輸液装置使用による蔓性雑草の除草
長谷川疇・鈴木未央・寺尾勇・山崎秀樹・岡本秀俊*
ERADICATION OF CLIMBING PLANTS USrNG HERBICIDE SOLUTION
THROUGHIRRIGATOR
AtsushiHASEGAWA,MiouSuzuKl,IsamuTERAO,HidekiYAMAZAKIandHidetoshiOKAMOTO*
Eradicationofthreeinvasiveclimbingplants,PueYarialobata(Willd)ohwi,ATTPelqpsisbYeVipedunculata
VaI二heterqphylla Hara and HedeYa rhombea Bean byinfusion of herbicide solution through anirrlgatOrapparatus has been examinedPlobataand AbYeVipedunculata absoIbed considerable amount ofherbicide
SOlution,eXhibiting diveIgent reSultsPlobata completly died after 5 day ofinfusion‖ Conversely,A
brevIpedunculatadidnotshowanychange“SubsequentfoliarapplicationtIialswithfourheIbicidestestedonl−year−Old seedlings ofA.bYeVipedunculaia showed that Triclopyr at2500ppm was the most e飴ctive fbrits
eradication
WhenTIiclopyrat2500ppmwas appliedtoHYhombea causedaprecipitation,Which obstruCtedthepipe
preventingherbicideinfusionApplicationathigherconcentration(3“3xlO5ppm)didnotprecipitate;afte
15daystheplantscommencedwithaprogressivelywitherresultinglnplantdeath
Key Words:eradication of climbing plants,imgator,infusion of herbicide,PueYarialobala,An甲elqpsis
/,′ぐ‖J,‘・J〃′H〃J〃んJ.仇J‘ん−川′/∫〃〃JJ吋り 樹園地や道路際に繁茂する代表的な草根物であるクズ
PueYarialobala(Willd)ohwiとノブドゥA71Pelqp5i3
わrビV如血乃C〟JαぬVaIゐeJer叩ゐγJJαHaIaについて,除草剤 溶液の吸収特性と除草剤の影響について調査した. 材料および方法 1997年9月13日に,附属農場果樹園の樹木に巻き付き 生長中の茎葉の発達したクズ4株とノブドゥ1株を選び,8HQC(8−ヒドロキシキノリン・クエン酸塩)200ppm+
除草剤ラウンドアップ50倍希釈+竹酢5000ppm溶液を側
杖(蔓)から吸収させた.なお茎の平均直径はクズが1.4cm, ノブドゥは1.2cmであり,茎長は高木に巻き付いている ため測定できなかったが,いずれの個体も10m以上であ ると思われた.. 実験2.ノブドゥにおける除草剤溶液の吸収とその影響 について 前の実験ではクズは完全に枯死したが,ノブドゥは枯 死しなかった.しかし1株だけの結果であり信頼性が低 いため,材料数を多くして追試することとした. 緒 通常の除草方法では地下部が生存し,完全な除草が困 難である蔓性木本植物について,輸液装置使用による制 御の可能性について検討した.一・般畑地と違って耕起作 業が行われない果樹園などの樹園地では,大型の多年生 草種が有占しがちである.樹園地周辺に生えている葦性 雑草のヤプガラシ ,ヘクソカズラ,コヒルガオ,クズな どが樹園地内に侵入してくると,栽培樹木との養分競合 だけでなく,梅雨明け後の干ばつ期においては著しい水 分競合を引き起こす=.また樹冠を覆ったばあいには遮 光により樹体の生長を阻害する(1).これらの多年生雑草 は移行性のある除草剤を茎葉散布しても地下部の根茎や 塊茎までは枯れず,再生してしまうことが多い(2).そこ で輸液装置を使用した輸液法により地下部まで除草剤を 浸透させ,植物体全体を完全に枯死させることを試みた.. 実験1.クズとノブドゥにおける除草剤溶液の吸収とそ の影響について *イカリ消毒株式会社 〒760−0008 高松市中野町13−11*IkariInstituteofAppliedBioIogy,13−11Nakano−Cho,7bkamatsuCity,760−0008Japan.
