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経済教育に関する研究会中間報告書 概要

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(1)

経済教育に関する研究会

中間報告書

平成17年6月

内閣府経済社会総合研究所編

本調査は、内閣府経済社会総合研究所が財団法人日本経済教育センターに委

託した「経済教育プロジェクト調査」である。

(2)

目 次

「経済教育に関する研究会」委員名簿 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ iv

第 1 章:総論 経済教育のめざすもの

第1節 現状認識 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

第2節 経済教育の定義とその効果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

第3節 経済学と日々の意思決定の関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

第4節 経済教育の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第5節 課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

第6節 留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

第 2 章 日本の経済教育の現状

第1節 現行学習指導要領の中での記述 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

第2節 学校での取扱いの現状(教育現場から) ・・・・・・・・・・・・・ 12

第 3 節 金融教育の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

第 4 節 消費者教育の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

第3章 米国における経済教育の現状

第 1 節 米国の経済教育の系譜 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

第 2 節 米国における経済教育の現状(現地調査をもとに)・・・ 32

第 4 章 日本の経済教育の課題

第1節 経済教育の体系作り ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40

第2節 経済教育で何を教えるべきか ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41

第3節 経済教育の体系をベースとした教材作り ・・・・・・・・・・・ 43

第4節 教員への支援体制の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

第5節 教授法や教材の開発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

第6節 社会人教育の取組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

(3)

第 5 章 モデル教材試案

第 1 節 教材作成に関する基本的な考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46

第 2 節 高校生向け教材例骨子:牛丼屋経営シミュレーション・・・ 50

第 3 節 中学生向け教材例骨子:牛丼屋経営シミュレーション・・・ 55

(付)参考資料

1. 学習指導要領(経済教育関連部分を科目ごとに抜粋)・・・・・(付) 1

2. 米国現地調査報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(付) 29

(4)

「経済教育に関する研究会」委員名簿

委員長 篠原総一 同志社大学経済学部教授

委 員 跡田直澄 慶應義塾大学商学部教授

阿部信太郎 城西国際大学経営情報学部専任講師(第

3 回から)

猪瀬武則 弘前大学教育学部教授

大須賀慎一 東京都港区立芝浦小学校教諭

河野正子 東京都立杉並高等学校教諭

三枝利多 東京都目黒区立第二中学校教諭

田熊邦光

NHK番組制作局教育番組センター チーフ・プロデューサー

田中秀明 日本経済団体連合会社会本部本部長

西村隆男 横浜国立大学教育人間科学部教授(第

2 回まで)

(五十音順)

オブザーバー

岡崎竜子 日本銀行情報サービス局企画役

川上尚貴 金融庁総務企画局政策課調整官

大杉昭英 文部科学省初等中等教育局視学官

大倉泰裕 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官

吉冨芳正 文部科学省初等中等教育局教育課程課学校教育官

杉田伸樹 内閣府経済社会総合研究所総務部長

川口康裕 内閣府大臣官房企画調整課長

袖川芳之 内閣府経済社会総合研究所政策企画調査官

(5)

第 1 章:総論 経済教育のめざすもの

第1節 現状認識

政府は、「官から民へ」「国から地方へ」へ経済社会システムを改革しようと

している。また、社会においても、年功序列、終身雇用制に支えられた会社主

義の見直しに象徴されるように、安定した社会的存在に帰属し、その庇護のも

とで個人が終身雇用され、暮らしの安心が保証されるというシステムが少しず

つ過去のものになりつつある。一方で人生の選択肢が広がり、自己決定の場が

拡大している。

こうした流れは、民主主義の理念がいっそう押し進められるものであるが、

個人としてみると、人生の多くの局面で、重要な決定に迫られ、その結果につ

いて責任をとることを迫られる場面が増えていくことを意味している。

また、自己決定を可能にする方向での制度改革が進展し、地方分権の推進で、

個人が政治参加しやすい地方政府の裁量が増えていくと、公共政策についても、

市民として自ら考え、参画する場が増加してくる。国政レベルにおいても、年

金などの社会保障改革、郵政民営化など、我々一人一人の生活に大きな影響が

予想され、国民的な議論が必要な政策課題が増えてきている。

このように、個人の人生、社会生活、公的活動のそれぞれの場で、見えない

部分も含めた様々なコストやリスクを踏まえた「合理的な意思決定」を行うこ

と、あるいは、

「何が合理的なのか考える」ことができる能力を身に付ける必要

性が高まってきている。

しかし、長い間、重要な政策決定が、

「国」あるいは「官」に事実上独占され、

また、社会的にも、意思決定の場面も限られてきたため、欧米に比べると、我

が国は、個人としての意思決定についての経験が乏しく、その訓練の場も十分

ではなかったと考えられる。

最近各方面で自立した消費者を育てる消費者教育や「お金」の教育としての

金融教育

1

の充実の必要が指摘され、具体的な実践も蓄積しつつある。このこと

はこうした必要性が主として個人の日常生活において表れたものと考えられ、

重要な取組みであり、また、その意義についての認知も進んでいる。

「保護から

自立支援へ」を標榜し、平成16年に消費者保護基本法から全面改正された消

費者基本法の中でも消費者の権利として「消費者に対し・・・教育の機会が提

供」されることが挙げられている。

1 消費者教育については、各方面で活発な活動が進められるとともに、平成元年以降学習指導要 領においても充実が図られ、また、財団法人「消費者教育支援センター」や各地の消費生活セン ターなどが活発に取り組んでいる。また金融教育については、日本銀行及び金融広報中央委員会 などが中心となり積極的な取組みが行われている。

(6)

ただ、我々が直面しているのは、単に、家計として、金融商品を含む商品・

サービスの購入といった状況に留まらない

2

。求められる「生きる力」は、消費

者としての知識にとどまらず、生活のあらゆる場面や社会的あるいは政策の選

択にあたって、応用可能な「合理的な意思決定」一般であると考えられ、こう

した考え方を明示的に教育の中でも取り上げることは有意義ではないかと思わ

れる。

こうした教育を通じ、人生における日常的な選択や、社会的、政策的な問題

について、個人が十分合理的な選択ができる能力を身に付けることは、これか

らの社会をたくましく生き抜いていく自立した個人を育てる上で、さらには、

我が国が、「官から民へ」「国から地方へ」へ経済社会システムを改革し、真に

成熟した政策決定のできる国家に移行するために、きわめて重要な課題となる

と考えられる。

第2節 経済教育の定義とその効果

米国においては、経済学の基本的概念をもとに、大学教育に限らず、小学校

から高等学校までの教育現場において、幅広く経済的な見方や考え方(経済リ

テラシー)を向上させようという様々な取組みがなされている

3

。こうした動き

は第二次大戦後以降長い伝統を有するものであり、民間団体と産学の広い連携

の上に進められている。また、英国を始め、欧州にも同様の取組みがみられる。

こうした取組みは、

「経済学の基本概念」を大学の経済学部にとどまらず、幅

広く市民の教養として教授することによって、自立した個人が行う合理的な意

思決定の技術を身につけることを支援するとともに、それをもとに、経済や経

済制度についての正確な理解を促し、政策を議論する枠組みを提供するもので

あり、

「経済教育」あるいは「経済学の社会教育」と呼ぶことができよう。

こうした「経済学の基本概念」を身につけることによって、日常生活の様々

なレベルで合理的な意思決定が可能となり、金融教育や消費者教育といったよ

り具体的な、あるいは日常生活に即した教育の基盤を提供することも期待され

る。

「経済教育」を通じて得られる考え方や知識は、一人一人が生きていくうえ

で身に付けるべき「生きる力」の重要な構成要素となると考えられるとともに、

民主主義を成熟化させ、真の意味での分権社会を実現するためにも貢献しよう。

第3節 経済学と日々の意思決定の関係

経済学の考え方は、資源は「希少」であって、「市場」が完全に成り立てば、

2 本章末の(参考)を参照。

(7)

