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土壌の不飽和透水係数について-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香川大学農学部学術報告 第30巻 節64号149∼155,1979 149

土壌の不飽和透水係数について

梅田 裕,横瀬 広司,山田 宣長

ON THE UNSATURATED PERMEABILITY OF SOIL

Yutaka UMEDA,Hiro3iYoKOSE and NoriyoshiYAMADA

Many studies on the permeability of soilhave been examined since old times,and

nowadays,the saturated flow of soilwateris expressed conveniently by Darcy’slaw. In spite of these researches untilnow,the unsaturated permeability of soil,eSpeCially the

measurIement Ofit,is not yet researched sufficiently for practical use.In this paper,at first,We prOPOSe a method which calculates the unsaturated permeability with the time−

moisture curve obtained from the pF−SOilmoisture experiment,and compareit with a recent data published by NAKANO et al.Secondly,aS a reSult of application of this method to the

field,itis proved that the culculated data almost coincides with the practicalcomsumptive

moistuI・e. 土塊の透水に関する研究は古くから行なわれ,特に飽和時の水分移動はDaICyの法則によって簡便に表わされるに 至っている.しかしながら不飽和時の透水係数に関する検討,特にその測定については充分な考察がなされていない. 本論文では,まず土壌のpF一水分試験時の時間−水分曲線を利用して不飽和透水係数を求める方法を提案し,それを これまでのデータと比較した.またこの方法を閉場に適用した結果,実際の水分消費層と良好な一致をみた. 緒 口 土壌の透水に関する研究は,古くから多くの研究者連によって推進されており,特に飽和の状態における1次元の透 水現象については,DaICyの法則の適用によって理論的に稚立されているものと考えられる.しかしながら,自然の 状態において土壌が水で飽和されているのは極めて稀な現象であり,実際には土塊水の存在形態およびその運動は,ほ とんどの場合が不飽和の下におけるものである.従ってこれに対する検討がより一層重要なものとなってくる.しかし ながら,一−・般に不飽和の場合の土壌水の取扱いは,飽和とは比較にならないほど敏雄なものとなるので(1),解析には 多くの仮定が設けられたものとなっており,とりわけ境界条件を与えるための実測は充分に行なわれているとはいえな い.そこで本論叉では主として現場への応用⊥の見地から,土塊の不飽和透水係数について考究をすすめた. 不飽和透水係数の意義 一・般に不飽和状態における土壌水分の移動は,Dar・Cyの式が運動方程式として成立すれば,これと連続の式とか ら,拡散型の偏微分方程式 x 昔=D宗+Dy宗+Dz一芸望− (ここでβ:含水鼻,t:時間,D(の:拡散係数) で表わされる.このとき

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梅田 裕,横瀬 広司,山田 宣良 香川大学農学部学術報告 150 (K(の:不飽和透水係数,P:圧力ポテンシャル)

であるので,pF−・水分曲線が得られている土塊に対してほ,実測によって得られたK(のとPとを代入すれば数値解が

得られる.

この不飽和透水係数は,一般に土壌水分の関数であることが知られており,定性的にはBudagovskyの式

意=Sa=(芸濫)a

(ここでKo‥飽和透水係数,K:不飽和透水係数・S‥飽和皮・Wo:不動水分鼠W:全水分鼠P‥間ゲヰ屈)

が一・般的に受入れられているようである(2).

