ル タル の 微 生 物 腐 食 実 験
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(2) 粘土科学. 報. 第30巻. 第3号178‑186(1990). 文 微 生 物 腐 食 を 受 け た コ ン ク リー (2)モ. トの 鉱 物 学 的 研 究. ル タル の 微 生 物 腐 食 実 験. 田 崎 和 江 ・野 中 資 博*・ 森. 忠 洋**・. 野 田 修 司***. 島根大 学理 学部 地質 学科 *島 根大 学農 学部 地域 開発科 学科 **島. 根大 学農 学部 生物 資源科 学科. 〒690松 ***島. 根 県立工 業 技術 セ ンター 化 学科. 〒699‑01島. Mineralogical. 江市 西川津 町1060. 根 県八束郡 東 出雲町 出雲郷219. Investigation. of Microbially. ―(2)Microbial. Corrosin. Kazue TAZAKI, Tsuguhiro. on. Corroded. Mortar. NONAKA*, Tadahiro. Concrete. Bar―. MORI**, Shuji NODA***. Department of Geology, Shimane University, * Department of Agricultual Engineering, Shimane University. ** Department of Biochemical Engineering, Shimane University, Nishikawatsu, Matsue, Shimane 690 ***. Institute of Industriral Science and Technology, Shimane, Adakae, Higashiizumo, Shimane 699-01 Abstract. Mortar. bars. are. deteriorations corroded. mortar. barite.. The. morphology long,. the. 3ƒÊm secondary. presented. bar. produced. primary as. ettringite. portland. corroded. 成2年)2月9日. during by are. the SEM. step. by. corroded. cement. of. Ettringite mortar. and. under un-corroded. 12•`0•Ž.. Sulfate-generated. disintegration.. ettringite as. the. crystals bar,. concentration step. at and. chemistry. one.. high. months. secondary. same. hydration. 10. cracking. and. the primary. are. formed. between. mortar. calcite. the. for. expansion,. shows from. observed. (25•`300ppm). include. gypsum,. different formed. long. gas. bars. ettringite. quite. on. Key words:. 1990年(平. mortar. significantly. deterioration. to H2S. the. secondary is. are. about. exposed. in. acidic. condition. which. a. trace. point,. lath-shaped. ions.. is. iron the. oxides. layer process. concrete.. bar,. microbial. 受 付,1990年(平. corrosion,. 成2年)9月20日. ettringite,. 受 理.. sulfate-generated. the. 10-20ƒÊm. calcite. same. of. but. crystals,. Gypsum,. The. heavily. amount. ettringite, sharp. small. hydroxyl. zones. with primary with. whereas of. The. deterioration.. and is of.