個人の合理的な「選択」を通じ効率的に配分されるという考え方に立脚してい

る。我々の日々の日常的な意思決定も、何らかの目的を達成するために、金銭、

時間、エネルギーなど希少な資源を様々な制約条件の中で効率的に配分すると

いう側面がある。このため、経済学の諸概念や考え方は、我々が日々、あるい

は、人生の重要な節目で個人として合理的な意思決定を行うための技術を提供

してくれるとともに、経済社会の動きや制度を実感をもって理解する手がかり

を提供してくれるものと考えられる。

わが国のこれまでの経済に関連する教育の中では、

「経済制度」に関する知識

を教授することに力点が置かれる傾向が見られた。経済制度に対する理解も重

要な意義を有するが、それが、単に制度を知識として記憶することに終わって

いては、児童生徒の学習意欲をかき立てるものとならないばかりか、実生活に

おいて役立つものにはならない。身近な生活体験に関連づけながら、合理的意

思決定に関係する経済学の基本概念を理解させ、その上で、制度を意味づけて

いくことができれば、経済制度に対する認識も深まる。その延長上で我々の生

活に大きな影響をもたらす各般の政策に関し、国民各層を巻き込んだ建設的な

議論も可能になる。

こうした観点から、

「経済教育」では、経済学の基本的概念である「希少性」

「選択」

「機会費用」

「トレードオフ」

「リスク」といった概念内容を学び、経済

についての基本的な見方や考え方を育成することが重要になると思われる。

第4節 経済教育の目的

こうした理解にたてば、今後推進していくべき、

「経済教育」においては、以

下の3つを同時に目的とするものと考えられる。

(1)合理的な意思決定を行う個人の育成

第一に、個人のレベルで、不確実性と制約条件に直面しながら、合理的な意

思決定に直結する経済的な見方や考え方を育成する。その際、見方や考え方を

構成する経済学の概念について、必ずしもその名称自体を教える必要はなく、

概念の内容自体を生活実感にもとづいて理解させることをめざす。

(2)実際の経済社会に対する深い理解

上記の概念の理解を前提に、

「家計」

「企業」といった経済の基本的構成要素

やその活動を支援する「政府」の活動、さらにこうした構成要素の相互を結ぶ

「労働」や「金融」という活動について、具体的な意味を生活実感に基づいて

理解する。

(3)政策的課題の検討・解決

現代国家や地方政府などが直面する様々な政策課題について、経済学的な概

(8)

念によって構成された見方や考え方、制度に対する知識をもとに、自分で調べ、

考え、意見をまとめられる能力を身につける。

我が国においては、これまでは、中学社会科公民的分野や高等学校の「政治・

経済」などの教科において、経済制度に対する知識を教授することに力点が置

かれがちで、学校教育の現場では経済学的な概念が必ずしも十分教えられてき

たわけではなかったものと思われる。今後は、(1)についての指導の充実を図

り、その上で、(2)についてより深い理解を求める教育が可能となるように具

体的な取組みを進める必要があろう。それが進展すれば(3)についての教育を

も可能になるだろう。

第5節 課題

経済教育の隣接領域である消費者教育は、長い歴史を持ち、一定の定着をみ

ており、経済教育の推進に当たってもその経験が参考になる。

消費者教育においては、(1)学習指導要領に盛り込まれることにより、学校

教育においてきちんとした位置づけがなされた。その上で(2)教員に対する情

報提供の要として、財団法人消費者教育支援センターが設立され、さらに、

(3)

全国各地において、消費者政策と学校や社会をつなぐ場として、地方公共団体

におかれた消費生活センターが、地方における消費者教育推進の拠点となった。

今後「経済教育」の取組みを進めていくため、こうした消費者教育での経験

も参考に、下記のような課題への取組みを検討する必要がある。

(1)経済教育の体系作り

現在まで経済学者を中心になされていた経済教育は、教えるべき内容につい

て、広範な合意がなく、それぞれの創意工夫にもとづいてなされていたため、

場当たり的なものになりがちであったきらいがある。経済学の進展を踏まえつ

つ、何を小中高のどの段階でどの教科で教えるべきか、という点について学習

内容の体系を整備することが必要だと考えられる。

4 4経済教育においては、実際の生活がどのように経済と関わっているか意識させながら、論理的 な思考法と合理的な選択を身に付けさせることが重要となる。現行のカリキュラムを参照しつつ、 児童・生徒の発達段階に対応して、経済教育の体系を整備することを検討する必要がある。 (1) 家計(消費・貯蓄行動) お小遣いと買い物といった身近な例を示しながら、予算制約、引いては希少性下での合 理的選択について教え、希少性、選択、機会費用などの基本概念を理解させる。 (2) 企業 企業が不確実性に直面しつつ、一定の技術制約の下で、労働・資本といった生産要素を 投入し、費用(コスト)を最小に、利益を最大化すべく努力していることを教える。リ スクなどの基本概念を理解させる。

(9)

