
A questionnaire survey was conducted in three hospitals within Tokyo metropolitan area in Japan on the fourth or fifth day after childbirth and 165 primiparous women who had a
aginal and full-term delivery participated.
They met the requirements of the study and were classified into three categories: women who received episiotomies, those with a first degree laceration, and those with a second degree laceration. 147 responses (89.1%) were valid and analyzed statistically.
Results
1. The result of visual analogue scale showed no difference in the degree of pain (discom-fort) among those three categories on the day of the delivery, the first and the third day postpartum. The pain was significantly alleviated from the day of childbirth to the follow-ing day for those with natural tears but no such relief was found for those receiving episiotomies.
2. At the early stage of puerperal period, more than half of the participants in each cate-gory recognized the urination difficulty and decline of micturition desire. There was no
significant difference between them.
3. In comparison of difficulties in daily life, those with episiotomies found it more difficult to shift their standing position to a sitting posture and to fall asleep than those with a
first degree laceration. No difference was shown between those with a second degree
eration and those in the other two categories.
Conclusion
There was no significant difference in aftereffects between women who had episiotomies and those with a second degree laceration. It cannot be asserted that the aftereffects of a second degree laceration are more serious than those of an episiotomy.
Key Words puerpera, puerperium, episiotomy, perineum laceration
1緒
言
現 在 の 日本 の病 産 院 で は,経 膣 分 娩 時 に会 陰 切 開術(正 中 側 切 開)が ル ー テ ィ ンに行 わ れ る こ と が 多 く,施 設 に よ っ て は,初 産 婦 に対 して は ほ ぼ 全 例 施 行 して い る場 合 も少 な くな い。 会 陰 切 開術 は,裂 傷 よ りも縫 合 が 安 易 で 治 癒 が 良好 で あ るた め,褥 婦 に とっ て も安 楽 で あ る と認 識 さ れ て い る こ とや,第 三,四 度 とい った,損 傷 度 が大 き く縫 合 が難 しい 会 陰裂 傷 の 発 生 を防 止 す る とい っ た 目 的 の ほ か,分 娩 第2期 所 要 時 間 の短 縮 に よっ て胎 児 脳 障 害 や骨 盤 底 筋 群 の 弛 緩 に よ っ て 引 き起 こさ れ る産 後 の尿 失 禁,子 宮 下 垂 お よ び子 宮 脱 を予 防 す る理 由 等 で 行 わ れ て い る(Thacker&Banta, 1983)。 