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群論アプローチにもとづく要素数と群の位数が要素パターンの良さと複雑さに及ぼす効果

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Academic year: 2021

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.37.22

群論アプローチにもとづく要素数と群の位数が

要素パターンの良さと複雑さに及ぼす効果

1

濱 田 治 良

a,

*・福田T. スティーブ

b

・内 海 千 種

a

福 士 顥 士

c

・天 野   要

d a徳島大学,b文教大学,c川村学園女子大学,d愛媛大学

Effects of dot number and symmetry group order on goodness and

complexity of dot patterns in a group theoretical approach

Jiro Hamada

a,

*, Steve T. Fukuda

b

, Chigusa Uchiumi

a

, Kohji Fukushi

c

, Kaname Amano

d

a Tokushima University, b Bunkyo University, c Kawamura Gakuen Women s University, d Ehime University

Two experiments on goodness and complexity judgments of dot patterns in a square matrix framework were conducted based on studies by Hamada et al. (2016, 2017). Four groups of 52 undergraduates (N=208) judged the goodness and complexity of original and expanded patterns consisting of six 8-dot and six 13-dot prototype patterns and thirty-six 21-dot compound patterns. Rotational/reflectional symmetries were invariant, generating cyclic (Cn) and dihedral (Dn) groups (n=1, 2, 4). Results showed that only complexity increased consistently as the number of dots increased. Adding twelve 8-dot and 13-dot patterns increased the complexity of 21-dot patterns. Apart from the complexity of 8-dot D2 patterns, goodness and simplicity increased one-dimensionally with respect to the order of

the matrix. The complexity of 8-dot D2 patterns decreased because of spatial filters on linearity, which did not affect

goodness. Concerning the original and expanded patterns, configurations of 21-dot patterns did not influence good-ness or complexity. In conclusion, results of goodgood-ness and complexity judgments supported our group theoretical model and showed that the complexities of dot count and 8-dot D2 patterns were influenced by physical factors.

Keywords: visual symmetry, matrix framework, dot patterns, dot number, pattern goodness and complexity, group

theory

は じ め に

Hamada & Ishihara (1988),濱田(1996),Hamada et al. (2016),そして濱田他(2017)によると,2次元パター ンの対称性は正多角形を仮想的な枠組みとして群論的に 以下のように記述される。鏡映軸をもたずに中心を軸と して360°/n(n=1, 2, . . . )回転させた場合にパターンが 変 わ ら な い よ う な 回 転 変 換 の 集 合 は 巡 回 群(Cyclic group: Cn)を生成する。これらのパターンはn個の回転 変換に対して不変性を示し,群の位数(変換の個数)は nである。たとえば,C1パターンは360°の1つの回転の みに対して不変性を示すので,群の位数は1である。一 方,中心を通るn本の鏡映軸に対して表と裏を反転した 場合にパターンが変わらないような鏡映変換と前述のよ うな不変性を示すn個の回転変換の集合は二面体群(Di-hedral group: Dn)を生成する。これらのパターンはn個鏡映変換とn個の回転変換に対して不変性を示し,群 の位数は2nである。たとえば,D4パターンは中心を通 る4本の鏡映軸に対して不変性を示すと同時に90°, 180°, 270°, 360°の90°を単位とした4つの回転に対しても不変 性を示すので,群の位数は合計で8である。以上のよう に,添え字のnは巡回群Cnでは回転の個数(すなわち位 数),二面体群Dnでは鏡映軸の本数と回転の個数(すな わち位数は2n)である。本論文では群論にもとづいて Copyright 2019. The Japanese Psychonomic Society. All rights reserved.

1 研究当初においてご指導いただいた今井四郎北海道 大学名誉教授と石原 徹 徳島大学名誉教授に感謝い たします.また元徳島大学総合科学部生の上野未 貴・土佐谷真美・山野彩香氏の協力を得たことに感 謝します.さらに貴重なコメントを頂いた査読者に 深謝いたします.

* Corresponding author. Tokushima University, Hachiman-cho, Babayama, Tokushima 770–8070, Japan. E-mail: jhamada@me.pikara.ne.jp

(2)

作成されたパターンの物理的要因と良さおよび複雑さと の対応関係を研究することを群論アプローチと呼ぶ。

今井・伊藤・伊藤(1976)は,3×3の枠内の5要素と 4要素パターンの間に良さの差がないことを示した。ま た,Hamada & Ishihara (1988) は,3×3と4×4の枠内の要 素パターンで,鏡映軸が1本あるD1パターンにおいて,