かについて調べた. 材料および方法 1998年10月29日に,樹木に巻き付いた茎葉の発達した ノブドゥを20株選び,各個体の最大革径および蔓長を測 定した小処理個体の平均蔓径は22cm,蔓長は8.6mであっ た.次に地上10−15cmで葦をノコギリまたは努走鉄で切 断した後,切り口に十字に切り込みを入れ,そこにスポ
イトでザイトロン3倍希釈+サフラニン0.2%溶液を滴
下した.処理量は個体によって異なり1∼5mlであった. 実験5.キヅタの枯死に及ぼす輸液法および滴下法によ る除草剤処理の影響 キヅタ肋dビデαrゐ0∽あeαは全国の山野に自生する常緑 の木本蔓性植物である.枝にはヒゲ状の気根(不定気根) が多数付いていて,他の物によじ登り,樹木に対しては遮光の害を及ぼす可能性がある。各所から発根し,複雑
に茎が絡み合って広く繁茂するため,根絶が非常に困難 な柏物である(4).このような生長様式を示す植物の枯死 には輸液接が最も効果的であると判断される.このこと を確認するために,使用規定濃度のザイトロン溶液によ る輸液法と,高濃度溶液による滴下法とにおける影響に ついて−比較検討した. 材料および方法 1998年10月30日に,農場内のブロック壁面に繁茂しているキヅタ(12mX3mの面積)の地上0ち∼1mにある
親指程度の太さの枝に輸液装置を取り付け(5カ所),その中にザイトロン400倍希釈+サフラニン02%溶液を
注入した.また別に5カ所を選び,枝を切断または茎の 表皮を木部の探さまで削り,その傷口にザイトロン3倍希釈+サフラニン02%溶液を5∼10ml滴下した.輸液法
における吸収量については毎日朝夕2回測定した. なお実験期間中の最高気温および最低気温の平均値は それぞれ201℃および103℃であった. 実験6.キヅタの枯死に及ぼす輸液法による除草剤高濃 度溶液の影響 ザイトロンの使用規定濃度に従った400倍希釈溶液で 行った前実験ではあまり効果が見られなかったが,その 原因が沈殿物による輸液管の閉塞に伴う溶液の吸収阻害 であると考えられたことと,高濃度での滴下処理で効果 が認められたことから,ザイトロンの高濃度溶液を輸液 法で吸収させ,沈殿物が発生するまでに相当量を吸収さ せることによる影響についてを調べた. 材料および方法 1998年11月14日に,前実験で輸液装置を装着したキヅ タの枝の切り口を切り戻し,新たに装着した輸液装置に 材料および方法1997年9月28日に,前の実験で使用した株も含めノブ
ドゥを5株選び,地面に近い側枝に輸液装置を装着した. 高木に巻き付いているため供試材料の茎長は測定できな かったが,処理枝の平均直径は約11cmであった. 実験3.ノブドゥ実生苗に対する除草剤比較試験 上述の実験結果から,ノブドゥは広く使用されている 除草剤ラウンドアップでは効果が発現するまでに数カ月かかることが明らかになった.ラウンドアップは
Glyphosate系統であり植物体内での移行性は大きいが,効果が発現するのに時間がかかる遅効型の除草剤であ
る(2).このような遅効型除草剤では殺草効果が得られる 最少必要量の判断が困難であり,過剰使用しがちである. 実用面からは枯死効果がより早く現れる除草剤の使用が 望ましく,そのような速効性でしかも地下部まで枯らす ことの可能な除草剤を選択するために本実験を行った. 材料および方法1997年10月25日に播種したノブドゥの濁を,1998年7
月20日に12cmポリ鉢に鉢上げして戸外で栽培管理した. 9月11日(AMlO:00−11:30,曇り,33℃,風速0−15mノs)に,除草剤4種と対照の水道水を各棟当たり20ml菓面
散布した.希釈度は各薬剤の使用基準に従った.1処理区につき10株(1処理区200ml)としたが,散布処理時の
植物の平均茎長は316cmであり44%の株が結実してい
た.処理区1対照区(水道水)
2 ラウンドアップ(Glyphosate) 50倍液
3 ヘキストパスタ(Glufbsinate) 200倍液
4 マイゼット(Diquat−Paraquat)125倍液
5 ザイトロン(¶iclopyr) 400倍液 約5日おきに調査し,各個体における除草剤の効果を 4段階(正常,やや枯れている,枯れている,菓が完全 に枯死)で評価した.調査は変化がみられなくなった1998年10月16日まで行い,11月6日に再び各個体の茎長を調
査し,また仝個体を鉢から抜き取り,根部の状態につい て観察した. 実験4.ノブドゥ大株の枯死に及ぼす除草剤滴下処理の 影響 前実験で効果の高かったザイトロンを用い,樹木に巻 き付いたノブドゥに対する枯死効果について調べた.輸 液装置を装着するには手間がかかり実用上は問題である と考えられるため,より簡単な方法として地際近くより 革を切断し,切り口にザイトロン溶液をピペットにより 滴下して,地下部を完全に枯死させることができるか否ザイトロン3倍希釈+サフラニン0.2%溶液を注入した. 毎日−・定時刻に溶液の吸収量を測定し,減量分を補充し た. なお実験期間中の最高気温および最低気温の平均値は それぞれ14.0℃および3.2℃であった.
