浅海増養殖に関する研究
(1)ミルクイ種苗生産研究
都留久美子・江頭潤一・片野晋二郎
事業の目的
ミルクイTresus keenae は、内湾の砂泥域に生息 する大型の二枚貝で、比較的単価の高い重要な水産 生物である。本県では昭和 50 年代まで国東半島東 岸域で潜水器漁業等によって漁獲されていたが、そ の後資源量が激減し、漁業者からの資源回復を望む 声は大きい。そこで本種の増殖のため、種苗生産の 安定化を目的とした技術開発を行った。事業の方法
1.採卵 母貝は、2009 年 10 月 29 日に愛知県から購入し た天然ミルクイ 11 個体および前年度親貝として使 用した5 個体を用いた。 採卵は 17 ~ 24 時間程度の干出、加温、または 0.25mM セロトニン塩酸塩溶液の筋肉打注(0.5 ~ 2.0ml/個体)により誘発する方法で行った。 得られた卵に精子を添加し受精させ、受精卵を1t 円型ポリエチレン製水槽に収容してふ化させた。 2.幼生飼育 D 型幼生への変態を確認した後回収し、飼育水槽 に収容して以下の条件で飼育した。 使用水槽:1kl 円型ポリエチレン製水槽のべ 8 槽 飼育水:砂ろ過海水をカートリッジフィルター (3μm)でろ過して使用 水温:飼育水の加温および空調により約 20 ℃に 設定 注水:日齢 2 まで止水、その後 0.5 回転/日で常 時注水 通気:エアストーン1 個/水槽で微通気 餌料:自家培養したChaetoceros gracilis と Pavlova lutheri の容量比 1:1 の混合餌料 (5×106cells/ml)を、飼育水中 2,500 ~ 10,000cells/ml となるよう点滴容器を使用 して給餌 3.稚貝飼育 匍匐する個体(殻長約 200μm)が出現した時点 でとりあげ、着底用の砂を敷いた水槽に収容し、以 下の条件で飼育した。飼育水、水温、通気は幼生飼 育と同様とした。 使用水槽:1kl 円形ポリエチレン製水槽のべ 22 槽 注水:0.5 回転/日で流水 砂:硅砂(粒径 360μm 以下)を約 200g/槽 (成長に応じ数回に分けて合計約2kg/槽添加) 餌料:幼生飼育時と同様のものを、飼育水中 8,000 ~ 20,000cells/ml となるよう点滴容器を 使用して給餌 とりあげた付着期幼生が1kl 当たり 200 千個以上 であった場合は3 水槽に分け、それぞれ密度を変え て収容した。 また、1 回次には 32 千個の幼生をダウンウェリ ング容器(直径 60cm、125μm メッシュ)1 基に収 容し、ポンプアップした飼育水を水槽上部からシャ ワー状にかけて循環させる方法で飼育した。事業の結果
1.採卵 使用した母貝の平均重量は454.3g であった。 採卵結果を表1 に示した。4 回次の採卵により計 10,230 千個の D 型幼生を得た。受精卵から D 型幼 生への変態率は75.3 ~ 92.8%であった。 2.幼生飼育 結果を表2 に示した。11 ~ 20 日間の飼育により、 計4,739 千個の付着期幼生が得られた。浮遊期の生 残率は1 ~ 4 回次の平均がそれぞれ 17.9%、44.0%、 65.0%、74.2%と次第に高くなる傾向があったが、 原因は不明であった。 3.稚貝飼育 稚貝の飼育結果を表 3 に示した。4,739 千個の付 着期幼生を収容し741.6 千個(平均殻長 1.8mm)の着底稚貝を得た。 ダウンウェリングによる付着期幼生から稚貝への 生残率は 1.2%であり、砂敷き水槽(2.1 ~ 33.7%) と比較し低く、千葉県の報告1)と合致した。 付着期幼生の収容密度と稚貝の回収率の関係を図 1 に示した。全体的な傾向は見いだせなかったが、 同じロットで比較すると、収容密度が高いほど回収 率が低下する傾向があった。
文
献
1)千葉県水産研究センター.アサリ種苗生産の現 場基礎技術 2004;81-82. 表1 採卵結果 表2 幼生飼育結果 回次 採卵日 採卵誘発方法 使用 母貝数 (個) 放卵・放精 母貝数 (個) 受精卵数 (千粒) D型 幼生数 (千個) 1 10/29 干出、加温 11 ♀1 ♂1 6,375 4,800 2 12/1 干出、加温、セロトニン 6 ♀1 ♂1 不明 250 3 12/14 加温、セロトニン 5 ♀1 ♂2 863 800 4 12/15 加温、セロトニン 4 ♀1 ♂0 5,728 4,380 計 10,230 採卵 回次 水槽 No. 飼育開始日 D型幼生 収容数 (千個) 収容密度 (個/ml) 飼育 日数 (日) 付着期 幼生数 (千個) 浮遊期 生残率 (%) 1 1,600 1.6 11 309 19.3 2 1,600 1.6 12 233 14.6 3 1,600 1.6 13 317 19.8 2 4 12/2 250 0.25 20 110 44.0 3 5 12/14 800 0.8 14 520 65.0 6 1,460 1.46 13 934 64.0 7 1,460 1.46 13 1,045 71.6 8 1,460 1.46 13 1,270 87.0 計 10,230 4,739 1 10/30 4 12/15 大分 県水 試事業 報告 158 大 分 県 水 試 事 業 報 告表3 稚貝飼育結果 図1 幼生収容密度と稚貝回収率 水槽No. 開始日飼育 付着期 幼生収容数 (千個) 収容密度 (個/㎝2) 取上げ 稚貝数 (個) 取上時 平均殻長 (mm) 取上時 密度 (個/㎝2) 生残率 (%) 1-1 32 11 399 2.8 0.1 1.2 1-2 139 11 2,979 4.2 0.2 2.1 1-3 139 11 2,875 3.5 0.2 2.1 2-1 100 8 7,467 3.4 0.6 7.5 2-2 80 6 8,071 2.3 0.6 10.1 2-3 50 4 1,975 4.4 0.2 4.0 3-1 150 12 4,835 2.6 0.4 3.2 3-2 100 8 9,699 1.8 0.8 9.7 3-3 70 6 9,079 2.1 0.7 13.0 4 12/22 110 9 18,909 4.3 1.5 17.2 5-1 250 20 15,101 2.4 1.2 6.0 5-2 166 13 55,879 1.5 4.5 33.7 5-3 104 8 35,843 1.2 2.9 34.5 6-1 415 33 30,477 1.9 2.4 7.3 6-2 346 28 56,569 1.8 4.5 16.3 6-3 173 14 63,024 1.7 5.1 36.4 7-1 418 34 40,067 1.5 3.2 9.6 7-2 334 27 64,611 1.5 5.2 19.3 7-3 293 24 57,254 1.7 4.6 19.5 8-1 508 41 67,671 1.9 5.4 13.3 8-2 406 33 111,745 2.1 9.0 27.5 8-3 356 29 77,097 1.9 6.2 21.7 計 4,739 741,626 12/28 10/10 10/11 10/12 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 回収率(%) 収容密度(個/cm2) △ 水槽No.1 □ 水槽No.2 ○ 水槽No.3 ◇ 水槽No.4 ▲ 水槽No.5 ■ 水槽No.6 ● 水槽No.7 ◆ 水槽No.8 (表2の水槽No.に対応)
浅海増養殖に関する研究
(2)ミルクイ増養殖研究
都留久美子・江頭潤一・片野晋二郎
事業の目的
これまでの種苗生産および中間育成技術開発の結 果、大型種苗の生産がある程度可能になった。本種 は単価が高く、増養殖種としても有望であるため、 出荷サイズまでの育成を目的とした増養殖技術開発 を行っている。放流試験については、被覆網を改良 することで出荷サイズまでの育成を目指した2006年 度からの試験を継続するとともに、今年度同じ手法 で新たに種苗を放流した。事業の方法
国東市国見町亀崎沖(図 1)で 2006 年度から実 施している放流試験を継続した。水深 10m の海底 に被覆網を用いて放流し、生残および成長を調査し た。詳細については平成18 年度と平成 19 年度の大 分県農林水産研究センター水産試験場事業報告に記 載している。1)、2) 今年度の調査は7 月 29 日と 11 月25 日に行った。 また、7 月 29 日に上記の場所に隣接した箇所に おいて、2008 年度に当研究所で生産したミルクイ 種苗を用いた放流試験を行った。2×2m の枠を 3 区 設け、それぞれに 400、800、1,200 個のミルクイ種 苗(平均殻長 18.2mm)を放流し、9mm 目合いの網 を被せ、四角をペグで固定した。なお、網には予め 縁に固定のための鉛ロープを縫い付けるとともに、 種苗の水管が接触しないよう、網の内側に浮きを取 り付けた。事業の結果