(3) 第30巻. 微 生物 腐食 を受 けた コンク リー トの鉱 物学 的研究. 第3号(1990). 179. モ ル タ ル の 配 合 は 質 量 比 で セ メ ン ト1,豊 浦 標 準 砂2, 1.. ま. え. が. き. 水 セ メ ン ト比0.65と. した.す. な わ ち1回. に混練 した量. は 普 通 ポ ル トラ ン ドセ メ ン ト520g,標 準 砂1,040g,水 コ ン ク リー ト構 造 物 の 劣 化 現 象 と して は ア ル カ リ骨 材 反 応 が よ く知 られ て い る が,イ. オ ウ化 合 物 に よ る腐. 338gと. した.そ の 作 り方 は,ま ず 型 わ くに モ ル タル を. 入 れ,突. き棒 で 突 き湿 気 箱 に 入 れ る.モ. 食 も重 要 で あ る.こ れ は 嫌 気 条 件 下 で硫 化 水 素 が 生 成. て か ら5時. し,次 い で 好 気 条 件 下 で硫 酸 が 生 成 す る こ とに よ って. タ ル 盛 り上 げ 部 分 を削 り取 り,ス. 劣 化 が 進 む.す な わ ち,チ オ バ チ ル ス属(Thiobacillus). 面 を平 滑 に す る.モ ル タ ル を 詰 め て か ら20時 間 以 上 経. が硫 化 水 素 を硫 酸 に 酸 化 し,コ. た 後,供. ン ク リー ト腐 食 を進 行. させ る と い わ れ て い る. 筆 者 等 は,コ. 生 工 学 的,微. 生 物 学 的,土. 木工. トレ ー トエ ッ ジ で 上. 験 に 用 い た.. ヒ ュ ー ム 管20mを. る ジ ャ ロ サ イ トの 存 在 とそ の 生 成 機 構 につ い て報 告 し. 10mmを 削 っ た モ ル タ ル 供 試 体 を2又. た5).本 報 で は,モ ル タル バ ー を 用 い た 微 生 物 腐 食 を検. 入 れ た.腐. タ ル バ ー は 実 験 室 で 容 易 に 作 る こ とが で き,コ. リー トよ り微 生 物 腐 食 を受 け 易 い と考 え ら れ る.し が っ て,モ. ル. ンク た. ル タ ル バ ー を用 い る こ とに よ り腐 食 促 進 再. 現 実 験 が 可 能 で あ り,微 生 物 腐 食 機 構,お. よび腐 食速. 度 を検 討 す る上 で 有 効 で あ る と い え よ う.. 腐 食 実 証 プ ラ ン トはFig.1に. (H‑2)お. 勾 配1/1000で. 験. 方. 法. 示 す よ う に Φ150mmの 設 置 し,そ. こに上 部. は4m毎. に6本. 食 試 験 に 供 し た 試 料 は 入 り 口 か ら2番 よ び5番. 目の 試 料(H‑5)で. あ る.供. 体 は 下 部 が 下 水 に浸 る よ うに 設 置 した.下. 目 試. 水 は50cm/. sec程 度 の 流 速 で 流 下 させ た.こ. の コ ン ク リー ト管 中. の 空 気H2S濃. 温 は12〜30℃. 度 は25〜300ppm,気. で あ っ た(Fig.2).腐. 食 実 験 は1988年9月. 7月 ま で の10ケ 月 間 行 っ た.腐 薄 片 試 料 作 成 方 法,X線. 2. 実. 中養 生 を. 実験 方 法. 学 的,さ ら に粘 土 鉱 物 学 的 立 場 か ら研 究 を 行 っ て きた1 〜4).前 報 に お い て は,コ ン ク リー トの 腐 食部 分 に お け. 討 し,前 報 の コ ン ク リー ト腐 食 機 構 と比 較 す る.モ. 間経 た後 は. の 水 の タ ン ク に 完 全 に 浸 す.水. 28日 間 行 っ た 後,実 2.2. イ フ で 型 わ くの 上 の モ ル. 試 体 を型 わ くか ら取 り外 す.24時. 水 温20±2℃. ン ク リー トの 微 生 物 腐 食 機 構 の 解 明 と. そ の 対 策 につ い て,衛. 間 以 上 経 た後,ナ. ル タ ル を詰 め. の範 囲. か ら1989年. 食 し た モ ル タル バ ー の. 粉 末 回 折 分 析,走. 査 型電 子顕. 微 鏡 お よび エ ネ ル ギー 分 散 分 析 は,す べ て,前 報5)と 同 じ方 法 を用 い た.. 2.1. モル タルバ ー. 炭 素,水. 供 試 体 は 土 木 学 会 材 料 実 験 指 導 書5)に 準 じて 断 面40. 素 及 び チ ッ素 の 定 量 分 析 は,YAMACO. MT‑3,CHN‑CORDERを. 用 い,無. 処 理 と塩 酸 処 理 を. mm平 方,長 さ160mmの モ ル タル 角 柱 を作 成 し た.実 証 プ. ほ ど こ した 試 料 の 両 方 に つ い て お こ な い,有 機 物 と無. ラ ン トに 設 置 す る た め に 上 部10mmを 研 磨 機 で 削 っ た.. 機 物 の 含 有 量 を比 較 し た.な お,検 出 限 界 は,H=0.02,. Fig.1. Experimental. concrete. sewer. pipe for microbial. corrosion.. Six mortar. bars. were. set in the pipe..