一 方,欧 米 諸 国 で は,1970年 代 か ら これ ら会 陰 切 開 術 の 効 果 を 検 討 す る た め に 多 くの ラ ン ダ ム 化 比 較 試 験(RCT)を 含 む 研 究 が 行 わ れ,そ れ ら 研 究 論 文 のSystematic reviewを 行 っ た 文 献 も複 数 存 在 す る が(Woolley,1995;Renfrew,1998; Carrolin&Belizan,2002>,一 般 的 に 述 べ ら れ て い る効 果 は 検 証 さ れ ず,今 日 に 至 っ て い る 。 日本 で も会 陰 切 開 術 を 受 け た 褥婦 と会 陰 裂 傷 と な っ た 褥 婦 の 産 後 の 日 常 生 活 上 の 支 障 や 創 部 痛 の 程 度 を 比 較 し た 研 究(大 久 保 ら,2000;山 崎 ら, 1994;佐 藤 ら,1994)が み ら れ,会 陰 切 開 術 を 受 け た 褥 婦(以 下,切 開 群 と称 す る)よ り会 陰 裂 傷 と 日本 助 産 学 会 誌 第17巻 第2号(2003.12) 7分 娩時 の 会陰 損傷 に よ る後 遺 症 の比 較 に 関 す る研 究 な っ た褥 婦(以 下,裂 傷 群 と称 す る)の ほ うが,産 後 の 生 活 上 の支 障 や創 部 痛 が 軽 度 で あ る こ とが 報 告 され て い る。 会 陰 切 開術 は 分娩 時 に筋 層 に達 す る切 開 を施 し,分 娩 後 縫 合 す る行 為 で あ り,第 二 度 会 陰 裂 傷 を人 工 的 に起 こ して い る と言 い 換 え る こ とが で き る。 しか し,こ れ ら先 行 研 究 に お け る 裂 傷 群 は,表 皮 の み の損 傷 で あ る第 一 度 裂 傷 の 者 と筋 層 まで裂 傷 が達 して い る第 二 度 裂 傷 の 者 が 混 在 した集 団 で あ り,切 開群 と比 較 す る と,会 陰 損 傷 の程 度 が軽 度 の者 が 多 く,創 部 痛 や 生 活 上 の 支 障 に差 が 生 ず る ことは予 測 で きうる とも考 えられ る。 本 研 究 は,分 娩 時 に会 陰切 開術 を受 けた 褥 婦 と 会 陰 切 開 術 と同等 の会 陰損 傷 で あ る,第 二 度 会 陰 裂 傷 を生 じた褥 婦 の後 遺 症 に は差 が あ るの か 否 か を明 らか に す る こ とを 目的 と した 。 な お,本 研 究 に お い て,(褥 婦 の)後 遺 症 とは, 会 陰 損 傷 に よっ て 引 き起 こさ れ る創 部 の痛 み お よ び違 和 感,産 褥 早 期 の排 尿 トラ ブ ル,日 常 生活 上 の支 障 の状 況 を指 す。 さ らに,日 常 生 活 上 の支 障 とは,褥 婦 の 日常 生 活 上 の動 静 や 睡眠,育 児,排 泄 へ の影 響 と心 理 的 反 応 を指 す。 II方 法 1.対 象 研 究 対 象 は,首 都 圏 に位 置 す る3病 院 で平 成13 年6月 か ら9月 に正 期 産 で 経 膣 分 娩 し,会 陰 切 開 術 を受 けた 初 産 婦 な ら び に第 一 度,第 二 度 裂 傷 と な っ た初 産 婦 の う ち,以 下 の 条 件 を満 た す165名 とした 。 1)合 併 症 妊 娠 に よ る リス ク を もっ て い な か っ た 者 。 2)分 娩 前 後 の 血 中 ヘ モ グ ロ ビ ン値 が9.0g/dl 以 上 で あ った 者 。 この 条 件 を設 けた の は,創 部 治 癒 が 遷 延 す る可 能 性 が あ る褥 婦 を除 外 す るた めで あ る。 また,初 産 婦 に限 定 した の は,経 産 婦 の 場 合,前 回分 娩 時 の会 陰 損 傷 の状 態 が 今 回 の 創 部 痛 や 生 活 上 の支 障 の認 知 に影 響 を及 ぼ す こ とが 推 測 され るた め で あ る。 また,第 一度 裂 傷 群 は,偶 発 的 ま た は人 為 的 な 筋 層 に及 ぶ受 傷 群 に対 す る一 種 の コ ン トロ ール 群 と して,研 究 に加 え る こ と と した 。 な お,対 象 施 設 の う ち,2施 設 は初 産 婦 で あ っ て もで き るか ぎ り会 陰 切 開 術 は施 行 しな い 方 針 の 施 設 で あ り,妊 婦 に も健 診 や 出 産 準 備 ク ラ ス な ど で,助 産 師 か らそ の 方 針 が 伝 え られ て い る。 残 る 1施 設 は,初 産 婦 に ほ ぼ ル ー テ ィ ンで 会 陰 切 開術 を施 行 して い る施 設 で あ り,施 設 で行 っ て い る 出 産 準 備 ク ラ ス で は,医 師 か ら妊 婦 へ 「会 陰 裂 傷 に な る よ り切 開 し た ほ うが 創 部 も きれ い に 治 癒 す る」 とい っ た 説 明 が 行 わ れ て い る。 また,3施 設 と も母 児 同室 制 を とっ て お り,調 査 時 点 に お い て は,対 象 褥 婦 の 全 員 が24時 間母 児 同 室 を行 っ て い た 。 