要素数を4, 5, 8へと増やすにつれて良さは上昇すること を報告した。一方,van der Helm & Leeuwenberg (1996) に よると,枠組のないD1パターンの要素数を12, 24, 96へ と変化させても良さはその影響をほとんど受けない。こ のように,要素数と良さの関係については明確な結論が 示されていない。また,要素数が複雑さに及ぼす効果を 扱った研究は少ないように思われる。そこで,本研究で は新たに要素数が良さと複雑さに及ぼす効果を群論アプ ローチで検討する。 大塚(1984)と行場・瀬戸・市川(1985)は,良さと 単純さ(複雑さの逆)の対応関係を5要素パターンで検 討し,それらは異なる認知判断であるとした。実際, Hamada & Ishihara (1988)とHamada et al. (2016)は,正 六角形枠の要素パターンを用いて,良さと複雑さでは群 の位数に対して異なる重みづけ(影響)がなされている ことを明確にした。また,Hamada et al. (2016) は9×9の 枠内で21要素Dnパターンを作成し (n=1, 2, 4),白黒コン トラスト極性が良さには有効に働かないが,複雑さには 影響することを明らかにした。これらの研究においては, 良さと複雑さの判断基準は参加者に委ねられているが, その基準は明らかに異なる。本研究では,正方行列枠内 の8, 13, 21要素のパターンにおいて,要素数と群の位数 などが良さと複雑さをいかに規定するかを明確にする。 Garner & Clement (1963)と松田(1978)は,3×3 の 枠内で5要素パターンを検討し,3つの要素が直線的に 配置されると良さを高めるとしている。しかし,大塚 (1984) は同じ枠内の5要素パターンを用いて,要素が行 または列に集中するほど単純さを高めるが,良さと単純 さの間の相関は比較的低いとしている。また,Hamada et al. (2016) は正六角形枠の要素パターンにおいて,3要 素が直線的に3本配置されると複雑さを有意に低下させ るが,良さに対しては一貫した影響を与えないと報告し ている。一方,濱田 (1996) は,4×4の枠内で4要素が平 行に配置された8要素D2単位模様を作成し,それらを縦 横方向に3つずつ合計9つ並べた反復パターンを考案し た。そして,320枚用意された反復パターンの中で16枚 存在するこの反復パターンの複雑さが最低で,良さは中 程度になるとしている。彼は鏡映軸が垂直・水平・45° 傾斜である8要素D2単位模様を直線成分と呼んだ。本研 究では,この8要素D2パターンを直線成分パターンと定 義する。そして,この直線成分パターンが良さと複雑さ に如何に影響するかを検討する。 Palmer (1983)は,直角三角形に方向の変化(回転変 換),反転の変化(鏡映変換),そして大きさの変化(相 似変換)を施しても,2つの直角三角形の見かけの形状 は不変であり恒常であるとしている。そこで,大きさの 要因が良さと複雑さに与える影響を実験的に検討する。 目 的 濱田他(2017)は回転と鏡映変換に対して不変性を示 すが,その形状が異なる基礎と拡大の21要素パターン を36枚ずつ合計で72枚作成した。本研究では,これら のパターンに8と13要素パターンを12枚ずつ追加する。 そして,それらのパターンが良さと複雑さへ及ぼす効果 を同時に扱って,群の位数,形状が異なる21要素パター ン,要素数,直線成分パターン,さらには大きさの要因 が認知判断へ及ぼす効果を検討する。また,8と13要素 パターンが21 要素パターンに及ぼす効果を検討する。 さらに,位数の認知判断への効果を群論アプローチで検 討し,併せて空間フィルタが直線成分パターンの特異的 な複雑さの低下に寄与していることを考察する。 方法および手続き 刺激パターン 刺激パターンは厚手の白紙 (縦70 mm, 横66 mm)に黒円で印刷されたカードであり,下端部中 央にはランダムな小さい数字3桁の番号が印字されてい た。用いられたすべてのパターンをFigure 1と3に示す。 そこには,DnとCnパターン(n=1, 2, 4)の違いと平均 評定値も示されている。実験は基礎条件(実験1)と拡 大条件(実験2)に分かれ,そこで使用されるパターン をそれぞれ基礎パターンと拡大パターンと呼ぶ。 実験1 (Figure 1)では,8要素原型パターン(番号1か ら6)と13要素原型パターン(番号7から12)および21 要素複合パターン(番号 13から48)を用いる。基礎の 原型パターンについて,8要素Dn原型パターンでは4×4 の枠内で中央部の 4つの枡目に4要素を配置した一方, 13要素Dn原型パターンでは5×5の枠内で中央列の枡目 に5要素を配置した。そして,8と13要素Cn原型パター ンは,これらの枠組の最外周に位置づくすべての要素を 右回りに1枡ずつ移動させて描き,Dn原型パターンと相 互に対応づけた。基礎の21要素複合パターンは,原型 パターンの2 つの枠組の中心を一致させて重ね合わせ て,9×9の枠内に作成した。 実験 2 (Figure 3)の8要素原型パターンは,実験1の

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4×4枠を10×10枠に拡大して描き,要素の中心間距離を 3倍にした。一方,5×5の枠内で描かれた13要素原型パ ターンは,実験1と同じであった。拡大の21要素複合パ ターンは,実験1と同じようにして19×19の枠内に作成 した。 濱田他(2017)と同様に要素の直径は2 mmであった。 その中心間距離は13要素原型と基礎の8要素原型パター ンでは5 mmとし,拡大の8要素原型パターンは15 mm であった。 手続き 実験参加者は徳島大学学部生208名であり, 実験は心理学授業の一環として実施された。彼らは実験 終了後に各自のデータを用いたレポートの提出が義務づ けられ,教示と実験を合わせて約90分を要した。彼ら には8要素原型パターンが6枚,13要素原型パターンが 6枚,そして21要素複合パターンが 36枚,合計48枚の 刺激パターンが配布された。 参加者は実験1と2および濱田他(2017)において重 複のない異なる集団であった。両実験で,104名の半数 (52名)ずつを良さと複雑さ判断にランダムに振り分け た。このうち,13名ずつがパターンの4方向(0°, 90°, 180°, 270°)に割り当てられたが,実際に観察したカー ドの方向は統制できないので方向をランダム要因として 扱い分析しなかった。 評定は,9段階評定法(9が最良または最も複雑,1が 最悪または最も単純)により行われた。教示文には1点 から9点までの尺度が図示され,参加者はそれらの整数 で評定した。良さと複雑さの評定基準は参加者の自由な 判断に委ねることが,配布された教示文を口頭で読み上 実験1 (基礎条件)