放流後の成長と生残を図2 に示した。11 月 25 日 の測定では、櫓区、うき網区、新うき網区の殻長が それぞれ 88.6mm、87.9mm、93.0mm となり、新う き網区では出荷の目安である90mm を超えた。過去 の試験においては殻長60mm 前後で成長が鈍る傾向 があったが、本試験では順調に成長を続けており、 図1 試験実施位置図 被覆網を海底から浮かせて空間を確保することの効 果が示唆された。 生残については、収容密度が18.3 個/m2の新うき 網区が生残率 100%を保っているのに対し、櫓区、 うき網区では試験開始時の収容密度が 106.3 個/m2 であり、11 月 25 日の調査時の生残率はそれぞれ 15.1%、27.3%(密度はそれぞれ 16.0 個/m2、24.0 個/m2) であった。見かけ上、生残率は低下しているが、現 在の生息密度はいずれも同程度にあり、今後これ以 上の低下がみられなければ、殻長90mm 程度のミル クイの適正な生息密度を示している可能性も考えら れる。なお、7 月 29 日の調査における櫓区および およびうき網区の生残率が低い原因として、調査前 日の荒天により透明度が極端に低下し、調査枠内の 種苗を全数回収できなかった可能性が考えられた。 今年度新たに放流した 3 区については、11 月 25 日に放流後初の調査を行ったが、いずれの区におい ても生残個体が認められず、試験を終了した。原因 については不明であるが、昨年度同様、種苗の質等 が考えられた。 豊後高田市 国東市 姫島村 (亀崎) 大分 県水 試事業 報告 2006 160 大 分 県 水 試 事 業 報 告文
献
1)中川彩子,平川千修,林 亨次.浅海増養殖に関 する研究(2)ミルクイガイ増養殖研究.平成 18 年度 大分県農林水産研究センター水産試験場事業報告 2008;161-162. 2)林 亨次,江頭潤一,平川千修.浅海増養殖に関 する研究(2)ミルクイ増養殖研究.平成 19 年度大分 県農林水産研究センター水産試験場事業報告 2009 ;149-150. 図2 ミルクイ種苗の成長と生残 0 20 40 60 80 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 H18.8.1 H19.2.1 H19.8.1 H20.2.1 H20.8.1 H21.2.1 H21.8.1 生残率(%) 殻長(mm) 櫓区殻長 うき網区殻長 新うき網区殻長 櫓区生残率 うき網区生残率 新うき網区生残率 間引・展開 2006.8.1 2007.2.1 2007.8.1 2008.2.1 2008.8.1 2009.2.1 2009.8.1浅海増養殖に関する研究
(3)イワガキ種苗生産研究
都留久美子・江頭潤一・片野晋二郎
事業の目的
イワガキCrassostrea nippona は、夏期に潜水漁業 で漁獲されてきたが、近年養殖対象種として全国的 に着目されている。大分県においても天然イワガキ が岩礁域を中心に漁獲されており、一般的に単価も マガキと比較して高いことなどから、増養殖対象種 の可能性が示唆される。これまでに基礎的な種苗生 産技術は確立されつつあるが、本年度はより安定し た生産技術を開発することを目的に試験を行った。事業の方法
1.種苗生産
母貝 2004 ~ 2006 年に当研究所で生産し、豊後高田市 および杵築市における養殖試験に供した個体を採卵 直前に持ち帰り、母貝として使用した。1 回の採卵 には 4 ~ 65 個の母貝(平均体重 225.9 ~ 432.7g) を用いた。 採卵 採卵は6 月 29 日、7 月 31 日、8 月 19 日、8 月 20 日の4 回行った。第 1 ~ 3 回次は干出刺激による自 然産卵、第4 回次は切開法による人工授精を行い受 精卵を得た。受精卵はポリエチレン製 1kl 円形水槽 または FRP 製 6kl 角型水槽に収容し、止水、無通 気の状態でふ化させた。 幼生飼育 得られたD 型幼生を 0.5 ~ 10 個体/ml の密度で飼 育水槽に収容し、以下の条件で飼育した。 水槽:ポリエチレン製 1kl 円形水槽のべ 14 面、 コンクリート製30kl 角型水槽のべ 4 面 飼育海水:砂ろ過海水を 3μm カートリッジフィ ルターで濾過したもの (以下「3μm 精密ろ過海水」とする) 水温:自然水温 注水:1 回次は日齢 13 ~ 14 まで止水、その後 0.5 回転/日の流水、2 ~ 4 回次は飼育開始 時から0.5 回転/日の流水 通気:1kl 水槽はエアストーン 5 個、30kl 水槽は ユニホースを用いて微通気 餌料は、幼生の殻長が約 200μm になるまでは市 販の Chaetoceros calcitrans(サンカルチャー:日 清マリンテック㈱)を、それ以降は、自家培養したC.gracilis と Pavlova lutheri の容量比 1:1 の混合餌料を 2 回/日給餌し、摂餌状況や成長に応じて飼育水中 の餌料密度を2,500 ~ 8,000cells/ml にした。ただし、 コンクリート製 30kl 角型水槽での飼育については C.calcitrans が不足したため、C.gracilis を使用して 不足分を補った。 稚貝飼育 幼生の殻長が 300μm 以上になると眼点が生じ始 めるが、眼点個体の出現率が8 割程度になった時点 で幼生をとりあげ、後述の付着器を設置した水槽に 収容した。着底後も約1 ヵ月間そのまま継続して飼 育し、全高約3mm の時点で FRP 製 4kl 角型水槽に 集約して飼育した。使用した海水等の条件は幼生飼 育と同様だが、付着器の前処理や通気方法に関して は後述の試験を行った。 着底水槽:ポリエチレン製1kl 円形水槽または FRP 製 1kl 角型水槽 注水:0.5 回転/日 餌料:自家培養したChaetoceros gracilis を 2 回/ 日、摂餌状況や成長に応じて飼育水中の餌 料密度を8,000 ~ 15,000cells/ml に維持 付着器:ホタテガイの殻をKP ロープ(直径 4mm) に1cm 間隔で 30 枚通したものを 1 連と し、付着器として使用 また、一部の付着期幼生を用いてシングルシード を作成した。方法については平成 20 年度大分県農 林水産研究センター水産試験場事業報告1)に記載 されたものと同様とした。ただし飼育水は水中ポン 大分 県水 試事業 報告 162 大 分 県 水 試 事 業 報 告
プを用いて循環させ、水槽上部からシャワー状に注 水した。
2.着底に関する試験
イワガキ幼生のホタテガイ殻への着底に関して は、2008 年度の着底率が 2.2 ~ 18.5%と非常に低い ことや、付着器に対する着底稚貝数のばらつき等の 問題が指摘される。そこで今回、付着器に対する前 処理と着底水槽における通気の方法を改善し、着底 状態を比較した。 1)付着器の前処理による比較 ホタテガイ付着器に対し、以下の前処理液に浸漬 した。 エキス区:イワガキ成貝の軟体部のエキスを添加 した 3μm 精密ろ過海水(0.5kl)に 2 日間 (宮城県特許出願中 特願 2001-394871) 親貝区:採卵に使用した成貝(5 ~ 15 個体)を 収容し、3μm 精密ろ過海水を掛け流し ている0.5kl 水槽に 3 日間 海水区:3μm 精密ろ過海水を掛け流している 0.5 kl 水槽に 3 日間 水道水区:水道水を掛け流している 30L 水槽に 10 日間 上記の処理を施した付着器をそれぞれ 15 連、25 連、5 連、3 連ずつ作成し、ポリエチレン製 1kl 円 形水槽内にランダムに垂下し、付着期幼生588 千個 体を収容した。通常通り飼育し、浮遊幼生の存在が 確認されなくなった時点で各区における着底稚貝数 を計数した。 2)通気方法による比較 対照区は従来の方法と同様、着底水槽として幼生 飼育水槽と同様のポリエチレン製 1kl 円形水槽を用 い、エアーストーンを15 ~ 20 個程度設置して連続 通気を施した。 間欠通気区は着底水槽としてFRP 製 1kl 角型水槽 を使用した。通気用分散器として直径 0.8mm の穴 を 1cm 間隔で開けた塩化ビニル製パイプ(直径 13mm)をハシゴ状に接続して水槽底一面に設置し た。通気方法を京都府の報告2)に倣い間欠通気とし、 通気間隔は30 分とした。さらに付着器の天地返し3) も1 日 1 回行った。事業の結果および考察
1.種苗生産
