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増殖因子受容体アダプター蛋白FRS2βによる癌幹細胞とニッチ制御の分子機構

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨 論文題目 増殖因子受容体アダプター蛋白 FRS2β による癌幹細胞とニッチ制御の分子機構 氏名 町田 雪乃 癌幹細胞が、癌組織全体を作る元になっているという「癌幹細胞説」が注目されている。受容 体チロシンキナーゼシグナルの主要な経路の一つは、ERK を活性化する経路である。我々は、 これまでに FRS2β アダプターが、細胞内で活性化した ERK と結合して、ERK の核移行を阻害 するため、ErbB-ERK 経路をフィードバックして抑制する因子であることを示してきた。今回、 FRS2β ノックアウトマウスを作製し、ErbB2 の過剰発現により乳癌を発症する MMTV-neu マウ スとの掛け合わせを行い、ErbB2-ERK 経路の過剰な活性化の影響を調べた。その結果、FRS2β ノックアウトマウスに発症した乳癌は、増殖が遅く、野生型マウスの方が早く死亡した。この ことより、FRS2β が ErbB2 誘導乳癌の発癌において重要な役割を果たしていることが示唆され た。実際に、FRS2β ノックアウトマウスにおいて乳癌細胞の sphere 形成率が下がっていること から、FRS2β による ErbB の過剰発現の抑制が乳癌幹細胞の維持に必要であることが示唆される。 FRS2β は正常乳腺の腺上皮細胞においてごくわずかに発現している。FACS 解析により、ノック アウトマウスでは乳腺上皮前駆細胞を含む CD24high CD49f+細胞分画が減少していた。さらに、 FRS2β ノックアウトマウスは野生型マウスと比較して乳腺細胞の sphere 形成率が下がっていた。 Sphere のマイクロアレイ解析と GSEA 解析により、FRS2β ノックアウトマウスで幹細胞シグネ チャーの低下とインターフェロンシグネチャーの低下、MEK-ERK 経路のシグネチャー上昇がみ られた。さらに qRT-PCR により FRS2β ノックアウトマウスでは IGF1、CXCL12、CCL3 など自

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己複製やニッチ形成に関わる遺伝子発現の低下、Cytokeratin 8、Cytokeratin 18、Cytokeratin 14 な ど分化した乳腺細胞に発現する中間径フィラメントの発現上昇が認められた。IGF1、CXCL12、 CCL3 は FRS2β ノックアウトマウスの癌細胞においても発現低下していた。さらに、FRS2β ノ ックアウトマウスでは ErbB2 過剰発現により発症した乳癌で癌関連線維芽細胞の量が少ない傾 向にあり、癌幹細胞による炎症性ニッチの形成が出来にくくなったことが示唆された。 そして、ヒト乳癌患者の癌幹細胞分画において FRS2β がより強く発現していた。以上より、FRS2β を発現している乳腺前駆細胞が乳癌幹細胞に転換し、乳腺前駆細胞だけでなく癌幹細胞の維持 に重要な役割を果たしていることが示唆される。乳癌幹細胞が維持されるためには、ErbB2-ERK 経路が、適度なレベルに調整されることが重要であることがわかった。

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