(4) 180. 田 崎 和 江 ・野 中 資 博 ・森. C=0.14,N=0.06マ pHの. イ ク ロg/カ ウ ン トで あ る.. 測 定 に は 東 洋 濾 紙 社 製 のpH試. 縁 取 り され て 固 定 さ れ て い る(Fig.4).マ. 験 紙 を 用 い,. 分,す 験. 結. 果. トリックス. に は モ ル タ ル 生 成 時 の 水 和 反 応 に よ り生 じた 細 粒 の エ リ トン ガ イ トが 認 め られ る.一 方,薄. 検 体 の 表 面 で 測 定 した,. 3. 実. 粘 土科学. 忠 洋 ・野 田 修 司. 片試 料の縁 辺部. な わ ち 腐 食 部 分 に 於 い て は 骨 材 の 縁 取 りが 認 め. ら れ な い だ け で な く,マ. トリ ッ ク ス に は 二 次 的 に 生 成. した 細 粒 結 晶 が 密 集 して い る(Fig.5右 側).そ の 二 次 的 3.1. 偏光顕微 鏡観 察. 細 粒 結 晶 の 生 じた 末 端(写. 実 験 に用 い た モ ル タ ル バ ー は,数. ケ 月 後 い ず れ も喫. 真 の ほ ぼ 中 央)に. 鉄 の 沈 着 が み と め ら れ る.Fig.5Aの. は,酸 化. 右 側,縁 辺 に 近 い. 水 部 分 の 腐 食 が 著 し く,く び れ を 生 じて お り(Fig.2,. と こ ろ に は,マ. Fig.3矢 印),喫. Fig.6に 示 す よ う に,骨 材 自体 に も細 か い亀 裂 が 無 数 に. 水部 以上 の表面 は黒 色 の被 膜 でお お わ. れ て い た り,茶 褐 色 に変 化 して い る.こ 軟 弱 化 し容 易 に 欠 落 崩 壊 す る.そ 酸 性 で あ る.こ. れ らの 表 面 は. のpHは2以. 下 で強. ト リ ッ ク ス を走 る 亀 裂 が み られ るが,. 入 り,接 着 力 が 低 下 し軟 弱 化 し て い る こ と を示 し て い る.マ. ト リ ッ ク スの 亀 裂 は,モ. ル タルバー の長 軸方 向. の モ ル タ ルバ ー を 長 軸 方 向 に 切 断 し,. 断 面 を 観 察 し た も の がFig.3Bで. あ る.気. 相 中 の先 端. 部(写. 真 に お け る 上 端)は,下. 水 管 と接 触 して い た た. め,見. か け の 腐 食 は ほ と ん ど認 め ら れ な い が,側. 面は. 脱 色 お よ び 膨 張 が 著 し く,新 鮮 な部 分 と腐 食 さ れ た 部 分 との 境 界 が 明 瞭 で あ る.そ の 境 界 は 黄 褐 色 を呈 して, 肉 眼 的 に は 腐 食 の 最 先 端 に 見 え,白 色 の 腐 食 部 分 と灰 色 の 新 鮮 部 分 を 区 別 して い る.腐 食 の 進 む 方 向 は モ ル タ ル バ ー の 長 軸 に 対 して ほ ぼ 垂 直 で あ る が,喫 水 部 に 於 い て は進 行 の 度 合 が 異 な る ため 湾 曲 し て い る.試 料 H‑2に が,腐. お い て もH‑5と. 同 様 の 断 面 が 観 察 され た. 食部 分 の 厚 さ はH‑2の. 方 が 薄 い,. 乾 燥 後 シ ア ノボ ン ドで 固 定 し,研 磨 した 薄 片 試 料 を Fig.4〜6に 示 し た.モ ル タ ル バ ー の 新 鮮 な 中 心 部 分 は, 石 英 ・長 石 類 ・砂 岩 な ど の 骨 材 が セ メ ン ト物 質 に よ り. Fig.3 Fig.2. Mortar. bar exposed. to H2S gas. ppm) for 8 months, looking from the window of pipe.. (25-300. down the bar. Mortar bar (Samples H-5 and H-2) exposed to H2S gas for 10 months showing corrosion parts near rim. A: Surface. B: Crossed section..
(5) 第30巻. 第3号(1990). 微 生 物 腐 食 を受 け た コ ン ク リー トの 鉱 物 学 的 研 究. に ほ ぼ 平 行 で あ るの に 対 し,骨 材 の 亀 裂 の 方 は一 定 し て い な い.左 上 角 の 縁 辺 部 に は,二. 181. 粒 結 晶 が 認 め られ る.. 次 的 に 生 成 した 細. Fig.4. Polarizing micrographs of thin section of mortar bar (Sample H-2) showing uncorroded sand grains and the matrix with primary ettringite which are hardly cemented. A: Opened nichols, B: Crossed nichols.. Fig.5. Polarizing micrographs of thin section of corroded mortar parts showing Fe-rich zone (center) and secondary products by corrosion in the matrix (right side). In the left side uncorroded matrix still remains. The secondary products are mainly gypsum. A: Opened nichols, B: Crossed nichols.. Fig.6. Polarizing sand A:. grains Opened. micographs. of thin. section. and its matrix. nichols,. B:. Crossed. nichols.. of corroded. mortar. parts. showing. abundant. cracking. in the.