採卵 結果を表1 に示した。干出刺激による自然産卵に より十分な量の受精卵およびD 型幼生が得られた。 これに対し、第4 回次に人工授精によって得られた D 型幼生は非常に少なく、採卵数に対する D 型幼 生の出現率は0.8%であった。4 回の採卵で計 18,793 百万個のD 型幼生が得られた。 表1 採卵結果 幼生飼育 結果を表2 に示した。第 4 回次は受精卵の時点で の飼育水槽への収容を試みたが、前述の D 型幼生 出現率の低さに加え、飼育開始後の生残率もすぐに 低下したため、日齢8 で廃棄した。第 1 ~ 3 回次の 飼育で計244,750 千個の D 型幼生をのべ 18 水槽に 収容し、3,086 千個の付着期幼生を得た。浮遊期の 平均生残率は 1.3%であった。付着期幼生が得られ た飼育例では生残率が0.5 ~ 56.4%と不安定であり、 高水準での安定化が今後の課題である。 収容密度が 5 ~ 10 個/ml と高かった水槽や 30kl 水槽における飼育では、日齢16 ~ 20 で生残率の急 激な低下が見られた。原因として、高密度水槽では 環境水の悪化、大型水槽では初期に小型餌料(C. calcitrans)の給餌量が不十分であった可能性等が考 えられた。 稚貝飼育 結果を表3 に示した。ホタテ殻を付着器として使 用した従来通りの方法では平均216 個の付着期幼生 につき1 枚のホタテ殻を投入し、687 千個(平均殻 高5.1mm)の着底稚貝を得た。ホタテ殻 1 枚当たり の平均着底稚貝数は 62 個(平均着底率 28.6%)で あった。 一方、カキ殻粉末を付着器として使用したシング ルシードでは、682 千個の付着期幼生に対し得られ た着底稚貝は15 千個(平均殻高 8.2mm)、平均着底 率は 2.2%であり、ホタテ殻による採苗方法と比較 して着底率が低かった。 1 6月29日 65 134.6 393.1 - 18,432 2 7月31日 20 122.1 225.9 - 228 3 8月19日 10 138.6 413.8 - 132 4 8月20日 4(♀3♂1) 未測定 432.7 88.8 0.674 計 18,793 平均重量 (g) 採卵数 (百万個) D型幼生数 (百万個) 回次 採卵日 母貝数 (個) 平均全高 (mm)大分 県水 試事業 報告
2.着底に関する試験
1)付着器の前処理による比較 付着器の前処理によるホタテ殻1枚当たりの平均 着底稚貝数を図1 に示した。エキス区に多く着底す る傾向は見られたものの、それぞれの区間における 有意な差はなかった(Mann-Whitney test p < 0.05)。 また、水道水区と比較するといずれの区も多く着底 する傾向があった。 図1 付着器の前処理による平均着底稚貝数 0 20 40 60 80 100 親貝区 エキス区 海水区 水道水区 平 均 付 着 個 体 数 (個 /枚 ) 2)通気方法による比較 それぞれの区における付着器1 枚当たりの着底稚 貝数を0、1 ~ 19、20 ~ 39、40 ~ 59、60 ~ 79、80 ~99、100 ~ 119、120 ~ 139、140 以上の 9 段階に 分け、総付着器数に占めるそれぞれの出現頻度を図 2 に示した。対照区では 40 ~ 59 個/枚をピークとす る単峰型の分布を示し広範囲に及ぶばらつきが見ら れたのに対し、間欠通気区では76.7%が 40 ~ 59 個/ 枚クラスに集中し通気方法の改善によってばらつき を抑える効果が認められた。 図2 付着器1枚当たりに対する着底稚貝数の 出現頻度 0 20 40 60 80 100 出 現 頻 度 ( % ) 着底稚貝数(個/枚) 対照区 間欠通気区 表2 幼生飼育結果 採卵 回次 水槽 No. 水槽容量 (kl) 飼育 開始日 D型幼生 収容数 (千個) 収容密度 (個/ml) 飼育日数 (日) 着底前 幼生数 (千個) 浮遊期 生残率 (%) 1 1 2,000 2.0 33 307 15.4 2 1 5,000 5.0 日齢23で廃棄 0 0.0 3 1 10,000 10.0 日齢20で廃棄 0 0.0 4 1 2,000 2.0 32 588 29.4 5 1 2,000 2.0 31 1,128 56.4 6 1 2,000 2.0 29 9 0.5 7 1 2,000 2.0 31 444 22.2 8 30 90,000 3.0 日齢26で廃棄 0 0.0 9 30 90,000 3.0 日齢22で廃棄 0 0.0 10 1 500 0.5 11 1 500 0.5 12 1 750 0.8 13 1 1,000 1.0 14 30 17,500 0.6 日齢10で廃棄 0 0.0 15 1 1,000 1.0 20 76 7.6 16 1 1,000 1.0 20 113 11.3 17 1 1,000 1.0 19 286 28.6 18 30 16,500 0.6 日齢11で廃棄 0 0.0 計 244,750 3,086 1.3 生残率が低下し たため統合し、 日齢23まで飼育 8月20日 3 6月30日 7月1日 8月1日 1 2 135 4.9 164 大 分 県 水 試 事 業 報 告表3 稚貝飼育結果 水槽No. 着底前 幼生数 (千個) 着底稚貝数 (千個) 着底率(%) ホタテ殻 投入枚数(枚) ホタテ殻1枚 当たりの着底 稚貝数(個) 1 307 106 34.6 930 114 4-1 470 122 25.9 1,800 68 5-1 588 85 14.5 1,440 59 5-2 162 81 49.9 1,500 54 5-3 258 64 24.8 1,200 53 6 9 2 22.9 45 46 10 135 25 18.7 1,800 14 15 16 17 286 81 28.3 1,440 56 計 2,404 687 28.6 11,115 62 4-2 118 1 1.2 5-4 120 3 2.9 7-1 222 3 1.5 7-2 222 7 3.0 計 682 15 2.2 121 960 126 (ホタテ殻による採苗) (シングルシード) 189 63.9
文
献
1)林 亨次,江頭潤一,平川千修.浅海増養殖に関 する研究(3)イワガキ種苗生産研究.平成 20 年度大 分県農林水産研究センター水産試験場事業報告 2010;159-161. 2)藤原正夢.イワガキの効率的な採苗技術開発- 通気時間と幼生収容数の検討-.京都府立海洋セン ター研究報告 1998;20:8-12. 3)岡部三雄,藤原正夢,田中雅幸.イワガキ種苗 生産における採苗方法の検討-採苗器の上下逆転操 作(天地返し)の有効性について-.京都府立海洋セ ンター研究報告 2004;26:34-37.浅海増養殖に関する研究
(4)イワガキ養殖研究
都留久美子・江頭潤一・片野晋二郎
事業の目的
イワガキCrassostrea nippona の人工種苗を使用し て、大分県内での養殖が可能かどうかを検証するた め、養殖方法等の試験を行った。事業の方法
1.守江湾における養殖試験 2007 年度に開始した重りの量の違いによる比較 試験を、継続して調査した。方法の詳細については 平成19 年度および平成 20 年度の大分県農林水産研 究センター水産試験場事業報告1 )、 2)に記載した。 今年度の調査は5 月 18 日、11 月 12 日、3 月 11 日 に行った。調査時には種苗を当研究所に持ち帰り、 付着物の除去等を行った後に測定し、カゴ等を交換 して現地に戻した。 2.シングルシード種苗養殖試験 1)2008 年度開始分 昨年度開始したシングルシードを用いた養殖試験 について、継続して調査した。方法の詳細について は平成 20 年度大分県農林水産研究センター水産試 験場事業報告2)に記載した。調査は5 月、7 月、11 月、3 月に行った。試験開始時は種苗が丸カゴの目 合いより小さかったためミカンネットに入れた上で 丸カゴに収容していたが、守江湾における試験では 種苗の成長に従い過密になったため、11 月の調査 時に種苗をサイズ別に再収容した。すなわち、丸カ ゴの目合いより小さいもの(小)についてはアサリ ネットに入れて、大きいもの(大)はそのまま丸カ ゴに収容した。さらに、3 月の調査においては、す べての区でカゴの目合いより小さいものを選別し、 まとめてアサリネットに入れて丸カゴに収容した。 2)2009 年度開始分 今年度生産したシングルシードを用いて、豊後高 田市沖および佐伯市蒲江において養殖試験を行った (図1)。 図 1 2009 年度シングルシード試験実施場所 10 月 9 ~ 12 日に豊後高田市沖と佐伯市蒲江にそ れぞれ 20 千個、9 千個の種苗(平均全高 6.5mm) をカゴに収容して垂下し、3 月に全高を測定した。事業の結果