ただ、消費者教育の導入期とは異なり、学習指導要領上、経済教育に関して

は、すでに一定の記述はなされている

5

。経済教育にとっても課題は、学習指導

要領に経済教育を盛り込むことではなく、米国のNCEEによるスタンダードの策

定も参照し、わが国のおかれている経済社会的状況、教育現場の現状を踏まえ、

経済教育の中で具体的に何をどのように扱えば良いのかという点を明らかにす

ることになる。すなわち、学習指導要領の趣旨を授業に具体的に反映し、実践

的なものにしていくことにあると考えられる。

(2) 体系を基礎とした教材作り

現在の経済教育の現状を省みると、具体的な授業作りを行うための魅力的な

家計・企業の活動を補完する第三の経済主体としての政府の役割について、理解させる。 財政や金融政策の役割にも触れる。 (1) 競争 一定のルールに基づき、協調しながら競争するという現実の経済の姿を教え、「市場」 の役割について理解させる。政府は、そうした競争がうまくいくように活動する(競争条 件の整備、規制、情報の流通など)ことを教える。 (2) 労働 家計にとっての勤労者としての活動が、企業にとっては生産要素の一つとなり、その貢 献に応じて賃金が支払われることを教える。またそうしたメカニズムがうまく働かない場 合や獲得能力に障害がある場合に、政府が再分配に乗り出す必要があることを教える。 5 たとえば、現行の学習指導要領では、中学生に対する社会科〔公民的分野〕においては下記の ように記述されている。 「 (2) 国民生活と経済 ア 私たちの生活と経済 身近な消費生活を中心に経済活動の意義を理解させるとともに,価格の働きに着目させて市場 経済の基本的な考え方について理解させる。また,現代の生産の仕組みのあらましや金融の働き について理解させるとともに,社会における企業の役割と社会的責任について考えさせる。(略) イ 国民生活と福祉 国民生活と福祉の向上を図るために,国や地方公共団体が果たしている経済的な役割について 考えさせる。その際,社会資本の整備,公害の防止など環境の保全,社会保障の充実,消費者の 保護,租税の意義と役割及び国民の納税の義務について理解させるとともに,限られた財源の配 分という観点から財政について考えさせる。 (第2 各分野の目標及び内容〔公民的分野〕 2 内容)」 高等学校学習指導要領〔政治・経済〕においては下記のように記述されている。 「 (2)現代の経済 現代の日本経済及び世界経済の動向について関心を高め,日本経済の国際化をはじめとする 経済生活の変化,現代経済の機能について理解させるとともに,その特質を探究させ,経済につ いての基本的な見方や考え方を身に付けさせる。 ア 経済社会の変容と現代経済の仕組み 資本主義経済及び社会主義経済の変容,国民経済における家計,企業,政府の役割,市場経 済の機能と限界,物価の動き,経済成長と景気変動,財政の仕組みと働き及び租税の意義と役割, 資金の循環と金融機関の働きについて理解させ,現代経済の特質について探究させるとともに, 経済活動の在り方と福祉の向上との関連を考察させる。 (第2章普通教育に関する各教科 第3節 公民 第2款 各科目 第3 政治・経済 2 内 容)」

(10)

教材が不足していると思われ、

「経済教育」といっても、実際の授業を効果的に

行うことが難しいという現状がある。究極的には教科書の充実もめざしつつも、

当面は、体系を基礎にして、教師・生徒ともに使いやすい充実した教材を教師

向け指導書とともに幅広く提供する必要がある。

この点、米国の全米経済教育協議会(NCEE)は、多数の経済学者の参加

を得て、実際に学校教育の現場において使える無数の教材を教師用指導案とと

もに、学年配当にも多様性をもたせながらウェブサイトで公開しており、参考

になる。

我が国においても様々な教材を同じようにウェブサイトなどで多数、無料で

提供するとともに、実際の授業において使用した体験を反映させて教材を改良

するような仕組みを整備するなど、経済教育の情報交換センター(クリアリン

グハウス)としての機能を提供していくことが考えられる。

(3)サポート体制の検討

教材があっても実際の授業で活用され、効果をあげるためには、教員や学校

向け支援が重要となる。消費者教育における財団法人消費者教育支援センター

の活動、位置づけなどを参考にしつつ、教材の提供にとどまらず、授業の実践

事例を蓄積し提供するとともに、意欲のある教員に対する研修の機会の提供、

モデル授業を行う講師の派遣など支援体制を早急に検討する必要がある。

また、中央に財団法人消費者教育支援センターと同様の情報提供センター(リ

ソースセンター)

、あるいは、情報交換センター(クリアリングハウス)を整備

したとしてもそれでは十分ではなく、各地方に支援体制を整備する必要がある。

米国の経験も踏まえると、各地の大学の経済学部や経済団体などが地元の経済

教育のローカルセンターとしての機能を担うことが期待される。

(4)教授法

米国における経済教育の教授法では、座学や講義形式でなく、各種のアクテ

ィビティ(様々な活動による学習)やロール・プレイ(役割演技)、クイズと

いわれるようなゲーム的な活動を通じた概念の理解といった取組みが行われて

いる。こうした教授法は、消費者教育において我が国においてもすでに一定の

成果をあげている。

経済教育が個人としての合理的意思決定や生活実感に基づいた制度の理解を

目的に掲げるのであれば、教師の知識を一方的に講義し、それを児童・生徒が

理解し、覚えるという伝統的な教育方法では十分ではない。児童・生徒の「生

きる力」となるような知識とするためには、個々の児童・生徒の生活実感や具

体的な生活経験を引き出し、教師もそれを学びながら、授業に反映させるよう

な教授法を工夫することが効果的であると考えられる。

第6節 留意点

(11)

なお、上記課題を検討する場合、下記の点について留意する必要があろう。

(1) 現行の教育課程との親和性の確保

現行の学習指導要領においても、「選択」「希少性」といった言葉はないも

のの、

「市場経済の基本的な考え方」を学ばせることが求められており、学習

指導要領解説において、「選択」「希少性」の内容について相当の記述がなさ

れている。指導内容の確実な定着を図るため、指導方法等の工夫改善を図り

ながら指導に必要な時間を確保することが課題になっている現状を踏まえ、

当面は、経済教育の体系や教材案を策定する場合には、現行の教育課程との

親和性に最大限配慮し、どのように位置づけるかということを念頭に置きな

がら検討を進めることが現実的であろう。

(2)教育現場との協調

経済学者から見て、どんなに良質の教材や教師用指導書を作成しても、教

員あるいは、児童生徒にとって魅力的で、使いやすいものでないと、わが国

の教育に経済教育として根付くことは難しい。教材の整備について、現場と

の不断の対話が必要であり、現場で使用されることにより、教材が選ばれ、

あるいは、教育現場から提案され、発展していくような方向が望ましいもの

と考えられる。

(3)教育現場への普及

経済教育の普及については、意欲のある教員の実践の積み重ねに依存する。

そうした意欲を喚起し、支援する方策として、米国では、連邦準備制度が主

催し、具体的な金融政策のあり方について、高校生のチームが競い合い、連

邦制度理事会議長も審査員の一人として参加する行事(FED Challenge)を行

っている。その準備のため教員が金融当局と議論し、生徒とともに学ぶとい

う実践が行われている。経済に関する制度を単に理解するにとどまらず、そ

こに金融政策の意思決定者としての役割を実際に体験する(ロール・プレイ)

ことによって、政策のあり方を考える段階まで経済教育を発展させるものと

して、興味深い取組みであると考えられる。

経済教育の定着のためには、政府における息の長い取組みが必要であるが、

こうした思い切った企画に取り組むことも必要であろう。

(4)生涯教育としての取組み

経済教育を学校教育に限定するならば、その対象は、次代を担う青少年と

いうことになる。しかし、経済社会の変動に直面し、日々、合理的な意思決

定を迫られているのは、むしろ教育を終えた世代であることを考えると、学

校教育のみならず、生涯教育として経済教育に取り組んでいく視点も重要で

ある。

(12)

こうした点についても留意しつつ、研究会の議論を基に、

(イ)日本の経済教

育の現状(含む消費者、金融教育)