(6) 田 崎 和 江 ・野 中 資 博 ・森. 182. 3.2. X線. 3.3. 粉末 回折. モ ル タ ル バ ー の 最 も著 し く腐 食 し た 部 分 のX線 末 回 折 結 果 をFig.7に 示 し た.試 H‑2(B)は,い. 料H‑5(A)お. 粉 よび. ず れ も同 じ よ う な 回 折 パ タ ー ン を示 し. エ トリ ン ガ イ ト(Ca6Al2(SO4)3(OH)12・25H2O),ジ サ ム(CaSO4・2H2O),石 る.さ. ら に,後. (BaSO4)も. 英 お よ び 方 解 石 と 同 定 され. 述 す る よ う に,腐. 生 成 して い る が,微. 食部 に はバ ラ イ ト 量 の た めX線. 折 で は,そ の 特 徴 回折 線3.445A(021)は H‑5の. プ. 粉末回. 粘土 科学. 忠 洋 ・野 田 修 司. 走 査 型電子 顕微鏡観 察 とエネル ギー分 散分 析. モ ル タル の 新 鮮 部 分 に は,骨. 材 と骨 材 の 隙 間 に 先 端. の とが っ た 板 状 の 初 生 エ ト リン ガ イ トの 結 晶 が,矢 状 に集 合 して い るの が 認 め ら れ る(Fig.8).そ の 部 分 の 化 学 組 成 は,大 量 のCaと 成 り(Fig.8A),マ. 筈. の結 晶. 少 量 のSi,Al,Sよ. り. ト リ ッ ク ス の 化 学 組 成(Fig.8B)と. 殆 ど 同 じで あ る.通 常,ポ. ル トラ ン ドセ メ ン トの 水 和. 物 と して 報 告 され て い る エ トリ ン ガ イ トの 化 学 組 成 と. 不 明瞭 であ る。. 腐 食部 にお け る ジ プ サ ム お よ び 方 解 石 の 生 成. 量 は,H‑2に. 比 較 しそ の 特 徴 回 折 線 の 強 度 か ら卓 越. して い る と い え る.Fig.3で 部 の 厚 さ はH‑5の. 示 した 断 面 を み て も,腐 食. 試 料 の 方 が 厚 い,な お,モ. ル タル. 作 成 時 に 生 じ る初 生 エ ト リ ン ガ イ トと,腐 食 に よ り生 成 した 二 次 エ トリ ンガ イ トと は,X線 別 で きな い.長 石(3.28A)も. 極 少 量 含 有 し て い る が,. ス メ ク タ イ トな どの 粘 土 鉱 物 は,両 ら れ な い.バ. 粉 末 回折 で は 区. 試 料 と も殆 ど 認 め. ッ ク グ ラ ウ ン ドの 盛 り上 が り も少 な い こ. と か ら,非 晶 質 物 質 の 存 在 は あ っ て も極 少 量 で あ る こ と が推 定 で き る.. A. A. B. B. Fig.8 Fig.7. X-ray most A:. powder. Sample. Ettringite, •¡: Calcite.. diffraction. corroded. parts H-5,. patterns of. B: Gypsum, •œ:. mortar Sample. of. the. bars. H-2, Quartz, • :. A:. Scanning electron micrograph of primary etttringite in the uncorroded parts of mortar bar (Sample H-5) and its energy dispersive X-ray patterns of point analyses at the ettringite crystalline material (A) and the matrix (B)..