2.調 査 方 法 産 褥4,5日 目 の褥 婦 に 調 査 に 関 す る 同 意 を 得 た 後,研 究 者 が作 成 した 質 問 紙 を配 布 した。 質 問 紙 は 当 日中 に 回答 す る よ う依 頼 し,留 め置 き法 に て 回 収 した。 分 娩 時 デ ー タ は,入 院 カル テ よ り情 報 収 集 を行 っ た 。 調 査 項 目 は以 下 の とお りで あ る。 1)褥 婦 の 背 景 年齢,家 族 形 態(核 家 族,拡 大 家 族 の 別),仕 事 の 有 無,妊 娠 中 の 尿 失 禁(腹 圧 性 尿 失 禁,切 迫 性 尿 失 禁)の 有 無,分 娩 時 の 状 況(分 娩 各 期 の所 要 時 間,分 娩 時 出血 量,出 生 時 体 重,児 頭 囲,1分 後Apgar score,分 娩 誘 発 お よ び促 進 の 有 無)。 2)分 娩 後 の会 陰損 傷 の 痛 み(違 和 感)の 程 度 ① 分 娩 当 日,産 褥1日 目,3日 目の 会陰 の痛 み(違 和 感)の 程 度(ビ ジ ュ アル ア ナ ロ グ ス ケ ール) ② 分 娩 後(産 褥1,3日 目)の 創 部 痛 に対 す る鎮 痛 剤 服 用 の有 無 3)会 陰 切 開 術 を 受 け た あ る い は会 陰 裂 傷 とな っ た こ と に対 す る褥 婦 の 反 応 肯 定 的 反 応:切 開 あ る い は裂 傷 で よか っ た,ご く普 通 の こ と と受 け止 め て い る 否 定 的 反 応:切 開 して ほ し くな か った,裂 傷 よ り切 開 して ほ しか っ た 4)産 褥 早 期(1∼3日 目)の 排 尿 トラ ブ ル の 有 無 排 尿 困 難,尿 意 の 低 下 の 有 無 5)産 褥4,5日 目 に お け る生 活 上 の 支 障 の 程 度 (リ ッカ ー ト尺 度,15項 目) ・動 静 に 関 して
分娩時の会陰損傷による後遺症の比較に関する研究 「歩 行 時 に会 陰 の 痛 み や 違 和 感 が気 に な る」 「痛 み や 違 和 感 の た め立 っ た姿 勢 か ら座 る動 作 に 支 障 が あ る」 「座 位 を維 持 す る と痛 み や 違 和 感 が 増 す」 ・睡 眠 に関 して 「会 陰 の痛 み や 違和 感 が気 に な りよ く眠 れ な い」 ・育 児 に関 して 「会 陰 の痛 み や違 和 感 が育 児 を行 う う えで の 支 障 に な っ て い る」 「会 陰 の痛 み や違 和 感 が な か った ら,も っ と育 児 に取 り組 め るの に と思 う」 ・排 泄 に関 して 「会 陰 の傷 の た め にい つ もの よ う に排 尿 で きな い」 「排 尿 時 に会 陰 の 傷 が しみ た り痛 む 」 「排 便 時 に会 陰 の 傷 が 気 に な りい き め な い」 「咳 を した りお なか に力 が 入 る と尿 が 漏 れ そ う に な る,あ る い は漏 れ る(腹 圧 性 尿 失 禁 を 調 査)」 「尿 意 を感 じ る と排 尿 を我 慢 す る こ とが 大 変 だ った り,尿 が 漏 れ て し ま う(切 迫 性 尿 失 禁 を調 査)」 ・心 理 的 な事 項 に関 して 「シ ャ ワー や 排 泄 時 に会 陰 の傷 に触 れ る のが こ わ い」 「会 陰 の 痛 み や 違 和 感 が い つ ま で続 くか 不 安 で あ る」 「会 陰 の傷 が順 調 に 治癒 して い くか不 安 で あ る」 「他 の 人 よ り痛 み や違 和 感 が ひ どい の で は な い か 不安 で あ る」 この う ち,2)① 分 娩 当 日,産 褥1日 目,3日 目の会 陰 の痛 み(違 和 感)の 程 度 つ い て は,10cm の ビ ジ ュ ア ル ア ナ ロ グ ス ケ ー ル(VAS)上 に対 象 者 が指 示 した 位 置 を,痛 みが な い と感 じて い る 場 合 をOmmと し,非 常 に(最 も)痛 い と感 じて い る場 合 を100mmと 数量 化 した 。 また,5)② 産 褥4,5日 目 に お け る生 活 上 の 支 障 の程 度 を問 う項 目 は,研 究 者 が 褥 婦 に聴 取 し た会 陰損 傷 に関 す る訴 えや 出 産 経 験 の あ る 医療 者 の意 見 を参 考 に15項 目 を取 り上 げ,各 項 目 と も, まっ た くそ うで あ る,や や そ うで あ る,ど ち らで もな い,や や そ うで な い,ま った くそ うで な い, の5段 階 で 回 答 し て も らい,痛 み や 違 和 感,不 安 感 の程 度 が軽 度 で あ る ほ ど高 得 点 とな る よ う,配 点 した 。 3.予 備 調 査 質 問紙 は あ らか じ め,会 陰 切 開術 を受 けた 初 産 婦5名,会 陰 裂 傷 とな っ た初 産 婦5名,計10名 を 対 象 と した 予 備 調 査 を行 い,回 答 所 要 時 間 の 適 切 性,質 問 の 妥 当 性,回 答 しや す さ等 を確 認 した 。 