(ロ)米国の現状、

(ハ)今後経済教育を進

める際の課題、

(ニ)教材の試案などにつき、委員が分担して執筆し、本報告書

としてまとめることができた。

経済教育の重要性に比べれば、検討は始まったばかりであり、この報告書に

盛り込んだ検討結果は、暫定的なものである。委員の中でも意見が十分集約で

きていない点や、相互の矛盾がある点もあるが、検討の状況を素直に世の中に

示すという観点に立ち、座長の責任でとりまとめた。その意味で報告書のタイ

トルは「中間報告」とした。

今後、本報告書が経済教育の本格的検討とそれに基づいた実践を促すものと

なれば幸いである。

(参考;経済教育と消費者、金融教育の関係について) これまで取り組まれている概要からは以下のとおり理解できる。 ・ 消費者教育・・・消費者の意思決定、資源・資金管理、消費者の市民参加など、消費生活に ついての諸課題を消費者の個人的側面・社会的側面から追求することを目的とする。 ・ 金融教育・・・生活設計と金銭管理、経済や金融の仕組みの理解、消費者トラブルの未然防 止、職業と進路選択などを教授。いわば、「金融における消費者教育」としての側面が強い。 上記を前提とした上で、本報告書において議論した「経済教育」は以下のように定義できるの ではないか。 ・ 経済教育・・・経済学の基本概念を理解することを通じ、幅広い分野で人々の合理的意思決 定を支援。各種の経済制度についてもこうした概念の把握を前提に深く理解し、政策的なあ り方についても意見をもてることを目指す。 こうした理解を前提とすると、消費者教育の派生として、金融教育が現れているが、その最も 根本となる部分となる「合理的な意思決定」という面については、「経済教育」においても扱う ものと理解できる。したがって、ある程度教授する内容が高度化し、金融商品や消費者問題につ いての理解が進んできた場合にはそれぞれの取組みは分化するが、最初の開始部分ではそれぞれ 重複するものと考えられる。

(13)
(14)

第2章 日本の経済教育の現状

第1節 現行学習指導要領の中での記述

日本の経済教育は、小学校の社会科、中学校社会科公民的分野、高校公民科「現代社 会」「政治・経済」、家庭科の家庭経済の分野などで扱われており、英米に比べ経済教育 が施される機会は少なくない。問題は、学習指導要領に経済概念や経済的見方考え方が 記述されていても、教科書などの教材や現場での実践に必ずしも十分に反映していない という点であり、経済教育の目標や内容構成、指導法について検討する必要がある。 現行の学習指導要領から考えられる経済教育の主な内容は、下表の通りである。 学習指導要領から考えられる経済教育の主な内容 学校 教科 主な内容 生活科 家庭生活を支える家族の仕事、地域生活での買い物(ごっこによる売る活 動も含む)、公共施設の利用など 小学校 社会科 商店、消費生活、生産活動、公共施設の働き、水・電気などの公共事業、 廃棄物処理、農業、工業、通信などの産業学習(貿易や運輸も)、租税の 役割など 中学 校 社会科(公民的分野) 消費活動から経済活動の意義、価格の働きから市場経済の基本的な考え方 生産活動、金融の働き、社会における企業の役割と社会的責任、社会生活 における職業の意義と役割及び雇用と労働条件の改善、勤労の権利と義 務、労働組合の意義及び労働基準法の精神、政府の役割、社会資本の整備、 公害の防止など環境の保全、社会保障の充実、消費者の保護、租税の意義 と役割及び国民の納税の義務など 現代社会 現代の経済社会と経済活動の在り方(技術革新と産業構造の変化、企業の 働き、公的部門の役割と租税、金融機関の働き、雇用と労働問題、公害の 防止と環境保全)、国際社会の動向と日本の果たすべき役割(資本主義経 済と社会主義経済の変容、貿易の拡大と経済摩擦、南北問題)など 高等学校 政治・経済 経済社会の変容と現代経済の仕組み(経済の歴史、経済主体、市場経済の 機能と限界、物価、経済成長と景気変動、財政と租税、資金と金融)、国民 経済と国際経済(貿易、国際収支、為替相場、国際協調や国際経済機関) 現代社会の諸課題(大きな政府と小さな政府、少子高齢社会と社会保障、 労使関係と労働市場、産業構造の変化と中小企業、農業と食料問題、公害 防止と環境保全、国際経済格差の是正と国際協力、経済摩擦)など (小学校学習指導要領社会科、中学校学習指導要領社会科、高等学校学習指導要領公民科より構成 )

(15)

第5学年では、我が国の産業の役割を、それぞれ学ぶことがねらいである。したがって、 経済学の内容というより、社会機能の一環として産業などが扱われており、さらに、そ の記述は経済地理的な分布や関連などが中心であり、経済の原理的展開は見られない。 中学校社会科の公民的分野ではミクロ経済とマクロ経済の内容が設定されている。そ の構成は、市場経済の基本を学ばせることとなっており、市場の及ばない領域に関して 政府の働きがあるとして、前半が市場の働きとしての「効率」、後半は、その補完とし ての政府の働きとしての「公正」が原理となっている。具体的な経済概念の用語の記述 はないが、「限られた資源の配分という観点から財政について考えさせる」という文言 や「経済活動が様々な条件の中での選択を通じて行われるという点に注目させて」とい う指示が学習指導要領の内容の取扱いに明記されており、これはとりもなおさず、希少 性や選択の考え方が、記述されたものと考えてよい。 なお平成元年以降、例えば中学校社会科教科書(A 社)に2頁に亘って希少性概念が 明記されたが、数年の改訂の後、記述は 1/4 に縮小。現場ではほとんど扱われなかった。 学習指導要領に部分的な経済概念が記述されても、教科書などの教材とそれを使う教師 文化に影響が与えられないと、導入は困難となる。 高等学校では、公民科の「政治・経済」と「現代社会」の二科目で経済教育がなされ ている。科目の趣旨や理念は異なるものの、扱われている教科内容には共通する部分が ある。例えば、学習指導要領解説には、その構成原理として、効率と公正という二つの 考え方が示されており、そこに経済概念や経済的価値をもとに経済を考えるという基本 がある。特に、「政治・経済」においては、「現代社会の諸課題」に関して、こうした効 率と公正というような原理的な見方から、問題を分析する設定があり、ここに「経済的 思考」「経済的見方考え方」を設定している点を指摘できる。 当該の教科、科目において、該当する学年で、いずれも週当たりにすると2∼3時間 程度の授業が行われるが、個別の内容に充てる授業時数は定められていない。また、経 済についての原理的見方考え方は、小学校の時点ではみられない、中学社会科公民的分 野では、萌芽的に記述されているが、教科書記述などにおいては限定的なものとなって いる、という点が課題である。 なお、中学校の教科書には、一部明確に、希少性概念の記述がされている。現場での 授業実践がどのように果たされているのか、確認する必要があるものの、際だった進展 であると見てよいだろう。

第2節 学校での取扱いの現状(教育現場から)

1.小学校における経済教育について 小学校の教育課程の中で、「経済」に関わる教材は扱われるが、経済学の基本的概念 は、示されていない。また、「経済」についての学習を小学校教育の中でどのように位