Figure 1. Original patterns and results in Experiment 1. Shown are the original 8-dot, 13-dot prototype patterns, and 21-dot compound patterns, and Means of goodness (left side) and complexity (right side).

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げて明確にされた。パターンの概要を知るために,参加 者は評定に入る前にすべてのパターンをランダム順で一 通り観察した。その上で,各評定セッションの冒頭で カードを充分にシャッフルした。実験では,自由観察に より評定を自己ペースで2セッション繰り返したが,1回 目は練習試行として分析しなかった。反応用紙にはカー ド番号と評定値がパターン毎に記入された。 実験1と実験2の結果 基礎パターン (実験1) と拡大パターン (実験2) に対す る良さと複雑さの平均評定値を Figure 1と3に示す。左 側の数値は良さ,右側は複雑さである。また,Figure 2 と4に群の位数の関数としての良さ(実線)と複雑さ(点 線)の平均評定値を示す。この図で,21要素複合パター ンの数値は,C1, C2, C4パターンについてはそれぞれ15枚, 9枚,3枚に対する評定値を,そしてD1, D2, D4パターン についてはそれぞれ5枚,3枚,1枚に対する評定値を平 均した値である。 統計的検定はSPSSを使って行い,有意水準を5%未満 とした。分散分析において交互作用が有意でなく,主効 果のみが有意である場合は単純主効果の検定は行わず多 重比較だけを行った。多重比較は Bonferroniの方法に よって行い,単純主効果が有意でなければ多重比較は行 わなかった。 CnとDn基礎パターン別の要素数と位数の効果 Figure 2に関して良さと複雑さ別に,そしてCnとDn別 に,3 (8, 13, 21要素)×3 (C1, C2, C4巡回群,またはD1, D2, D4二面体群)の分散分析を行った。 CnとDn基礎パターンの良さ Cn基礎パターンについ て,3 (8, 13, 21要素)×3 (C1, C2, C4巡回群)の交互作用 は(F(4, 204)=11.298, p<.001),(8, 13, 21要素)の主効 果は(F(2, 102)= .669, p= .515),そして(C1, C2, C4巡回 群)の主効果は(F(2, 102)=57.642, p<.001)であった。 一方,8要素の単純主効果は(F(2, 102)=24.512, p<.001) で,多重比較ではC1とC2群が p<.001,C2とC4群が p= .459,C1とC4群が p<.001であった。13要素の単純主効 果は(F(2, 102)=51.426, p<.001)で,多重比較ではC1 とC2群,C2とC4群,C1とC4群がすべて p<.001 であっ た。21要素の単純主効果は(F(2, 102)=55.140, p<.001) で, 多 重 比 較 で は C1とC2群,C2とC4群, C1とC4群 が すべてp<.001 であった。一方,C1群の単純主効果は (F(2, 102)=5.921, p<.01)で,多重比較では8と13要素p<.01,13と21要素がp<.05,8と21要素がp= .773で あった。C2群の単純主効果は(F(2, 102)= .331, p= .719) であった。C4群の単純主効果は(F(2, 102)=4.390, p< .05)で,多重比較では 8 と 13 要素が p<.05,13 と 21 要 素がp=1.000,8と21要素がp= .122であった。 次に,Dn基礎パターンについて,3 (8, 13, 21要素)×3 (D1, D2, D4二面体群)の交互作用は(F(4, 204)=5.836), (8, 13, 21要素)の主効果は(F(2, 102)=13.401),そして (D1, D2, D4二面体群)の主効果は(F(2, 102)=26.339)で, すべてp<.001であった。一方,8要素の単純主効果は (F(2, 102)=4.369, p<.05) で,多重比較ではD1とD2群 がp= .204,D2とD4群が p=1.000,D1とD4群が p<.01で あった。13要素の単純主効果は(F(2, 102)=24.907, p< .001)で,多重比較ではD1とD2群がp<.001,D2とD4群 がp<.01,D1とD4群がp<.001であった。21要素の単純 主効果は (F(2, 102)=19.457, p<.001)で,多重比較では D1とD2群が p<.001,D2とD4群が p<.01,D1とD4群が p< .001であった。一方,D1群の単純主効果は(F(2, 102)= 3.658, p<.05)で,多重比較では8と13要素がp=1.000, 13 と 21 要 素 が p<.05,8 と 21 要 素 が p= .390 で あ っ た。

Figure 2. Shown are the Means of goodness and com-plexity judgments of the original 8-dot, 13-dot proto-type patterns, and 21-dot compound patterns.