1.守江湾における養殖試験 成長と生残率を図2 に示した。3 月の調査では、 いずれの区も全高115mm 前後、生残率 40%前後で あり、明確な差は得られなかった。昨年度と同様、 守江湾は比較的穏やかな内湾であり波浪の影響が少 ないことや、種苗自身の成長により重りの差の効果 がなくなったことが原因として考えられた。 2.シングルシード種苗養殖試験 1)2008 年度開始分 守江湾における成長と生残を図3 に示した。対照 区(ホタテ殻に付着させた種苗)を除くすべての区 において、上下2 連のカゴのうち上のカゴで顕著に 成長が良かった。また、収容密度による成長につい ては明確な傾向が得られなかったが、生残率は収容 密度が低いほど高い傾向にあった。 豊後高田市沖における成長と生残を図 4 に示し 豊後高田市沖 佐伯市蒲江 大分 県水 試事業 報告 166 大 分 県 水 試 事 業 報 告た。守江湾と同様、対照区の成長が最も良かったが、 シングルシードについては昨年度の流失もあり、明 確な傾向は不明であった。 守江湾と豊後高田市沖の成長と生残を比較し、図 5 に示した。成長は守江湾、豊後高田市沖とも対照 区と比べてシングルシードが低い傾向にあったが、 守江湾のシングルシードで今年度後半に急激な成長 がみられたのに対し、豊後高田市沖の成長は停滞し た。また、生残率については、守江湾のシングルシ ードで最も高く、対照区は両地区で同程度であった。 守江湾と豊後高田市沖の海況的特徴として、守江 湾が内湾性で年間を通して比較的穏やかなのに対 し、豊後高田市沖は外海に面しており特に冬期は波 浪の激しい場所であることが挙げられる。このこと がイワガキの成長に影響を与えており、特にシング ルシードは通常のホタテ殻に付着した種苗と比較し て安定性に欠けるため、少しの波浪でも殻を閉じて しまい、摂餌の機会が減少する可能性が示唆された。 2)2009 年度開始分 10 月の試験開始時と 3 月の測定結果を図 6 に示 した。豊後高田市沖と比較し佐伯市蒲江の成長が良 かった。これらについては来年度も調査を継続し、 成長の差等について考察を行う。 図 2 重り試験の成長(上)と生残率(下) 0 20 40 60 80 100 120 140 H19.12.1 H20.6.1 H20.12.1 H21.6.1 H21.12.1 全 高 (m m ) 対照区 重量区 軽量区 0 20 40 60 80 100 H19.12.1 H20.6.1 H20.12.1 H21.6.1 H21.12.1 生 残 率 (% ) 図 3 守江湾におけるシングルシードの成長(上) と生残率(下) 図 4 豊後高田市沖におけるシングルシードの成長 (上)と生残率(下) 0 20 40 60 80 100 H20.12.1 H21.3.1 H21.6.1 H21.9.1 H21.12.1 H22.3.1 全 高 (m m ) 対照区 200個区 上 200個区 下 400個区 上 400個区 下 600個区 上 600個区 下 0 20 40 60 80 100 H20.12.1 H21.3.1 H21.6.1 H21.9.1 H21.12.1 H22.3.1 生 残 率 (% ) 対照区 200個区 400個区 600個区 0 10 20 30 40 50 60 70 H20.12.1 H21.3.1 H21.6.1 H21.9.1 H21.12.1 H22.3.1 全 高 (m m ) 対照区 200個区 上 200個区 下 400個区 上 400個区 下 600個区 上 600個区 下 0 20 40 60 80 100 H20.12.1 H21.3.1 H21.6.1 H21.9.1 H21.12.1 H22.3.1 生 残 率 ( % ) 対照区 200個区 400個区 600個区 2007.12.1 2007.12.1 2008.12.1 2008.12.1 2008.12.1 2008.12.1 2008.6.1 2008.6.1 2009.3.1 2009.3.1 2009.3.1 2009.3.1 2008.12.1 2008.12.1 2009.6.1 2009.6.1 2009.6.1 2009.6.1 2009.6.1 2009.6.1 2009.9.1 2009.9.1 2009.9.1 2009.9.1 2009.12.1 2009.12.1 2009.12.1 2009.12.1 2009.12.1 2009.12.1 2010.3.1 2010.3.1 2010.3.1 2010.3.1
図 5 シングルシードの成長(上)と生残率(下) 図 6 2009 年度産シングルシードの成長 0 20 40 60 80 100 H20.12.1 H21.6.1 H21.12.1 全 高 (m m ) 守江対照区 高田対照区 守江シングル 高田シングル 0 20 40 60 80 100 H20.12.1 H21.6.1 H21.12.1 生 残 率 ( % ) 0 10 20 30 40 50 60 10月 3月 全 高 (m m ) 豊後高田市沖 佐伯市蒲江
文
献
1)林 亨次,江頭潤一,平川千修.浅海増養殖に関 する研究(4)イワガキ養殖研究.平成 19 年度大分県 農林水産研究センター水産試験場事業報告 2009; 154-156. 2)林 亨次,江頭潤一,平川千修.浅海増養殖に関 する研究(4)イワガキ養殖研究.平成 20 年度大分県 農林水産研究センター水産試験場事業報告 2010; 162-163. 大分 県水 試事業 報告 2008.12.1 2008.12.1 2009.6.1 2009.6.1 2009.12.1 2009.12.1 168 大 分 県 水 試 事 業 報 告浅海増養殖に関する研究
(5)ノリ養殖安定対策推進事業
伊藤龍星・原 朋之・福田祐一・田森裕茂
事業の目的
本事業は、本県ノリ養殖漁家の経営安定をはかる ため、気象・海況・養殖技術などについての情報提 供や技術指導を行うものである。ここでは、平成21 (2009)年度漁期の養殖結果をとりまとめるととも に、当研究所が行った調査・指導・情報活動等につ いて報告する。 1.平成21(2009)年度の養殖結果 1)採苗 宇佐市では10 月 10 日から、中津市では 13 日か らの開始であった。平成18 年度までは 10 月上旬の 採苗開始が通例であったが、19 年度以降は 3 年連 続して 10 月中旬の開始となった。杵築市では、11 月中旬に委託網を他県から搬入した。10 月中旬の 水温は平年より 0.5 ~ 1.4 ℃低く、胞子の付着も順 調で、採苗は1 週間以内に完了した。芽付きは濃い めが多かった。 2)養殖および病害状況 10月:肉眼視は25 日頃からと順調であった。当初、 宇佐市では幼芽はやや細く色彩も薄めであったが、 月末までには回復した。 11月:水温はほぼ平年並みで推移した。中津、宇佐 ともにノリ芽の生長は比較的順調で、2 次芽の放出、 着生も良好であった。中津、宇佐ともに生長の早い 網では 10 日頃から冷凍入庫が開始された。ピーク は 14 ~ 19 日、26 日までには完了した。入庫枚数 は中津1,700 枚、宇佐 60 枚で健全な網が多かった。 杵築市では県外からの委託網を、11 月 20 日に直接 張り込んだ。11 日に中津市の竜王と新田でバリカ ン症状が発生、その後小祝でも同様となった。20 日頃からひどくなり、摘採直前の長めの葉体が途中 から流失した。このため、浮き竹をはずす、ネット をかけるなどの対策を指導した。 12月:宇佐では 11 月下旬に摘採を開始したが、中 津ではバリカン症の影響で12 月上旬からとなった。 杵築市も同時期に摘採を開始した。豊前海では、当 初栄養塩不足で製品の色は浅めであったが、10 日 の 20 ミリの降雨以降は回復した。バリカン症から 回復しない網や摘採後の網には珪藻付着が目立って きた。このため、中旬には冷凍網の出庫を開始する 生産者もあった。15 日に中津市小祝で赤ぐされ病 の発生を確認し、翌日には、FAX 病害情報とテレ ホンサービスで状況と対策を周知した。赤ぐされ病 は、年内には大きな拡大は見られなかった。 1月以降:降雨が多くなり、赤ぐされ病は徐々に拡 大した。降雨と時化で色の出る場合もあったが、漁 期後半になると色の出も悪くなった。昨年同様、下 物不足で色の浅い乾ノリでも値が入り、3 月に入っ ても一部で生産が続けられた。このため、冷凍網は 1月以降も出庫が続けられた。2 月下旬に入り珪藻 類の付着が多く製品にも影響がでた。 なお、昨年度中津市では「カモ類の食害が激しい」 との苦情が生産者から相次ぎ、12 月に散弾銃によ る駆除が行われた。しかし、今年度は実施されなか った。この理由は、生産者間の協議で、カモの食害 は認めるものの、散弾銃による駆除効果がはっきり しなかったことによる。 壺状菌病は、漁期を通じて確認されなかった。 3)乾ノリ共販結果 本年度の乾ノリ共販結果を表1 に、過去 12 年間 の概要を表2 に示した。 今漁期は福岡市で計9 回の共販が実施されたが、 本県の出品は7 回であった。