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置付けるのかも、小学校の教育現場で常に意識されているわけではない。そこでまず、 小学校教育の中で「経済教育」をどのように扱っていけばよいのか、検討してみたい。 「経済」を学ぶということで考えられるのは「社会科」という教科の中で扱ういくつ かの教材に関連させることであり、例えば、次の3つの学習内容にかかわる事例が考え られる。 (1) 第 3・4 学年「地域の生産や販売」に関する学習 中学年の社会科学習の中で「地域の生産や販売に関する仕事」を扱う教材がある。学 習指導要領には次のように明記されている。 地域の人々の生産や販売について、・・・それらの仕事に携わっている人々の工夫を考える ようにする。 (一部抜粋) これを受けて、各学校では、地域の生産や販売の仕事に関する単元を設定し、児童が自 分の問題をもち、自ら追究して解決を図る学習が行われる。地域の生産や販売に関する ことを教材として扱うのであるが、どちらかと言えば金銭的な「利益」に関する点にふ れることは少ない。 例えば「地域にある小売店は、お客さんに喜んでもらえるためにどのような工夫をし ているのだろう」という問題を提示する。この問題を解決するために、児童は小売店を 見学したり、小売店を利用している人にインタビューしたりして問題解決を図る。する と、「お客さんの多様なニーズに応えるために品揃えをよくしておく」や「お客さんに 安心して買ってもらうために、品質管理を徹底している」といった考えを導き出す。「お 店がもうかるように、タイムサービスで商品が残らないようにする」という考えにはな かなか踏み込めない。ここでは、「タイムサービスはお客さんが安く買えるように工夫 されている」ということに重点を置いて考えさせている。同じことを言っているが、小 学校では利益を意識した考えを導くことは一般的ではないといえよう。 では、この学習の中で「経済」についてどのようにふれさせればよいのか、次のよう な構成が考えられる。 生産や販売活動を行うためには、それにともない原材料や商品が必要であり、生産した 製品は発注を受け、必要とされる商品も流通される。 ↓ 必要な原材料や商品は他の地域から送られたり送ったりする。発注を受けた製品や商品 を広く流通させるためには、それに伴う経済の流通構造があることを知る。 このように発展的に扱うことで生産活動や消費活動が起こる背景には経済の流通構 造があることを学ぶことができると考える。しかし、経済の流通構造を主に学ぶのでは なく、このような経済活動が起こるということにとどめておく必要がある。 (2) 第5学年「我が国の産業」に関する学習 5年生の社会科の「我が国の産業」に関しては、農業・水産業・工業・通信などの産

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うことを考えさせるのである。例えば、「米の生産地ではどのようにして生産を高めて いるのか」という問題に対する追究活動を行い、「生産地の農家では少しでも高い値段 で米が売れるように生産や販売、流通のそれぞれの面で工夫している」という考えを導 き出すのではなく、「国民一人ひとりに安全で、おいしい主食の米を安定して供給する ために努力をしている」という考えを導き出していく。産業を学習する上で、必ず発生 する「経済」に関しては、そのいくつかの側面をばらばらに扱っているというのが現状 である。では、5年生の産業学習の中で「経済」をどのように関連させていけばよいの かは、次のようなことが考えられる。 自動車をつくる際に必要となる鋼板は、国内で生産されているが、その原料の鉄鉱石のほ とんどは外国から船で運ばれて輸入されている。また、国内で製品となった自動車の一部 は、世界の様々な国や地域に輸出されている。 ↓ 鉄鉱石を輸入するためには、鉄鉱石にかかる費用だけでなくその運搬に関しても経費が発 生する。また、輸出に関しても同様な状況が発生する。 このように発展的に扱うことで、第3・4学年の社会科と同じように、産業活動が行 われる背景には必ず、経済の流通構造が起こることを知るという学習ができるであろう。 それは、利潤を問わない国民生活の支えという考えにつながっていると考えられる。 (3) 第6学年「生活を支える政治」 国民生活の安定と向上を図るために政治が大切な働きをしていることを学習する。政 治によって決められたことが行政を中心に実行されていくわけであるが、その背景には 経済活動が発生する。特に税金が使われているということを学ぶ際に「経済」というも のを大きく意識することができる。例えば「自分の町に駐輪場ができる」ためにはお金 がかかり、そのお金は税金で賄われていることを知るというのは大切なことである。実 際に、小学校の教育現場の中にも「租税教室」を税務署と連携して行われている。税の 仕組みを知ることで、自分たちの生活を支えている税金について関心を高め、正しい納 税の基礎とつながっていくと考えられる。 以上、小学校の教育の中で「経済」をどのように扱っていくのか、社会科の学習の中 で考えられる3点について述べてきた。3点どれにも共通することを考えると、小学校 の教育の中では「経済」を詳しく学ぶのではなく、まず「経済」を知るということであ ろう。特に利潤が発生することに関しては余りふれていないことが現状である。小学校 の段階では正しい目を育てるということが大切であり、公民的資質を養うことが大切で ある。そのためには、まず「知る」ということが大切であり、小学校の段階では正しい 経済の仕組みを教える必要があるのではないだろうか。今後の課題として、この「経済 を知る」という活動を教育課程のどこに位置付けて学習を構成していくかである。基 礎・基本の徹底を図りながら、児童に経済についての見方や考え方の基盤をはぐくむた めに、今後も研究を深めていく必要があろ。

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2.中学校における経済教育について (1) 中学校における経済に関する教育内容等 現在、中学校において、学習指導要領の経済に関する教育内容は以下の通りである。 〔公民的分野〕大項目(2)「国民生活と経済」、中項目ア「私たちの生活と経済」で は、「身近な消費生活を中心に経済活動の意義を理解させるとともに、価格の働きに着 目させて市場経済の基本的な考え方について理解させる。また、現代の生産の仕組みの あらましや金融の働きについて理解させるとともに、社会における企業の役割と社会的 責任について考えさせる。その際、社会生活における職業の意義と役割及び雇用と労働 条件の改善について、勤労の権利と義務、労働組合の意義及び労働基準法の精神と関連 付けて考えさせる。」となっている。 また、〔公民的分野〕大項目(2)「国民生活と経済」、中項目イ「国民生活と福 祉」では、「国民生活と福祉の向上を図るために、国や地方公共団体が果たしている経 済的な役割について考えさせる。その際、社会資本の整備、公害の防止など環境の保全、 社会保障の充実、消費者の保護、租税の意義と役割及び国民の納税の義務について理解 させるとともに、限られた財源の配分という観点から財政について考えさせる。」とな っている。 すなわち、中学校における経済に関する学習内容は大きく分けて家計の経済活動・企 業の経済活動(上記の中項目ア)を中心とする市場経済と、市場の働きに委ねられない 問題に対する政府の経済活動(上記中項目イ)の2つの柱からなっているわけである。 (2) 中学校における経済に関する教育の現状 (イ) 現状 それでは、このような市場経済と政府の経済活動という2つの柱からなる経済に関す る教育が、どのように行われているかを考えた場合、一部には実感を伴って考えたり理 解を深めたりするための工夫が行われつつあるが、一般的には講義形式による制度や仕 組みの知識の習得を中心とした授業展開が多いと考えられる。それは、主に以下のよう な要因に起因していると考えられる。 (ロ) 要因 その第一に考えられる要因は、年間の授業時数であろう。現在、公民的分野の年間の 配当時数は85時間である。その授業時数の中で、経済に関する内容に配当できる時数 は一般に25時間前後(各学校の教育課程による実質時数及び、各教師による内容の扱 い方や各項目の軽重のつけ方によって違いはある)ではないかと考えられる。この中で 活動型の授業を組み立てていくためには、授業時数をより多く必要とし、活動型の授業 をあまり多く行うと1年間で内容を終えられないリスクが考えられるのである。その結 果、効率性の面でも、講義形式による一斉授業が多く取り入れられていると考えられる。 第二に考えられる要因は学校現場に、経済に関する教育の情報や研究の機会などが不