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D2群の単純主効果は (F(2, 102)=6.702, p<.01) で,多重 比較では 8と13要素がp= .128,13と21要素がp= .096, 8 と 21 要 素 が p<.05 で あ っ た。D4群 の 単 純 主 効 果 は (F(2, 102)=28.079, p<.001)で,多重比較では8と13要 素が p<.001,13 と 21 要素が p= .206,8 と 21 要素が p< .001であった。 CnとDn基礎パターンの複雑さ Cn基礎パターンにつ いて,3 (8, 13, 21要素)×3 (C1, C2, C4巡回群)の交互作 用は(F(4, 204)=11.645),(8, 13, 21 要素)の主効果は (F(2, 102)=229.143),そして(C1, C2, C4巡回群)の主効 果は(F(2, 102)=118.717)で,すべてp<.001であった。 一方,8要素の単純主効果は(F(2, 102)=34.785, p<.001) で,多重比較ではC1とC2群が p<.001,C2とC4群が p= .066,C1とC4群が p<.001であった。13要素の単純主効 果は (F(2, 102)=64.757, p<.001) で,多重比較ではC1と C2群,C2とC4群,C1とC4群がすべて p<.001であった。 21要素の単純主効果は(F(2, 102)=143.617, p<.001)で, 多重比較ではC1とC2群,C2とC4群,C1とC4群がすべて p<.001であった。一方,C1群の単純主効果は (F(2, 102)= 118.704, p<.001)で,多重比較では8と13要素,13と21 要素,8と21要素がすべてp<.001であった。C2群の単 純主効果は(F(2, 102)=131.907, p<.001)で,多重比較 では8と13要素,13と21要素,8と21要素がすべてp< .001であった。C4群の単純主効果は(F(2, 102)=148.374, p<.001)で,多重比較では 8 と 13 要素,13 と 21 要素, 8と21要素がすべてp<.001であった。 次に,Dn基礎パターンについて,3 (8, 13, 21要素)×3 (D1, D2, D4二面体群)の交互作用は(F(4, 204)=27.912), (8, 13, 21要素)の主効果は(F(2, 102)=140.669),そし て(D1, D2, D4二面体群)の主効果は(F(2, 102)=87.251) で,すべてp<.001であった。一方,8要素の単純主効果 は(F(2, 102)=9.259, p<.001)で,多重比較では D1と D2群がp<.01,D2とD4群がp<.05,D1とD4群がp= .140 であった。13 要素の単純主効果は(F(2, 102)=37.419, p<.001)で,多重比較では D1とD2群が p<.001,D2と D4群がp<.01,D1とD4群がp<.001であった。21要素の 単純主効果は (F(2, 102)=110.613, p<.001) で,多重比較 ではD1とD2群,D2とD4群,D1とD4群がすべてp<.001で あった。一方,D1群の単純主効果は (F(2, 102)=126.595, p<.001)で,多重比較では 8 と 13 要素,13 と 21 要素, 8と21要素がすべてp<.001であった。D2群の単純主効果 は (F(2, 102)=94.767, p<.001) で,多重比較では8と13要 素,13と21要素,8と21要素がすべてp<.001であった。 D4群の単純主効果は (F(2, 102)=16.351, p<.001) で,多 重比較では8と13要素がp= .081,13と21要素がp<.01, 8と21要素がp<.001であった。 良さと複雑さの間のPearsonの相関係数を要素数別に 算出すると,8要素パターン6対では (r=−.955, p<.01), 13要素パターン6対では (r=−.982, p<.001),21要素パ ターン36対では(r=−.949, p<.001)であった。 同一の位数を有するC2nとDnパターン 良さに関し て,位数2の基礎パターンについて,2 (C2, D1群)×3 (8, 13, 21 要素)の交互作用は(F(2, 102)=3.048, p= .052), (C2, D1群)の主効果は (F(1, 51)= .292, p= .591),そして (8, 13, 21要素)の主効果は(F(2, 102)=1.624, p= .202) で,すべて有意でなかった。また,位数4の基礎パター ンについて,2 (C4, D2群)×3 (8, 13, 21要素)の交互作用 は(F(2, 102)=1.012, p= .367),(C4, D2群)の主効果は (F(1, 51)=2.553, p= .116) でいずれも有意でなく,(8, 13, 21要素)の主効果は (F(2, 102)=7.245, p<.01) で有意で あった。一方,C4群の多重比較では8と13要素がp<.05, 13と21要素がp=1.000,8と21要素がp= .122であった。 D2群の多重比較では8と13要素がp= .128,13と21要素p= .096,8と21要素がp<.05であった。 次に,複雑さに関して,位数2の基礎パターンについて, 2 (C2, D1群)×3 (8, 13, 21要素) の交互作用は (F(2, 102)= 4.357, p<.05),(C2, D1群)の主効果は(F(1, 51)=11.300, p<.01),そして (8, 13, 21要素) の主効果は (F(2, 102)= 179.883, p<.001)で,すべて有意であった。一方,C2群 の単純主効果は(F(2, 102)=131.907, p<.001)で,多重 比較では 8と13要素,13と21要素,8と21要素がすべ てp<.001であった。D1群の単純主効果は(F(2, 102)= 126.595, p<.001)で,多重比較では8と13要素,13と21 要素,8と21要素がすべてp<.001であった。一方,8要 素の単純主効果は(F(1, 51)= .112, p= .739)で,13要素 と21要素の単純主効果はそれぞれ (F(1, 51)=12.355, p< .01) と (F(1, 51)=12.530, p<.01) であった。また,位数 4の基礎パターンについて,2 (C4, D2群)×3 (8, 13, 21要 素)の交互作用は(F(2, 102)=9.989),(C4, D2群)の主 効果は(F(1, 51)=19.752),そして(8, 13, 21要素)の主 効果は (F(2, 102)=166.942) で,すべてp<.001であった。 一方,C4群の単純主効果は(F(2, 102)=148.374, p<.001) で, 多 重 比 較 で は 8 と 13 要 素,13 と 21 要 素,8 と 21 要素がすべて p<.001 であった。D2群の単純主効果は (F(2, 102)=94.767, p<.001) で,多重比較では8と13要素, 13と21要素,8と21要素がすべてp<.001であった。一 方,8要素の単純主効果は(F(1, 51)=6.728, p<.05)で, 13要素の単純主効果は (F(1, 51)= .716, p= .401) で,21要 素の単純主効果は(F(1, 51)=38.902, p<.001)であった。