その 結 果,回 答 所 要 時 間 は5∼10分 程 度 で,回 答 し に くい 文 章 表 現 や 質 問 項 目 は な い との 結 果 を得 た た め,本 調 査 を行 う こ と と した。 4.分 析 方 法 分析 は統 計 ソ フ トウエ アSPSSを 用 い て,比 率 に関 す る検 定 に は,x2検 定,Fisher直 接 検 定 法, 量 的 デー タ に は,対 応 の あ るT検 定,一 元 配 置 分 散 分 析(多 重 比 較)を 行 っ た。 有 意 水 準 は5%と した 。 5.倫 理 的 配 慮 本 研 究 は,研 究 の デ ー タ収 集 に先 立 ち,平 成13 年 度 東 京 都 立 保 健 科 学 大 学 看 護 学 科 研 究 倫 理 委 員 会 の 審 査 を受 け,承 認 を得 た。 また,研 究 対 象 者 に は,以 下 の 事項 を保 証 した 。 ・対 象 者 個 々 の 調 査 結 果 は,研 究施設 に公表 しな い。 ・デー タ は研 究 目的 以 外 で は使 用 せ ず ,研 究論文 に お い て もすべ て匿 名 で個 人 が 特 定 で き な い よ うな提 示 方 法 で示 す。 ・研 究 協 力 拒 否 が ケ ア を受 け る う えで の 不 利 益 を もた らす よ うな こ とは まっ た くな い。 研 究 参 加 途 中 で協 力 を取 りや め る こ と も可 能 で あ る。 III結 果 対 象 者165名 の う ち,有 効 回答 を得 られ た の は, 147名(89.1%)で あ っ た。 有 効 回答 者 の 内 訳 は, 第 一 度 会 陰 裂 傷 とな った 者43名(以 下,第 一 度 裂 傷 群 とす る),第 二 度 会 陰 裂 傷 と な っ た 者32名 (以下,第 二 度 裂 傷 群 とす る),会 陰 切 開 を受 けた 群71名(ル ー テ ィ ンで 切 開 を行 う施 設 の 者 は,45 名 で あ っ た。 以 下,切 開 群 とす る)で あ った 。 日本 助 産 学 会 誌 第17巻 第2号(2003.12) 9
分娩 時 の会 陰損 傷 に よる後 遺症 の比較 に関 す る研 究 表1対 象 褥婦 の背景 (検 定 法:分 散 分 析,x2検 定) ns…no significant 表2褥 婦 の分娩 経 過 の比較 注)第2期 所 要 時 間 は,裂 傷2群 と切 開群 の間 に有 意差 あ り (検 定 法:分 散 分 析,x2検 定) ns…no significant 1.対 象 の 背 景(表1∼2) 対 象 者 の 平 均 年 齢 は28.0歳 で あ り,年 齢 や 仕 事 の 有 無 に つ い て は 同 様 の 集 団 で あ っ た 。 家 族 構 成 で は,切 開 群 に 拡 大 家 族 の 者 の 比 率 が 有 意 に 高 か っ た(x2=7.88,p=0.04)。 ま た,第 一 度 裂 傷 群 は 切 開 群 と比 較 し て,妊 娠 中 に 腹 圧 性 尿 失 禁 が あ っ た 者 の 率 が 有 意 に 高 か っ た(x2=6.43,p= 0.01)。 児 体 重,児 頭 囲,1分 後Apgar score,分 娩 時 出 血,誘 発 お よ び 促 進 の 有 無 に つ い て は,3群 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 分 娩 所 要 時 間 の 平 均 値 は11.6時 間 で,3群 間 に 有 意 差 は な か っ た が,分 娩 第2期 所 要 時 間 に つ い て は,切 開 群 は,裂 傷2群 と比 較 し て 有 意 に 短 時 間 で あ り,約30分 の 短 縮 が 認 め ら れ た(F= 3.61,p=0.02)。 ま た,第 二 度 裂 傷 群 は,切 開 群 と比 較 して第3期 所 要 時 間 が有 意 に長 時 間 で あ った(F=3.22,p;0.04)。 誘 発 分 娩 また は分 娩 経 過 中 に促 進 の た め 子 宮 収 縮 剤 の点 滴 を受 けた 者 の比 率 は,第 一 度 裂 傷 群8 名(18.6%),第 二 度 裂 傷 群12名(37.5%),切 開 群15名(20.1%)で あ り,3群 間 に有 意 差 は認 め られ な か っ た 。 2.会 陰 部 の 痛 み(違 和 感)の 程 度 に つ い て(表 3) 各 群 にお け る分 娩 当 日,産 褥1日 目,3日 目の 会 陰 部 の痛 み(違 和 感)の 程 度 をVAS上 に示 し