(7) 第30巻. 第3号(1990). 比 較 し,Alの で あ る.マ. 微 生物 腐 食 を受 け た コ ン ク リー トの 鉱 物 学 的 研 究. 183. 量 が 少 な くSiが 加 わ っ て い るの が 特 徴. トリ ッ ク ス 部 分 に は,微 量 のFe成. 分 の含 有. が 認 め ら れ る. モ ル タ ル の 腐 食 部 分 の マ ト リッ ク ス に は 長 柱 状 の 結 晶 が 密 集 して お り,そ の 部 分 の 化 学 組 成 はSとCaで あ り,X線. 粉 末 回 折 結 果 よ りジ プ サ ム(CaSO4・2H2O). が 生 成 し て い る こ と を示 し て い る(Fig.9).さ 食 部 分 の 薄 片 の 反 射 電 子 像 は,細. ら に,腐. か い 亀 裂 の 入 った 石. 英 や 長 石 を含 む マ トリ ッ ク ス に,細 粒 の 結 晶 が 存 在 す る こ と を 示 して い る(Fig.10).灰. 色 の 粒 は石 英(Fig.. 10A),白. く輝 く小 粒 結 晶 は ジ. 色 の 粒 は 長 石 で あ り,白. プ サ ム とバ ラ イ ト(BaSO4)(Fig.10B)お. よ び,腐. 食に. よ り二 次 的 に 生 成 し た エ トリ ン ガ イ ト(Fig.10C)で る.こ の 二 次 的 エ ト リン ガ イ トの 化 学 組 成 は,初 ト リ ン ガ イ トの 組 成(Fig.8A)と Bの 化 学 組 成 は,バ. あ. A. 生エ. よ く似 て い る.Fig.10. ラ イ トが 方 解 石 や ジ プ サ ム を密 接. に 伴 っ て い る こ と を示 して い る. モ ル タ ルバ ー(H‑5)の. 腐 食 部 分 の バ ル ク試 料 に よ. B. C. Fig.10. Fig.9. Scanning (as. electron. secondary. roded energy. parts. micrograph. products). of the mortar. dispersive. X-ray. of gypsum. at the most corbar. (H-5). pattern.. and its. Back scattered electron image of the polished thin section (Sample H-5) showing different brightness due to their elemental components, and the point analyses at the quartz grain (A), the barite and the gypsum grains (B and arrows), and the secondary ettringite (C and arrows). qz: Quartz,. feld:. Feldspar..
(8) 田 崎 和 江 ・野 中 資博 ・森. 184. る 走査 型 電 子 顕 微 鏡 観 察 は,上 述 の 二 次 生 成 鉱 物 の 共. 分 に は,長. 存 関係 を 明 瞭 に あ らわ し て い る.腐. 解 石,バ. 食 の 最 も顕 著 な部. 粘土科 学. 忠 洋 ・野 田修 司. 柱 状,菱. 形 お よ び六 角 板 状 の ジ プ サ ム,方. ラ イ トが 認 め ら れ(Fig.11A右. に は 明 瞭 な 境 界 で,二. 側),二. 次 的 エ ト リン ガ. に も述 べ た よ うに化 学 組 成 は 初 生 エ トリ ン. ガ イ ト と非 常 に よ く似 て い る が,そ い る.初. の直下. 次 的 に生 成 し た エ ト リン ガ イ ト. の 層 が 接 して い る(Fig.11A左 イ トは,前. 側),そ. の形 態 は異 なって. 生 エ ト リン ガ イ トの結 晶 の 先 端 が とが っ て い. る の に対 して,二. 次 的 エ ト リン ガ イ トの 先 端 は,長. に 対 し て 垂 直 で あ り,し ば しば2〜4つ る(Fig.11C),更. に 分 裂 して い. に,両 者 の 結 晶 の 大 き さ に も差 が あ る.. 初 生 エ ト リン ガ イ トは,Fig.8に 10‑20μmに. 軸. 示 し た よ うに,長 さ が. 対 して,二 次 的 エ トリ ン ガ イ トは,長 さ3. μm前 後 の 長 柱 状 ま た は拍 子 木 状 で あ る(Fig.11C).集 合 の 仕 方 は前 者 は カ リフ ラ ワ ー 状 で,後 認 め ら れ な い.Fig.11Bの. 者 は 方 向性 が. 形 態 は,二 次 的 エ ト りン ガ イ. トが モ ル タ ル バ ー の 不 定 形 の マ ト リ ッ ク ス か ら直 接 生 成 し,ジ プ サ ム の 結 晶 を経 由 し て生 成 す る もの で は な い こ と を示 して い る. 腐 食 し た モ ル タ ル バ ー の 偏 光 顕 微 鏡,走 微 鏡 お よ び エ ネ ル ギー 分 散 分 析,X線 観 察 結 果 をFig.12に. 査型電 子顕. 粉 末 回折 に よる. ま とめ た.腐 食 の 最 も顕 著 な 縁 辺. 部 に は ジ プ サ ム 生 成 層 が あ り,方 解 石 や バ ラ イ トを 伴 っ て い る.そ. の 直 下 に は,腐. 食 に 伴 っ て 生 成 した 二. 次 的 エ トリ ン ガ イ ト層 が あ る.い ず れ も,骨 材 の 粒 子 に は 細 か い 亀 裂 が 生 じて お り,セ メ ン ト物 質 に よ る縁 取 りは な く固 定 さ れ て い な い.腐 境 界 に は,厚 さ100μmの. 