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実験2 (拡大条件) CnとDn拡大パターン別の要素数と位数の効果 Figure 4に関して良さと複雑さ別に,そしてCnとDn別 に,3 (8, 13, 21要素)×3 (C1, C2, C4巡回群,またはD1, D2, D4二面体群)の分散分析を行った。 CnとDn拡大パターンの良さ Cn拡大パターンについ て,3 (8, 13, 21要素)×3 (C1, C2, C4巡回群)の交互作用 は(F(4, 204)=15.250, p<.001),(8, 13, 21要素)の主効 果は(F(2, 102)=5.220, p<.01),そして(C1, C2, C4巡回 群)の主効果は(F(2, 102)=76.662, p<.001)であった。 一方,8要素の単純主効果は(F(2, 102)=38.059, p<.001) で,多重比較ではC1とC2群が p<.001,C2とC4群が p< .01,C1とC4群がp<.001であった。13要素の単純主効果 は(F(2, 102)=61.701, p<.001)で,多重比較ではC1と C2群,C2とC4群,C1とC4群がすべて p<.001であった。 21要素の単純主効果は(F(2, 102)=66.909, p<.001)で, 多重比較ではC1とC2群,C2とC4群,C1とC4群がすべて p<.001であった。一方,C1群の単純主効果は (F(2, 102)= 16.274, p<.001)で,多重比較では8と13要素がp<0.01, 13と21要素がp<.001,8と21要素がp=1.000であった。 C2群の単純主効果は(F(2, 102)=9.563, p<.001)で,多 重比較では8と13要素がp<.05,13と21要素がp<.001, 8 と 21 要素が p= .580 であった。C4群の単純主効果は (F(2, 102)=3.025, p= .053)であった。 次に,Dn拡大パターンについて,3 (8, 13, 21要素)×3 Figure 3. Expanded patterns and results in Experiment 2. Shown are the expanded 8-dot, 13-dot prototype patterns, and

dot compound patterns, and Means of goodness (left side) and complexity (right side). The different configurations of 21-dot patterns, the same configurations of 13-21-dot patterns, and the pattern size of 8-21-dot patterns did not influence goodness and complexity between the original and expanded patterns.

(7)