分 娩 時 の会 陰損 傷 に よ る後 遺 症 の比較 に関 す る研 究 表3ビ ジ ュ ア ル ア ナ ロ グ ス ケ ー ル に示 し た会 陰 損 傷 に よ る痛 み(違 和 感)の 程 度 (検 定 法:対 応 の あ るT検 定) **: p<0.01 注:表 に 示 した値 は,各 産 褥 日数 で 褥 婦 が 感 じた 痛 み(違 和 感)の 程 度 を 下 記 に 示 す ビ ジュ ア ル ア ナ ロ グ スケ ー ル に示 して も ら った結 果 で あ る。 スケ ー ル を100mmと し,ま った く気 に な らな い を0(起 点)と し,褥 婦 が 示 した ポイ ン トまで の 距離 を測 定 し,mmで 示 した。 ま った く痛 くな い (気 に な らな い) 非常 に痛 い (非常 に気 に な る) な お,各 産 褥 日数 にお け る痛 み の程 度 に関 し,3群 間 に有 意 差 は認 め られ な か った 。 て も らっ た結 果 で は,産 後 各 日の痛 み(違 和 感) の程 度 に 有意 差 は み られ な か った 。 一 方,分 娩 当 日か ら1日 目,お よび 分娩 当 日か ら3日 目に お け る痛 み(違 和感)の 推 移 をみ る と,切 開群 は分 娩 当 日か ら1日 目に か けて の 痛 み(違 和 感)に 変 化 が認 め られ な か った が,裂 傷2群 は と もに痛 み が 有 意 に軽 減 して い た 。 な お,分 娩 当 日,1,3日 に鎮 痛 剤 を服 用 した 者 の 内訳 は,第 一 度裂 傷群3名(6.9%),第 二度 裂 傷 群5名(15.6%),切 開 群14名(19.4%)で あ り,第 一 度 裂 傷 群 と比 較 して,第 二度 裂 傷 群, 切 開群 は鎮 痛 剤 を服 用 した 褥 婦 の割 合 に多 少 高 い 傾 向 が認 め られ た が,有 意 差 はな か った 。 3.会 陰 切 開術 を 受 けた,あ るい は 会 陰 裂 傷 とな っ た こ と対 す る褥 婦 の 反応(表4) 会 陰切 開術 を受 け た,あ るい は 会 陰 裂 傷 とな っ た こ と対 す る褥 婦 の反 応 に関 して は,切 開 群 は裂 傷2群 と比 較 して,会 陰切 開術 を受 けた こ とに対 し,肯 定 的 反 応 を 示 し た 者 が 有 意 に 多 か っ た (Fisher,p<0.001)。 4.産 褥 早 期 の排 尿 トラ ブ ル の 有 無(表5) 褥 婦 は,産 褥 早 期(1∼3日 目)に お い て尿 意 表4会 陰切 開施行 ある いは会 陰裂傷 とな った こ とに対 す る褥婦 の反 応 の比較 *切 開 群 、 第二 度 裂 傷 群:無 回 答各1名(検 定法:Fisher直 接 法) 表5分 娩後(産 褥早 期)の 排尿 トラブ ルの有無 の比 較 (検 定 法:x2検 定) ns…no significant
分 娩時 の会陰 損 傷 に よ る後遺 症 の比 較 に関 す る研 究 表63群 別 にみ た会陰 損傷 に よ る生 活上 の支障 の程 度 の比 較 注: 各 群 に示 す平 均 得 点 は,質 問 に 対 し,そ う思 わ な い 程度 が 高 くな る ほ ど得 点 が(検 定 法:分 散 分析,多 重 比較) 高 くな るよ う配 点(1∼5点)し た結 果 で あ る。 の 低 下,排 尿 困難 とい った 排 尿 トラ ブル を経 験 す る こ とが あ る。各 群 と も約70%の 褥 婦 が 尿 意 の低 下 を 自覚 し,約50%前 後 の 褥 婦 が 排 尿 困 難 が あ っ た と回答 した。3群 間 に差 は認 め られ なか っ た。 5.産 褥4,5日 目 に おけ る会 陰損傷 に よ る生活 上 の 支障(表6) 15項 目 の質 問 の うち,切 開群 は第 一 度 裂 傷 群 と 比 較 し,立 っ た姿 勢 か ら座 る動 作 の 支 障,睡 眠 し に く さ(横 に な っ た時 の痛 み や 違和 感)を 感 ず る 程 度 が 有 意 に 高 か っ た(F=3.10,p=0.04), (F=3.79,p=0.02)。 ま た,第 一 度 裂 傷 群 は 切 開 群 と 比 較 し,腹 圧 性 尿 失 禁 を 自 覚 す る 程 度 が 高 い 傾 向 が 見 ら れ た が,有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た (F=2.88,p=0.05)。 IV考 察 1.本 研 究 の 意 義 緒 言 で も述 べ た よ う に,会 陰 裂 傷 と な っ た 褥 婦