部 分 の 骨 材 の 粒 子 の 周 囲 は,酸 て い る.新. 食 部 分 と新 鮮 部 分 の. 鉄 の 沈 着 層 が 存 在 す る.こ の 化鉄 に よ り縁 取 りさ れ. 鮮 で 腐 食 の 生 じて い な い モ ル タ ル の マ ト. リ ッ ク ス の 部 分 に は,水. 和 反 応 に よ り生 じ た初 生 エ ト. リン ガ イ トが 存 在 し,骨 材 は し っか り と周 囲 が 固 定 さ れ て い る.モ. ル タ ル バ ー の マ トリ ッ ク ス部 分,初. 生エ. ト リ ン ガ イ トお よ び 二 次 的 エ ト リン ガ イ トの 化 学 組 成 は,い. ず れ もほ とん ど 同 じで あ るが,そ. さ,結. 晶 の 集 合 の 仕 方 は,異. の 形態や大 き. な っ て い る.新 鮮 部 分 の. Fig.11. Scanning. electron. micrographs. of the corroded. mortar. bar. (sample. H-5) showing. secondary. products of gypsum and calcite (right side in A) secondary ettringite (left side in A) and the higher magnification of ettringite (B and C). Note that the morphology of secondary ettrigite is quite different from the primary ettrigite in Fig.8, eventhough the chemical composition is the same between them. The lath-shaped crystalline materials occur from gel-like material of the matrix (B). The secondary ettringite ctystal is splited into pieces (C)..
(9) 第30巻. 第3号(1990). 微 生 物 腐 食 を受 け た コ ン ク リー トの 鉱 物 学 的 研 究. 185. A. 8 C. D. Fig.12. Table. Corroded mortar bar zonaly formed gypsum, calcite, barite (A), secondary ettringite (B) iron oxides (C), and primary ettringite (D) on the basis of differences in the crystal habit and the chemistry.. 1.. H-C-N ed. part. after. compositions. of the most. of the. bar. mortar. 4. 考. corrod-. before. 察. and モ ル タ ル バ ー に よ る腐 食 実 験 は,前 報 の コ ン ク リー ト. HCl-treatment.. の 腐 食 と同 様,腐. 食 の 進 行 は な だ らか に 進 む の で は な. く,酸 化 鉄 の 浸 透 を境 界 に もつ 層 状 的 な 腐 食 反 応 で あ る こ とが 裏 付 け ら れ た.コ ン ク リー トの 腐 食 で は,ジ ャ ロ サ イ トと ジ プ サ ム が 生 成 し た が,モ 食 で は,主 生 成 した.モ. ル タル バ ー の 腐 食 実 験 で ジ ャ ロサ イ トが. 生 成 し な か っ た 原 因 は,ジ やFeの 骨 材 に は,ほ. とん ど亀 裂 が 認 め られ な い.以 上 の よ う. ルタルバ ー の腐. と して 二 次 的 エ ト リ ン ガ イ トと ジプ サ ム が. ャ ロ サ イ トの 成 分 と な るK. 供 給 が な か っ た こ と,す な わ ち,骨 材 中 に カ リ. 長 石 が少 な か っ た こ とが 考 え ら れ る.従. っ て,モ. ルタ. に,モ ル タ ル の 腐 食 は 層 状 構 造 を 持 ち な が ら深 部 に 進. ル バ ー の マ ト リ ッ ク ス 中 の 水 和 反 応 に よ る初 生 エ ト リ. 行 して い く,. ン ガ イ トが 崩 壊 し,溶 脱 し た 同 じ成 分 で 二 次 的 エ ト リ. 3.4. C,H,Nの. 定 量分析. ン ガ イ トが 生 成 した と考 え ら れ る.初. モ ル タ ル バ ー の 腐 食 部 分 のC,H,Nの Table.1に 示 し た.無 処 理 とHCl処 無 機 物 の 含 有 量 を 求 め,C/N比 よ びH‑2に. お け るC/N比. 含 有 量 を, 理 に よ り有 機 物 と. を 比 較 した,H‑5お は い ず れ も大 き く,バ ク. 生 エ トリ ン ガ イ. トま た は マ ト リ ッ クス は,腐 食 に よ り一 時 的 にFig.11 Bの. よ うな 不 定 形 の ゼ リー 状 物 質 に 変 わ り,長 柱 状 ま. た は 拍 子 木 状 へ と再 結 晶 す る.今 Mehta(1983)7)の. 回 の 実 験 結 果 は,. ボ ル トラ ン ドセ メ ン トの 硫 酸 塩 腐 食. テ リア の 関 与 が 少 な い こ と を裏 ず け て い る.有 機 物 含. 実 験 と一 致 す る.Mehtaは,水. 有 量 に つ い て は,次. た初 生 エ ト リン ガ イ トと腐 食 に よ っ て 二 次 的 に 生 成 し. 報 で 詳 し く述 べ る予 定 で あ る.. 和 反応 に よって生成 し.