枚数 685 万枚(対前年 比78%)、金額 3,660 万円(同 88%)、平均単価 5 円 34 銭(同 61 銭高)、1 経営体あたりの生産金額は 135 万円(同1 万円増)であった。枚数、金額とも昨年 をやや下回ったが、1 経営体あたりの生産金額は昨 年並みであった。 2.気象・海況 1)水 温 図1 に高田港先端における水温の推移を示した。 9月:上~中旬は平年並みであったが、下旬は平年 より1 ℃程度高めで推移した。 10月:引き続いて上旬は1 ℃程度高めであった。し かし、採苗期の中旬以降は平年並みに降下した。表1 平成21(2009)年度乾ノリ共販結果〔上段:枚数(枚)、中段金額(円)、下段:単価(円)〕 漁協名 第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 1~9回 前年度累計 対前年比 支所名等 H21.12.9 H21.12.24 H22.1.13 H22.1.27 H22.2.10 H22.2.24 H22.3.10 H22.3.25 H22.4.14 累計 (平成20年度) (%) 0 0 -中津市 0 0 -小祝① 481,700 1,744,100 1,233,100 1,200 804,900 521,800 4,786,800 5,833,900 82 中津市 出 3,202,815 10,035,332 5,322,130 3,600 3,943,964 2,284,547 出 24,792,388 26,279,886 94 小祝② 6.65 5.75 4.32 3.00 4.90 4.38 5.18 4.50 115 233,600 650,800 324,000 340,700 321,800 1,870,900 2,462,500 76 中津市 1,481,014 3,562,657 1,959,246 2,172,923 1,641,014 10,816,854 13,030,670 83 中津東② 6.34 5.47 6.05 6.38 5.10 5.78 5.29 109 0 0 -中津市 品 品 0 0 -和田② 52,500 61,200 3,600 3,600 120,900 288,600 42 宇佐市 268,875 256,428 15,804 15,120 556,227 1,236,438 45 柳ヶ浦① 5.12 4.19 4.39 4.20 4.60 4.28 107 18,000 18,000 0 宇佐市 な 71,820 な 71,820 0 長洲② 3.99 3.99 0 0 宇佐市 0 0 和間② 50,200 50,200 208,800 24 杵築市① し 321,971 し 321,971 1,032,822 31 6.41 6.41 4.95 130 0 0 杵築市② 0 0 0 481,700 2,030,200 1,995,300 325,200 1,145,600 543,400 325,400 0 6,846,800 8,793,800 78 大分県 0 3,202,815 11,785,221 9,463,186 1,962,846 6,116,887 2,372,171 1,656,134 0 36,559,260 41,579,816 88 計 6.65 5.80 4.74 6.04 5.34 4.37 5.09 5.34 4.73 113 中津東②に含まれる 表 2 大分県の乾ノリ共販結果 過去12 年間の概要 年 度 経 営 生 産 枚 数 生 産 金 額 1 経 営 体 あ た り 体 数 ( 千 枚 ) ( 千 円 ) 生 産 金 額(千 円 ) 1 0 8 6 4 0 , 5 7 1 2 9 7 , 0 6 3 3 , 4 5 4 1 1 8 1 3 7 , 6 1 0 2 6 3 , 5 4 9 3 , 2 5 4 1 2 7 6 3 6 , 2 7 9 3 9 4 , 2 8 3 5 , 1 8 8 1 3 7 4 3 6 , 7 9 6 2 8 4 , 3 9 4 3 , 8 4 3 1 4 7 1 2 8 , 2 9 0 1 5 2 , 8 8 5 2 , 1 5 3 1 5 6 7 1 0 , 2 1 9 5 1 , 3 9 7 7 6 7 1 6 5 7 8, 9 4 8 4 7 , 3 3 6 8 3 0 1 7 5 0 1 8 , 9 6 3 1 1 2 , 0 7 0 2 , 2 4 1 1 8 4 2 1 0 , 4 9 6 6 3 , 2 4 5 1 , 5 0 6 1 9 3 8 9 , 3 1 3 4 2 , 4 5 3 1 , 1 1 7 2 0 3 1 8 , 7 9 4 4 1 , 5 8 0 1 , 3 4 1 2 1 2 7 6 , 8 4 7 3 6 , 5 5 9 1 , 3 5 4 11月:月を通して平年並みでの推移であった。 12月:17 日の寒波で 20 日前後は平年を 2.2 ~ 3.9 ℃下回る日もあったが、それ以外は平年並みで推移 した。 1月以降:1 月上旬は低め、中旬~ 2 月中旬までは 平年並み、2 月下旬~ 3 月上旬はやや高めで推移し た。 2)比 重 図2 に高田港先端における比重の推移を示した。 9月:22 ~ 23 の平年並みであった。 10月:9 月同様、22 ~ 23 の平年並みであった。 11月:平年並み~やや低めであった。 12月:同上。 1月以降:まとまった降雨が度々あり、低下するこ とがあった。 3)降水量 図3 に当研究所で観測した平成 21 年 1 月~ 22 年 3 月までの月別降水量を示した。 平成 21 年 9 月 以降、平年を上回ったのは、11 月、2 月、3 月であ った。3 月の降水量の増加(平年比 209%)が目立 った。 4)栄養塩量(溶存性無機態窒素量、DIN) 図 4 に高田港先端と中津港西側における平成 21 年9 月下旬~ 12 月末までの値を示した。 9月 : 下 旬 の 観 測 開 始 時 は 中 津 で 100 ガンマー (μg/l)以上と高い値であった。 10月:採苗期の中旬から中津、高田とも下がり始め、 中津で70 ガンマー前後、高田で 10 ~ 20 ガンマー であった。 11~12月:降雨とシケで中津では200 ガンマー、高 田で100 カンマーを超える日もあったが、全体的に は中津で 100 ガンマー前後、高田は 70 ガンマーを 切る低い値で推移した。 図 5 には、平成 2 年度以降の漁期前半の高田港 DIN 値を平均して示した。平成 16 年度までは 100 ガンマーを超える年も見られた。しかし、17 年度 以降はその1/2 の 50 ガンマー程度で推移している。 ノリ漁場の沖合域での定期調査(浅海定線)でもDIN 値は昭和 57 年(3.7M/l)をピークに減少し、平成 6年以降はピーク時の1/2 ~ 1/3 に減少する1)など、 豊前海の低栄養塩傾向が顕著になっている。 大分 県水 試事業 報告 170 大 分 県 水 試 事 業 報 告
図1 高田港先端の水温(9月25日~3月6日)
図2 高田港先端の比重(9月25日~3月6日)
図3 月別降水量(豊後高田市浅海研究所観測)
大分 県水 試事業 報告 図5 高田港先端の平均栄養塩量の推移 (10~1月、19年度以降は10~12月) 5)DINとDIP 図6 に示した。DIP の分析は平成 16 年度漁期以 来、5 年ぶりに実施した。DIP は 6.2 ~ 40.6μg/l、平 均16.2μg/l であった。ノリ養殖には DIN:DIP=10:1 程度が良いと言われるが2)、平均すると2.5:1 とな り、N 不足の減少が目立った。この傾向は平成 16 年度3)と同様であった。 図6 高田港先端のDIN、DIP、DIN:DIP比 (10 月 2 日~ 12 月 24 日) 3.情報活動 1)テレホンサービス 平成21 年 9 月 28 日から 12 月 29 日までの間、気 象・海況・養殖管理・病害発生状況と対策等の情報 を第 26 号まで発信した。また、栄養塩量(溶存性 無機態窒素量、DIN)の分析結果は採水日の翌日に 速報した。今漁期の利用回数はのべ228 回、1 日平 均2.5 回であった。 2)ノリ病害情報の発行 中津市小祝での赤ぐされ病発生(平成21 年 12 月 15 日)に伴い、翌 16 日にノリ病害情報を紙面で発 行し、関係機関あてFAX 送付した。 3)検査及び指導 漁期中には各地の種糸提供者と依頼者からの種糸 を検鏡し、芽付きの確認や病害の有無を検査すると ともに、現地で幼芽の生育状況や病害発生状況など を調査した。これらの結果は、大分のり養殖漁業者 協議会会員を通じて生産者と漁協へ速やかに連絡し た。検査依頼人数はのべ 107 人であった(表 3)。 4.