分 娩 時 の会 陰損 傷 に よ る後 遺 症 の比 較 に関 す る研 究 と会 陰 切 開術 を受 けた 褥 婦 の産 科 学 的 ア ウ トカ ム に関 し,欧 米 にお い て は多 くの研 究 が 行 わ れ,一 般 的 に考 え られ て い る会 陰 切 開 術 の効 果 は否 定 さ れ て い る。 しか し なが ら,わ が 国 で は この よ うな 研 究 は少 な く,会 陰 裂 傷 の後 遺 症 を裂 傷 の程 度 別 に明 らか に し,切 開 群 と比 較 した もの は見 当 た ら な い。 この よ う な 研 究 の 場 合,RCTが 理 想 的 で あ るが,わ が 国 に お い て は諸 条 件 よ り,RCTの 施 行 は困 難 で あ る場 合 が 多 い た め,本 研 究 の よ う な観 察 研 究 を積 み重 ね て い くこ とは意 義 あ る こ と と考 え る。 2.分 娩 第2期 所 要 時 間 の差 に つ い て 裂 傷2群 は切 開群 と比 較 して,分 娩 第2期 所 要 時 間 が約30分 間長 か っ た が,児 の 出 生 時 の状 態 を 示 す1分 後Apgarscoreに は差 は認 め られ な か っ た。 千 村(1988)は 諸 文献 か ら会 陰切 開術 の施 行 に よっ て,分 娩 第2期 所 要 時 間 は15∼30分 短 縮 され る と述 べ て お り,本 研 究 で の 分 娩 第2期 所 要 時 間 短 縮 の 程 度 も先 行 研 究 とほ ぼ同 様 で あ った 。 そ し て,30分 程 度 の 第2期 所 要 時 間 の 延 長 は,ロ ー リ ス ク妊 娠 で か つ順 調 な 成 長 発 達 を遂 げて い る と予 測 で き る胎 児 の 健 康 状 態 に は,大 き な影 響 を与 え な い こ とを 示 唆 す る と考 え られ る。 村 上(1997)は 自然 分 娩 にお け る児 頭 排 臨 か ら 胎 児 娩 出 まで の所 要 時 間 と児 の健 康 状 態 を検 討 す る研 究 で,会 陰切 開 を施 行 しな い 初 産 婦 の 分娩 に お け る児 頭 排 臨 か ら胎 児 娩 出 まで の 平 均 所 要 時 間 は約30分 で あ っ た こ と,胎 児 の健 康状 態 を3つ の
指 標(Fischerの 評 価 点 数,Apgar score,出 生
直 後 の動 脈 血 酸 素飽 和 度)で 評 価 した 結 果,児 頭 排 臨 か ら胎 児娩 出 まで の 時 間 と児 の健 康状 態 に は 関 連 性 が 認 め られ な か った こ と を報 告 して い る。 児 の健 康 状 態 保 持 の視 点 か ら第2期 所 要 時 間 短 縮 を 目的 と した会 陰 切 開術 の 施 行 は,胎 児 仮 死 が 予 測 され な い事 例 に つ い て は,必 要 性 が 低 い こ と が 推 察 され る。 3.会 陰 部 の 痛 み(違 和 感)の 程 度 に つ い て 各 群 間 に お い て,分 娩 当 日,産 褥1,3日 目 の 痛 み(違 和 感)の 程 度 に は,差 は 認 め られ な か っ た 。 しか し,痛 み(違 和 感)の 経 時 的 変化 をみ る と,切 開群 は分 娩 当 日 か ら1日 目 にか けて の痛 み (違和 感)の 程 度 に差 が 生 じ な か っ た の に対 し, 裂 傷2群 は と も に分 娩 当 日 よ り翌 日(1日 目)の ほ うが,痛 み(違 和 感)が 有 意 に軽 減 して いた 。 痛 み の程 度 に3群 間 で 差 が 生 じな か った 原 因 の 1つ は,縫 合 糸 に あ る と考 え られ る。 本 研 究 の 褥 婦 に使 用 さ れ て い た の は,PGA系(デ キ ソ ン) また は コー テ ッ ドバ イ ク リル とい っ た合 成 吸収 性 縫 合 糸 で あ り,カ ッ トグ ッ ト等 よ り組 織 反 応 が 軽 微 で局 所 の腫 脹 や疼 痛 が 少 な い縫 合 糸 で あ る と言 わ れ て い る(進&荒 木,1994)。 こ の こ とか ら, 創部 損 傷 の程 度 が 多 少 異 な っ て も痛 み(違 和 感) の程 度 に は 差 が 生 じな か った こ とが 推 測 さ れ る。 しか し,切 開群 は,分 娩 当 日か ら産 褥1日 目に か けて の 創部 痛 の軽 減 感 が 裂 傷 群 と比 較 して少 な か っ た。Lassen(1991)は,本 研 究 と同 様 にVAS を用 い て 調 査 を行 い,正 中 側 切 開 を した 褥 婦 の ほ うが 第二 度 また は三 度裂 傷 とな った 褥 婦 よ り も, 産 褥1,3日 目 は 有 意 に強 い 痛 み を訴 え,5日 目 で 同様 の程 度 とな る と述 べ て い る。 こ の よ うな こ とか ら,産 褥 早 期,特 に分 娩 直 後 に お い て は,切 開 した 創 と裂 傷 創 は褥 婦 に与 え る痛 み あ る い は違 和 感 の感 覚 が根 本 的 に 異 な る可 能 性 が あ る こ と も 示 唆 され る。 本研 究 の場 合,痛 み が あ る場 合 も違 和 感 が あ る 場 合 も同 じス ケ ー ル 上 に その 程 度 を示 して も ら っ た た め,痛 み の 程 度 と違 和 感 の 程 度 が 混 在 した 結 果 と して 示 され て い る可 能 性 が あ る。 