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足していることである。多くの教師がおそらく経済に関する授業を、もっと生きる力に なるような授業に変えていく必要性を感じていると考えるが、実際にそのようなノウハ ウもしくは授業展開のヒントになるような研究の機会などが十分ないことである。 (3) 課題 (イ) 課題 もちろん、講義形式による一斉授業による知識の習得も必要である。しかし、そうし た授業展開に終始するケースが多いと考えられる現状では、生徒には「経済(公民的分 野)は難しい大人の世界の話」という思いがあると考えられる。これでは、主体的に学 習しようとする機運は弱まり、当然、生きる力として学ぶという現在の学習指導要領の 趣旨も生かされにくくならざるを得ない。つまり、学習指導要領のねらいが、十分に達 成されないという問題が浮かび上がってくる。このことが経済に関する教育の大きな課 題であると考える。 (ロ) 改善に向けての方策 しかし、生徒の多くに「経済(公民的分野)は難しい大人の世界の話」という思いが あることに反して、実は、経済(公民的分野)は中学校1・2年生での地理的分野・歴 史的分野の学習を踏まえて、まさに今生きている現実の社会の現状や課題を学んでいく 分野である。中学生といえども、すでに消費者として経済にかかわっているわけであり、 家計の一員として自分自身が家計の収入の一部をおこづかい等で使っているという現 実や、進路のためなどにかかる費用を体験するなど、自分の生活が経済とかかわってい ることに気付くことはできるはずである。 つまり、こうした生徒の生活体験を考慮すれば、それらを生かし授業展開の工夫しだ いでは、生徒の興味・関心を高め、身近な事例を通して、経済に関する概念の基本的な 考え方を身に付け、経済に関する現実的な理解を促したり、見方や考え方を広げたり、 課題意識を高めることは可能であろう。これらは、まさに経済に関する内容を、生きる 力として学ぶことにつながるものと考える。 例えば、家計では「家計のシミュレーションゲームと模擬商談」を取り入れた実践、 企業の経済活動では「企業の企画書と求人広告の作成」を取り入れた実践、消費者の保 護では「売買契約書の作成と場面設定」を取り入れた実践などを、複数の専門的な外部 講師を授業に招き、ワークショップ形式での意見交換を実施しながら実践するといった 具体的な工夫が行われている。これらの授業実践によって、選択と希少性、価格の働き やコスト、企業の社会的責任、金融や税金の働き、自己の責任や政府の役割といった基 本的な内容を、現実的、実感的に学ぶことができ、その有効性も認めることができる。 実は、こうした実践は一部の個人や研究グループによって行われているが、なかなか 広まらないという実態がある。それは前述した(2)−(ロ)のような要因が大きく作 用していると考えられる。 そこで、多くの教師が、生きる力として学べる経済に関する教育を実践するために、

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生徒を主体とした活動型の授業実践を広めていくため、次の2点を改善すべきであると 考える。 第一に、公民的分野については、学習内容を指導するために必要な授業数を確保する ことである。公民的分野に関しては、現行の学習指導要領の学習内容が望ましいと考え ている。実際、その内容を生徒が確実に学習することが出来るよう、学校として授業時 数を確保していく工夫が大切になる。 第二は、経済に関する教育の情報や研究の機会などを保障することである。前述した 通り、経済に関する授業を、もっと生きる力になるような授業に変えていく必要性を感 じている教師は多いと考えるので、実際にそのようなノウハウもしくは授業展開のヒン トになるような研究の機会などが保障されれば、生きる力につながるような、生徒を主 体とした活動型の授業実践は広がっていくはずである。 情報や研究の機会については、行政や民間との協力、援助を推進していくことが効果 的であると考えられるので、今後、関係機関との連携を図り、効果的な方策を考えてい くことが望まれる。 3.高等学校における経済教育について (1) 高等学校における経済教育の位置づけ 高校における経済教育は、主に公民科の「現代社会」と「政治・経済」の科目で行わ れる。現行学習指導要領では、公民科は「現代社会(標準単位数2単位)」、又は「倫理 (標準単位数2単位)」及び「政治・経済(標準単位数2単位)」がすべての生徒に履修 させる科目とされている。旧教育課程では、「現代社会」の標準単位数が4単位であっ たが、新教育課程では2単位になっている。したがって、「現代社会」を必履修科目と している学校では、授業時数が半減したことになる。 (2) 本年度の授業実践について 例えば、S 高校では、公民科は1年生に「倫理(2単位)」を、3年生に「政治・経 済(2単位)」を必履修科目としている。さらに3年生に選択科目として「政治・経済 (2単位)」を置いている。ここでは、必履修科目の「政治・経済(2単位)」の内容に ついて述べていきたい。 今年度の「政治・経済(2単位)」では、経済に関する内容に充てる授業時数は各ク ラス平均して14時間であった。政治分野の時間数の方が多いが、それは、学習指導要 領に記されている内容も政治分野の方が多いし、教科書の記述も政治分野の方が多くな っているためである。こうした中で経済分野で取り上げた項目は、 ・ 経済とはどういうものであるか ・ 資本主義経済の特徴

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・ 社会主義経済の特徴 ・ 修正資本主義経済(混合経済)について ・ 市場経済のしくみ ・ 需要と供給 ・ 株式会社 ・ 経済成長と景気変動 ・ 金融 ・ 財政と税 ・ 社会福祉(介護保険、年金) ・ 貿易 ・ 外国為替、円高、円安 についてであった。 金融の分野には力を入れ、副教材として金融広報中央委員会発行のパンフレット「き みはリッチ?」を用いて利息や自己破産について詳しく取り上げた。又、通貨や金融政 策については日本銀行からビデオを借りて、より理解を深められるよう心がけ、金融の 自由化やペイオフについても詳しく取り上げた。金融の分野では、簡単な利息の計算や 為替レートの計算も取り入れたが、計算に困難を感じる生徒もいる。生活の基本はお金 の計算にあり、利息は「%」ではなく実際のお金に計算してみて重みがでる。近年、多 重債務者や自己破産が増えている現状を考え、金銭教育を重視している。 (3) 問題点と課題 (イ) 生徒の興味や関心をどう高めていくかということについて 生徒は音楽、映画、芸能、ファッション、スポーツ、携帯電話、車、食べ物、その他 様々なグッズ等の流行のものやお金をもうけるということについて、当然のことながら 高い関心をもっている。そこで、教材にもこのような分野のものをどんどん取り入れる ことが望まれる。また、教科書の記述は簡潔すぎるのではないだろうか。もっと読み物 的なものにすれば生徒の自学自習用にも役立つものとなるし、ひいては生徒の興味や関 心を高めていくのではないだろうか。 (ロ) 知識のみを教えるのではなく、経済についての見方や考え方を身に付けさせ ねばならないということについて 経済についての見方や考え方を形成し定着を図るためには公民科における10数時 間の経済教育とともにその他の教科・科目との連携が必要であろう。 ところで、経済的な見方や考え方というのは「効率」ということなのであろうか。そ れとも「公正」というような観点をいうのであろうか。「バランス」というようなこと なのだろうか。学習指導においては効率性と公平性や公正さとを調整してより良い選択 を考えることが重視されると思われるが、現実的には、知識とその背景にある考え方、