その他 1)バリカン症に関する調査 0 50 100 150 200 250 300 350 平 成 2 年 度 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 1 0 年 1 1 年 1 2 年 1 3 年 1 4 年 1 5 年 1 6 年 1 7 年 1 8 年 1 9 年 2 0 年 2 1 年 D IN (μ g / L ) 0 100 200 300 400 500 9/20 9/30 10/10 10/20 10/30 11/9 11/19 11/29 12/9 12/19 12/29 0 5 10 15 20 25 30 35 40 高田港先端DIN 高田港先端DIP DIN:DIP比 D IN 、 D IP (μ g / l) D IN :D IP 比 ( D IP = 1 ) DIN:DIP=10:1のライン 表3 平成21年度月別検査依頼のべ人数 地 区 9月 10月 11月 12月 1月 2月 合計 小 祝 0 12 8 3 0 0 23 西中津 0 7 6 4 0 0 17 東中津 0 5 10 4 0 0 19 和 田 0 5 8 4 0 0 17 中津市(計) (0) (29)(32)(15) (0) (0)(76) 柳ケ浦 0 5 5 5 0 0 15 長 洲 0 4 1 1 0 0 6 和 間 0 5 4 1 0 0 10 宇佐市(計) (0)(14)(10) (7) (0) (0) (31) 杵築市 0 0 0 0 0 0 0 合 計 0 43 42 22 0 0 107 (独)水産工学研究所から間欠駆動式水中ビデオ カメラを借用し、11/12 ~ 11/20(小祝西)、11/20 ~ 11/30(小祝西)、12/10 ~ 12/20(新田)の 3 回にわ たり水中ビデオカメラを設置した(写真 1)。設置 期間中、設置漁場内でバリカン症は発生したが、カ メラの付近では見られず、食害等ノリ芽流失につな がる映像は得られなかった。 写真1 水中ビデオカメラの設置 2)微小巻貝の大発生 チャツボ(写真2)と呼ばれる殻高 1 ~ 4mm の 巻貝が、11 月以降、中津市のノリ漁場に大量発生 した。生ノリ30g に 4 ~ 6 個の混入が見られる場合 もあった。詳細はおおいたアクアニュースNo.31 に 掲載の予定である。 写真2 ノリ漁場に発生したチャツボ
文
献
1)岩野英樹.周防灘の生物生産を支える栄養塩の 動向.おおいたアクアニュース2007;25:7-8. 2)全漁連.2008 年度版のりごよみ 2008;155. 3)伊藤龍星,平澤敬一,田森裕茂,福岡和光.浅 海増養殖に関する研究(8)ノリ養殖安定対策推進事 業.平成 16 年度大分県農林水産研究センター事業 報告2006;191-195. 172 大 分 県 水 試 事 業 報 告浅海増養殖に関する研究
(6)アマモの採種と発芽率向上、種子の保存
伊藤龍星・原 朋之
事業の目的
アマモ場は、水棲生物の生息場や産卵場、保育場 としての機能のほか、漁場や水質・底質の浄化機能 を有している。1) その重要性は広く知られるように なり、全国的に NPO や環境保護団体、自治体によ る ア マ モ の 保 護 や 移 植 活 動 も行 わ れる よう に な っ た。2) 本県においても、別府湾日出町において、マ コガレイ稚魚の保護・育成の観点から、役場が中心 となりアマモ場造成の取り組みがなされている。今 年度は県北2 ヵ所のアマモ場の種子を対象として、 播種や発芽率向上に関する試験を行い、あわせて日 出町役場のアマモ場造成の取り組みについて、技術 的支援を行った。事業の方法
1.アマモ場の繁茂密度と花枝の形成 2009 年 6 ~ 7 月にかけて、日出町日比ノ浦(以 下、日比ノ浦)とと杵築市守江(以下、守江)の 2 ヵ所のアマモ場で草体を採取した。採取量は 50cm ×50cm のカデラート 1 枠分とし、1m2の現存量(生 息株密度、湿重量)に換算した。また、草体長(地 上部)、花枝の割合(%)を調査した。 2.種子のサイズの違い 日比ノ浦と守江のアマモを比べると、栄養株、花 枝ともに守江のほうが長かった。そこで、日比ノ浦 で2009 年 6 月 22 日、守江で 6 月 23 日に採取した 花枝から、それぞれ種子を自然落下させて、両者の 種子のサイズ(長径、短径)を比較した。 3.花枝の採取時期による種子落下数 陸上での採種に適した花枝の採取時期を明らかに するため、日比ノ浦(2009 年 6 月 9 日、22 日、7 月 7 日)、守江(2009 年 6 月 23 日)で採取した花 枝各約 20 株を当研究所に持ち帰り、採取から 3 日 以内に、ろ過海水を満たしたバット(縦×横×深さ= 60 × 37 × 10cm)に浮かべ、上屋付きの屋外、止 水、弱い通気で培養した。水温はデータロガーをバ ット内に設置し、1 時間ごとに記録した。海水は週 に1 回全量を交換した。花穂から自然に落下した種 子を、3 日~ 1 週間おきに回収・計数し、8 月 7 日 まで続けた。得られた値は、使用した花枝数または 花枝の湿重量で割り、さらに回収までの日数で割っ て花枝1 株 1 日あたりの落下数、および花枝 1g 1 日あたりの落下数として示した。また、期間中の合 計落下種子数を示した。 4.淡水浸漬と発芽率との関係 ア マ モ 種 子 の 淡 水 浸 漬 によ る 発 芽率 向上 に つ い て、8 月と 12 月の 2 回試験を実施した。発芽は種 子の外皮が割れた時点とした。3) 8 月は前項の落下種子から 40 個を用い、淡水(水 道水)への浸漬を行った。8 月 3 日、12cm シャー レ4 枚に種子 10 個ずつを収容し、淡水浸漬区(100% 水道水)3 区と対照区(100%海水)1 区を設定し、 実験室内の室温、自然光で静置し、16、24、96 時 間後の種子の発芽率を測定した。さらに、終了時(96 時間後)に発芽していた種子を別なシャーレに移し、 同じ場所でろ過海水にて1 週間培養した。 12 月の種子は、後述する日出町に 11 月 30 日配 布した種子の一部を、実験室内に常温で保存してい たものとした。12 月 29 日に次の 3 区(淡水浸漬 4 時間、同6 時間、同 8 時間)に種 5 個を入れたのち、 取り出してろ過海水へ戻し、その後の発芽をシャー レ内で観察した。 5.淡水処理、培養海水濃度、土壌基質の違いによる 種子の発芽と生長 播種直前の淡水処理や播種後の培養海水の濃度、 腐葉土の使用などで種子の発芽や生長に大差がでる と言われている。このため、2009 年 12 月 29 日に 浅海研究所実験室内において、園芸用苗ポット(直 径 75mm ×高さ 65mm、プラステック製)に珪砂 4 号を詰めたもの20 個(砂のみ区)、珪砂に市販の腐 葉土を体積比でおよそ7:3 加えたもの 20 個(砂+腐 葉土区)を用意し、すべてのポットには、5 個の種 子を中央に深さ 1.5cm の穴を掘って播種した。播種に際しては,種子を播種直前水道水に2 時間浸漬す る区(淡水処理区)と対照区を設けた。また、播種 後のポットは、60%ろ過海水区と 100%ろ過海水区 の2 区に分けるようにした。これらの条件を組み合 わせると計8 区となり、1 区あたり 5 個のポットが 配置されるようにした。収容後は、実験室内の常温、 自然光下で静置し、20 日後の 2010 年 1 月 18 日に 砂中の種子を掘り起こし、発芽状態を観察した。93 日後には砂上に出ている草体を観察した。 6.役場によるアマモ場造成の取り組みと種子の保存 役場の魚類中間育成施設における採種~浅海研究 所への搬入、研究所内での低温保存について記した。 また、魚類中間育成施設に戻してからの播種~育苗 ~移植の概要を記載した。
事業の結果