このように,不飽和における透水係数は飽和庶,すなわち土壌水分の多少によって変化する値であるので,基礎方程

式が非線形となり,この結果解析がより困難なものとなっている・われわれは不飽和状態にぶける水の移動を,飽和と

同様に簡便な形で表わすーつの試みとして,DaICy型の近似式の適用を試みた・すなわち・DaI■Cyの式における

dh/dlは土壌水が不飽和の場合には,土壌水分ポテンシャル≒毛管ポテンシャルの勾配によって置き換えることがで

き,従って土壌中の水の移動鼠は,不飽和透水係数の測定←毛管ポテンシャル勾配の測定によって得ることができるも

のと考えた.これらのうちで後者については,複数のテンシオメ一夕の設置などによって,現状でも比較的容易にその

値を得ることができるので,前者を現地において実測することができれば,閉場における土壌水の運動を適確に把握す

ることが可能となる.このことば特打水の経済的有効利用の見地からも重要な事柄であるものと考えられる・

不飽和透水係数の測定

土壌水分の不飽和状態は,土壌水が土粗子とメニスカスを界して存在する場合と,土壌水中に空気が封入されている

場合とに分類して考えることができる(8)が,後者の場合には不飽和透水係数と飽和皮との間に一対一の対応がみられ

ないものと考えられるので,ここでは前者のみを検討の対象としている.この場合の土壌水分の移動は・前進毛管力

(水柱の白頭を含む)と後退毛管カとの差によって生じるものと考えられるが,多くのpF測定装置(例えば吸引法)

で用いられているように,自由大気への脱水面をメニスカスゼロと考えれば,pFの測定に伴って不飽和状態での土壌

水分移動をとらえうるであろう.これを模式的に示すと図−1のようになる. pF=logH(cm・HzO) H20 図一1吸 引 法 の 模 式 図 不飽和透水係数の測定例はこれまでにもいくつかみられるが,ここでは岩田く4)が室内実験ではRicbaId塑測定装 置を,また野外ではライシメ一夕を利用して実測した例を参考にして,更に実用性を加味し,pF一水分曲線作成に伴っ て不飽和透水係数を測定しようと試みた.具体的な方法は以下のとおりである(図−1参照).①100cc定容採土器で 採取した試料を吸引法によるpF測定装置上部に設置し,飽和させる.⑧Hの大きさを変えて吸引圧をpFO・5∼2ハ0の 5段階に順次セノ卜し,それぞれについて時間一水分曲線を作る.⑧試料を遠心分離機に移し,pF2・5∼4・0の4段階 について時間一水分曲線を作る.④以上の結果得られた時間一水分曲線の積分盈として,各pFに対応した不飽和透水 係数を算定する.

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151 第30巻 第64号(1979) 土壌の不飽和透水係数について 実験は標準砂,花崗岩土,安山岩土,凝灰岩土の4揮の試料について行なった.各試料の物現的性盟は表−1に示す とおりである. 表∵−−−1供試試料の物理的性質 測定の結果は図−2∼5に示す. 10′ 100′ 図−2 標準砂の不飽和透水係数

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梅田 裕,横瀬 広司,山田 宣良 香川大学虚学部学術報薯 152