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つまり、「なぜ、そうなのか」といったことを考えさせていくことが精一杯のように思 われるので、今後改善を図る必要がある。 (ハ)教師の指導力向上のために 教師は生徒の理解力に応じて学習指導要領及び教科書を中心に授業を行うものであ り、クラス担任になれば授業以上に日々のクラス運営が重大になってくる。そういった 日常の中で、実社会の躍動感あふれる経済を教えることに取り組んでいるが、困難な面 もある。そこで、教師のための分かりやすい経済教育の指導書といったようなものの開 発と、その活用による指導力向上の取組みが求められる。 (ニ)今後の取組みについて 経済教育は受験のために取り組むような性質のものではない。それだけになにか目新 しいものや面白そうな話などを期待されたりもするが、それに応えることはなかなか容 易ではない。ニュースやビデオ教材を活用したり、体験学習や作業学習なども取り入れ るべきである。一方、現実的に考えれば、担当授業の中で、経済分野に堪能な社会人講 師を活用する方途を講ずることが考えられる。また、大学における教員の養成と現職教 員の研修を充実させることも課題であろう。

第3節 金融教育の現状

1.金融教育とは何か 金融教育とは、お金にかかわる教育のことであり、働いてお金を得る、お金を使う、 お金を貯める(運用する)、お金を借りることなどに関する教育である。その具体的な 内容として、(1)金銭管理・生活設計の理解に関わる教育、(2)金融・経済のしくみの 理解に関わる教育、(3)消費者保護・消費者トラブルの未然防止に資する教育、(4)若 年者を対象とする進路選択や職業に関する教育を含んでいる。 2.金融教育の目的 金融教育の目的は、わが国のすべての人々が、お金にかかわる知識を身につけ、合理 的で心豊かな生活を送ることにある。 3.金融教育の対象者 金融教育の対象は、わが国のすべての人々であり、学校における金融教育の取組みを 支援することとともに、社会人に対し、広く金融や経済に関する情報を提供し、生活設 計に基づく健全で合理的な経済生活が営まれるよう支援することが重要である。

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4.金融教育の沿革 わが国における金融教育は、第二次世界大戦後の経済復興の過程で、貯蓄の必要性と、 それを基にした生活設計に重点を置いて行われた取組みに遡る。昭和 27 年に、金融団 体、産業団体、および学識経験者を構成メンバーとする貯蓄増強中央委員会が発足し、 貯蓄を奨励し、生活設計の必要性を訴えるとともに、こども銀行、こども郵便局の活動 を支援した。これらの活動への支援は、金銭教育研究校制度(昭和 48 年)により制度 化され、以後、毎年多くの研究校の委嘱および研究校の研究発表・意見交換の場として の金銭教育協議会の開催が行われてきた。貯蓄増強中央委員会は、昭和 63 年に貯蓄広 報中央委員会と名称を変え、更に平成 12 年 6 月に公表された金融審議会答申「21 世紀 を支える新しい金融の枠組みについて」の中で、金融分野における消費者教育の必要性 が言及されたのを受けて、金融広報中央委員会と名称を変更し、「金融に関する消費者 教育」をネットワークの充実を図りつつ推進してきた。 この間、旧大蔵省においても、昭和32年4月、大蔵省貯蓄推進本部を設置し、貯蓄 増強中央委員会等と連携して、全国貯蓄推進会議を開催する等、国民に対する貯蓄奨励 を推進してきた。又、金融庁発足後は、上記答申を受け、金融広報中央委員会や都道府 県金融広報委員会との連携を基本とし、財務局、財務事務所も活用しながら、各種施策 に取り組んできたところである。 更に近年は、金融の自由化、規制緩和による金融商品、販売チャネルの多様化に伴っ て、様々な金融商品を巡るトラブル、多重債務者などの問題も見られるようになり、金 融関係団体や他の機関でも、金融知識の普及活動に今まで以上に力を入れ始めている。 5.金融教育の現状 (1) 金融広報中央委員会の取組み まず、金融広報中央委員会では、平成 14 年 3 月に公表した『金融に関する消費者教 育の推進に当たっての指針(2002)』で提唱した「金融理解度向上のための年齢層 別カリキュラム(素案)」に基づき、学校教育支援、生涯学習のそれぞれの分野で都道 府県金融広報委員会とともに次のような活動を行っている。 (イ)学校教育支援: 教材・教師用指導書・実践事例集の作成・配付、実践事 例報告やワークショップを含むセミナーやシンポジウムの開 催、金銭教育研究校・金融教育研究校・金融教育研究グループ の委嘱、小論文コンクール等の実施 (ロ)生涯学習: 講座・講習会、講演会・シンポジウムの開催、通信講座の開 講、金融学習グループの委嘱 更に平成 15 年度、金融広報中央委員会は、金融教育研究校の委嘱を開始するととも に、平成 16 年度には、「金融に関する消費者教育」を新たに、お金にかかわる教育全般 と捉えなおし、「金融教育」という概念を使用することとした。