(10) 186. 田 崎 和 江 ・野 中 資 博 ・森. た エ ト リン ガ イ トを 区別 し て い る.二. 次 的 エ ト リン ガ. イ トは,ジ プ サ ム と 同 時 に 生 成 さ れ,比. 表 面積 が大 き. 粘 土 科学. 忠 洋 ・野 田 修 司. して い る.こ の エ トリ ン ガ イ トの 化 学 組 成 は,モ. く,多 量 の 水 分 を吸 収 し膨 張 しや す い と報 告 さ れ て い. とん ど 同 じで あ る が,エ. る.本 実 験 で 観 察 さ れ た 二 種 の エ ト リ ン ガ イ トの 結 晶. と二 次 的 な もの と で は 大 き く異 な っ て い る.腐. の 大 き さ は,Mehtaの. と新 鮮 な 部 分 と の 間 に 約100μmの. 全 く異 な る.こ. そ れ と近 い 値 を示 す が,形 態 は. れ は環 境 条 件 お よび モ ル タ ル の性 質 の. 多量 の硫 酸 イ オ ン が供 給 さ れ る最 も腐 食 の 顕 著 な 部 分 で は,pHが. 低 下 し,二 次 的 エ ト リ ンガ イ トが分 解 し. て ジプ サ ム 等 が 生 成 す る.Moun. す る が,そ. トリ ン ガ イ トの 形 態 は,初. and Rosenquvist. 8)は. の部 分 の骨材 の表面 は鉄 で縁取 りされて い. 生 物 に よ り生 成 さ れ た硫 酸 と接 し,モ ル. タ ル の 成 分 を た え ま な く何 度 も 溶 解 す る こ と に よ り pHが5〜6の. ガ イ トの分 解 を 促 進 す る と述 べ て い る.硫 酸 イ オ ン は,. し,そ れ に 引 き続 い てpHが. 何 度 もた え ま な くモ ル タ ル を分 解 し,pH5〜6の. ム とカ ル サ イ トを 沈 澱 生 成 す る.. に み ら れ る よ う に,pH2付. 付. 裂 もな く周 囲 も. し っ か り とエ ト リン ガ イ トで 固 定 さ れ て い る.モ ル タ ル バ ー は,微. CO2が 存 在 す れ ば カ ル サ イ トが 生 成 す る の で エ ト リン. 近 で カ ル シ ウ ム 化 合 物 が 沈 殿 す る.そ. 生. 食部分. 鉄 の 沈着 層 が 存在. る.モ ル タ ル の 新 鮮 部 分 の 骨 材 は,亀. 違 い が 反 映 し て い る の で あ ろ う.. ルタ. ル の マ ト リ ッ ク ス 部 分 お よ び 初 生 エ ト リン ガ イ トと ほ. 付 近 で 二 次 的 エ ト リ ン ガ イ トを 生 成 低 下 した ところで ジプ サ. して 本 実 験 結 果. 近 で ジ プ サ ム と方 解 石 が. 謝辞. 本 研 究 に お け る腐 食 実 験 は 日本 下 水 道 事 業 団 の. モ ル タ ル の 表 面 部 分 に形 成 さ れ た と考 え ら れ る.微 量. 八 王 子 パ イ ロ ッ トプ ラ ン トで 行 っ た.こ. な が ら生成 し た バ ラ イ ト(BaSO4)は,ジ. 下 水 道 事 業 団 業 務 部 調 査 役,堺. プサムや方. た,サ. の 試 験 で 日本. 好 雄 氏 は じめ 事 業 団. 解 石 との 塊 状 集 合 体 の 中 で(定 方 位)連 晶 して い る か,. の 方 々 に,ま. ン プ ル の 薄 片 作 成 に つ い て は,岡. ま た は,自 然 界 に お いて 石 灰 岩 の 風 化 残 留 産 物 と して. 山 大 学 土 球 内 部 研 究 セ ン ター 麻 田斉 氏 に お 世 話 に な っ. も産 出 す る こ とか ら,モ ル タ ル バ ー の 骨 材 に 混 入 して. た.