この 点 か ら も,そ れ ぞ れ の 群 の 褥 婦 が 産 褥 早 期 の創 部 の 痛 み や 違 和 感 を具体 的 に どの よ う に感 じて い る の か, 詳 しい 調 査 を行 う必 要 が あ る と考 え られ る。 4.排 尿 トラ ブ ル や排 尿 に関 す る支 障 につ い て 本 調 査 結 果 で は,各 群 と も尿 意 の低 下 や 排 尿 困 難 とい った 排 尿 トラ ブル を経 験 す る褥 婦 が 多 く存 在 す る 実 態 が 明 ら か と な っ た。 従 来,排 尿 困 難 は,分 娩 第2期 遷 延 例 に多 い と言 わ れ,排 尿 困 難 予 防 の た め に は,積 極 的 に分 娩 第2期 を短 縮 す べ きで あ る との 意 見(室 之 園,2001)も あ るが,本 結 果 は分 娩 第2期 所 要 時 間 の差 違 が,産 褥 早 期 の 排 尿 困 難 の 差 を生 み 出 す わ けで はな い こ とを示 し て い る と考 え られ る。 排 尿 困 難 の 主 な原 因 は,膀 胱 お よび 尿 路 を支 配 日 本 助 産 学 会 誌 第17巻 第2号(2003.12) 13
分娩時の会陰損傷による後遺症の比較 に関する研究 す る神 経 の麻 痺 で は あ るが,会 陰 部 の 創 あ る い は 縫 合 が影 響 を与 えて い る こ とが な いか を今 後 明 ら か に して い く必 要 が あ るだ ろ う。 また,第 一 度 裂 傷 群 は妊 娠 前 か ら腹 圧 性 尿 失 禁 を訴 え る者 が 有 意 に 多 く,産 褥4,5日 目 にお い て も そ の 傾 向 は 継 続 し て い た と考 え ら れ る。 Foldspangら(1999)の 大 規 模 な 調 査 で も妊 婦 の約3分 の2が 尿 失 禁 を経 験 して い る とい う実 態 が明 らか に な っ て お り,妊 娠 その もの が 尿 失 禁 の 大 きな原 因 とな っ て い る こ とが示 唆 され て い る。 また,産 褥 早 期 は妊 娠 中 の尿 失 禁 しや す い 傾 向 が さ ら に助 長 さ れ る との 報 告 も あ る(Spellacy, 2001)。 この よ うな 実 態 か ら,本 研 究 の対 象 者 で か つ第 一 度 裂 傷 とな っ た者 の集 団 が,尿 失 禁 を経 験 す る比 率 が 偶 然 多 か っ た と判 断 す る以 外 に,妊 娠 中 に骨 盤 底 筋 群 が 大 き く弛 緩 した集 団 だ った た め,会 陰 裂 傷 が 軽 度 とな っ た と も解 釈 で き る。 こ の よ うな こ とか ら,裂 傷 が で きな か っ た褥 婦 の 妊 娠 中,産 褥 期 の 尿 失 禁 の 実 態 に つ い て も明 らか に して い く必 要 が あ る。 5.産 褥4,5日 目に お け る生 活 上の 支 障 に関 して 切 開 群 は第 一 度 裂 傷 群 と比 較 して,立 っ た 姿 勢 か ら座 る動 作 の 支 障,睡 眠 し に くさ(横 に な っ た 時 の 痛 み や 違 和 感)を 有 意 に感 じて い た が,第 二 度裂 傷 群 との差 は認 め られ なか っ た。 先 行 研 究(佐 藤 ら,1994)に お い て も,切 開 群 の 多 くが 立 った 姿 勢 か ら座 る動 作 の支 障 を訴 え て お り,会 陰切 開術 を受 けた 褥 婦 の 大 きな生 活 上 の 支 障 と言 え よ う。 この 動 作 は,新 生 児 を コ ッ トか ら抱 き上 げ授 乳 す るた め に座 る とい う,褥 婦 が産 褥 早 期 に頻 回 に行 う動 作 で あ り,褥 婦 の心 身 に与 え る影 響 は大 きい と推 察 され る。 そ して,第 二 度 裂 傷 群 の 支 障 の程 度 は,切 開 群 と も第 一 度 裂 傷 群 と も有 意 差 が認 め られ な か った 。 この こ とや 上 記 に述 べ て きた諸 結 果 よ り,第 二 度 裂 傷 群 は,切 開 群 よ り出 生時 の 児 の状 況,創 部 痛 や 生 活 上 の支 障 に お い て劣 る こ とは な い と考 え られ る。 Woolley(1995>は 諸 文 献 のreviewか ら,重 度(第 三 度 裂 傷 以 上 の裂 傷)の 裂 傷 防 止 の た め に 積 極 的 に会 陰 切 開 を行 った 場 合 の ほ うが,切 開延 長 の結 果 と して重 度 の裂 傷 が 高頻 度 に起 こる と結 論 づ け てい る。 す なわ ち,切 開 を行 わ な いほ うが, 会 陰 の損 傷 は第 二 度 まで に と ど ま る こ とが 多 い と い う こ とで あ る。 