であった(図1).処理後5日後に調査した結果,クズ
は全て枯死していたが,ノブドゥにはなんらの変化も認 められなかった.ノブドゥは結実,着色期であったが, 葉および果実における変化は観察されなかった.以上の 結果から,蔓性植物の種類により使用した除草剤に対す る反応が異なることが明らかになった. 実験2.ノブドゥにおける除草剤溶液の吸収とその影響 について すべての株が5日後まで連続して吸収し,総量として1000・∼1700mlが吸収された(図2).これ以降吸収させ
ることの経済性及び環境への影響が懸念されたため処理 を中止し,その後半月間継続して観察したが,茎葉に変 化は認められなかった.しかし,翌年4月の観察結果で は,枯死株も複数観察されたことから,本除草剤がノブ ドゥに対し効果が発現するまでに日数がかかることが明 らかとなった.相物の反応は種類ばかりでなく天候状態 や植物の生長活性状態にも影響されることから,即断は 慎むべきであると考えられた. 実用上は,視覚的に確認できる効果が早急に現れる薬 剤の使用が望まれる. 実験3.ノブドゥ実生苗に対する除草剤比較試験 マイゼットおよびザイトロン処理区では,散布後2日 で効果が現れ,菓が黄変した.ラウンドアップおよびヘ キストバスタ処理区でも処理後5日で効果が現れ始めた.. しかし個体によっては全く変化がないものもあり,また ザイトロン以外の処理区では,外見上−・時的に枯死した 個体から半月後に新しい茎葉が出始めることがあった. ザイトロン処理区のみ,処理後10日で全ての個体が完全 結果および考察 実験1.クズとノブドゥにおける除草剤溶液の吸収とそ の影響について 実験開始翌日の9月14日は台風19号の接近により早朝 から小雨続きとなり,相物側から輸液装置への溶液の逆 流が認められたため,14日午前9時までの調査で打ち切 り,溶液処理を中止した.調査打ち切りまでの約22時間における吸収量はクズが400∼700ml,ノブドゥが780ml
00 00 00 00 00 54へ,21 ∈︶uO−1已OS焉JO盲コ0∈く 0.5 2 4 6 22 Housa食¢ー七陀丑山n¢ntFig”1Cumulative amount of the herbicide solution
absorbed for PueraYialobata(Wi11d.)ohwiand
A〝甲eJ叩5よ5みrev¢β血乃C〟JαJαVaI二ゐeger叩々γJJαHaIa 棚 卸 00 紺 ㈱ ㈱ 珊 ︵一︳︶已08巳浣qヱ○召冒一−々 0 0 0 0 ︵ざ︶む︸巴﹂曾苫○ヨ 1 3 5 6.5 22 27 44 6$ 一77 94 Hoursa允ertreatment
Fig。2 Cumulative amount of the herbicide solution absorbed fbr Amp(?Iop5i5 bTrllipedLLnCLLI(7T(7 Var
ゐgrer叩々γJJαHar’a
町11町18 9/251q/210/01q/181町231q/8011/6
Fig3 E脆ct of herbicides on seedling of A〝軍elppsis
あrevわe血乃C〟JαrαVarゐeJer甲々γ〃αHaI・a生存していた個体の中にもやや枯れかけているものもみ られた.ザイトロンの特性は遅効型であることから時間 の経過とともに効果が高まることも考えられるが,滴下 では切り口からの吸収量が限られるため,確実に枯死さ せるには本方法は適さず,輸液法による連続処理がより 確実な方法であると判断された.. 実験5.キヅタの枯死に及ぼす輸液法および滴下法によ る除草剤処理の影響 輸液法では溶液は処理後1∼2日はよく吸収されたが, その後は徐々に減少し吸収量は低く推移した(第4図). 半月の処理期間中における吸収量は775∼1181mlであり, その平均は1012.2mlであった. 柏物の変化は,輸液法では処理後1週間程度で,処理 した枝の周囲の菓でわずかに茶色の斑点が観察されたが, 溶液の濃度が低いためかほとんど除草剤の影響がみられ なかった.滴下法では処理部のごく周囲の菓のみで褐変 が認められた.しかし処理45日後になると,処理部より 先の枝の葉が茶色や黄㌧色に変色し,除草剤の効果が拡大 したことが確認された.