(D1, D2, D4)の交互作用は(F(4, 204)=1.580, p= .181),(8, 13, 21要素)の主効果は(F(2, 102)=5.113, p<.01),そし て(D1, D2, D4二面体群)の主効果は(F(2, 102)=36.791, p<.001)であった。一方,8 要素の多重比較では D1と D2群が p<.001,D2とD4群が p=1.000,D1とD4群が p< .001であった。13要素の多重比較ではD1とD2群が p<.05, D2とD4群がp<.05,D1とD4群がp<.001であった。21要 素の多重比較では D1とD2群,D2とD4群,D1とD4群が すべてp<.001であった。一方,D1群およびD2群の単純 主効果は有意でなかったので,多重比較は行わなかった。 D4群の多重比較では 8と13要素がp<.01,13と21要素p=1 .000,8と21要素がp<.01であった。 CnとDn拡大パターンの複雑さ Cn拡大パターンにつ いて,3 (8, 13, 21要素)×3 (C1, C2, C4巡回群)の交互作 用は(F(4, 204)=29.553),(8, 13, 21 要素)の主効果は (F(2, 102)=150.994),そして(C1, C2, C4巡回群)の主効 果は(F(2, 102)=118.791)で,すべてp<.001であった。 一方,8要素の単純主効果は (F(2, 102)=18.450, p<.001) で,多重比較ではC1とC2群が p<.001,C2とC4群が p= 1.000,C1とC4群がp<.001であった。13要素の単純主効 果は(F(2, 102)=86.915, p<.001)で,多重比較ではC1 とC2群,C2とC4群,C1とC4群がすべてp<.001であった。 21要素の単純主効果は(F(2, 102)=150.514, p<.001)で, 多重比較では C1とC2群が p<.001,C2とC4群が p<.05, C1とC4群がp<.001であった。一方,C1群の単純主効果 は(F(2, 102)=93.148, p<.001)で,多重比較では8と13 要素がp<.001,13と21要素がp<.01,8と21要素がp< .001であった。C2群の単純主効果は(F(2, 102)=108.566, p<.001)で,多重比較では 8 と 13 要素,13 と 21 要素, 8と21要素がすべてp <.001であった。C4群の単純主効 果は (F(2, 102)=118.287, p<.001) で,多重比較では8と 13 要素が p=1.000,13 と 21 要素が p<.001,8 と 21 要素p<.001であった。 次に,Dn拡大パターンについて,3 (8, 13, 21要素)×3 (D1, D2, D4二面体群)の交互作用は(F(4, 204)=14.137), (8, 13, 21要素) の主効果は (F(2, 102)=163.898),そして (D1, D2, D4二面体群) の主効果は (F(2, 102)=106.154) で, すべてp<.001であった。一方,8要素の単純主効果は (F(2, 102)=30.201, p<.001) で,多重比較ではD1とD2群 がp<.001,D2とD4群が p<.001,D1とD4群が p<.01であっ。13要素の単純主効果は(F(2, 102)=46.832, p<.001) で,多重比較ではD1とD2群,D2とD4群,D1とD4群がす べてp<.001であった。21要素の単純主効果は(F(2, 102)= 101.089, p<.001)で,多重比較ではD1とD2群がp<.001, D2とD4群が p= .276,D1とD4群が p<.001であった。一 方,D1群の単純主効果は (F(2, 102)=137.766, p<.001) で, 多重比較では8と13要素,13と21要素,8と21要素がす べてp<.001であった。D2群の単純主効果は (F(2, 102)= 103.575, p<.001)で,多重比較では8と13要素,13と21 要素,8と21要素がすべてp<.001であった。D4群の単 純主効果は(F(2, 102)=82.634, p<.001)で,多重比較 では8と13要素がp<.05,13と21要素がp<.001,8と21 要素がp<.001であった。 良さと複雑さの間のPearsonの相関係数を要素数別に算 出すると,8要素パターン6対では(r=−.836, p<.05), 13 要素パターン 6 対では(r=− .987, p<.001),21 要素 パターン36対では(r=−.946, p<.001)であった。 同一の位数を有するC2nとDnパターン 良さに関して, 位数2の拡大パターンについて,2 (C2, D1群)×3 (8, 13, 21要素)の交互作用は(F(2, 102)=13.471, p<.001)で, (C2, D1群) の 主 効 果(F(1, 51)=1.464, p= .232) と(8, 13, 21 要素)の主効果(F(2, 102)=2.739, p= .069)はい ずれも有意でなかった。また,位数 4の拡大パターン Figure 4. Shown are the Means of goodness and

com-plexity judgments of the expanded 8-dot, 13-dot pro-totype patterns, and 21-dot compound patterns.

(8)

について,2 (C4, D2群)×3 (8, 13, 21要素)の交互作用 は(F(2, 102)=4.660, p<.05)で,(C4, D2群)の主効果 (F(1, 51)= .123, p= .727) と(8, 13, 21 要 素) の 主 効 果 (F(2, 102)=1.434, p= .243)はいずれも有意でなかった。 次に,複雑さに関して,位数2の拡大パターンについて 2 (C2, D1群)×3 (8, 13, 21要素) の交互作用は (F(2, 102)= 3.762, p<.05),(C2, D1群)の主効果は(F(1, 51)=1.785, p= .188),そして (8, 13, 21要素) の主効果は (F(2, 102)= 153.092, p<.001)であった。一方,C2群の単純主効果は (F(2, 102)=108.566, p<.001) で,多重比較では8と13要 素,13と21要素,8と21要素がすべてp<.001であった。 D1群の単純主効果は(F(2, 102)=137.766, p<.001)で, 多重比較では 8と13要素,13と21要素,8と21要素が すべてp<.001であった。また,位数4の拡大パターン について,2 (C4, D2群)×3 (8, 13, 21要素)の交互作用は (F(2, 102)=35.443),(C4, D2群)の主効果は(F(1, 51)= 46.901),そして (8, 13, 21要素)の主効果は (F(2, 102)= 134.414)で,すべてp<.001であった。一方,C4群の単 純主効果は(F(2, 102)=118.287, p<.001)で,多重比較 では8 と 13 要素が p=1.000 であり,13 と 21 要素および 8と21要素がいずれもp<.001であった。D2群の単純主 効果は(F(2, 102)=103.575, p<.001)で,多重比較では 8と13要素,13と21要素,8と21要素がすべてp<.001で あった。一方,8要素の単純主効果は(F(1, 51)=49.375, p<.001)で,13 要素の単純主効果は(F(1, 51)=5.171, p<.05)で,21 要素の単純主効果は(F(1, 51)=66.148, p<.001)であった。 実験1と実験2の比較 基礎と拡大パターン間での要素数の効果 基礎(Fig-ure 1)と拡大パターン(Fig基礎と拡大パターン間での要素数の効果 基礎(Fig-ure 3)の平均値をMで示し, 要素数別に t 検定を行った。すると,良さについて, 8要素原型パターンは (M=5.5と5.6) で (t(102)=−.378, p= .706),13 要 素 原 型 パ タ ー ン は(M=5.6 と 5.6) で (t(102)=−.060, p= .952),そして21要素複合パターン は(M=5.1と5.2)で(t(102)=−.698, p= .487)となっ た。同様に,複雑さについて,8要素原型パターンは (M=2.0と2.0)で(t(102)=−.347, p= .729),13要素原 型パターンは(M=3.2 と 3.3)で(t(102)=− .654, p= .515),そして21要素複合パターンは(M=5.5と5.3)で (t(102)= .600, p= .550)となった。以上のように,良さ および複雑さ共に基礎と拡大パターンの間に有意差はな かった。 濱田他(2017)との比較 参加者内要因として計画された濱田他(2017)におけ る21要素の基礎と拡大パターンの間で良さおよび複雑 さについてt検定を行った。すると,良さは(M=5.1と 5.3)で(t(51)=− .050, p= .299),複雑さは(M=4.8 と 4.7)で(t(51)= .447, p= .656)となり,形状が異なる基 礎と拡大パターン間に差はなかった。 次に,要素数が21に固定されていた濱田他 (2017) と 8, 13, 21要素パターンが混在していた本実験における21要 素パターンについてt検定を行った。すると,良さは基 礎パターンが (M=5.1と5.1) で (t(102)= .316, p= .753), 拡大パターンが (M=5.3と5.2) で (t(102)= .530, p= .597) となり,いずれも有意でなかった。これとは対照的に, 複雑さは基礎パターンが(M=4.8と5.5)で(t(102)= − 3.380, p<.01), 拡 大 パ タ ー ン が(M=4.7 と 5.3) で (t(102)=−2.782, p<.01)となり,いずれも8と13要素 パターン12枚ずつが追加された本実験結果の方が濱田 他(2017)の結果より有意に複雑であった。 考 察