1.アマモ場の繁茂密度と花枝の形成 日出町日比ノ浦 2009 年 6 月 9 日、22 日、7 月 7 日の 3 回にわた り採取した。 6 月 9 日は、アマモ群落の中央で行った。現存量 は 208 本 /m2、757g/m2、 草 体 長 は 花 枝 で は 平 均 474.5mm、4.8g であったが、栄養株では 417.3mm、2.3g と花枝草体のほうがやや長かった。花枝形成率(花 枝を形成した株数/全株数、%)は 32.7%であった。 花枝1 株に形成された花穂数は 5 ~ 12、平均 8..3、 花穂1 つの種子数は 4 ~ 11、平均 7.4 個であった。 観察した範囲では、花穂から種子が落下するほど成 熟した状態のものはなかった。 6 月 22 日には、最も沖側の深場(D.L.-110cm) と最も岸近くの浅場(D.L.-40cm)の 2 ヵ所につい て調べた。深場の現存量は 264 株/m2、719.6g/m2、 草体長は栄養株では平均 414.0mm、2.3g、花枝では 551.0mm、 5.8g、花枝形成率は 10.6%であった。花 穂は成熟し、すでに種子の落下が始まっているもの もあった。対して浅場は 300 株/m2、403.6g/m2、 す べ て 栄 養 株 の み で 花 枝 は な かっ た 。草 体長 は 平 均 386.4mm であった(図 1)。 7 月 7 日にはアマモ場内深場の花枝のみを採取し た。草体長は平均570.4mm、5.5g であった。成熟は 進んでおり、花穂の約半数はすでに草体から切り離 され、なくなっていた。 以上から、日比ノ浦においては、花枝は栄養株よ りもやや長いこと、花枝は深場には見られるが浅場 にはないこと、花枝形成率は 11 ~ 33%で、6 月中 旬には種子の落下が始まること等が確認できた。 図1 日出町日比ノ浦のアマモ場における栄養株と 花枝の草体長(2009年6月22日、縦棒は標準偏差) 杵築市守江 採取は6 月 23 日の 1 回であった。群落内、沖側 の深所と岸側の浅所の2 ヵ所で調査した。 深所の現存量は112 株/m2、2,976.8g/m2、草体長は 栄養株で平均 1,650.3mm、24.7g であったが、花枝 では1,373.3mm、13.9g と栄養株のほうが長かった。 花枝形成率は 17.9%であった。浅場の現存量は 132 株/m2、1,123.6g/m2、 花枝はなく、すべて栄養株で平 均853.1mm、8.5g であった(図 2)。 以上から、守江のアマモは日比ノ浦よりも約3 倍 長いこと、守江では花枝よりも栄養株のほうが長い こと、日比ノ浦と同じく、浅場では花枝は見られな いことが確認された。 図2 杵築市守江のアマモ場における栄養株と花枝 の草体長(2009年6月23日、縦棒は標準偏差) 2.種子のサイズの違い 表1 に示した。長径、短径ともに、守江の種子は 日比 ノ 浦 より も 有意 に大き かった (写 真1)。これ は前述のとおり、守江の花枝が日比ノ浦より、長く 大型であったことに由来するものと思われる。 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 栄養株 花枝株 栄養株 花枝株 草 体 長 m m なし 深 場 浅 場 0 100 200 300 400 500 600 700 栄養株 花枝 栄養株 花枝 草 体 長 m m 深場(D.L.-110cm) 浅場(D.L.-40cm) なし 大分 県水 試事業 報告 174 大 分 県 水 試 事 業 報 告表1 日出町日比ノ浦と杵築市守江のアマモ種子の サイズ 写真1 日出町日比ノ浦(左)と杵築市守江(右) のアマモ種子 3.花枝の採取時期による種子落下数 実験期間中の水温を図3 に示した。花枝 1 株 1 日 あたりの落下種子数を図4 に、花枝 1g 1 日あたり の落下種子数を図5 に示した。6 月中~下旬の平均 水温 25 ℃の頃に落下種子数が多くなっており、こ の頃までには花枝を採取し、採種作業に入っておく のが良いと思われた。守江の花枝は大型のため重量 が重かった。このため、花枝 1g あたりの落下種子 数は、日比ノ浦よりも少なく推移した。期間中の合 計落下種子数は、花枝 1 株あたりで 30 個程度であ った(表 2)。他県では、花枝 1 株あたり 100 個を 採種した例もあり、4) 本県の種子数はかなり少なか った。これは、花枝に形成される花穂数や花穂内に 形成される種子数の違いに由来するものなのか、採 種方法の違いによるものなのか検討が必要である。 図3 試験期間中の水温 (平均値、縦棒は最大値と最小値) 日出町日比ノ浦
杵築市守江
長径±S.D. mm
3.16±0.20
3.65±0.12
※ 短径mm±S.D. mm1.63±0.11
1.90±0.10
※長径/短径
1.95
1.93
※:5%で有意差あり(t検定)
18 20 22 24 26 28 30 32 6/15 6/22 6/29 7/6 7/13 7/20 7/27 8/3 水 温 ℃ 2009 図4 花枝1株1日あたりの落下種子数 図5 花枝1g1日あたりの落下種子数 表2 実験期間中の合計落下種子数 4.淡水浸漬と発芽率との関係 8 月の淡水浸漬では、96 時間(4 日)後には 63% の発芽率を示すなど、アマモの発芽率は向上した(図 6)。しかし、その後の培養では、発芽したすべて の種子は、生長することなくカビ等に覆われ腐敗し た。12 月の 6 時間浸漬区では、浸漬中に 2 個の種 子の発芽が見られた。その他の区では浸漬中の発芽 はなかった。さらにろ過海水に戻してから 15 日間 の観察を続けたが、あらたに発芽した種はなかった。 また、発芽した2 個も生長することなく腐敗した。8 月、12 月の結果から、淡水に浸漬することで、発 芽率が向上する場合のあることは確認できた。この 現象は、種皮内部への淡水の浸透による膨張による ものと考えられているが、3) 両月とも、発芽後の種 子の生長が見られなかったことから、処理後の生長 も保証するものであるか検討すべきである。日比ノ浦 6/9
日比ノ浦 6/22
日比ノ浦 7/7
杵築守江 6/23
花枝1株あたりの種子数31.7
54.8
24.1
32.9
花枝1gあたりの種子数7.3
9.6
5.1
2.3
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 6/9 6/16 6/23 6/30 7/7 7/14 7/21 7/28 8/4 8/11 日比ノ浦6/9 日比ノ浦6/22 日比ノ浦7/7 守江6/23 花枝1g1日あたりの落下種子数 落 下 種 子 数 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 6/9 6/16 6/23 6/30 7/7 7/14 7/21 7/28 8/4 8/11 日比ノ浦6/9 日比ノ浦6/22 日比ノ浦7/7 守江6/23 花枝1株1日あたりの落下種子数 落下種子数大分 県水 試事業 報告 図6 淡水処理とアマモ種子の発芽率 (縦棒は標準偏差) 5.淡水処理、培養海水濃度、土壌基質の違いによる 種子の発芽と生長 各区における 20 日後の平均発芽率を表 3 に示し た。最も発芽率の高かったのは、淡水処理2 時間後 に砂+腐葉土の基質に播種し 60%海水で培養した区 (発芽率 A100%、B36%)ものであった。対して最 も低かったのは、淡水処理をせず、砂のみの基質で 100%海水で培養した区(各 20%、4%)であった。93 日後には、どの区も発芽率 A80%、B20 ~ 30%近く まで上昇し、大きな違いは見られなくなった(表4)。 また、発芽した草体の伸長が腐葉土区では有意に早 0 20 40 60 80 100 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 発 芽 率 % 時間 淡水浸漬区 ろ過海水区 いことがわかり、腐葉土は生長に効果的であること が判明した(表5、写真 2)。 なお、種子ごとの発芽率が 20 ~ 30%であったこ とから、1 つのポットへの播種数を 5 個以上にすれ ば、最低1株以上のアマモ草体の生育が期待できる。 表5 発芽した草体の全長 写真2 ポットから発芽、生長したアマモ草体 (2010年3月) 2010年4月1日観察 (93日後) 砂のみ 砂+腐葉土 砂のみ 砂+腐葉土 全長mm 全長mm 全長mm 全長mm 60%海水 44.8 59.9※ 40.0 46.5 100%海水 43.9 57.0 47.3 55.6※ ※:5%で有意差あり(t検定) 淡水処理2h 淡水処理せず 表3 種子の淡水処理、育苗基質、海水濃度による発芽率(20日後) 表4 種子の淡水処理、育苗基質、海水濃度による発芽率(93日後) 2010年1月18日観察 (20日後) 発芽率A(%) 発芽率B(%) 発芽率A(%) 発芽率B(%) 発芽率A(%) 発芽率B(%) 発芽率A(%) 発芽率B(%) 60%海水 60 12 100 36 40 12 80 20 100%海水 60 16 40 8 20 4 40 8 発芽率A:発芽種子がみられたポット数/全ポット数×100、 発芽率B:発芽種子数/全種子数×100 淡水処理2h 淡水処理せず 砂のみ 砂+腐葉土 砂のみ 砂+腐葉土
2010年4月1日観察
(93日後)
発芽率A(%) 発芽率B(%) 発芽率A(%) 発芽率B(%) 発芽率A(%) 発芽率B(%) 発芽率A(%) 発芽率B(%)60%海水
80
28
100
36
40
12
80
20
100%海水
80
28
60
28
80
20
80
32
発芽率A:発芽種子がみられたポット数/全ポット数×100、 発芽率B:発芽種子数/全種子数×100
砂のみ
砂+腐葉土
砂のみ
砂+腐葉土
淡水処理2h