サ. い た と考 え ら れ る.. 部 の 鈴 木 徳 行 博 士 に分 析 し て戴 い た.こ. 今 回 の モ ル タ ル バ ー 腐 食 実 験 に お い て は,腐 も 顕 著 な 部 分 のC/N比. は11〜23,又. 食 の最. れ らの 結 果 か ら,モ. 物 中 に は,コ. ン ク リー トの そ れ に 比 較 して 生 物 の 現 存. 文. 物 現 存 量 と腐 食 促 進 と. 1). 森. 2). 野 中 資 博 ・森. と. 忠洋. 森. 実 証 プ ラ ン トを用 い て モ ル タ ル バ ー を10ケ 月 間 腐 食 食 部 分 を偏 光 顕 微 鏡 ・X線 粉 末 回 折 ・走 査 型. 電 子 顕微 鏡 ・エ ネ ル ギー 分 散 分 析 に よ り検 討 し た結 果,. リー ト同 様,層. 状 構 造 を持 ち な が ら深 部 に 腐 食 が 進 行. す る.腐 食 部 分 の 骨 材 に は,無 た,マ. ンク. 数 の 小 さ な 亀 裂 が,ま. ト リ ッ クス 部 分 に も大 き な 亀 裂 が 走 り,モ ル タ. ル を膨 張,軟 部 分 に は,ジ. 弱,崩 壊 させ て い る.腐 食 の 最 も顕 著 な プ サ ム,方. が 生 成 し て い る.そ. 解 石,お. よび微 量のバ ラ イ ト. の ジプ サ ム 層 と明 瞭 な 境 界 を持 っ. て,長 柱 状 〜 拍 子 木 状 の 二 次 的 エ ト リン ガ イ トが 生 成. 4). 森. 146,. 27,. (1990). 農 業土. 79‑84.. (1990). ・堺. 好雄. ・三. 下水 道協 会誌. 122‑129.. 忠 洋 ・彦 坂 康 夫 ・野 中 資 博 ・古 賀 み な 子 ・野. 田 修 司 ・三 品 文 雄 ・堺 水 道 協 会 誌 論 文 集, 5). 31, 391‑396.. 忠 洋 ・古 賀 み な 子 ・米 倉 義 和. 論 文 集,. ル タ ル も,コ. 用 水 と 排 水,. 忠 洋 ・服 部 九 二 雄. 品 文 雄 ・立 脇 征 弘 ・小 泉 淳 一. め. 次 の よ う な点 が 明 ら か に な っ た.モ. (1989). 木 学 会 論 文 集, 3). させ,腐. 献. ル タルバ ー腐食生 成. の 関係 に つ い て は 今 後 の検 討 課 題 で あ る.. ま. こ に深 くお 礼. 申 し上 げ る.. は7. で あ っ た.こ. 5.. 含 有 量 を,島 根 大 学 理 学. はそれ以上で. あ っ た.前 報 の コ ン ク リー ト腐 食 部 分 のC/N比. 量 が少 な い こ と が わ か っ た.生. ン プ ル 中 のC,H,Nの. 崎 和 江 ・森. 土 科 学,. 30,. 好 雄 ・小 泉 淳 一. 27,. (1990). 下. (1990). 粘. 137‑144.. 忠 洋 ・野 中 資 博 ・野 田 修 司 91‑100.. 6) 土 木 学 会 編 (1984). 土 木 材 料 実 験 指 導 書 (基 礎 編). 12‑17. 7). Mehta,. Research, 8). Moum,. American. P.K.(1983) 13, J. and. Cement. and. Concrete. 401‑406. Rosenqvist. Concrete. (1959). Institute,. 56‑18,. Journal 257‑264.. of the.
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