要素数の効果 前述のように,Hamada & Ishihara (1988) とvan der Helm & Leeuwenberg (1996)は,D1パターンの

要素数と良さの関係について異なる結果を報告した。こ の不一致は,枠組の有無や大きさの違い,さらには要素 数の差異などに起因していると思われる。翻って実験1と 2 (Figure 2と4)にもとづいて,DnとCnパターン(n=1, 2, 4)の要素数は良さに対して一貫した効果をもたらさ ないと結論される。一方,複雑さについて,Palumbo, Ogden, Makin, & Bertamini (2014)は,白黒四角の要素を チェッカーボード状に配置すると,要素数の増加に伴い 複雑さが高まるとしている。また,Oliva, Mack, Shrestha, & Peeper (2004)は,グルーピング課題により,室内情 景での家具などの日常品と壁の表面における要素数の増 加によって複雑さが高まることを示した。本実験は21要 素パターンが最も複雑で,8要素パターンが最も単純で, 13 要素パターンは中程度であることを明らかにした。 これらのことから,複雑さは要素数の増加につれて単調 に上昇すると結論される。 群の位数への依存性と直線成分パターン Hamada & Ishihara (1988) とHamada et al. (2016)は正六角形枠の要 素パターンを用いて,またHamada et al. (2016) と濱田他 (2017)は正方行列枠の21要素パターンにおいて,良さ (複雑さ)が群の位数に対して単調に上昇 (下降) するこ とを明らかにした。本実験(Figure 2と4)でも,8, 13,

(9)