淡水処理せず
6.役場によるアマモ場造成の取り組みと種子の保存 日出町の魚類中間育成場内において、役場職員に よる採種作業が行われた。花枝の採取は、2009 年 6 月9 日、22 日、7 月 7 日に行い、のべ 1,810 本を採 取した。10 本づつに束ねて重りをつけ、500L のパ ンライト水槽2 基に収容し、流水で飼育を続けなが ら、室内、自然光、常温で種子を自然に落下させた。 落下した種子を回収したところ、計約 40,000 粒 であった。種子は浅海研究所に 2 回(8 月 11 日に 約19,600 粒、8 月 25 日に約 20,900 粒)に分けて持 ち込まれた。11 日持ち込みについては、同日、飽 和食塩水(海水に NaCl を飽和量溶かした)で比重 選別を行い、10.3%(約 2,000 粒)が沈下せずに浮 遊した。浮遊した種子は除去し、残りの 17,500 粒 を6 つに分けて、ろ過海水をはったコンテナに収容 し、予令室で保存した。25 日の分は、事前に比重 176 大 分 県 水 試 事 業 報 告選別を終えてから持ち込まれたが、同日、再度選別 したところ、2.8%(約 580 粒)が浮遊したため除去 した。残りを4 つに分けたのち、コンテナに収容し 予冷室で保存した。保存中の水温は 2.5 ~ 3.0 ℃の 範囲でとほとんど変化はなかった(図 7)。保存中 は、2 週間に 1 度、蒸発した海水を追加した。白い カビ状のものが発生することがあったので、10 月 20 日と11 月 25 日には、すべての種子を洗浄した。11 月 30 日には全数を日出町の魚類中間育成場へ移動 したが、この時までの自然発芽個体数は 8 月 11 日 が522 粒、8 月 25 日が 1,750 粒であった。 12 月 1 日には、魚類中間育成場で竹筒やトレイ 等への播種(総播種数 32,000 粒、播種直前に 2 時 間の淡水処理、竹筒1つに 20 粒播種、播種後覆砂 1cm 実施等)を行い、発芽を待った。12 月 25 日の 観察では、播種数に占める発芽率は 24.3%(東部振 興局調べ)、2010 年 2 月末には約 70%(日出町役場 調べ)、3 月上旬には、ほぼすべての竹筒からアマ モ草体が発生し、草体長は 5 ~ 10cm になっていた (写真3)。播種以降の平均水温は 8 ~ 14 ℃(図 8)、 照度は日中晴天時の水面で 4,000 ~ 5,000lx であっ た。その後、3 月 16 日には日出町豊岡小学生 5 年 生を対象にした移植イベント(1,300 株)、4 月 13、14、 15 日にはそれぞれ日出町大神(糸ヶ浜)、日出(太 田)、豊岡(豊岡駅下)で漁業者も参加しての移植 作業(各4,500 株ずつ)が行われた(写真 4)。移植 手法としては、竹筒、アマモパック4)(写真5)、紙 粘土が用いられた。移植後翌月の観察では、豊岡で は移植草体が残っていたとのことであった。 図7 予冷室で保存中の種子の水温 (平均値、縦棒は最大値と最小値) 図8 日出町魚類中間育成場でのアマモ育苗水温 (平均値、縦棒は最大値と最小値) 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 8/12 8/22 9/1 9/11 9/21 10/1 10/11 10/21 10/31 11/10 11/20 11/30 水 温 ℃ 2009 2 4 6 8 10 12 14 16 12/22 1/5 1/19 2/2 2/16 3/2 3/16 3/30 4/13 2009 2010 水 温 ℃ 写真3 生長したアマモ(2010年3月9日、日出町) 写真4 日出町役場、漁業者によるアマモ移植 (2010年4月15日、日出町豊岡) 写真5 移植に用いたアマモパック
今後の問題点
2008 年からの 2 年間の取り組みで、県北域アマ モ場における花枝の採取時期や採種方法が明らかに なった。種子の低温での保存や播種後の発芽、育苗 技術も安定してきた。今後の課題としては、育苗し たアマモの移植方法と適地の選定である。今回、竹 筒、アマモパック、紙粘土の3 つを用いたが、移植 後の定着率は高くはなかった。これらの移植方法と 移植地盤高、粒度組成などを検討する必要がある。文
献
1)水産庁・マリノフォーラム 21.アマモ類の自然 再生ガイドライン.2007. 2)工藤孝浩.市民参加による海づくりの推進.「水 産学シリーズ 162 市民参加による浅場の順応的管 理」恒星社恒星閣,東京.2009;71-86. 3)山木克則,小河久朗,吉川東水,難波信由.ア マモ種子における塩分および温度制御による発芽促 進効果.水産増殖2006;54(3):347-351. 4)吉松隆司,松野 進.豊かなアマモ場再生支援 事業.平成 20 年度山口県水産研究センター事業報 告2009;219-221.アカナマコ放流増殖技術開発事業
種苗生産技術開発研究
片野晋二郎・江頭潤一・都留久美子
事業の目的
単価が高く地先資源として有望なアカナマコの増 殖対策として、種苗生産と放流技術の開発研究を行 っている。また、薬事法の改正に伴い、ナマコの剥 離剤である塩化カリウムが使用不可となったため、 塩化カリウムに代わる剥離剤の検討を行った。事業の方法
1.種苗生産技術の開発研究 本年度の種苗生産全体を報告する。 本年度使用した餌料種類を表1 に示した。以下、 本文中では表中の記号で記述する。 また、成長段階ごとの基本的な飼育方法を表2 に 示した。 1)親アカナマコの飼育と採卵 2009 年 2 月 9 日、2 月 10 日に日出町で購入した アカナマコを0.5t 円形 PE 水槽 1 基、1t 円形 PE 水 表1 アカナマコ種苗生産に用いた餌料種類 記号 餌料名 状態 備考C Chaetoceros gracilis 自家培養 培養濃度400万cells/cc
P Pavlova lutheri 自家培養 培養濃度600万cells/cc
ワカメ 乾燥ワカメ 粉末 市販品(食用乾燥ワカメ) リビ リビックBW 粉末 市販品(ナマコ用) ・記号は生物餌料を英文字、粉末餌料をカタカナとした。 ・CとP以外の給餌量は乾燥重量(換算値)で使用した。 槽1 基及び 1tFRP 水槽 4 基に収容し、親仕立てを 行った。収容数は0.5t 円形 PE 水槽、1t 円形 PE 水 槽、1tFRP 水槽では 15 ~ 30 個、合計 135 個体(平 均体重405.2g)を親仕立てに使用した。 また、親仕立て中には体表のビラン、内臓の吐き 出し、斃死した個体(以下「損傷個体」という)は 取り除いた。 給餌は残餌が無いようにナマコの摂餌状況に合わ せてワカメを5 ~ 20g/t で給餌し、残餌及び糞は毎 日サイフォンで除去した。0.5t 水槽は自然水温より 2 ℃低く調温し、1tFRP 水槽のうち 2 基は自然海水よ り2 ℃高く調温し、他の水槽は自然水温で飼育した。 なお、換水率は 5 回転/日とし、親仕立ての期間は 2009 年 2 月 9 日~ 6 月 15 日であった。 採卵は期間中に計10 回行った。採卵には 0.5t 円 形PE 水槽 3 基を暗室に用意し、誘発開始 1 時間前 に止水・無通気の状態にした後、親ナマコを採卵水 槽に移送した。親ナマコの収容個体数は1 回の採卵 に 20 個を基本とした。誘発中は無通気とし、誘発 は投げ込み式ヒーターを用いて飼育水から 2 ℃/時 間で 21 ℃まで昇温した。加温開始後 2 時間経過し ても放精・放卵しない場合は、採卵水槽と同じ温度 に調整した他方の水槽に移送し、刺激を与えた。 得られた受精卵は、表2 に示す 1t 円形 PE 水槽(底 面積1.5m2× 深さ 0.8m)(以下「 1t 水槽」という)と 30t 角形コンクリート水槽(6.9m×2.8m× 深 さ 1.6m)(以 下「30t 水槽」という)に収容してふ化させた。なお、 受精卵の収容数は1t 水槽では 1,350 ~ 4,550 千粒、 30t 水槽では 8,850 ~ 15,000 千粒とした。 表2 成長段階における基本的な飼育方法 飼育水槽 換水率 (水量、形状、材質) (回転/日) C(L) P(L) リビ(g) 1t、円形、PE 0.5 なし 20℃調温 2 2 - 30t、角形、コンクリ 0.5 なし 20℃調温 30 30 - 1t、円形、PE 1~2 波板(5セット) 20℃調温 2 2 3 30t、角形、コンクリ 0.5 波板(32 セット) 20℃調温 30 30 10 稚ナマコの飼育 1t、円形、PE 1 波板(5セット) 22℃調温 2 2 3 2t、角形、FRP 3 波板(17セット) 6 - 10 給餌量/日・水槽 ふ化及び浮遊幼生 の飼育 着底初期の飼育 ステ-ジ 付着基質 水温 大分県水試事業報告 178 大 分 県 水 試 事 業 報 告