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情動n-back課題を用いたネガティブ情動と反すうおよびメタ認知との関連

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-54 228

-情動n-back課題を用いたネガティブ情動と反すうおよびメタ認知との関連

○芳村 利浩1)、池田 浩之2)、中村 菜々子2) 1 )社会福祉法人すいせい、 2 )兵庫教育大学発達心理臨床研究センター 【目的】 これまでに,反すうの維持・悪化には実行機能の低 下やワーキングメモリ(以下,WM)が関与していると する知見が蓄積されており、新奇な情報を収容するた めに,現在の記憶内スキーマの表象状態を修正するこ とは,WMの更新と呼ばれる(望月, 2013)。反すうの ように現在の思考内容が望ましくないものである時, その内容をポジティブあるいは別の内容に更新するこ とは,反すうの悪循環から脱出させ,結果として様々 な不適応状態の改善につながると考えられる。 WMの更新機能を測定する伝統的な課題に n -back課 題がある(Jonides, etc. 1997)。 n -back課題とは, 連続して刺激が提示され,現在提示されている刺激と

n 個前の刺激が同じかどうかを連続的に判断する再認 課題である。うつ病者においては, n -back課題の全 体的なパフォーマンスの低下がみられる (Harvey, et al. 2006)。

Levens & Gotlib (2010) は, 2 試行前の顔刺激と 現在呈示されている顔刺激の感情価が一致しているか 判断を求める情動2 back課題を用いて,うつ病者と健 常者におけるWMの更新機能について検討した。うつ病 者は,いったん形成された悲しみ表情をマッチングさ せる構えを解体し,無関連になった刺激から注意を解 放させることが遅いため,WM内に悲しみに関連した刺 激をとどめやすいことがわかった。 以上のような臨床群を対象とした研究では,統制群 と比較してn back課題におけるパフォーマンスが低下 することがわかっている。一方で,非臨床群を対象と したn back課題では,抑うつとWMの関連が見られな かった(西村, 2013)。抑うつ的反すうはネガティブ な事象を繰り返し考えることとされているため,感情 価がニュートラルな通常のn back課題ではWMの更新に 差が出なかったと考えられる。 WMと反すうに影響を与えうる認知機能としてメタ認 知(meta cognition)が考えられる。メタ認知は自己 をより俯瞰的に見るセルフモニタリングや,状況と自 己を客観的に分析し,適切な対処方略を選択するプラ ンニングとコントロールに関連があることがわかって いる。これらは計画を立て,決断を下し,判断し,自 己を知覚するという実行機能との関連もあると考えら れている。また抑うつや反すうとメタ認知の関連につ いても数多く検討されている(Wells, 2009)。これら のことからWMと反すうを検討する際,メタ認知能力の 影響も考慮しなくてはならない。 反すう特性の高い者は,ネガティブな事象をWM内に とどめやすい可能性から,ネガティブ情動に対する脆 弱性があると考えられる。しかし,実行機能に作用す ると考えられているメタ認知能力が高ければ,WM内に あるネガティブな情動価の情報に影響されることなく WMの更新をおこなえる可能性がある。本研究では,大 学生を対象に情動 n -back課題を用いて,反すうとネ ガティブな情動の関連を検討する。また,メタ認知能 力がこれらの関連に与える影響を課題反応時間に与え る効果量の差から検討する。 【方法】 実験対象者:本研究では大学生,大学院生38名(男性 20 名,女性 18 名,平均年齢 22.89 歳,SD = 1.75) を対象とした。手続き:はじめに質問紙に回答を求め た。 1 . 抑うつ気分:POMS 日本語版を使用した。現在の 気分状態について記入を求め,「抑うつ-落ち込み」の 下位尺度によって,抑うつ状態の者についてスクリー ニングした。 2 . メタ認知能力:後悔対処におけるメタ認知(室町, 2014)を使用する。「モニタリング」「コントロール」 「メタ認知的知識」の 3 因子13項目で構成されている。 3 . 反すうおよび省察特性: Rumination Reflection Questionnaire( Trapnell & Campbell, 1999)の日本 語版(高野・丹野,2008)を使用する。「反すう特性」 「省察特性」の 2 因子24項目で構成されている。

実験課題: Levens & Gotlib (2010)を参考にした情 動 n -back課題を行った。本研究では桶上(2015)が 選定した漢字二字熟語をもとに課題を作成し,単語刺 激を用いた言語性WMの機能を検討する。単語刺激の感 情価はネガティブ(例:絶望),ポジティブ(例:幸福), ニュートラル(例:切符)の 3 種類である。課題では, 2 試行前の単語刺激と現在呈示されている単語刺激の 感情価が一致しているかどうかの判断を求める2 back 課題を 1 ブロック16試行× 6 ブロック,全96試行おこ なった。単語刺激はPCディスプレイ上に呈示し,一致 か不一致の判断をキー押しでさせ,反応時間を測定し た。 倫理的配慮:結果は統計的に処理され個人情報の漏洩 がないこと,実験は強制ではないこと,いつでも実験 を中止できることを実験前に口頭で説明した。課題に おいてネガティブな感情価刺激を用いるため,実験協

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-54 229 -力者に否定的な感情が生じる可能性があった。そこで 村山(2013)などの抑うつ気分誘導を行った研究を参 照し,実験終了後にデブリーフィングを行い,実験協 力者の不快気分を消失させた。 【結果】 エラーが少ないブロック中盤の反応時間を抽出し, 分析した。各試行反応時間を従属変数とし,反すう特 性(高群,中群,低群),メタ認知能力(高群,低群) を 独 立 変 数 と し た 2 要 因 被 験 者 間 分 散 分 析 を お こ なった。その結果,negative-break set試行(Figure 1)について,反すう特性とメタ認知能力の主効果は 有意ではなかった( F ( 2, 32 ) = 0.17, n.s.; F ( 1, 32 ) = 0.02, n.s. )が,交互作用は有意であっ た( F (2, 32 ) = 4.50, p < .05 ) 。positive-break set試行(Figure 2)について,反すう特性と メタ認知能力の主効果は有意ではなかった( F ( 2, 32 ) = 0.18, n.s. ; F (2, 32) = 0.02, n.s. )が, 交互作用は有意であった(F (2, 32 ) = 2.23, p < .05 )。 【考察】 方略のコントロールと,モニタリング機能を含めた メタ認知能力があれば,たとえ反すう特性が高い者で も,ネガティブな情報をWM内に保持した後に,関連の ない他の刺激へと注意転換をスムーズにおこなうこと が可能だったことが示唆された。また,反すう特性が 中程度以上の者は,ネガティブ,ポジティブ単語後の WMの更新を比較すると,ネガティブ単語後に更新機能 が阻害されたために,反応時間差が出た可能性があ る。反すう特性が高い傾向がある者の中で,メタ認知 能力が高い者と低い者では,ネガティブ単語後のWMの 更新に差が見られた。よって,WMの更新機能には反す う特性よりもメタ認知能力による影響が強いことがわ かった。今後の展望としては,このメタ認知能力への 効果的な介入方法を模索する必要がある。 【引用文献】

Levens, S.M. & Gotlib,I.H. J Exp Psychol Gen. (2010). Updating Positive and Negative Stimuli

in Working Memory in Depression. Nov; 139( 4 ): 654 664.

Wells, A. (2000). Emotional disorders and metacognition: Innovative cognitive therapy. England Wiley.

参照

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