21要素からなる基礎と拡大パターンで,群の位数への 依存性は1例を除き再確認できた。1例とは,基礎と拡 大の8要素Dnパターン(n=1, 2, 4; 位数は2, 4, 8)の複 雑さが位数に対してV字形となり,かつD2直線成分パ ターンがD4より有意に単純なことである。ところで, Hamada (1984)は等方性をもつ空間フィルタを用いて, 光強度分布とDOG (a difference of two Gaussians)を畳み 込み積分して,辺縁対比の現象をシミュレーションした。 この等方性を異方性に置き換えて,Dakin & Herbert (1998) とDakin & Watt (1994)は,異方性のある空間フィルタ によって対称軸の検出が行われていることを示唆してい る。すなわち,Dakinらはパターン認知の最初の段階で, 方向性のある長辺と短辺の比がおおよそ2 : 1の低分解能 の空間フィルタが適用されている可能性を指摘している。 この考え方を適用すると,8要素D2直線成分パターンは, 特異的に,縦方向と横方向の空間フィルタから,本実験 で用いた他のすべてのパターンからは得られない明瞭な 1本の縦棒状(0°, 180°)または横棒状(90°, 270°)の出 力を得ることとなる。ここで,フィルタの方向について は全方向について考えても一般性は失われない。この空 間フィルタが直線成分パターンの特異的な複雑さの低下 に寄与し,8要素Dnパターンの複雑さを位数に対してV 字形にする。一方,本実験では空間フィルタの効果は良 さには影響を与えていない。 同一の位数を有する21要素のC2nとDnパターン C2n とDn複合パターン(n=1, 2)について,巡回と二面体 群パターンの位数が認知判断へ及ぼす影響を比較するた めに,Hamada et al. (2016)は9×9枠で白黒要素パター ンのコントラスト極性の効果を明確にしつつ,良さでは DnがC2nより重みづけ(影響)が大きく,複雑さでは逆 にC2nがDnより重みづけが大きいという関係を示した。 一方,濱田他(2017)は同じ位数を有する基礎と拡大パ ターンで,この関係がn=1では現れず,n=2のときだけ に成立することを示した。しかし,8, 13, 21要素パター ンが混在する本実験では,これらの整然とした関係は認 められない。すなわち,良さは位数が同じ基礎と拡大パ ターンの双方で,C2とD1およびC4とD2の間には差がな かった。しかし,複雑さについては,基礎パターンで C2がD1より,そしてC4がD2より複雑であったが,拡大 パターンではC2とD1の間に差がないと同時にC4はD2よ り複雑であった。したがって,濱田らの3つの実験は, C2nとDnに対して整合的な関係を示していない。しかし, C4がD2より複雑であることだけは共通している。 濱田他(2017)との比較 濱田他(2017)は基礎と拡 大パターンを比較して,良さはC1パターンのみで,複 雑さはC4およびD4パターンのみで差が認められること を示し,これらの差異は9×9と19×19の枠組の大きさ によると考察している。一方,21要素パターンについ て,濱田他(2017)と本実験の結果をt検定で比較する と興味深い知見が得られた。すなわち,基礎と拡大パ ターンに共通して,8, 13, 21要素パターンが混在する本 実験の方が濱田他(2017)より複雑だが,良さには差が ない。つまり,21要素パターン36枚に複雑性の低い8と 13要素パターン合計12枚が追加されると,複雑さは高 まるが,良さには影響しない。ここで,参加者は9段階 評定をフルに行っているので,要素数の少ないパターン が追加されると,複雑さの評定範囲が高低に拡大して, 21要素パターンの複雑さが高まると考えられる。した がって, 8と13要素パターンの複雑さも21要素パターン の存在によって,それが存在していない場合より低下す ると考えられる。しかし,良さではこの現象は生じず, 空間フィルタの作用などと同様に要素数が複雑さと良さ に及ぼす効果は異なる。 大きさ要因と再現性 8要素の基礎パターンとその要素 の中心間距離を3倍にした拡大パターンでは,良さおよ び複雑さの双方で差がなく,大きさ要因はこれらの判断 に影響を与えない。この結果は,前述したPalmer (1983) の 観察を実験的に確認したことになる。一方,実験1と2で, 形状も大きさも同じ6つずつの13要素パターン対の良さ および複雑さには差がなく,実験の再現性は高かった。 要約および結論 対称性認知に対する群論アプローチにもとづいて,カー ドに印刷した要素パターンについての2つの実験がなさ れた。すなわち,9×9枠の基礎パターンと19×19枠の拡 大パターンについて,8と13要素原型パターンおよび21 要素複合パターンの良さあるいは複雑さを52名ずつ合計 208名の学部生が9段階評定法で判断した。その結果から, 次のように結論される。(1)要素数の増加は複雑さを高 めるが,良さでは一貫した効果がない。(2)基礎と拡大 パターンでの8要素Dnパターン (n=1, 2, 4) の複雑さを除 くと,良さは位数に対して上昇し,複雑さは下降する。 (3)空間フィルタは8要素D2直線成分パターンの複雑さ を最低にするが,良さには影響しない。(4) 21要素複合 パターン36枚に8と13要素原型パターン12枚を追加する と,複雑さは高まるが,良さは不変である。(5) 8要素の 基礎と拡大パターンの間に,良さおよび複雑さの差はな く,大きさ要因はこれらの判断に影響しない。以上の結 論は,これらの認知判断が群論に規定されながら,諸々 の物理的要因によって影響を受けることを示している。

(10)

校正段階での付記 拡大パターンにおける最外周の4要素の効果 拡大の 21要素複合パターンの各行の 17要素群化パターンはそ れぞれ同じである(Figure 3)。そこで,この群化パター ン以外の最外周に位置づく4要素の効果を検証するため に,各列の6つのパターンの良さおよび複雑さについて 平均値を算出した。すると,良さはD4が6.0,D2が5.4, D1が5.0である一方, C4は5.4,C2は5.2,C1は4.0である。 複雑さについて はD4が4.7,D2が5.0,D1が5.4である一 方,C4は5.4,C2は5.4,C1は6.2 である。これらの値は それぞれ揃いの順で下降,または上昇している。した がって,最外周の4要素パターンはその構造(すなわち, 巡回と二面体群)に依存しながら,21要素複合パター ンの良さおよび複雑さに影響を及ぼしている。 引用文献

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Psy-chological Review, 103, 429–456.

Figure 1. Original patterns and results in Experiment 1. Shown are the original 8-dot, 13-dot prototype patterns, and 21-dot  compound patterns, and Means of goodness  (left side)  and complexity  (right side).
Figure 2. Shown are the Means of goodness and com- com-plexity judgments of the original 8-dot, 13-dot  proto-type patterns, and 21-dot compound patterns.

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