10′ 100′ 1,000′

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第30巻 第64号 く1979) 土壌の不飽和透水係数について 153 図−・5 凝灰岩土の不飽和透水係数 これらの図に示された不飽和透水係数の時間的変化のうち,図上で水平に卜近いPlateau状の部分がそのpF値に対 応した透水係数を示しているものと考えた.例えば標準砂の場合,t<−10′にみられる不飽和透水係数Kの急激な減少 は,定常状態に達する過渡期として過剰水が排出された結果であり,またt■>500′にみられるKの急激な減少は,測定 時のpFに対する水分値が平衡に達しつつある状態を示すもので,いずれも各pFに対応する不飽和透水係数として 採用するには適切ではないものと考えられる.これに対してPlateau状の部分は,水分の移動がはぼ定常状態で行な われていたことを示しており,そのはとんどが設置後10∼500′に得られていることから,これを不飽和透水係数として 採用するのが適当であろう.また図−2∼5で得られた結果について,pFと不飽和透水係数との関係についてまとめ てみると図−・6のようになる.図中に直線で併記してあるのはNA王【ANOβ≠〃J・のデータ(5)を簡略化したものである. これらの測定結果について−・般的にいえば,いずれの試料においても,pFl.5∼2.0の範囲内ではNAXANO♂fαJ. のデータと類似した偵を示しているが,pF O.5∼1.0においては,今回の測定によって得られた不飽和透水係数のはう が小さい値を示している.従って吸引法をもとにした不飽和透水係数の決定には若干の問題があることが示唆される. すなわち,原理的にみてこの測定法の問題卓は,pF一水分曲線の形状によって影響を受ける可能性を含んでいる点に ある.これを模式図q・7で示すと,等pF間隔内に存在する水分品が−・定以上の場合には前記のPlateau(図−・7の B)が明白に出現するが,これが少ない場合には,みかけ上定常状態に達しないまま平衡状態となり,特に図−7のC の部分のみから成る場合には,不飽和透水係数の値が実際よりもずっと小さく見積られる可能性が高い.また,もしB に達しない前に測定を中止したような場合には,これとは逆にKが大きく評価されることになるが,実際にはこのよう な場合は余り存在しないものと考えられる.次に遠心法の場合(図−・2∼5の白丸)には一、般に:P烏山eauが得られて おらず,上記CまたはAの状態であることが考えられるが,実用上吸引法と同程度の時間を費すことは困難であるの で,1∼2時間程度経過後の値を採用せざるをえないであろう.特にpFが3.0以上となると,はとんどの試料におい てⅩは10 ̄¢cm/sec以下となるので,水分移動鼻も極端に減少することがわかる.従ってpF3.0以上での実測は事実 上あまり意味がなく,また従来からpF値が3.0を超えると,土塊水の水理学的連続性が失なわれるといわれているこ とから判断しても,この方法の適用確聞はpF3.0までとなるであろう.

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梅田 裕,横瀬 広司,山田 意良 香川大学農学部学術報告 154 標準砂 土 土 岩岩 崗灰 花凝 e 10 透水係数舟 m 安山岩土 」= 20 110 pF 図−6 pFと不飽和透水係数と の関係 B

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第30巻 第64号(1979) 土壌の不飽和透水係数について 155 実際への応用 具体的な例として,香川大学農学部付属農場(花崗岩土)における測定結果に対してこの方法を適用してみる.試験 地において得られたデー・クのうち代表的な例(7月22日)を示すと表−2のとおりである. 表−2 闇 場 への 適 用 例 この表における計静には,いくつかの仮定を入れることによって,不飽和状態における水の移動に関する取扱いをよ り簡便なものとしている.例えば土壌水の運動は上下(Z軸で上をプラスとする)方向のみの1次元の動きとする.こ れは大きな仮定ではあるが,圃場でも降雨後の浸透や蒸発散など上下方向の水の動きが支配的であるので,それほど非 現実的な仮定ではない.また不飽和透水係数K(のおよび水分ポテンシャルPと水分愚βとの関係が線型であるものと しているが,これは急激な土壌水分変化がある場合(降雨直後など)や,均等係数が小さい特殊な土壌を除いて,近似 的に成立しうるものと考える.これによって不飽和の状態でも,飽和の場合のDaICy見りQ=KAdIl/dlと同様に,K をK(の とすることによって簡便に土壌水分の移動に関する解析が可能となった.表−・2の計界結果は,土壌水分変化 の実測によるET盈の界定結果(金屑で5.5mm/day)とも比較的よく一・致したので,この表の計算例のような過程を 経ることによって,土壌水分の移動の方向や塩を求めることができる.従って圃場における土塊水分の動向が,これに よってより適確に把握できるものと考える. 引 用 文 献 (1)五十崎他:理論応用かんがい排水,54,養督堂 (5)NAKANO,M.,IcHII,K.:Measurement and (1978). (2)山崎不二庚:土壌物理,119,琴男堂(1969)・ (3)八幡敏雄:土壌の物ヲ乳 86,東大出版(1975). (4)岩田進午:不飽和透水係数の測定について,日土 肥誌,42−11,441(1971).

prediction of hydra111ic cond11Ctivityin

unsat11rated porous medium,Trans.J.S.IR. DR.RE.Eng.,69,29(1977).

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