輸液法では処理後1∼2日で溶液が濁り,沈殿物が生
じた.後に沈殿物はヘドロ状となり,輸液管を塞いだた め吸収量が減少した.沈殿物の発生原因については不明 であるが,処理枝の切り口からの分泌物の影響が考えら れる.溶液の吸収がほぼ止まったため処理後半月で実験 を中止し,引き続き次ぎの実験を行った. 実験6.キヅタの枯死に及ぼす輸液法による除草剤高濃 度溶液の影響 本実験では沈殿物は発生せず,吸収は長期間にわたっ て継続した巾 日吸収量は個体によって0へ・30mlと異なっ た..初期の吸収量は多かったが,時間の経過とともに吸 に枯死した(第3図).無処理区の枯死率が30%になっ たのは虫害によるものである.根の状態の観察結果では, ザイトロン処理区の全個体の根は完全に枯死していたが, ラウンドアップ処理区では地上部が完全に枯死していて も根部が枯死していない個体もあった. 除草剤の性質から考えるとザイトロンは吸収移行型で 遅効性であり,多年生雑草の地下部まで枯すことが期待 される.ラウンドアップも同じ特性であり,特に植物体 内での移行性が大きく,地上部に処理すると多年生雑草 の根部まで枯す効果があるとされる(2).しかし,今回の 実験ではノブドゥに対する枯死効果はラウンドアップよ りもザイトロンが確実であった.ヘキストバスタは吸収 移行塑であるが,効果が発現するまでにやや時間がかか る中間型であり,地下部まで枯すには適さない(2).また マイゼットは速効型であり,ヘキストバスタと同じく, 多年生雑草の地上部は枯死しても地下部は生き残り,根 絶できず再生しやすい(2) 以上からノブドゥを完全に枯死させる効果が高い除草 剤はザイトロンであると判断された. 実験4.ノブドゥ大株の枯死に及ぼす除草剤滴下処理の 影響 12月11日に処理株を掘りあげて,地下部の茎および根 をナイフで削り内部の様子を観察した結果,ほとんど全 て−の個体の維管束部でサフラニン色素による染色が認め られた.また,維管束部の他に木部にも色素が移行して いた.染色液の移動距離は個体によって異なり,3・∼70cmであった.太い草では深くまで溶液が浸透してい
なかったことから滴下量が不十分であったことが考えら れる. 完全に枯死したものは4個体(20%)と少なかったが,㈱ ㈹ ㈹ ㈱ 卸
︵一旦︶G8巴戻偏篭嘗〇一口く ︵l∈︶uO眉巳OS焉J?召nO一−壱 0 柵 00 ㈱ 鯛 10/30 11/4 11/9 11/14Fig.4 Cumulative amountoftheherbicidesolutionatlow
concentration(2500ppm)absorbedforHedeYarhom−
あed Bean
11/1411/1911戊411ノ2912舟 1a91ガ141訂191:犯412店〉鋸 Fig“5 Cumulative amount of the heIbicide solution at
high concentration(33xlO5ppm)absorbed fbr
く,かつ光合成産物の下方移行が盛んな生育後期が最も 感受性が強く,適切な時期とされる(12).従って,他の 季節での追試を行い,処理適期および適正使用量を明確 にする必要があると思われる。 輸液装置せ木本類のノブドゥ及びキヅタに装着したば あい,平行して行ったメロンの実験で生じた液漏れは全 く起こらなかった.固い樹木では輸液装置の装着は容易 であるが,1装置を装着するのに約10分の時間を要した ことから,広大な面積の果樹園や山林の蔓性雑草の制御 を目的として実施するには手間がかかりすぎると考えら れる.しかし傾斜面などで定期的に除草をする手間と危 険性を考えれば,この方法なら一・度で地下部まで完全に 枯死させることが可■能なことから,有効な一・方法である と判断される.