褥 婦 の 産 後 の後 遺 症 を 中 心 と した観 点 か ら,会 陰 切 開 術 施 行 の是 非 を述 べ る とす れ ば,切 開 を し な い ほ うが,第 二 度 裂 傷 に と ど ま る確 率 が 高 く, 第 二 度 裂 傷 の後 遺 症 が 切 開 を受 けた 場 合 に 劣 る と は 言 え な い の な ら,胎 児 娩 出 を急 ぐ必 要 が あ る場 合 以 外,会 陰 切 開術 は施 行 しな い ほ うが よ い と言 え る。 6.研 究 方 法 に関 す る評価 と今 後 の 課 題 本 研 究 で は,各 対 象 施 設 の 方 針 の違 い か ら会 陰 裂 傷 とな った 褥 婦 と会 陰切 開 術 を受 けた褥 婦 の 意 識 の差 が 生 じ,選 択 バ イ ア スが 生 じた可 能 性 は否 定 で きな い 。 これ を克 服 す る に はRCTを 行 う以 外 に解 決 方 法 は な い と考 え る。 調 査 結 果 か ら も切 開 群 の褥 婦 は,会 陰 切 開 術 を受 けた こ とに肯 定 的 反 応 を示 す 者 が ほ とん どで あ り,裂 傷 群 と比 較 し,肯 定 的 反 応 を 示 す 者 の 割 合 が 有 意 に 高 か っ た 。 しか し,そ れ に もか か わ らず,第 二 度 裂 傷 群 と切 開 群 の 間 に お い て,後 遺 症 に 差 が 生 じ なか っ た こ とは,本 研 究 の 結 果 が 選 択 バ イ ア ス に大 き く 左 右 さ れ な か っ た と解 釈 で き る。 また,自 己作 成 の 質 問 紙 を用 い る とい う,調 査 手 法 の妥 当性 に つ い て は,第 一 度 裂 傷 群 が 他 の2 群 と比 較 して生 活 上 の 支 障 の 程 度 が軽 度 とい う, 予 想 と同 様 の結 果 が 得 られ た こ とか ら,こ れ らの 事 項 の 検 出 に お い て,お お む ね妥 当 な もの で あ っ た と考 え られ る。 対 象3群 の背 景 因 子 にお い て は,家 族 形 態 以 外 に差 は な く,比 較 の う えで 交 絡 バ イ ア ス を生 じた 可 能 性 は少 な い が,第 一 度 裂 傷 群 は,他 の2群 と 比 較 し て腹 圧 性 尿 失 禁 が あ っ た者 の 率 が 有 意 に高 か った 。 この こ とか ら第 一 度 裂 傷 群 は も と も と骨 盤 底 筋 群 が 弛 緩 して い る群 と も考 え られ,こ の 点 につ い て今 後 検 討 す る必 要 が あ る。 また,よ り大 きな サ ン プ ル数 を得 て い く こ と も今 後 の 課題 で あ る。 V結 論 分娩時 に会陰切 開術 を受 けた褥 婦 と第二度会 陰 裂 傷 を生 じた褥婦 の後遺症 には差 が あるのか否 か
分娩時の会陰損傷による後遺症の比較に関する研究 を明 らか に す る こ と を 目的 に,自 然 分 娩 とな った 初 産 婦165名(切 開 群,第 一 度 裂 傷 群,第 二 度 裂 傷 群 の3群 に分 類)を 対 象 に,産 褥4,5日 目 に お け る 自記 式 質 問紙 に よ る調 査 を行 い,以 下 の 結 果 を得 た。 1)分 娩 当 日,産 褥1,3日 目 の 会 陰 の痛 み(違 和 感)の 程 度 に差 は認 め られ な か った 。 また, 裂 傷 の2群 は,分 娩 当 日か ら産褥1日 目 にお い て,有 意 な痛 み(違 和 感)の 軽減 が認 め られ た が,切 開 群 で は認 め られ な か っ た。 2)産 褥 早 期 の 排 尿 困 難 や 尿 意 の 低 下 に つ い て は,ど の 群 の 褥 婦 も約 半 数 以 上 が 自 覚 して お り,有 意 差 は認 め られ な か っ た。 3)切 開群 は,第 一 度 裂 傷 群 と比 較 して,立 っ た 姿 勢 か ら座 る動 作 の支 障,睡 眠 しに くさ とい っ た 日常 生 活 上 の 支 障 の 程 度 が 有 意 に 高 か っ た が,第 二 度 裂 傷 群 との差 は認 め られ な か っ た。 以 上 の よ うな こ とか ら,切 開 群 と第 一 度 裂 傷 群 との 比 較 で は,切 開 群 の ほ うが 日常 生 活 上 の 支 障 が大 きい が,切 開 群 と第 二 度 裂 傷群 で は大 きな差 は な い 。 少 な くと も第 二 度 裂傷 群 の 後遺 症 は,切 開群 よ り重 度 で はな い 。 謝 辞 本 研 究 に ご協 力 を いた だ いた褥 婦 の皆 様,施 設 の 皆様 に心 か ら感 謝 いた します。 また,論 文 作 成 に関 し,丁 寧 に ご指 導 い た だ き ま した昭 和 大学 医 学部 ・中館俊 夫 先生 に感 謝 いた しま す。 な お,本 論文 の一部 を第17回 日本助 産 学 会 学 術 集 会 で 発 表 した。 また,本 研 究 は,平 成13年 度 文部 科 学省 科学研 究費補 助金 基盤研 究(C)を 得 て行 った。 引用 文献
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