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(2) 金融庁の取組み 金融庁では、平成14年11月に、金融サービス利用者向けのコーナーをホームペー ジに新設して以降、消費者への各種情報提供を実施している。また、学校における金融 経済教育の一層の推進のため、学校教育の中で、「総合的な学習の時間」や各教科等の 時間を通じて、金融教育の一層の推進充実が図られること等について、文部科学省へ協 力を要請している。 その他、児童・生徒向けパンフレットや副教材の作成及び配布、シンポジウムの開催、 「初等中等教育段階における金融経済教育に関するアンケート」調査等の取組みを行っ ている。 更に、平成16年12月に公表した「金融改革プログラム−金融サービス立国への挑 戦−」の中で、具体的な施策の一つとして、「利用者のライフサイクルに応じ、身近な 実例に即した金融経済教育の拡充」を盛り込み、平成17年3月には、そのスケジュー ル(工程表)を示している。また、その一貫として、平成17年3月、金融担当大臣の 私的な懇談会として「金融経済教育懇談会」を発足させている。 (3) 他の機関・団体における取組み 全国銀行協会、日本証券業協会、生命保険協会などの金融業界団体も、長年金融教育 に取り組んでいる。これらの団体の行う金融教育は、主として金融市場の仕組みや金融 機関の役割、金融商品・サービスの内容などの理解を助けようとする活動である。 この間、国民生活センターや全国各地の消費生活センターでは、金融に関するトラブ ル情報を提供するとともに、トラブルの発生を未然に防止するための消費者教育にも傾 注している。振り込め詐欺、インターネット取引や携帯電話の使用等に関わる架空請求、 根拠法のない共済、外為証拠金取引をはじめとする金融に関する消費者トラブルの多発 ととともに、これらの機関の消費者教育活動に占めるお金にかかわる教育(金融教育) のウエイトも大きくなっている。学校における消費者教育の専門機関である(財)消費 者教育支援センターにおける同様の取組みも重要なものである。 (4) 関係機関・団体の連携 わが国では、金融教育を、効率的かつ体系的に推進するため、金融広報中央委員会を 中心に、この分野に取り組む政府機関及び民間の機関・団体が連携を図っている。具体 的には、金融広報中央委員会が開催する「金融に関する消費者教育フォーラム」や「金 融に関する消費者教育の進め方に関する連絡協議会」等において、政府機関および金融 経済団体、消費者団体、学識経験者が意見交流を図っているほか、金融広報中央委員会 が、金融庁や日本銀行などの後援をうけ、「全国キャラバン金融講座」を開催するなど している。 その他にも金融庁においては、金融知識の普及活動を側面から支援するため、関係各

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機関・団体の行うイベント等への後援名義の付与を積極的に行っている。 また、金融に関する消費者トラブルの未然防止の観点から、消費者トラブルの実情 を国民生活センター、全国消費生活相談員協会、消費生活コンサルタント・アドバイザ ー協会、日本弁護士連合会、(社)日本消費者協会よりなる「消費者関連機関・団体と の連絡協議会」を通じて聴取している。

第4節 消費者教育の現状

1.消費者教育とは 経済教育の隣接領域である消費者教育は、我が国においては一定の定着をした。行 政・消費者(団体)・企業・教育関係者の協力の下で一定の成果をあげており、経済教 育の推進に当たってもその経験が参考になる。そこで、ここでは日本の消費者教育の現 状について簡単にまとめる。 一般的に消費者教育というと、悪質商法、クーリングオフ、クレジットなどの事項 を想起するようである。しかしこれらの事項は、消費者教育の一部でしかなく、実際の 消費者教育はより幅広いものとなっている。消費者教育の定義は多々あるが、日本消費 者教育学会はその定義を「本質的には、消費者教育は、消費者が各自の生活の価値観、 理念(生き方)を個人的にも社会的にも責任を負える形で選び、枠組みし、経済社会の 仕組みや商品・サービスについての知識・情報を理解し、批判的思考を働かせながら合 目的的に意思決定し、個人的、社会的に責任を持てるライフスタイルを形成し、個人と して、また社会の構成員として自己実現していく能力を開発するものである」(日本消 費者教育学会編『消費者教育第 12 冊』光生館、1992 年)としている。 この定義が示す通り、消費者教育には、個人的側面と社会的側面がある。消費はき わめて個人的な経済活動であるが、消費は同時に社会とも密接につながっているからで ある。 消費者教育の個人的側面では、希少な資源を有効に使って消費生活を向上すること を考えることが課題になる。消費者が自分自身の生活目標を設定し、その生活目標を実 現するために、総合的、合理的な意思決定ができるようになることを目的とする。個人 的意思決定能力や個人的生活設計能力の育成に焦点が当てられる。 次に、消費者教育の社会的側面では、消費者が市民として自分の消費の結果が社会 や環境にどのように影響を及ぼすかを考え、消費者にとってより良い社会の実現のため に社会参加をすることを学ぶことが課題になる。消費者が、すべての消費者に共通する 正当な利益を実現するために、総合的合理的に意思決定できるようにすることを目的と する。この点で、消費者教育は市民性育成教育でもある。そこで目指される消費者像は、 消費者であると同時に市民であることも認識し、市民としての責任を果たそうとする消 費者市民(Consumer Citizen)である。

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2.消費者教育の内容と経済教育との連関 消費者教育の内容については、これも諸説あるが、今日では古典とも呼ぶことができ るのがバニスターとモンスマによる『消費者教育における諸概念の分類』(ミシガン消 費者教育センター、1982 年)である。そこでは、3つの上位概念として、(1)意思決 定、(2)資源管理、(3)市民参加が挙げられている。 それぞれの下位概念を見ると、(1)意思決定には、経済教育と共通する経済概念が多 く含まれる。(2)資源管理には、主として経済教育の各論的な概念、(3)市民参加には、 主として消費者教育固有の概念が含まれている。 (1)意思決定は、更に 1.1 消費者の決定に影響を及ぼす外的要因、1.2 消費者の決 定に影響を及ぼす個人的要因、1.3 意思決定プロセスの3つに分類されている。1.1 は 更に 1.1.1 経済システム、1.1.2 政治システム、1.1.3 社会システム、1.1.4 生態学的 影響、1.1.5 技術的影響に分類されている。 このうちの 1.1.1 経済システムでは消費者教育によって消費者が身に付けるべき経 済概念として、混合経済、希少性、需要と供給、価格、競争、失業やインフレなどの経 済問題の6つが挙げられている。この他に消費者教育に関連した経済概念として独占、 金融政策、財政政策、生産性、経済成長、貿易、相互依存、所得分配も列挙されている。 このように消費者にとって必要な経済概念を取り扱う消費者教育の最初の部分におい て、経済教育との共通性が見られる。 特に希少性については、人間の経済的欲求に対して経済的資源が比較的希少であるた めに経済問題が生じるという意味で全体の最初の部分に位置付いている。消費者教育・ 経済教育共に、資源の希少性によって資源の経済合理的な選択をしなければならないこ とを認識させて、消費者教育や経済を学ぶ意義を理解させようとするものである。 需要と供給、価格、競争については市場経済を理解するための最も基本的な経済概念 を取り上げるということである。 1.3 意思決定プロセスについては、合理的な意思決定プロセスを取り扱っている。こ こでは合理的な意思決定プロセスの一例ということで、問題の明確化−情報の収集−代 替案の列挙−結果の予想−決定と行動−評価というプロセスが挙げられている。ここに は基本的経済概念であるトレード・オフと機会費用が含まれている。トレード・オフと はあるものを選択すると、あきらめなければならないものが出てくるというものである。 機会費用は、人があるものを選択する時に、あきらめなければならないもののうちで最 善の事物と定義される。従って、望ましい意思決定とは、トレード・オフと機会費用を よく認識し、あるものを選択した場合、何をあきらめるのかを明らかにし、選択したも のとあきらめるものを比較考量したうえで、最適と思われる案を自らの判断と責任にお いて選ぶことになる。 以上の意思決定プロセスは消費者の意思決定との関連で取り扱っているが、経済教育 で取り扱う社会的な意思決定プロセスとも基本的には共通するものである。

参照

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